液体収納容器の製造方法および製造装置

【課題】液体収納容器内に存在する空気の量を適確に管理可能な液体収納容器の製造方法および製造装置を提供すること。
【解決手段】圧縮部材503Bによって、仕切り壁150の表面に接する負圧発生部材503A,503Bの外面を押圧し、圧縮部材503Aによって、仕切り壁150と対向する第1凹部100Aの内面に接する負圧発生部材503A,503Bの外面を押圧する。挿入爪504による負圧発生部材503A,503Bの外面の押圧を維持したまま、圧縮部材503Bによる負圧発生部材503A,503Bの外面の押圧を解除しつつ、負圧発生部材503A,503Bを第1凹部100A内に収納する。負圧発生部材503A,503Bを第1凹部100A内に収納してから、挿入爪504による負圧発生部材503A,503Bの外面の押圧を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収納するインクタンク等、種々の液体を収納する液体収納容器の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インク等の液体を吐出可能な液体吐出ヘッドを用いる液体吐出装置には、液体を液体吐出ヘッドに供給するための供給系の上流側に、液体を収納する液体収納容器が接続される。例えば、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッド(液体吐出ヘッド)を用いるインクジェット記録装置(液体吐出装置)においては、インクの供給系の上流側に、インクを収容するインクタンク(液体収納容器)が着脱自在に接続される。
【0003】
このようなインクジェット記録装置におけるインクタンクとしては、図5および図6に示されるように、負圧発生部材1(1A,1B)としてのインク吸収体を収容する第1室R1と、インクを直接収容する第2室R2と、が形成されたものがある。第1および第2室R1,R2は、仕切り壁2に形成された連通部2Aによって互いに連通されている。図5はインク収納前の断面図、図6はインク収納時の断面図である。
【0004】
このようなインクタンク内にインクを充填する方法として、特許文献1に記載の充填方法が知られている。かかる充填方法においては、まず、インク供給口3と大気連通口4を密閉してから、ポンプ5によって、インク充填穴6およびバルブ7を通してインクタンク内の空気を矢印A方向に排出して、第1および第2室R1,R2内を減圧する。その後、バルブ7を閉じてから、ポンプ8によって、インク溜9内のインク20をバルブ10およびインク充填穴6を通して矢印B方向から第2室R2内に充填する。その際、インク20が連通部2Aを通して第1室R1内の負圧発生部材1に浸透する領域は、その負圧発生部材1の表面の一部に限られる。その後、バルブ10を閉じてからポンプ8によって、インク溜9内のインク20をバルブ12およびインク供給口3を通して矢印C方向から第1室R1内に充填する。第1室R1内のインク20は、負圧発生部材1の毛管力によって吸収保持される。その後、インク供給口3を密閉してから、大気連通口4を開放して、第1および第2室R1,R2内の減圧状態を完全に解除(大気開放)する。その後ボール11によってインク充填穴6を密閉する。
【0005】
このようにインクが充填されたインクタンクは、そのインク供給口3が不図示のインクジェット記録ヘッドに接続され、負圧発生部材1によって吸収保持されている第1室R1内のインク20は、負圧が付与された状態で記録ヘッドに供給される。このようなインク20の供給に伴って、第2室R2内のインク20が連通部2Aを通して第1室R1内に導入され、その分の空気が大気連通口4から大気導入溝13および連通部2Aを通して第2室R2内に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−48490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インクタンクにインクを充填したときに、負圧発生部材1における仕切り壁2の近傍位置に、インク20が空気と混ざり合った状態で浸透する部分Pが生じることがある。このような現象は、前述した大気開放時、つまり大気連通口4を開放してインクタンク内の減圧状態を完全に解除したときに、第1室R1内のインク20が大気圧により図6中の下方に押し付けられることにより発生する。すなわち、第1室R1内のインク20は、大気圧により、主として仕切り壁2の近傍位置から連通部2Aを通して第2室R2内に流れ込み、その分のインク20を補うために、負圧発生部材1の全体から仕切り壁2の近傍位置にインクが集まってくる。その際、負圧発生部材1における仕切り壁2の近傍部分の密度が適正でない場合には、その部分の流抵抗が小さくなるため、その部分と連通部2Aを通って第2室R2内に流れ込むインク20の流入速度が高くなる。大気連通口170から第1室R1内に入った空気は、このようなインクの高速流入に引き込まれるように、仕切り壁2の近傍部分に流れ込む。この結果、負圧発生部材1における仕切り壁2の近傍部分に、インク20と空気が混在する部分Pが生じることになる。
