説明

液体充填機

【課題】充填される液体の周囲への飛散を防ぐことができると共に、充填速度を落すことなく高精度の充填量を得ることができる液体充填機を提供する。
【解決手段】充填用液体を蓄えたホッパー1から充填ノズル6まで、液体を導く液通路2を設け、該液通路2の一定区間に可撓性チューブ4を設け、前記可撓性チューブ4を押圧する移動可能な押圧部材5を設けた液体充填機において、前記押圧部材5を横一列に複数設け、前記可撓性チューブ4を前記押圧部材5の直下に設け、前記可撓性チューブ4から前記充填ノズル6までの流通路2を少なくとも1ヵ所の昇降区間7を形成した屈曲通路として設けてあり、前記押圧部材5により前記可撓性チューブ4を水平面上で押圧し、可撓性チューブ4内の液体の流量を複数段階にわたり制御することを特徴とする液体充填機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体充填機に関し、詳しくは液体をアンプル、壜等の容器に充填する液体充填機の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体を容器に充填する技術として、例えば容器に充填すべき液体を蓄えたタンクから充填針(ノズル)に導管を通して液体を導き、該導管途中に設けた開閉弁を開くことによって液体の圧力で液体を容器内に注入する液体の圧力注入方法はよく知られている。その際、前記開閉弁を開くことにより液体の充填を開始し、その後に該開閉弁上流の液体圧力を測定して、あらかじめ定めている圧力−充填時間関数より測定圧力に応じた充填時間を演算器で演算し、その演算結果による時間のあいだ前記開閉弁を開くことで液体を充填する方法が、特許文献1(特公平1−46392号公報)に記載されている。
【0003】
またその後、前記特許文献1記載の技術は、開閉弁の開閉を1つの押枠(開閉弁)をエアシリンダの作動により前進、後退させて行っているため、押枠を前進させて閉状態にしても充填する液の粘度が低い場合、液垂れが生じるという問題が発生することが判明し、これを解決する技術として、液垂れの心配のない液体充填機が特許文献2(特許第3454875号公報)で提案されている。
この特許文献2の液体充填機は、前記押枠(押圧部材)を複数設け、充填時に押圧部材により一定区間に液通路として配設した可撓性チューブを複数段階で押圧して液流量を制御すると共に、充填停止時に、下流側の押圧部材の少なくとも1つを前進位置から後退位置へ移動させることで、可撓性チューブ内の容積を増加させ、これによりサックバック現象を生じさせて、ノズル内の充填液を引き上げることで、液垂れを防止できるようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特公平1−46392号公報
【特許文献2】特許第3454875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献2記載の液体充填機は、液通路として配設した可撓性チューブをノズルの直上方で押圧する構造としてあり、押圧部材として単純に前進と後進を繰り返すエアシリンダを使用するのものである。したがって、たとえば全量充填時では可撓性チューブは全て押圧解除され全開にされるが、その際、ノズル出口に直接かつ急激に圧力がかかるためか、充填液の一部がノズル先端から四方へ飛散する現象が生じ、充填機周辺を汚すのみならず、充填量を微妙に調整できないという問題がある。
この問題を克服するために、ノズルの先端部に網目のストレーナ等を嵌入しておく技術を用いることも可能であるが、そのようにすれば、充填される液体がドレッシング等のように液体中にスパイスや粒状の調味料等を含むものである場合は、網目に目詰りが生じるためにこれら液体の充填機として不適なものとなる。
また、全開された可撓性チューブからの液体圧力を減少させるために押圧部材を半開状態にすると液の流量が落ち、四方への液の飛散は多少は減少できるものの充填スピードが落ちることになり、生産効率が悪くなるという別の問題が発生する。
【0006】
本発明は以上のことを勘案してなされたもので、その目的は、液垂れ防止は勿論のこと、充填中の充填される液体の周囲への飛散を防ぐことができると共に、充填速度を落すことなく高精度の充填量を得ることができる液体充填機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の液体充填機は、充填用液体を蓄えたホッパーから充填ノズルまで、液体を導く液通路を設け、該液通路の一定区間に可撓性チューブを設け、前記可撓性チューブを押圧する移動可能な押圧部材を設けた液体充填機において、前記押圧部材を横一列に複数設け、前記可撓性チューブを前記押圧部材の直下に設け、前記可撓性チューブから前記充填ノズルまでの流通路を少なくとも1ヵ所の昇降区間を形成した屈曲通路として設けてあり、前記押圧部材により前記可撓性チューブを水平面上で押圧し、可撓性チューブ内の液体の流量を複数段階にわたり制御することを特徴とする。
【0008】
このような構成により、ホッパーから液通路に導かれた液体は、前記屈曲通路を通ることで充填ノズルから吐出される時には整流状態で放出されることになり、周辺への飛散が無くなるのでよい。
この理由は定かでないが、屈曲通路を通過する間に、液体は屈曲通路の内壁からの摩擦抵抗等の影響を受け、また、ホッパーからの液体圧力を直接受けることもなく緩和されるので、整流化されることによるものと推測される。
【0009】
この際、前記押圧部材を電気式サーボ機構で用いられるモータを備えたサーボシリンダとしてあると、シリンダの前進と後退をエアシリンダに比べて夫々を小刻みに精度よく複数回作動できるものとなり、充填量の微量調整も合せて可能にできるのでさらによい。
