説明

液体加熱装置

液体を加熱するための装置は、加熱室(704)と、供給室(712)と、導管(710)とを備える。導管(710)は、加熱された液体を自動供給するために加熱室(704)から供給室(712)へ搬送する。供給室(712)は、加熱された液体を供給する弁手段(714)を有し、この弁手段は自動供給を中断するように動作可能である。液体を加熱するための装置は、加熱室(804)と、供給室(812)と、導管(810)とを備える。導管(810)は、加熱された液体を自動供給するために加熱室(804)から供給室(812)へ搬送する。装置は、加熱された液体の自動供給量を決めるための手段(866)をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水やその他の液体を加熱するための装置に関し、特に、短時間に比較的少量の液体を加熱するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲み物を作るために水を加熱することは、世界中でほぼ共通のニーズである。英国やその他のヨーロッパ各地では、一般的にほとんどの家庭がケトル(湯沸かし器)を所有し、飲み物を作る折々に水を沸騰させるのに使っている。より大きな施設やまた世界のその他各地においても、「要望に応じて(オンデマンドで)」(つまり、室温から水が加熱されるのを待つことなく)飲み物を作れるように、まとまった量の水を長時間(場合によっては一日中)にわたって高温又は沸騰した状態にしておくことがより一般的である。このような一例として伝統的な電気紅茶湯沸かし器(urn)や、アジアでより一般的であるいわゆるエアーポットがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらの装置にはそれぞれ短所がある。ケトルの場合、たとえ非常に高電力のケトル(3キロワット程度)を使ったとしても、冷めた状態(つまり、蛇口から汲んだときの温度)の水を加熱するのには時間がかかり、ユーザにとっては不便であると考えられている。これは、必要な水量を予測することがケトルを充填する際には難しい点やそれに伴って必要量以上の水を沸騰させがちになり沸騰するまでにさらに時間がかかってしまうという点を考えると、特にそうである。一方、沸騰した状態や沸騰する直前の状態に水を長時間保っておくとなると、熱損失を補うために相当な量のエネルギーが必要となる。
【0004】
最近、この欠点を補おうと試みた装置が商品化されている。これら装置は、冷水の貯液器からカップ一杯分の湯をわずか数秒で送りだすことができると言われてる。しかし、これら装置は一般に管状のフロー式ヒーターに基づいており、このような装置にはいくつか重大な欠点があることを出願人は認識している。まず初めに、管状のフロー式ヒーターに特有であるが、水蒸気ポケットにより生じるホットスポットでヒーターが過熱及び/又は管内の圧力が高くなりすぎる危険性を避けるために、管内の水が沸点に達する前に加熱を中止しなければならない。もう一つの欠点として、ヒーターは比較的急速に熱くなるものの、目標温度にまで加熱されていないヒーターを通り抜けることとなる初期量の水が必然的に存在する。この水は、それ自身はまだ沸点に達しておらず、その後に生成された水と混ざりあって水の平均温度を下げてしまう。これら2つの要因が組み合わさると、このような装置で生成される水は実際には供給されるころまでには沸点よりもずっと低い温度に下がってしまい、お茶を作る等の用途に適さなくなる。その結果、消費者へのアピール度が低くなる。
【0005】
本発明は、水等の液体を好ましくは沸騰又は沸騰に近い状態にまで加熱することができ、また、加熱された液体の供給量を制御可能な装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の局面によると、本発明は液体を加熱するための装置を提供する。この装置は、加熱室と、供給室と、加熱された液体を上記供給室から自動供給するために上記加熱室から上記供給室へ搬送する導管とを備え、上記供給室は加熱された液体を供給する弁手段を備え、上記弁手段は上記自動供給を中断するように動作可能である。
【0007】
したがって、当業者には分かるように、本発明によると、水などの高温液体を供給できる装置は、加熱用及び供給用の二つの別個の室を備える。加熱室は、好ましくは、内部の水などの液体が沸騰するまで加熱され、沸騰に伴う圧力の増加によって加熱された液体が導管に押し込まれ供給室に排出されるように構成されている。これは、圧力がかかって危険な沸騰水や蒸気が供給室に安全に吐出されると同時に、より低速且つ一定の流れでその水を吐出口から排出することができるということを意味している。この水の流れは基本的には加熱室から引き続き流れ込む水とは無関係である。つまり、供給室は、加熱室の吐出口をユーザが使用する吐出口とは分離するように効果的に機能する。
【0008】
供給を中断する弁手段を設けることにより、ユーザはどれくらいの液体を供給するかを制御することができる。これによって、かかる器具の汎用性や実用性がさらに向上する。ユーザは、自動機構によって弁が閉じる時間や量を予め選択することにより制御を行ってもよいが、別の選択肢として又便宜上、弁はユーザによって操作可能であり、所望量が供給されたと同時にユーザは簡単に弁を閉じることができる。
【0009】
弁手段が開いたときに供給室内の液体を供給する方法としては、いくつかの方法が可能である。例えば、一連の実施形態において、供給室内の加熱された液体を注ぎ口に通じる穴を介して簡単に排出することができる。この穴の寸法は、安全な最大流出量が得られるように選択することができる。一連の別の実施形態において、液体は、供給室内の液面が一定のレベルに達した場合に、例えばサイフォン装置等を使って供給される。この場合、液体がサイフォン内に残留して次に排出される液体が冷めてしまうという問題を避けるために、弁をサイフォンの入口に配置してもよい。
【0010】
好ましくは、ユーザによって操作可能な弁は、加熱室内のヒーターへの電力を遮断するか或いは減少させるためのスイッチに連結されている。例えば、蒸気作動スイッチ(steam-operated switch)に作用するように構成された部材によって弁を作動させてもよい。ただし、これは一方向連結であることが望ましい。つまり、蒸気スイッチの動作では弁は作動しないことが望ましい。
【0011】
このような装置は、供給室がなくても採用することができる。この場合、加熱された液体は加熱室から直接供給される。したがって、別の局面によると、本発明は一定量の液体を加熱するための装置を提供するものである。この装置は、内部の液体を加熱する電気ヒーターを有する加熱室と、上記加熱室からの液体を供給する供給装置とを備え、上記供給装置は、上記液体の供給を中断する手動操作可能な弁を備え、上記弁は上記電気ヒーターへの電力を遮断するか或いは減少させるためのスイッチ接点に連結されている。既に述べたように、スイッチ接点は蒸気感応式(steam-sensitive)スイッチに関するものであることが好ましく、またスイッチは供給を中断することなく電気ヒーターへの電力を遮断するか或いは減少させるように独立して動作可能であることが好ましい。
【0012】
供給室の吐出装置の任意の場所(例えば、供給注ぎ口)に弁を設けることには不利な点もあり得る。例えば次に装置を使用する場合、供給されずに供給室内に貯留されていた液体が最初にユーザの容器に供給され、その既に冷めていた液体によって次に供給される液体の平均温度に悪影響が及ぶ可能性がある。しかし、好適な実施形態においては、供給室は供給室から供給されなかった液体を排出する、つまり、加熱室或いはバルク貯液器(bulk reservoir)に戻すための排液口を備えている。これは、それ自体として新規性且つ進歩性を有するものであり、したがって、別の局面によると、本発明は液体を加熱するための装置を提供するものであり、この装置は加熱室と、供給室と、加熱された液体を上記供給室から自動供給するために上記加熱室から上記供給室へ搬送する導管とを備え、上記供給室は、上記供給室から供給されなかった液体を排出する排液口を備える。
【0013】
上述のように、排液口は液体貯液器に排液するように配置し得る。ただし、いくつかの実施形態では、排液口は加熱室に排液するように配置されている。これは、貯液器と器具の他の部分との間に別の分離可能な接続を設ける必要がなくなるため、貯液器が着脱可能な実施形態で都合がよい。したがって、別の局面によると、本発明は加熱された液体を供給するための装置を提供するものであり、この装置は加熱室と供給室とを備え、加熱された液体を上記加熱室から上記供給室へ吐出して上記供給室から自動的に供給するように構成され、上記供給室は供給されなかった液体を上記供給室から上記加熱室に戻すように配置されている排液口を備える。
【0014】
好ましくは、排液口から加熱室への液体の流れを制御するように弁が設けられる。一般的に、弁は液体が吐出されている間は閉じられ、吐出が終了した後に開く。
【0015】
排液口は適切な導管によって加熱室に直接接続され得る。ただし、一連の好適な実施形態においては、供給室と加熱室との間に補助室が設けられ、供給室から排出された液体を一時的に(例えば、加熱室に液体を送り込むための弁が開くまで)集めることができる。これは例えば、排出される液体量が接続導管の容量よりも多くなり得る場合に役立つ。
【0016】
一連の実施形態において、装置は着脱可能な貯液器を備えている。これによって、この装置の利点が最大限に活用できる。貯液器は個別の加熱素子を備えていてもよく、例えばケトルに類似している。
【0017】
排液口は、標準的な供給動作の時間尺度で大量の液体が排出されることのないように十分に低い流量で設計し得る。例えば、排液口は、供給室の全内容量が少なくとも1分、好ましくは2分以上の時間に渡って排出されるような流量を有するように構成してもよい。
【0018】
好都合には、排液量は十分に低いが、事実上一切の排液を防ぐメニスカスが穴の上部に形成されるのを防止するには排液量が十分に高くなるように、排液口は適切な大きさ及び形状に構成された穴を備えている。
【0019】
また、好ましくは、排液口は弁を備えている。この弁は、タイマーによって自動的に或いは何か別の条件が満たされると開くように作動し得る。一連の好適な実施形態において、排液弁は、供給室からの液体の供給を制御する弁手段に連結されている。こうすることによって、排液弁は供給弁が閉じたときに開き供給弁が閉じたときに開くので、液体が不必要に供給室に貯留されることがなく、同様に供給中に液体が漏れ出ることもない。したがって、排液弁が開いた場合、供給室内に残留している液体を速やかに排出することができる。便利な実施形態において、液体の流れを供給口及び排液口のいずれかに向けることができる分岐弁(diverter valve)が設けられる。
【0020】
上述の本発明の実施形態によると、供給弁は、手動或いは自動で開口して器具から供給される水量を決めるように配置することができる。多くの場合、後者の配置のほうが供給中に注意をはらう必要がないのでユーザにとっては便利である。しかし、液体を供給する自動制御弁によって制御可能な供給量を実現することは本質的なことではない。従って、別の局面によると、本発明は液体を加熱するための装置を提供するものであり、この装置は加熱室と、供給室と、加熱された液体を上記供給室から自動供給するために上記加熱室から上記供給室へ搬送する導管とを備え、加熱された液体の自動供給量を決めるための手段をさらに備える。
【0021】
