説明

液体供給装置

【課題】例えば低温時のような周囲環境の変動があっても、配管破裂を起こさない硬化剤供給装置を提供すること。
【解決手段】硬化剤供給装置1は、硬化剤タンク10から塗装ブース200へ硬化剤を供給する装置であって、両端部が硬化剤タンク10に連結される循環経路20と、循環経路20の途中に設けられる分岐部から分岐して塗装ブース200に至る分岐経路30と、循環経路20の分岐部よりも上流側に配置され、硬化剤タンク10から導入される硬化剤を所要の圧力で送出するポンプ40と、循環経路20の分岐部よりも下流側に配置され、硬化剤の流量を規制する背圧バルブ60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給装置に関する。詳しくは、周囲環境が変動しても配管が破裂しない液体供給装置、例えば硬化剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の製造工程では、バンパーや車体の塗装が行われる。この種の塗装は、カラー塗料を用いる塗装(ベース塗装)が行われた後、透明塗料を用いる上塗り(クリア塗装)が行われる。
【0003】
従来から、上塗り(クリア塗装)には、主剤と硬化剤とを塗装直前に混合させる2液混合型の塗料が用いられている。2液混合型の塗料は、例えばバンパーに塗料を吹き付けた後、温度を加えて化学反応を起こさせることで塗料を固めている。そのため、塗装ロボットが配置される塗装ブースへの主剤の供給経路(配管)と、硬化剤の供給経路(配管)とは互いに独立している。
【0004】
硬化剤は、空気中の水分とも反応するため、硬化剤タンクから塗装ブースへの供給経路(配管)は高い気密性を保つことが非常に重要である。そのため、硬化剤タンクから塗装ブースへの一方通行(所謂デッドエンド型)の供給経路が採用されている。その理由は、塗装ブースを経て再び硬化剤タンクに戻る循環型の供給経路の場合は、空気が混入する危険性が高まるためである(関連する文献には、例えば特許文献1がある)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−302315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、デッドエンド型の供給経路は、周囲環境が変動する場合(特に低温時)にはつぎのようなトラブルが発生する。
一般に、硬化剤タンクから塗装ブースへの供給経路には、強度のある鋼製の配管(鋼管)が使用される。しかし、塗装ロボットの部分ではロボットの動きを妨げないためフレキシブルにする必要があり、強度が弱い樹脂の配管(ホース)を使用せざるをえない。
【0007】
例えば、冬の朝のような外気温が低いときに、塗装ブースの空調機を稼動すると、空調バーナーの着火の際に燃焼室内の掃気パージにより外気が取り込まれることで、塗装ブース内の温度が急激に低下する。この温度低下によって、硬化剤の供給経路の鋼管が収縮して内部の圧力が過剰に上昇する。デッドエンド型の配管には圧力の逃げ場がないため、上昇した内圧は樹脂ホースにかかる。この内圧が樹脂ホースの耐圧を越えると、樹脂ホースを破裂(配管破裂)させてしまう。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、例えば低温時のような周囲環境の変動があっても、配管破裂を起こさない液体供給装置、例えば硬化剤供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体供給装置(例えば、後述の硬化剤供給装置1)は、液体タンク(例えば、後述の硬化剤タンク10)から供給先(例えば、後述の塗装ブース200)へ液体(例えば、後述の硬化剤)を供給する液体供給装置であって、両端部が前記液体タンクに連結される循環経路(例えば、後述の循環経路20)と、前記循環経路の途中に設けられる分岐部から分岐して前記供給先に至る分岐経路(例えば、後述の分岐経路30)と、前記循環経路の前記分岐部よりも上流側に配置され、前記液体タンクから導入される液体を所要の圧力で送出するポンプ(例えば、後述のポンプ40)と、前記循環経路の前記分岐部よりも下流側に配置され、液体の流量を規制する流量規制バルブ(例えば、後述の背圧バルブ60)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、分岐経路の内圧が過剰に上昇した場合、その内圧を液体タンクに逃がすことができる。これにより、例えば低温時のような周囲環境の変動があっても、配管破裂を起こさない液体供給装置を提供することができる。
【0011】
