説明

液体収容体

【課題】収容袋の剛性の大きな箇所にデバイスを取り付けることが可能でありながら、取付部材が破損することを回避可能とする。
【解決手段】一組のシート部と前記マチ部とを重ね合わせた状態で、重ね合わせた箇所を挟むように取り付けられるデバイスの取付部材において、収容袋の一方のシート部に接する側と収容袋の他方のシート部に接する側とが、互いに離れる方向に移動可能とする。こうすれば、取付部材が剛性が高い箇所に取り付けられるので、デバイスが液体消費装置にうまく接続されなくなる事態を回避することができる。また、液体収容体の落下などによって取付部材で挟んだ部分が膨らんだ場合、取付部材は、収容袋の一方のシート部に接する側と他方のシート部に接する側とが互いに離れる方向に移動する。このため、収容袋が膨らむ力によって取付部材が破損してしまうことを回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体消費装置などに搭載されて、液体を内部に収容しておく液体収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
大型のインクジェットプリンターのように、大量の液体を消費する液体消費装置では、液体の供給源として、液体を通さないフィルムなどで形成されて、内部に液体を収容した液体パックが用いられる。液体パックは、ユーザーによって専用のトレイに載せられて、トレイごと液体消費装置に装着される。装着状態では、液体消費装置側の供給流路と、液体パックに設けられた流出口とが接続されて、液体パックから液体消費装置に液体が供給される。
【0003】
また、どのような液体を収容した液体パックが液体消費装置に装着されたか分かるようにする目的で、液体の種類を記憶したICチップなどの記憶素子を液体パックに取り付けておく技術が提案されている(特許文献1)。この技術では、液体パックが装着されると、記憶素子が液体消費装置側の読取部に差し込まれて、記憶素子内の情報が読み取られるようになっている。
【0004】
もっとも記憶素子は、柔軟な液体パックに取り付けられているので、液体消費装置への装着時に液体パックが変形して、記憶素子を読取部にうまく差し込めなくなることが起こり得る。そこで、液体パックとして、一組のフィルムと、フィルムの間に設けたマチ部とを袋状に張り合わせた液体パック(いわゆるガゼットパック)が用いられる場合には、ガゼットパックの隅部を挟むように取付部材を取り付けておくことによって、一組のフィルム、およびマチ部を重ね合わせて剛性を大きくしておき、この部分に記憶素子が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−83497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように取付部材を取り付けた場合、取付部材が破損してしまうことがあるという問題があった。すなわち、落下等によって液体パック内の液体が隅部に偏ると、液体パックの隅部が膨らもうとする。その結果、液体パックを挟む方向とは反対の方向の力が取付部材に加わることとなり、場合によっては、取付部材が破損してしまうという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、液体パックを取付部材で挟むことで剛性の大きな箇所に記憶素子を取り付けることが可能でありながら、取付部材が破損することを回避可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体収容体は次の構成を採用した。すなわち、
液体消費装置に着脱可能に装着される液体収容体であって、
一組のシート部と該一組のシート部の間に設けられたマチ部とによって袋状に形成され、内部に液体を収容する収容袋と、
前記収容袋の前記一組のシート部と前記マチ部とを重ね合わせた状態で、該重ね合わせた箇所を挟むように取り付けられる取付部材と、
前記取付部材に設けられて、前記液体収容体が前記液体消費装置に装着されることによって該液体消費装置に接続されるデバイスと
を備え、
前記取付部材は、前記収容袋の一方のシート部に接する側と該収容袋の他方のシート部に接する側とが、互いに離れる方向に移動可能に設けられていることを要旨とする。
【0009】
このような本発明の液体収容体では、収容袋の一組のシート部とマチ部とを重ね合わせ、この箇所を挟むように取付部材を取り付けることによって、収容袋にデバイスが取り付けられる。尚、本発明において「デバイス」とは、液体消費装置に接続された状態で、特定の機能を発揮する電子部品のことを表している。このような本発明の「デバイス」としては、例えば、液体収容体に関する情報(製造年月日や内部に収容した液体の種類など)が内部に記憶され、液体消費装置に接続された状態で、内部の情報を液体消費装置側で読取可能な記憶素子などが挙げられる。
【0010】
