説明

液体分取具および液体分取装置

【課題】簡易な構成で所望の量の液体を分取できる液体分取具および液体分取装置を提供すること。
【解決手段】液体12中に埋没される部分に貫通孔101〜103を設け、貫通孔101〜103のうち少なくとも2つの貫通孔は、液体12を分取可能な最小深さが異なる位置にそれぞれ配置される液体分取具10と、液体分取具10を昇降させ、液体12に貫通孔101〜103を埋没させるモータ4、ボールネジ6、リード9と、液体分取具10が液体12に埋没する深さを可変するとともに貫通孔101〜103が保持する液体12の量を可変に制御する制御部2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微少な所望量の液体を分取する液体分取具および液体分取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体に関する分析を行うため、nL〜μL単位の微量の液体を保持する液体分取具を備えた液体分取装置が知られている。この液体分取装置では、たとえば、微少かつ親水性を有する空間を備えた液体分取具を液体に浸漬させ、毛細管現象を利用してこの空間に液体を保持するようにしている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−61310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に液体分取装置が備える液体分取具は、液体を保持する容積が予め決められているため、分取量を可変できず、この分取量を可変しようとする場合、可変の都度、所望容量を保持する液体分取具に交換する必要があり、液体の分取に多大な時間と労力を要するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で、短時間にかつ労力を要せずに微少で可変の所望量の液体を分取できる液体分取具および液体分取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる液体分取具は、液体に浸して前記液体の一部を保持する液体保持部を有する液体分取具であって、前記液体中に浸漬される部分に前記液体保持部を複数設け、少なくとも2つの前記液体保持部は、前記浸漬される部分の前記液体を分取可能な最小深さが異なる位置にそれぞれ配置されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2にかかる液体分取具は、上記の発明において、前記液体保持部は、貫通孔であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3にかかる液体分取具は、上記の発明において、前記液体保持部は、前記液体の液面に対して開口部を有するスリットであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4にかかる液体分取具は、上記の発明において、液体に浸して前記液体の一部を分取する液体保持部を有する液体分取具であって、前記液体保持部は、スリット状の溝であり、この溝の深さとこの溝の幅との比が1近傍であり、前記液体に浸漬される前記スリット状の溝の長さに比例した容量の前記液体を保持することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5にかかる液体分取具は、上記の発明において、液体に浸して前記液体の一部を分取する液体保持部を有する液体分取具であって、前記液体保持部は、前記液体の液面に対して開口部を有するスリットであり、前記スリットを形成する対向する壁面の一方または両方を前記スリットの幅方向に可動し、前記スリットが保持する前記液体の容量を可変することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6にかかる液体分取具は、上記の発明において、液体に浸して前記液体の一部を分取する液体保持部を有する液体分取具であって、前記液体保持部は、毛細管現象が生じない程度の間隔をあけて対向する壁面によって形成されるスリットまたは溝であり、前記スリットまたは溝の前記壁面の対向する位置に対向電極が前記スリットの長手方向に沿って複数配置され、前記対向電極に所定の値の電圧を印加して前記対向電極の部位を親水性にする位置を可変し、前記スリットが保持する前記液体の容量を可変することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7にかかる液体分取装置は、上記の発明において、請求項1〜3のいずれか一つに記載の液体分取具と、前記液体分取具を昇降させ、前記液体に前記液体保持部を浸漬させる昇降手段と、前記昇降手段の昇降を可変に制御し、前記液体分取具が前記液体に浸漬する深さを可変するとともに前記液体保持部が保持する前記液体の容量を可変に制御する分取量制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項8にかかる液体分取装置は、上記の発明において、分取する液体の液面に対して開口部を有するスリットを備え、前記スリットを形成する対向する壁面の一方または両方を前記スリットの幅方向に可動し、前記スリットが保持する前記液体の容量を可変する液体分取具と、前記液体分取具を昇降させ、前記液体に前記スリットを浸漬させる昇降手段と、前記液体分取具が備えるスリットを形成する対向する前記壁面の間隔を可変し、前記スリットが形成する空間の容積を可変する容積可変手段と、前記昇降手段によって前記液体分取具を下降させ、前記液体に前記スリットを浸漬させた後、前記容積可変手段によって前記スリットの空間の容積を可変し、前記液体保持部が保持する前記液体の容量を可変に制御する分取量制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項9にかかる液体分取装置は、上記の発明において、毛細管現象が生じない程度の間隔をあけて対向する壁面によって形成されるスリットまたは溝を有し、前記スリットまたは溝の前記壁面の対向する位置に対向電極が前記スリットの長手方向に沿って複数配置された液体分取具と、前記液体分取具を昇降させ、前記液体に前記スリットを浸漬させる昇降手段と、前記対向電極に所定の値の電圧を印加する電圧印加手段と、前記昇降手段によって前記液体分取具を下降させ、前記液体に前記スリットを浸漬させた後、前記電圧印加手段によって前記対向電極に所定の値の電圧を印加して前記対向電極の部位を親水性にする位置を可変し、前記液体保持部が保持する前記液体の容量を可変に制御する分取量制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる液体分取具および液体分取装置は、液体に浸漬される部分に液体保持部を複数設け、少なくとも2つの液体保持部を浸漬される部分の液体を分取可能な最小深さが異なる位置にそれぞれ配置するようにしているので、微少な所望量の液体を簡易に分取することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる液体分取具および液体分取装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかる液体分取装置1の概要構成を示すブロック図である。図1に示すように、この液体分取装置1は、分取される液体12を収容する容器11と、液体12に浸漬させて液体12を保持して分取する液体分取具10と、液体分取具10を保持するリード9と、回転運動を昇降運動に変換し、リード9を昇降させるボールネジ6と、リード9の昇降運動をガイドするガイド7と、ガイド7およびモータ4を固定配置するモータ基部5と、モータ基部5を固定するアーム8と、モータ基部5に固定され、ボールネジ6を回動させるモータ4と、モータ4を駆動するモータ駆動部3と、モータ駆動部3を制御する制御部2とを有する。なお、液体分取具10には、分取する液体12を保持するための貫通孔101〜103を有する。
【0018】
図2は、液体分取具10の外観を示す斜視図である。図2に示すように、この液体分取具10は、先端がテーパ状に形成された板部材であり、この先端近傍に、この板部材の長手方向に沿った貫通孔101〜103が配置される。液体分取具10の先端がテーパ状に形成されているため、液体12からこの液体分主具10を上昇させた際、液切れを良くし、この液体分取具10に余分かつ不安定な量の液体12が付着することを防止している。また、貫通孔101〜103は同一形状であり、この貫通孔101〜103によって形成される空間の容積L0は等しく、親水性を有する。なお、貫通孔101〜103の形状は同一でなくてもよく、これによって形成される空間の容積も同じでなくてもよい。ただし、形成される各空間の容積は既知であることが必要である。
【0019】
つぎに、この液体分取装置1による分取動作について説明する。図3は、液体分取具10によって液体12を分取する動作を示す模式図である。制御部2に、液体12の分取量2L0が入力されると、図3の左に示すように、制御部2は、モータ駆動部3を介してモータ4を回転させ、貫通孔102,103が液体12に浸漬するまで液体分取具10を下降させる。貫通孔102,103が液体12に浸漬すると、貫通孔102,103の孔径は極めて小さいため、毛細管現象によって、この貫通孔102,103内に液体12が満たされる。その後、制御部2は、モータ駆動部3を介してモータ4を回転させ、図3の右に示すように、液体分取具10を上昇させ、容積2L0の液体12を分取する。
【0020】
