説明

液体制振支持装置

【課題】制振支持装置をコンパクトにし、軽量化し、平衡状態に置く。
【解決手段】2つのリジッドな部材4、5の間の緩衝及び連結のために設けられる液体制振支持装置1であって、連結するべき2つのリジッドな部材4,5にそれぞれ連結されるための第1の骨組2と第2の骨組3との2つの骨組2、3と、第1の骨組2と第2の骨組3とを相互に連結する連結部材8と、液体で満たされ、連結部材8によって範囲を限定された作動室Aと、液体で満たされ、柔軟な壁面11によって範囲を限定された少なくとも1つの補償室Bと、作動室Aを補償室Bと連通させる液体で満たされた液体通路Cと、デカップリング装置13とを含む液体制振支持装置に関する。本発明は、液体通路Cと、補償室Bと、第2の骨組3が液体制振支持装置の構成要素であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体制振支持装置に関する。このような支持装置は、自動車の動力装置と車体との間の連結を可能にする液体支持装置を実現させるために、特に自動車産業において使用される。
【0002】
特に本発明は、2つのリジッドな部材の間の緩衝及び連結のために設けられる液体制振支持装置であって、上記液体制振支持装置は:
−連結するべき2つの上記リジッドな部材にそれぞれ連結されるための第1の骨組と第2
の骨組との2つの骨組と、
−上記第1の骨組と上記第2の骨組とを相互に連結する連結部材と、
−液体で満たされ、上記連結部材によって範囲を限定された作動室と、
−液体で満たされ、柔軟な壁面によって範囲を限定された少なくとも1つの補償室と、
−上記作動室を上記補償室と連通させる液体で満たされた液体通路と、
−デカップリング装置と、
を含む液体制振支持装置に関する。
【背景技術】
【0003】
FR2825128に記載されているような従来技術においては、制振支持装置は、金属製のリジッドな2つの骨組を含む。このような支持装置は、音響的な品質低下の発生源である大きな質量をもたらす。また、このような支持装置は、大きな外形寸法を有し、安定性が悪いという問題を有する。
【特許文献1】FR2825128
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの問題点を解消するために、本発明は、制振支持装置をコンパクトにし、軽量化し、平衡状態に置くことを目的とする。また本発明は、エンジンの音響の伝達をフィルタすることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、「技術分野」に記載した液体制振支持装置において、上記液体通路と、上記補償室と、上記第2の骨組が構成要素であることを特徴とする液体制振支持装置を提供する。
【0006】
本発明のその他の特徴によれば、上記本体は、上記デカップリング装置を含む。
【0007】
本発明のその他の特徴によれば、上記補償室の上記柔軟な壁面は、上記本体を部分的に
覆う蓋に密封状態に連結される。
【0008】
本発明のその他の特徴によれば、上記液体制振支持装置は、制限器カバーを有する。
【0009】
本発明のその他の特徴によれば、上記本体は、複合材料からなる。
【0010】
本発明のその他の特徴によれば、上記液体制振支持装置の製造方法は、以下の工程:
−上記連結部材と上記第1の骨組とを組み合わせ、
−上記連結部材の基底部の高さにおいて、上記本体を、上記連結部材と上記第1の骨組と
の組立体の上に再型取りして成型して取り付け、
−上記柔軟な壁面を上記蓋の上に再型取りして成型して取り付け、
−上記蓋と上記柔軟な壁面との組立体を、上記本体の上に組みつけられるように位置づける、
を含む。
【0011】
本発明のその他の特徴によれば、上記液体制振支持装置の製造方法は、弁が、上記本体及び上記連結部材から独立に付加されるか、あるいは、上記蓋に再型取りして成型して取り付けられるか、または上記連結部材に再型取りして成型して取り付けられる。
【0012】
本発明のその他の特徴によれば、上記蓋と上記柔軟な壁面との上記組立体が、上記本体の上に位置決めされ、超音波によって接合される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して行う実施の形態の説明を読むことによって明らかとなるであろう。これらの図面において:
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明による液体制振支持装置の垂直断面図である。
【図2】図2は、本発明による液体制振支持装置の、図1のII−II軸方向の断面図である。 以下の記述において、図1、図2の3面体によって示される縦、垂直、横方向を、非限定的に採用する。
【0015】
