説明

液体化粧料塗布体

【課題】細く重なり合った睫毛を梳かしながらマスカラ等の液体化粧料を薄く又は厚く塗布することができるようにする。
【解決手段】キャップ7に保持される液体化粧料塗布体11を軸部12とともに構成する塗布部13を、軸部12の一端に形成する櫛部14と面部15とに対して、櫛歯14a間にスプリング16の巻部16aを挟持させながらスプリング16を装着するものとするので、櫛部では睫毛を梳かしながら睫毛に対してマスカラを薄く塗布でき、面部ではスプリングの各々巻部とにより形成される空間内において多量に貯留するマスカラによって厚く塗布することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、マスカラ等の液体化粧料を内部に収容する塗布容器本体とともに液体化粧料塗布容器を構成するキャップ内に保持される液体化粧料塗布体に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布容器本体とともに液体化粧料塗布容器を構成するキャップ内に保持される液体化粧料塗布体には、例えば繊維を挟持した針金を螺旋状に捻回することで形成する芯部と、該芯部の全周に渡り挟持された繊維により形成される円筒状のブラシである塗布部とから構成されるものがある。
【0003】
そして、上記液体化粧料塗布体を構成する塗布部をなすブラシは、細く且つ重なり合う睫毛の間に容易に入り込み、睫毛を梳かしながらマスカラ等の液体化粧料を確実に塗布することができるように、塗布部をなすブラシの繊維を細く径外方向へ放射状に配置してなるものである。
ところが、塗布部をなすブラシの繊維は細く、しかも睫毛の間に入り込んだ繊維が睫毛に対してマスカラ等の液体化粧料を確実に塗布できるように柔軟なものである。さらに、塗布部をなすブラシの繊維は長くすることで、該繊維の先端は柔軟なものとなる。
そのため、マスカラ等の液体化粧料を塗布しながら、塗布部により睫毛を持ち上げてカールを与えようとしても、塗布部をなすブラシの繊維が柔軟であるため変形し易く十分にカールさせることができなくなる。
その反面、繊維自体は柔軟であっても高密度のブラシとなると、繊維全体での柔軟性が失われて変形しづらくなり睫毛の間に入りにくくなる。
さらに、マスカラ等の液体化粧料を睫毛に対して薄く又は厚く塗布するためには、ブラシによる塗布回数により調整しなければならず、非常に煩雑である。
【0004】
そこで、上記ブラシである塗布部の欠点を防止するために、該塗布部を、マスカラ塗布具の化粧筆軸先端部にスプリングを捲回装着せしめてなるもの、又は複数の櫛歯を並設して形成する櫛部としてなるものが提案されている。
【0005】
ところで、マスカラ塗布具の化粧筆軸先端部にスプリングを捲回装着せしめてなるものの場合、スプリングのピッチ間を適宜調整することで、該ピッチ間に貯留するマスカラの量は増減することができるので、睫毛に対してマスカラを薄く又は厚く塗布することは容易に行えるものである。しかも、化粧筆軸先端部は硬くしかも曲面であるので睫毛に対してカールを与えることは容易である。しかしながら、睫毛に対して薄く塗布するためにピッチ間を狭くするとスプリングの直径は小さく、即ち化粧筆軸先端部における径方向への突出高は低くなるため、細く重なり合う睫毛の間に入り込みにくくなって十分に梳かすことができないおそれがある。
また、複数の櫛歯を並設して形成する櫛部としてなるものの場合、塗布部である櫛部を形成する櫛歯は薄いので、細く重なり合う睫毛の間に容易に入り込み、睫毛を梳かしながらマスカラ等の液体化粧料を塗布することができるものである。しかも、睫毛の間に入り込んだ楠歯に睫毛が挟持されるので睫毛に対してカールを与えることは容易である。しかしながら、睫毛に対してマスカラ等の液体化粧料を薄く又は厚く塗布しようとするためには、櫛部を形成する櫛歯間を変えなければならず、多種類の櫛部が必要となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭56−17004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、一つの液体化粧料塗布体において、睫毛を梳かしながらマスカラ等の液体化粧料を睫毛に対して薄く又は厚く塗布することができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、塗布部を、軸部他方の櫛部と面部に対してスプリングを装着して形成することを最も主要な特徴とする。
【0009】
第1の特徴として、塗布容器本体とともに液体化粧料塗布容器をなすキャップの内部において、その根元部を嵌合させる固持軸の先端において軸部と塗布部とから構成されるものであって、