また、たとえば、制御部2に液体12の分取量L0が入力された場合、制御部2は、貫通孔103のみを液体12中に浸漬させて所望の分取量L0の液体12を分取する。同様に、制御部2に液体12の分取量3L0が入力された場合、制御部2は、貫通孔101〜103を液体12中に浸漬させることによって、所望の分取量3L0の液体12を分取する。すなわち、長手方向に配置された貫通孔101〜103は、液体分取具10が下降するにしたがって貫通孔103から順次、液体12に浸されるが、この際の液体分取具10の先端までの深さである最小深さを制御することによって、液体12を保持する貫通孔101〜103の数を決定することができ、これによって液体12を保持する貫通孔数に対応した分取量を得ることができる。
【0021】
この実施の形態1では、制御部2が貫通孔101〜103を有する液体分取具10の降下による液体分取具10の液体12に浸される深さを制御することによって、所望量の液体12を分取することができる。なお、この実施の形態1では、液体分取具10は、3つの貫通孔101〜103を有していたが、所望の分取量に対応して貫通孔の数、形状、容積を可変するようにしてもよい。ただし、これら貫通孔の数、形状、容積は、既知であることが必要である。さらに、液体分取具10は、板部材であったが、円柱部材等の他の形状の部材であってもよい。
【0022】
つぎに、この発明の実施の形態1の変形例について説明する。上述した実施の形態1では、液体分取具10が貫通孔101〜103を備えていたが、この変形例による液体分取具は、液体の液面からの高さが異なる開口部を有したスリットを備えている。
【0023】
図4は、この実施の形態1の変形例にかかる液体分取具13の概要を示す断面図である。図4に示すように、この液体分取具13は、その先端近傍に、スリット131〜133を有する。各スリット131〜133の幅および長さは同一であり、各スリット131〜133が形成する空間の容量L1も同一である。ただし、液体分取具13の最先端位置に対する各スリット131〜133の先端開口部の位置がそれぞれ異なっている。なお、各スリット131〜133の幅は、毛細管現象が生じる程度の幅である。
【0024】
図5は、この液体分取具13の分取動作を示す模式図である。図5の左に示すように、容量2L1を分取する場合、スリット133の先端開口部が液体12の液面に浸漬するまで液体分取具13を下降させる。スリット132,133の先端開口部が液体12に浸漬すると、毛細管現象によってスリット132,133内には、液体12が満ちる。その後、図5の右に示すように、この液体分取具13を上昇させると、スリット132,133は、それぞれ容量L1の液体12を保持し、液体分取具13は、容量2L1の液体12を分取できる。また、容量L1を分取する場合は、スリット132の先端開口部のみを液体12に浸漬させて分取すればよい。さらに、容量3L1を分取する場合は、スリット131の先端開口部まで液体12に浸漬させて分取すればよい。このように、液体分取具13が液体12に浸される深さを調整することのみで、所望量の液体12を分取することができる。
【0025】
この変形例では、液体分取具13が、最先端位置からの高さが異なる先端開口部をもつスリット131〜133を有し、液体分取具13の下降させる深さを制御することによって、所望量の液体12を分取することができる。なお、この変形例では、液体分取具13が3つのスリッ131〜133を有していたが、所望の分取量に応じてスリットの数、幅、長さ、スリット内の空間の容量を可変するようにしてもよい。ただし、各スリットの数、幅、長さ、スリット内の空間の容量は既知であることが必要である。
【0026】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1および変形例では、液体分取具が複数の貫通孔あるいは複数のスリットを有し、これらの貫通孔あるいはスリットに液体を浸漬させ、段階的に所望の容量の液体を分取していたが、この実施の形態2では、液体分取具がスリット状の溝を有し、このスリットを液体に浸漬させ、連続的な値の所望量の液体を分取できるようにしている。
【0027】
図6は、この実施の形態2にかかる液体分取具の外観を示す斜視図である。また、図7は、図6に示した液体分取具の正面図であり、図8は、図6に示した液体分取具の側面図である。図6〜図8に示すように、液体分取具14は、先端近傍に、液体分取具14の長手方向の軸に沿って形成されるスリット状溝141を有する。
【0028】
ここで、スリット状溝141の幅を「a」とし、深さを「b」とし、液体分取具14の厚さを「c」とすると、幅aと深さbとの比であるアスペクト比(a/b)の値は、1近傍でに設定される。また、このスリット状溝141が形成する溝空間の容量は、L3である。
【0029】
