液体分析装置
【課題】試料溶液の微少量化に対応し小型の装置で,散乱光や蛍光を効率よく検出する。
【解決手段】試料溶液を収めた透明な容器と空気との屈折率を考慮し,屈折率の大きな容器側から屈折率の小さな大気側へブリュースタ角度以内で出射する散乱光や蛍光を前方と後方とを別々の回転楕円鏡で集光し,検出器にブリュースタ角より小さな角度で入射させる。
【解決手段】試料溶液を収めた透明な容器と空気との屈折率を考慮し,屈折率の大きな容器側から屈折率の小さな大気側へブリュースタ角度以内で出射する散乱光や蛍光を前方と後方とを別々の回転楕円鏡で集光し,検出器にブリュースタ角より小さな角度で入射させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,試料中に含まれる成分量を検出する分析装置に係わり,微少量の試料を安定に分析することが可能な液体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる成分量を検出する分析装置として,ハロゲンランプ等からの白色光を試料溶液に照射し,試料溶液を透過してきた光を回折格子で分光して必要な波長成分を取り出し,その吸光度を割り出すことで目的の成分量を測定する分光分析装置や,照射光により励起されて発する蛍光量を割り出すことで目的の成分量を測定する蛍光光度計が広く用いられている。
【0003】
これらの分析装置により散乱光や蛍光を測定する場合,まず,分光分析装置により散乱光を測定する場合は,試料溶液に白色光を照射して試料溶液を透過した光を回折格子等で分光し,特定の波長の光量を測定することで散乱により減衰した分を算出し,散乱光量を導き出していた。次に,蛍光分光光度計により蛍光を測定する場合は,ハロゲンランプ等からの白色光を回折格子で分光して特定の波長の光を励起光として試料に照射し,それによって励起された蛍光を励起光の照射方向とは別の角度から検出し,蛍光波長の分析精度を向上する場合は蛍光を回折格子で分光するなどして測定していた。また,蛍光測定の場合は,蛍光を発する時間を考慮し,照射光の照射タイミングと蛍光の検出タイミングとをチョッパ等で切り替え,蛍光のみを検出する方法もある。
【0004】
これらの分析装置においては,プラスチックやガラス製の容器内に試料溶液を分注し,試料溶液に光を照射して成分量を測定することが多い。また,使用する試料溶液も数十から数百マイクロリットルと多く,ハロゲンランプ等の光をレンズで集光して照射するような光学系を用いており,大抵の光学系はランプから試料溶液,試料溶液から回折格子,回折格子から検出器それぞれが100mm程度の長さを持つ大きさがある。
【0005】
しかし近年,試薬コストの削減や,環境への負荷低減のため,分析に用いる試料溶液の微少量化が求められており,微少量化するほど液体に光を絞り込んで照射することが困難になることや,微小領域から発せられる散乱光や蛍光を効率よく検出することが難しい等の問題があった。散乱光の検出に関しては,透過光量から散乱光により減衰した分を算出する方法では,試料溶液に光を絞り込むことができれば検出可能であるが,先に述べたようなハロゲンランプや回折格子を用いた光学系は寸法が大きく,試料溶液の微少量化に伴い求められる装置の小型化に対応することは困難であった。
【0006】
そこで,光学系を小型化し,しかも散乱光や蛍光を効率良く検出する方法として,まず,光源の小型化が考えられる。小型で輝度の高い光源として発光ダイオードが上げられ,発光ダイオードを光源に用いた計測方法も特許文献1,特許文献2,特許文献3等に報告されている。但し,これらは透過光を検出するものであり,透過光と違い,照射光の照射方向と同じ方向と,照射光の照射方向と逆の方向に特定の散乱角度で発せられる散乱光や,照射光が照射された領域からほぼ全方位に発せられる蛍光を検出するのに適した光学系ではない。
【0007】
次に,光を集光する方法としてレンズや鏡が考えられるが,透過光と違い,散乱光は照射光の照射方向と同じ方向と,照射光の照射方向と逆の方向に特定の散乱角度で発せられる。また,蛍光は照射光が照射された領域からほぼ全方位に発せられる。そのため,微少量の試料溶液から発する散乱光や蛍光を効率よく集光して検出するには,反射と集光を同時に行う凹面鏡を用い,一ヶ所の検出器に集光して検出するのが適していると考えられる。凹面鏡を用いて光を集光する方法として,特許文献4,特許文献5等に報告がある。しかし,試料中に含まれる成分量を検出する分析装置においては,透明なガラスやプラスチックなどの容器内部に入っている試料に励起光を照射し,散乱光,蛍光と励起光を分離することが必要であり,励起光,透過光,及び,透過光を吸収する部材等の部分を避け,発散する散乱光や蛍光のみを捕捉することが必要となる。透明なガラスやプラスチックなどの容器側から大気中に,もしくは,大気中から透明なガラスやプラスチックなどの容器側に光が進行する際の光の進路は,スネルの法則やフレネルの式などから求められる。
【0008】
それに対し,特許文献4,特許文献5の例では,一点から発散する光をその光源も含めて,他の物体を避けることなく別の一点に集光する例であるため,試料に励起光を照射して試料中に含まれる成分量を検出する分析装置に適用するには課題が多い。
【0009】
【特許文献1】特願平11−340964
【特許文献2】特願2001−146695
【特許文献3】特願2004−151177
【特許文献4】特開2006−108521
【特許文献5】特開2006−126013
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術では,試料溶液の微少量化への対応や,装置あるいは光学系の小型化への対応が困難であること,透過光の検出のみで,散乱光や蛍光の計測には適さないこと,透明なガラスやプラスチックなどの容器内部に入っている試料に励起光を照射し,散乱光,蛍光と励起光を分離して検出する構造になっていないため,散乱光や蛍光のみを効率よく検出するのに適さない等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するため,本発明では,試料溶液を収めた透明なガラスやプラスチックなどの容器と空気との屈折率を考慮し,ガラスやプラスチックなどの容器側からブリュースタ角度以内で出射する散乱光や蛍光等の光を,励起光の照射方向側である前方と,励起光の照射方向と逆側である後方とに出射する光を別々の回転楕円鏡で集光し,検出器にブリュースタ角より小さな角度で入射する構成を採用した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,試料溶液の微量化や装置の小型化に合わせ検出光学系を小型化する際,試料から発せられる蛍光や散乱光を効率よく集光して検出することができ,微少量の試料での安定分析が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下,図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0014】
本実施例での液体分析方法について説明する。初めに散乱光を利用する場合について説明する。試料溶液に光を照射し,試料溶液中の散乱粒子により散乱した光量を測定することで試料溶液中に含まれる特定成分量を測定する方法に,ラテックス凝集反応による免疫比濁法等がある。この方法は,試料溶液中の試薬成分である抗体を付けたラテックスと,血液成分等からなる検体中の抗原が反応することによりラテックスが凝集し,ラテックスの凝集度合いにより,試料溶液に照射した光の散乱度合いが変化することを利用し,検体中の抗原の量を測定するものである。
【0015】
本実施例による散乱光の計測による液体分析の方法は,この原理に基づき,容器に入れた試料溶液に光を照射し,照射した光が試料溶液と容器を屈折して透過した量を除き,光を照射した方向と同方向側に散乱する前方散乱光を反射鏡で検出器に集光し,抗原の量等を計測するものである。
【0016】
次に蛍光を利用する場合について説明する。試料溶液に励起光を照射し,試料内部の蛍光体を励起することで発する蛍光を計測する蛍光計測法がある。単に蛍光体の量を計測する場合もあるが,蛍光体を付けた抗体と血液成分等からなる検体中の抗原とを反応させ,未反応成分を除去した後励起光を照射し,その蛍光量を測定することで検体中の抗原の量を測定するものである。
【0017】
本実施例による蛍光の計測による液体分析の方法は,この原理に基づき,容器に入れた試料溶液に励起光を照射し,照射した励起光が試料溶液と容器を屈折して透過した量を除き,光を照射した方向と同方向側に出射する蛍光を反射鏡で検出器に集光し,抗原の量等を計測するものである。
【0018】
本実施例の光学系は,散乱光を用いる場合にも蛍光を用いる場合にも,どちらにでも対応可能な構造となっており,目的に応じて使用する試薬と照射する光の波長等を選択すれば良い。
【0019】
図1に,本発明による液体分析装置の計測部を示す。検体と試薬からなる試料溶液1は透明な容器2の中に入れられている。図1では,試料溶液1と容器を断面で表しているが,図面を煩雑にし,理解を妨げることになるのを避けるためにハッチングせずに示す。容器2の図中左側には光源3,光源3から出射した光4を試料溶液1に絞り込むためのレンズ5が配置されている。容器2の右側には,レンズ5により試料溶液1に絞り込まれ,試料溶液1を透過した光を吸収して捉える透過光吸収体6,光4が試料溶液1に含まれる成分により散乱し,試料溶液1の右側すなわち光4の照射方向と同方向である前方に出射する散乱光7,あるいは,光4により励起され,同じく前方に出射する蛍光7’を反射集光する第1の反射鏡8,反射集光された光を検出し電気信号に変換する検出器9が配置されている。これらはそれぞれ光軸10上に配置され保持部材で保持されているが,図面を煩雑にし,理解を妨げることになるのを避けるために,保持部材は図面上から割愛する。
【0020】
続いて,本実施例による液体分析時の,光の進路や装置の構成について説明する。液体分析時には,まず,図1のように試料溶液1を容器2に入れ,光軸上にセットする。容器2は,光4を低損失で透過するガラスやプラスチック等の材質で構成される。この状態で光源3に通電する等して光源3から光4を出射する。光4はレンズ5により絞り込まれ,試料溶液1に照射される。
【0021】