該軸部は、一端に複数の櫛歯を並設してなる櫛部とともに面部を形成するものとし、
該塗布部は、軸部一端の櫛部及び面部に対して櫛部をなす櫛歯間にスプリングの巻部を挟持させながらスプリングを装着して形成するものである。
【0010】
そのため、塗布部における櫛部では複数の櫛歯が並設して形成されているので、細く重なり合う睫毛の間に櫛歯は容易に入り込み、睫毛を梳かすことができる。その結果、睫毛に対してマスカラ等の液体化粧料を薄く塗布することができる。
【0011】
そして、塗布部における面部ではスプリングの装着によって軸部の面部とスプリングとにより空間が形成される。その結果、該空間内には多量のマスカラ等の液体化粧料が貯留されるので、睫毛を梳かしながら、睫毛にマスカラ等の液体化粧料を厚く塗布することができる。
ここで、前記スプリングは櫛部をなす櫛歯間にスプリングの巻部を挟持させながら装着されているので、反復してシゴキによって塗布部を扱いてもスプリングの軸部長軸方向へのずれを防ぐことができる。従って、スプリングのピッチ間は変化しないので、常にマスカラ等の液体化粧料を一定の厚さで塗布することができる。
また、塗布部における面部は、平面状ばかりでなく、凹又は凸曲面状としても良いものである(図6参照)。
【0012】
なお、塗布部において装着されるスプリングは、睫毛に対してマスカラ等の液体化粧料を局部的に厚く塗布することができるように、櫛部に対してスプリングの巻部を櫛歯間に挟持させながら装着するスプリングの全長を短いものとしても良いものである。
【0013】
さらに、該液体化粧料塗布体は固持軸と別体としても良いが、製造コストの低減化を図るために固持軸の先端において一体に形成するものであっても良いものである。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の液体化粧料塗布体は、櫛部と面部とからなる軸部一端において、櫛部を形成する櫛歯間にスプリングの巻部を挟持させながらスプリングを装着するので、軸部の櫛部では細く重なり合った睫毛間に容易に入り込み、睫毛を梳かしながらマスカラ等の液体化粧料を薄く塗布できるとともに、面部ではスプリングとにより形成される空間において貯留する多量のマスカラ等の液体化粧料を厚く塗布できるため、一本の液体化粧料塗布体により多様な状態の睫毛に対して簡易且つ確実にその厚さを自在に塗布することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本願発明の実施例である液体化粧料塗布体を具える液体化粧料塗布容器の分解正面図である。
【図2】図2は本願発明の実施例である液体化粧料塗布体の部分断面図である。
【図3】図3(イ)は本願発明の実施例である液体化粧料塗布体の左側面図、同図(ロ)はA−A断面図、同図(ハ)はB−B断面図である。
【図4】図4は本願発明の実施例である液体化粧料塗布体の分解正面図である。
【図5】図5(イ)は本願発明の実施例である液体化粧料塗布体を構成する軸部の左側面図、同図(ロ)はA’−A’断面図、同図(ハ)はB’−B’断面図である。
【図6】図6(イ)及び(ロ)は、本願発明の実施例である液体化粧料塗布体の変形例における要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一本の液体化粧料塗布体において、睫毛を梳かしながら、マスカラ等の液体化粧料を薄く又は厚く塗布することができるようにするという目的を、軸部一端に形成する櫛部と面部に対するスプリングの装着により実現した。
【実施例】
【0017】
図1において示すものは、本願発明の実施例である液体化粧料塗布体11を具える液体化粧料塗布容器1である。該液体化粧料塗布容器1は、内部にマスカラ6を収容する塗布容器本体2と、該塗布容器本体2に対して一体に螺合、固定されるキャップ7とからなるものである。
【0018】
そこで、塗布容器本体2は、外側面に雄ネジ部4を螺設する開口部3を有するとともに、後述する固持軸10及び液体化粧料塗布体11の表面に付着した過剰なマスカラ6を掻き落とすためのシゴキ5を内装するものである。
【0019】
また、キャップ7は、塗布容器本体2の開口部3の雄ネジ部4と螺合する雌ネジ部9を内周面に螺設する開口部8を有するとともに、マスカラ6を塗布するために使用する本願発明の実施例である別体の液体化粧料塗布体11を根元部10aをキャップ7内に嵌合させる固持軸10を介して固持するものである。
【0020】
そして、前記液体化粧料塗布体11は、該固持軸10の先端に固持される軸部12と塗布部13とから構成される。