したがって、本発明のこの局面によると、ユーザは加熱された液体の供給量を予め設定することができる。一連の実施形態によると、これは、供給室から供給される液体量を制御する手段によって実現することができる。この液体量は、加熱室で加熱される液体量よりも少なくてもよい。このような手段は、加熱室から供給室へ導管を通って流れる液体量を制御するように配置し得る。例えば、一連の実施形態によると、加熱室内における導管の端部の高さは可変で、加熱された液体の吐出後に加熱室内に残る液体量を変化させるようになっている。
【0022】
一連の別の実施形態において、装置は、供給室内の液体が実際にどれくらい供給されるかを制御するように構成される。これを実現する方法の一つとしては、本発明の第1の局面の中で先述したように、自動制御吐出弁を用いることである。ただし、他の様々な方法も可能である。例えば、いくつかの実施形態において、供給室内の液面が所定のレベルに達した場合にサイフォンが作動して、供給室内の液体の排出を継続するようなサイフォン式吐出装置を設け得る。供給される液体量を制御するために、弁等の自動制御手段を設けて、例えば空気をサイフォン管に入れることによってサイフォンを途絶させることもできる。
【0023】
一連の実施形態によると、供給室は、液体の一部を供給する代わりに排出する排液手段を備えている。この排液手段は、排液量を変化させるように構成されている。このような実施形態は、供給量に対する排液量を適切に設定することにより供給される液体量を都合よく制御することができ、また特に実施しやすい。好ましさは劣るが、発明の範囲内である別の選択肢として、排液量を一定にし供給量を可変にしてもよい。
【0024】
予め設定された自動供給量を制御することと供給の流れを中断する手段を有することとは重複可能であり、所与の器具に両方の特徴を備えることができる。したがって、供給量を予め設定できる一方、それを手動の停止操作で無効にすることができる。前節で記載された実施形態の文脈において、供給が中断された場合には、排液手段は供給室の排液を行うという更なる役割を果たし得る。
【0025】
それに加えて、または、それに代わって、加熱室で実際に加熱される液体量を制御する手段を設けてもよい。この特徴を有さない器具にこの手段を設けるためにはかなり大幅な再設計が必要となるが、そうすることによって実際に必要な液体量のみを加熱することになるので、エネルギーをより効率的に使うことができるという利点がある。これを実現させるには多くの方法がある。所定量の液体を加熱室に送り出すために、例えば、貯液器等から加熱室への液体の流入を調節するポンプや弁をタイマーやレベル検出器で制御することができる。一連の実施形態において、加熱室は、液体が流入すると一つ又は複数の通気口を介して空気が排出されるように構成され、該一つ又は複数の通気口は加熱室内の液面が所定量に対応するレベルに達したときに閉じるように配置されている。
【0026】
これは、それ自体として新規性且つ進歩性を有するものであり、したがって、別の局面によると、本発明は所定量の液体を加熱するための装置を提供するものであり、この装置は室内で加熱された液体を圧力をかけて室外へ吐出するための吐出口を有する加熱室と、液体貯液器と、貯液器から加熱室へ液体を移送する手段とを備え、加熱室は、液体が流入すると一つ又は複数の通気口を介して空気が排出されるように構成され、該一つ又は複数の通気口は加熱室内の液面が所定量に対応するレベルに達したときに閉じるように配置されている。
【0027】
好都合には、通気口は、加熱された水を加熱室から吐出する吐出口又は導管を備えている。所定レベルに達した場合に通気口を閉じるための機械的装置を構想することはできるが、最適には、液体自体が通気口を覆うことで通気口は閉じられる。
【0028】
好ましくは、ユーザが所定量の水を調節できることが好ましい。この調節は、排出管又は導管の端が加熱室内に延在する深さを調節することによって実現できる。例えば、テレスコープ型装置を使うことによって、或いは加熱室内に液体を流入させるためにどの通気口又は通気口のどの部分を最初に開口するかを変えることによって実現できる。加熱室内における管又は通気口の位置が高いほど、より多くの液体を加熱室に流入させることができる。
【0029】
より一般的には、本発明は所定量の液体を加熱するための装置を提供するものであり、この装置は、室内で加熱された液体を圧力をかけて室外へ吐出する吐出口を有する加熱室と、液体貯液器と、貯液器から加熱室へ液体を移送する手段と、所定液体量に達した場合に貯液器から加熱室への液体の移送を中止する手段とを備え、液体の移送を中止する手段は、所定液体量を変化させるように調節可能である。
【0030】
液体の移送を中止する手段は、液体を移送する手段を備えていてもよく、又は、そのような手段に作用してもよい。一例をあげると、調節可能なフロート弁を使って加熱室内への水の侵入を調節してもよい。ただし、本発明の先の局面について言うと、一連の好適な実施形態において、加熱室には室内が液体で満たされるにしたがって空気を排出することができる通気口が備えられており、液体の移送を中止する手段は、該所定量に達した場合に閉じるような通気口の配置を含んでいる。
【0031】
前述の本発明の二つの局面において、吐出口は、好ましくは、本発明の先の局面と同様に、液体を例えば注ぎ口を介してユーザに供給するために液体を供給室へ案内する導管に接続されている。
【0032】
いくつかの実施形態において、供給室の入口は、加熱室で生成され導管を通って行く蒸気が供給室に既に収納されている水や他の液体を通るように配置されている。これには二つの利点がある。第一に、供給室内の水を通る蒸気は、凝結する際に水に追加の熱を加えるという点である。これは、供給室内の水のバルク温度(bulk temperature)が上昇するのを助け、目標温度ではない可能性がある加熱室から出る初期量の水の悪影響を打ち消すことができる。
【0033】
上述の装置の第二の利点は、加熱室から出る蒸気は水を通って凝結するので、蒸気が装置の最終注ぎ口から吐出されてユーザに触れてしまうという危険性がかなり低くなる。したがって、加熱室は、管状のフロー式ヒーターで可能な温度よりも高い温度に水を加熱するように構成することができる。つまり、蒸気が管状のフロー式ヒーター装置に及ぼす悪影響は本発明の実施形態による装置においては同程度の要因にはならないので、蒸気が発生するほど水を沸騰するまで加熱することがより実現可能となる。これらの複合効果として、本発明の好適な実施形態では、蒸気が水と一緒に吐出されるという危険性なく、例えばカップ一杯分等の少量の液体をほぼ沸騰温度でユーザに供給することができる。
【0034】
供給室はその入口構成から出る蒸気が例えば供給室内に収容されている液体を通る際に再凝結するように構成されることが好ましいが、蒸気の一部は液体の上方の空間に逃げる可能性がある。したがって、供給室は、収容されている液体の上方で圧力が上昇するのを防ぐために、供給室の上部に一つ又は複数の通気口を有することが好ましい。これには、十分な蒸気が蒸気スイッチに達するということと、供給速度が速くなりすぎるのを防ぐという利点がある。
【0035】
本発明のどの局面であっても、加熱室は、その室内の水などの液体を沸騰するまで加熱し、沸騰に伴う圧力の上昇によって加熱された液体が導管に押し込まれ供給室に排出されるように構成されるのが好ましい。
【0036】
加熱室と関連付けられるヒーターは任意の簡便な形態にすればよい。ヒーターは例えば浸漬型ヒーター(immersion type heater)、また好ましくは、加熱室の壁(好ましくは加熱室の底部)を形成するヒーターを備えていてもよい。実のところ、便利な実施形態において、ヒーターは、普通の家庭用ケトルに用いられるもの(例えば、被覆抵抗加熱素子(sheathed resistance heating element)が加熱板の裏面に取り付けられたもの)と実質的に類似している。別の実施形態において、厚膜ヒーターを採用してもよい。
【0037】
水や他の液体は、例えばポンプや静水圧など任意の簡便な方法で加熱室に供給すればよい。ただし、現時点で好適な実施形態において、液体貯液器は加熱室に隣接して設けられ、加熱室と選択的に流体連通状態となっている。例えば、加熱室は、大きな液体貯液器の細分部を構成していてもよく、必要な場合に液体を液体貯液器から選択的に加熱室に通すことができる。選択的な連通は、例えば少なくとも一部が格納式になっている壁、仕切り(divider)、又はバッフル(baffle)によって実現できるが、好ましくは、加熱室の壁に設けられる弁によって実現してもよい。好ましくは、加熱室は貯液器の台の下に設けられ、重力/静水圧で水が流入できるようになっている。
【0038】
いくつかの実施形態によると、貯液器は、例えば再充填できるように着脱可能になっている。
【0039】
一連の実施形態によると、弁は、加熱室が所望のレベルにまで満たされた場合に閉じるようになっている。例えば、弁の位置は加熱室内の水位に応じて異なってもよい。好都合には、弁は浮遊してこれを実現するように構成される。一連の実施形態において、加熱室が所望のレベルにまで満たされた場合に閉まった状態になるように構成されるフラップ弁が設けられる。別の実施形態によると、フラップ弁よりも頑丈な(robust)自由浮遊弁部材が採用される。弁部材は任意の簡便な形態にすればよい。例えば、ボールを備えていてもよい。或いは、丸剤(pill)状、円盤(discus)状、またはずんぐりした円筒形状(squat-cylindrical in shape)をしていてもよい。一連の好適な実施形態において、弁部材は例えば切頭円錐形状(frusto-conical)のように下方向に先細りになっている。こうすることによって、弁部材が使用中に固着する可能性が最小限になることが分かっている。
【0040】
供給室から加熱室に排出された液体の侵入を制御する弁が用いられている場合は、好ましくは、自由に浮遊する弁部材も備えている。この弁部材は、例えば切頭円錐形状のように下方向に先細りになっているのが好ましい。
【0041】
加熱室と貯液器とが弁によって分離されている全ての実施形態において、弁は加熱室内の圧力増加によって閉じられるように構成されているのが好ましい。これは、もちろんフラップ弁や上述の弁部材についても同様である。
【0042】
弁は、簡素な(例えば円形の)孔(orifice)を水貯液器と加熱室とを隔てる壁に備えていてもよい。ただし、一連の好適な実施形態において、この孔は中央部分から延在する複数のローブ(lobe)を有する形状を有している。これは、加熱室からの空気がローブを通って貯液器に流れることから、所定面積の孔に対してより良好な流動性が得られることが分かっている。
【0043】
いくつかの好適な実施形態において、弁の入口は、液体を主に垂直にではなく主に水平に通すように構成される。また、一つ又は複数の阻流板(baffle)を弁の入口周囲に設けることが好ましい。このような措置はそれぞれ、貯液器の液面が低い場合に過剰な空気が加熱室に引き込まれるのを避けるためのものである。これによってノイズが減少する。高ノイズレベルを引き起こすのは空気が急激に取り込まれるせいであることを出願人は見出した。
【0044】
好ましくは、加熱室には、加熱室内の圧力が閾値を超えた場合に開く圧力除去弁が備えられている。これは、例えば、排出管が何らかの理由でふさがれた場合に生じ得る。大気に通気する従来の圧力除去弁(例えば、伝統的なエスプレッソコーヒーメーカーに見られるものと類似のもの)を設けてもよい。ただし、好適な実施形態において、圧力除去弁は、過剰な圧力を器具内部の非加圧部分(例えば、設けられている場合には水貯液器等)に排出するように構成されている。これは、蒸気が圧力によってユーザの近くに排出される危険性(ただし、起こる可能性は少ないが)を実質的に排除できるという点でより安全だと考えられている。さらに、一連の好適な実施形態において、圧力除去弁は、加熱室に水を流すように作用するという第二の役割を果たしている。つまり、いくつかの好適な実施形態において、弁は、その両側にいずれの方向であれ圧力差がある場合に開くように構成されている。好ましくは、弁は、一方向には他方向よりも低い圧力差で開くように構成されている。こうすることによって、弁は、より効果的に上述のように機能することができる。なぜなら、加熱サイクルの終了時に加熱室に引き起こされる真空は一般に圧力除去が必要とされる過剰圧力よりも大気圧に対して低い圧力差を示すからである。