この場合、前記液体は塗料を硬化させる硬化剤であることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、分岐経路の内圧が過剰に上昇した場合、その内圧を液体タンクとしての硬化剤タンクに逃がすことができる。これにより、例えば低温時のような周囲環境の変動があっても、配管破裂を起こさない液体供給装置としての硬化剤供給装置を提供することができる。
【0013】
この場合、前記流量規制バルブが背圧バルブであることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、背圧バルブが、これより上流側の液体(硬化剤)の圧力変化に応じて液体(硬化剤)を下流側へ流すことにより、背圧バルブよりも上流側の液体(硬化剤)の圧力を実質的に一定に保つことができる。これにより、分岐経路からの液体(硬化剤)の供給圧力を実質的に一定に保つことができる。
【0015】
この場合、前記循環経路の両端部がいずれも前記液体タンクの底部に連結されることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、液体(硬化剤)タンクをサージタンクとして、内部に収容された液体(硬化剤)とともに利用することができる。これにより、ポンプで発生する液体(硬化剤)の脈動を軽減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分岐経路の内圧が過剰に上昇した場合、その内圧を液体タンクに逃がすことができる。これにより、例えば低温時のような周囲環境の変動があっても、配管破裂を起こさない液体供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体供給装置としての硬化剤供給装置を示す概略的構成図である。
【図2】硬化剤供給装置と塗装ブースとの関係を示す概略的構成図である。
【図3】硬化剤供給装置および塗装ブースの具体的配置の例を示す概略的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る液体供給装置としての硬化剤供給装置1は、液体タンクとしての硬化剤タンク10から供給先としての塗装ブース200へ液体としての硬化剤を供給する。そのため、硬化剤供給装置1は、硬化剤タンク10、循環経路20、分岐経路30、ポンプ40、圧力計とフィルタ50、および流量規制バルブとしての背圧バルブ60を備えている。
【0020】
硬化剤タンク10は、硬化剤を収容する。硬化剤は、自動車のバンパーや車体の塗装において、カラー塗料を用いるベース塗装後に行われる透明塗料を用いるクリア塗装に、塗装直前に主剤と混合して用いられる。硬化剤には、例えば、イソシアネート硬化剤が用いられる。
硬化剤は、空気中の水分とも反応するため、硬化剤タンク10には、工場エア設備(ブロックで図示する)70に繋がるドライエア管路71が連結される。工場エア設備70から水分を除去したドライエアが、ドライエア管路71を通して硬化剤タンク10内に供給されて、封入される。なお、ドライエアの代わりに、窒素ガスを硬化剤タンク10内に封入してもよい。
【0021】
循環経路20は、両端部が硬化剤タンク10に連結される。すなわち、循環経路20の入口端部21は、硬化剤タンク10の底部に設けられた出口部11に連結される。また、循環経路20の出口端部28は、硬化剤タンク10の底部に設けられた入口部12に連結される。循環経路20の途中には、分岐経路30を分岐させるための後述する分岐部が設けられる。循環経路20の詳細については後述する。
【0022】
分岐経路30は、循環経路20の途中に設けられる分岐部から分岐して、塗装ブース200に至る。図1では、分岐経路30は、第1、第2の2系統の分岐経路32、34で構成される。すなわち、相対的に上流側に設けられる第1の分岐部31から第1の分岐経路32が分岐する。また、相対的に下流側に設けられる第2の分岐部33から第2の分岐経路34が分岐する。
【0023】
第1分岐経路32は塗装ブース200に至り、例えば、第1の系統の塗装機(塗装ロボットまたは塗装ガン)に連結される。同様に、第2分岐経路34は塗装ブース200に至り、例えば、第2の系統の塗装機(塗装ロボットまたは塗装ガン)に連結される。なお、第1および第2の系統の塗装機については、図3を参照して後述する。また、分岐経路30は、2系統に限らず、1系統または3系統以上であってもよい。
【0024】
ポンプ40は、循環経路20の第1分岐部31よりも上流側に配置され、硬化剤タンク10から導入される硬化剤を所要の圧力で送出する。ポンプ40は、入口部41と、出口部42とを備える。
