説明

液体収容容器

【課題】商用電源が取得できないところでは、液体噴射装置を使用することができないという使用場所の制約がある。あるいは、充電池や乾電池の容量によって液体噴射装置の使用時間が制約されるという課題がある。
【解決手段】液体収容容器に設けられたイオン化傾向が異なる2つの電極110,120と、電解質溶液としての記録用液体とによって、原理的に起電力が発生する。従って、記録用液体を液体噴射装置に供給する液体収容容器100を電池として用いれば、液体噴射装置の使用場所や使用時間に対する制約を緩和することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容する液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから、電解液中に2つの電極を挿入することによって、2つの電極間に電力が発生する原理が知られている。例えば希硫酸溶液中に亜鉛板と銅板とを挿入することによって起電力が発生するボルタの電池はこの原理を用いたものとして広く知られている。このような起電力の原理を用いたものであれば、電池として利用することができる(例えば、車のバッテリーのような蓄電池や、アルカリ乾電池がそうである)。
【0003】
そこで、ボルタの電池の原理を利用したものとして、例えば特許文献1には、発電装置を備えた水遊び玩具が開示されている。特許文献1に開示された玩具では、蓄電池や乾電池を用いることなく、玩具を構成する部材内に注いだ液体(水、湯水)によってイオン化傾向の異なる電極板間に発生する電圧を利用して玩具を動作させるものである。このように、電解液となる液体と、イオン化傾向の異なる2つの電極とが存在すれば、2つの電極間に電圧を発生させる電池として機能させ、所定の装置や電気素子を動作させることが可能となる。
【0004】
ところで、インクジェットプリンタなどの液体噴射装置では、液体収容容器としてのインクカートリッジから、液体としてのインクを供給している。このインクは、色々な組成物から構成され(例えば特許文献2参照)、このような組成物によって、インクは上述したボルタの電池の電解液(電解質溶液とも呼ぶ)として利用できる液体であることが、本発明者らによって知見された。
【0005】
【特許文献1】特許第3878950号公報
【特許文献2】特開2003−3101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体噴射装置には、液体を噴射するノズルを複数備えた噴射ヘッドが取り付けられたキャリッジの走査駆動や、噴射ヘッドから液体を噴射するための噴射駆動、さらに、噴射された液体が着弾する記録媒体の搬送駆動など、電力を必要とする駆動動作が多く存在する。また、液体収容容器に設けられたICチップに、液体収容容器に収容された液体の種類や液体の残量等に関する情報を記録したり、読み出したりする動作に電力を必要とするなど、種々の処理に関する動作に電力を必要とする場合もある。
【0007】
このような動作に対して電力を供給するために、液体噴射装置では、装置内に組み込まれた電源回路が、例えば商用電源を所定の電圧に変換し、変換した電圧を駆動動作のための電力として供給することが行われている。従って、商用電源が取得できないところでは、液体噴射装置を使用することができないという使用場所の制約がある。あるいは、商用電源に替えて液体噴射装置内に充電池や乾電池といった電池が内蔵されている場合は、充電池や乾電池の容量によって液体噴射装置の使用時間が制約されるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、知見されたように液体を電解質溶液として利用し、液体収容容器を電池としても利用できるようにすることによって、少なくとも上記課題の一部を解決するべくなされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]互いにイオン化傾向が異なる2つの電極が設けられ、当該2つの電極と接触するように液体が収容されることによって、前記2つの電極間に起電力が発生する液体収容容器であって、前記液体は、液体噴射装置から記録媒体に対して噴射される記録用液体であることを特徴とする。
【0010】
こうすれば、記録用液体を液体噴射装置に供給する液体とした液体収容容器は、電池として用いることができるので、液体噴射装置の使用場所や使用時間に対する制約を緩和することが可能となる。
【0011】
[適用例2]上記液体収容容器であって、前記液体噴射装置に前記液体を供給する供給口が具備されていることを特徴とする。