デバイスが設けられた取付部材は、一組のシート部とマチ部とを重ね合わせ、これらを挟んだ状態で取り付けられている。このため取付部材は、収容袋の中でも厚みがあり、しかもシート部とマチ部とが接合されて剛性が高い箇所に取り付けられていることになる。従って、液体消費装置への装着時に収容袋が変形することによって、デバイスが液体消費装置にうまく接続されなくなる事態を回避することができる。また、液体収容体の落下などによって収容袋内に液体の偏りが生じ、これに伴って取付部材で挟んだ部分が膨らんだ場合、取付部材は、収容袋の一方のシート部に接する側と他方のシート部に接する側とが互いに離れる方向に移動する。このため、取付部材を介して剛性の大きな箇所にデバイスを取り付けることが可能でありながら、収容袋が膨らむ力によって取付部材が破損してしまうことを回避することが可能となる。
【0011】
また、本発明の液体収容体では、取付部材が収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側とを、蝶番で回動可能に連結することとしてもよい。こうすれば、液体収容体の落下などによって取付部材で挟んだ部分が膨らんだ場合、収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側とが蝶番を介して回動して、互いに離れる方向に移動する。このため、収容袋が膨らむ力によって取付部材が破損してしまうことを回避可能となる。
【0012】
また、本発明の液体収容体では、以下のように取付部材を形成することとしてもよい。すなわち、収容袋の一方のシート部と接する側と、収容袋の他方のシート部と接する側と、これら2つの側を連結する部分とを一体形成する。そして、連結する部分を、一方のシート部と接する側と他方のシート部と接する側とが互いに離れる方向に変形可能としてもよい。こうすれば、取付部材で挟んだ部分が膨らんだ場合、収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側との連結部分が変形することによって、これら2つの側が互いに離れる方向に移動する。このため、収容袋が膨らむ力によって取付部材が破損してしまうことを回避可能となる。
【0013】
また、本発明の液体収容体では、取付部材が収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側とが互いに離れる方向に変位したときに、当該2つの側が互いに近づく方向に付勢されるようにしてもよい。
【0014】
こうすれば、収容袋が膨らむ力によって離れる方向に変位した2つの側(収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側)を、離れる前の位置に自動的に戻すことができる。その結果、離れた2つの側をユーザーの手で元の位置に戻す手間を省略することが可能となる。
【0015】
また、本発明の液体収容体では、取付部材が収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側とを別部材として形成しておき、これら2つの別部材を付勢手段によって互いに近づく方向に付勢することとしてもよい。
【0016】
このような取付部材では、一組のシート部とマチ部とを重ね合わせた箇所を取付部材の別部材の間に挟むだけで、取付部材を収容袋に簡単に取り付けることができる。また、収容袋が膨らむ力によって離れる方向に移動した2つ別部材は、離れる前の位置に自動的に戻すことができるので、離れた2つの別部材をユーザーの手で元の位置に戻す手間を省略することが可能となる。
【0017】
また、本発明の液体収容体では、取付部材が収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側とを別部材として形成しておき、これら2つの別部材を伸縮可能な伸縮部材で連結することとしてもよい。
【0018】
こうすれば、伸縮部材を設けるだけで、2つの別部材を連結するとともに、別部材を互いに近づく方向に付勢することができる。従って、2つの別部材を連結する構造と、別部材を互いに近づく方向に付勢する構造を別々に設ける必要が無いので、取付部材の構造を簡素なものとすることが可能となる。
【0019】
また、本発明の液体収容体では、取付部材が収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側とが離れる方向に所定以上、変位しないように、これら2つの側の変位を規制することとしてもよい。こうすれば、収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側とが大きく離れることによって、取付部材が破損してしまうことを回避することができる。
【0020】
また、本発明の液体収容体では、取付部材が収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側とを、磁力によって互いに近づく方向に付勢することとしてもよい。このようにしても、取付部材が収容袋の一方のシート部と接する側と収容袋の他方のシート部と接する側とが離れた場合に、離れる前の位置に自動的に戻すことができるので、ユーザーの手間を省略することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の液体消費装置の大まかな構造を示した説明図である。
【図2】本実施例のインクパック、およびインクパックが収納されるカートリッジトレイの構成を示した分解斜視図である。