ポンプ40には、工場エア設備70に繋がるエア管路72が連結される。ポンプ40は、工場エア設備70からエア管路72を通して供給されるエア圧力により往復作動する。ポンプ40の図示しない可動部が後退(復動)するとき、入口部41に繋がる管路から硬化剤がポンプ40内に導入される。ポンプ40の可動部が前進(往動)するとき、ポンプ40内の硬化剤が出口部42に繋がる管路へ押し出される。
【0025】
エア管路72の途中には、並列管路が設けられる。メインパスバルブ73を有する一方の管路は、ポンプ40の自動運転時に使用するエア管路である。バイパスバルブ74を有する他方の管路は、ポンプ40を手動運転する際に使用するエア管路である。
通常のポンプ40の自動運転時には、図1に示すように、メインパスバルブ73を開放し、バイパスバルブ74を閉鎖した状態で、メインパスバルブ73に直列に設けたポンプ運転指令ボタン75を押すことによって、ポンプ40の自動運転を開始、終了することができる。
図示しない上位の制御部のトラブルが発生した場合には、メインパスバルブ73を閉鎖して、バイパスバルブ74を開放することによって、ポンプ40を手動運転することができる。
【0026】
圧力計とフィルタ50は、循環経路20の第1分岐部31よりも上流側で、かつ、ポンプ40よりも下流側に配置され、ポンプ40から送出される硬化剤の圧力を測定する。圧力計とフィルタ50は、入口部51と、出口部52とを備える。
圧力計とフィルタ50による測定圧力、すなわち、ポンプ40が押し出す硬化剤の押し出し圧力は、塗装ブース200に設置された塗装機(塗装ロボットまたは塗装ガン)が必要とする硬化剤の所定の供給圧力を確保する。
【0027】
背圧バルブ60は、循環経路20の第2分岐部33よりも下流側に配置され、当該下流側における硬化剤の流量を規制する。背圧バルブ60は、入口部61と、出口部62とを備える。
背圧バルブ60は、入口部61に繋がる上流側管路の硬化剤圧力を一定に保持するため、上流側圧力の変化に応じて硬化剤を、出口部62に繋がる下流側管路へ放出する。これにより、第1の分岐部31および第2の分岐部33における硬化剤の圧力は、塗装機(塗装ロボットまたは塗装ガン)が必要とする硬化剤の所定の供給圧力に保持される。
【0028】
循環経路20は、第1の管路22、第2の管路23、第3の管路24、第4の管路25、第5の管路26、および第6の管路27を備える。
第1の管路22の一端部は入口端部21であり、硬化剤タンク10の出口部11に連結される。第1の管路22の他端部は、ポンプ40の入口部41に連結される。
第2の管路23の一端部は、ポンプ40の出口部42に連結される。第2の管路23の他端部は、圧力計とフィルタ50の入口部51に連結される。
第3の管路24の一端部は、圧力計とフィルタ50の出口部52に連結される。第3の管路24の他端部には、第1の分岐部31を介して、第4の管路25の一端部が連結される。
第4の管路25の他端部には、第2の分岐部33を介して、第5の管路26の一端部が連結される。第5の管路26の他端部は、背圧バルブ60の入口部61に連結される。
第6の管路27の一端部は、背圧バルブ60の出口部62に連結される。第6の管路27の他端部は出口端部28であり、硬化剤タンク10の入口部12に連結される。
このように、循環経路20は、硬化剤タンク10の底部の出口部11から入口部12まで、硬化剤が循環する経路を構成する。
【0029】
循環経路20および分岐経路30には、強度のある鋼製の配管(鋼管)が使用される。しかし、例えばレシプロ式であるため振動発生がともなうポンプ40の入口部41付近および出口部42付近等、必要に応じて、鋼管ではなく例えば樹脂の配管を使用することも可能である。
図1には示してないが、塗装ブース200における塗装ロボットの部分には、ロボットの動きを妨げないためフレキシブルにする必要があり、強度が弱い樹脂の配管(ホース)を使用しなければならない。
【0030】
上記のように構成された硬化剤供給装置1において、ポンプ40の運転を開始すると、硬化剤タンク10内の硬化剤は、硬化剤タンク10の出口部11から第1の管路22を通って入口部41からポンプ40に導入(吸引)され、ポンプ40の出口部42から第2の管路23へ押し出される。第2の管路23へ押し出された硬化剤は、入口部51から圧力計とフィルタ50を通って出口部52から第3の管路24へ送出される。第3の管路24へ送出された硬化剤は、第1の分岐部31で、第1の分岐経路32と第4の管路25とに分岐してそれぞれ給送される。
【0031】
第1の分岐経路32を給送された硬化剤は、塗装ブース200に設置された塗装機(塗装ロボットまたは塗装ガン)に供給される。
第4の管路25を給送された硬化剤は、第2の分岐部33で、第2の分岐経路34と第5の管路26とに分岐してそれぞれ給送される。