【0012】
こうすれば、供給口から記録用液体を液体噴射装置に供給することができるので、液体収容容器を電池として用いながら、液体噴射装置に記録用液体を容易に供給することが可能となる。
【0013】
[適用例3]上記液体収容容器であって、前記液体噴射装置に対して着脱可能に装着できる装着手段が具備されていることを特徴とする。
【0014】
こうすれば、液体収容容器を液体噴射装置に着脱可能に取り付けられることから、例えば記録用液体が空になった液体収容容器と、記録用液体が充填された液体収容容器とを容易に交換することができる。従って、液体収容容器を電池として継続して用いることができるので、液体噴射装置の使用時間に対する制約をさらに緩和することが可能となる。
【0015】
[適用例4]上記液体収容容器であって、前記液体噴射装置に複数の前記液体収容容器から前記液体を供給するとき、前記2つの電極間に発生する前記起電力が直列に結合するように、前記複数の液体収容容器に設けられた前記2つの電極を結線する結線部を備えることを特徴とする。
【0016】
こうすれば、液体収容容器の各々に発生する起電力を、液体収容容器が複数であれば大きくすることができることから、液体収容容器は、大きな電圧を供給できる電池として用いることができる。この結果、液体噴射装置が必要とする電圧を供給し、液体噴射装置の使用場所や使用時間に対する制約を緩和することができる確率が高くなる。
【0017】
[適用例5]上記液体収容容器であって、前記結線部は、前記直列に結合された起電力が、予め定められた電圧となるように結線することを特徴とする。
【0018】
こうすれば、例えば液体噴射装置が必要とする所定の電圧に応じて予め定められた電圧になるように液体収容容器の各々に発生する起電力を直列結線することから、液体収容容器を液体噴射装置が必要とする電圧を供給する電池として用いることができる。この結果、液体噴射装置が必要とする電圧を確実に供給することができるので、液体噴射装置の使用時間に対する制約をさらに緩和することが可能となる。
【0019】
[適用例6]上記液体収容容器であって、前記複数の液体収容容器に収納された液体は、色相、彩度、明度のうち少なくとも1つが互いに異なる液体であることを特徴とする。
【0020】
液体噴射装置が例えばカラー画像を印刷する印刷装置であった場合、液体噴射装置が必要とする記録用液体として、色相が異なることは勿論、彩度や明度の異なる液体が用いられることがある。そこで、互いに色相、あるいは彩度、あるいは明度の異なる液体を収容した液体収容容器の各々に起電力を発生させることによって、それぞれ電池として用いることができる。従って、複数の液体収容容器を液体噴射装置に電圧を供給するための電池として用いることができる。この結果、液体噴射装置が必要とする電圧を確実に供給することができるので、液体噴射装置の使用場所や使用時間に対する制約を緩和することが可能となる。
【0021】
[適用例7]上記液体収容容器であって、前記液体はインクジェット方式のプリンタから印刷用紙に噴射するインクであることを特徴とする。
【0022】
こうすれば、インクジェット方式のプリンタにおいて、インクを収容した液体収容容器を電池として用いることができる。この結果、インクジェット方式のプリンタが必要とする電圧を供給することができるので、インクジェット方式のプリンタの使用場所や使用時間に対する制約を緩和することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の液体収容容器の一例としてのインクカートリッジを用いた液体噴射装置の一例となるインクジェットプリンタ10について、その概略構造を示したものである。また、図中吹き出し部に示した図は、キャリッジ20(後述する)を図中矢印Sの方向から見た側面図である。
【0024】
このインクジェットプリンタ10は、液体としての各色インクが収納されたインクカートリッジ100(イエロー)、インクカートリッジ200(マゼンタ)、インクカートリッジ300(シアン)、インクカートリッジ400(ブラック)がキャリッジ20の定められた位置に装着されている。キャリッジ20は、キャリッジベルト41に固定され、キャリッジベルト41がキャリッジモータ40によって駆動されるのに伴って、フレーム17に固定されたガイド21に沿って図面左右方向に移動する。このとき、キャリッジ20の図面裏側に設けられた噴射ヘッド30に穿設された各色の複数のノズルから、印刷画像に相応した所定量のインク滴39がアクチュエータ(不図示)によって所定のタイミングで印刷用紙25に噴射される。印刷用紙25は、フレーム17に固定された駆動モータ26により駆動される紙送りローラー(不図示)などによって、図面上下方向に所定量ずつ搬送駆動される。こうして、印刷画像に相応した各色の所定量のインク滴39が、印刷用紙25全体に噴射されることによって画像が形成される。