同一または類似の部品は、同じ参照符号によって指示される。
【0016】
図1に示すように、液体制振支持装置1は、付属する第2の骨組3を、本体9と第1の骨組2へ連結する連結部材8を有する。
【0017】
第1の骨組2と第2の骨組3との2つの骨組は、例えば、それぞれ自動車のシャーシ5と動力装置4に取り付けるために用いられる。第1の骨組2と第2の骨組3は、垂直軸に直交する面内に位置する。
【0018】
金属製の第1の骨組2は、全体として平面形状をなす。第1の骨組2の端部は、液体制振支持装置1をシャーシ5へ取り付けることを可能にする。第1の骨組2は、中央部に、型打ち成形によって垂直軸に沿って形成された突起部6を有する。
【0019】
円錐台形状をなし、内部が刳り抜かれた連結部材8は、接着または機械的係止のような周知の手段によって、第1の骨組2を第2の骨組3へ連結する。連結部材8は、突起部6から基底部8aまで、広がりながら、上へ向かって伸びる。連結部材8は、刳り抜かれた部分に、液体で満たされた作動室Aを有する。
【0020】
図2に示すように、第2の骨組3は、例えば再型取りして成型することによって、連結部材8の基底部8aの高さにおいて、本体9に組み込まれる。本体9は、連結部材8の基底部8aを覆う。基底部8aを覆うことによって、被覆部9aが構成される。作動室Aの、基底部8aの高さにおける、連結部材8の上部の中への延伸部は、本体9に組み込まれた部分である。本体9は、垂直軸に直交する面内を、連結部材8の周辺部へ伸びる。垂直軸に直交するこの面は、被覆部9aを通る。この延伸部を、延伸部9bと呼ぶ。本体9を形成する材料は、液体制振支持装置1の質量を軽減するために、複合材料から選ばれる。この複合材料は、例えば、炭素繊維織物が充填された芳香族ポリアミド−エラストマの中から選ぶことができる。
【0021】
連結部材8の周辺部へ伸びる延伸部9bは、本体9を動力装置4へ連結するためのボルトの通過を可能にする、3つの穴12を有する。
【0022】
連結部材8の基底部8aを覆う被覆部9aは、円形の液体通路Cを有する。
【0023】
本体9の表面は、超音波によって接合可能な蓋10によって主として覆われる。被覆部9aは、蓋10の部分10aによって完全に覆われる。延伸部9bは、蓋10の部分10bによって部分的に覆われる。穴12だけは、蓋10によって覆われない。
【0024】
蓋10は、蛇腹と呼ばれる柔軟な壁面11を有する。柔軟な壁面11は、連結部材8の基底部8aの周辺部へ伸びる蓋10の部分10bの上に位置する。柔軟な壁面11は、本体9の一部と共に、液体で満たされ、密封状態の補償室Bの範囲を定めるように、蓋10へ再型取りして成型することによって密封状態に接合される。
【0025】
作動室Aと補償室Bは、デカップリング装置13と、本体9の被覆部9aと延伸部9bとの接合部に位置する円形の液体通路Cとを介して、互いに永続的に連結される。液体通路Cは、狭窄通路17a、17bを介して、作動室Aと補償室Bの各々と通じている。
【0026】
デカップリング装置13は、弁14と、垂直軸に概ね平行な2つの格子15a、15bを含む。格子15a、15bは、蓋10と一体化された部分であってもよい。弁14は、連結部材8と本体9へ付加してもよく、あるいは連結部材8の上に再型取りして成型するか、蓋10の上に再型取りして成型して取り付けてもよい。弁14は、2つの格子15a、15bとの間に僅かな遊びを伴って装着される。弁14は、静止位置から、格子15a、15bの閉塞位置へ移行可能なように設けられる。格子15aは作動室Aに連通し、格子15bは補償室Bに連通する。
【0027】
デカップリング装置13は、振動数が20Hzを超え、振幅が微小な(例えば1mm以下)振動を吸収するために特に有効である。弁14が静止位置にあるときには、液体は、格子15a、15bの開口16を通過して、作動室Aと補償室Bの一方から他方へ移行することができる。
【0028】
液体通路Cは、狭窄通路17a、17bによって、液体が作動室Aと補償室Bとの間を移動することを可能にする。そこで、例えば振動数が20Hz以下で、振幅が大(例えば1mm以上)である振動の場合には、振動は、液体通路Cと狭窄通路17a、17bを介した、作動室Aと補償室Bとの間の液体の移動となって現れる。そこで、弁14は格子の閉塞位置へ移行し、弁14は格子15a、15bの1つに張り付けられる。
【0029】
他の1つの実施の形態によれば、第1の骨組2が動力装置4へ連結され、第2の骨組3がシャーシ5へ連結される。従って、液体制振支持装置1は、逆の位置にある。
【0030】
他の1つの実施の形態によれば、補償室Bは、作動室Aの上に設けられる。この場合、リジッドな隔壁が作動室Aと補償室Bの境界を定める。リジッドなこの隔壁は、1または複数の液体通路と1つのデカップリング装置を含むことができる。
