説明

液体化粧料塗布容器

【課題】簡易且つ正確に、しかも均一にマスカラを塗布するにあたり、睫毛の生える方向に合わせて塗布体を変形させるものである。
【解決手段】キャップ7内に固持される中空の保持軸9先端の開口部9cに具えられ、表面に複数の突起12b’からなる櫛歯12bを形成する四つの塗布体片12aよりなる略柱形状の塗布体12と一体に形成される軸体12eと、該保持軸9内を保持軸9軸線方向に進退可能に挿通されるキャップ7内に内装される進退機構10の進退軸11とを連結させているので、進退機構により、該塗布体は保持軸の開口部内で当接し、又は開口部外へ押勢されて、保持軸軸線に沿って中央を外方に向かって膨出するように変形させ、又は元の略柱形状に復元させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、マスカラ等の液体化粧料を塗布する塗布体を一体に具える液体化粧料塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マスカラを貯留する液体化粧料塗布容器においては、マスカラを塗布する塗布体が具えられている。そして、該塗布体は、プラスチック製の芯と該芯から放射状に伸びる毛からなるブラシとから構成されるものであって、該芯とブラシとは一体に成形されているものである(特許文献1参照)。
【0003】
そのため、該芯とともに一体に成形されるブラシは、睫毛自体非常に柔軟であるので、該芯やブラシの有する弾性に基づく形状の変形を除き、形状が変形することはない。従って、湾曲して生えている睫毛に対してマスカラを塗布しようとすると、不均一にマスカラが塗布されてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、湾曲して生えている睫毛に対して均一にマスカラを塗布するために、塗布体のブラシの一部をもって睫毛の部分毎にマスカラを塗布するものであるが、使用者にとっては、睫毛全体に対して該塗布を反復して行わなければならず非常に煩雑なものである。
【0005】
その上、睫毛全体に対してマスカラを塗布しつつカールを与えようとすると、塗布体のブラシの一部をもって睫毛の部分毎にマスカラを塗布しつつ、その上で該塗布体のブラシを回転させてカールを与えなければならないので、上述のように、使用者にとって非常に煩雑である上、睫毛の部分毎に作業を行うので睫毛に対するカール自体も不均一になり易いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−18245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、様々な方向に生えている睫毛に対して、マスカラを簡易且つ正確に、しかも均一に塗布し、さらには睫毛を均一にカールさせることができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の特徴として、
液体化粧料を貯留する塗布容器本体と、先端の開口部に塗布体を保持してなる保持軸を一体に固持するキャップとから構成され、
該キャップは、先端を開口してなる開口部を有する中空の保持軸を一体に固持した上で、該保持軸内に挿通する進退軸を該保持軸軸線方向に対して進退自在とする進退機構を内装し、
該塗布体は、前記保持軸の先端の開口部内より突出し、軸体とともに立体形状に形成されるとともに、該軸体によって変形可能となるものであって、
該塗布体を一体に形成する軸体と保持軸内を挿通する進退軸とを連結してなるものである。
【0009】
そのため、進退機構を操作することで、保持軸内を挿通する進退機構の進退軸は該保持軸軸線方向に後退又は前進し、さらに、該進退軸と連結する塗布体において一体に形成される軸体も同時に後退又は前進するものとなる。その結果、軸体が後退すると、該軸体とともに一体に形成される塗布体は保持軸後端方向へ引張されながら該保持軸と当接して圧力を受けることによって、該塗布体を変形させることができる。
また、軸体が前進すると、該軸体とともに一体に形成される塗布体は保持軸軸線先端方向へ押勢されて塗布体が該保持軸との当接が解けて圧力が減少することによって、塗布体を原形に復元させることができる。
以上により、睫毛の形状に合わせて塗布体の櫛歯の形状を変形させることができるので、睫毛に対してマスカラを簡易且つ正確に、しかも均一に塗布することができるものである。
【0010】
更に、第2の特徴として、第1の特徴を踏まえて、
上記塗布体は、一端に係止部を形成し、その一面において複数の突起からなる櫛歯を形成してなる複数の塗布体片の他端を連結部を中心に平面形状に形成するとともに、該連結部に該塗布体片のなす平面に対して垂直方向に軸体を立設する成形体において、
該塗布体片を折曲するとともに該塗布体片の係止部を軸体に係止して立体的な略柱形状とするものである。
【0011】
そのため、進退機構を操作することで、保持軸内を挿通する進退機構の進退軸は該保持軸軸線方向に後退又は前進し、さらに、該進退軸と連結する連結部を中心に折曲して側面を複数の塗布体片により囲まれてなる略柱形状の塗布体において一体に形成される軸体も同時に後退又は前進するものとなる。その結果、軸体が後退すると、該軸体とともに一体に形成される塗布体は保持軸後端方向へ引張されながら該保持軸と当接して圧力を受けることによって、該塗布体を保持軸軸線方向に沿って中央を外方に向かって膨出するように変形させることができる。