【0025】
このような一連の動作についての主な制御は、キャリッジ20に取り付けられたサブ基板60と、フレキシブル基板45によってサブ基板60に接続され、フレーム17に取り付けられたメイン基板50とによって行われる。従って、メイン基板50やサブ基板60の制御動作、およびキャリッジ20の駆動や印刷用紙25の搬送駆動といった動作において、それぞれ所定の電圧が上述した基板やモータ等に印加される。
【0026】
さて、各インクカートリッジ100〜400は、図中吹き出し部内に示したように、インクカートリッジに一体で形成され後述する構造を有した着脱手段130によって、キャリッジ20との間で着脱可能な状態で挿入固定されている。また、各インクカートリッジ100〜400にはそれぞれインクの供給口107が設けられ、この供給口107から供給されるインクは、同じく図示しないインク流路に従って、噴射ヘッド30に設けられたそれぞれ対応するノズルまで流れるように構成されている。
【0027】
各インクカートリッジ100〜400には、インクの消費情報などインクカートリッジに関する個別情報を記録したICチップを搭載した回路基板150が取り付けられている。そして、サブ基板60との間で、図示しない結線手段を通して個別情報の授受を行い、個別情報についての記録や読み出し等を行う。例えば、インクカートリッジに収容されたインクの残量に相当するデータをICチップに記録したり、インクカートリッジの製造日やインクの色に関するデータをICチップから読み出したりする。従って、このような個別情報の記録や読み出しに関する処理動作においても、所定の電圧が回路基板150に印加される。
【0028】
このように、種々の動作において印加される電圧のために、インクジェットプリンタ10には、図示しない電源回路が形成され、商用電源から所定の電圧を生成したり、あるいは、充電池や乾電池といった電池電源から所定の電圧を生成したりしている。そこで、本実施例では、インクカートリッジ100〜400を電池として利用することによって、前述した商用電源や充電池あるいは乾電池以外の電源を利用できるようにし、インクジェットプリンタ10の使用場所、あるいは使用時間の制約を緩和する。
【0029】
次に、本実施例におけるインクカートリッジ100〜400について、その具体的な構造を図2および図3を用いて説明する。図2は、インクカートリッジ100を側面方向から見た断面図で、その全体構成を模式的に示した模式図である。図3は、インクカートリッジ100を上面方向から見た断面図で、その全体構成を模式的に示した模式図である。なお、本実施例では、各インクカートリッジ100〜400は総て同じ構造を有しているものとする。
【0030】
まず図2を用いて説明する。インクカートリッジ100は、インクを収容するためのインク収容部105が内部に形成された樹脂製のインク容器体101と、インク容器体101と一体で設けられた着脱手段130と供給口107と、回路基板150と、2つの電極110,120とから構成されている。
【0031】
供給口107は、中央部分に開口部が形成された略パイプ形状を有し、噴射ヘッド30に対してインクを供給するインクの供給口として機能する。すなわち、キャリッジ20にインクカートリッジ100が装着されると、この開口部に供給針70が挿入される。そして、インク収容部105に収容されたインクが供給針70に流出して、噴射ヘッド30に対してインクが供給されるのである。なお、供給口107の開口部には、インクカートリッジ100がキャリッジ20に装着されていないときはインクが流出しない封止状態となり、インクカートリッジ100がキャリッジ20に装着されて供給針70が挿入されているときは開口状態となる弁機構が、必要に応じて構成されている。
【0032】
着脱手段130は、図示するような略フック形状を呈し、インクカートリッジ100を図面下方向への押し下げると二点鎖線で示した状態(符号130a)に撓むように形成されている。従って、インクカートリッジ100はキャリッジ20へ図面上方から押し込むことによって装着される。装着後は、キャリッジ20の溝部20bと突起部130bが係合することによって図面上方向に抜けないように固定される。もとより、インクカートリッジ100をキャリッジ20から取り外す場合は、着脱手段130を二点鎖線で示した状態(符号130a)に撓ませた後、図面上方向に引き上げればよい。こうして、インクカートリッジ100は、キャリッジ20つまりインクジェットプリンタ10に対して着脱が可能なように構成されている。なお、本実施例における着脱手段は一例であって、着脱が可能な構造であれば、他の構造(例えばネジ止め)であっても勿論よい。