【0008】
このように、負圧発生部材1の部分Pにインク20と空気が混在するインクタンクは、インク充填直後や出荷後の流通過程などにおいて衝撃が加わった場合、その部分Pをインクで満たすように、連通部2Aを通して気液交換が起こりやすくなる。すなわち、部分Pに存在する空気と、第2室R2内のインク20と、が連通部2Aを通して気液交換されやすくなる。このような気液交換が生じた場合には、第2室R2内に存在する気泡30の体積が増加する。
【0009】
第2室R2内に存在する気泡30は、温度上昇や気圧低下により膨張するため、その膨張した容積分だけ、第2室R2内のインク20が第1室R1内に流れ込んで負圧発生部材1に吸収される。しかし、第1室R1内に流れ込むインク20の量が負圧発生部材1によるインクの吸収量を越えた場合、インク供給口3を封止していた不図示のシールを剥がすインクタンクの使用開始時に、インク供給口3からインクが漏れ出すおそれがある。したがって、インクタンクの出荷時に、第2室R2内に存在する気泡30の体積を適確に管理する必要がある。しかし、インクと空気が混在する部分Pからの空気が加わって気泡30の量が増大した場合には、その気泡30の量が適確な管理範囲を越えるおそれがある。
【0010】
インクと空気が混在する部分Pの発生を防止するための対応策としては、インクの充填時における大気開放の作業時間を長くすることが考えられる。すなわち、インクタンク内の減圧状態を徐々に解除して大気圧によるインクの押し付け力を弱くし、第1室R1から第2室R2へのインク20の流入速度を遅くして、負圧発生部材1の全体から第2室R2内にインク20を送り込むことが考えられる。しかし、そのためには、大気解放の作業時間を数十秒以上に設定することが必要となり、インクの充填作業の効率、ひいてはインクタンクの生産性の低下を招くことになる。
【0011】
本発明の目的は、液体収納容器内に存在する空気の量を適確に管理可能な液体収納容器の製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の液体収納容器の製造方法は、連通部が形成された仕切り壁によって第2凹部と仕切られた第1凹部内に、負圧発生部材を収納する液体収納容器の製造方法であって、前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納する前に、前記第1凹部内に位置する前記仕切り壁の表面に接することになる前記負圧発生部材の第1の外面と、前記仕切り壁と対向する前記第1凹部の内面に接することになる前記負圧発生部材の第2の外面と、を含む前記負圧発生部材の複数の外面を圧縮部材によって押圧して、前記負圧発生部材を前記第1凹部の開口部の大きさよりも小さく圧縮する圧縮工程と、前記圧縮部材による前記第2の外面の押圧を維持したまま、前記圧縮部材による前記第1の外面の押圧を解除しつつ、前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納してから、前記圧縮部材による前記第2の外面の押圧を解除する収納工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の液体収納容器の製造装置は、連通部が形成された仕切り壁によって第2凹部と仕切られた第1凹部内に、負圧発生部材を収納する液体収納容器の製造装置であって、前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納する前に、前記第1凹部内に位置する前記仕切り壁の表面に接することになる前記負圧発生部材の第1の外面と、前記仕切り壁と対向する前記第1凹部の内面に接することになる前記負圧発生部材の第2の外面と、を含む前記負圧発生部材の複数の外面を圧縮部材によって押圧して、前記負圧発生部材を前記第1凹部の開口部の大きさよりも小さく圧縮する圧縮手段と、前記圧縮部材による前記第2の外面の押圧を維持したまま、前記圧縮部材による前記第1の外面の押圧を解除しつつ、前