その時,散乱光測定による場合は,試料溶液中の検体に含まれる抗体の量により,試料溶液中の試薬に含まれるラテックスの凝集度合いが異なり,その凝集度合いに応じて散乱光7が散乱するため,散乱光7を第1の反射鏡8により集光し検出器9で光量を計測することで液体成分を分析することができる。散乱光7は光4の一部が散乱するものであり,光4の散乱しなかった部分は試料溶液1を透過し,透過光吸収体6により吸収される。この場合の散乱の方向は,試料溶液1の右側すなわち光4の照射方向と同方向である前方に出射する散乱光である。
【0022】
また,蛍光測定による場合は,単に蛍光体の量を計測する場合は試料溶液中の蛍光体量に応じた蛍光が発せられるのでその蛍光量を計測する。また,検体中の抗原の量等を測定する場合は,検体中の抗原に反応して結合した抗体の蛍光体の量に応じて蛍光が発せられるため,蛍光を第1の反射鏡8により集光し検出器9で光量を計測することで液体成分を分析することができる。この場合,光4は励起光として用いられ,励起に用いられなかった部分は試料溶液1を透過し透過光吸収体6により吸収される。
【0023】
透過光吸収体6は光軸を中心軸とした円筒状のカップ形をした物で,図1の左側が開口しており,内部を低反射率になるよう処理し,開口部から入った光4を吸収し熱に変える。また,透過光吸収体6を透過光検出器に代え,透過光量と散乱光もしくは蛍光の量とを比較することにより,透過光,散乱光もしくは蛍光以外に失った光の量等を算出することが可能になり,より制度の良い分析を可能にすることができる。
【0024】
先に述べたように,本実施例においては,散乱光を用いる場合にも蛍光を用いる場合にも,どちらにでも対応可能な構造となっているため,以下では蛍光も含めて単に散乱光7として説明する。
【0025】
試料溶液1から出射した散乱光7は,容器2から大気中に出射する。本実施例では大気中への出射であるが,試料溶液1等を一定温度に保ち易くするために,計測部全体あるいは一部が恒温水の中等にあっても良い。また,本実施例では簡略のため,大気の屈折率を1.0,液体である試料溶液1,容器2及び検出器9の受光部の屈折率を1.5程度として説明し,図面上で光の屈折を表す場合もそのように作図して示す。
【0026】
散乱光7が容器2から大気中に出射するときには,容器2と大気の境界面で反射光と透過光に分かれ,屈折して透過光となる散乱光のみ大気中に出射する。反射光と透過光の割合を図2,図3,及び,図4,図5で説明する。
【0027】
図2は容器2側から大気側に散乱光7が進む状態を簡略化して示す。図2において,散乱光7が容器2と大気の境界面に入射光として入射する時の入射角度をφとし,φを0°から90°まで可変したときのp偏光,s偏光成分それぞれの反射光と透過光の反射率,透過率を図3に示す。図3は,スネルの法則及びフレネルの式等から求められる式に図2に示す屈折率の値を入れて計算した結果であり,一般的なものである。
【0028】
図4は,大気側から容器2側に散乱光7が進む状態を簡略化して示す。図4において,散乱光7が大気と容器2の境界面に入射光として入射する時の入射角度をφとし,φを0°から90°まで可変したときのp偏光,s偏光成分それぞれの反射光と透過光の反射率,透過率を図5に示す。図5も図3同様にスネルの法則及びフレネルの式等から求められる式に図4に示す屈折率の値を入れて計算した結果であり,一般的なものである。
【0029】
図3及び図5共に,入射角がある値を超えると急激に透過率が減り反射率が大きくなる。特にp偏光成分は反射率が0%で透過率が100%になる入射角度があり,その角度より入射角度が大きくなると急激に透過率が減り反射率が大きくなる。その角度はブリュースタ角φbと呼ばれ,次式(1)で表すことができる。n1は大気側の屈折率,n2は容器側の屈折率である。
【0030】
【数1】
【0031】
すなわち,ブリュースタ角より小さい角度で入射する散乱光を集めることが効率の良い検出の方法といえる。因みに,先に定義した本実施例での各部の屈折率を上式(1)に代入した場合,散乱光が容器2側から大気側に進むときのブリュースタ角は次式(2)のように約33.7°,散乱光が大気側から検出器9側に進むときのブリュースタ角は次式(3)のように約56.3°となる。
【0032】
【数2】
【0033】
そこで本発明では,散乱光7が容器2側から大気側に進む場合,また,大気側から検出器9側に進む場合に,境界面をブリュースタ角より小さい入射角で透過する領域を効率よく集光するのに適した光学系とし,以下に述べるような定義による第1の反射鏡を採用した。
【0034】
第1の反射鏡8の詳細を図1,図6,図7,図8を用いて説明する。図6は,図1の散乱光7の出射中心付近から検出器9の中心付近までの部分拡大図を,図7は,図1の散乱光7の出射中心周辺の拡大図を,図8は,図1の検出器9の付近の部分拡大図を示す。図6,図7,図8では光線同士の交差位置等を分かり易くするため,光を表すハッチングを除いて示す。
【0035】
図6に示すように第1の反射鏡8は,光軸10を回転中心とした回転楕円体の一部からなるものである。その形状は,楕円11を定義する2つの焦点12,13及び通過点14を次のようにして決定している。すなわち図6及び図7,図8の部分拡大図に示すように,散乱光7の出射中心15からブリュースタ角で出射した光が容器2と大気の境界で屈折し透過した光線16を進行方向とは逆方向に延長し,光軸10と交差する位置を焦点12とし,検出器9にブリュースタ角で入射し屈折して検出面中心17に達する光線が検出器9の表面で屈折する前の光線18を進行方向に延長し,光軸10と交差する位置を焦点13とする。散乱光7の出射中心15に焦点12を,及び,検出面中心17に焦点13を持ってこないのは,容器2と大気の屈折,及び,大気と検出器9表面の屈折を考慮したためである。ここで検出器9にブリュースタ角より小さな角度で入射することが必要な理由は,ホトダイオード等の半導体製検出器の受光面がシリコン酸化物等の透明な絶縁膜で覆われており,同様に反射,屈折,透過を考慮することが必要であるためであり,さらに透明な樹脂やガラスで保護されている場合も同様である。また,半導体検出器ではなく光電子増倍管などであっても,受光部の光入射口はガラスである。
【0036】
次に通過点14の定義を,散乱光7の出射中心15から出射した光が容器2と大気の境界で屈折して透過し,透過光吸収体6に当たらずに出射できる光の内,光軸10との角度が最小の光線19,あるいは,試料溶液1及び容器2を透過して出射する前記光4の内,光軸10との角度が最大の光線19’と,前記光線18を光軸10とは逆の方向に延長して交差する位置として楕円11を定義し,反射鏡8は楕円11が光軸10を中心に回転した回転楕円体の一部からなる。
【0037】
さらに,回転楕円体の一部とは,前記光線16を進行方向に延長し楕円11と交わる位置を開始位置20とし,前記光線18を進行方向とは逆方向に延長し楕円11と交わる位置を終了位置21とし,光軸10に直角な面で回転楕円体を開始位置20と終了位置21で3つに切断した中間部分である。反射鏡8の光軸方向の長さが少なくともこの範囲以上であれば,前方に出射する散乱光7の内,光4の領域を除き,ブリュースタ角より小さい入射角で容器2から大気側に出射する領域を全て集光することが可能であり,また,検出器9にブリュースタ角度よりも小さな入射角度で入射できるため,集光した散乱光7を効率よく検出することができる。以上の定義による反射鏡8は,焦点12,焦点13の間に位置するため,反射鏡8に入射する散乱光7も反射鏡8により検出器9に反射される散乱光7も,光軸方向を基準とする向きが反転することが無い。すなわち,検出器9の検出面は散乱光7の出射中心15の方を向いていれば良く,逆方向からの光を検出するための検出面は不要であり,1個の検出器で済むという効果がある。
【0038】
上記定義による反射鏡の効率が良いことを説明するために,焦点12と焦点13の位置は同じでより大きな回転楕円体からなる場合と,同じく焦点12と焦点13の位置は同じでより小さな回転楕円体からなる場合について図9と図10により説明する。
【0039】
まず,焦点12と焦点13の位置は同じで,より大きな回転楕円体からなる場合について図9により説明する。図9は,図6と焦点12,13の位置は第1の反射鏡8と同じで,反射鏡を第1の反射鏡8より大きな楕円11’に基づく回転楕円体からなる第1の反射鏡8’に置き換えた場合の光の進路等を示す。容器2からブリュースタ角で出射した光が容器2と大気の境界で屈折し透過する光線16は,図6上での反射鏡8の場合に比べ右側で反射し,検出器9に入射することが可能である。しかし,第1の反射鏡8’が大きくなるに従い,容器2から出射した散乱光7は光軸10に近い内側から検出器9に入射不可能になり検出できなくなっていく。その理由は,検出器9にブリュースタ角で入射する光線18の延長線が楕円11’と交わる交点22と,散乱光7の出射中心15から出射した光が容器2と大気の境界で屈折して透過し,透過光吸収体6に当たらずに出射できる光の内,光軸10との角度が最小の光線19,あるいは,試料溶液1及び容器2を透過して出射する前記光4の内,光軸10との角度が最大の光線19’が楕円11’ と交わる交点23との間で反射し検出器9に向かう光24(図9上でハッチングして示す領域)は,検出器9にブリュースタ角よりも大きな角度で入射するため,検出器9の受光面で大部分が反射してしまい,検出器9に入射出来ないためである。よって,前述の楕円11で定義される第1の反射鏡8が,焦点12と焦点13の位置を固定した場合に効率よく散乱光7を集光できる最大の反射鏡といえる。
【0040】
次に,焦点12と焦点13の位置は同じで,より小さな回転楕円体からなる場合について図10により説明する。図10は,図6と焦点12,13の位置は第1の反射鏡8と同じで,反射鏡を第1の反射鏡8より小さな楕円11”に基づく回転楕円体からなる第1の反射鏡8”に置き換えた場合の光の進路等を示す。容器2からブリュースタ角で出射した光が容器2と大気の境界で屈折し透過する光線16は,図6上での反射鏡8の場合に比べ左側の,より容器2に近い部分で反射し,検出器9に入射することが可能である。また,前記光線19,あるいは,前記光線19’も,第1の反射鏡8”で反射後,検出器9にブリュースタ角より小さな角度で入射可能であるため,第1の反射鏡8”を定義する楕円11”は,焦点12と焦点13の位置が同じであれば,より小さくすることが可能である。小さくする限界は,検出器9の入射面で屈折し検出器9の中心に入射する光線の内,透過光吸収体6にかからず入射できる,光軸10との角度が最小の光線25と光線16との交点26が通過点14として定義される楕円11”から成る回転楕円体を用いた第1の反射鏡8”である。ただし,透過光吸収体6が十分小さい場合は,通過点14は容器2からブリュースタ角で出射した光が容器2の表面と交差する位置である。よって,前述の楕円11で定義される第1の反射鏡8が,焦点12と焦点13の位置を固定した場合に効率よく散乱光7を集光できる最大の反射鏡であり,前述の楕円11”で定義される第1の反射鏡8”が最小の反射鏡であると言える。