【0032】
第2の分岐経路34を給送された硬化剤は、塗装ブース200に設置された塗装機(塗装ロボットまたは塗装ガン)に供給される。
第5の管路26を給送された硬化剤は、入口部61から背圧バルブ60に導入されて背圧バルブ60に圧力を加える。背圧バルブ60の入口部61の硬化剤圧力が、塗装機(塗装ロボットまたは塗装ガン)が必要とする硬化剤の所定の供給圧力に到達すると、それを越える圧力を出口部62から逃がすように硬化剤を出口部62から放出する。
【0033】
背圧バルブ60の出口部62から放出された硬化剤は、第6の管路27を通って入口部12から硬化剤タンク10に導入される。
【0034】
この状態を維持することで、ポンプ40の出口部42から背圧バルブ60の入口部61に至る間の硬化剤の圧力は、塗装ブース200に設置された塗装機(塗装ロボットまたは塗装ガン)が必要とする所定の供給圧力に保持される。すなわち、循環経路20の第2の管路23、第3の管路24、第1の分岐経路32、第4の管路25、第2の分岐経路34、および第5の管路26における硬化剤の圧力は、所定の供給圧力に保持される。
【0035】
この場合、塗装機(塗装ロボットまたは塗装ガン)における硬化剤の使用/不使用、および使用量の程度にかかわらず、第1の分岐経路32および第2の分岐経路34における硬化剤の圧力は、循環経路20の第2の管路23、第3の管路24、第4の管路25、および第5の管路26における硬化剤の圧力と同様に、所定の供給圧力に保持される。
【0036】
上記のように、硬化剤の圧力が所定の供給圧力に保持されるとはいっても、実際には、ポンプ40で発生する硬化剤の脈動の影響も考慮しなければならない。
すなわち、ポンプ40の可動部が前進(往動)するときは、ポンプ40内の硬化剤が出口部42から押し出されることで、出口部42に繋がる第2の管路23内の硬化剤の圧力は高まる。
これに対して、ポンプ40の可動部が後退(復動)するときは、硬化剤が入口部41からポンプ40内に導入されるだけで、出口部42から押し出されることはないため、出口部42に繋がる第2の管路23内の硬化剤の圧力は低下する。
【0037】
しかし、ポンプ40の入口部41が第1の管路22を介して出口部11に繋がる硬化剤タンク10は、その入口部12に第6の管路27が繋がっている。すなわち、硬化剤タンク10は、その出口部11に繋がる第1の管路22から、ポンプ40、第2の管路23、第3の管路24、第1の分岐部31、第4の管路25、第2の分岐部33、第5の管路26、背圧バルブ60、および第6の管路27を経て、入口部12に繋がっている。つまり、硬化剤タンク10を含めることで、循環経路20の完全な循環が達成する。換言すれば、硬化剤タンク10は、循環経路20の一部を構成している。
【0038】
このように、循環経路20の一部を構成する硬化剤タンク10は、いわゆるサージタンクとして機能することが明らかである。すなわち、硬化剤タンク10は、内部に収容している硬化剤を含めて、サージタンクとして活用することができる。
そのため、硬化剤タンク10は、ポンプ40の可動部が後退(復動)するときの硬化剤の圧力低下を抑制することができる。その結果、ポンプ40で発生する硬化剤の脈動の振れ幅を小さくすることができ、硬化剤の脈動の影響を軽減することができる。これにより、ポンプ40の出口部42から背圧バルブ60の入口部61に至る間の硬化剤の圧力を、実質的には一定の供給圧力に保持することが可能となる。
【0039】
次に、図2を参照して、硬化剤供給装置1と塗装ブース200との関係について説明する。
硬化剤供給装置1は、塗料供給室100に備えられる。塗料供給室100には、主剤供給装置8も備えられる。
硬化剤供給装置1は、上述したように、第1分岐経路32および第2分岐経路34を有する。第1分岐経路32は、塗装ブース200に至って第1分岐経路232となる。第2分岐経路34は、塗装ブース200に至って第2分岐経路234となる。塗装ブース200内において、第1分岐経路232の先端側および第2分岐経路234の先端側は互いに連なる。
【0040】
主剤供給装置8は、主剤タンク80から塗装ブース200へ主剤を供給する。そのため、主剤供給装置8は、主剤タンク80、供給経路81、戻り経路82、およびポンプ83を備えている。
主剤タンク80は、主剤を収容する。主剤は、自動車のバンパーや車体の塗装において、カラー塗料を用いるベース塗装後に行われる透明塗料を用いるクリア塗装に、塗装直前に硬化剤と混合して用いられる。
主剤は、ポンプ83により主剤タンク80から供給経路81を供給され、塗装ブース200内を巡って残った主剤は、戻り経路82から主剤タンク80に戻される。
