説明

液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び画像形成装置

【課題】ノズルプレートの外周部にノズルカバーが設けられる液体吐出ヘッドにおいて、増粘インクがノズル孔を塞ぐことによって生じるインク滴の不吐出や吐出方向曲がりを防止することができる液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】ノズル孔により記録液の吐出が行われる液体吐出面が形成されたノズルプレートを備え、ノズルプレートの外周がノズルカバーで覆われた液体吐出ヘッドにおいて、ノズルカバーは、ノズルカバーの開口部がノズルカバーの外周部よりもノズルプレートの液体吐出面に近づくようにノズルカバーの開口部方向に傾斜を持って形成され、かつ、ノズルカバーの開口部の先端は、ノズルカバーの厚さ方向に垂直な面よりも液体吐出面に対して平行に近い傾斜面を有し、傾斜面を被覆し、傾斜面とノズルプレートの隙間を充填するように樹脂材料が埋められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成に用いられる記録液体を吐出する液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、画像形成に用いられる記録液(例えばインク)の液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッドともいう)からなる記録ヘッドを用いた画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、インクジェットヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行うものであり、インクジェットヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、インクジェットヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
ところで液体吐出ヘッドは、ノズル(ノズル孔)から液滴を吐出させて記録を行うため、ノズルの形状、精度がインク滴の噴射特性に大きな影響を与える。また、ノズル孔を形成しているノズル形成部材(ノズルプレート)の表面の特性もインク滴の噴射特性に影響を与えることが知られている。例えば、ノズル形成部材表面のノズル孔周辺部にインクが付着して不均一なインク溜まりが発生すると、インク滴の吐出方向が曲げられたり、インク滴の大きさにバラツキが生じたり、インク滴の飛翔速度が不安定になる等の不都合が生じることが知られている。
【0005】
このようなことから、液体吐出ヘッドの中には、ノズルを形成するノズル形成部材の表面にインクを弾く撥水処理(撥インク処理)を施すものがある。また、ノズル形成部材の外周部(端部)を覆うノズルカバー(ヘッドカバーともいう)を備える場合には、ノズル表面をクリーニングした後のインクの吹き溜まりなどが蓄積し、紙面に触れて紙面を汚す等の問題に対応するためとして、ノズルカバーの紙面対向面、側面に撥水処理を行い、ヘッドを固定するヘッドベースにも撥水処理を施すものがある。このようにノズルカバーでノズル形成部材の外周部を覆う構成は、例えば特許文献1、2に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1や2の構成では、ヘッド部材が紙ジャム時やワイピング時、応力がかかることでヘッドから剥離することを防ぐ目的で、液体吐出面の外周部をノズルカバーにより覆い保護している。この構成例を図9に示す。図9(a)は、複数のノズル孔が形成されたノズルプレートの外周部をノズルカバーで被覆した例を示す上面図である。ノズルプレートとノズルカバーは、例えば接着剤(樹脂材料の一例)により固着されている。しかしながら、このような構成では以下のような問題が生じる。この問題について図9(b)〜(d)を用いて説明する。なお、図9(b)〜(d)において、円で囲まれた図は、図9(a)の円で囲まれた部分を拡大して示す上面図であり、また、その図の右側にある図は、ノズルプレートの短手方向(ワイピング方向)から見た側断面図である。
【0007】
まず、図9(b)に示すように、ノズルプレートに対するワイピング時、ノズルカバーとノズルプレートの間に毛細管現象で溜まったインクが、インク中の溶媒成分の蒸発により増粘インクへと変化する。この図9(b)の状態にてワイピングを重ねると、図9(c)に示すように、増粘インクが引きずられ、ノズルカバーからワイピング方向の下流にかけて拡散し、ノズルプレート表面を汚染する。そして、さらにワイピングが繰り返されると、増粘インクで汚染された領域がノズルカバー先端からワイピング方向の下流にかけて成長し、その領域は図9(d)に示すようにノズル孔に達する。