【0041】
本実施例では,後述する実施例2以降で述べる第2の反射鏡と同時に使用することを考え,第1の反射鏡8を用いている。また,実際の光源は点光源ではなく直径1mm程度の大きさを持つため,これまで述べた光線位置からずれた光線も含まれるが,検出器9の検出面の大きさが光源の大きさよりも十分大きいため,光線位置からずれた光線は無視して説明している。
【実施例2】
【0042】
本実施例での液体分析方法は実施例1とほぼ同様であり,実施例1との違いは,実施例1では,容器に入れた試料溶液に光を照射し,光を照射した方向と同方向側に散乱する散乱光や,光を照射した方向と同方向側に出射する蛍光を反射鏡で検出器に集光し,抗原の量等を計測するものであるのに対し,本実施例では,光を照射した方向と逆方向側に散乱する散乱光や,光を照射した方向と逆方向側に出射する蛍光を反射鏡で検出器に集光し,抗原の量等を計測するところにある。そのため本実施例では,液体分析の原理,光学的な法則に関する部分は省略して説明する。また,本実施例も,散乱光を用いる場合にも蛍光を用いる場合にも,どちらにでも対応可能な構造となっているため,以下では蛍光も含めて単に散乱光として説明する。
【0043】
図11に本発明による液体分析装置の計測部を示す。検体と試薬からなる試料溶液1は透明な容器2の中に入れられている。図11では,試料溶液1と容器を断面で表しているが,図面を煩雑にし,理解を妨げることになるのを避けるためにハッチングせずに示す。容器2の図中左側には光源3,光源3から出射した光4を試料溶液1に絞り込むためのレンズ5が配置されている。容器2の右側には,レンズ5により試料溶液1に絞り込まれ,試料溶液1を透過した光を吸収して捉える透過光吸収体6,光4が試料溶液1に含まれる成分により散乱し,試料溶液1の左側すなわち光4の照射方向と逆方向である後方に出射する散乱光27を反射集光する第2の反射鏡28,第2の反射鏡28により集光された散乱光27を検出し電気信号に変換する検出器9が配置されている。これらはそれぞれ光軸10上に配置され保持部材で保持されているが,図面を煩雑にし,理解を妨げることになるのを避けるために,保持部材は図面上から割愛する。
【0044】
続いて,本実施例による液体分析時の,光の進路や装置の構成について説明する。液体分析時には,まず,図11のように試料溶液1を容器2に入れ,光軸上にセットする。容器2は光4を低損失で透過するガラスやプラスチック等の材質で構成される。この状態で光源3に通電する等して光源3から光4を出射する。光4はレンズ5により絞り込まれ,試料溶液1に照射される。これにより試料溶液1から出射する散乱光27を第2の反射鏡28で集光し,検出器9で光量を計測することで,実施例1と同様に液体成分を分析することができる。
【0045】
第2の反射鏡28の詳細を図11,図12を用いて説明する。図12は図11の散乱光27の出射中心付近から第2の反射鏡28にかけての拡大図である。図11,図12において,第2の反射鏡28は,光軸10を回転中心とした回転楕円体の一部からなるものである。その形状は,楕円29を定義する2つの焦点30,焦点31及び通過点32を次のようにして決定している。すなわち,図11,図12において,散乱光27の出射中心15からブリュースタ角で後方に出射した光が容器2と大気の境界で屈折し透過した光線33を進行方向とは逆方向に延長し,光軸10と交差する位置を焦点30とし,焦点31は実施例1と同じ位置で,検出器9にブリュースタ角で入射し屈折して検出面中心17に達する光線が検出器9の表面で屈折する前の光線18を進行方向に延長し,光軸10と交差する位置とする。
【0046】
次に通過点32の定義を,検出器9入射し,屈折して検出面中心17に達する光線の内,第1の反射鏡8の内径に蹴られずに入射でき,光軸10との角度が最大の光線を第2の反射鏡28の方向に進行させた光線34と前記光線33との交差する位置として楕円29を定義し,第2の反射鏡28は,楕円29が光軸10を中心に回転した回転楕円体の一部からなる。
【0047】
さらに,回転楕円体の一部とは,第2の反射鏡の光軸を中心とした外径の半径が,光軸から通過点32の距離よりも大きい範囲である。さらに,光軸10を中心にした照射光4を通過する開口,もしくは,散乱光27の出射中心15に入射する光が,透過光吸収体に蹴られずに入射できる光軸との角度が最小の光線と楕円29との交点を光軸からの半径とする開口が設けられている。
【0048】
以上の定義による反射鏡28は,図11上で焦点30,焦点31の位置より左側に位置するため,反射鏡28に入射する散乱光27を一度だけ反射し,光軸方向を基準とする向きを反転する。すなわち,検出器9の検出面は散乱光27の出射中心15の方を向いていれば良く,後方に出射する散乱光27を検出するための検出器は不要であり,1個の検出器で済むという効果がある。
【0049】
上記定義による反射鏡の効率が良いことを説明するために,焦点30と焦点31の位置は同じでより大きな回転楕円体からなる場合と,同じく焦点30と焦点31の位置は同じでより小さな回転楕円体からなる場合について図13と図14により説明する。
【0050】
まず,焦点30,31の位置は同じで,より大きな回転楕円体からなる場合について図13により説明する。図13は,焦点30,31の位置は第2の反射鏡28と同じで,反射鏡を第2の反射鏡28より大きな楕円29’に基づく回転楕円体からなる第2の反射鏡28’に置き換えた場合の光の進路等を示す。容器2から後方にブリュースタ角で出射した光が容器2と大気の境界で屈折し透過する光線33は,図11上での反射鏡28の場合に比べ外周側で反射するため,第2の反射鏡28’が大きくなるに従い,検出器9に入射する前に第1の反射鏡8で蹴られる領域が増えていく。図13の光線33及び光線34に沿ってハッチングした部分がその領域を示す。よって,前述の楕円29で定義される第2の反射鏡28が,焦点30と焦点31の位置を固定した場合に,後方に出射する散乱光27を効率よく集光できる最大の反射鏡といえる。
【0051】
次に,焦点30と焦点31の位置は同じで,より小さな回転楕円体からなる場合について図14により説明する。図14は,焦点30,31の位置は第2の反射鏡28と同じで,反射鏡を第2の反射鏡28より小さな楕円29”に基づく回転楕円体からなる第2の反射鏡28”に置き換えた場合の光の進路等を示す。容器2から後方に出射した光の内,光軸10を中心にした照射光4を通過する開口,もしくは,散乱光27の出射中心15に入射する光が,透過光吸収体に蹴られずに入射できる光軸との角度が最小の光線と楕円29との交点を光軸からの半径とする開口に当たっていた光35は,楕円29で定義される第2の反射鏡28に当たる場合に比べて,図14で示されるように第2の反射鏡28”では右側かつ光軸側で当たるようになる。そのため,楕円29”が小さくなるに従い,透過光吸収体6に蹴られて検出器9に届かない領域が増えていく。図14の,透過光吸収体6に蹴られずに検出器に向かう光線36に沿ってハッチングした部分がその領域を示す。
【0052】
ただし,透過光吸収体6が十分小さい場合は,この限りではないが,焦点30がブリュースタ角で出射する点を基準にしている関係で,楕円29”が小さくなるに従い,検出器9に入射する位置が光軸を横切ってずれていく。よって,前述の楕円29で定義される第2の反射鏡28が,焦点30と焦点31の位置を固定した場合に,後方に出射する散乱光27を効率よく集光できる最小の反射鏡といえるが,透過光吸収体の大きさによっては,楕円29”の方向に小さくすることも可能である。本実施例では,楕円29で定義される第2の反射鏡28を用いている。
【実施例3】
【0053】
図15に本発明による液体分析装置の計測部を示す。本実施例では,実施例1に示す前方に出射する散乱光もしくは蛍光と,実施例2に示す後方に出射する散乱光もしくは蛍光を同時に検出する。分析の方法,光の検出方法等,実施例1及び実施例2と同じであるため,内容を改めて記載することは割愛する。
【実施例4】
【0054】
図16,図17,図18及び図19に,本発明による液体分析装置の計測部等を示す。図16は本実施例による液体分析装置の計測部であり,複数の計測部が並んで配置されている内の2ヶ所のみを示している。図17は,本実施例で用いているシャッタの一部分を表す平面図である。図18は,図16に示す計測部の内一ヶ所のみを,ハッチングで示す散乱光や蛍光と共に示している。図19は本実施例による液体分析装置の計測部の1部分を,第1の反射鏡8,第2の反射鏡28,及び透過光吸収体6を除いた立体図で示している。本実施例も,散乱光を用いる場合にも蛍光を用いる場合にも,どちらにでも対応可能な構造となっているため,以下では蛍光も含めて単に散乱光として説明する。
【0055】
本実施例での試料溶液1は,図16,図18及び図19に示すように一定の隙間を保って平行に配置された第1の透明基板37と第2の透明基板38からなる容器に相当するデバイス39の中に保持されている。デバイス39は,実施例1,実施例2及び実施例3に示す容器2に相当するものであり,試料溶液1はデバイス39の内部で,デバイス39に設けられた複数の搬送電極40に印加する電圧を順次切り替えることにより静電力によって搬送され,複数の計測部で順次計測されていく。また,図16及び図18では光軸10が鉛直方向に配置されているが,これらの図を上から見た平面図とし,光軸が水平であっても良い。
【0056】
本実施例での液体分析方法等は実施例3と同じであり,前方に出射する散乱光と後方に出射する散乱光の両方を検出する。実施例3との違いは,図16,図17及び図18に示すシャッタ41により,前方に出射する散乱光や後方に出射する散乱光の両方を検出する場合と,前方もしくは後方に出射する散乱光のどちらか一方を検出する場合,もしくは,両方の散乱光を隠す場合とを切り替えるところにある。これは特に散乱光の検出のときにより詳細な検出データを得るのに有効な手段となる。その理由は,実施例1で詳細に述べたラテックス凝集反応による免疫比濁法等を用いる場合,使用するラテックス粒子の大きさにより,また,ラテックス粒子同士の凝集の度合により散乱の方向や散乱の角度などが変化するためである。