供給経路81は、塗装ブース200に至って供給経路281となる。戻り経路82は、塗装ブース200に至って戻り経路282となる。塗装ブース200内において、供給経路281の先端側および戻り経路282の先端側は互いに連なる。
【0041】
塗装ブース200には、複数の塗装機(例えば、塗装ロボット210a、210bまたは塗装ガン220c)が設けられる。
塗装ロボット210a、210bには、供給経路281から分岐する個別供給路2812a、2812bを通して主剤が供給され、第1分岐経路232または第2分岐経路234から分岐する個別分岐路2324a、2324bを通して硬化剤が供給される。主剤および硬化剤は、塗装ロボット210a、210bの図示しない混合装置によって混合されて、その直後に塗装ロボット210a、210bの先端部から吐出されて塗装に供される。
【0042】
塗装ガン220cには、供給経路281から分岐する個別供給路2812cを通して主剤が供給され、第1分岐経路232または第2分岐経路234から分岐する個別分岐路2324cを通して硬化剤が供給される。主剤および硬化剤は、混合装置221cによって混合されて、その直後に塗装ガン220cの先端部から吐出されて塗装に供される。
【0043】
次に、図3を参照して、硬化剤供給装置1および塗装ブース200の関係について具体的に説明する。
図3に示す塗装ブース200には、第1の系統の塗装機(例えば、塗装ロボット210a、210b、210c、210eおよび塗装ガン220d)と、第2の系統の塗装機(例えば、塗装ロボット210g、210h、210i、210jおよび塗装ガン220f)とが設けられる。
【0044】
硬化剤供給装置1から第1分岐経路32を介して塗装ブース200内に至る第1分岐経路232は、第1の系統の塗装機に対応する位置を循環する。硬化剤供給装置1から第2分岐経路34を介して塗装ブース200内に至る第2分岐経路234は、第2の系統の塗装機に対応する位置を循環する。第1分岐経路232の先端側と、第2分岐経路234の先端側とは、互いに連なる。
主剤供給装置8から供給経路81を介して塗装ブース200内に至る供給経路281は、第1の系統の塗装機に対応する位置を循環し、続いて、第2の系統の塗装機に対応する位置を循環した後、戻り経路282から戻り経路82を介して主剤供給装置8に至る。
【0045】
硬化剤供給装置1から第1分岐経路32を介して塗装ブース200内の第1分岐経路232に供給された硬化剤は、まず、塗装ロボット210aに対応する位置において、個別分岐路2324aを通して塗装ロボット210aに供給される。
この塗装ロボット210aには、主剤供給装置8から供給経路81を介して塗装ブース200内に至る供給経路281から、塗装ロボット210aに対応する位置における図示しない個別供給路を通して主剤が供給される。
これにより、塗装ロボット210aは、主剤および硬化剤を混合した塗料を先端部から吐出して塗装を行う。
【0046】
第1分岐経路232に供給された硬化剤は、つぎに、塗装ロボット210bに対応する位置において、個別分岐路2324bを通して塗装ロボット210bに供給される。
この塗装ロボット210bには、供給経路281から、塗装ロボット210bに対応する位置において図示しない個別供給路を通して主剤が供給される。
これにより、塗装ロボット210bは、主剤および硬化剤を混合した塗料を先端部から吐出して塗装を行う。
【0047】
第1分岐経路232に供給された硬化剤は、つぎに、塗装ロボット210cに対応する位置において、個別分岐路2324cを通して塗装ロボット210cに供給される。
この塗装ロボット210cには、供給経路281から、塗装ロボット210cに対応する位置において図示しない個別供給路を通して主剤が供給される。
これにより、塗装ロボット210cは、主剤および硬化剤を混合した塗料を先端部から吐出して塗装を行う。
【0048】
第1分岐経路232に供給された硬化剤は、つぎに、塗装ガン220dに対応する位置において、個別分岐路2324dを通して塗装ガン220dに供給される。
この塗装ガン220dには、供給経路281から、塗装ガン220dに対応する位置において図示しない個別供給路を通して主剤が供給される。
これにより、塗装ガン220dは、主剤および硬化剤を混合した塗料を先端部から吐出して塗装を行う。
【0049】
第1分岐経路232に供給された硬化剤は、つぎに、塗装ロボット210eに対応する位置において、個別分岐路2324eを通して塗装ロボット210eに供給される。
この塗装ロボット210eには、供給経路281から、塗装ロボット210eに対応する位置において図示しない個別供給路を通して主剤が供給される。
これにより、塗装ロボット210eは、主剤および硬化剤を混合した塗料を先端部から吐出して塗装を行う。