【図3】カートリッジトレイに収納されたインクパックが、カートリッジホルダーに装着される様子を示した説明図である。
【図4】本実施例の記憶素子を収容袋に取り付ける取付部材の構造を示した説明図である。
【図5】本実施例の取付部材の動作を示した説明図である。
【図6】第1変形例の取付部材の構造を示した説明図である。
【図7】第2変形例の取付部材の構造を示した説明図である。
【図8】第3変形例の取付部材の構造を示した説明図である。
【図9】磁石を用いて上板と下板とを接近させる取付部材を例示した説明図である。
【図10】上板と下板とを近づける方向に付勢する手段を省略した取付部材を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成:
B.本実施例の記憶素子の取付部材:
C.変形例:
C−1.第1変形例:
C−2.第2変形例:
C−3.第3変形例:
【0023】
A.装置構成 :
図1は、いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。図示したインクジェットプリンター10は、略箱形の外観形状をしており、前面のほぼ中央には前面カバー11が設けられ、その左隣には複数の操作ボタン15が設けられている。前面カバー11は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷用紙が排出される細長い排紙口12が現れる。また、インクジェットプリンター10の背面側には、図示しない給紙トレイが設けられており、給紙トレイに印刷用紙をセットして操作ボタン15を操作すると、給紙トレイから印刷用紙が吸い込まれて、内部で印刷用紙の表面に画像等が印刷された後、排紙口12から印刷用紙が排出される。
【0024】
インクジェットプリンター10の内部には、主走査方向に往復動しながら印刷用紙上にインクドットを形成する噴射ヘッド20や、噴射ヘッド20を往復動させる駆動機構30などが設けられている。噴射ヘッド20の底面側(印刷用紙に向いた側)には、複数の噴射ノズルが形成されており、噴射ノズルから印刷用紙に向かってインクを噴射して画像等の印刷を行う。
【0025】
また、噴射ヘッド20の図面右側の位置にはカートリッジホルダー42が設けられている。カートリッジホルダー42には、噴射ノズルから噴射するインクを収容したインクパック100(図示せず)が、専用のトレイ(カートリッジトレイ40)に収納された状態で装着される。装着状態では、インクパック100内のインクがカートリッジホルダー42およびインクチューブ44を介して噴射ヘッド20に供給される。
【0026】
尚、図示したインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを用いてカラー画像を印刷することが可能であり、これに対応して、噴射ヘッド20にはインクの種類毎に噴射ノズルが設けられている。そして、それぞれの噴射ノズルには、対応するインクパック100内のインクが、インクの種類毎に設けられたインクチューブ44を介して供給される。
【0027】
噴射ヘッド20を往復動させる駆動機構30は、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32を駆動するためのモーター34などから構成されている。タイミングベルト32の一部は噴射ヘッド20に固定されており、タイミングベルト32を駆動すると、主走査方向に延設された図示しないガイドレールによってガイドしながら、噴射ヘッド20を主走査方向に往復動させることが可能となる。
【0028】
図2は、本実施例のインクパック100、およびインクパック100が収納されるカートリッジトレイ40の構成を示した分解斜視図である。図示されているように、本実施例のインクパック100は、内部にインクを収容する収容袋102や、収容袋102に収容されたインクの取出し口となるインク供給口104や、収容袋102内のインクの種類やインクパック100の製造年月日などの情報を記憶した記憶部106などから構成される。収容袋102は、液体を通さないフィルムで形成された一組のシート部102aと、同じく液体を通さないフィルムで形成され、一対のシート部102aの間に配置される一対のマチ部102bとによって形成されている。この収容袋102の図面手前側の端部にはインク供給口104が設けられており、さらに図面手前側の収容袋102の隅部には記憶部106が設けられている。
【0029】
記憶部106は、収容袋102内のインクの種類などを記憶した記憶素子210(デバイス)や、記憶素子210を収容袋102に取り付けるための取付部材200などから構成されている。詳しくは後述するが、取付部材200は、おおまかには2枚の板(上板および下板)がねじりバネによって互いに接近する方向に付勢された構造となっており、取付部材200の上板の表側に記憶素子210が設けられている。この取付部材200は、収容袋102の隅部において一対のシート部102aとマチ部102bとを重ね合わせた状態で、重ね合わせた箇所を挟むように取り付けられる。このように取付部材200を取り付ける理由については後述する。
【0030】