ここで、該軸部12は、一端に複数の櫛歯14aを並設してなる櫛部14とともに該櫛部14の背面に平面状の面部15を形成するとともに、他端では前記固持軸10の固持孔10b内に挿嵌固時させる固持部12aを形成するものである。
さらに、該塗布部13は、軸部12一端の櫛部14及び面部15に対して櫛部14をなす各櫛歯14a間にスプリング16の各々巻部16aを挟持させながらスプリング16を装着して形成するものである。
【0021】
従って、本願発明の実施例である液体化粧料塗布体11の塗布部13は、櫛歯14a間にスプリング16の各々巻部16aを挟持させてなる櫛部14と、該櫛部14の背面において軸部12の面部15ではスプリング16の各々の巻部16aとにより空間17を形成しているものである。
なお、該面部15を図6(イ)に示すように凸曲面とすると、睫毛は該凸曲面の面部15に沿ってマスカラ6が塗布されるので容易にカールも与えることができる。また、図6(ロ)に示すように凹曲面とすると、スプリング16の各々の巻部16aとにより形成する空間17の容積が大きくなり、より多量のマスカラ6を貯留できるようになるので、睫毛に対してより厚くマスカラ6を塗布することができるものである。
【0022】
本願発明の実施例である液体化粧料塗布体11は以上の構成を具えるので、睫毛にマスカラ6を塗布するにあたり、まず睫毛に薄く塗布しようとする場合には、液体化粧料塗布体11の塗布部13における櫛部14を使用するものである。即ち、該櫛部14は複数の櫛歯14aを並設して形成されているので、該櫛歯14aは細く重なり合う睫毛間に容易に入り込み、睫毛を梳かすことができる。その結果、前記櫛歯14aにより梳かされた睫毛に対してマスカラ6を薄く塗布することができる。
【0023】
一方、例えば睫毛に対してマスカラ6を厚く塗布しようとする場合には、塗布部13の平面状の面部15を使用するものである。即ち、スプリング16を装着することによって該面部15では、該面部15とスプリング16の巻部16aとにより空間17を形成するものである。その結果、睫毛をスプリング16と軸部12との間で挟むことなく睫毛を梳かすことができる。その上、該空間17内には多量のマスカラ6を貯留しているため、睫毛を梳かしながら、睫毛にマスカラ6を厚く塗布することができるものとなる。その際、該面部15を回転させることにより睫毛に対してカールを与えることもできる。
【0024】
また、睫毛の一部のみ厚くマスカラ6を塗布しようとする場合には、塗布部13の一部に塗布容器本体2内に収容するマスカラ6を付着させた上で、マスカラ6が付着したスプリング16の巻部16aが配置される面部15を使用するものである。その結果、睫毛に一部に対してマスカラ6を厚く塗布することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本願発明は、塗布部における櫛部では細く重なり合った睫毛を梳かしながらマスカラを薄く塗布することができるとともに、面部ではマスカラを厚く塗布することができるので、確実な塗布を行うとともに、その塗布量の調節することが必要となる毛染剤等の容器にも適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 液体化粧料塗布容器
2 塗布容器本体
3 開口部
4 雄ネジ部
5 シゴキ
6 マスカラ
7 キャップ
8 開口部
9 雌ネジ部
10 固持軸
10a 根元部
10b 固持孔
11 液体化粧料塗布体
12 軸部
12a 固持部
13 塗布部
14 櫛部
14a 櫛歯
15 面部
16 スプリング
16a 巻部
17 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布容器本体とともに液体化粧料塗布容器をなすキャップの内部において、その根元部を嵌合させる固持軸の先端において軸部と塗布部とから構成されるものであって、
該軸部は、一端に複数の櫛歯を並設してなる櫛部とともに面部を形成するものとし、
該塗布部は、軸部一端の櫛部及び面部に対して櫛部をなす櫛歯間にスプリングの巻部を挟持させながらスプリングを装着して形成する
ことを特徴とする液体化粧料塗布体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−87604(P2011−87604A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240989(P2009−240989)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)