このようにして、増粘インクがノズル孔を塞いでしまい、不吐出(インク滴が吐出されない不具合)や吐出方向曲がり(インク滴が正確な方向に吐出されない不具合)へとつながる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ノズルプレートの外周部にノズルカバーが設けられる液体吐出ヘッドにおいて、増粘インクがノズル孔を塞ぐことによって生じるインク滴の不吐出や吐出方向曲がりを防止することができる液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の液体吐出ヘッドは、ノズル孔により記録液の吐出が行われる液体吐出面が形成されたノズルプレートを備え、ノズルプレートの外周がノズルカバーで覆われた液体吐出ヘッドにおいて、ノズルカバーは、ノズルカバーの開口部がノズルカバーの外周部よりもノズルプレートの液体吐出面に近づくようにノズルカバーの開口部方向に傾斜を持って形成され、かつ、ノズルカバーの開口部の先端は、ノズルカバーの厚さ方向に垂直な面よりもノズルプレートの液体吐出面に対して平行に近い傾斜面を有し、傾斜面を被覆し、傾斜面とノズルプレートの隙間を充填するように樹脂材料が埋められていることを特徴とする。
【0010】
本発明の液体吐出装置は、本発明の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の画像形成装置は、本発明の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノズルプレートの外周部にノズルカバーが設けられる液体吐出ヘッドにおいて、増粘インクがノズル孔を塞ぐことによって生じるインク滴の不吐出や吐出方向曲がりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズルプレート及びノズルカバーの上面及び側断面を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズルプレート及びノズルカバーの側断面を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズルカバーの側断面を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の機構部の全体構成を説明する概略構成図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の機構部の要部平面説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の機構部全体の概略構成図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の記録ヘッドの構成を示す図である。
【図9】本発明が解決する課題を説明する図であり、ノズルプレート及びノズルカバーの上面及び側断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本実施形態の液体吐出ヘッドの全体構成の一例について図4を参照して説明する。図4は本実施形態の液体吐出ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
【0016】
図4に示すように、本実施形態の液体吐出ヘッドは、例えばシリコーン部材からなる流路形成部材である流路板1と、流路板1の上面に接合したノズル形成部材(例えば金属部材)からなるノズル板(以下ノズルプレートという)2と、流路板1の下面に接合した金属部材からなる振動板3と、を有する。ノズルプレート2には、液滴(画像形成に用いられる記録液の液滴。例えばインク滴)を吐出するノズル(ノズル孔)4が複数設けられている。この液滴は、フレーム部材17に形成された共通液室10から加圧液室6を介してノズル4から吐出される。なお、加圧液室6の壁面を形成する振動板3の面外側(加圧液室6と反対面側)に、各加圧液室6に対応して、振動板3に形成した図示しない連結部を介して駆動素子としての積層型圧電素子12の上端面を接合している。また、積層型圧電素子12の下端面はベース部材13に接合している。
【0017】
また、図4に示すように、本実施形態の液体吐出ヘッドは、ノズルプレート2の外周部及び液体吐出ヘッド側面を保護するノズルカバー51が装着されている。このノズルカバー51の、少なくとも記録材面(例えば用紙等の記録部材において、液滴の吐出を受けて画像が形成される面)に対向する表面部分(外側表面)51aには、撥水処理による第2撥水層42が形成されている。この第2撥水層42は、ノズル4が形成されたノズルプレート2の表面(液体吐出面)の第1撥水層41とは異なるものである。このように、ノズルカバー51の外側表面51aに撥水層42を形成することで、ノズルプレート2の液体吐出面だけでなくノズルカバー51の外側表面も撥水効果が得られるため、ワイピング動作でノズルプレート2とノズルカバー51の両方を清掃でき、ノズルカバー51外までインクを除去できる。なお、このようなノズルカバー51における撥水処理の例については、図3を用いて後述する。
【0018】