インクパック100が収納されるカートリッジトレイ40は、箱型形状に形成されている。このカートリッジトレイ40の図面手前側の壁には、壁の略中央の位置(インク供給口104に対応する位置)に切欠部45が設けられている。また、カートリッジトレイ40の底部の図面右手前の位置(記憶部106に対応する位置)には支持台46が設けられている。このため、ユーザーがインクパック100をカートリッジトレイ40に載せると、インク供給口104が切欠部45に嵌め込まれてインク供給口104の位置が固定されるとともに、記憶部106(正確には取付部材200)が、支持台46によって裏側から支持される。さらに、支持台46の手前側の位置には、インクジェットプリンター10側の読取部54(図3を参照)と記憶素子210とを接続可能とするための接続穴47が設けられている。
【0031】
図3は、カートリッジトレイ40に収納されたインクパック100が、カートリッジホルダー42に装着される様子を示した説明図である。図示されているように、カートリッジホルダー42には、カートリッジトレイ40を挿入する挿入孔50がインクの種類ごとに設けられている。挿入孔50の奥側の面には、インクパック100からインクを取り入れるためのインク取入針52が手前側に向けて立設されている。このため、インクパック100を収納したカートリッジトレイ40を挿入孔50の奥側まで挿入すると、インク取入針52がインク供給口104に挿入されて、インクパック100内のインクを噴射ヘッド20に供給可能となる。
【0032】
また、挿入孔50の奥側の面には、記憶素子210に記憶された情報を読み出すための読取部54も設けられている。読取部54は、カートリッジトレイ40を挿入孔50の奥側まで挿入した時に、記憶素子210の上面と読取部54の下面とが接する位置に設けられている。記憶素子210の上面および読取部54の下面には図示しない接点が設けられており、従ってカートリッジトレイ40を挿入すると、読取部54と記憶素子210とが接点を介して接続されて、記憶素子210内の情報(インクパック100内のインクの種類など)を読み取り可能となる。
【0033】
また、上述したように本実施例のインクパック100では、収容袋102の隅部を挟むように取付部材200が取り付けられており(図2を参照)、このため収容袋102の中でも比較的剛性の大きな箇所(一組のシート部102aとマチ部102bとを重ね合わせた箇所)に記憶素子210が取り付けられる。従って、インクパック100をカートリッジホルダー42に装着する際には、収容袋102が変形することによって記憶素子210の位置が変化することなく、インクジェットプリンター10側の読取部54に確実に接続されるようになっている。
【0034】
B.本実施例の記憶素子の取付部材 :
図4は、本実施例の記憶素子210を収容袋102に取り付ける取付部材200の構造を示した説明図である。尚、図4(a)には、取付部材200を表側(記憶素子210が設けられる側)から見た様子が示されており、図4(b)には、取付部材200を横から見た様子が示されており、図4(c)には取付部材200を裏側から見た様子が示されている。
【0035】
図示されているように、本実施例の取付部材200は、プラスチック製の略長方形の2枚の板(上板202、および下板204)が、図面右側の位置に設けられた回転軸206によって回転可能に支持された構造(いわゆる蝶番構造)となっている。また、上板202および下板204は、回転軸206を取り巻くように設けられたねじりバネ208(付勢部材)によって、上板202と下板204とが接近する方向(蝶番構造が閉じる方向)に付勢されている。
【0036】
このような本実施例の取付部材200は、前述したように、収容袋102の一組のシート部102aとその間のマチ部102bとを重ね合わせた状態で、重ね合わせた箇所を上板202と下板204との間に挟むようにして取り付けられる。その関係上、例えばインクパック100を落下させた場合などに、インクが収容袋102の隅のほうに偏ることによって収容袋102の隅部(取付部材200が取り付けられた部分)が膨らもうとした場合には、その力が取付部材200に作用する。
【0037】
図5は、収容袋102の隅部が膨らもうとする力が作用した時の取付部材200の動作を示した説明図である。尚、図5には、取付部材200を収容袋102の隅部に取り付けた状態(図2の状態)で、取り付け部分をマチ部102bの側からみたときの様子が示されている。図5(a)に示されるように、収容袋102の一組のシート部102aとその間のマチ部102bとを重ね合わせた箇所を挟むように取付部材200を取り付けた状態で、インクパック100を落下させる。すると、収容袋102の隅部(取付部材200が取り付けられた部分)が膨らもうとするが、本実施例の取付部材200は上板202と下板204とが回転軸206によって回転可能に支持されているので、収容袋102が膨らもうとする力によって内側から押されて、上板202と下板204とが離れる方向に移動する(図5(b)を参照)。従って、記憶素子210を取り付ける位置の剛性を大きくする目的で収容袋102の隅部を取付部材200で挟むこととしても、収容袋102が膨らむ力によって取付部材200が破損してしまうような事態を回避することが可能である。
【0038】