【0057】
本実施例で前方に出射する散乱光と後方に出射する散乱光の両方を検出する場合と,前方もしくは後方に出射する散乱光のどちらか一方を検出する場合,もしくは,両方の散乱光を隠す場合とを切り替える方法を説明する。この場合,前方に出射する散乱光とは,図18に示すような第1の反射鏡8により集光された散乱光7であり,後方に出射する散乱光とは第2の反射鏡28により集光された散乱光27である。
【0058】
図17に平面方向から見たシャッタ41の一部を示す。シャッタ41には,計測位置毎に3ヶ所の光学的な開口部42があり,図17のハッチングで示す部分は光を遮断し,それ以外の白抜きの部分は光を通過する。光学的な開口部42は,前方に出射する散乱光と後方に出射する散乱光の両方を透過する開口43,前方に出射する散乱光のみを透過する開口44,後方に出射する散乱光のみを透過する開口45の3ヶ所が一組になっている。但し,3ヶ所のうち必要でない開口がある場合は除外できるのは言うまでもない。開口44の中心部には後方に出射する散乱光のみを遮断するシャッタ46があり,開口44をリング状の開口としている。シャッタは,光を透過するガラスやプラスチック等の材質に光を遮断する材質を貼り付けるか蒸着する等して製作したものか,金属等の光を遮断する材質にエッチング等で開口を作成して製作すればよい。エッチング等で開口を作成する場合はシャッタ46になる部分を細いリブ状のブリッジで開口44の内径と接続しておく等すれば良い。シャッタ41により前方に出射する散乱光と後方に出射する散乱光の両方を検出する場合と,前方もしくは後方に出射する散乱光のどちらか一方を検出する場合,もしくは,両方の散乱光を隠す場合とを切り替える場合は,図16及び図18に示す矢印の方向にシャッタを移動し,光軸10に所望の開口の中心が来るようにすれば良い。開口部42の各開口の配列は,本実施例に従う必要はなく,任意で良い。ちなみに開口部42内の配列が90度変われば,図16及び図18に示す矢印の向きは紙面に垂直な方向となるし,90度以外の変更もありうる。また,本実施例でのシャッタ41の位置は第1の反射鏡8と検出器9との間であるが,配置場所に合わせて開口の大きさや配列を決定すれば,ほかの場所に配置することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は,液体試料中に含まれる成分量を検出する分析装置に係わり,試料から発せられる蛍光や散乱光を小型にしてかつ効率よく集光して検出することができ,微少量の試料での安定分析を可能にする。そのため試料溶液の微量化のみならず装置の小型化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】液体分析装置の計測部を示す図。
【図2】容器側から大気側に散乱光もしくは蛍光が進む状態の略図。
【図3】容器側から大気側に進む光の反射率と透過率を表すグラフ。
【図4】大気側から容器側に散乱光もしくは蛍光が進む状態の略図。
【図5】大気側から容器側に進む光の反射率と透過率を表すグラフ。
【図6】図1の部分拡大図。
【図7】図6の部分拡大図。
【図8】図6の部分拡大図。
【図9】図6の反射鏡を大きくした例を示す図。
【図10】図6の反射鏡を小さくした例を示す図。
【図11】液体分析装置の計測部を示す図。
【図12】図11の部分拡大図。
【図13】図11の反射鏡を大きくした例を示す図。
【図14】図11の反射鏡を小さくした例を示す図。
【図15】液体分析装置の計測部を示す図。
【図16】液体分析装置の計測部を示す図。
【図17】シャッタの平面図。
【図18】図16の部分拡大図。
【図19】液体分析装置の計測部の一部分の立体図。
【符号の説明】
【0061】
1…試料溶液,2…容器,3…光源,4…光,5…レンズ,6…透過光吸収体,7…散乱光,7’…蛍光,8…第1の反射鏡,8’…第1の反射鏡,8”…第1の反射鏡,9…検出器,10…光軸,11…楕円,11’…楕円,11”…楕円,12…焦点,13…焦点,14…通過点,15…出射中心,16…光線,17…検出面中心,18…光線,19…光線,19’…光線,20…開始位置,21…終了位置,22…交点,23…交点,24…光,25…光線,26…交点,27…散乱光,27’…蛍光,28…第2の反射鏡,28’…第2の反射鏡,28”…第2の反射鏡,29…楕円,29’…楕円,29”…楕円,30…焦点,31…焦点,32…通過点,33…光線,34…光線,35…光,36…光線,37…第1の透明基板,38…第2の透明基板,39…デバイス,40…搬送電極,41…シャッタ,42…開口部,43…開口,44…開口,45…開口,46…シャッタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は,試料中に含まれる成分量を検出する分析装置に係わり,微少量の試料を安定に分析することが可能な液体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる成分量を検出する分析装置として,ハロゲンランプ等からの白色光を試料溶液に照射し,試料溶液を透過してきた光を回折格子で分光して必要な波長成分を取り出し,その吸光度を割り出すことで目的の成分量を測定する分光分析装置や,照射光により励起されて発する蛍光量を割り出すことで目的の成分量を測定する蛍光光度計が広く用いられている。
【0003】
これらの分析装置により散乱光や蛍光を測定する場合,まず,分光分析装置により散乱光を測定する場合は,試料溶液に白色光を照射して試料溶液を透過した光を回折格子等で分光し,特定の波長の光量を測定することで散乱により減衰した分を算出し,散乱光量を導き出していた。次に,蛍光分光光度計により蛍光を測定する場合は,ハロゲンランプ等からの白色光を回折格子で分光して特定の波長の光を励起光として試料に照射し,それによって励起された蛍光を励起光の照射方向とは別の角度から検出し,蛍光波長の分析精度を向上する場合は蛍光を回折格子で分光するなどして測定していた。また,蛍光測定の場合は,蛍光を発する時間を考慮し,照射光の照射タイミングと蛍光の検出タイミングとをチョッパ等で切り替え,蛍光のみを検出する方法もある。
【0004】
これらの分析装置においては,プラスチックやガラス製の容器内に試料溶液を分注し,試料溶液に光を照射して成分量を測定することが多い。また,使用する試料溶液も数十から数百マイクロリットルと多く,ハロゲンランプ等の光をレンズで集光して照射するような光学系を用いており,大抵の光学系はランプから試料溶液,試料溶液から回折格子,回折格子から検出器それぞれが100mm程度の長さを持つ大きさがある。
【0005】
しかし近年,試薬コストの削減や,環境への負荷低減のため,分析に用いる試料溶液の微少量化が求められており,微少量化するほど液体に光を絞り込んで照射することが困難になることや,微小領域から発せられる散乱光や蛍光を効率よく検出することが難しい等の問題があった。散乱光の検出に関しては,透過光量から散乱光により減衰した分を算出する方法では,試料溶液に光を絞り込むことができれば検出可能であるが,先に述べたようなハロゲンランプや回折格子を用いた光学系は寸法が大きく,試料溶液の微少量化に伴い求められる装置の小型化に対応することは困難であった。
【0006】
そこで,光学系を小型化し,しかも散乱光や蛍光を効率良く検出する方法として,まず,光源の小型化が考えられる。小型で輝度の高い光源として発光ダイオードが上げられ,発光ダイオードを光源に用いた計測方法も特許文献1,特許文献2,特許文献3等に報告されている。但し,これらは透過光を検出するものであり,透過光と違い,照射光の照射方向と同じ方向と,照射光の照射方向と逆の方向に特定の散乱角度で発せられる散乱光や,照射光が照射された領域からほぼ全方位に発せられる蛍光を検出するのに適した光学系ではない。
【0007】
次に,光を集光する方法としてレンズや鏡が考えられるが,透過光と違い,散乱光は照射光の照射方向と同じ方向と,照射光の照射方向と逆の方向に特定の散乱角度で発せられる。また,蛍光は照射光が照射された領域からほぼ全方位に発せられる。そのため,微少量の試料溶液から発する散乱光や蛍光を効率よく集光して検出するには,反射と集光を同時に行う凹面鏡を用い,一ヶ所の検出器に集光して検出するのが適していると考えられる。凹面鏡を用いて光を集光する方法として,特許文献4,特許文献5等に報告がある。しかし,試料中に含まれる成分量を検出する分析装置においては,透明なガラスやプラスチックなどの容器内部に入っている試料に励起光を照射し,散乱光,蛍光と励起光を分離することが必要であり,励起光,透過光,及び,透過光を吸収する部材等の部分を避け,発散する散乱光や蛍光のみを捕捉することが必要となる。透明なガラスやプラスチックなどの容器側から大気中に,もしくは,大気中から透明なガラスやプラスチックなどの容器側に光が進行する際の光の進路は,スネルの法則やフレネルの式などから求められる。
【0008】
それに対し,特許文献4,特許文献5の例では,一点から発散する光をその光源も含めて,他の物体を避けることなく別の一点に集光する例であるため,試料に励起光を照射して試料中に含まれる成分量を検出する分析装置に適用するには課題が多い。
【0009】
【特許文献1】特願平11−340964
【特許文献2】特願2001−146695
【特許文献3】特願2004−151177
【特許文献4】特開2006−108521
【特許文献5】特開2006−126013