【0033】
さて、このように構成されたインクカートリッジ100を電池とするべく、インク収容部105に収容されるインクと接触するように、2つの電極110と電極120とが、インク容器体101の底部(図面下側)にその端部を固定しつつ、インク収容部105内に挿入されている。
【0034】
本実施例では、電極110は銅板で、電極120は亜鉛板で形成されている。ここでインク収容部105に収容されたインクは、前述した特許文献2に開示されている種々の組成によって酸性やアルカリ性の溶液とすることができることから、電解質溶液として機能する。そして、この電解質溶液となるインクと接触する電極110と電極120とのイオン化傾向の違いによって、所謂ボルタの電池が形成される。従って、2つの電極110と電極120との間には周知のように起電力が発生する。そして、発生した起電力は、結線部材111,121によって、回路基板150に設けられた所定の端子(不図示)に導かれるように構成されている。
【0035】
回路基板150に導かれた起電力は、図示しない結線手段を通してサブ基板60に送られた後、さらにメイン基板50等を介して液体噴射装置内に組み込まれた電源回路160に供給される。そして、電源回路160は、供給された起電力を必要に応じて所定の電圧に変換して各装置に電力として供給する。
【0036】
そして、図3に示したように、電極110と電極120との間に発生した起電力は、電極110をプラス極、電極120をマイナス極とする電圧として、結線部材111,121、さらに回路基板150を介して、電源回路160に供給される。周知のように、電極110と電極120は、イオン化傾向の大きさによって、プラス極かマイナス極かが決定される。本実施例では2つの電極として銅板と亜鉛板とを用いたことから、銅板に対してイオン化傾向が大きい亜鉛板で形成された電極120がマイナス極になる。
【0037】
なお、本実施例では、電極110と電極120とを、それぞれ銅板と亜鉛板としたが、これ以外にマグネシウム板やアルミニウム板などを用いても勿論よい。要するに、インクに溶融した際、イオン化傾向が互いに異なる導電性の材料であれば、どのような材料を用いても差し支えない。なお、インクの組成に依存して発生する起電力が大きくなる材料が判明している場合は、それらの材料を2つの電極として用いることが好ましい。
【0038】
以上、図2、図3に示したように、インクカートリッジ100は、インクジェットプリンタ10へのインク供給を行うとともに、電池として機能することもできるものである。従って、インクジェットプリンタ10に対して、インクジェットプリンタ10が行う処理動作や駆動動作などの電源として利用できることになる。この結果、商用電源が無いところでの使用を可能としたり、充電池や乾電池の代用電池として使用することを可能としたりできるので、使用場所の制約や、使用時間の制約を緩和することができるのである。
【0039】
以上、本発明について一実施例により説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下、変形例を挙げて説明する。
【0040】
(第1変形例)
上記実施例では、インクカートリッジ100〜400が、それぞれ一つずつ電池として機能するように構成されたものとしている。従って、インクジェットプリンタ10に供給される電圧は、それぞれ一つのインクカートリッジにおいて生ずる起電力になる。ちなみに、ボルタの電池では、電極の材料と電解質溶液の組み合わせによって、起電力として通常1V(ボルト)前後の大きさの電圧が発生することが一般的に知られている。
【0041】
従って、インクカートリッジを電池とした場合でも、原理的にボルタの電池並みの起電力が発生すると想定されることから、一つのインクカートリッジでは大きな電圧(例えば3Vとか5V)を得ることは困難である。従って、一つのインクカートリッジの起電力が、インクジェットプリンタ10が行う処理や駆動動作などの電源として利用できない電圧である場合は、別途昇圧回路が必要になるなどといった課題が生じてしまう。
【0042】
