液体吐出ヘッドの電源装置、液体吐出装置およびプログラム
【課題】熱によるリニアレギュレータの劣化を防止する。
【解決手段】液体吐出ヘッドの電源装置11は、複数のインク吐出ヘッド15と、電源部70と、複数のリニアレギュレータ72と、温度センサ60と、電圧算出部90と、制御装置24とを備え、制御装置24は、電圧算出部90により算出された元電圧V1と複数の駆動部46のそれぞれの駆動電圧V2との電圧差(V1−V2)に所定の許容値以上のものが含まれている場合、複数の駆動部46全てについての電圧差(V1−V2)が所定の許容値未満となるように、電源部70および複数のリニアレギュレータ72のうち少なくともいずれか1つを制御する。
【解決手段】液体吐出ヘッドの電源装置11は、複数のインク吐出ヘッド15と、電源部70と、複数のリニアレギュレータ72と、温度センサ60と、電圧算出部90と、制御装置24とを備え、制御装置24は、電圧算出部90により算出された元電圧V1と複数の駆動部46のそれぞれの駆動電圧V2との電圧差(V1−V2)に所定の許容値以上のものが含まれている場合、複数の駆動部46全てについての電圧差(V1−V2)が所定の許容値未満となるように、電源部70および複数のリニアレギュレータ72のうち少なくともいずれか1つを制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源部から出力された所定の元電圧を降下させて液体吐出ヘッドの複数の駆動部に供給される駆動電圧を得るようにした、液体吐出ヘッドの電源装置、この電源装置を用いた液体吐出装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スイッチング電源装置から出力された元電圧を印刷ヘッド電圧制御回路によって降下させて複数の印刷ヘッドの駆動電圧を得るようにした印刷ヘッド電圧制御装置が記載されている。この先行技術では、印刷ヘッド電圧制御回路に安価な3端子レギュレータが用いられており、安定した出力を得るために、3端子レギュレータのIN端子とOUT端子との電圧差が固定電圧(例えば1.5V)以上に設定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−203018号公報(段落[0043]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の先行技術では、3端子レギュレータのIN端子とOUT端子との電圧差が固定電圧(例えば1.5V)以上に設定されていたが、この電圧差が大きくなり過ぎると、3端子レギュレータにおける発熱量が大きくなり過ぎるため、3端子レギュレータの回路が劣化するおそれがあった。つまり、上記先行技術では、印刷ヘッド電圧制御回路が、駆動電圧テーブルに温度環境別に記憶された駆動電圧を目標として第2の電圧制御を行っていたが(段落[0052]参照)、目標とする駆動電圧が低くなり過ぎた場合には、降圧幅(レギュレート幅)が大きくなって3端子レギュレータの発熱量が大きくなり、その回路が熱で劣化するおそれがあった。
【0005】
本発明は、熱によるリニアレギュレータの劣化を防止できる、液体吐出ヘッドの電源装置、液体吐出装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出ヘッドの電源装置は、複数の駆動部を有する1つの液体吐出ヘッド、または、前記複数の駆動部を構成する駆動部をそれぞれ1以上有する複数の液体吐出ヘッドと、所定の元電圧を出力するスイッチングレギュレータを有する電源部と、前記複数の駆動部のそれぞれに対応して設けられ、前記元電圧を、前記複数の駆動部のそれぞれの駆動電圧まで降下させて対応する前記複数の駆動部に供給する複数のリニアレギュレータと、前記液体吐出ヘッドの温度を測定するヘッド温度測定手段と、前記ヘッド温度測定手段が測定した温度に基づいて、前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれに供給すべき前記駆動電圧とを算出する電圧算出手段と、前記電源部および前記複数のリニアレギュレータを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記電圧算出手段により算出された前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれの前記駆動電圧との電圧差に所定の許容値以上のものが含まれている場合、前記複数の駆動部全てについての前記電圧差が前記所定の許容値未満となるように、前記電源部および前記複数のリニアレギュレータのうち少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする。
【0007】
この構成では、電圧算出手段により算出された元電圧と複数の駆動部のそれぞれの駆動電圧との電圧差に所定の許容値以上のものが含まれている場合、複数の駆動部全てについての電圧差が所定の許容値未満とされるので、リニアレギュレータにおける発熱を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記の構成によって、熱によるリニアレギュレータの劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す概念図である。
【図2】インクジェットプリンタに用いられるインク吐出ヘッドを示す平面図である。
【図3】インク吐出ヘッドを示す部分拡大断面図である。
【図4】インク吐出ヘッドの電源装置の構成を示すブロック図である。
【図5】リニアレギュレータの構成を示すブロック図である。
【図6】基準駆動電圧と発熱許容電圧との関係を示すグラフである。
【図7】インクジェットプリンタの制御動作を示すフロー図である。
【図8】電圧調整処理における制御動作を示すフロー図である。
【図9】元電圧と駆動電圧のうち最小値のものとの電圧差が許容値未満である状態を示すブロック図である。
【図10】第1の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧および元電圧を記載したインク吐出ヘッドの電源装置のブロック図である。
