説明

液体取り扱い器具

【解決手段】 ピペット[1]はノズル[10]とハンドピース[6]とを具備する。前記ピペット[1]内に収容されるピストンアセンブリは、一端に柔軟部分[4]まで延長する剛体部分[2]に固着したシール[9]を有する。前記剛体部分[2]と前記柔軟部分[4]との接合部には拡大段部[7]を有する。前記柔軟部分[4]は前記ハンドピース[6]を通って延長する。前記ピストンロッドアセンブリの前記柔軟部分[4]と前記ピペットの内壁[11]との間には、可動スリーブ[3]が配置される。一方の端部で前記スリーブ[3]は前記ピストンアセンブリの前記段部[7]を通り越し、狭窄部[8]で停止する。前記スリーブ[3]の他方の端部は、前記ピペット[1]の開口端から延長し、前記ピペット[1]の口径より大きい外径の段部[5]で停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分注器に関するものである。具体的には、本発明は、ピストンの補助を得てピペットの口径部から液体を分注する形式のピペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピペットは、一般に、細い円筒状の中空体を有しその分注する端部(分注端)には小開口部とそれにつながる円錐形テーパー部分(「ノズル」)とを有し、もう一方の端部は開口していることを特徴とする。一部の形式のピペットは、その口径部にスライド可能で手動操作されるピストンが組み込まれており、これにより液体の取り扱いが制御される。前記ピストンはその分注端にピストンヘッドを有し、且つ前記ピペットの分注端ではない側の端部の開口部から前記ピストンは延出しており、これに親指を当てることにより前記ピストンが操作される。ピストン移動は、通常、前記ピストンロッドに親指を当てて操作し易いように配置されたハンドピースの助けを借りて達成される。例えば液体を前記ピストンに充填するとき、前記ピストンロッドを前記ピペットの開口端に向けて引き上げ、この時前記ピストンロッドを前記ピペットから約250mm突出させることもできる。前記ピペットまたはハンドピースから突出した前記ピストンロッドを扱い易くするため、前記ピストンロッドの前記ピペットからの突出部が少なくとも部分的に曲がるように前記ピストンロッドを柔軟な材料で形成することもできる。
【0003】
しかしながら、前記ピストンロッドのこの柔軟な性質の1つの欠点は、前記ピペットの口径部内での動作中においても前記ロッドが曲がり前記ピペットの内面に接触することにより、前記ピペットの内壁に残っている残留液と接触する状態となり、次に前記ピペットの内壁から前記ピストンロッドに移動したこの液体が、前記ロッドを引き出したとき前記ピペット使用者の親指または手指に付着する可能性があることである。この問題を適切なより硬い材料で製造されたピストンロッドを提供することによって解決することは、前記ピペットの開口部に向けて引き出される前記ピストンロッドの突出端を扱い難いものにしてしまうので、必ずしも望ましいものではない。さらに、ピペットは性質上細身であるため(特に小口径の場合)、要求されるピストンロッドの直径は、前記ピペットから液体を分注する際に前記ピペットの壁に前記ピストンロッドが接触するのを防ぐために必要な硬度を提供するのには不十分な直径である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、前記欠点の1若しくはそれ以上を克服または少なくとも改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、スリーブ付き構造を有するピストンロッドアセンブリを提供することにより前記欠点を少なくとも改善するものであって、このスリーブ付き構造により前記スリーブ内部で動作している部分を分注ピペットの内壁に存在する危険な液体残留物から守ることができる。
【0006】
本発明の第1の観点によれば、中空管状本体の一方の端部に開口部を有し、他方の端部に分注ノズルを有する形式のピペットであって、これにより当該ピペットの内容物が前記本体内のピストン形式のロッドの可逆的操作によって分注されるものであり、また前記ピペットは前記本体内に可動スリーブを有し、前記ロッドは前記スリーブを貫通し、前記ピペットの使用中前記スリーブと可逆的に係合していずれかの必要な方向に移動するように構成されており、これにより前記ロッドの一部分が前記ピペットの使用中前記スリーブにより絶えず囲まれていることを特徴とするピペットである。
【0007】
前記ロッドの前記部分は剛体であっても柔軟であってもよい。
【0008】
好ましくは、前記部分は拡大段部を含むものであって、当該拡大段部は前記スリーブが前記拡大段部を通り越しことができ、狭窄部で停止するように構成されている。
【0009】
前記ロッドの前記部分が柔軟である実施形態において、この柔軟部分を剛体部分に固着することもできる。