図9は、この液体分取具14を用いた分取動作を示す模式図である。図9の左に示すように、たとえば、容量(1/2)L3の液体12を分取する場合、液体分取具14を下降させ、スリット状溝141の長さの半分を液体12に浸漬させる。アスペクト比(a/b)が1近傍である場合、毛細管現象は生ぜず、スリット状溝141が浸漬した部分にのみ液体12が満たされる。その後、図9の右に示すように、この液体分取具14を上昇させると、スリット状溝141は、満たされた容量(1/2)L3の液体12を表面張力によって保持し、液体分取具14は、容量(1/2)L3の液体12を分取することができる。また、たとえば、容量(1/3)L3の液体12を分取する場合、スリット状溝141の長さの1/3を液体12に浸漬させることによって分取することができる。このようにして、連続的な微少の所望量の液体12を分取することができる。
【0030】
図10は、このスリット状溝141のアスペクト比(a/b)が1を大きく超えた場合の分取動作を示す模式図である。図10の左に示すように、アスペクト比(a/b)が1を大きく超えると、スリット状溝141に毛細管現象が生じ、液体12にスリット状溝141を浸漬させた場合、浸漬した長さに無関係に、スリット状溝141全体に液体12が満たされる。この結果、図10の右に示すように、この液体分取具14を上昇させると、スリット状溝141全体に液体12が保持され、容積L3の液体12を常に分取することになる。
【0031】
一方、図11は、このスリット状溝141のアスペクト比(a/b)が1に比して大きく下まわる場合の分取動作を示す模式図である。図11の左に示すように、スリット状溝141を液体12に浸漬させた場合、浸漬した部分には、液体12が満たされるが、図11の右に示すように、液体分取具14を上昇させると、スリット状溝141に満たされた液体12の重力が液体12の表面張力を超えてしまい、このスリット状溝141には、液体12を保持することができず、分取できない。したがって、所望量の液体12を分取するには、アスペクト比(a/b)の値を1近傍に設定することが好ましい。
【0032】
この実施の形態2では、液体分取具14に、アスペクト比(a/b)の値が1近傍のスリット状溝141を形成することによって、連続的に可変な所望の容量の液体12の分取ができる。また、液体分取具14の厚さcがスリット状溝141の深さb未満である場合、つまり、スリット状溝141が貫通したスリットである場合、アスペクト比(a/c)が1近傍となるように設定してもよい。さらに、この実施の形態2では、液体分取具14は、1つのスリット状溝141を設けるようにしていたが、所望の分取量に応じて2以上のスリット状溝を設けるようにしてもよい。
【0033】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。実施の形態1,2では、所望の分取量に応じて液体分取具を液体に浸漬させる深さを可変していたが、この実施の形態3では、所望の分取量に応じて液体を保持するスリットの幅を連続的に可変するようにしている。
【0034】
図12は、この実施の形態3にかかる液体分取装置100の概要構成を示すブロック図である。図12に示すように、この液体分取装置100は、液体分取具10に替えて、固定部19および可動部18を設け、この固定部19と可動部18とによって幅が可変となるスリットを形成するようにしている。このスリットの幅を可変にするために、モータ軸20を介して可動部18を移動させるスリット可動モータ17、このスリット可動モータ17を駆動するスリット駆動部16、およびスリット駆動部16の駆動制御をさらに行う制御部15を有する。その他の構成は、実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0035】
固定部19、可動部18、およびスリット可動モータ17は、リード9に保持される。可動部18は、スリット可動モータ17の駆動によって、リード9の水平面に沿って移動し、この可動部18の移動によって、固定部19と可動部18との間に形成されるスリットの幅が変化する。
【0036】
図13は、可動部18および固定部19近傍の詳細構成を示す断面図である。図13に示すように、可動部18と固定部19とによって形成されるスリット面の上部と、このスリット面を除く可動部18および固定部19の表面とに、撥水コート21がコーティングされる。また、可動部18と固定部19とによって形成されるスリット面の下部には、親水コート22がコーティングされている。このスリット面の上部にコーティングされた親水コート22を設けることによって、可動部18と固定部19との間のスリット幅が狭い状態で液体12に浸漬した場合に毛細管現象が生じても、液体12は、親水コート22がコーティングされた部分のみに保持される。
【0037】