【0031】
他の1つの実施の形態によれば、液体制振支持装置1を、第1の骨組2に取り付けられた、液体制振支持装置1の変形を制限して保護するための、制限器カバー(図示しない)によって覆うことができる。
【0032】
製造の際には、連結部材8と第1の骨組2が、例えば接着によって組み立てられる。物理的及び化学的特性に従って、連結部材8と第1の骨組2との組立体を本体9へ、または、本体9を連結部材8と第1の骨組2との組立体へ、再型取りして成型して取り付ける。弁14は、本体及び連結部材と独立に付加してもよく、あるいは、蓋10に再型取りして成型するか、または連結部材8に再型取りして成型して取り付ける。柔軟な壁面11は、成型された後、蓋10へ再型取りして成型して取り付けられる。蓋10と柔軟な壁面11との組立体は、本体9の上に位置づけられ、超音波によって接合される。使用される材料の物理的及び化学的特性に従って、製造工程における再型取りして成型して取り付ける工程の順序を変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのリジッドな部材(4、5)の間の緩衝及び連結のために設けられる液体制振支持装置(1)であって、上記液体制振支持装置(1)は:
−連結するべき2つの上記リジッドな部材(4、5)にそれぞれ連結されるための第1の骨組(2)と第2の骨組(3)との2つの骨組(2、3)と、
−上記第1の骨組(2)と上記第2の骨組(3)とを相互に連結する連結部材(8)と、
−液体で満たされ、上記連結部材(8)によって範囲を限定された作動室(A)と、
−液体で満たされ、柔軟な壁面(11)によって範囲を限定された少なくとも1つの補償室(B)と、
−上記作動室(A)を上記補償室(B)と連通させる液体で満たされた液体通路(C)と、
−デカップリング装置(13)と、
を含む液体制振支持装置において、
本体(9)が、上記液体通路(C)と、上記補償室(B)と、上記第2の骨組(3)とを少なくとも含むことを特徴とする、液体制振支持装置。
【請求項2】
上記本体(9)は、上記デカップリング装置(13)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の液体制振支持装置。
【請求項3】
上記補償室(B)の上記柔軟な壁面(11)は、上記本体(9)を部分的に覆う蓋(10)に密封状態に連結されることを特徴とする、請求項1または2に記載の液体制振支持装置。
【請求項4】
上記液体制振支持装置(1)は、制限器カバーを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の液体制振支持装置。
【請求項5】
上記本体(9)は、複合材料からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の液体制振支持装置。
【請求項6】
以下の工程:
−上記連結部材(8)と上記第1の骨組(2)とを組み合わせ、
−上記連結部材(8)の基底部(8a)の高さにおいて、上記本体(9)を、上記連結部
材(8)と上記第1の骨組(2)との組立体の上に再型取りして成型して取り付け、
−上記柔軟な壁面(11)を上記蓋(10)の上に再型取りして成型して取り付け、
−上記蓋(10)と上記柔軟な壁面(11)との組立体を、上記本体(9)の上に組みつけられるように位置づける、
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の液体制振支持装置(1)の製造方法。
【請求項7】
弁(14)が、上記本体(9)及び上記連結部材(8)から独立に付加されるか、あるいは、上記蓋(10)に再型取りして成型して取り付けられるか、または上記連結部材(8)に再型取りして成型して取り付けられることを特徴とする、請求項6に記載の液体制振支持装置(1)の製造方法。
【請求項8】
上記蓋(10)と上記柔軟な壁面(11)との上記組立体が、上記本体(9)の上に位置決めされ、超音波によって接合されることを特徴とする、請求項6に記載の液体制振支持装置(1)の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−97902(P2012−97902A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−269649(P2011−269649)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2007−519849(P2007−519849)の分割
【原出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】