【0045】
一連の好適な装置において、上述の弁は、少なくとも一つのスリットが形成されたドーム形の弾性ダイヤフラムを備える。ドーム形状は、上述した非対称の圧力特性をもたらす。ダイヤフラムの凹側の圧力が、凸側の圧力よりも次第に大きくなるにつれて(例えば、凸側に真空が発生するので)、ダイヤフラムのスリットが開かれ、それによってスリットを介して流体が流通する。この働きにより、ダイヤフラムは、沸騰水が加熱室から出た後加熱室内に真空が発生した場合に加熱室に水を流すのに適している。したがって、好適な実施形態において、弁は、水貯液器と加熱室との間にダイヤフラムの凹側が水貯液器に面した状態で設けられる。ここで記載する弁は、上記のフラップ弁又はフローティング弁部材の構成と置き換えることができる。ただし、上記のフラップ弁又はフローティング弁部材の構成に加えて設けられるのが好ましい。これは、水が吸引される全体的な有効面積が増えることから、加熱室に水を急激に吸引することに伴う不所望なノイズを減少させるのに役立つ。
【0046】
どの段階に関わらず、加熱室内の圧力が危険レベルに達した場合には、凸側の圧力はダイヤフラムの曲率を「スナップ」動作で反転させるのに十分な圧力となり、これによりスリットが開いて加熱室内の圧力を低減させることができる。
【0047】
これまでに述べた装置では、供給が行われた後、液面の低下及び/又は加熱室内の圧力の低下に反応する一つ又は複数の弁によって加熱室が自動的に再充填された。しかし、可能性はこれだけではない。一連の別の実施形態では、加熱室の水が沸騰することによって生成された蒸気に反応する弁が設けられている。もちろん、これを実現するには電子的方法等多くの方法があるが、簡単な例では、蒸気感応式作動装置(steam-sensitive actuator)(バイメタル作動装置等)が貯液器と加熱室との間の弁に機械的に連結されている。好ましくは、蒸気の存在下で作動装置が作動すると、弁が閉じ、ユーザによって次の加熱サイクルが選択されるまで冷たい水が加熱室に入らないように構成されている。このような構成では、装置は次の加熱動作が始まったときに加熱室を再充填するように構成されるのが好ましい。
【0048】
好適な実施形態において、沸騰した液体は圧力を受けて導管及び供給室に押し込まれるので、供給室は加熱室に対して任意の便利な配置で設けることができる。例えば、加熱室の側面や下などが挙げられるが、好ましくは、供給室は加熱室の上に設けられる。一連の好適な実施形態において、加熱室と供給室はそれぞれ容器の下部及び上部に設けられ、その間に水貯液器が規定されている。
【0049】
加熱室は、供給室に繋がる導管を除いて密閉されていてもよい。ただし、一連の好適な実施形態において、通気手段が加熱室に設けられている。これには、いくつかの潜在的な利点がある。一つ目の潜在的利点は、通気によって加熱の初期段階における加熱室内の圧力の上昇が低減し、十分に加熱される前に水が導管から吐出されるのを防ぐことができるという点である。もう一つの利点は、蒸気を逃がすことができるという点である。蒸気は、加熱段階に弁部材を不安定にさせる可能性があり、それによって冷水が中に入って沸騰時間が増加してしまう。もう一つの潜在的利点は、導出管が何らかの理由で塞がれた場合に加熱室内の圧力が危険なレベルまで増大するのを防ぐように通気手段が作用できるという点である。この通気手段は、例えば上述のタイプの圧力除去弁に加えて又はその代わりに設けてもよい。
【0050】
通気手段は水貯液器と通じていてもよい。例えば、通気手段は、水貯液器と加熱室との間に一つ又は複数の孔(aperture)を単に含んでいてもよい。一連の好ましい実施形態において、通気手段は大気に開口している。これは、加圧空気や蒸気が水貯液器を通る際の潜在的なノイズ源を回避できるという点で有利である。また、押しのけられた空気を逃すことによって貯液器から加熱室に水が円滑に流入するのに役立つ。
【0051】
通気手段は、器具の外部に通気を行うように構成されていてもよいが、このような構成は蒸気がユーザの近くに吐出される可能性が大きくなるため理想的とは考えられない。したがって、好ましくは、通気手段は器具内の空域(airspace)へ通気する。この空域は特別に設計された空間でもよいし、貯液器でもよい。ただし、好ましくは、通気手段は供給室に通気を行うように配置される。通気手段は、好ましくは加熱室の上部から、より好ましくは加熱室の上面から通気する。つまり、通気手段は、加熱室が水で満たされた場合にできる「上部空間」(headspace)から通気し、液体ではなく気体がそこから確実に吐出されるようになっていることが好ましい。
【0052】
一般に、通気手段の寸法は、加熱室内の水を最初に加熱した段階では内部の圧力の上昇が不十分で供給室に水は吐出されないが、水が沸点に近づくにつれて加熱室内に十分な圧力が発生して水が吐出されるような寸法に決められる。
【0053】
先に述べたように、好適な実施形態によると、加熱室内の液体は沸騰するまで加熱され、それによって導管を介して供給室に押し込まれる。しかし、本出願人は、加熱されるのは比較的少量の水なので、加熱室の底部の下面に取り付けられた被覆素子(いわゆる「床下」ヒーター)等の標準的な加熱素子の熱慣性が重要になり得ることに気づいた。しかし、これを考慮すると、加熱室内の液体が沸点に達する前に意図的に素子への給電をオフにして素子の余熱に頼って液体を沸騰させ吐出することによって、素子にかかる熱応力を減少させることができる。これによって、素子が液体に接触することなく通電されて過熱する危険性が減少する。
【0054】
もちろん、この効果を得るために素子への電力を遮断する必要がある温度は、加熱される液体やその量及び素子自体の熱質量に左右される。標準的な被覆床下素子及びおよそ200ml容量の加熱室を使うと、素子への電力を遮断する必要がある温度はおよそ90℃であることがわかった。したがって、本発明のいくつかの実施形態によると、水温が90℃に達した場合に素子への電力を中断するように構成された制御手段が設けられる。好都合には、そのような制御手段は本出願人によるケトル用に開発されたUシリーズの制御装置のうちの一つの変形の形態(詳細はWO95/34187に開示されている)で提供することができるが、バイメタル作動装置(bimetallic actuator)のうち一つはおよそ90℃の動作温度を有する装置に置き換えられる。そのような制御装置を用いることによる有利な点は、例えば貯液器に水がなくなる等の結果として加熱室に水が無い状態で動作することにより素子が万一過熱した場合に第2のバックアップ作動装置を提供することができる点である。
【0055】
一連の別の実施形態において、装置は、加熱・供給サイクルの別の部分を検出することに応じて、加熱素子への電力を遮断するように構成されている。一連の実施形態によると、装置は、供給室内の水、蒸気、及び温度又は圧力上昇のうち少なくとも一つの存在に反応して加熱室に関連づけられた加熱素子への電力を遮断するための手段を備えている。例えば、一実施形態において、可変供給量を提供し得るように調整可能であってもよいフロート作動スイッチが供給室に関連して設けられ、供給室内の液面が所定レベルに達した場合に素子への電力が遮断される。別の実施形態では、蒸気感応式作動装置(steam-sensitive actuator)を用いて素子への電力が遮断される。
【0056】
一連の実施形態において、従来の蒸気スイッチが、加熱室で発生した蒸気が蒸気スイッチに当たるように加熱室と気体連通して設けられる。また、一連の実施形態によると、蒸気スイッチは垂直管の頂部に設けられ、垂直管のネックは導管より狭くなっており、及び/又は、垂直管は沸点に達したときに加熱された水が垂直管内に排出されるのを防止するように構成される。いくつかの実施形態において、蒸気スイッチは、貯液器と加熱室との間の弁を閉じるように配置される。それに加えて、または、それに代えて、蒸気スイッチは、手動で操作される供給中断機構によってヒーターへの電力を遮断するように作用する。
【0057】
上述のいずれの実施形態においても、素子への電力を遮断するための機構は、加熱室で加熱された液体の全て或いは実質的に全てを吐出するのに十分な圧力があるように構成することができる。しかし、着想されるいくつかの実施形態では、加熱室及び素子電力遮断機構の構成は、加熱室に残る液体の一部を意図的に残すようにしたものであってもよい。これは、新たな、より低温の液体が例えば貯液器から加えられた場合に素子及び/又は加熱室が受ける「熱衝撃」を低減させることができるという点で有利である。また、まとまった量の液体が吐出された後に発生する蒸気の量を減少させることができる(そして、バイメタル装置がある場合、そのリセット時間を最小限におさえることができる)という点でも有利である。また、サイクルのうち加熱の最初に十分な蒸気が発生してサイクルが時期早尚に終わってしまうという危険性も減る。例えば、出願人は、上記の導管を短くすることにより、サイクルの終了時に液体の一部が加熱室に残るということに気づいた。先に述べたように、この量は、例えば加熱室内の導管の端を引き上げるか又は引き下げるかよって調節可能である。ただし、一連の好適な実施形態において、ヒーターはその一つ又は複数の部分(例えば、加熱領域)に優先的に液体を保持するようになっている。例えば、ヒーターが加熱板の下面に取り付けられた被覆加熱素子を備える場合、加熱板には一部の素子または全ての素子の上方に凹部が形成され得る。これによって、残される液量(及び各加熱サイクルで無駄になるエネルギー)は最小化されるが、水は最も必要な場所に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
例として、本発明の好適な実施形態を添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に従って改良可能な、参照用のみのために記載された器具の破断図である。
図2及び図3は、図1に示す器具の加熱室の断面を示す図である。
図4は、図1に示す器具の供給室及び排出口の断面を示す図である。
図5は、図4と同様に、参照用のみのために記載された別の器具の供給室の断面を示す図である。
図6は、加熱室の断面を示す図である。
図7は、加熱室及び蒸気管の断面図である。
図8は、別の供給室の断面図である。
図9は、さらに別の供給室の断面図である。
図10は、加熱室の上部壁部材の斜視図であり、二つの別々の弁装置を示している。
図11は、図10に示す壁部材を下から見た場合の断面図である。
図12は、本発明の一実施形態の概略図である。
図13は、加熱される水の量を変化させるための機構の概略図である。
図14は、図13に示す機構の一部の概略図である。
図15は、本発明の一実施形態における構成要素を示す図であり、導出管を断面で示している。
図16は、図15に示す構成要素の断面図である。
図17は、本発明の別の実施形態による供給室の断面図である。
図18は、図17に示す構成要素のいくつかを示す分解図である。
図19a及び図19bは、本発明の別の実施形態による供給室の断面図であり、それぞれ異なる位置にある弁を示している。
図20は、本発明のさらに別の実施形態による供給室の外観斜視図である。
図21及び図22は、図20に示す供給室の断面斜視図であり、それぞれ異なる位置にある弁を示している。