【0010】
前記ロッドの前記部分が柔軟である実施形態において、前記拡大段部は前記柔軟部分と前記剛体部分間の接合部にある。
【0011】
前記スリーブの一端は前記ピペットの開口端から延長し、前記ピペットの口径より大きい外径の段部で停止することもできる。
【0012】
前記ピペットは、その使用を容易にするためのハンドピースを含むことができる。
【0013】
前記ハンドピースには、前記可動スリーブをその前記段部と共に収容するように構成された、前記部分が延長できるように通り抜けができる口径部を含めることもできる。
【0014】
前記ハンドピースは本質的に同心の2つの口径部、すなわち前記部分を受け入れる第1の口径部と、前記スリーブをその段部と共に収容するより大きい直径の第2の口径部とを含めることができる。
【0015】
前記ロッドは第2の柔軟部分を含むことができ、この第2の柔軟部分は当該第2の柔軟部分が前記ピペットの前記一端から延出したときに曲がるように構成されている。
【0016】
前記スリーブは伸縮可能なアセンブリにすることができる。
【0017】
前記ロッドは伸縮可能なアセンブリにすることができる。
【0018】
本発明の第2の観点は、ピペットの操作者が前記ピペットの使用後に前記ピペット内に残された残留液に接触する可能性を実質的に低減する方法を提供するものであって、この方法は前述のピペットの使用を含むものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1および2を参照して、本技術分野で周知のように、ピペット[1]はノズル[10]とハンドピース[6]とを具備している。前記ピペット[1]内に収容されたピストンアセンブリは、本技術分野で周知のように、その一端にシール[9]を有し、このシールは柔軟部分[4]まで延長する剛体部分[2]に固着している。前記剛体部分[2]と前記柔軟部分[4]の接合部には拡大段部[7]がある。前記柔軟部分[4]は前記ハンドピース[6]を通って延出することにより、操作者が前記ピペット[1]を保持し前記ピストンアセンブリを操作することを可能にする。前記ピストンロッドアセンブリの前記柔軟部分[4]と前記ピペットの内壁[11]との間に、可動スリーブ[3]が配置される。一方の端部で、前記スリーブ[3]は前記ピストンアセンブリの前記段部[7]を通り越し、狭窄部[8]で停止する。前記スリーブ[3]の他方の端部では前記ピペット[1]の前記開口端から延長し、前記ピペット[1]の口径より大きい外径の段部[5]で停止する。前記柔軟部分[4]が通過する前記ハンドピース[6]内の口径部も、前記可動スリーブ[3]をその段部[5]と共に収容するための十分なサイズがある。あるいは、本質的に同心の2つの口径部を前記ハンドピース[6]内に提供し、第1の口径部で前記柔軟部分[4]を受け入れ、より大きい直径の口径部で前記スリーブ[3]をその段部[5]と共に収容することができる。
【0020】
図1において、使用中前記ピペット[1]内に保持された液体を吐出するため、前記ピストンロッドアセンブリを前記ピペットノズル[10]に向けて移動する方向[A]に前記アセンブリに付勢をかける。前記柔軟部分[4]が前記ノズル[10]に向けて移動するにつれ、前記ピストンアセンブリの前記段部[7]は前記可動スリーブ[3]の前記狭窄部[8]と係合して前記ハンドピース[6]から前記スリーブ[3]を引き出し、前記スリーブ[3]は前記柔軟部分[4]と前記ピペット[1]の内壁[11]との間に配置される。前記スリーブ[3]が前記ピペット[1]内を移動するにつれ、前記スリーブの前記段部[5]は前記ピペット[1]の開口端と係合し、前記スリーブの移動を停止する。前記ピペット[1]の様々な構成要素のサイズについては、前記スリーブ[3]の前記方向Aに向かう移動が停止した時点で前記シール[9]が前記ノズル[10]内に完全に嵌め込まれ、前記ピペット[1]の内容物が実質的に全て吐出され、前記スリーブ[3]が常に前記柔軟部分[4]と前記ピペット[1]の内壁[11]との間にあることを確実にし、これにより前記ピストンアセンブリの前記柔軟部分[4]が前記ピペット[1]の内壁[11]に残留しているあらゆる液体から隔離されるように構成されたサイズである。
【0021】
次に図2において、液体を前記ピペット[1]内に配置するために、前記ピストンアセンブリを前記ピペットノズル[10]から離す方向[B]に前記ピストンロッドアセンブリに付勢をかける。前記柔軟部分[4]が前記ノズル[10]から離れるにつれ、前記シール[9]は前記ハンドピース[6]内に収容されるまで移動可能な前記可動スリーブ[3]と係合する。従って、この場合も、この移動は前記スリーブ[3]が常に前記柔軟部分[4]と前記ピペット[1]の内壁[11]との間にあることを確実にし、前記ピストンアセンブリの前記柔軟部分[4]は前記ピペット[1]の内壁[11]に残留しているあらゆる液体から隔離される。