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納してから、前記圧縮部材による前記第2の外面の押圧を解除する収納手段と、を備え、前記圧縮部材は、前記第1の外面を押圧する第1の圧縮部材と、前記第2の外面を押圧する第2の圧縮部材と、を含み、前記圧縮手段は、記第1凹部の前記開口部と対向する対向位置において前記負圧発生部材の圧縮状態を維持し、前記収納手段は、前記対向位置の前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納するために、前記第2の圧縮部材から延出する挿入爪を前記第1凹部の前記内面に沿わせてから、前記負圧発生部材を前記対向位置から前記第1凹部内に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、負圧発生部材を第1凹部内に収納する際に、その負圧発生部材を仕切り壁に押し付けて密着させることにより、仕切り壁の近傍における負圧発生部材の部分の密度を高めて、その部分の流抵抗を大きくすることができる。その結果、液体の充填作業時に、仕切り壁の近傍における負圧発生部材の部分の液体の流入速度を遅くし、その流入速度が速い場合に生じやすい空気の引き込みの発生を抑えて、液体収納容器内に存在する空気の量を適確に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によって製造可能な液体収納容器の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における製造装置の要部の斜視図である。
【図3】(a)から(f)は、図1の製造装置による負圧発生部材の挿入手順を説明するための断面図である。
【図4】図3における負圧発生部材の挿入行程の中途段階を説明するための断面図である。
【図5】従来の液体収納容器の一例を説明するための断面図である。
【図6】図5の液体収納容器に対するインクの充填方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明によって製造可能な液体収納容器として、インクを収容するインクタンクの構成例を説明するための断面図である。
【0017】
タンク本体(収納容器本体)100には、熱可塑性を有するオレフィン系樹脂からなる繊維吸収体のインク吸収体を負圧発生部材132として収容するための第1凹部100Aと、イン第2凹部100Bと、が形成されている。これらの凹部100A,100Bは、連通部140が形成された仕切り壁150によって仕切られている。タンク本体100には、これらの凹部100A,100Bおよび仕切り壁150は一体に成形されている。タンク本体100の図1中上側の開口部には、溶着や接着剤などを含む不図示の固定手段によってカバー部材180が固定されている。
【0018】
凹部100A,100Bはカバー部材180によって共通に覆われ、凹部100Aは、負圧発生部材132を収容する第1室R11を形成し、凹部100Bは、インクを直接収容する第2室R12を形成する。第1室R11に対応するカバー部材180の部分には、インクタンク内のインク消費に伴って大気を導入するための大気連通口(大気連通部)170が形成されている。また、第2室R12に対応するカバー部材180の部分には、インクを充填するためのインク充填穴(液体充填穴)160が形成されている。このインク充填穴160は、インクタンクに対するインクの充填後、ボール165によって密閉される。タンク本体100には、第1室R11内のインクを不図示のインクジェット記録ヘッド(液体吐出ヘッド)に供給するための供給口114が形成されている。また、第1室R11内に位置する仕切り壁150の表面には、連通部140に連通する大気導入溝150Aが形成されている。本例においては、負圧発生部材132として、毛管力が異なる第1および第2の負圧発生部材132A,132Bが備わっており、第1の負圧発生部材132Aの毛管力Paは、第2の負圧発生部材132Bの毛管力Pbよりも大きい(Pa>Pb)。第1の負圧発生部材132Aはインク供給口114側(図1中の下側)に位置し、第2の負圧発生部材132Bは大気連通口170側(図1中の上側)に位置する。
【0019】
図2は、このようなインクタンクを製造する製造装置において、負圧発生部材132を第1凹部100A内に挿入するための挿入装置部の説明図である。この挿入装置部に対しては、負圧発生部材132が未挿入であって、カバー部材180の固定前のタンク本体100がセットされる。
【0020】