以上のように構成された本実施形態の液滴吐出ヘッドは、例えば押し打ち方式で駆動する場合には、図示しない制御部から記録する画像に応じて複数の圧電素子12に20〜50Vの駆動パルス電圧を選択的に印加することによって、パルス電圧が印加された圧電素子12が変位して振動板3をノズルプレート2方向に変形させ、加圧液室6の容積(体積)変化によって液室6内の液体を加圧することで、ノズルプレート2のノズル4から液滴が吐出される。そして、液滴の吐出に伴って液室6内の圧力が低下し、このときの液流れの慣性によって液室6内には若干の負圧が発生する。この状態の下において、圧電素子12への電圧の印加をオフ状態にすることによって、振動板3が元の位置に戻って液室6が元の形状になるため、さらに負圧が発生する。このとき、共通液室10から液室6内に記録液が充填され、次の駆動パルスの印加に応じて液滴がノズル4から吐出される。
【0019】
次に、本実施形態の液体吐出ヘッドにおける特徴的な構成について、図1を参照して説明する。
【0020】
図1(a)は、ノズルプレート2の上面図である。図1(a)に示すように、ノズルプレート2は、その外周部(端部)がノズルカバー51により覆われている。また、ノズルプレート2の表面には、複数のノズル4が設けられており、液体吐出面を形成している。なお、液体吐出面におけるワイピング方向は、図9で示す矢印と同様である。
【0021】
図1(b)は、図1(a)の円で囲まれた部分の破線による側断面を拡大して示す図(ノズルプレート2の短手方向から見た側断面図)である。なお、図1(b)では、ノズルカバー51が取り付けられる前の状態を示している。図1(b)では、ノズルプレート2の液体吐出面において、ノズルカバー51により覆われる部分を破線で示し、また、親水化される領域(親水化領域)を一点鎖線で示している。
【0022】
図1(c)は、図1(b)のノズルプレート2に対してノズルカバー51が取り付けられた状態を示している。図1(c)に示すように、ノズルカバー51は、その開口部(ノズルカバー51とノズルプレート2とで形成される開口部)がノズルカバー51の外周部よりもノズルプレート2の液体吐出面に近づくようにノズルカバー51の開口部方向に傾斜を持って形成されている。また、ノズルカバー51の開口部の先端は、ノズルカバー51の厚さ方向に垂直な面よりも液体吐出面に対して平行に近い傾斜面を有している。また、図1(c)に示すように、傾斜面とノズルプレート2の隙間(段差)を充填するように樹脂材料が埋められている。図中の色付きの部分が樹脂材料の充填を示している。この樹脂材料は、傾斜面を被覆している。また、この樹脂材料は、接着剤であり、例えばシリコーン系接着剤等が挙げられる。この接着剤の埋め込みにより、ノズルカバー51はノズルプレート2に固着され、ノズルカバー51の開口部は塞がれた状態となる。図2に示すように、ノズルカバーの先端部が直角(矢印a方向)に切り落とされている場合の段差yと、本実施形態のようにノズルカバーの先端部がワイピング方向に対し逆テーパに切り落とされている場合の段差xとを比較すると、xの方が短い。よって、樹脂材料で隙間を充填しやすくなり、充填が不十分なことによる増粘インクの溜まりが発生しにくくなる。以上の構成によれば、ノズルカバー51とノズルプレート2の隙間に対し、液滴が侵入することなく、液滴が残留することもない。従って、液滴がノズルカバーの開口部に溜まって固着インクとなることを防止できる。その結果、図9で説明したような増粘インクのノズル4方向への拡散を防止できる。
【0023】
また、図1(c)に示すノズルプレート2の液体吐出面において、ノズルカバー51の開口部から露出する領域(ノズルカバー51に覆われていない、親水化領域の延長線上方向にある領域)は、二点鎖線で示すように撥水化領域となっており、撥水層(図4に示す第1撥水層41)が形成される。また、図1(c)に示すノズルプレート2の液体吐出面において、ノズルカバー51の傾斜面に対向する領域は、一点鎖線で示すように親水化領域となっており、親水層が形成される。このような構成により、ノズルカバー51のノズルプレート2に対する密着性(接合性)が向上する。
【0024】
なお、ノズルカバー51のノズルプレート2に対向する面(例えば図1(c)に示す内側表面)及び傾斜面に親水層を有するように構成してもよい。これにより、ノズルカバー51のノズルプレート2に対する密着性(接合性)が向上する。
【0025】
また、ノズルプレート2の液体吐出面に形成された親水層(一点鎖線で示す親水化領域に形成された親水層)は、図2に示すように、ノズルカバー51の開口部の先端からノズル孔4がある方向へ、ノズルカバー51の厚さ相当以上せり出して形成され(b>a)、親水化領域に広がる樹脂材料でノズルカバー51(の外側表面)とノズルプレート2の液体吐出面が連続面になるよう形成している。
【0026】