図23は、着脱可能な貯液器を採用する本発明の別の実施形態によるいくつかの構成要素の斜視図である。
図24は、図23に示す構成要素の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
まず図1を参照すると、「下部切取(アンダーカット)」部4を前面に有する外体2を備えた湯供給容器が示されている。下部切取部4は、ユーザが吐出口6の下にカップや他の入れ物を置くためのスペースを規定するものである。容器内部は3つの主要部分に分割されている。容器下部は加熱室10であり、この詳細については図2及び図3を用いて後述する。容器上部は供給室10であり、この詳細については図4を用いて後述する。加熱室8と供給室10との間には水貯液器12が設けられている。水貯液器は、本体に設けられた適当な開口(図示せず)を用いて充填することができる。導管14は、水貯液器12を貫通して加熱室8を供給室10まで繋いでいる。
【0060】
ここで図2及び図3は、加熱室8をさらに詳しく示したものである。ケトルや他の湯沸かし器に関する技術分野の当業者には周知のように、加熱室の底部は床下加熱素子装置によって規定されている。したがって、加熱室の底部は、略平面中央部を有し周辺部に上向きに開口する溝(チャネル)18が形成された、金属製の(好ましくはステンレス鋼製の)板16から構成される。溝18には、加熱室カバー部材22の下垂する壁部20が収容される。溝18には、L字形断面の封止材も設けられており、当技術分野では周知であり且つWO96/18331で詳述されているように、使用時には周辺溝18の両壁を共にクランプ締めして、加熱板16と下垂する壁部20との間を確実に且つ水密に封止することができる。
【0061】
上述の環状壁部20は、加熱室カバー部材22の略平面上部26から下方向に懸垂している。上記環状壁20の半径方向外側には、下方向に懸垂するさらに別の環状壁28がカバー部材22の周辺に設けられている。上記壁28の外側周囲には封止材30が装着され、図1を参照すると分かるように、封止材30は、室部材を主容器壁2に封止するのに役立っている。ここで使用される特定のタイプの封止材についてはEP−A−1683451で詳述されているが、特定の形態の封止材は本発明にとって本質的なものではない。
【0062】
したがって、加熱室は、約200〜500ml程度の略ディスク形状の空間容量を包囲している。
【0063】
金属板16の下側には、薄いアルミニウム加熱拡散板が設けられる。この拡散板には、従来の方法で弧状の被覆電気加熱素子(sheathed electric heating element)34が蝋付けされている。また、厚膜プリント素子を代わりに用いてもよい。
【0064】
加熱室カバー部材22の中央には、水流入口(water inlet orifice)36が設けられている。図1から分かるように、加熱室カバー部材22は、水貯液器12と加熱室8との間の分割障壁となっている。したがって、流入口36を設けることによって、水を水貯液器12から加熱室へ流すことができる。流入口36は4つの半径方向に伸びるローブ(lobes)38で形成され、全体面積が同じ円形の開口を用いた場合と比べて流動性が向上する。流入口36の下には、フラップ弁40が設けられる(図3で最もよく示されている)。フラップ弁40は細長い矩形形状を有し、図3からも分かるように、加熱室カバー部材の上面26の下側に設けられた切り込み(rebate)42に収容される。フラップ弁40はシリコーンゴムから成り、一対の鋲(リベット)44によってカバー部材の上面に積み重ねられる。フラップ弁40はほぼ全長にわたって平面であるが、流入口の真下に位置する末端部には、円筒状の下方向に開口するカップ46が一体成形されている。
【0065】
図2及び図3の右側には、垂直に伸びる円筒状の管48があり、この管の上端には導管14の下端が収容される。垂直管48の下端は足部材50に収容されている。足部材は、その下側端部周囲に溝が設けられて溝の間を水や蒸気が通過することができるようになっている一方、大きな破片等が進入しないように粗フィルタの役割も果たしている。垂直管48の真下には、加熱板16が浅い凹部52と共に形成される。水は90°方向転換する必要があるので、凹部が設けられることによって、水が垂直管48内に容易に流れ込むことができる。垂直管48は、加熱室カバー部材の上面26に適切に形成された開口に適宜成形される。ここで示す装置は、加熱室から吐出される水量を最大にしようとするものである。しかし、例えば突然冷水が侵入することによる熱衝撃から加熱素子を保護するため等の目的で、ある程度の水を加熱室内に残しておくことが望ましい場合もある。これは、垂直管48を短くして加熱板16に届かないようにしたり、溝を大きく形成したりすることによって実現することができる。
【0066】
次に、上部供給室10について図4を用いて説明する。供給室の下からは、導管14の上端を収容する導入管54が突出している。図に示すように、導入管54は、供給室内を垂直に、供給室の最大高さの約4分の3まで伸びている。導入管54は、同軸のより口径の大きい円筒管56内を上方に伸びている。円筒管56は、供給室の頂部58から下方向に懸垂している。下垂円筒管56は、供給室の底部60にわずかに届かない位置まで下方に伸びている。
【0067】
供給室は、供給室の傾斜頂部58とそれに対応して漸減する側壁62とを規定する上部と、供給室の底部60を形成する下部との2つの部分から構成される。これら2つの部分は、その部分間に設けられるオーリングシール64と共にスナップ嵌合またはネジ止めされる。傾斜頂部58の最も高い部分と交わる側壁62の上部付近には、一連の開口66が側壁62のわずかにくぼんだ部分に設けられる。使用時には、それら開口を通じて供給室上部の蒸気を主容器本体内へ逃がすことができる。
【0068】
供給室の入口構成54、56とは反対側には、供給室の底部60が一段下がった浅い水溜め68が形成されている。図では見えないが、この水溜めの底には小さな穴が設けられている。この水溜めの真上且つその基底から数ミリメートル離れたところに、下方に開口する排出管70の一端が位置している。図から分かるように、排出管は、初めに水溜め68から垂直上方に延び、次いで水平に短く延び、そして垂直下方に延びて、折れ曲がった注ぎ口6で終端している。また、図から分かるように、排出管の形状による湾曲部をより容易に収容するために、供給室の頂部58は、排出管70が頂部から現れる辺りで低くなっている。
【0069】
図5は、供給室の変形例10’を示している。この装置が図4を用いて前述した装置と異なる点は、排出管の構成である。ここで、排出管74は、凹状の水溜め領域68’の底面を通って、供給室の頂部58から下垂している同軸の口径のより大きい円筒管76内部を上方に延びている。これによって、供給室の出口は入口と同様の構成となっている。同軸管のうち内側管74は、供給室の頂部58のわずか数ミリメートル手前まで延びている。一方、外側管76は、水溜め領域68’の基底のわずか手前まで延びている。供給室頂部58には、2つの出力管74、76と共通の軸を有する開口78が形成されている。この開口は通常、弾性変形可能なプラグ80によって閉じられている。プラグの芯軸80aの基部には、環状のスカートが形成されている。この芯軸は、開口78の内周縁からわずかに突出して延びており、供給室頂部58の上面に当接する弁の拡大頭部の下面に設けられた環状周縁リング80bによって通常はこの位置に保持されている。しかし、プラグ80の頭部に圧力が加わると、プラグは、リム80bが上方向に回転し、供給室上壁58の外面を離れるように変形する。それと同時に芯軸部80aが開口から突出してそれによって心軸の基部が開口78の縁から離れる。この結果、プラグ80による開口78の封止が破られ、空気が開口を通って排出管74、76に流れ込む。
【0070】
以下、上記器具の動作を図1乃至図5を用いて説明する。
【0071】
初めに、容器2を水で満たして貯液器12を充填する。加熱室8が空の場合、貯液器内の水圧によって、フラップ弁40が開き、流入口36を介して水が加熱室8に充填される。加熱室8内の水位が上昇し始めると、フラップ弁40の末端部に設けられたカップ46に閉じ込めらている空気によってフラップ弁が切り込み42に対向する閉位置まで回転し上昇する。したがって、加熱室8が一旦所定レベルまで充填されると、弁が閉じてそれ以上の水は流れ込まない。
【0072】
沸騰水を供給する必要がある場合、加熱素子30が通電され、それによって加熱室内の比較的少量の水が急速に加熱される。加熱室は本来密閉されているので、水が加熱されるにつれて加熱室内の圧力が上昇し始める。これによって、一方では、フラップ弁40の凹部42に対する閉鎖圧がさらに増し、それによって、例えば加熱された水の流れが乱れる等の結果として加熱室内に更に水が漏れ込むのを阻止することができる。他方では、圧力によって、水は排出管48を上昇し導管14に流れ込み始める。
【0073】
加熱室8内の水温がほぼ90℃に達すると、制御装置(図示せず)上のバイメタル作動装置が動作温度に達し、スナップ動作で自身の湾曲を反転させて一連の電気接点を開にし、加熱素子34への電力供給を遮断する。しかし、加熱素子34への電力は遮断されるものの、加熱素子の有限(及び既知)の熱質量によって、加熱素子内に熱が蓄積され、この熱が電力が遮断された後も放出され続ける。この熱で、加熱室8内の比較的少量の水を充分に沸騰させることができる。
【0074】
加熱室8内の水が沸点に達すると、蒸気が発生して加熱室内の圧力が急激に上昇する。この圧力によって、沸騰水は排出管48内を押し上げられ導管14へ、次いで供給室10の入口構成54、56へ流れ込む。加熱室内の水のほとんどは沸点に達するが、加熱室から初期に吐出される少量の水は、沸騰するまで加熱される前に排出管48に流れ込むため、わずかに温度が低い。
【0075】
図4から分かるように、加圧された沸騰水が導管14を押し上げられて導入管54に流れ込むと、その水は、大口径円筒管56の内部で供給室の屋根58に当たる。そして、水は小径導入管54の周囲の外側導入管56を下方に通って、供給室の底部60と外側管56の下端との間の間隙を通って流れ出る。それによって供給室10が満たされ始めると、加熱室からの沸騰水は供給室10の底の主要部に入っていく。
【0076】
特に、加熱室8がほとんど空の場合には、沸騰水と共に蒸気が導管14中を押し上げられる。この蒸気も、外側円筒管56の内部で供給室の屋根58に向かって噴出する傾向がある。蒸気の一部はそこで凝結するが、蒸気の一部は管56の底部の下を通り抜けて供給室に保持されている水を通る。この、水中に出てその後水を通り抜ける蒸気は、初期に吐出された冷めた水と混ざりあうことによって、必然的に沸点からわずかに低い温度となってしまった供給室10内の水を沸点に温め直すことができるという効果をもつ。水を通過する際に凝結しなかった蒸気は、供給室の頂部の水面上の空間に移り、そこから供給室の最も高い部分に設けられた通気口66を通って排出され得る。
【0077】
供給室内の水位が上昇すると、排出管70の最初に下方に延びる部分内の水位も同様に上昇する。本室10内の水位が充分に上昇すると、排出管70内の水は水平部分に達し、重力によって吐出口6へ流れ落ち始める。これによってサイフォンが作動し、実質的に供給室全体が空になる。ただし、凹状水溜め領域68の底に、サイフォンでは排出できない極めて少量の水が残る。沸騰水が加熱室から供給室へ依然吐出されている最中に水の供給が開始されるが、供給室10への入口構成(本実施形態では、「水トラップ」を形成する二重同軸管)によって、危険な加圧沸騰水と蒸気とが安全に供給室10へ吐出される一方、出口で供給される水は低速の一定した流れとなり、これは基本的には加熱室から引き続き入ってくる水とは無関係である。言い換えると、供給室は、加熱室からの出口とユーザへの出口とを効果的に分離する役割を果たしている。