そこで、変形例として、それぞれのインクカートリッジが生ずる起電力を直列に結合するように、各インクカートリッジ100〜400における2つの電極を結線することとしてもよい。こうすれば、インクジェットプリンタ10が行う処理動作や駆動動作などに必要な電圧が得られることによって昇圧回路を用いることなく、インクカートリッジが生ずる起電力をそのまま利用することが可能となる。本変形例を、図4を用いて説明する。
【0043】
図4は、本変形例のインクカートリッジ100a(イエロー),200a(マゼンタ),300a(シアン),400a(ブラック)が、キャリッジ20に装着された状態を示した模式図である。図示するように、インクカートリッジ100aは、2つの電極間の電圧を端子Aと端子Bとによって電源回路160に供給することを示している。そして、インクカートリッジ100aの図面左側の側面には、回路基板151において結線部材171によりプラス極と結線されている電極部材181が具備されている。
【0044】
インクカートリッジ100aと隣接するインクカートリッジ200aは、2つの電極間の電圧を端子Cと端子Dとによって電源回路160に供給することを示している。そして、インクカートリッジ200aの図面右側の側面には、回路基板152において結線部材172によりマイナス極と結線されている電極部材182が具備されている。そして、電極部材182は、インクカートリッジ100aが具備する電極部材181と接触するように構成されている。この結果、インクカートリッジ100aのプラス極とインクカートリッジ200aのマイナス極が電気的に導通する。
【0045】
さらに、インクカートリッジ200aの図面左側の側面には、回路基板152において結線部材173によりプラス極と結線されている電極部材183が具備されている。
【0046】
インクカートリッジ300aは、2つの電極間の電圧を端子Eと端子Fとによって電源回路160に供給することを示している。そして、インクカートリッジ300aの図面右側の側面には、回路基板153において結線部材174によりマイナス極と結線されている電極部材184が具備されている。そして、電極部材184は、インクカートリッジ200aが具備する電極部材183と接触するように構成されている。この結果、インクカートリッジ200aのプラス極とインクカートリッジ300aのマイナス極が電気的に導通する。
【0047】
さらに、インクカートリッジ300aの図面左側の側面には、回路基板153においてプラス極と結線部材175により結線されている電極部材185が具備されている。
【0048】
インクカートリッジ400aは、2つの電極間の電圧を端子Gと端子Hとによって電源回路160に供給することを示している。そして、インクカートリッジ400aの図面右側の側面には、回路基板154において結線部材176によりマイナス極と結線されている電極部材186が具備されている。そして、電極部材186は、インクカートリッジ300aが具備する電極部材185と接触するように構成されている。この結果、インクカートリッジ300aのプラス極とインクカートリッジ400aのマイナス極が電気的に導通する。
【0049】
なお、電極部材181〜186は、本変形例では導電性を有する弾性部材であり、インクカートリッジの側面に接着等によって固定されているものとする。もとより、導電性を有する金属板であっても勿論よい。電極部材181〜186は、インクカートリッジがキャリッジ20に装着されたとき、互いに接触するように構成され、接触によって互いが電気的に導通するものであれば、どのような形状および材料であっても、またどのような位置に設けられていても差し支えない。
【0050】
以上の説明から明らかなように、インクカートリッジ100a〜400aが電源回路160に供給する電圧は、端子Aと端子Hとの間において、全てのインクカートリッジの起電力を直列結合した電圧になる。例えば1つのインクカートリッジの起電力が1Vであったとすると、端子A,B間、端子C,D間、端子E,F間、端子G,H間の電圧はそれぞれ1Vであるが、端子Aと端子Hとの間の電圧は4Vということになる。この結果、電源回路160には、1Vの他に4Vの電圧を供給することができるので、この4Vの電圧が、前述したインクジェットプリンタ10が行う処理動作や駆動動作に必要となる電圧を満たす電圧であれば、この電圧4Vを昇圧することなく、そのまま利用することが可能となる。
【0051】
また、本変形例によれば、各インクカートリッジの起電力が同じく1Vであったとすると、例えば端子Aと端子Bとの間の電圧は2Vであり、端子Aと端子Fとの間の電圧は3Vとなる。同様に、端子Cと端子Fとの間、端子Eと端子Hとの間も2Vであり、端子Cと端子Hとの間も3Vである。このように、端子の選択によって端子間の電圧が変わることから、電源回路160は、インクジェットプリンタ10が行う処理動作や駆動動作に必要となる電圧を満たす電圧になるように端子を選択すれば、さらに適切に必要となる電圧を得ることも可能となる。