また、インクパック100の落下から暫くして収容袋102の隅部が膨らもうとする動きが収まると、ねじりバネ208の付勢力によって上板202と下板204とが元の位置(図5(a)の位置)に戻り、これに伴って記憶素子210も元の位置に戻る。従って、記憶素子210の位置が変化したままとなることによって、インクパック100の装着時に、インクジェットプリンター10側の読取部54に記憶素子210がうまく接続されなくなってしまうこともない。
【0039】
C.変形例 :
上述した実施例には、いくつかの変形例が考えられる。以下では、これらの変形例について簡単に説明する。尚、以下に説明する変形例において、上述した実施例と同様の構成部分については、実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
C−1.第1変形例 :
上述した実施例では、取付部材200の上板202と下板204とは、回転軸206によって回転可能に支持されているものと説明した。しかし、上板202および下板204は、収容袋102が膨らむことによって内側から押されたときに、上板202と下板204とが離れる方向に移動可能に構成されていればよい。従って取付部材200は、回転軸206を用いた構造に限らず、例えば次のような構造としてもよい。
【0041】
図6は、第1変形例の取付部材300の構造を示した説明図である。図6(a)に示されているように、第1変形例の取付部材300は、上板302と下板304とが、ゴムなどの弾性材料で形成された連結部材306(伸縮部材)によって連結された構造となっており、上板302と下板304との間に収容袋102の隅部を挟んだ状態で、収容袋102に連結部材306を貫通させることによって収容袋102に取り付けられる。尚、連結部材306が収容袋102を貫通する箇所は、シート部102aとマチ部102bとが溶着されてインクが収容されない箇所となっており、連結部材306を貫通させても、収容袋102内のインクが漏れ出すことが無いようになっている。
【0042】
このような第1変形例の取付部材300では、図6(b)に示されるように、収容袋102の隅部が膨らむことによって内側から押されると、連結部材306が伸びて上板302と下板304とが離れる方向に移動し、また内側から押される力が無くなると、図6(a)に示されるように、連結部材306が元の長さに復帰することによって上板302と下板304とが元の位置に戻る。従って、上述した実施例の取付部材200と同様の有利な効果を得ることができる。また、離れた上板302と下板304とを元の位置に戻すための部品(ねじりバネ208など)を別途、設ける必要がないので、取付部材300の構造を簡単にすることができる。さらに、連結部材306が収容袋102を貫通して設けられているので、取付部材300が収容袋102から外れてしまうことを確実に防止することが可能である。
【0043】
C−2.第2変形例 :
上述した実施例、および第1変形例では、取付部材200,300が収容袋102と接する部分(上板202,302、下板204,304)や、これらを接続する部分(回転軸206、または連結部材306)が、別部材で構成されているものと説明した、しかし以下のようにすれば、これらの部分を一の部材として形成することも可能である。
【0044】
図7は、第2変形例の取付部材400の構造を示した説明図である。図7(a)に示した第2変形例の取付部材400は、薄い金属板を折り返して2重にした形状となっており、記憶素子410が設けられる側の部分(表部402)とその裏側の部分(裏部404)との間に収容袋102の隅部を挟むようにして収容袋102に取り付けられる。この取付部材400では、収容袋102が膨らむことによって内側から押された場合、図7(b)に示されるように、表部402と裏部404が折り返しの部分から撓るように変形可能となっており、これにより取付部材400が破損する事態を回避できるようになっている。
【0045】
このような第2変形例の取付部材400を用いた場合、上板202,302や下板204,304、およびこれらを連結する部材(回転軸206、連結部材306)を別部材として製造し、さらにこれらを組み立てる必要がない。従って、より簡単に取付部材400を製造することができ、ひいては取付部材400を介して記憶素子410が取り付けられるインクパック100を、簡単に製造することが可能となる。
【0046】
C−3.第3変形例 :
上述した実施例、第1変形例、および第2変形例では、取付部材200,300の上板202,302と下板204,304(あるいは、取付部材400の表部402と裏部404)とを離れる方向に移動可能とすることによって、インクパック100の落下時などに取付部材200,300,400が破損することが回避されるものと説明した。しかし、上板202,302と下板204,304(あるいは表部402と裏部404)があまりに大きく離れてしまうと、これによって取付部材200,300,400が破損することが起こり得る。こうした事態を回避するために、以下のようにしてもよい。
【0047】
図8は、第3変形例の取付部材500の構造を示した説明図である。図8に示した取付部材500は、前述した実施例の取付部材200に対して、上板502と下板504(および収容袋102)とを貫通する規制部材509が設けられている。この規制部材509は、両端部の太さが、上板502と下板504とを貫通する穴の径よりも大きく形成されており、従って上板502と下板504とは、規制部材509の長さ以上には離れられないようになっている。従って、上板502と下板504とがあまりに大きく離れてしまうことによって、取付部材500が破損することを回避することが可能である。