【0078】
供給室の底部60はゆるやかに傾斜しているため、供給室内に最後に残る水は、水溜め68の底部に残るごく薄い層を除き、水溜め領域68に集まって排出管のサイフォンにより排出される。水溜めに残る水量は通常わずか数ミリリットル程度であるので、たとえ次の作動サイクルで新しく入ってくる沸騰水が既に冷えてしまった残りの水と混ざったとしても、供給室内の水のバルク温度への影響は無視できるほどである。ただし、この影響も、水溜め領域68の底に小さい排出開口(図示せず)を設けて水溜め領域に残る水が貯液器12へ再びゆっくり排出されるようにすることによって回避される。この開口は、たった数十秒程度である供給時間単位の間には無視できる量の水しか排出されないように十分小さく形成される。
【0079】
したがって、上記装置では、非常に短時間の間に所定分量の水を沸騰するまで加熱し、安全かつ制御されたやり方で注ぎ口から供給できることが分かる。これは、水が沸点まで充分に加熱されていても、さらには、沸点に達しなかった少分量の水が必然的に混ざったとしても実現可能である。このような冷めた水によって引き起こされる悪影響は、沸騰処理終了時に生成される蒸気が供給前の当該水を通ることで軽減される。このとき、蒸気は凝結し、水のバルク温度は実質的或いは完全に沸点に戻される。したがって、ユーザに供給される水は少なくとも実質的に沸点の水であるので、お茶を作る等のように沸騰水が必要とされるどのような用途にも利用可能である。
【0080】
図2、図3及び加熱室8についての説明に戻ると、供給サイクル終了時、加熱室は蒸気で満たされたままとなる。蒸気が冷えて凝結し始めると、加熱室8内の圧力は急激に減少し、それによってフラップ弁40が開かれて貯液器12から冷水が吸引され、次の作動サイクルに備えて加熱室8が再度充填される。
【0081】
上記装置では、いったん排出管70内にサイフォンが作動すると、サイフォンは供給室10が空になるまで作動しつづける。したがって、装置は常に同じ一定量の沸騰水を供給する。しかし、図5に示す改良された装置では、沸騰水の供給量を多少制御することが可能になる。ここで、供給室10’が水で充填されると、内側同軸管74の周囲に設けられた下方に懸垂する排出管76内の水位が上昇する。供給室内の水位が上昇し続けて管76内の水位が内部同軸管74の頂部に達するとサイフォンが作動し、排出管74を通って注ぎ口6へ水が排出される。このサイフォンでは、通常、供給室10’内の実質的に全ての内容量が注ぎ口6を介して排出される。しかし、本装置では、ユーザには、弾性プラグ80を押すことによって下方に懸垂する管76に空気を送り込むという選択肢もある。こうすることによって、サイフォンを遮断して水が更に供給室から流出するのを停止することができる。これによって、所望量に達した際にボタンを押すことによって供給水量を制御するのに効果的な機構が得られる(もちろん、弁ボタン80が押された後であっても排出管74及び注ぎ口6内に実際に存在する水は供給される)。
【0082】
ここで、水溜め68’の排水開口(ここでも図示せず)は、供給室10’内に残っている全ての水を供給終了後にゆっくりと(例えば、数分程度の間)排出する場合に特に有利である。この水溜めがないと、ユーザが早めに供給を中断した場合に比較的大量の水が供給サイクル終了後に供給室内に残る可能性があり、次のサイクルで供給される水を冷やす等の悪影響がある。
【0083】
図6は、別の装置を示すものであり、最初の2つの装置と比べて加熱室が変更されている。ここで異なるのは、先に述べたフラップ弁装置の代わりにボール弁装置が用いられているという点である。加熱室カバー部材122には円状の中央開口182が形成され、開口182を取り囲む加熱室カバー部材122の下面からは、一連の4つの足184が下方向に懸垂している。4つの足は、周方向に離間して一体成形されている。各足184の末端部には、外側に向いた鉤状の突起184aが設けられている。これらの突起は、シルクハット形状のケージ(cage)部材186の環状上縁の切取部(undercut)と噛み合っている。したがって、ケージ部材186は、突起184aにひっかけられて、開口182の垂直方向真下の所定位置に保持される。
【0084】
足184とそれらの間のケージ部材186は円筒状の空間を規定し、その空間内で中空の浮ボール188が短い上下移動距離を上下することができる。図6に示す低位置では、水が開口182を通って水貯液器から加熱室108へ流れ込むことができるのは明らかである。しかし、浮ボール188が開口182の下側に押しつけられている場合、浮ボールが封止材となって、水がそれ以上加熱室108内に入らないようになっている。さらに、図6を注視すれば分かるように、ボール188が低位置にある場合、ボール188の表面と足184との間の間隙は、足184を内側に曲げてケージ部材186を開放するには狭すぎる。この結果、ケージ部材186は比較的簡易な爪式はめあい機構(click-fit mechanism)で保持されてはいるが、ボール188が比較的非圧縮性である限り、ケージ部材186が足184から離れることはない。
【0085】
動作時におけるこの構成の違いは、供給が開始して加熱室108内の圧力減少で貯液器から水が急速に或いは激しく吸水された場合、ボール弁装置はより激しい力に耐えることができ、また開位置で詰まる可能性もないという点である。また、加熱室内の圧力と中空ボール188の本来の浮力との両方により、加熱室108が水で充填されている場合及び加熱中に弁を再び確実に閉じた状態にしておくことができる。
【0086】
図7は、図6を用いて説明された装置の変形例を示す。なお、本装置においては、比較的幅が広く垂直の円筒状上昇管200が加熱室カバー部材222から延び、その下端は加熱室208に開口している。垂直上昇管200の頂部にある小開口204の後ろには、本出願人による標準的なR48蒸気スイッチ202が設けられている。このスイッチは、より一般的には家庭用ケトルで用いられ、沸騰したときにケトルを自動的にオフするためのものである。当業者には周知のように、このスイッチは、軸を中心に動く揺り腕(rocker arm)に作用して一連の電気接点を開にするスナップ動作式バイメタル作動装置(snap acting bimetallic actuator)を備えている。
【0087】
本装置では、加熱素子34は、加熱室208内の水が90℃に達した場合に電源が遮断されるのではなく、蒸気スイッチ202のバイメタルに充分な蒸気が届いた場合に遮断される。管の頂部に設けられる小開口204は、所望の性能が得られるようにす調整ることができる。開口204は比較的狭いので、加熱室内の水は、沸騰した場合でも蒸気圧で管200内を押し上げられはしない。さらに、蒸気スイッチ202が蒸気管200の頂部に設けられているので(これは従来の自動式ケトル装置とは逆である)、蒸気スイッチは水がちょうど沸騰した時点或いは沸騰する直前に作動しやすい。これは、先の装置に関して述べられた動作とほぼ同様であり、加熱素子は沸騰前にオフにされ、加熱素子内の余熱を使って水を完全に沸騰させる。バイメタルを拡散板に接触させて水温を感知する場合と比べてこの装置が有利な点は、水温と比べて加熱板の作動温度を上昇させ得る、加熱板の表面の水あか(スケール)の堆積に対して耐性が強い点である。また、本装置では、蒸気スイッチそのものの形状や、空だきするのを防ぐのに依然必要とされる制御装置に既存の構成要素を用いることもできる。例えば、標準的なU17制御装置を使用することができる。
【0088】
また、本装置では、適切な時点で水温を感知するための、比較的厳密な許容誤差を有するバイメタルが不要となる。それ以外の点では、本装置の動作は先に述べた装置の動作と同一である。
【0089】
図8は、さらに別の装置の供給室を示す。これは、図5で示した供給室の変形例である。この装置には、前述の装置と同様、二重導入管354、356、二重導出管374、376及び図示されていないが排出孔が備えられている。ただし、本装置が異なる点は、供給室の頂部358に凹部が規定され、この凹部には本出願人によるR48蒸気スイッチをバイメタルが取り除かれた状態で変形したスイッチ390が収容されるという点である。したがって、スイッチは単にオーバーセンター式ラッチスイッチとして動作する。オーバーセンター式トリップレバーの「先端」392は、従来のようにバイメタルによって作動するのではなく、回動可能に取り付けられたレバー394の端部によって作動する。回動レバー394のもう一方の端部には、下方向に懸垂するアームが設けられ、アームの下端には中空のフロート396が一体形成されている。
【0090】
使用時において、加熱室(図示せず)内の水がほぼ沸騰に近い状態になり始め先述の様式で導入管354、356を介して供給室308に吐出されると、加熱室内の水位が上昇し始める。これによってフロート396が持ち上げられ、アーム394が後ろに揺れてトリップレバー392に作用することによってレバーが傾き、加熱室の加熱素子への電力が遮断される。このようにヒーターへの電力を遮断する方法は、加熱板の温度を感知するセンサー(バイメタル等)を使う場合よりも確実であると思われる。なぜなら、加熱板の温度は、ある程度の時間経過後、加熱室内に堆積したスケールの影響を受ける可能性があるからである。また、このようなセンサーやバイメタルの許容誤差にも影響を受けにくいためである。
【0091】
図9は、別の装置を示す。この装置は、蒸気スイッチ490は完全に従来のものであり(つまり、バイメタルが保持されている)、フロートアームの代わりに蒸気管498によって蒸気スイッチのバイメタルと供給室408の内部とが繋がっている点を除けば、図8の装置と類似している。したがって本装置では、供給室内に存在する蒸気を、加熱素子への電力を遮断するトリガとして用いる。先述の説明から供給室408内の水を通る蒸気は比較的少ないということが分かるが、これは蒸気スイッチ490を図7と比べて(すなわち、通常の蒸気管や蒸気スイッチを有する装置と比べて)供給室に近い位置に設けることで補うことができる。
【0092】
図10は、本発明の実施形態で使用することのできる加熱室カバー部材500を示す。加熱室カバー部材は、垂直方向に突出する管502を有して下方にある加熱室と上方にある供給室とを繋いでいる。カバー部材500はまた、圧力除去弁が嵌め込まれる開口504を有する。
【0093】
カバー部材500の中央には、中空の円筒状突起506が設けられる。この突起の頂部には穴508が形成され、また側壁の周囲には一連の4つの垂直溝穴(slots)510が間隔を置いて配置されている。各溝穴510に対応して、弧状の阻流板(baffle)512が溝穴と向かい合いわずかに距離を置いて設けられている。溝穴510によって、水は垂直ではなく主に水平に貯液器を流れ出る。阻流板512は、溝穴に流れ込む流れを阻害する。これら溝穴と阻流板の両方を設けることによって、貯液器内の水位が低い場合に過剰量の空気が加熱室に吸引される(これは、不所望なノイズが発生する大きな要因となる)のを防ぐことができる。
【0094】
図11で示すように、ここでの弁装置は先述の実施形態のものとは異なる。ここでの弁部材514はボール弁ではなく、下向きに先細りした切頭円錐形状をしている。弁筐体は、ケージではなく、下方向に突出する3つの突起(ボス)516(このうちの2つが図示されている)で構成され、これらの突起には三つのローブから成る(tri-lobed)弁止め板518が取り付けられている。この弁装置は非常に頑丈で、弁部材が詰まるということがない。もちろん、他の形状の弁部材や他の筐体構成を用いてもよい。
【0095】