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術では,試料溶液の微少量化への対応や,装置あるいは光学系の小型化への対応が困難であること,透過光の検出のみで,散乱光や蛍光の計測には適さないこと,透明なガラスやプラスチックなどの容器内部に入っている試料に励起光を照射し,散乱光,蛍光と励起光を分離して検出する構造になっていないため,散乱光や蛍光のみを効率よく検出するのに適さない等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するため,本発明では,試料溶液を収めた透明なガラスやプラスチックなどの容器と空気との屈折率を考慮し,ガラスやプラスチックなどの容器側からブリュースタ角度以内で出射する散乱光や蛍光等の光を,励起光の照射方向側である前方と,励起光の照射方向と逆側である後方とに出射する光を別々の回転楕円鏡で集光し,検出器にブリュースタ角より小さな角度で入射する構成を採用した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,試料溶液の微量化や装置の小型化に合わせ検出光学系を小型化する際,試料から発せられる蛍光や散乱光を効率よく集光して検出することができ,微少量の試料での安定分析が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下,図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0014】
本実施例での液体分析方法について説明する。初めに散乱光を利用する場合について説明する。試料溶液に光を照射し,試料溶液中の散乱粒子により散乱した光量を測定することで試料溶液中に含まれる特定成分量を測定する方法に,ラテックス凝集反応による免疫比濁法等がある。この方法は,試料溶液中の試薬成分である抗体を付けたラテックスと,血液成分等からなる検体中の抗原が反応することによりラテックスが凝集し,ラテックスの凝集度合いにより,試料溶液に照射した光の散乱度合いが変化することを利用し,検体中の抗原の量を測定するものである。
【0015】
本実施例による散乱光の計測による液体分析の方法は,この原理に基づき,容器に入れた試料溶液に光を照射し,照射した光が試料溶液と容器を屈折して透過した量を除き,光を照射した方向と同方向側に散乱する前方散乱光を反射鏡で検出器に集光し,抗原の量等を計測するものである。
【0016】
次に蛍光を利用する場合について説明する。試料溶液に励起光を照射し,試料内部の蛍光体を励起することで発する蛍光を計測する蛍光計測法がある。単に蛍光体の量を計測する場合もあるが,蛍光体を付けた抗体と血液成分等からなる検体中の抗原とを反応させ,未反応成分を除去した後励起光を照射し,その蛍光量を測定することで検体中の抗原の量を測定するものである。
【0017】
本実施例による蛍光の計測による液体分析の方法は,この原理に基づき,容器に入れた試料溶液に励起光を照射し,照射した励起光が試料溶液と容器を屈折して透過した量を除き,光を照射した方向と同方向側に出射する蛍光を反射鏡で検出器に集光し,抗原の量等を計測するものである。
【0018】
本実施例の光学系は,散乱光を用いる場合にも蛍光を用いる場合にも,どちらにでも対応可能な構造となっており,目的に応じて使用する試薬と照射する光の波長等を選択すれば良い。
【0019】
図1に,本発明による液体分析装置の計測部を示す。検体と試薬からなる試料溶液1は透明な容器2の中に入れられている。図1では,試料溶液1と容器を断面で表しているが,図面を煩雑にし,理解を妨げることになるのを避けるためにハッチングせずに示す。容器2の図中左側には光源3,光源3から出射した光4を試料溶液1に絞り込むためのレンズ5が配置されている。容器2の右側には,レンズ5により試料溶液1に絞り込まれ,試料溶液1を透過した光を吸収して捉える透過光吸収体6,光4が試料溶液1に含まれる成分により散乱し,試料溶液1の右側すなわち光4の照射方向と同方向である前方に出射する散乱光7,あるいは,光4により励起され,同じく前方に出射する蛍光7’を反射集光する第1の反射鏡8,反射集光された光を検出し電気信号に変換する検出器9が配置されている。これらはそれぞれ光軸10上に配置され保持部材で保持されているが,図面を煩雑にし,理解を妨げることになるのを避けるために,保持部材は図面上から割愛する。
【0020】
続いて,本実施例による液体分析時の,光の進路や装置の構成について説明する。液体分析時には,まず,図1のように試料溶液1を容器2に入れ,光軸上にセットする。容器2は,光4を低損失で透過するガラスやプラスチック等の材質で構成される。この状態で光源3に通電する等して光源3から光4を出射する。光4はレンズ5により絞り込まれ,試料溶液1に照射される。
【0021】
その時,散乱光測定による場合は,試料溶液中の検体に含まれる抗体の量により,試料溶液中の試薬に含まれるラテックスの凝集度合いが異なり,その凝集度合いに応じて散乱光7が散乱するため,散乱光7を第1の反射鏡8により集光し検出器9で光量を計測することで液体成分を分析することができる。散乱光7は光4の一部が散乱するものであり,光4の散乱しなかった部分は試料溶液1を透過し,透過光吸収体6により吸収される。この場合の散乱の方向は,試料溶液1の右側すなわち光4の照射方向と同方向である前方に出射する散乱光である。
【0022】
また,蛍光測定による場合は,単に蛍光体の量を計測する場合は試料溶液中の蛍光体量に応じた蛍光が発せられるのでその蛍光量を計測する。また,検体中の抗原の量等を測定する場合は,検体中の抗原に反応して結合した抗体の蛍光体の量に応じて蛍光が発せられるため,蛍光を第1の反射鏡8により集光し検出器9で光量を計測することで液体成分を分析することができる。この場合,光4は励起光として用いられ,励起に用いられなかった部分は試料溶液1を透過し透過光吸収体6により吸収される。
【0023】
透過光吸収体6は光軸を中心軸とした円筒状のカップ形をした物で,図1の左側が開口しており,内部を低反射率になるよう処理し,開口部から入った光4を吸収し熱に変える。また,透過光吸収体6を透過光検出器に代え,透過光量と散乱光もしくは蛍光の量とを比較することにより,透過光,散乱光もしくは蛍光以外に失った光の量等を算出することが可能になり,より制度の良い分析を可能にすることができる。
【0024】
先に述べたように,本実施例においては,散乱光を用いる場合にも蛍光を用いる場合にも,どちらにでも対応可能な構造となっているため,以下では蛍光も含めて単に散乱光7として説明する。
【0025】
試料溶液1から出射した散乱光7は,容器2から大気中に出射する。本実施例では大気中への出射であるが,試料溶液1等を一定温度に保ち易くするために,計測部全体あるいは一部が恒温水の中等にあっても良い。また,本実施例では簡略のため,大気の屈折率を1.0,液体である試料溶液1,容器2及び検出器9の受光部の屈折率を1.5程度として説明し,図面上で光の屈折を表す場合もそのように作図して示す。
【0026】
散乱光7が容器2から大気中に出射するときには,容器2と大気の境界面で反射光と透過光に分かれ,屈折して透過光となる散乱光のみ大気中に出射する。反射光と透過光の割合を図2,図3,及び,図4,図5で説明する。
【0027】
図2は容器2側から大気側に散乱光7が進む状態を簡略化して示す。図2において,散乱光7が容器2と大気の境界面に入射光として入射する時の入射角度をφとし,φを0°から90°まで可変したときのp偏光,s偏光成分それぞれの反射光と透過光の反射率,透過率を図3に示す。図3は,スネルの法則及びフレネルの式等から求められる式に図2に示す屈折率の値を入れて計算した結果であり,一般的なものである。
【0028】
図4は,大気側から容器2側に散乱光7が進む状態を簡略化して示す。図4において,散乱光7が大気と容器2の境界面に入射光として入射する時の入射角度をφとし,φを0°から90°まで可変したときのp偏光,s偏光成分それぞれの反射光と透過光の反射率,透過率を図5に示す。図5も図3同様にスネルの法則及びフレネルの式等から求められる式に図4に示す屈折率の値を入れて計算した結果であり,一般的なものである。
【0029】
図3及び図5共に,入射角がある値を超えると急激に透過率が減り反射率が大きくなる。特にp偏光成分は反射率が0%で透過率が100%になる入射角度があり,その角度より入射角度が大きくなると急激に透過率が減り反射率が大きくなる。その角度はブリュースタ角φbと呼ばれ,次式(1)で表すことができる。n1は大気側の屈折率,n2は容器側の屈折率である。
【0030】
【数1】
【0031】
すなわち,ブリュースタ角より小さい角度で入射する散乱光を集めることが効率の良い検出の方法といえる。因みに,先に定義した本実施例での各部の屈折率を上式(1)に代入した場合,散乱光が容器2側から大気側に進むときのブリュースタ角は次式(2)のように約33.7°,散乱光が大気側から検出器9側に進むときのブリュースタ角は次式(3)のように約56.3°となる。
【0032】
【数2】
【0033】
そこで本発明では,散乱光7が容器2側から大気側に進む場合,また,大気側から検出器9側に進む場合に,境界面をブリュースタ角より小さい入射角で透過する領域を効率よく集光するのに適した光学系とし,以下に述べるような定義による第1の反射鏡を採用した。
【0034】
第1の反射鏡8の詳細を図1,図6,図7,図8を用いて説明する。図6は,図1の散乱光7の出射中心付近から検出器9の中心付近までの部分拡大図を,図7は,図1の散乱光7の出射中心周辺の拡大図を,図8は,図1の検出器9の付近の部分拡大図を示す。図6,図7,図8では光線同士の交差位置等を分かり易くするため,光を表すハッチングを除いて示す。
【0035】
図6に示すように第1の反射鏡8は,光軸10を回転中心とした回転楕円体の一部からなるものである。その形状は,楕円11を定義する2つの焦点12,13及び通過点14を次のようにして決定している。すなわち図6及び図7,図8の部分拡大図に示すように,散乱光7の出射中心15からブリュースタ角で出射した光が容器2と大気の境界で屈折し透過した光線16を進行方向とは逆方向に延長し,光軸10と交差する位置を焦点12とし,検出器9にブリュースタ角で入射し屈折して検出面中心17に達する光線が検出器9の表面で屈折する前の光線18を進行方向に延長し,光軸10と交差する位置を焦点13とする。散乱光7の出射中心15に焦点12を,及び,検出面中心17に焦点13を持ってこないのは,容器2と大気の屈折,及び,大気と検出器9表面の屈折を考慮したためである。ここで検出器9にブリュースタ角より小さな角度で入射することが必要な理由は,ホトダイオード等の半導体製検出器の受光面がシリコン酸化物等の透明な絶縁膜で覆われており,同様に反射,屈折,透過を考慮することが必要であるためであり,さらに透明な樹脂やガラスで保護されている場合も同様である。また,半導体検出器ではなく光電子増倍管などであっても,受光部の光入射口はガラスである。
【0036】
