説明

液体収集装置

【課題】埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる液体収集装置を提供する。
【解決手段】液体収集装置3000のカセット容器としてのセンサーチップ100は、試薬が含まれており被検体の指の皮膚を当てることで汗成分を吸収する吸収部80と、この吸収部980に連通して汗成分を電気信号に変換する試薬と電気信号を出力するための電極71,72を有する変換部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収集装置に関し、特に汗成分などの液体を収集するための液体収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血液中のグルコース値(血糖値)は、糖尿病疾患において非常に重要な指標であり、医療現場では、針を用いて採血を行っている。この採血をする際に、被験者の指には針を刺す必要があるので被験者には苦痛を伴う。
このため、被験者に対して針を刺さないで、いわゆる非侵襲でグルコース値が得られる方法が検討されている。例えば、指に対して霧吹きにより水分を与えることで、指の皮膚表面の汗成分を容器内に落下させて、その汗成分中に含まれるグルコース値を測定することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−315340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1に開示されているグルコースの測定では、被験者に対する負荷を軽減できるが、指を外気に露出させた状態で指に小型の噴霧器から水溶液を噴霧して、指に付着した水滴を、外気に露出した状態で筒状の容器内に落下させる必要がある。このため、指に水溶液を噴霧して指に付着した水滴を落下させる際に埃などの異物が混入するおそれがある。しかもこの筒状の容器は、必ず指の下方に配置させる必要がある。このため、指からたれてくる水滴が容器の外にこぼれてしまうおそれがある。
【0004】
このように、指は露出されており、指に噴霧器から水溶液を噴霧した状態で指から水滴が容器内に落下するのを待たなければならないので、指や水滴に埃など異物が付着してしまうおそれがある。従って、従来のグルコース測定方法では、異物を排除して指の汗成分を確実に容器内に収集することが難しい。さらに、少量の汗成分を用いてグルコース量を測定するためには、例えば遠心分離装置を用いて前記汗成分中のグルコース濃度を高めなくてはいけない。従って、収集された汗を効率良く収容するカセット容器が必要である。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる液体収集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解消するために、本発明の液体収集装置は、被検体の皮膚からの汗成分を収集するための液体収集装置であって、
前記被検体の前記皮膚を当てることで前記汗成分を吸収する吸収部と、前記吸収部に連通し前記汗成分を電気信号に変換する試薬と前記電気信号を出力するための電極を有する変換部からなる着脱可能なカセット容器を有していることを特徴とする。
【0006】
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記液体収集装置は、前記吸収部を加熱する加熱部を有していることを特徴とする。
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記加熱部は、超音波振動素子であることを特徴とする。
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記加熱部は、通電により発熱するヒータであることを特徴とする。
【0007】
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記カセット容器は、前記吸収部に前記汗成分を吸収させるための開口部と、前記開口部を閉じるための蓋部材を備えることを特徴とする。
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記カセット容器の前記変換部は、遠心分離作用により前記汗成分の濃度を濃縮した濃縮汗成分を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
次に、図1を参照して、本発明の液体収集装置3000を説明する。
図1は、センサーチップ100と、遠心分離装置900のディスク40の開口部70の付近を示している。液体収集装置3000は、遠心分離装置900に設けられて、例えば被験者の手の指1000の皮膚1001からの汗成分を試料として収集する。遠心分離装置900は、開口部70を有する本体901と、本体901内に配置されたディスク40と、可動フタ903を有している。可動フタ903はT方向にスライドすることで、本体901の開口部70を表出させることができるようになっている。
【0010】
汗成分は、塩化ナトリウム、窒化酸化物、乳酸、カルシウム、尿素、アンモニア、糖類などを含んだ水で構成されている。この汗の成分は、血液から作り出され、血液中の血漿と呼ばれる液体成分が汗として使われている。汗は汗腺から分泌されるが、この汗腺は全身に約200万個〜500万個ある。一番密に汗腺が存在しているのは、手掌であり、その次に密なのは足の裏、額である。
そこで、本発明の実施形態の液体収集装置3000は、被験者の手の指または足の指に着目して、指からの汗成分を確実に簡単に効率良く収集する。
【0011】