【0010】
また、前記充填ノズルの液出口を前記水平面と同じかより高い位置に設けておくと、サイホン効果が生じ難いからか、前記の飛散防止や充填量の微量調整においてさらに安定した結果が得られるのでよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上の構成を採用した結果、次の効果を得ることができる。
すなわち、複数の押圧部材を横一列に設け、この押圧部材の直下に設けた可撓性チューブと充填ノズルまでの間の流通路に、少なくとも1ヵ所の昇降区間を形成した屈曲通路としてあることにより、充填用液体を整流状態とし、ノズルの液出口から周辺に飛散させることなく充填できる。
また、押圧部材として電動式のサーボシリンダを用いることで、充填量の微量調整を、精度よく容易に行うことができる。
さらに、充填ノズルの液出口を、可撓性チューブを押圧する水平面と同じかより高い位置に設けておくことにより、より安定的に、充填用液体の液出口における飛散を防ぐことができ、充填量の微量調整が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の液体充填機を、図面に示す実施の形態を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明液体充填機の一実施例であり、全体像を説明するための概略正面図である。また、図2は本発明実施例に係る押圧部材(サーボシリンダ)の上流側を全閉にした状態を示す一部分の断面図であり、図3は従来の押圧部材としてエアシリンダを用いた液体充填機を示す概略正面図である。
【0014】
図1において、1は充填すべき液体を蓄えたホッパーであり、該ホッパー1の液体を導く液通路2を介して、流量センサ(検出器)3と、所定区間に可撓性チューブ4を設けてある。この際、該可撓性チューブ4は水平台8上に支持されると共に横一列に配設した複数(本実施例では2基)の押圧部材(サーボシリンダ)5,5によって管路の開閉を制御され得る構造としてある。
また、可撓性チューブ4から充填ノズル6までの液通路2は少なくとも1ヵ所の昇降区間7を形成した屈曲通路としてある。さらに、充填ノズル6の液出口6aは、水平台8よりも数mm高い位置に設けてある。
尚、本実施例においては、液通路2の屈曲通路の端部に充填ノズル6を装着した構造としてあるが、屈曲通路と充填ノズル6とを一体化した構造にすることも可能である。
【0015】
ここで可撓性チューブの管路の開閉を行う複数の押圧部材5,5は、流量センサ3からの情報信号を制御装置(増幅器)9を介して制御される。本実施例の液体充填装置は、このような複数の押圧部材5,5と昇降区間7を形成した屈曲回路を介して充填ノズル6から液体を容器10に充填するものである。
【0016】
本実施例では、液体充填機の押圧部材5,5として、押圧ポジションを16段階に切換え可能なサーボシリンダを2基備えたものとして構成する。これにより、液通路2の開閉口径は任意の複数段階に調整され、液体の流量を望ましい状態になるよう多段にわたり切換えて制御可能とされている。これらの制御は、一般にシーケンサーにより行われる。
これにより、従来の押圧部材としてエアシリンダを複数に採用した装置に比べて充填量の調整を精度よく行うことができ、容器への充填量のばらつきを確実に防ぐことが可能である。
【0017】
本実施例の液体充填機に於いては、ホッパー1から充填ノズル6まで流動する液体は、液通路2に設けた可撓性チューブ4の区間で押圧部材5によって流量を精密に制御される。また、液通路2の昇降区間7では、内部で流動する液体が、液通路管内壁により摩擦抵抗による干渉を受け、その流れを整流化されることで、充填ノズル6の液出口6aから周辺に飛散することなく容器10内へ放出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明液体充填機の一実施例であり、全体像を説明するための概略正面図。
【図2】図1の液体充填機の押圧部材(サーボシリンダ)の上流側を全閉にした状態を示す部分断面図。
【図3】押圧部材としてエアシリンダを用いた従来の液体充填機を示す概略正面図。
【符号の説明】
【0019】
1 ホッパー
2 液通路
3 流量センサ(検出器)
4 可撓性チューブ
5 押圧部材
6 充填ノズル
6a 液出口
7 昇降区間
8 水平台
9 制御装置(増幅器)
10 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填用液体を蓄えたホッパーから充填ノズルまで、液体を導く液通路を設け、該液通路の一定区間に可撓性チューブを設け、前記可撓性チューブを押圧する移動可能な押圧部材を設けた液体充填機において、前記押圧部材を横一列に複数設け、前記可撓性チューブを前記押圧部材の直下に設け、前記可撓性チューブから前記充填ノズルまでの流通路を少なくとも1ヵ所の昇降区間を形成した屈曲通路として設けてあり、前記押圧部材により前記可撓性チューブを水平面上で押圧し、可撓性チューブ内の液体の流量を複数段階にわたり制御することを特徴とする液体充填機。
【請求項2】
前記押圧部材はサーボシリンダとしてある請求項1記載の液体充填機。
【請求項3】
前記充填ノズルの液出口は前記水平面と同じかより高い位置に設けてある請求項1記載の液体充填機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−234633(P2009−234633A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83876(P2008−83876)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】