カバー部材の円状開口504(図10参照)についての説明に戻ると、この開口は使用時にはシリコーンゴム製のグロメット弁(grommet valve)520で閉じられる。グロメット弁は圧力除去弁として作用すると共に、加熱室に水を流入させる働きを持つ。つまり、グロメット弁は、その両端のいずれかの方向の圧力差によって開口する。
【0096】
図12は、本発明の一実施形態を極めて模式的に示した図である。先述の装置のように、本装置は、水貯液器702を備える。水貯液器702は加熱室704の上部に位置し、加熱室704は容器内部の下部分に設けられた水平隔壁706によって形成されている。被覆電気加熱素子708は、先述と同様、加熱室704の下側に設けられている。
【0097】
垂直導管710は、加熱室704の内部と、上部にある供給室712とを繋いでいる。図12では極めて模式的に示されているが、供給室712の基本構成は、先述の装置のどの構成とも同じである。供給室712は、ユーザのカップや他の入れ物に加熱された水を供給することのできる供給口714を有している。供給室712の上部壁には小開口716が設けられ、この開口に対向して本出願人による公知のR48蒸気スイッチ等の蒸気スイッチ718のバイメタル作動装置が搭載されている。蒸気スイッチ718のスイッチ接点は加熱素子708の電源と直列に接続されており、蒸気スイッチが作動すると、接点が開いて加熱素子708への電力が遮断されるようになっている。二つの延長アーム720,722が、R48蒸気スイッチ718に内蔵されたオーバセンタロッカーのそれぞれの側面に取り付けられている。
【0098】
供給口714と軸方向に整合して、垂直方向に摺動自在のロッド724が設けられる。ロッドは、上端にユーザプッシュノブ726を有し、下端に弁シール728を有する。弁シール728は、ユーザプッシュボタン726が押された際に供給口714の出口を覆うように配置される。図12の模式図でははっきりと示されていないが、上記垂直ロッドは、蒸気スイッチ718に取り付けられた延長アーム720の末端のフォーク部分を貫通する。ロッド724からの横方向の突起730は、延長アーム720のフォーク部分と係合するように配置されており、ユーザノブ726が押された場合に、蒸気スイッチ部718のロッカーが突起730によって反時計回りに旋回し、対応するスイッチ接点を開いて加熱素子708への電力を遮断することができるようになっている。
【0099】
類似の垂直ロッド732がもう一方の延長アーム722の末端のフォーク部分を貫通するように配置され、ユーザボタン736が押された場合に、垂直ロッド732の横方向の突起734が延長アーム722に作用してスイッチを時計回りに回転することができるようになっている。この後述の垂直ロッド732の下端には、二つの実質的に平行な部分が傾斜部分によって接合された輪郭を有するカム部材738が設けられている。カム部材738は、隔壁706に装着された装着ボス740と、L字状クランクレバー742の垂直方向脚(limb)との間の空間内に垂直方向に摺動するように配置されている。クランクレバー742の水平方向脚(limb)に装着ボス740の一部分を沿わせて、クランクレバー742は、装着ボス740に回転可能に搭載されている。圧縮ばね744は、レバー742の垂直方向脚をカム部材738に押し付けるように作用する。弁シール746は、レバー742の水平方向脚の末端から懸垂する別の圧縮ばね748に装着される。シール746は、レバー742が最も時計回り方向の位置にある場合(図12に示される場合)に、加熱室704と貯液器702とを分割する水平壁706の弁座750に気密に付勢されるように配置されている。ただし、分かりやすいように、図12の模式図ではシール746は弁座750とは離間して示されている。
【0100】
弁座750の真下には下方向に懸垂する管752が設けられる。管内部には浮遊弁部材754が配置され、この浮遊弁部材は、加熱室704の水によって上昇した場合に導入管752の下端を封止する。
【0101】
以下、図12に示す本実施形態の動作を説明する。最初に、水貯液器702が冷水で充填される。所定量の水を沸騰させたい場合、ユーザは適切なユーザボタン736を押し、それによって、蒸気スイッチ718のロッカーが横方向突起734及び延長アーム722を介して時計回りに動き、加熱素子708の電源がオンとなり、加熱素子708が加熱を始める。それと同時に、プッシュロッド732に下向きの圧力がかかり、カム部材738が装着ボス740と旋回レバー742との間を下向きに摺動して、レバー742の上部垂直端がカム部材738の傾斜面に係合する。それによって、レバー742を、圧縮ばね744の力に逆らってくさび様に反時計回りに回転させる。垂直プッシュロッド732が下方向に動くということは、レバー742の上部垂直端がカム部材738の傾斜面を横断してカム部材738の他方の垂直面に接するまでカム部材738が下降するということである。ここで、レバー742の垂直方向脚はもはや垂直方向抵抗力を呈しておらず、結果として生じる装置は触発性機構(hair-trigger mechanism)であると見なすことができる。
【0102】
レバー742が反時計回りに動くことによって、弁シール746と弁座750との間の封止圧が解除され、水が貯液器702から加熱室704へ流れ込む。この水の流れは、加熱室704内の水位が十分に上昇して浮遊弁部材754が導入管752の下端に押し付けられてそれ以上水が入らなくなるまで数秒間続く。
【0103】
その後、加熱室704内の水が沸騰し始めると、沸騰した水は導出管710中を押し上げられて供給室712に入り、供給口714から吐出できるようになる。加熱室704からほぼ全ての水が吐出された場合、十分な蒸気圧が供給室712内に発生して十分な蒸気が小開口716を通り抜けて蒸気スイッチ718のバイメタル作動装置に当たり、それによってバイメタル作動装置が作動して、ロッカースイッチを反時計回りに動かし、加熱素子708への電力を遮断する。ただし、加熱室内の残りの水はほとんど全て加熱素子708の余熱により沸騰して吐出される。好ましくは、これは、加熱室内に少量の水が残るように構成される。このような構成は、まとまった量の水が吐出された後に発生する蒸気量を減少させる(及びそれによってバイメタル作動装置のリセット時間を最小化する)のに有益である。また、これによって、処理サイクルの加熱段階の初めに蒸気が発生しすぎて早すぎる時点でヒータのスイッチがオフされ入口弁が閉じてしまうという危険性も低下する。図示しないが、この機能は、例えば加熱素子708を取り付けた加熱板に凹部を、加熱管の一部又は全体の上部に形成する等により、確実に少量の水が残るように加熱室を構成することによって強化することができる。これにより、残量(及び各加熱サイクルでのエネルギーの無駄)を最小限にしつつ、最も必要とされる場所に水を確保することができる。
【0104】
蒸気スイッチのロッカーが反時計方向に回転すると、延長アーム722が垂直ロッド732の横方向突起734に作用し、突起をわずかに(1〜2mm程度)引き上げる。このわずかな上方への動きによってレバー742の上端がカム部材738の傾斜面上に移動し、その後、圧縮ばね744から供給される力によってカム部材738及びロッド部材732が上方に駆動されて図12に示す位置、つまり、貯液器の弁シール746が再び弁座750と係合し封止するように付勢されて貯液器702から加熱室704へ水が流れなくなる位置へと戻る。したがって、装置は再び上述のような方法で使用可能となる。
【0105】
上記動作では、一定量の沸騰した水が自動的に供給される。しかし、状況によっては、ユーザが水の供給を中断したい場合もある。例えば、供給口714の下にカップを置き忘れた場合や置いたカップが小さすぎた場合等である。この場合、ユーザは単にプッシュボタン726を押すことによって、対応するプッシュロッド724を下方に動かし、それによって円形弁部材728で形成される弁を閉じて供給口714の出口を閉じることができる。また、この動作によって、プッシュロッド724からの横方向突起730が蒸気スイッチ718のロッカーに取り付けられた延長アーム720に作用し、加熱素子708のスイッチがオフにされる。一旦供給口714が閉じると、加熱室704と供給室712は事実上密閉系を形成するので、加熱を中止することが重要である。任意に、1つ又は複数の排液口を設けてもよい。
【0106】
更に別の適用例について、図13及至16を参照して説明する。図13及び図14は、極めて模式的であるが、加熱室で加熱される水量を変更するための機構の一部を示す図である。この装置の他の構成要素は、分かりやすくするために図13及び図14では省略されているが、この機構は先に述べた構成のいずれにおいても使用できる。図15及び図16は、図12を使って上述した本発明の実施形態の構成要素のいくつかを、図13及び図14を使って述べる機構を組み込んでより詳しく示すものである。
【0107】
図13及び図14を参照すると、水貯液器802、加熱室804、及び供給室812が大まかに示されている。分かりやすくするために、導管810は意図的に拡大して示してある。導管が加熱室内へ下方向に突出する簡素な管であった先の実施形態と異なり、本実施形態の導管810は、垂直方向に間隔をおいて配置された一連の孔856をその下端に有している。導管はまた、内部に回転可能な内部スリーブ858を有し、スリーブ上にはらせん状に孔860が配列されている。したがって、スリーブ858が導管810内部で回転すると、位置が揃った孔ペア856,860の高さが変わることが分かる。この結果、加熱室804が水で充填されるにしたがって、位置が揃った孔ペア856,860を介して空気が加熱室から排出される。ただし、この位置が揃った孔ペアに水位が達すると、それ以上空気を排出することはできなくなり、重力によってそれ以上の水は加熱室に入らない。このように、導管810内のスリーブ858を単に回転させることにより(例えばノブ866を使って)、加熱室内に入る水の量を調節することができる。
【0108】
図15及び図16は、図12、図13及び図14を使って先に説明した構成要素のいくつかをより詳しく示す図である。図の右側には、装着ボス840、カム部材838、及びL字状レバー842が示されている。貯液器と液体加熱室とを隔てる水平壁は省略されており、L字状レバー842の水平方向脚の端に装着されるばね状の弁シールも同様に省略されている。ただし、下方向に延在する加熱室の入口管852の一部として形成される弁座850は示されている。この構成の左側には導出管810が示されており、導出管の下部には回転可能な内部スリーブ858が示されている。図18では、複数の孔856が導管810の下端に示されているが、スリーブ858内のらせん状の孔配列については、図15及び図16のどちらにも示されていない。
【0109】
本実施形態では、回転可能なスリーブ858の設定によっては、加熱室内の水位は、最初に浮遊弁を閉じるのに充分でない可能性がある。しかし、一旦水が沸騰し始めると、加熱室内の圧力上昇によって浮遊弁が閉じられて圧力がさらに増し(吐出を促進し)、加熱された水が水貯液器へ漏れ戻る又はその逆方向に漏れるのを防ぐことができる。
【0110】
図17及び図18は、本発明を実施する器具の供給室の一部を示す図である。本実施形態では、供給室900内部の加熱された水を排出する2つの異なる経路がある。2つの経路のうち、第1の経路は吐出口902を介するものであり、この経路は、デフォルトで(初期設定において)水が通る経路である。もう一つの流出経路は排液口904によって提供され、器具の後方側に設けられて供給室の下にある貯液器(図示せず)に水を戻せるようになっている。弁部材906(図18でごく明瞭に示されている)は、その垂直位置によって、水が吐出口902又は排液口904のどちらを介するかを変えることができる。
【0111】