図1の液体収集装置3000は、カセット容器としての上述したセンサーチップ100と、回転体としてのディスク40と、加熱部としての超音波振動素子1700を有している。カセット容器としてのセンサーチップ100は、試薬が含まれており被検体の指の皮膚を当てることで汗成分を吸収する吸収室(吸収部ともいう)80と、この吸収室80に連通して汗成分を電気信号に変換する試薬と電気信号を出力するための電極71,72を有する変換部と、を有する。
【0012】
センサーチップ100は、ケース60と、直方体形状の薄型の容器部990と、吸収部としての吸収室80と、電極71,72を有している。この容器部990は、例えばプラスチックにより作られている。吸収室80は、第1吸収部材61と第2吸収部材62で構成されている。
【0013】
図1と図2に示す第1吸収部61は、汗成分を毛細管現象を用いて吸収して採取することができる材質、多孔質材料例えば板状のスポンジである。容器部990のケース60は、第1吸収部材61に対応する部分に、開口部63を有している。しかし、第1吸収部材61は、多孔質材料以外に不織布などであっても良い。
一方、第2吸収部材62は、第1吸収部材61で採取された汗成分を遠心分離作用により、電極71,72側にグルコース濃度を高めて分離吸着させるための管路構造を有する。
【0014】
ディスク40は、センサーチップ100を高速回転することで遠心力を与えることができる。超音波振動素子1700は、センサーチップ100を加熱するために20kHz以上の超音波振動をセンサーチップ100に対して介在部材1710を介して付加することができる。介在部材1710は、熱や振動伝搬効率の良い材料例えば鉄板である。
【0015】
図1では、すでにセンサーチップ100がディスク40の開口部70を通じてディスク40のガイド溝101内の配置位置199に配置されている。
センサーチップ100は、試薬が含まれており汗成分を吸収する吸収部980を有する。
【0016】
図1では、第1吸収部材61が吸収室80内に配置される前の状態を示しているが、図2には、第1吸収部材61が吸収室80内に配置された状態を示している。図2に示すように、ケース60の内部空間64の吸収室80には、第1吸収部材61と容器部990が収容され、吸収室80には、第2吸収部材62と、電極71,72が収容されている。
【0017】
容器部990は、第1吸収部材61の下部に配置されている。第1吸収部材61が指により押圧され、しかも超音波振動素子1700による振動の付加により、第1吸収部材61内に吸収された汗成分は、第1吸収部材61から容器部990内に落下することで回収できるようになっている。
【0018】
図1に示すように、超音波振動素子1700は、制御部1900による制御によりジュール熱により発熱をして、介在部材1710を通じて熱をセンサーチップ100内の第1吸収部材61と第2吸収部材62に与えるようになっている。
【0019】
ディスク40の配置位置199には、温度センサー1800が配置されており、温度センサー1800は、センサーチップ100の温度を検出して制御部1900に対して温度測定信号を供給する。この制御部1900は、温度センサー1800からのセンサーチップ100の温度測定信号に基づいて、超音波振動素子1700の振動エネルギーの制御を行って、温度センサー100を所定の温度、例えば好ましくは40℃〜50℃にコントロールする。
【0020】
次に、図1〜図4を参照して、液体収集装置3000を用いて汗成分の収集方法の例を説明する。
図1では、センサーチップ100は、ディスク40の配置位置199に配置されており、センサーチップ100はガイド溝101内に配置されている。
【0021】
図2に示すように、第1吸収部材61は、予めセンサーチップ100の吸収室80内に配置されていても良いし、センサーチップ100が配置位置199に配置された後にセンサーチップ100の吸収室80内に配置してもよい。
吸収室80内では、第1吸収部材61の下部に容器990が位置されている。容器部90の隣の位置には、第2吸収部材62が配置されている。
【0022】
図2に示す超音波振動素子1700は、制御部1900による制御によりジュール熱により発熱をして、介在部材1710を通じて熱をセンサーチップ100内の第1吸収部材61と第2吸収部材62に与える。
【0023】
温度センサー1800は、センサーチップ100の温度を検出して制御部1900に対して温度測定信号を供給する。この制御部1900は、温度センサー1800からのセンサーチップ100の温度測定信号に基づいて、超音波振動素子1700の振動エネルギーの制御を行って、温度センサー100を所定の温度、例えば好ましくは40℃〜50℃にコントロールする。
【0024】
このように第1吸収部材61と第2吸収部材62に対して熱を与えることにより、第1吸収部材61と第2吸収部材62における汗成分の表面張力が下がり汗成分は移動しやすくなる。
【0025】
次に、図3に示すように、被検者は指1000を第1吸収部材61に対してその指1000の腹を第1吸収部材61に対してBM方向に押し付けて弾性変形させると、この振動の付加による発熱により汗成分の表面張力が下がって移動し易くなることと、超音波振動素子1700の振動の付加と、このBM方向に沿った圧力荷重とにより、第1吸収部材61から汗成分1200が容器部990内に落下して簡単に確実に貯留される。
【0026】
その後、第1吸収部材61から指1000を取り除く。この際に、第1吸収部材61は吸収室80内から取り除いても良いし、そのまま吸収室80内に残しても良い。
次に、図1と図4に示す蓋部材としての可動フタ903により、ディスク40の開口部70を閉じる。
【0027】