【0050】
硬化剤供給装置1から第2分岐経路34を介して塗装ブース200内の第2分岐経路234に供給された硬化剤は、まず、塗装ロボット210jに対応する位置において、個別分岐路2324jを通して塗装ロボット210jに供給される。
この塗装ロボット210jには、主剤供給装置8から供給経路81を介して塗装ブース200内に至る供給経路281から、塗装ロボット210jに対応する位置における図示しない個別供給路を通して主剤が供給される。
これにより、塗装ロボット210jは、主剤および硬化剤を混合した塗料を先端部から吐出して塗装を行う。
【0051】
第2分岐経路234に供給された硬化剤は、つぎに、塗装ロボット210iに対応する位置において、個別分岐路2324iを通して塗装ロボット210iに供給される。
この塗装ロボット210iには、供給経路281から、塗装ロボット210iに対応する位置において図示しない個別供給路を通して主剤が供給される。
これにより、塗装ロボット210iは、主剤および硬化剤を混合した塗料を先端部から吐出して塗装を行う。
【0052】
第2分岐経路234に供給された硬化剤は、つぎに、塗装ロボット210hに対応する位置において、個別分岐路2324hを通して塗装ロボット210hに供給される。
この塗装ロボット210hには、供給経路281から、塗装ロボット210hに対応する位置において図示しない個別供給路を通して主剤が供給される。
これにより、塗装ロボット210hは、主剤および硬化剤を混合した塗料を先端部から吐出して塗装を行う。
【0053】
第2分岐経路234に供給された硬化剤は、つぎに、塗装ロボット210gに対応する位置において、個別分岐路2324gを通して塗装ロボット210gに供給される。
この塗装ロボット210gには、供給経路281から、塗装ロボット210gに対応する位置において図示しない個別供給路を通して主剤が供給される。
これにより、塗装ロボット210gは、主剤および硬化剤を混合した塗料を先端部から吐出して塗装を行う。
【0054】
第2分岐経路234に供給された硬化剤は、つぎに、塗装ガン220fに対応する位置において、個別分岐路2324fを通して塗装ガン220fに供給される。
この塗装ガン220fには、供給経路281から、塗装ガン220fに対応する位置において図示しない個別供給路を通して主剤が供給される。
これにより、塗装ガン220fは、主剤および硬化剤を混合した塗料を先端部から吐出して塗装を行う。
【0055】
図3を参照して上記したように、硬化剤供給装置1は、塗料供給室100内における主剤供給装置8、ならびに、塗装ブース200内における第1の系統の塗装機(例えば、塗装ロボット210a、210b、210c、210eと塗装ガン220d)、および第2の系統の塗装機(例えば、塗装ロボット210g、210h、210i、210jと塗装ガン220f)とともに、2液混合塗装システムを構成する。
【0056】
次に、例えば、冬の朝のような外気温が低い場合における硬化剤供給装置1の様子について、図3に示す2液混合塗装システムを参照して説明する。
このような外気温が低いときに、塗装ブース200の図示しない空調機を稼動すると、空調バーナーの着火の際に燃焼室内の掃気パージにより外気が取り込まれることで、塗装ブース200内の温度が急激に低下する。この温度低下によって、塗装ブース200内の鋼管(硬化剤の第1分岐経路232および第2分岐経路234、ならびに、主剤の供給経路281および戻り経路282)が収縮する。
【0057】
硬化剤の第1分岐経路232および第2分岐経路234は、デッドエンド型の配管であるため圧力の逃げ場がない。そのため、第1分岐経路232および第2分岐経路234の鋼管が収縮することは、内部圧力の過剰な上昇傾向をもたらす。内部圧力の過剰な上昇傾向は、樹脂配管にかかる。
【0058】
各塗装ロボット210a〜210c、210e、210g〜210jおよび各塗装ガン220d、220fの内部配管と、それらへの個別分岐路2324a〜2324jは、樹脂ホースで構成されている。そのため、硬化剤の内部圧力が、各塗装ロボット210a〜210c、210e、210g〜210jおよび各塗装ガン220d、220fの内部配管または個別分岐路2324a〜2324jの耐圧を越えると、各塗装ロボット210a〜210c、210e、210g〜210jおよび各塗装ガン220d、220fの内部配管または個別分岐路2324a〜2324jは破裂(配管破裂)してしまう。
【0059】