【0052】
ところで、インクジェットプリンタ10において、必要となる動作電圧が特定される場合がある。このような場合、この特定される電圧に応じて予め定められた電圧を、このインクジェットプリンタ10に用いるインクカートリッジから供給することが好ましいことになる。例えば、必要となる動作電圧を生成するために電源回路160に2Vの電圧が必要であったとすると、各インクカートリッジの起電力が1Vであった場合は2つのインクカートリッジの起電力を直列結合して電源回路160に供給すればよいことになる。このような場合におけるインクカートリッジの結線方法の一例を図5に示した。
【0053】
図示するように、インクカートリッジ100aは、2つの電極のうちマイナス極の出力を端子Aによって電源回路160に供給する。そして、インクカートリッジ100aの図面左側の側面に、回路基板151において結線部材171によりプラス極と結線された電極部材181を具備する。一方、インクカートリッジ200aは、2つの電極間の電圧のうちプラス極の出力を端子Dによって電源回路160に供給する。そして、インクカートリッジ200aの図面右側の側面に、回路基板152において結線部材172によりマイナス極と結線された電極部材182を具備する。そして、電極部材182は、インクカートリッジ100aが具備する電極部材181と接触するように構成されている。この結果、インクカートリッジ100aのプラス極とインクカートリッジ200aのマイナス極が電気的に導通することから、端子Aと端子Dとの間に生ずる電圧は2Vとなる。
【0054】
同様に、インクカートリッジ300aは、2つの電極のうちマイナス極の出力を端子Eによって電源回路160に供給する。そして、インクカートリッジ300aの図面左側の側面に、回路基板153において結線部材175によりプラス極と結線された電極部材185を具備する。一方、インクカートリッジ400aは、2つの電極間の電圧のうちプラス極の出力を端子Hによって電源回路160に供給する。そして、インクカートリッジ400aの図面右側の側面に、回路基板154において結線部材176によりマイナス極と結線された電極部材186を具備する。そして、電極部材186は、インクカートリッジ300aが具備する電極部材185と接触するように構成されている。この結果、インクカートリッジ300aのプラス極とインクカートリッジ400aのマイナス極が電気的に導通することから、端子Eと端子Hとの間に生ずる電圧は2Vとなる。
【0055】
図5に示したように結線すれば、インクカートリッジから電源回路160に供給される電圧を2Vとすることができるので、インクジェットプリンタ10が行う処理動作や駆動動作に必要となる電圧を満たす電圧を供給することができる。
【0056】
なお、本変形例では、1つのインクカートリッジに生ずる起電力を1Vと仮定して2つのインクカートリッジの起電力を直列結合することとして説明したが、もとより各インクカートリッジに発生する起電力の大きさと、インクジェットプリンタ10が行う処理動作や駆動動作に必要となる電圧との関係から、直列結合すべき起電力の種類と数、つまりインクカートリッジの種類と数を決定すればよいことは言うまでもない。
【0057】
(第2変形例)
上記実施例および変形例では、2つの電極110と電極120とを、インク容器体101の底部(図面下側)にその端部を固定しつつ、インク収容部105内に挿入することとしたが、電極の固定方法はこれに限るものでないことは勿論である。変形例の一例を図6(a)と図6(b)を用いて説明する。
【0058】
図6(a)は、本変形例の一例となるインクカートリッジ100bを、図2と同様に、側面から見た状態において模式的に示した断面図である。図示するように、インクカートリッジ100bには、インク収容部105に収容されるインクと接触するように、2つの電極110と電極120とが、インク容器体101の天部(図面上側)にその端部を固定しつつ、インク収容部105内に挿入されている。2つの電極間に発生した起電力は、インクカートリッジ100bの上面から取り出され、結線部材111,121によって回路基板150に導かれるように構成されている。
【0059】
2つの電極110,120をこのように固定すれば、インクが固定部分に触れることがないので、固定部分からインクが漏洩することはない。従って、固定部分における機密性を厳しく管理する必要がなく、インクカートリッジの製造が容易となる。