また、ノズルカバー51の撥水処理については、例えば以下の2通りがある。1つ目の例は、図3(a)、(b)のように撥水処理を行う。例えば速乾性の材料を用いるとして、図3(a)、(b)のように撥水処理を行う。先端が加工されていないノズルカバー51全体を撥水剤液(例えば速乾性のもの)へ単純にディッピングする。撥水剤液が乾燥すると、図3(a)に示すように、ノズルカバーの表面全体に撥水膜(太線で示す部分)が形成される。その後、図3(b)に示すように、ノズルカバー51の先端部を逆テーパ形状に加工し、傾斜面を形成する。また、図3(b)に示すように、傾斜面及び内側表面の一部(ノズルプレート2に対向する面の一部)にある撥水膜を除去する。上述したように、この撥水膜除去部分に対して親水層を形成してもよい。2つ目の例は、図3(c)、(d)のように撥水処理を行う。先端が加工されていないノズルカバー51の外側表面に撥水剤液(例えば速乾性のもの)を塗布する。撥水材液が乾燥すると、図3(c)に示すように、ノズルカバー51の外側表面に撥水膜(太線で示す部分)が形成される。その後、図3(d)に示すように、ノズルカバー51の先端部を逆テーパ形状に加工し、傾斜面を形成する。上述したように、この傾斜面及び内側表面の一部(ノズルプレート2に対向する面の一部)に対して親水層を形成してもよい。
【0027】
図3の(b)又は(d)のように加工されたノズルカバー51は、液体吐出ヘッドに勘合される際、ノズルプレート2の外周に予め塗布された接着剤を介してノズルプレート2の表面に固定される。あるいは、上記のように加工されたノズルカバー51は、液体吐出ヘッドに勘合された後で、ノズルカバー51とノズルプレート2の液体吐出面との隙間に接着剤を流し込まれて固定されてもよい。
【0028】
上記接着剤の粘度は低い方が好ましい。その理由は、ノズルカバーと液体吐出面との段差をなだらかにするよう毛管力で充填されるからである。また、接着剤自体に比較的撥水性のある接着剤を用いる方が好ましい。その理由は、接着剤へのインクの付着量を抑えることができ、増粘インクの発生を抑えられるからである。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の液体吐出ヘッドによれば、ノズルカバーが同じ板厚であっても、先端部に逆テーパを設けるようにすることで、ノズルカバーと液体吐出面(ノズル面)との間にできる段差部(隙間)を小さくすることができ、インクが段差部に溜まりにくくすることができる。よって、段差部のインク溜まりにより発生するノズル面の汚染・吐出異常を大幅に抑制できる。すなわち、ノズルプレートの外周部にノズルカバーが設けられる構成において、増粘インクがノズル孔を塞ぐことによって生じるインク滴の不吐出や吐出方向曲がりを防止することができる。また、本実施形態の液体吐出ヘッドによれば、上記段差部を小さくすることに加え、さらに段差をなだらかな傾斜にすることで、インクがノズルカバーと液体吐出面との境界に溜まりにくくすることが更にできる。また、本実施形態の液体吐出ヘッドによれば、液体吐出面とノズルカバーとの固定は、ノズルカバーの内壁(内側表面)の親水領域とノズルプレートの液体吐出面の親水領域との接着により実施しているが、テーパ断面(傾斜面)も接着固定することで、カバーテーパ部と接着剤の界面へのインクの進入を防ぐことができるため、増粘インクの発生を更に抑制できる。また、本実施形態の液体吐出ヘッドによれば、接着剤自身に撥水性を付与することで、接着剤へのインクの付着を防止でき、増粘インクの発生を更に抑制できる。
【0030】
次に、本実施形態の液体吐出ヘッドを備える画像形成装置の一例について図5及び図6を参照して説明する。なお、図5は同装置の機構部の全体構成を説明する概略構成図、図6は同機構部の要部平面説明図である。
【0031】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0032】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための上述した本実施形態の液体吐出ヘッドと、同ヘッドに駆動信号を与える電気回路基板と、同ヘッドに供給するインクを収容するタンクを一体化した液体吐出ヘッドユニットからなる記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。キャリッジ233は、本実施形態の液体吐出ヘッドを備えることから「液体吐出装置」と呼ぶことができる。
【0033】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有する液体吐出ヘッドユニット234a、234bを1つのベース部材に取り付けて構成したもので、一方のヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方のヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0034】