弁部材906は一方側に円形の封止フランジ908を備えており、このフランジは弁部材906が最下位置にある場合に吐出口902の上部開口を覆うように設計されている。図示しないが、円形フランジ908の下面にはOリング又は封止層が設けられていても良い。弁部材906の他方側には垂直隔壁910が設けられ、この隔壁には矩形の開口912が形成されている。使用時において、隔壁910は供給室底部の2つの段差部分914a,914bの間に形成された間隙内を垂直に摺動する。弁部材906が図17に示す最上位置にある場合、円形封止フランジ908が吐出口902の上部開口から持ち上げられて水が吐出口902を流れ、それと同時に矩形の開口912が供給室の段差状底部部分914a,914b間の垂直間隙とずれるように、弁部材906は設計されている。しかし、弁部材906が下方位置に動くと、円形フランジ908によって吐出口902の開口は閉じられて矩形の開口912が上記垂直間隙の位置と揃い、これによって吐出口902からの水の流れが阻止され、代わりに排液口904から水が流れる。
【0112】
作動軸918は、弁部材の横桁(crossbeam)916から垂直方向に延在し、垂直方向矩形状の溝穴(slot)920を有している。作動軸918は、器具の動作を制御するために用いられる二重ボタン装置922,924と相互作用する。後ろ側のボタン922は、本出願人による標準的なR48蒸気スイッチ(図示せず)のような蒸気スイッチのトリップレバーにクリップ留めされている。したがって、ボタン部材922を使って蒸気スイッチを閉じ加熱室内の加熱素子を作動させることができる。図から分かるように、この第1ボタン部材922は、その一端に小型のタブ926を有しており、このタブは搭載時には弁作動部材918の矩形状の溝穴920内に延在する。溝穴120を設けることにより、弁部材906を動かすことなく第1ボタン部材922を押すことができる。前側の第2ボタン部材924は、第1ボタン部材922に旋回可能に取り付けられ、作動軸918の頂部に係合する内部突起928を備えている。
【0113】
以下、図17及び図18に示す実施形態の動作について説明する。図17は、動作前の各部構成を示す図である。器具を使用したい場合、ユーザは後ろ側のボタン922を押すことにより、蒸気スイッチ(図示せず)の電気スイッチ接点を閉じて加熱室(これも図示せず)内の加熱素子を作動させる。図17の透視図から分かるように、これによって後ろ側のスイッチ部材922が時計回りに旋回し、タブ926が弁部材の作動軸918の垂直溝穴920の底部から頂部に移動する。このとき、弁部材906自体は動かない。
【0114】
そして、水が加熱室内で沸騰し、前述のように導管を通って供給室900に吐出される。水は、全てが供給されるまで吐出口902を介して自動的に供給される。ただし、ユーザは前部のボタン924を押す(反時計回りに回す)ことによって供給を途中で中止してもよい。ボタン924を押すことによって弁部材906が押され下方向に移動する。この弁部材の下降によってもたらされる効果の一つとして、垂直溝穴920の頂部がタブ926を押すことにより第1のスイッチ部材922が元の位置に戻され、蒸気スイッチがオフになって加熱素子への電力が遮断される。弁部材906を下降させることによるもう一つの効果は、円形水平フランジ908で吐出口902を閉じることができる点である。下降の3つ目の効果は、弁部材の垂直隔壁910の開口912と底部部材部分914a,914b間に形成された垂直間隙との位置が揃い、それによって供給室900から排液口904を介して器具の貯液器(図示せず)へ流路が開くという点である。したがって、ユーザが沸騰した水の全てを供給することを望まない場合、単に「ストップ」ボタン924を押すことによって直ちに供給を中止し、器具のスイッチを切って、供給室900に蓄積されて未だ供給されていない水を貯液器に安全に戻すことができる。これによって、ユーザは加熱した水の供給量を極めて簡単且つ便利に制御することができる。
【0115】
図19a及び図19bは、極めて類似の原理を使った別の実施形態を示す図である。共通の特徴についての詳細はここでは記載しない。本実施形態の物理的な構成によると、弁部材930は垂直軸932を備え、垂直軸932はプッシュボタン934によって作動し、且つ垂直方向にオフセットした一対の水平封止フランジ936,938を有する。フランジ936,938はそれぞれ、吐出管940及び排液管942の開口を閉じることができる。図示しないが、双安定ばね(bistable spring)を設けることもできる。これにより弁部材930は図19aに示す最上位置か図19bに示す下方位置に向けて付勢される。最上位置において、弁部材930は供給室内の圧力によって排液口弁に漏れが生じるのを防止し、下方位置においては、供給を中止して供給室を空にする。
【0116】
本実施形態の動作は、前述の実施形態の動作とほぼ同様である。したがって、加熱した水の自動供給を中断した場合には、ユーザはストップボタン934を押して弁部材930を下降させることができる。それによって排液口942の開口を封止している弁938が開き、吐出管940の開口が閉じる。また、図19bから分かるように、ボタン934の下端が蒸気スイッチ948のロッカースイッチカバー946の末端縁にあるタブ944に作用する。したがって、先の実施形態のように、ストップボタン934を押すことによって器具のヒーターのスイッチを切ることができる。
【0117】
図20及至図22は、本発明の別の実施形態を示す図であり、供給室950から供給される水量を予め設定することができる。図20から分かるように、円弧状の溝穴(arcuate slot)954内を移動することによって供給量を最大値から最小値までの間で予め設定することができる、ユーザによって操作可能なノブ952が設けられている。図21及び図22は、この設定がどのように行われるかを示す図であり、図21はノブ952が最小設定の場合を示し、図22はノブ952が最大設定の場合を示している。
【0118】
供給室950の内部は、前述の装置(例えば、図5に示す装置)の内部と同様である。ただし、ここでの制御ノブ952は、供給室内部のボス958に回転可能に取り付けられた水量設定部材956から突出する垂直の突起である。もちろん、ノブやスライダー等の任意の適当な機械的装置を使って水量設定部材956の位置を調節することができ、例として任意の直接作動装置或いは中間的な結合又は歯車装置が考えられる。
【0119】
水量設定部材956の先端には、略水平の円弧状フランジ960が設けられ、部材956がどれくらい回転するかに応じて排液口962の開口領域の一部を覆うように配置することができる。ノブ952が溝穴954の右端に位置する場合、つまり、最小設定の場合、フランジ960は排液口962から完全に離れ、一方で、図22に示す最大設定の場合、フランジ960は排液口962を完全に覆うように構成されている。
【0120】
本実施形態の動作において、水は沸騰まで加熱され、図21及び図22に図示されていない導管を介して加熱室から供給室へ吐出される。供給室950内に十分な量の水が溜まると、吐出管964から水が流れ始める。しかし、供給水量決定部材956の設定によっては、この通常の供給動作が続けられるのと同時に、加熱された水が排液口962から排出もされる。明らかなことではあるが、沸騰した水の最終的な供給量は吐出口964及び排液口962を通る相対的な流量によって変動する。図21に示す最小設定においては、加熱室で沸騰した水の大半が、吐出口964を介して供給されるよりもむしろ排液口962から排出される。しかし、水量選択部材のフランジ960によって排液口962が覆われる量が増えるにしたがって、図22に示す状況になるまでより多くの水が吐出口964を介して供給される。図22では、排液口が完全に覆われて全ての水が吐出口964を介して供給される。したがって、ユーザが吐出口を介して供給される水量を予め設定することができる簡単且つ便利な方法が提供されるということが分かる。これは、供給動作の終了時に供給室950には水が全く残らないので、次のサイクルで供給される水に悪影響が及ぶことはないということも意味している。先の実施形態のように、排液口からの水は専用の貯液器或いは通常の貯液器に排出される。
【0121】
図23及び図24は、排液口の水が通常の貯液器ではなく専用の貯液器に排出される実施形態を示す図である。本実施形態において、水貯液器(図示せず)は加熱室1002から着脱可能であり、実際のところ、通常のケトルに類似している。弁装置1004を設けることによって、水は貯液器から加熱室1002へ流れることができる。この弁装置は、図11を使って説明したのと同じタイプの切頭円錐型フローティング弁部材を備えている。
【0122】
供給室1006は、先の実施形態と同様である。供給室は、以下に示す働きを有する「ストップ」ボタン1008を備えている:蒸気スイッチを作動させて加熱室内の加熱素子への電力を遮断する;主要な注ぎ口1010の弁を閉じる;供給室1006からの排液口1012を開く。この機構は、図17及び図18を使って説明したものと同様である。供給室はまた、自身の回転によって部材1016を回転させることができるノブ1014を備えている。部材1016は、排液口1017を覆う量を変化させ、それによって供給室1006から排出される水の流量を変化させる。この機構は、図20及至図22を使って上述した機構と同じように機能する。
【0123】
供給室1006の下には補助室1018が設けられ、供給室からの二つの排液口1012,1017を覆っている。導管1020は、補助室1018の底部から加熱室1002の入口まで延びている。特に図23から分かるように、排液導管1020及び特にその下部1020aは、加熱室1002から供給室1006へ水が吐出される排出管1022よりも断面積が大きい。
【0124】
加熱室1002の内部において、導管1020は水平方向の通路1024に接続されている。通路1024は、フローティング切頭円錐型パック(puck)弁部材1026及び保持装置1028を備える弁で終わっている。弁部材1026と保持装置1028は、図11の加熱室内で示されるものと同じ構造を有している。明らかなことではあるが、両方のバルブに同じ構成要素を用いることによって、コストを最小化することができる。
【0125】
本発明の本実施形態は、先述の装置及び実施形態と同様に作用する。したがって、貯液器(図示せず)が器具に設置された場合、水はこの貯液器から弁1004を介して加熱室1002へ流れる。ヒーターが作動すると、水は加熱室1002内で沸騰するまで加熱され始める。それに伴う加熱室内の圧力上昇によって、パック弁1004,1026は固く閉められる。水が沸騰し始めると、水は排出管1022を介して供給室1006に吐出される。供給室1006では、水は通常の方法で供給される。ただし、ユーザがノブ1014を使って供給量を最大よりも下げて設定した場合や供給が終了する前にストップボタン1008を押した場合には、対応する排液口1017,1012から補助室1018へ加熱した水の一部が排出され、加熱室1002に接続された導管1020を充填し始める。しかし、この段階では弁1026は封止されたままであるので、補助室1018が満たされ始めるまで導管1020に滞留する。
【0126】
一旦加熱素子のスイッチが切られると、蒸気の凝結に伴って加熱室1002内の圧力が減少し、それによって両パック弁1004,1026が開いて、貯液器及び導管から水がそれぞれ吸い込まれる。導管1020の断面積が比較的大きいということは、貯液器からよりも導管からのほうがより容易に水が流入することを意味する。流入口の相対寸法及び貯液器内及び導管/補助室内の各水量によって、導管1020は完全に排液されるか、或いは、いくらかの水が残る。ただ結局のところ、加熱室1002が再び水で満たされて器具が再び使用可能状態になると、二つのバック弁1004,1026は閉じられる。明らかなことではあるが、その後すぐに別の供給サイクルが開始されると、貯液器からの冷水のみを使う場合に比べて水を加熱するのに必要とされるエネルギーは少ない。