501,502A,502B,502C,502Dはシリンダであり、それぞれにおける柱状のロッド部材は、それらの延在方向(矢印E,A,B,C,D方向)に沿って往復移動可能である。これらのシリンダは、上方に開口部が位置する姿勢のタンク本体100に対して、上下動可能な不図示の可動体に備えられている。これらのシリンダと、上方に開口部が位置する姿勢のタンク本体100と、は相対的に上下動可能であればよく、例えば、タンク本体100を上下動可能な可動体にセットしてもよい。503A,503B,503C,503Dは、シリンダ502A,502B,502C,502Dのロッド部材に取り付けられる圧縮部材である。図4に示すように、右側の圧縮部材(第1の圧縮部材)503Bには、下方に延出する挿入爪505が設けられ、左側の圧縮部材(第2の圧縮部材)503Aには、下方に延出する挿入爪504が設けられている。本例において、4つの圧縮部材503A,503B,503C,503Dは、左右前後(矢印E,A,B,C,D方向)から負圧発生部材132の外周面に接する圧縮時に、四角枠状の挿入管を形成する。この挿入管は、後述するように、圧縮状態の負圧発生部材132を第1室R11内に導く。この挿入管内には、第1および第2の負圧発生部材132A,132Bが収納可能であり、これらは、挿入管の内径とほぼ等しい外径の押し棒506によって、挿入管の内部から下方に押し出される。押し棒506は、シリンダ501のロッド部材に取り付けられており、後述するように、挿入管を矢印E方向に沿って上下方向に摺動する。
【0021】
図3は、このような挿入装置部による負圧発生部材132の挿入作業を説明するための要部の断面図である。
【0022】
まず、図3(a)に示すように、インク供給口114が形成された第1凹部100Aと、第2凹部100Bと、連通部140および大気導入溝150Aが形成された仕切り壁150と、が一体に成形されたタンク本体100を用意する。このタンク本体100を挿入装置部にセットする。負圧発生部材132(132A,132B)の形状に応じた複数の圧縮部材によって、負圧発生部材132の外面を囲む。本例の場合は、負圧発生部材132は直方体形状であり、4つの圧縮部材503A,503B,503C,503Dによって、負圧発生部材132Aの左右前後の4面を囲む。第1および第2の負圧発生部材は第1凹部100Aの内寸よりも大きく、4つの圧縮部材によって四角枠状に形成される挿入管内に圧縮される。負圧発生部材132A,132Bの材質としては、熱可塑性を有するオレフィン系樹脂からなる繊維を用いたものを使用した。挿入爪504は圧縮部材503Aから下方に比較的長く延出し、挿入爪505は圧縮部材503Bから下方に比較的短く延出する。本例の場合、挿入爪504,505の厚みW1,W2は同じである。挿入爪504,504は、圧縮部材503A,503Bの一部として形成してもよい。
【0023】
挿入管内の負圧発生部材132(132A,132B)の上面に押し棒506を当てて、その負圧発生部材132の下面を第1凹部100Aの開口部に向ける。そして、圧縮部材503A,503B,503C,503Dによって、負圧発生部材132を第1凹部100Aの開口部よりも小さく潰す。このように、第1凹部100Aの開口部と対向する対向位置において、負圧発生部材132の圧縮状態を維持する。
【0024】
次に、図3(b)に示すように、挿入管を下動させて、左右の挿入爪504,505を第1凹部100Aの開口部に挿入する。右側の挿入爪505は仕切り壁150の内面に沿って挿入され、左側の挿入爪504は、仕切り壁150と対向する第1凹部100A内の左側の内面に沿って挿入される。挿入爪504は、図4のように第1凹部100Aの底面の近傍に位置するまで、あるいは、第1凹部100Aの底面に達するまで挿入される。挿入爪505は、図4のように第1凹部100Aの開口部近傍までしか挿入されない。
【0025】
次に、図3(c)に示すように、シリンダ501によって押し棒506を矢印E方向に移動させ、挿入管内の負圧発生部材132(132A,132B)を第1凹部100A内に押し出す。このような負圧発生部材132の挿入動作中においては、図4に示すように、挿入爪505から下方に離れた第1の負圧発生部材132Aの部分は、その挿入爪505から受ける圧縮が解放され、仕切り壁150に向かう矢印50方向に復元力により膨らむ。つまり、第1の負圧発生部材132Aは、その図3中右側の外面(第1の外面)に対する挿入爪505の押圧が解除されつつ、第1凹部内に収納される。その際、第1の負圧発生部材132Aの図3中左側の外面(第2の外面)に対する挿入爪504による押圧は維持されたままである。