【0060】
また、図6(b)は、本変形例の他の例となるインクカートリッジ100cを、図3と同様に、上面から見た状態において模式的に示した断面図である。図示するように、インクカートリッジ100cでは、インク収容部105内に挿入された電極110と電極120のそれぞれの端部110eと端部120eが、インクカートリッジの側面に具備された回路基板150に直接接続されて固定されている。
【0061】
2つの電極をこのように固定すれば、この2つの電極間に発生した起電力を、結線部材を用いることなく、直接回路基板150に導くことができる。従って、結線部材を用いることなく結線できるので、インクカートリッジの製造が容易となる。また、結線部材において通常生じる電圧降下も発生しないので、インクカートリッジの起電力が低下することも抑制される。
【0062】
(その他の変形例)
上記実施例および変形例では、インクカートリッジをインクジェットプリンタ10に対して着脱可能に装着する4つの色の異なるインクカートリッジであるものとして説明したが、特にこれに限るものでないことは勿論である。例えば、装着できるインクカートリッジの数は、6個などのように更に多くてもよいし、2個などのように更に少なくてもよい。また、色(色相)以外に、彩度や明度の異なるインクが収容されたインクカートリッジであっても差し支えないし、全て同じ色のインクカートリッジであっても差し支えない。収容されるインクが、電解質溶液として機能するものであれば、インクは何でも良い。
【0063】
上記実施例および変形例では、図2に示したように、インクカートリッジ100の起電力を、回路基板150と結線されている結線手段(不図示)を通してインクジェットプリンタ10の電源回路160に供給することとしたが、回路基板150で行われる処理動作のために動作電圧として供給することとしてもよい。
【0064】
前述したように、各インクカートリッジ100〜400に取り付けられた回路基板150には、インクの消費情報などインクカートリッジに関する個別情報を記録したICチップが取り付けられている。そこで、ICチップへの記録やICチップからの読み出し処理動作のために、インクカートリッジを電池として機能させるのである。こうすれば、例えば、サブ基板60との間で無線通信手段によって個別情報の授受が行われる場合、サブ基板60から図示しない結線手段を介して電源を取得することなく、データの授受を行うことが可能となる。
【0065】
上記実施例および変形例では、電池として使用することができるインクカートリッジを、インクジェットプリンタ10に着脱可能に装着するインクカートリッジであるものとして説明したが、特にこれに限るものでないことは勿論である。例えば、インク収容容器から供給パイプによってインクを供給する方式であるインクタンクであることとしてもよい。これを図7を用いて説明する。
【0066】
図7は、各色のインクが収容されたインクタンク100T,200T,300T,400Tから、キャリッジ20に設けられたそれぞれの色に対応するサブタンク100s,200s,300s,400sに、供給パイプ(図では供給パイプ100Pのみ例示して他は省略している)からインクを供給するように構成されたインクジェットプリンタ10aである。
【0067】
一例としてインクタンク100Tについて図示したように、インクタンク内には互いにイオン化傾向の異なる2つの電極110T,120Tが挿入されている。そして2つの電極110T,120Tが、収容されたインクと接触することによって起電力が発生し、一方の電極がプラス極に、他方がマイナス極となって2つの電極間において電圧が出力される。従って、出力される電圧を、インクジェットプリンタ10aの動作に必要な電源として利用することができる。
【0068】
ところで、インクタンク100T〜400Tは、キャリッジ20に装着するものでないことから、通常収容するインクの容量は、インクカートリッジ100〜400に比べて相当大きな容量となる。従って、発生する起電力の容量も大きくなると考えてよいことから、インクカートリッジに比べて大きな電力量を供給することができるという効果を奏する。従って、電源回路160に安定して電圧を供給することが期待できる。
【0069】
また、上記実施例および変形例において、2つの電極110,120の電極形状について特に言及しなかったが、電極形状は、発生する起電力が最も大きくなる形状とすることが好ましい。もとより、電極形状を、実際に実験等によって求めたものとすればよい。
【0070】