また、記録ヘッド234のタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0035】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0036】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド部材245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0037】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0038】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0039】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0040】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0041】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0042】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0043】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0044】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0045】
このように、この画像形成装置では、上述した本実施形態に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、信頼性が向上する。
【0046】
次に、本実施形態の液体吐出ヘッドを備える画像形成装置の他の例について図7を参照して説明する。なお、図7は同装置の機構部全体の概略構成図である。
【0047】
この画像形成装置は、ライン型画像形成装置であり、装置本体401の内部に画像形成部402等を有し、装置本体401の下方側に多数枚の記録媒体(用紙)403を積載可能な給紙トレイ404を備え、この給紙トレイ404から給紙される用紙403を取り込み、搬送機構405によって用紙403を搬送しながら画像形成部402によって所要の画像を記録した後、装置本体401の側方に装着された排紙トレイ406に用紙403を排紙する。
【0048】
また、装置本体401に対して着脱可能な両面ユニット407を備え、両面印刷を行うときには、一面(表面)印刷終了後、搬送機構405によって用紙403を逆方向に搬送しながら両面ユニット407内に取り込み、反転させて他面(裏面)を印刷可能面として再度搬送機構405に送り込み、他面(裏面)印刷終了後排紙トレイ406に用紙403を排紙する。
【0049】
ここで、画像形成部402は、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C),ブラック(K)の各色の液滴を吐出する、ライン型の4個の本実施形態に係る液体吐出ヘッドと当該液体吐出ヘッドにインクを供給するサブタンクを一体化して構成した記録ヘッド411y、411m、411c、411k(色を区別しないときには「記録ヘッド411」という。)を備え、各記録ヘッド411は液滴を吐出するノズルを形成したノズル面を下方に向けてヘッドホルダ413に装着している。
【0050】
なお、1つの記録ヘッド411は、図8に示すように、複数(この例では6個)のサブタンク一体型の本実施形態に係る液体吐出ヘッド501A〜501Fをベース部材502に所定の位置関係で配列して構成しているが、1つのフルライン型の液体吐出ヘッドで構成することもできる。
【0051】
また、各記録ヘッド411に対応してヘッドの性能を維持回復するための維持回復機構412y、412m、412c、412k(色を区別しないときには「維持回復機構412」という。)を備え、パージ処理、ワイピング処理などのヘッドの性能維持動作時には、記録ヘッド411と維持回復機構412とを相対的に移動させて、記録ヘッド411のノズル面に維持回復機構412を構成するキャッピング部材などを対向させる。
【0052】
給紙トレイ404の用紙403は、給紙コロ(半月コロ)421と図示しない分離パッドによって1枚ずつ分離され装置本体401内に給紙され、搬送ガイド部材423のガイド面423aに沿ってレジストローラ425と搬送ベルト433との間に送り込まれ、所定のタイミングでガイド部材426を介して搬送機構405の搬送ベルト433に送り込まれる。
【0053】
また、搬送ガイド部材443には両面ユニット407から送り出される用紙403を案内するガイド面423bも形成されている。更に、両面印刷時に搬送機構405から戻される用紙403を両面ユニット407に案内するガイド部材427も配置している。
【0054】
搬送機構405は、駆動ローラである搬送ローラ431と従動ローラ432との間に掛け渡した無端状の搬送ベルト433と、この搬送ベルト433を帯電させるための帯電ローラ434と、画像形成部402に対向する部分で搬送ベルト433の平面性を維持するプラテン部材435と、搬送ベルト433から送り出す用紙403を搬送ローラ431側に押し付ける押さえコロ436と、その他図示しないが、搬送ベルト433に付着した記録液(インク)を除去するためのクリーニング手段である多孔質体などからなるクリーニングローラなどを有している。なお、搬送機構としては例えばエアー吸引によって搬送ベルトに被記録媒体を吸着させるものなども使用できる。
【0055】