つぎに、固定部19および可動部18を用いた分取動作について説明する。図14は、固定部19と可動部18とによる分取動作を示す模式図である。図14の左に示すように、毛細管現象が生じる程度に固定部19と可動部18とによって形成されるスリットの幅を保ちつつ、固定部19および可動部18とを下降させて液体12に浸漬させると、液体12は、親水コート22がコーティングされた部位まで上昇する。その後、図14の中央に示すように、可動部18を移動させて、固定部19との間に形成されるスリット幅を広げ、スリット幅と親水コート22面とによって形成される空間が所望の分取容量となるようにする。固定部19および可動部18が浸漬された状態で、可動部18が移動しても、固定部19と可動部18との間に形成されたスリットには毛細管力が生じ、液体12は、親水コート22の部位まで保持される。その後、図13の右に示すように、固定部19と可動部18とを上昇させると、液体12は、固定部19と可動部18との間に形成されたスリットの親水コート22面によって保持され、所望容量の液体12が分取される。すなわち、固定部19と可動部18とを液体12に浸漬させ、一旦、液体12を固定部19と可動部18との間のスリット幅を保持させた後、このスリット幅を可変させることによって、所望容量の液体12を分取するようにしている。
【0038】
なお、この実施の形態3では、可動部18を移動させるようにしていたが、固定部19側も移動させるようにしてもよい。
【0039】
この実施の形態3では、固定部19と可動部18とを液体12に浸漬し、その後、可動部18を移動させ、固定部19と可動部18と間に形成されるスリット空間を可変して、連続的な所望容量の液体12を分取するようようにしている。
【0040】
つぎに、この実施の形態3の変形例について説明する。この実施の形態3の変形例では、さらにガイドを設け、可動部18の移動をスムースに行うようにしている。
【0041】
図15は、この発明の実施の形態3の変形例にかかる液体分取具の構成を示す断面図である。図15に示すように、ガイド18Aは、可動部18の外縁形状に沿った内部形状を有し、可動部18の外縁を覆うようにしている。可動部18が移動する場合、このガイド18Aとともに移動するため、可動部18の水平方向が保たれ、かつ可動部18の移動がスムーズになることから、可動部18先端側のブレを少なくすることができる。この結果、精度の高い分取を行うことができる。なお、この変形例では、ガイド18Aが可動部18側に取付けられていたが、固定部19も可動できるようにした場合、同様のガイドを設けるようにするとよい。
【0042】
(実施の形態4)
つぎに、この発明の実施の形態4について説明する。実施の形態1〜3では、受動的な毛細管現象を利用して所望量の液体を保持するようにしていたが、この実施の形態4では、エレクトロウェッティング法による親水性表面の形成によって能動的に所望量の液体を保持するようにしている。
【0043】
図16は、この実施の形態4にかかる液体分取装置の概要構成を示すブロック図である。図16に示すように、この液体分取装置200は、実施の形態1で示した液体分取装置1の液体分取具10に替えて液体分取具26を設け、この液体分取具26の親水性表面を形成する電極に電圧を印加する電極電源部25と、制御部23のもとにこの電極電源部25の駆動を制御するスイッチ駆動部24とをさらに設けている。その他の構成は、実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0044】
図17は、図16に示した液体分取具26の詳細構成を示す斜視図であり、図18は、液体分取具26の正面図であり、図19は、液体分取具26の側面図である。図17〜図19において、液体分取具26は、スリット状で断面が矩形の貫通孔27を有し、貫通孔27の長手(長辺)方向の一方の側壁面に対向電極261a〜264aを設けるとともに、他方の側壁面に対向電極261b〜264bを設け、対向電極261a〜264aと対向電極261b〜264bとは、それぞれ対向配置される。また、電極261a〜265aと電極261b〜265bとは、それぞれ同一の面形状である。貫通孔27の幅は、毛細管現象が発生しない程度に広く形成される。
【0045】