【0022】
従って、本発明は、ピペットから液体を分注するためのピストンロッドを提供するピペットを提供するが、前記ロッドを引き出す際、前記ピペット口径部内に存在するあらゆる残留液から前記使用者を隔離するものである。
【0023】
上述の実施形態は本発明の様々な観点の一つの例証に過ぎず、添付の特許請求の範囲で定義されている発明概念から逸脱しない範囲で実施形態に修正および変更を加えることは理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の好ましい実施形態については、付随の図面を参照しながら説明する。
【図1】図1は、本発明に従った、液体がピペットから完全に分注された位置のピペットの断面図である。
【図2】図2は、ピペットの中に液体を吸引するためにある程度引っ込められた図1のピペットの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空管状本体の一方の端部に開口部を有し、他方の端部に分注ノズルを有する形式のピペットであって、これにより当該ピペットの内容物が前記本体内のピストン形式のロッドの可逆的操作によって分注されるものであり、
前記ピペットは、
前記本体内に可動スリーブを有し、前記ロッドは前記スリーブを貫通し、前記ピペットの使用中前記スリーブと可逆的に係合していずれかの必要な方向に移動するように構成されており、これにより前記ロッドの一部分が前記ピペットの使用中前記スリーブにより絶えず囲まれていることを特徴とするピペット。
【請求項2】
請求項1に記載のピペットにおいて、前記部分は、前記スリーブが前記段部を通り越し、狭窄部で停止できるようになっている拡大段部を含むものである。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のピペットにおいて、前記ロッドの部分は柔軟性がある。
【請求項4】
請求3に記載のピペットにおいて、前記柔軟部分は剛体部分に固着しているものである。
【請求項5】
請求項2に従属する請求項4に記載のピペットにおいて、前記拡大段部は前記柔軟部分と前記剛体部分との接合部にあるものである。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のピペットにおいて、前記スリーブの一端部は、前記ピペットの開口端から延長し、前記ピペットの口径より大きい外径の段部で停止するものである。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のピペットにおいて、このピペットは、
前記ピペットの使用を容易にするハンドピースを含むものである。
【請求項8】
請求項7に記載のピペットにおいて、前記ハンドピースは、前記可動スリーブを収容するように構成された、前記部分が通り抜けて延長することができる口径部を含むものである。
【請求項9】
請求項7に記載のピペットにおいて、前記ハンドピースは2つの本質的に同心の口径部を含むものであって、第1の口径部は前記部分を収容し、より大きい直径の第2の口径部は前記可動スリーブを収容するものである。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のピペットにおいて、前記ロッドは第2の柔軟部分を含むものであって、この第2の部分が前記ピペットの前記一端部から延出したとき曲がるようになっているものである。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のピペットにおいて、前記スリーブは伸縮可能なアセンブリである。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のピペットにおいて、前記ロッドは伸縮可能なアセンブリである。
【請求項13】
ピペットの使用後に前記ピペット内に残されたあらゆる残留液に前記ピペットの操作者が接触する可能性を実質的に低減する方法であって、請求項1〜12のいずれかに記載のピペットの使用を含むものである方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−506304(P2009−506304A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527269(P2008−527269)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001223
【国際公開番号】WO2007/022583
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508059650)
【出願人】(508059661)
【Fターム(参考)】