【0048】
以上、各種の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上述した実施例、および変形例では、上板と下板とを元の位置に戻すために、ねじりバネや連結部材などの弾性力を用いるものと説明した。しかし、図9に示した取付部材600のように、上板602と下板604の双方に磁石608を設けておき、磁石608の磁力によって離れた上板602と下板604とを引き寄せて、元の位置に戻すようにしてもよい。
【0049】
また、上述した実施例、および変形例では、上板と下板とを元の位置に戻すための部材(ねじりバネや連結部材などを)を設けておくものと説明した。しかし、図10に示されるように、これらの部材は省略しても構わない。このようにしても、収容袋102の隅部が膨らんだ際には上板202と下板204とが離れる方向に移動するので、取付部材200の破損を回避することができる。また、取付部材200の上板202と下板204とが離れた場合には、ユーザーの手によって上板202と下板204とを接近させて元の位置に戻せば、記憶素子210の位置が変化したままとなってしまうこともない。
【符号の説明】
【0050】
10…インクジェットプリンター、 40…カートリッジトレイ、
42…カートリッジホルダー、 45…切欠部、 46…支持台、
47…接続穴、 50…挿入孔、 52…インク取入針、
54…読取部、 100…インクパック、 102…収容袋、
102a…シート部、 102b…マチ部、 104…インク供給口、
106…記憶部、 110…取付部材、 200…取付部材、
202…上板、 204…下板、 206…回転軸、
208…ねじりバネ、 210…記憶素子、 306…連結部材、
400…取付部材、 402…表部、 404…裏部、
509…規制部材、 608…磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体消費装置に着脱可能に装着される液体収容体であって、
一組のシート部と該一組のシート部の間に設けられたマチ部とによって袋状に形成され、内部に液体を収容する収容袋と、
前記収容袋の前記一組のシート部と前記マチ部とを重ね合わせた状態で、該重ね合わせた箇所を挟むように取り付けられる取付部材と、
前記取付部材に設けられて、前記液体収容体が前記液体消費装置に装着されることによって該液体消費装置に接続されるデバイスと
を備え、
前記取付部材は、前記収容袋の一方のシート部に接する側と該収容袋の他方のシート部に接する側とが、互いに離れる方向に移動可能に設けられている液体収容体。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容体であって、
前記取付部材は、前記収容袋の一方のシート部に接する側と該収容袋の他方のシート部に接する側とが、蝶番で回動可能に連結されている液体収容体。
【請求項3】
請求項1に記載の液体収容体であって、
前記取付部材は、前記一方のシート部に接する側と、該収容袋の他方のシート部に接する側と、当該2つの側を連結する部分とが一体に形成されており、該連結する部分が、該一方のシート部に接する側と該他方のシート部に接する側とが離れる方向に変形可能である液体収容体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかに記載の液体収容体であって、
前記取付部材は、前記収容袋の一方のシート部に接する側と該収容袋の他方のシート部に接する側とが互いに離れる方向に変位したときに、当該2つの側が互いに近づく方向に付勢されている液体収容体。
【請求項5】
請求項1に記載の液体収容体であって、
前記取付部材は、前記収容袋の一方のシート部に接する側と該収容袋の他方のシート部に接する側とが別部材として形成されており、
前記2つの別部材は、付勢手段によって互いに近づく方向に付勢されている液体収容体。
【請求項6】
請求項5に記載の液体収容体であって、
前記付勢手段は、前記取付部材の前記2つの別部材を連結し、伸縮可能な伸縮部材である液体収容体。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れかに記載の液体収容体であって、
前記取付部材は、前記一方のシート部に接する側と該収容袋の他方のシート部に接する側とが離れる方向への所定以上の変位が規制されている液体収容体。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5の何れかに記載の液体収容体であって、
前記取付部材は、前記一方のシート部に接する側と該収容袋の他方のシート部に接する側とが、磁力によって互いに近づく方向に付勢されている液体収容体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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