第1の負圧発生部材132Aは、挿入爪504と仕切り壁150との間に位置することにより、挿入爪504,505の間に位置する挿入前のときと比較して、挿入爪504の厚みW2分だけ矢印50方向に移動することになる。このような第1の負圧発生部材132Aの移動により、それは仕切り壁150側にずれるように配置されて、仕切り壁150に強く密着する。大気導入溝150Aが形成された仕切り壁150に第1の負圧発生部材132Aを強く密着させることにより、仕切り壁150の付近に位置する第1の負圧発生部材132Aの部分が変形し、その変形量に応じて、その部分の密度が高まる。第2の負圧発生部材132Bも同様に、仕切り壁150の付近に位置する部分の密度を高めることができる。
【0026】
その後、図3(d)に示すように、押し棒506によって、第2の負圧発生部材132Bを介して第1の負圧発生部材132Aを下方に押圧し、インク供給口114が形成されている第1凹部100A内の底面にまで、第1の負圧発生部材132Aを移動させる。
【0027】
次に、図3(e)に示すように、押し棒506によって負圧発生部材132を押え付けたまま、4つの圧縮部材503A,503B,503C,503Dによって形成される挿入管と、挿入爪504,505と、を第1凹部100A内から抜き出す。挿入爪504が抜き出される際に、第1および第2の負圧発生部材132A,132Bは、挿入爪504の厚みW1分だけ圧縮が解放される。その後、図3(e)に示すように、シリンダ501によって押し棒506を上方に退避させて、負圧発生部材132の挿入工程が完了する。
【0028】
このように、仕切り壁150に対する密着度を高めるように負圧発生部材132を挿入した後、タンク本体100の開口部に、大気連通口170とインク充填穴160が形成されたカバー部材180を固定することにより、インクタンクを完成させる。負圧発生部材132は、その弾性復元力によって第1凹部100Aの内面に圧接し、その第1凹部との摩擦力によって、仕切り壁150に対する高い密着度が維持される。つまり、第1凹部内に挿入された負圧発生部材は、摩擦抵抗力により、その変位が抑えられることになる。
【0029】
このように製造されたインクタンクに対しては、前述した図6の場合と同様に、インク供給口114とインク充填穴160に対してポンプ5,8、インク溜9、バルブ7,10,12を接続することにより、インクを充填することができる。
【0030】
すなわち、まず、インク供給口114と大気連通口170を密閉してから、ポンプ5によって、インク充填穴160およびバルブ7を通してインクタンク内の空気を矢印A方向に排出して、第1および第2室R11,R12内を減圧する。その後、バルブ7を閉じてから、ポンプ8によって、インク溜9内のインクをバルブ10およびインク充填穴160を通して矢印B方向から第2室R2内に充填する。その際、インクが連通部140を通して第1室R1内の負圧発生部材132に浸透する領域は、その負圧発生部材132の表面の一部に限られる。その後、ポンプ8によって、インク溜9内のインクをバルブ12およびインク供給口114を通して矢印C方向から第1室R11内に充填する。第1室R11内のインクは、負圧発生部材132の毛管力によって吸収保持される。その後、インク供給口114を密閉してから、大気連通口170を開放して、第1および第2室R11,R12内の減圧状態を完全に解除(大気開放)する。その後ボール165によってインク充填穴160を密閉する。インクタンクの出荷時には、インク供給口114が不図示のシールによってシールされ、インクタンクの使用時には、そのシールが剥がされる。
【0031】
インクタンクの使用時には、シールが剥がされたインク供給口114が不図示のインクジェット記録ヘッドに接続され、負圧発生部材132によって吸収保持されている第1室R11内のインクは、負圧が付与された状態で記録ヘッドに供給される。このようなインクの供給に伴って、第2室R12内のインクが連通部140を通して第1室R11内に導入され、その分の空気が大気連通口170から大気導入溝150Aおよび連通部140を通して第2室R12内に導入される。
【0032】
前述したように、インクタンクの出荷時には、第2室内に存在する気泡の量を適確に管理する必要がある。すなわち、第2室内に存在する気泡の量が所定量を越えたときには、インクタンクの使用開始のために、インク供給口を封止していたシールを剥がしたときに、インク供給口からインクが漏れ出すおそれがあるからである。しかし、前述したように、インクタンク内にインクと空気が混在する部分P(図6参照)が生じた場合には、その部分Pからの空気が加わって第2室内の気泡の量が増大し、その気泡の量が適確な管理範囲を越えるおそれがある。