しかし、塗装ブース200内の第1分岐経路232および第2分岐経路234における硬化剤の内部圧力の過剰な上昇傾向は、塗料供給室100内の第1分岐経路32および第2分岐経路34を経て、硬化剤供給装置1の循環経路20に伝わる。そして、循環経路20に設けた背圧バルブ60の設定圧力を上回る。そのため、背圧バルブ60は、その上回るだけの圧力を出口部62から逃がすように硬化剤を出口部62から放出する。背圧バルブ60の出口部62から放出された硬化剤は、第6の管路27を通って入口部12から硬化剤タンク10に導入される。
【0060】
そのため、塗装ブース200内の温度が急激に低下するのに起因して鋼管が収縮することでもたらされる分岐経路232、234、および分岐経路30、ならびに循環経路20の内部圧力の過剰な上昇傾向は、背圧バルブ60を通して硬化剤タンク10に逃がされる。これにより、内部圧力の過剰な上昇が実際には発生しない。したがって、塗装ブース200における各塗装ロボット210a〜210c、210e、210g〜210jおよび各塗装ガン220d、220fの内部配管または個別分岐路2324a〜2324j、すなわち樹脂製配管(ホース)に、過剰な内部圧力がかかることはない。その結果、樹脂製配管(ホース)が過剰な内部圧力により破裂する配管破裂については、そのおそれのないことが明らかである。
【0061】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)塗装ブース200への分岐経路30を、両端部が硬化剤タンク10に連結される循環経路20の途中に設けられる分岐部から分岐させた。そのため、分岐経路30の内圧が過剰に上昇した場合、その内圧を硬化剤タンク10に逃がすことができる。これにより、例えば低温時のような周囲環境の変動があっても、配管破裂が起きることを未然に防止することができる。
【0062】
(2)循環経路20の分岐部よりも下流側に、硬化剤の流量を規制する背圧バルブ60を配置した。そのため、背圧バルブ60が、これより上流側の硬化剤の圧力変化に応じて硬化剤を下流側へ流すことにより、背圧バルブ60よりも上流側の硬化剤の圧力を実質的に一定に保つことができる。これにより、分岐経路30からの硬化剤の供給圧力を実質的に一定に保つことができる。
【0063】
(3)循環経路20の両端部をいずれも硬化剤タンク10の底部に連結した。そのため、硬化剤タンク10をサージタンクとして、内部に収容された硬化剤とともに利用することができる。これにより、ポンプ40で発生する硬化剤の脈動を軽減することができる。
【0064】
(4)上記(2)および(3)から、塗装ブース200に設置された塗装機(塗装ロボットまたは塗装ガン)が必要とする硬化剤の供給圧力と、硬化剤の脈動の吸収効率とを、任意に設定することができる。
【0065】
(5)上記(1)〜(4)の効果を、例えば高価な高圧配管や専用の機器または特別の操作を必要としないで実現することができる。
【0066】
なお、上記実施形態では、液体給装置としての硬化剤供給装置について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、硬化剤以外の適宜の液体を用いることにより、硬化剤供給装置以外の液体給装置を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…硬化剤供給装置(液体供給装置)
10…硬化剤タンク(液体タンク)
20…循環経路
30…分岐経路
40…ポンプ
60…背圧バルブ(流量規制バルブ)
200…塗装ブース(供給先)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体タンクから供給先へ液体を供給する液体供給装置であって、
両端部が前記液体タンクに連結される循環経路と、
前記循環経路の途中に設けられる分岐部から分岐して前記供給先に至る分岐経路と、
前記循環経路の前記分岐部よりも上流側に配置され、前記液体タンクから導入される液体を所要の圧力で送出するポンプと、
前記循環経路の前記分岐部よりも下流側に配置され、液体の流量を規制する流量規制バルブと、
を備えることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記液体は塗料を硬化させる硬化剤であることを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記流量規制バルブが背圧バルブであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記循環経路の両端部がいずれも前記液体タンクの底部に連結されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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