カセット容器としてのセンサーチップ100は、吸収室80に汗成分を吸収させるための開口部63を備えているが、開口部63は、可動フタ903を備える。このため、吸収室80は、図1と図4に示す可動フタ903により覆われて外部に露出しないことから、埃などが吸収室80内に侵入するのを防止できる。そして、センサーチップ100の変換部は、遠心分離作用により汗成分の濃度を濃縮した濃縮汗成分を生成するこができる。液体収集装置3000は、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる。
【0028】
図5に示すように、センサーチップ100はディスク40の回転中心軸CL近傍からT方向に移動してディスク40の外周部付近に位置決めされ、モータ400を駆動してディスク40を高速連続回転することでセンサーチップ100に対して遠心力を与えると、図4の容器部990の第1吸収部材61と容器990から第2吸収部材62側にグルコースを含む液体が遠心力により移動して、第2吸収部材62の端部には比重差によりグルコースが電極71,72に付着する。これにより、グルコースの量を電気信号の測定値は、この電極から得ることができる。この電極からの電気信号は、遠心分離装置の処理回路により変換処理される。
【0029】
グルコース(血中糖分)は、酵素層(バイオ層)で過酸化水素層に変換して、白金の電極で電子を取り出し、血液中の糖分濃度を表示する。一例として示すこの測定方法は、GOD(glucose oxidase)固定化酵素電極による最大反応加速解析法であり、以下の通りである。
測定原理(GOD電極法)
G0Dを固定化した酵素膜と、金陰電極、および銀塩化銀陽電極を組み合わせて、GOD反応により消費される酸素量を測定する。
(1)酵素の作用により電極表面で、下記のGOD反応が起こる。
グルコース+O2+H2O→グルコン酸+H
この反応で、反応液中の酸素が消費される。
【0030】
(2)この酸素消費量を金陰極と銀塩化銀陽極からなる電極により、電流量として測定する。電極内部では、下記の反応が起こり、電流が流れ、この電流量は酸素分圧に比例する。酸素消費量は検体中のグルコース濃度に比例する。
金陰極 :O+2HO+4e−→ 4OH−
銀−塩化銀陽極 :4Ag+4Cl→ 4AgCl+4e−
【0031】
さらに、本測定方法では、酸素消費量の変化を二次微分することによって反応加速度を求め、この加速度の最大値を検知して、グルコースを測定する。反応加速度もまた検体中のグルコース濃度に比例する。
なお、本発明の実施形態において、使用したセンサーチップは、ディスポータブルタイプであり、ディスク40から排出した後に廃棄される。
【0032】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
本発明は、図示した実施形態に限らず、上述した各実施形態における特徴的な要素は、相互に組み合わせて構成することができる。
超音波振動素子に代えて通電により発熱をするヒータを用いても良い。このヒータを用いる際には、図4の制御部1900は、温度センサー1800からの温度検出信号に基づいて、ヒータに対する通電量を制御することで、センサーチップの温度をコントロールする。
センサーチップ100内には、容器部990に代えて、第1吸収部61のような平板型の1枚の吸収部材を配置しても良い。ケース60は、薄い直方体形状の容器であるが、他の形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】センサーチップと、ディスクの開口部の付近において、第1吸収部材が第1収容室内に配置される前の状態を示す図である。
【図2】第1吸収部材が第1収容室内に配置された状態を示す図である。
【図3】第1吸収部材に指を押し付けた図である。
【図4】ディスクの開口部を蓋部材で閉じた図である。
【図5】センサーチップをディスクの回転中心軸近傍から外周部付近に移動させる様子を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
80 吸収室(吸収室)
100 センサーチップ(カセット容器の一例)
900 遠心分離装置
990 容器部
1200 汗成分
1700 超音波振動素子(加熱部の一例)
1710 介在部材
1800 温度センサー
3000 液体収集装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の皮膚からの汗成分を収集するための液体収集装置であって、
前記被検体の前記皮膚を当てることで前記汗成分を吸収する吸収部と、前記吸収部に連通し前記汗成分を電気信号に変換する試薬と前記電気信号を出力するための電極を有する変換部からなる着脱可能なカセット容器を有していることを特徴とする液体収集装置。
【請求項2】
前記液体収集装置は、前記吸収部を加熱する加熱部を有していることを特徴とする請求項1に記載の液体収集装置。
【請求項3】
前記加熱部は、超音波振動素子であることを特徴とする請求項1に記載の液体収集装置。
【請求項4】
前記加熱部は、通電により発熱するヒータであることを特徴とする請求項1に記載の液体収集装置。
【請求項5】
前記カセット容器は、前記吸収部に前記汗成分を吸収させるための開口部と、前記開口部を閉じるための蓋部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体収集装置。
【請求項6】
前記カセット容器の前記変換部は、遠心分離作用により前記汗成分の濃度を濃縮した濃縮汗成分を生成することを特徴とする請求項1に記載の液体収集装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−47617(P2009−47617A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215371(P2007−215371)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】