【0033】
前述したように、インクと空気が混在する部分P(図6参照)は、負圧発生部材における仕切り壁の近傍部分の密度が適正でない場合に、インクの充填作業において、大気連通口を開放してインクタンク内の減圧状態を解除したとき(大気開放時)に生じる。つまり、負圧発生部材における仕切り壁近傍部分の流抵抗が小さくなり、仕切り壁近傍部分および連通部を通して第1室から第2室内に流れ込むインクの流入速度が高くなる。大気連通口から第1室内に入った空気は、このように仕切り壁近傍部分を集中的に通って高速流入するインクに引き込まれるようにして、仕切り壁近傍部分に流れ込む。この結果、負圧発生部材における仕切り壁の近傍部分に、インクと空気が混在する部分Pが生じることになる。
【0034】
本実施形態においては、前述したように、負圧発生部材132を仕切り壁150に強く密着させることにより、仕切り壁150の近傍における負圧発生部材132の部分の密度を高めて、その部分の流抵抗を大きくすることができる。その結果、インクの充填作業における大気開放時に、負圧発生部材132における仕切り壁150の近傍部分および連通部140を通して第1室R11から第2室R12内に流れ込むインクの流入速度が遅くなる。したがって、負圧発生部材132における仕切り壁150の近傍部分に集中させることなく、負圧発生部材132の全体から第2室R12内にインクを送り込み、空気の引き込みをなくすことができる。この結果、インクの充填時における大気開放の作業時間を長くすることなく、インクと空気が混在する部分P(図6参照)の発生を抑えることができる。
【0035】
(第2の実施形態)
前述した実施形態においては、挿入爪504の厚みW1と、挿入爪505の厚みW2と、を同じ厚みとした。
【0036】
本実施形態においては、挿入爪504の厚みW1を挿入爪505の厚みW2の2倍とした(W1=2×W2)。これにより、前述した実施形態の場合に比して、仕切り壁150に対する負圧発生部材132の密着度をさらに高めることができる。つまり、4つの圧縮部材によって形成される挿入管内に前述した実施形態と同様に負圧発生部材132を圧縮保持した場合、その負圧発生部材132の位置をより仕切り壁150側に偏らせるようにして、第1凹部100A内に挿入することができる。このように、挿入爪504の厚みW1を変更することにより、仕切り壁150に対する負圧発生部材132の密着度を調整することができる。
【0037】
(他の実施形態)
圧縮部材503Bには必ずしも挿入爪505を設ける必要はなく、圧縮部材503Bによる圧縮を解除しつつ、負圧発生部材132を第1凹部100A内に挿入することができればよい。要は、圧縮部材503Aと挿入爪504による負圧発生部材132の押圧を維持したまま、圧縮部材503Bによる押圧を解除しつつ、負圧発生部材132を第1凹部100A内に収納してから、圧縮部材503Aによる押圧を解除することができればよい。このように負圧発生部材を第1凹部内に収納する際に、仕切り壁に対する負圧発生部材の密着度を高めることは、前述したように、インク充填時に負圧発生部材に部分的に生じやすいインクの流入速度の高速化を回避する上において有効である。さらに、負圧発生部材と仕切り壁との間の隙間の発生を抑えて、負圧発生部材によるインクの保持能力を充分に発揮させる上においても有効である。また、インクの充填方法は、前述した実施形態のみに特定されない。また、負圧発生部材132は、2つの部材132A,132Bを含む構成のみに限定されず、1つの部材、あるいは3つ以上の部材を含む構成であってもよい。
【0038】
また本発明は、インク以外の種々の液体を収納するための液体収納容器に対して、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
100 タンク本体(容器本体)
100A 第1凹部
100B 第2凹部
114 インク供給口
132 負圧発生部材
140 連通部
150 仕切り壁
150A 大気導入溝
160 液体充填穴
170 大気連通口
180 カバー部材
503A,503B,503C,503D 圧縮部材
504,505 挿入爪
第1室 R1
第2室 R2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通部が形成された仕切り壁によって第2凹部と仕切られた第1凹部内に、負圧発生部材を収納する液体収納容器の製造方法であって、