次に通過点14の定義を,散乱光7の出射中心15から出射した光が容器2と大気の境界で屈折して透過し,透過光吸収体6に当たらずに出射できる光の内,光軸10との角度が最小の光線19,あるいは,試料溶液1及び容器2を透過して出射する前記光4の内,光軸10との角度が最大の光線19’と,前記光線18を光軸10とは逆の方向に延長して交差する位置として楕円11を定義し,反射鏡8は楕円11が光軸10を中心に回転した回転楕円体の一部からなる。
【0037】
さらに,回転楕円体の一部とは,前記光線16を進行方向に延長し楕円11と交わる位置を開始位置20とし,前記光線18を進行方向とは逆方向に延長し楕円11と交わる位置を終了位置21とし,光軸10に直角な面で回転楕円体を開始位置20と終了位置21で3つに切断した中間部分である。反射鏡8の光軸方向の長さが少なくともこの範囲以上であれば,前方に出射する散乱光7の内,光4の領域を除き,ブリュースタ角より小さい入射角で容器2から大気側に出射する領域を全て集光することが可能であり,また,検出器9にブリュースタ角度よりも小さな入射角度で入射できるため,集光した散乱光7を効率よく検出することができる。以上の定義による反射鏡8は,焦点12,焦点13の間に位置するため,反射鏡8に入射する散乱光7も反射鏡8により検出器9に反射される散乱光7も,光軸方向を基準とする向きが反転することが無い。すなわち,検出器9の検出面は散乱光7の出射中心15の方を向いていれば良く,逆方向からの光を検出するための検出面は不要であり,1個の検出器で済むという効果がある。
【0038】
上記定義による反射鏡の効率が良いことを説明するために,焦点12と焦点13の位置は同じでより大きな回転楕円体からなる場合と,同じく焦点12と焦点13の位置は同じでより小さな回転楕円体からなる場合について図9と図10により説明する。
【0039】
まず,焦点12と焦点13の位置は同じで,より大きな回転楕円体からなる場合について図9により説明する。図9は,図6と焦点12,13の位置は第1の反射鏡8と同じで,反射鏡を第1の反射鏡8より大きな楕円11’に基づく回転楕円体からなる第1の反射鏡8’に置き換えた場合の光の進路等を示す。容器2からブリュースタ角で出射した光が容器2と大気の境界で屈折し透過する光線16は,図6上での反射鏡8の場合に比べ右側で反射し,検出器9に入射することが可能である。しかし,第1の反射鏡8’が大きくなるに従い,容器2から出射した散乱光7は光軸10に近い内側から検出器9に入射不可能になり検出できなくなっていく。その理由は,検出器9にブリュースタ角で入射する光線18の延長線が楕円11’と交わる交点22と,散乱光7の出射中心15から出射した光が容器2と大気の境界で屈折して透過し,透過光吸収体6に当たらずに出射できる光の内,光軸10との角度が最小の光線19,あるいは,試料溶液1及び容器2を透過して出射する前記光4の内,光軸10との角度が最大の光線19’が楕円11’ と交わる交点23との間で反射し検出器9に向かう光24(図9上でハッチングして示す領域)は,検出器9にブリュースタ角よりも大きな角度で入射するため,検出器9の受光面で大部分が反射してしまい,検出器9に入射出来ないためである。よって,前述の楕円11で定義される第1の反射鏡8が,焦点12と焦点13の位置を固定した場合に効率よく散乱光7を集光できる最大の反射鏡といえる。
【0040】
次に,焦点12と焦点13の位置は同じで,より小さな回転楕円体からなる場合について図10により説明する。図10は,図6と焦点12,13の位置は第1の反射鏡8と同じで,反射鏡を第1の反射鏡8より小さな楕円11”に基づく回転楕円体からなる第1の反射鏡8”に置き換えた場合の光の進路等を示す。容器2からブリュースタ角で出射した光が容器2と大気の境界で屈折し透過する光線16は,図6上での反射鏡8の場合に比べ左側の,より容器2に近い部分で反射し,検出器9に入射することが可能である。また,前記光線19,あるいは,前記光線19’も,第1の反射鏡8”で反射後,検出器9にブリュースタ角より小さな角度で入射可能であるため,第1の反射鏡8”を定義する楕円11”は,焦点12と焦点13の位置が同じであれば,より小さくすることが可能である。小さくする限界は,検出器9の入射面で屈折し検出器9の中心に入射する光線の内,透過光吸収体6にかからず入射できる,光軸10との角度が最小の光線25と光線16との交点26が通過点14として定義される楕円11”から成る回転楕円体を用いた第1の反射鏡8”である。ただし,透過光吸収体6が十分小さい場合は,通過点14は容器2からブリュースタ角で出射した光が容器2の表面と交差する位置である。よって,前述の楕円11で定義される第1の反射鏡8が,焦点12と焦点13の位置を固定した場合に効率よく散乱光7を集光できる最大の反射鏡であり,前述の楕円11”で定義される第1の反射鏡8”が最小の反射鏡であると言える。
【0041】
本実施例では,後述する実施例2以降で述べる第2の反射鏡と同時に使用することを考え,第1の反射鏡8を用いている。また,実際の光源は点光源ではなく直径1mm程度の大きさを持つため,これまで述べた光線位置からずれた光線も含まれるが,検出器9の検出面の大きさが光源の大きさよりも十分大きいため,光線位置からずれた光線は無視して説明している。
【実施例2】
【0042】
本実施例での液体分析方法は実施例1とほぼ同様であり,実施例1との違いは,実施例1では,容器に入れた試料溶液に光を照射し,光を照射した方向と同方向側に散乱する散乱光や,光を照射した方向と同方向側に出射する蛍光を反射鏡で検出器に集光し,抗原の量等を計測するものであるのに対し,本実施例では,光を照射した方向と逆方向側に散乱する散乱光や,光を照射した方向と逆方向側に出射する蛍光を反射鏡で検出器に集光し,抗原の量等を計測するところにある。そのため本実施例では,液体分析の原理,光学的な法則に関する部分は省略して説明する。また,本実施例も,散乱光を用いる場合にも蛍光を用いる場合にも,どちらにでも対応可能な構造となっているため,以下では蛍光も含めて単に散乱光として説明する。
【0043】
図11に本発明による液体分析装置の計測部を示す。検体と試薬からなる試料溶液1は透明な容器2の中に入れられている。図11では,試料溶液1と容器を断面で表しているが,図面を煩雑にし,理解を妨げることになるのを避けるためにハッチングせずに示す。容器2の図中左側には光源3,光源3から出射した光4を試料溶液1に絞り込むためのレンズ5が配置されている。容器2の右側には,レンズ5により試料溶液1に絞り込まれ,試料溶液1を透過した光を吸収して捉える透過光吸収体6,光4が試料溶液1に含まれる成分により散乱し,試料溶液1の左側すなわち光4の照射方向と逆方向である後方に出射する散乱光27を反射集光する第2の反射鏡28,第2の反射鏡28により集光された散乱光27を検出し電気信号に変換する検出器9が配置されている。これらはそれぞれ光軸10上に配置され保持部材で保持されているが,図面を煩雑にし,理解を妨げることになるのを避けるために,保持部材は図面上から割愛する。
【0044】
続いて,本実施例による液体分析時の,光の進路や装置の構成について説明する。液体分析時には,まず,図11のように試料溶液1を容器2に入れ,光軸上にセットする。容器2は光4を低損失で透過するガラスやプラスチック等の材質で構成される。この状態で光源3に通電する等して光源3から光4を出射する。光4はレンズ5により絞り込まれ,試料溶液1に照射される。これにより試料溶液1から出射する散乱光27を第2の反射鏡28で集光し,検出器9で光量を計測することで,実施例1と同様に液体成分を分析することができる。
【0045】
第2の反射鏡28の詳細を図11,図12を用いて説明する。図12は図11の散乱光27の出射中心付近から第2の反射鏡28にかけての拡大図である。図11,図12において,第2の反射鏡28は,光軸10を回転中心とした回転楕円体の一部からなるものである。その形状は,楕円29を定義する2つの焦点30,焦点31及び通過点32を次のようにして決定している。すなわち,図11,図12において,散乱光27の出射中心15からブリュースタ角で後方に出射した光が容器2と大気の境界で屈折し透過した光線33を進行方向とは逆方向に延長し,光軸10と交差する位置を焦点30とし,焦点31は実施例1と同じ位置で,検出器9にブリュースタ角で入射し屈折して検出面中心17に達する光線が検出器9の表面で屈折する前の光線18を進行方向に延長し,光軸10と交差する位置とする。
【0046】
次に通過点32の定義を,検出器9入射し,屈折して検出面中心17に達する光線の内,第1の反射鏡8の内径に蹴られずに入射でき,光軸10との角度が最大の光線を第2の反射鏡28の方向に進行させた光線34と前記光線33との交差する位置として楕円29を定義し,第2の反射鏡28は,楕円29が光軸10を中心に回転した回転楕円体の一部からなる。
【0047】
さらに,回転楕円体の一部とは,第2の反射鏡の光軸を中心とした外径の半径が,光軸から通過点32の距離よりも大きい範囲である。さらに,光軸10を中心にした照射光4を通過する開口,もしくは,散乱光27の出射中心15に入射する光が,透過光吸収体に蹴られずに入射できる光軸との角度が最小の光線と楕円29との交点を光軸からの半径とする開口が設けられている。
【0048】
以上の定義による反射鏡28は,図11上で焦点30,焦点31の位置より左側に位置するため,反射鏡28に入射する散乱光27を一度だけ反射し,光軸方向を基準とする向きを反転する。すなわち,検出器9の検出面は散乱光27の出射中心15の方を向いていれば良く,後方に出射する散乱光27を検出するための検出器は不要であり,1個の検出器で済むという効果がある。
【0049】
上記定義による反射鏡の効率が良いことを説明するために,焦点30と焦点31の位置は同じでより大きな回転楕円体からなる場合と,同じく焦点30と焦点31の位置は同じでより小さな回転楕円体からなる場合について図13と図14により説明する。
【0050】
まず,焦点30,31の位置は同じで,より大きな回転楕円体からなる場合について図13により説明する。図13は,焦点30,31の位置は第2の反射鏡28と同じで,反射鏡を第2の反射鏡28より大きな楕円29’に基づく回転楕円体からなる第2の反射鏡28’に置き換えた場合の光の進路等を示す。容器2から後方にブリュースタ角で出射した光が容器2と大気の境界で屈折し透過する光線33は,図11上での反射鏡28の場合に比べ外周側で反射するため,第2の反射鏡28’が大きくなるに従い,検出器9に入射する前に第1の反射鏡8で蹴られる領域が増えていく。図13の光線33及び光線34に沿ってハッチングした部分がその領域を示す。よって,前述の楕円29で定義される第2の反射鏡28が,焦点30と焦点31の位置を固定した場合に,後方に出射する散乱光27を効率よく集光できる最大の反射鏡といえる。