一方、図20に示すように、電極電源部25は、4つのスイッチSW1〜SW4と4つの直流電源251〜254とを有する。対向電極261a〜264aとスイッチSW1〜SW4とはそれぞれ配線265a〜268aによって接続され、対向電極261b〜264bと直流電源251〜254とはそれぞれ配線265b〜268bによって接続される。スイッチSW1〜SW4と直流電源251〜254とがそれぞれ接続されることによって、スイッチSW1〜SW4とがオン状態となったときに、それぞれ直流電源251〜254からそれぞれ対向電極261b〜264b,261a〜264a間に電圧が印加され、対向電極261b〜264b,261a〜264aの対の表面電荷が増大する。各対向電極261b〜264b,261a〜264a間の表面電荷が増大すると、各対向電極261b〜264b,261a〜264aの対電極は親水性を増し、毛細管現象によって液体12を吸引する。したがって、制御部23によるスリット制御部24の駆動制御によって、対向電極261b〜264b,261a〜264a間の選択的なスイッチングを行って、液体12を吸引する長さを規定することができ、精度の高い分注を行うことができる。なお、対向電極261b〜264b,261a〜264aは、液体12注に侵入しないため、貫通孔27の各側壁面の表面に設けてもよい。
【0046】
ここで、液体分取具26を用いた具体的な分取動作について説明する。まず、貫通孔27内の容積がL4であるとする。制御部23は、液体12の分取量として(1/2)L4が入力されると、スイッチ駆動部24を介してスイッチSW1,SW2をオン状態にし、液体分取具26を下降させて液体12に浸漬させる。ここで、スイッチSW1,SW2がオン状態になっているため、対向電極264a,264b間と対向電極263a,263b間とに電圧が印加され、対向電極263a,263b間の部位までが親水性になり、液体12がこの対向電極263a,263bの部位まで吸い上げられる。貫通孔27は、毛細管現象を生じないが、親水性を有する部分のみ、毛細管現象が生じ、対向電極263a,263bの部位まで、液体12が保持される。この結果、(1/2)L4の液体12を分取することができる。
【0047】
なお、この実施の形態4では、貫通孔27内を4つの対向電極によって分割し、4段階の分取量を精度良く分取していたが、これに限らず、さらに対向電極対の数を増減させてもよい。特に、対向電極数を増やすことによってさらに精度の高い分取を行うことができる。また、各対向電極の形状は、矩形に限らず、任意の形状であってもよく、対向電極の面積なども同様に任意の形状としてもよい。さらに、上述した実施の形態4では、矩形の貫通孔27としたが、これに替えて、スリット状溝141と同様な溝としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる液体分取装置の概要構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1にかかる液体分取具の外観を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1にかかる液体分取具による分取動作を示す模式図である。
【図4】この発明の実施の形態1の変形例にかかる液体分取具を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1の変形例にかかる液体分取具による分取動作を示す模式図である。
【図6】この発明の実施の形態2にかかる液体分取具の外観を示す斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態2にかかる液体分取具の正面図である。
【図8】この発明の実施の形態2にかかる液体分取具の側面図である。
【図9】この発明の実施の形態2にかかる液体分取具による分取動作を示す模式図である。
【図10】このアスペクト比が1を超えるスリット状溝を有する液体分取具による分取動作を示す模式図である。
【図11】このアスペクト比が1未満のスリット状溝を有する液体分取具による分取動作を示す模式図である。
【図12】この発明の実施の形態3にかかる液体分取装置の概要構成を示すブロック図である。
【図13】この発明の実施の形態3にかかる液体分取具の詳細を示す断面図である。
【図14】この発明の実施の形態3にかかる液体分取具による分取動作を示す模式図である。
【図15】この発明の実施の形態3の変形例にかかる液体分取具の詳細を示す断面図である。
【図16】この発明の実施の形態4にかかる液体分取装置の概要構成を示すブロック図である。
【図17】この発明の実施の形態4にかかる液体分取具の外観を示す斜視図である。
【図18】この発明の実施の形態4にかかる液体分取具の正面図である。
【図19】この発明の実施の形態4にかかる液体分取具の側面図である。
【図20】この発明の実施の形態4にかかる電極電源部の概要構成を示すブロック図である。
【図21】この発明の実施の形態4にかかる液体分取具による分取動作を示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1,100,200 液体分取装置
2,15,23 制御部
3 モータ駆動部
4 モータ
5 モータ基部
6 ボールネジ
7,18A ガイド
8 アーム
9 リード
10,13,14,26 液体分取具
11 容器
12 液体
16 スリット駆動部