また、軸体が前進すると、該軸体とともに一体に形成される塗布体は保持軸軸線先端方向へ押勢され、該保持軸との当接が解けて圧力が減少することによって、塗布体を略柱形状に復元させることができる。
以上により、湾曲して生えている睫毛の形状に合わせて、塗布体の櫛歯の形状を保持軸軸線方向に沿って中央を外方に向かって膨出するように変形させることができるので、睫毛に対してマスカラを簡易且つ正確に、しかも均一に塗布することができるとともに、睫毛を均一にカールさせることができるものである。
【0012】
ここで、軸体と一体に形成されることになる立体形状の塗布体の塗布体片は、予め平面形状に成形されてなるものである。すなわち、従来のように塗布体を一体に立体形状として成形してなるものとすると、金型から取り出す際の破損を防止するために塗布体の形状にデザイン上の制限が生じ、また複雑な塗布体の形状を実現するためには、金型を円周方向に複雑な型割り構造とすることが必要となるので製造コストの上昇を招くものである。そこで、立体形状の塗布体を形成する塗布体片を平面形状として成形することで、複雑な立体形状の塗布体であっても、金型の形状を単純化して、安価且つ容易に製造することができるものである。
【0013】
また、立体形状の塗布体を形成する塗布体片は予め成形により平面形状とすると容易に変形し易くなるので、立体形状である塗布体に対する圧力の増減が僅かであってもより大きく変形するものである。その結果、様々に湾曲して生えている睫毛に対して十分に対応し、簡易且つ正確に、しかも均一に、さらにはカールを与えながらマスカラを塗布することができるものである。
【発明の効果】
【0014】
本願発明は、キャップに一体に固持される保持軸先端の塗布体が、キャップ内に内装する進退機構により変形可能となるので、様々な方向に生えている睫毛に対して簡易且つ正確に、しかも均一に、さらにはカールをも与えながらマスカラを塗布することができる優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本願発明の実施例1である液体化粧料塗布容器の縦断面図である。
【図2】図2は、本願発明の実施例1である液体化粧料塗布容器を構成するキャップの縦断面図である。
【図3】図3(イ)は、本願発明の実施例1である液体化粧料塗布容器を構成する塗布体の正面図、(ロ)はそのA−A横断面図である。
【図4】図4は、本願発明の実施例1である液体化粧料塗布容器を構成する塗布体の組み立て工程を示す図である。
【図5】図5(イ)は、本願発明の実施例1である液体化粧料塗布容器におけるキャップ内に内装される進退機構の回転スイッチの初期状態での要部拡大正面図、キャップの要部拡大縦断面図、及びA−A横断面図、(ロ)は、キャップ内に内装される進退機構の回転スイッチの作動状態での要部拡大正面図、キャップの要部拡大縦断面図、及びA’−A’横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
様々な方向に生えている睫毛に対して、簡易且つ正確に、しかも均一にさらにはカールをも与えながらマスカラを塗布することを、塗布体を変形可能とすることで実現した。
【実施例】
【0017】
図1において示すのは、本願発明の実施例の液体化粧料塗布容器1である。該液体化粧料塗布容器1は、その内部でマスカラ3を貯留するとともに、その開口部4では、後述するキャップ7に一体に固持される保持軸9及び該保持軸9先端の塗布体12に密着し、それらの表面に過剰に付着したマスカラ3を拭去するシゴキ5を内装し、その外周面に雄ネジ部6を螺設する塗布容器本体2と、その開口部7aの内周面に前記雄ネジ部6と螺合する雌ネジ部8を螺設するものであって、先端に開口部9cを凹設する中空の保持軸9を保持するとともに、該保持軸9内において該保持軸9軸線方向に進退軸11を進退自在に挿通させてなる進退機構10を内装するキャップ7とから構成されるものである。
【0018】
さらに、該保持軸9先端の開口部9cにおいては、軸体12eと一体に形成されるとともに、その四面を表面に複数の突起12b’からなる櫛歯12bを形成する塗布体片12aによって略柱形状とし、進退機構10により保持軸9軸線に沿って中央を外方に向かって膨出するように変形可能となる塗布体12が具えられている。
【0019】
そして、該塗布体12と一体に形成される軸体12cと進退機構10の進退軸11とを一体に連結してなるものである。
【0020】
なお、ここで上記保持軸9先端の開口部9cに具えられる塗布体12は、図4に示すものである。すなわち、上記塗布体12は、一端に環状の係止部12cを形成し、その一面において複数の突起12b’からなる櫛歯12bを形成してなる四つの塗布体片12aの他端を連結部12dを中心に十字状に配置して平面形状に形成するとともに、該連結部12dに該塗布体片12aのなす平面に対して垂直方向に軸体12eを立設する成形体を、該塗布体片12aを折曲するとともに該塗布体片12aの係止部12cを軸体12eに対して摺動自在に係止して立体的な略柱形状の塗布体12とするものである。
【0021】
そして、本願発明の実施例1である液体化粧料塗布容器1を構成するキャップ7内に内装される進退機構10は図5に示すようになっているものである。