【0051】
次に,焦点30と焦点31の位置は同じで,より小さな回転楕円体からなる場合について図14により説明する。図14は,焦点30,31の位置は第2の反射鏡28と同じで,反射鏡を第2の反射鏡28より小さな楕円29”に基づく回転楕円体からなる第2の反射鏡28”に置き換えた場合の光の進路等を示す。容器2から後方に出射した光の内,光軸10を中心にした照射光4を通過する開口,もしくは,散乱光27の出射中心15に入射する光が,透過光吸収体に蹴られずに入射できる光軸との角度が最小の光線と楕円29との交点を光軸からの半径とする開口に当たっていた光35は,楕円29で定義される第2の反射鏡28に当たる場合に比べて,図14で示されるように第2の反射鏡28”では右側かつ光軸側で当たるようになる。そのため,楕円29”が小さくなるに従い,透過光吸収体6に蹴られて検出器9に届かない領域が増えていく。図14の,透過光吸収体6に蹴られずに検出器に向かう光線36に沿ってハッチングした部分がその領域を示す。
【0052】
ただし,透過光吸収体6が十分小さい場合は,この限りではないが,焦点30がブリュースタ角で出射する点を基準にしている関係で,楕円29”が小さくなるに従い,検出器9に入射する位置が光軸を横切ってずれていく。よって,前述の楕円29で定義される第2の反射鏡28が,焦点30と焦点31の位置を固定した場合に,後方に出射する散乱光27を効率よく集光できる最小の反射鏡といえるが,透過光吸収体の大きさによっては,楕円29”の方向に小さくすることも可能である。本実施例では,楕円29で定義される第2の反射鏡28を用いている。
【実施例3】
【0053】
図15に本発明による液体分析装置の計測部を示す。本実施例では,実施例1に示す前方に出射する散乱光もしくは蛍光と,実施例2に示す後方に出射する散乱光もしくは蛍光を同時に検出する。分析の方法,光の検出方法等,実施例1及び実施例2と同じであるため,内容を改めて記載することは割愛する。
【実施例4】
【0054】
図16,図17,図18及び図19に,本発明による液体分析装置の計測部等を示す。図16は本実施例による液体分析装置の計測部であり,複数の計測部が並んで配置されている内の2ヶ所のみを示している。図17は,本実施例で用いているシャッタの一部分を表す平面図である。図18は,図16に示す計測部の内一ヶ所のみを,ハッチングで示す散乱光や蛍光と共に示している。図19は本実施例による液体分析装置の計測部の1部分を,第1の反射鏡8,第2の反射鏡28,及び透過光吸収体6を除いた立体図で示している。本実施例も,散乱光を用いる場合にも蛍光を用いる場合にも,どちらにでも対応可能な構造となっているため,以下では蛍光も含めて単に散乱光として説明する。
【0055】
本実施例での試料溶液1は,図16,図18及び図19に示すように一定の隙間を保って平行に配置された第1の透明基板37と第2の透明基板38からなる容器に相当するデバイス39の中に保持されている。デバイス39は,実施例1,実施例2及び実施例3に示す容器2に相当するものであり,試料溶液1はデバイス39の内部で,デバイス39に設けられた複数の搬送電極40に印加する電圧を順次切り替えることにより静電力によって搬送され,複数の計測部で順次計測されていく。また,図16及び図18では光軸10が鉛直方向に配置されているが,これらの図を上から見た平面図とし,光軸が水平であっても良い。
【0056】
本実施例での液体分析方法等は実施例3と同じであり,前方に出射する散乱光と後方に出射する散乱光の両方を検出する。実施例3との違いは,図16,図17及び図18に示すシャッタ41により,前方に出射する散乱光や後方に出射する散乱光の両方を検出する場合と,前方もしくは後方に出射する散乱光のどちらか一方を検出する場合,もしくは,両方の散乱光を隠す場合とを切り替えるところにある。これは特に散乱光の検出のときにより詳細な検出データを得るのに有効な手段となる。その理由は,実施例1で詳細に述べたラテックス凝集反応による免疫比濁法等を用いる場合,使用するラテックス粒子の大きさにより,また,ラテックス粒子同士の凝集の度合により散乱の方向や散乱の角度などが変化するためである。
【0057】
本実施例で前方に出射する散乱光と後方に出射する散乱光の両方を検出する場合と,前方もしくは後方に出射する散乱光のどちらか一方を検出する場合,もしくは,両方の散乱光を隠す場合とを切り替える方法を説明する。この場合,前方に出射する散乱光とは,図18に示すような第1の反射鏡8により集光された散乱光7であり,後方に出射する散乱光とは第2の反射鏡28により集光された散乱光27である。
【0058】
図17に平面方向から見たシャッタ41の一部を示す。シャッタ41には,計測位置毎に3ヶ所の光学的な開口部42があり,図17のハッチングで示す部分は光を遮断し,それ以外の白抜きの部分は光を通過する。光学的な開口部42は,前方に出射する散乱光と後方に出射する散乱光の両方を透過する開口43,前方に出射する散乱光のみを透過する開口44,後方に出射する散乱光のみを透過する開口45の3ヶ所が一組になっている。但し,3ヶ所のうち必要でない開口がある場合は除外できるのは言うまでもない。開口44の中心部には後方に出射する散乱光のみを遮断するシャッタ46があり,開口44をリング状の開口としている。シャッタは,光を透過するガラスやプラスチック等の材質に光を遮断する材質を貼り付けるか蒸着する等して製作したものか,金属等の光を遮断する材質にエッチング等で開口を作成して製作すればよい。エッチング等で開口を作成する場合はシャッタ46になる部分を細いリブ状のブリッジで開口44の内径と接続しておく等すれば良い。シャッタ41により前方に出射する散乱光と後方に出射する散乱光の両方を検出する場合と,前方もしくは後方に出射する散乱光のどちらか一方を検出する場合,もしくは,両方の散乱光を隠す場合とを切り替える場合は,図16及び図18に示す矢印の方向にシャッタを移動し,光軸10に所望の開口の中心が来るようにすれば良い。開口部42の各開口の配列は,本実施例に従う必要はなく,任意で良い。ちなみに開口部42内の配列が90度変われば,図16及び図18に示す矢印の向きは紙面に垂直な方向となるし,90度以外の変更もありうる。また,本実施例でのシャッタ41の位置は第1の反射鏡8と検出器9との間であるが,配置場所に合わせて開口の大きさや配列を決定すれば,ほかの場所に配置することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は,液体試料中に含まれる成分量を検出する分析装置に係わり,試料から発せられる蛍光や散乱光を小型にしてかつ効率よく集光して検出することができ,微少量の試料での安定分析を可能にする。そのため試料溶液の微量化のみならず装置の小型化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】液体分析装置の計測部を示す図。
【図2】容器側から大気側に散乱光もしくは蛍光が進む状態の略図。
【図3】容器側から大気側に進む光の反射率と透過率を表すグラフ。
【図4】大気側から容器側に散乱光もしくは蛍光が進む状態の略図。
【図5】大気側から容器側に進む光の反射率と透過率を表すグラフ。
【図6】図1の部分拡大図。
【図7】図6の部分拡大図。
【図8】図6の部分拡大図。
【図9】図6の反射鏡を大きくした例を示す図。
【図10】図6の反射鏡を小さくした例を示す図。
【図11】液体分析装置の計測部を示す図。
【図12】図11の部分拡大図。
【図13】図11の反射鏡を大きくした例を示す図。
【図14】図11の反射鏡を小さくした例を示す図。
【図15】液体分析装置の計測部を示す図。
【図16】液体分析装置の計測部を示す図。
【図17】シャッタの平面図。
【図18】図16の部分拡大図。
【図19】液体分析装置の計測部の一部分の立体図。
【符号の説明】
【0061】
1…試料溶液,2…容器,3…光源,4…光,5…レンズ,6…透過光吸収体,7…散乱光,7’…蛍光,8…第1の反射鏡,8’…第1の反射鏡,8”…第1の反射鏡,9…検出器,10…光軸,11…楕円,11’…楕円,11”…楕円,12…焦点,13…焦点,14…通過点,15…出射中心,16…光線,17…検出面中心,18…光線,19…光線,19’…光線,20…開始位置,21…終了位置,22…交点,23…交点,24…光,25…光線,26…交点,27…散乱光,27’…蛍光,28…第2の反射鏡,28’…第2の反射鏡,28”…第2の反射鏡,29…楕円,29’…楕円,29”…楕円,30…焦点,31…焦点,32…通過点,33…光線,34…光線,35…光,36…光線,37…第1の透明基板,38…第2の透明基板,39…デバイス,40…搬送電極,41…シャッタ,42…開口部,43…開口,44…開口,45…開口,46…シャッタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料溶液を保持する少なくとも2面の壁面を有する試料保持器と,
前記試料保持器中の試料溶液に光を照射する照射光学系と,
前記試料保持器中の試料溶液を透過した光を捕捉する透過光捕捉器と,
前記試料保持器中の試料溶液により光の照射方向側に散乱した前方散乱光を集光する第1の反射鏡と,
前記試料保持器中の試料溶液により光の照射方向と反対側に散乱した後方散乱光を集光する第2の反射鏡と,
第1の反射鏡と第2の反射鏡により集光した散乱光を検出する検出器と
を備えることを特徴とする液体分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡及び前記第2の反射鏡は,回転楕円体の一部からなる回転楕円鏡であることを特徴とする液体分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の液体分析装置において,前記第2の反射鏡で集光した散乱光を前記第1の反射鏡の開口部を通して検出器に集光することを特徴とする液体分析装置。
【請求項4】
請求項3記載の液体分析装置において,前記前方散乱光は前記第1の反射鏡に1回反射して前記検出器に集光され,前記後方散乱光は前記第2の反射鏡に1回反射して前記検出器に集光されることを特徴とする液体分析装置。