17 スリット可動モータ
18 可動スリット
19 固定スリット
20 モータ軸
21 撥水コート
22 親水コート
24 スイッチ駆動部
25 電極電源部
27,101〜103 貫通孔
131〜133 スリット
141 スリット状溝
251〜254 直流電源
261a〜264a,261b〜264b 対向電極
265a〜268a,265b〜268b 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に浸して前記液体の一部を保持する液体保持部を有する液体分取具であって、
前記液体中に浸漬される部分に前記液体保持部を複数設け、少なくとも2つの前記液体保持部は、前記浸漬される部分の前記液体を分取可能な最小深さが異なる位置にそれぞれ配置されることを特徴とする液体分取具。
【請求項2】
前記液体保持部は、貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の液体分取具。
【請求項3】
前記液体保持部は、前記液体の液面に対して開口部を有するスリットであることを特徴とする請求項1に記載の液体分取具。
【請求項4】
液体に浸して前記液体の一部を分取する液体保持部を有する液体分取具であって、
前記液体保持部は、スリット状の溝であり、この溝の深さとこの溝の幅との比が1近傍であり、前記液体に浸漬される前記スリット状の溝の長さに比例した容量の前記液体を保持することを特徴とする液体分取具。
【請求項5】
液体に浸して前記液体の一部を分取する液体保持部を有する液体分取具であって、
前記液体保持部は、前記液体の液面に対して開口部を有するスリットであり、前記スリットを形成する対向する壁面の一方または両方を前記スリットの幅方向に可動し、前記スリットが保持する前記液体の容量を可変することを特徴とする液体分取具。
【請求項6】
液体に浸して前記液体の一部を分取する液体保持部を有する液体分取具であって、
前記液体保持部は、毛細管現象が生じない程度の間隔をあけて対向する壁面によって形成されるスリットまたは溝であり、前記スリットまたは溝の前記壁面の対向する位置に対向電極が前記スリットの長手方向に沿って複数配置され、前記対向電極に所定の値の電圧を印加して前記対向電極の部位を親水性にする位置を可変し、前記スリットまたは溝が保持する前記液体の容量を可変することを特徴とする液体分取具。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の液体分取具と、
前記液体分取具を昇降させ、前記液体に前記液体保持部を浸漬させる昇降手段と、
前記昇降手段の昇降を可変に制御し、前記液体分取具が前記液体に浸漬する深さを可変するとともに前記液体保持部が保持する前記液体の容量を可変に制御する分取量制御手段と、
を備えたことを特徴とする液体分取装置。
【請求項8】
分取する液体の液面に対して開口部を有するスリットを備え、前記スリットを形成する対向する壁面の一方または両方を前記スリットの幅方向に可動し、前記スリットが保持する前記液体の容量を可変する液体分取具と、
前記液体分取具を昇降させ、前記液体に前記スリットを浸漬させる昇降手段と、
前記液体分取具が備えるスリットを形成する対向する前記壁面の間隔を可変し、前記スリットが形成する空間の容積を可変する容積可変手段と、
前記昇降手段によって前記液体分取具を下降させ、前記液体に前記スリットを浸漬させた後、前記容積可変手段によって前記スリットの空間の容積を可変し、前記液体保持部が保持する前記液体の容量を可変に制御する分取量制御手段と、
を備えたことを特徴とする液体分取装置。
【請求項9】
毛細管現象が生じない程度の間隔をあけて対向する壁面によって形成されるスリットまたは溝を有し、前記スリットまたは溝の前記壁面の対向する位置に対向電極が前記スリットの長手方向に沿って複数配置された液体分取具と、
前記液体分取具を昇降させ、前記液体に前記スリットを浸漬させる昇降手段と、
前記対向電極に所定の値の電圧を印加する電圧印加手段と、
前記昇降手段によって前記液体分取具を下降させ、前記液体に前記スリットを浸漬させた後、前記電圧印加手段によって前記対向電極に所定の値の電圧を印加して前記対向電極の部位を親水性にする位置を可変し、前記液体保持部が保持する前記液体の容量を可変に制御する分取量制御手段と、
を備えたことを特徴とする液体分取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−278937(P2007−278937A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107592(P2006−107592)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】