すなわち、キャップ7の端部に周方向に回転自在となる回転スイッチ10aが配置されている。そして、キャップ7内には保持軸9の根元部9aが固持されるとともに、該保持軸9内を挿通する進退軸11の後端部11bが前記保持軸9の根元部9a内において気密性を維持するパッキン10bを介して保持軸9軸線前後方向へ進退可能に保持されている。その上で、キャップ7の回転スイッチ10aと進退軸11の後端部11bとは外周面に雄ネジ部13aを螺設するネジ杆13を介して回転不能に固定されるとともに、該ネジ杆13の雄ネジ部13aと保持軸9の根元部9a内周面に螺設する雌ネジ部9bと一体に螺合させてなるものである。その結果、回転スイッチ10aの回転により、該回転スイッチ10aと一体になるネジ杆13の雄ネジ部13aと保持軸9の根元部9a内周面に螺設される雌ネジ部9bとの螺合が解けたり、又は締まったりして、ネジ杆13は保持軸9軸線方向に沿って後退又は前進して、該ネジ杆13と一体となる後端部11bを有する進退軸11も合わせて後退又は前進するものである。そして、該進退軸11と一体に連結する軸体12eと一体に成形される塗布体12も保持軸9の先端の開口部9c内に後退又は開口部9c外へ前進させることによって、該塗布体12は保持軸9先端の開口部9c内に対して当接して圧力を受け、又は開口部9c外へ押勢されて当接が解けることで圧力が減少して変形するものである。
【0022】
本願発明の実施例である液体化粧料塗布容器1は以上のように構成されるのでマスカラ3を塗布するにあたっては次のようにするものである。
すなわち、上記塗布体12において、当初塗布体12は、一面に複数の突起12bを配設してなる塗布体片12aにより略柱形状に形成されるものである。従って、塗布体12を形成される塗布体片12aは平面となっているものである。その結果、睫毛に沿って塗布体12を動かすことにより、睫毛において部分的に、簡易且つ正確に、しかも均一にマスカラ3を塗布することができるものである。
【0023】
そして、回転スイッチ10aを回転させることにより、進退機構10の進退軸11に対して一体に連結し、塗布体12とともに一体に成形された軸体12eは後退するとともに、該軸体12eと一体に形成される略柱形状の塗布体12も保持軸9先端の開口部9c内に後退するものである。その結果、該塗布体12は保持軸9軸線方向に、該軸体12eと一体に形成される塗布体12は開口部9c内に当接するとともに圧力を受けるので、該塗布体12は保持軸9軸線に沿って中央が外方に向かって膨出するように変形するものである。従って、塗布体12を形成する塗布体片12aは保持軸9軸線にそって中央が突出するように湾曲しているので、簡易且つ正確に、しかも均一にマスカラ3を与えることができるとともに、さらにはカールをも与えることができるものである。
【0024】
また、回転スイッチ10aを元の位置に回転させると、進退機構10の進退軸11の前進とともに軸体12eは前進するので、塗布体12は保持軸9先端の開口部9c内より保持軸9先端方向へ押勢されて該保持軸9の開口部9c内での当接が解かれることで圧力は減少するものである。その結果、保持軸9軸線に沿って中央が外方へ膨出するように変形していた塗布体12は、元の略柱形状の塗布体12に復元するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本願発明の液体化粧料塗布容器は塗布体を変形可能とするので、マスカラ等の液体化粧料のみならず染毛剤等を塗布する塗布体を具える塗布容器に適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 液体化粧料塗布容器
2 塗布容器本体
3 マスカラ
4 開口部
5 シゴキ
6 雄ネジ部
7 キャップ
7a 開口部
8 雌ネジ部
9 保持軸
9a 根元部
9b 雌ネジ部
9c 開口部
10 進退機構
10a 回転スイッチ
10b パッキン
11 進退軸
11a 後端部
12 塗布体
12a 塗布体片
12b 櫛歯
12b’ 突起
12c 係止部
12d 連結部
12e 軸体
13 ネジ杆
13a 雄ネジ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体化粧料を貯留する塗布容器本体と、先端の開口部に塗布体を保持してなる保持軸を一体に固持するキャップとから構成され、
該キャップは、先端を開口してなる開口部を有する中空の保持軸を一体に固持した上で、該保持軸内に挿通する進退軸を該保持軸軸線方向に対して進退自在とする進退機構を内装し、
該塗布体は、前記保持軸の先端の開口部内より突出し、軸体とともに立体形状に形成されるとともに、該軸体によって変形可能となるものであって、
該塗布体を一体に形成する軸体と保持軸内を挿通する進退軸とを連結してなる ことを特徴とする液体化粧料塗布容器。
【請求項2】
上記塗布体は、一端に係止部を形成し、その一面において複数の突起からなる櫛歯を形成してなる複数の塗布体片の他端を連結部を中心に平面形状に形成するとともに、該連結部に該塗布体片のなす平面に対して垂直方向に軸体を立設する成形体において、
該塗布体片を折曲するとともに該塗布体片の係止部を軸体に係止して立体的な略柱形状とする
ことを特徴とする請求項1記載の液体化粧料塗布容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−31528(P2013−31528A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168627(P2011−168627)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)