この搬送機構405の下流側には、画像が記録された用紙403を排紙トレイ406に送り出すための排紙ローラ438及び拍車439を備えている。
【0056】
このように構成した画像形成装置において、搬送ベルト433は矢示方向に周回移動し、高電位の印加電圧が印加される帯電ローラ434と接触することで帯電され、帯電した搬送ベルト433上に用紙403が給送されると、用紙403は搬送ベルト433に静電的に吸着される。このようにして、搬送ベルト433に強力に吸着した用紙403は反りや凹凸が校正され、高度に平らな面が形成される。
【0057】
そして、搬送ベルト433を周回させて用紙403を移動させ、記録ヘッド411から液滴を吐出することで、用紙403上に所要の画像が形成され、画像が記録された用紙403は排紙ローラ438によって排紙トレイ406に排紙される。
【0058】
このように、この画像形成装置では、本実施形態に係る液体吐出ヘッドを備えているので、吐出効率及び画像品質を改善でき、画像形成の信頼性が向上する。
【0059】
なお、上記実施形態では、プリンタ構成の画像形成装置を例に説明したが、これに限るものではなく、前述したように、例えば、プリンタ/ファックス/コピア複合機などの画像形成装置に適用することができ、また、前述したように狭義のインク以外の液体や定着処理液などを用いる画像形成装置にも適用することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態の記載に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 流路板
2 ノズル板(ノズルプレート)
3 振動板
4 ノズル孔
6 加圧液室
10 共通液室
12 積層型圧電素子
13 ベース部材
17 フレーム部材
41 第1撥水層
42 第2撥水装置
51 ノズルカバー
51 ノズルカバーの外側表面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2006−334903号公報
【特許文献2】特開2009−220421号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル孔により記録液の吐出が行われる液体吐出面が形成されたノズルプレートを備え、当該ノズルプレートの外周がノズルカバーで覆われた液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズルカバーは、当該ノズルカバーの開口部が当該ノズルカバーの外周部よりも前記ノズルプレートの液体吐出面に近づくように前記ノズルカバーの開口部方向に傾斜を持って形成され、かつ、前記ノズルカバーの開口部の先端は、当該ノズルカバーの厚さ方向に垂直な面よりも前記ノズルプレートの液体吐出面に対して平行に近い傾斜面を有し、
前記傾斜面を被覆し、前記傾斜面と前記ノズルプレートの隙間を充填するように樹脂材料が埋められていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記樹脂材料が接着剤であることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記接着剤がシリコーン系接着剤からなることを特徴とする請求項2記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズルプレートの液体吐出面は、前記ノズルカバーの開口部から露出する領域に撥水層が形成され、前記傾斜面に対向する領域に親水層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズルカバーは、外側表面に撥水層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記ノズルカバーは、前記ノズルプレートに対向する面及び前記傾斜面に親水層が形成されていることを特徴とする請求項5記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記ノズルプレートの液体吐出面に形成された親水層は、前記ノズルカバーの開口部の先端から前記ノズル孔方向へ、当該ノズルカバーの厚さ相当以上せり出して形成され、
前記ノズルカバーと前記ノズルプレートの液体吐出面が連続面になるよう形成していることを特徴としている請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドが搭載されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドが搭載されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−187799(P2012−187799A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52826(P2011−52826)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】