【請求項5】
請求項3記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡は,反射によって前記前方散乱光の進行方向の光軸方向の成分を反転しないことを特徴とする液体分析装置。
【請求項6】
請求項3記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡と前記第2の反射鏡の前記検出器側の焦点位置が同じであることを特徴とする液体分析装置。
【請求項7】
請求項6記載の液体分析装置において,
前記第1の反射鏡の第1の焦点位置は,前記前方散乱光の出射中心から前記試料保持器の壁面をブリュースタ角で出射した光線の光路を進行方向と逆方向に延長したとき光軸と交差する点に一致し,
前記第2の反射鏡の第1の焦点位置は,前記後方散乱光の出射中心から前記試料保持器の壁面をブリュースタ角で出射した光線の光路を進行方向と逆方向に延長したとき光軸と交差する点に一致し,
前記第1の反射鏡及び前記第2の反射鏡の第2の焦点位置は,前記検出器にブリュースタ角で入射し前記検出器の検出面中心に達する光線の前記検出器に向かって進行している光路をそのまま進行方向に延長したとき光軸と交差する点に一致することを特徴とする液体分析装置。
【請求項8】
請求項7記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡の反射面を定義する楕円は,
前記透過光捕捉器に当たらずに前記検出器の検出面中心に達することのできる光線のうち光軸との角度が最小の光線の光路と,前記前方散乱光の出射中心からブリュースタ角で出射した光線との交点を通過点として有する第1の楕円と,
前記前方散乱光の出射中心から出て前記透過光捕捉器に当たらずに進む前方散乱光のうち光軸との角度が最小の光線と,前記検出器にブリュースタ角で入射し前記検出器の検出面中心に達する光線の光路との交点を通過点として有する第2の楕円の範囲にあることを特徴とする液体分析装置。
【請求項9】
請求項8記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡の反射面の光軸方向の長さの範囲は,少なくとも,前記前方散乱光の出射中心から前記試料保持器の壁面をブリュースタ角で出射した光線から,前記前方散乱光の出射中心から出て前記透過光捕捉器に当たらずに進む前方散乱光のうち光軸との角度が最小の光線までの前方散乱光を反射できる長さの範囲を有することを特徴とする液体分析装置。
【請求項10】
請求項7記載の液体分析装置において,前記第2の反射鏡の反射面を定義する楕円は,前記後方散乱光の出射中心から前記試料保持器の壁面をブリュースタ角で出射した光線と,前記第1の反射鏡に蹴られることなくブリュースタ角より小さい角度で前記検出器の検出面中心に入射できる光線のうち光軸との角度が最大の光線の光路との交点を通過点として有する楕円であることを特徴とする液体分析装置。
【請求項11】
請求項10記載の液体分析装置において,前記第2の反射鏡の光軸を中心とした外径は光軸から前記通過点までの距離よりも大きく,光軸を中心にした照射光を通過する開口,もしくは,前記第2の焦点位置に入射する光が,前記透過光捕捉器に蹴られずに入射できる光軸との角度が最小の光線と前記第2の反射鏡の反射面を定義する楕円との交点を光軸からの半径とする開口を有することを特徴とする液体分析装置。
【請求項12】
請求項1記載の液体分析装置において,試料溶液に励起光を照射し試料溶液により光の照射方向側に出射した蛍光と光の照射方向と反対側に出射した蛍光とを集光することを特徴とする液体分析装置。
【請求項13】
請求項1記載の液体分析装置において,前記透過光捕捉器は,透過光量を検出する透過光検出器を兼ねることを特徴とする液体分析装置。
【請求項14】
請求項7記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡によって集光された前方散乱光を遮断する第1のシャッタ及び前記第2の反射鏡によって集光された後方散乱光を遮断する第2のシャッタを有し,若しくは前記第1のシャッタ又は前記第2のシャッタのどちらか一方を有し,シャッタを切り替えることで前記前方散乱光と前記後方散乱光の両方,若しくは前記前方散乱光又は前記後方散乱光のどちらか一方のみを検出することを特徴とする液体分析装置。
【請求項1】
試料溶液を保持する少なくとも2面の壁面を有する試料保持器と,
前記試料保持器中の試料溶液に光を照射する照射光学系と,
前記試料保持器中の試料溶液を透過した光を捕捉する透過光捕捉器と,
前記試料保持器中の試料溶液により光の照射方向側に散乱した前方散乱光を集光する第1の反射鏡と,
前記試料保持器中の試料溶液により光の照射方向と反対側に散乱した後方散乱光を集光する第2の反射鏡と,
第1の反射鏡と第2の反射鏡により集光した散乱光を検出する検出器と
を備えることを特徴とする液体分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡及び前記第2の反射鏡は,回転楕円体の一部からなる回転楕円鏡であることを特徴とする液体分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の液体分析装置において,前記第2の反射鏡で集光した散乱光を前記第1の反射鏡の開口部を通して検出器に集光することを特徴とする液体分析装置。
【請求項4】
請求項3記載の液体分析装置において,前記前方散乱光は前記第1の反射鏡に1回反射して前記検出器に集光され,前記後方散乱光は前記第2の反射鏡に1回反射して前記検出器に集光されることを特徴とする液体分析装置。
【請求項5】
請求項3記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡は,反射によって前記前方散乱光の進行方向の光軸方向の成分を反転しないことを特徴とする液体分析装置。
【請求項6】
請求項3記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡と前記第2の反射鏡の前記検出器側の焦点位置が同じであることを特徴とする液体分析装置。
【請求項7】
請求項6記載の液体分析装置において,
前記第1の反射鏡の第1の焦点位置は,前記前方散乱光の出射中心から前記試料保持器の壁面をブリュースタ角で出射した光線の光路を進行方向と逆方向に延長したとき光軸と交差する点に一致し,
前記第2の反射鏡の第1の焦点位置は,前記後方散乱光の出射中心から前記試料保持器の壁面をブリュースタ角で出射した光線の光路を進行方向と逆方向に延長したとき光軸と交差する点に一致し,
前記第1の反射鏡及び前記第2の反射鏡の第2の焦点位置は,前記検出器にブリュースタ角で入射し前記検出器の検出面中心に達する光線の前記検出器に向かって進行している光路をそのまま進行方向に延長したとき光軸と交差する点に一致することを特徴とする液体分析装置。
【請求項8】
請求項7記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡の反射面を定義する楕円は,
前記透過光捕捉器に当たらずに前記検出器の検出面中心に達することのできる光線のうち光軸との角度が最小の光線の光路と,前記前方散乱光の出射中心からブリュースタ角で出射した光線との交点を通過点として有する第1の楕円と,
前記前方散乱光の出射中心から出て前記透過光捕捉器に当たらずに進む前方散乱光のうち光軸との角度が最小の光線と,前記検出器にブリュースタ角で入射し前記検出器の検出面中心に達する光線の光路との交点を通過点として有する第2の楕円の範囲にあることを特徴とする液体分析装置。
【請求項9】
請求項8記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡の反射面の光軸方向の長さの範囲は,少なくとも,前記前方散乱光の出射中心から前記試料保持器の壁面をブリュースタ角で出射した光線から,前記前方散乱光の出射中心から出て前記透過光捕捉器に当たらずに進む前方散乱光のうち光軸との角度が最小の光線までの前方散乱光を反射できる長さの範囲を有することを特徴とする液体分析装置。
【請求項10】
請求項7記載の液体分析装置において,前記第2の反射鏡の反射面を定義する楕円は,前記後方散乱光の出射中心から前記試料保持器の壁面をブリュースタ角で出射した光線と,前記第1の反射鏡に蹴られることなくブリュースタ角より小さい角度で前記検出器の検出面中心に入射できる光線のうち光軸との角度が最大の光線の光路との交点を通過点として有する楕円であることを特徴とする液体分析装置。
【請求項11】
請求項10記載の液体分析装置において,前記第2の反射鏡の光軸を中心とした外径は光軸から前記通過点までの距離よりも大きく,光軸を中心にした照射光を通過する開口,もしくは,前記第2の焦点位置に入射する光が,前記透過光捕捉器に蹴られずに入射できる光軸との角度が最小の光線と前記第2の反射鏡の反射面を定義する楕円との交点を光軸からの半径とする開口を有することを特徴とする液体分析装置。
【請求項12】
請求項1記載の液体分析装置において,試料溶液に励起光を照射し試料溶液により光の照射方向側に出射した蛍光と光の照射方向と反対側に出射した蛍光とを集光することを特徴とする液体分析装置。
【請求項13】
請求項1記載の液体分析装置において,前記透過光捕捉器は,透過光量を検出する透過光検出器を兼ねることを特徴とする液体分析装置。
【請求項14】
請求項7記載の液体分析装置において,前記第1の反射鏡によって集光された前方散乱光を遮断する第1のシャッタ及び前記第2の反射鏡によって集光された後方散乱光を遮断する第2のシャッタを有し,若しくは前記第1のシャッタ又は前記第2のシャッタのどちらか一方を有し,シャッタを切り替えることで前記前方散乱光と前記後方散乱光の両方,若しくは前記前方散乱光又は前記後方散乱光のどちらか一方のみを検出することを特徴とする液体分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−128125(P2009−128125A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302102(P2007−302102)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]