前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納する前に、前記第1凹部内に位置する前記仕切り壁の表面に接することになる前記負圧発生部材の第1の外面と、前記仕切り壁と対向する前記第1凹部の内面に接することになる前記負圧発生部材の第2の外面と、を含む前記負圧発生部材の複数の外面を圧縮部材によって押圧して、前記負圧発生部材を前記第1凹部の開口部の大きさよりも小さく圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮部材による前記第2の外面の押圧を維持したまま、前記圧縮部材による前記第1の外面の押圧を解除しつつ、前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納してから、前記圧縮部材による前記第2の外面の押圧を解除する収納工程と、
を含むことを特徴とする液体収納容器の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮部材は、前記第1の外面を押圧する第1の圧縮部材と、前記第2の外面を押圧する第2の圧縮部材と、を含み、
前記圧縮工程は、前記第1凹部の前記開口部と対向する対向位置において前記負圧発生部材の圧縮状態を維持する工程を含み、
前記収納工程は、前記対向位置の前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納するために、前記第2の圧縮部材から延出する挿入爪を前記第1凹部の前記内面に沿わせてから、前記負圧発生部材を前記対向位置から前記第1凹部内に移動させる工程を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器の製造方法。
【請求項3】
前記挿入爪の厚みに応じて、前記仕切り壁の前記表面に対する前記負圧発生部材の密着度を調整することを特徴とする請求項2に記載の液体収納容器の製造方法。
【請求項4】
前記圧縮部材は、前記負圧発生部材の前記第1および第2の外面を含む外周面を押圧するための複数の圧縮部材を含み、
前記複数の圧縮部材は、前記負圧発生部材の圧縮時に前記外周面を囲む枠状の挿入管を形成する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体収納容器の製造方法。
【請求項5】
前記第1および第2凹部の開口部を覆うカバー部材を固定する工程を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器の製造方法。
【請求項6】
連通部が形成された仕切り壁によって第2凹部と仕切られた第1凹部内に、負圧発生部材を収納する液体収納容器の製造装置であって、
前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納する前に、前記第1凹部内に位置する前記仕切り壁の表面に接することになる前記負圧発生部材の第1の外面と、前記仕切り壁と対向する前記第1凹部の内面に接することになる前記負圧発生部材の第2の外面と、を含む前記負圧発生部材の複数の外面を圧縮部材によって押圧して、前記負圧発生部材を前記第1凹部の開口部の大きさよりも小さく圧縮する圧縮手段と、
前記圧縮部材による前記第2の外面の押圧を維持したまま、前記圧縮部材による前記第1の外面の押圧を解除しつつ、前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納してから、前記圧縮部材による前記第2の外面の押圧を解除する収納手段と、
を備え、
前記圧縮部材は、前記第1の外面を押圧する第1の圧縮部材と、前記第2の外面を押圧する第2の圧縮部材と、を含み、
前記圧縮手段は、前記第1凹部の前記開口部と対向する対向位置において前記負圧発生部材の圧縮状態を維持し、
前記収納手段は、前記対向位置の前記負圧発生部材を前記第1凹部内に収納するために、前記第2の圧縮部材から延出する挿入爪を前記第1凹部の前記内面に沿わせてから、前記負圧発生部材を前記対向位置から前記第1凹部内に移動させる
ことを特徴とする液体収納容器の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−176501(P2012−176501A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39409(P2011−39409)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】