また、上記実施例および変形例では、液体として、印刷用紙に画像を形成するためのインクを例示して説明したが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、ガラス基板や樹脂基板に画像を形成し、液晶パネルや有機ELパネルの構成部材を形成するための記録液や機能液であってもよい。
【0071】
また、上記実施例および変形例では、液体噴射装置をインクジェットプリンタとして説明したが、これに限るものでないことは勿論である。前述したインクを含め、記録液や機能液を噴射できる装置であれば何でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の液体収容容器の一例としてのインクカートリッジを用いた液体噴射装置の一例となるインクジェットプリンタについての概略構造図。
【図2】インクカートリッジを側面から見た断面図で、その全体構成を示す模式図。
【図3】インクカートリッジを上面から見た断面図で、その全体構成を示す模式図。
【図4】第1変形例のインクカートリッジが、キャリッジに装着された状態を示す模式図。
【図5】第1変形例のインクカートリッジで、結線方法の異なる状態を示す模式図。
【図6】第2変形例で、(a)(b)とも、電極の異なる固定方法を示す模式図。
【図7】インクタンクからキャリッジに設けられたサブタンクにインクを供給するように構成されたインクジェットプリンタを示す構成図。
【符号の説明】
【0073】
10,10a…インクジェットプリンタ、20…キャリッジ、20b…溝部、26…駆動モータ、30…噴射ヘッド、40…キャリッジモータ、45…フレキシブル基板、50…メイン基板、60…サブ基板、100,200,300,400…インクカートリッジ、100P…供給パイプ、100s,200s,300s,400s…サブタンク、100T,200T,300T,400T…インクタンク、100a,100b,100c…インクカートリッジ、101…インク容器体、105…インク収容部、107…供給口、110,110T…電極、110e…端部、111,121…結線部材、120…電極、130,130a…着脱手段、130b…突起部、150,151,152,153,154…回路基板、160…電源回路、171〜176…結線部材、181〜186…電極部材、200a,300a,400a…インクカートリッジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにイオン化傾向が異なる2つの電極が設けられ、当該2つの電極と接触するように液体が収容されることによって、前記2つの電極間に起電力が発生する液体収容容器であって、
前記液体は、液体噴射装置から記録媒体に対して噴射される記録用液体であることを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容容器であって、
前記液体噴射装置に前記液体を供給する供給口が具備されていることを特徴とする液体収容容器。
【請求項3】
請求項2に記載の液体収容容器であって、
前記液体噴射装置に対して着脱可能に装着できる装着手段が具備されていることを特徴とする液体収容容器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液体収容容器であって、
前記液体噴射装置に複数の前記液体収容容器から前記液体を供給するとき、前記2つの電極間に発生する起電力が直列に結合するように、前記複数の液体収容容器に設けられた前記2つの電極を結線する結線部を備えることを特徴とする液体収容容器。
【請求項5】
請求項4に記載の液体収容容器であって、
前記結線部は、前記直列に結合された起電力が、予め定められた電圧となるように結線することを特徴とする液体収容容器。
【請求項6】
請求項4または5に記載の液体収容容器であって、
前記複数の液体収容容器に収納された液体は、色相、彩度、明度のうち少なくとも1つが互いに異なる液体であることを特徴とする液体収容容器。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液体収容容器であって、
前記液体はインクジェット方式のプリンタから印刷用紙に噴射するインクであることを特徴とする液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−6626(P2009−6626A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171642(P2007−171642)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】