【0127】
当業者には理解できるように、上述の実施形態は、本発明を実施し得る数多くの実現可能な方法の中のあくまでも例示である。例えば、上記実施形態は沸騰する水を作り出す例について述べたが、本発明は他の液体(例えば、紅茶やコーヒーなどの抽出飲料や飲み物に使う加熱した牛乳等)を加熱するのに適用してもよい。さらに、上述の実施形態においては有利な特徴をいくつか組み合わせていたが、そのような特徴を全て一緒に備えることは必要ではない。例えば、サイフォン式吐出装置及び供給室は、たとえ蒸気が供給室内の水を通るような構成と共に用いられないとしても有利である。同様に、二重動作圧力除去弁については、他にも数多くの適用例が考えられる。
【0128】
図1及至図11に示す装置に関して記載した特徴は、本発明のどの実施形態にも適用可能であり、それ自体が本発明の範囲内で変更可能である。例えば、本発明に関して記載された或いは図12及至図24に示された任意の特徴を追加してもよい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19a】

【図19b】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱室と、供給室と、加熱された液体を前記供給室から自動供給するために前記加熱室から前記供給室へ搬送する導管とを備え、
前記供給室は加熱された液体を供給する弁手段を備え、前記弁手段は前記自動供給を中断するように動作可能であることを特徴とする液体を加熱するための装置。
【請求項2】
前記弁手段が、ユーザによって操作可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記弁手段が、前記加熱室を加熱するヒーターへの電力を遮断するか或いは減少させるためのスイッチ接点に連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記スイッチ接点が、蒸気感応式(steam-sensitive)スイッチに関するものであることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記スイッチ接点が、供給を中断することなくヒーターへの電力を遮断するか或いは減少させるように独立して動作可能であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記供給室が、前記供給室から供給されなかった液体を排出する排液口を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
加熱室と、供給室と、加熱された液体を前記供給室から自動供給するために前記加熱室から前記供給室へ搬送する導管とを備え、
前記供給室は、前記供給室から供給されなかった液体を排出する排液口を備えることを特徴とする液体を加熱するための装置。
【請求項8】
前記排液口が、供給されなかった液体を、前記加熱室に給液する貯液器へ排出するように配置されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記排液口が、供給されなかった液体を前記加熱室に戻すように配置されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の装置。
【請求項10】
加熱室と供給室とを備え、
加熱された液体を前記加熱室から前記供給室へ吐出して前記供給室から前記加熱された液体を自動的に供給するように構成され、
前記供給室は、供給されなかった液体を前記供給室から前記加熱室に戻すように配置されている排液口を備えることを特徴とする加熱された液体を供給するための装置。
【請求項11】
前記供給室と前記加熱室との間に補助室を備え、
前記補助室は、前記供給室から排出された液体が一時的に前記補助室に集まるように配置されていることを特徴とする請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記排液口が、排液弁を備えることを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記排液弁が、手動で操作されることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記排液弁が、前記供給室からの液体供給を制御する弁手段または前記弁手段に連結されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記排液弁及び前記供給室からの液体供給を制御する前記弁手段が、液体の流れを供給口及び前記排液口のいずれかに向けるように配置された分岐弁(diverter valve)によって提供されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記排液口が、排液量を変化させるように構成されていることを特徴とする請求項6〜15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記供給室から供給される液体量を制御する手段を備えることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
供給を中断するために弁手段或いは前記弁手段を制御する手段を備えることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
加熱室と、供給室と、加熱された液体を前記供給室から自動供給するために前記加熱室から前記供給室へ搬送する導管とを備え、
加熱された液体の自動供給量を決めるための手段をさらに備えることを特徴とする液体を加熱するための装置。
【請求項20】
前記加熱された液体の供給量を決めるための手段が、前記加熱された液体を供給する弁手段を備え、前記弁手段は前記自動供給を中断するように動作可能であることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記加熱された液体の供給量を決めるための手段が、前記加熱室から前記供給室へ前記導管を通って流れる液体量を制御するように配置されていることを特徴とする請求項17又は19に記載の装置。
【請求項22】
前記導管が、前記加熱室内に下方に延在する管を含み、
前記加熱室内における前記管の端部の高さは可変で、前記加熱された液体の吐出後に前記加熱室内に残る液体量を変化させることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記供給室内の液面が所定のレベルに達した場合にサイフォンが作動して前記供給室内の液体の排出を継続するサイフォン式吐出装置を備えることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
前記サイフォンを途絶させるための自動制御手段を備えることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記供給室が、その上部に一つまたは複数の通気口を有することを特徴とする先行する請求項にいずれかに記載の装置。
【請求項26】
前記加熱室が、その内部の液体を沸騰するまで加熱するように構成され、
沸騰に伴う圧力の上昇によって、加熱された液体は前記導管に押し込まれ前記供給室に排出されることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
前記加熱室で加熱される液体量を制御する手段を備えることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
前記加熱室は、液体が流入すると一つ又は複数の通気口を介して空気が排出されるように構成され、前記一つ又は複数の通気口は前記加熱室内の液面が所定量に対応するレベルに達したときに閉じるように配置されていることを特徴とする請求項27に記載の装置。
【請求項29】
室内で加熱された液体を圧力をかけて室外へ吐出する吐出口を有する加熱室と、
液体貯液器と、
前記貯液器から前記加熱室へ液体を移送する手段とを備え、
前記加熱室は、液体が流入すると一つ又は複数の通気口を介して空気が排出されるように構成され、前記一つ又は複数の通気口は前記加熱室内の液面が所定量に対応するレベルに達したときに閉じるように配置されていることを特徴とする所定量の液体を加熱するための装置。
【請求項30】
前記通気口が、加熱された水を前記加熱室から吐出する吐出口又は導管を備えることを特徴とする請求項28又は29に記載の装置。
【請求項31】
前記液体自体が前記通気口を覆ってそれを閉じることを特徴とする請求項28、29又は30に記載の装置。
【請求項32】
水の前記所定量をユーザが調節可能であることを特徴とする請求項28〜31のいずれかに記載の装置。
【請求項33】
室内で加熱された液体を圧力をかけて室外へ吐出する吐出口を有する加熱室と、
液体貯液器と、
前記貯液器から前記加熱室へ液体を移送する手段と、
所定液体量に達した場合に前記貯液器から前記加熱室への液体の移送を中止する手段とを備え、
前記液体の移送を中止する手段は、前記所定液体量を変化させるように調節可能であることを特徴とする所定量の液体を加熱するための装置。
【請求項34】
前記加熱室は、その室内が液体で満たされるにしたがって空気を排出することができる通気口を備え、
前記液体の移送を中止する手段は、前記所定量に達した場合に閉じるような前記通気口の配置を含むことを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記吐出口は、供給室から供給するために液体を供給室へ案内する導管に接続されていることを特徴とする請求項29、その従属請求項、及び請求項33、34のいずれかに記載の装置。
【請求項36】
内部の液体を加熱する電気ヒーターを有する加熱室と、前記加熱室からの液体を供給する供給装置とを備え、
前記供給装置は、前記液体の供給を中断する手動操作可能な弁を備え、前記弁は前記電気ヒーターへの電力を遮断するか或いは減少させるためのスイッチ接点に連結されていることを特徴とする一定量の液体を加熱するための装置。
【請求項37】
前記スイッチ接点が、蒸気感応式(steam-sensitive)スイッチに関するものであることを特徴とする請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記スイッチ接点が、供給を中断することなく前記電気ヒーターへの電力を遮断するか或いは減少させるように独立して動作可能であることを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記加熱室に給液するための着脱可能な液体貯液器を備えることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。

【公表番号】特表2012−505000(P2012−505000A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530549(P2011−530549)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002378
【国際公開番号】WO2010/040994
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(503052542)ストリックス リミテッド (7)
【Fターム(参考)】