【図11】第2の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧および元電圧を記載したインク吐出ヘッドの電源装置のブロック図である。
【図12】第3の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧および元電圧を記載したインク吐出ヘッドの電源装置のブロック図である。
【図13】第4の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧および元電圧を記載したインク吐出ヘッドの電源装置のブロック図である。
【図14】画質が低下すると考えられる駆動部間の境界が印字率の低い部分に位置している状態を示すブロック図である。
【図15】画質が低下すると考えられる駆動部間の境界が印字率の高い部分に位置している状態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る液体吐出装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明に係る「液体吐出装置」をインクジェットプリンタに適用したものであり、「液体」としてインクを用いており、「液体吐出ヘッド」としてインク吐出ヘッドを用いている。また、「記録媒体」として用紙を用いている。
【0011】
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成を示す概念図である。図2は、インクジェットプリンタ10に用いられるインク吐出ヘッド15を示す平面図であり、図3は、インク吐出ヘッド15を示す部分拡大断面図である。図4は、インクジェットプリンタ10の電源装置11の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、筐体12と、4色(マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック)のインクのそれぞれに対応する4つのヘッドユニット14a〜14dと、4色のインクのそれぞれを個別に収容する4つのインクタンク16a〜16dとを備えている。また、インクジェットプリンタ10は、用紙Pを収容する用紙カセット18と、用紙Pを搬送する用紙搬送機構22と、制御装置24とを備えている。
【0013】
図1に示すように、筐体12は、その内部に各種の機器を収容する空間Sを有しており、筐体12の上面には、筐体12の外部に排出された用紙Pを受ける排紙部12aが設けられている。また、空間Sの底部には、インクタンク16a〜16dが着脱自在に配置されており、空間Sの底部におけるインクタンク16a〜16dの上方には、用紙カセット18が着脱自在に配置されている。そして、空間Sの上部には、ヘッドユニット14a〜14dおよび制御装置24が配置されており、空間Sの上下方向中央部および上部には、用紙搬送機構22が配置されている。
【0014】
図1に示すように、用紙搬送機構22は、用紙Pを水平方向に向けて搬送する搬送ユニット28と、搬送ユニット28の搬送方向上流側に設けられ、用紙カセット18に収容された用紙Pを搬送ユニット28に供給する給紙ユニット30と、搬送ユニット28の搬送方向下流側に設けられ、用紙Pを排紙部12aに排出する排紙ユニット32とを有している。搬送ユニット28による用紙Pの搬送方向が「副走査方向」となっており、用紙Pの搬送方向に対して直交し、且つ、図1の水平面に沿う方向が「主走査方向」となっている。そして、搬送ユニット28の上方には、複数のヘッドユニット14a〜14dが副走査方向に並んで配置されており、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれの下方に位置する領域が、インクが吐出される吐出領域Q1〜Q4となっている。
【0015】
図1に示すように、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれは、主走査方向に延びて設けられた略直方体状のヘッドホルダ40と、ヘッドホルダ40の下面に主走査方向に延びて設けられたインク吐出ヘッド15とを有している。つまり、インクジェットプリンタ10はライン式のプリンタである。図2および図3に示すように、インク吐出ヘッド15は、1つの流路ユニット44と、その上面に接合された複数(本実施形態では8つ)の駆動部46とを有している。
【0016】
図3に示すように、流路ユニット44は、複数の金属製プレートからなる積層体であり、最下層を構成するノズルプレート44aの下面が、複数のノズル20が形成されたノズル面20aとなっている。また、流路ユニット44の内部には、マニホールド50(図2)と、マニホールド50に連通する副マニホールド52と、副マニホールド52からアパーチャ54および圧力室56を経てノズル20に至る複数の個別インク流路58とが形成されている。図2に示すように、流路ユニット44の上面44bには、マニホールド50に連通する複数のインク供給口50aが形成されている。そして、図1に示すように、ヘッドホルダ40の内部におけるインク吐出ヘッド15の上方には、インク供給口50a(図2)に連通するリザーブタンク(図示省略)が配置されており、このリザーブタンクがチューブおよびポンプ(図示省略)を介してインクタンク16a〜16dのいずれかに接続されている。
【0017】
図2に示すように、複数の駆動部46のそれぞれは、平面視形状が略台形となるように形成されており、隣接する駆動部46どうしは、上底および下底が互いに逆方向に位置するように、主走査方向に並べて配置されている。図3に示すように、複数の駆動部46のそれぞれは、圧力室56に対応する複数のアクチュエータ47(図3中に格子線で示す。)を有しており、複数のアクチュエータ47のそれぞれは、圧電層47aと、これを挟むように配置された一対の電極47b,47cとを有している。そして、電極47b,47c間には、ドライバIC74(図4)から出力されたパルス電圧に基づいて、駆動電圧V2(例えば28V)およびグランド電圧(0V)が供給される。電極47b,47c間に駆動電圧V2が供給されると、圧電層47aが厚み方向と直交する方向に収縮され、圧電層47aの下方に位置する部分が圧力室56の内側に凸となるように変形される。これにより、圧力室56の容積が小さくなる。この状態が基本状態である。基本状態において、電極47b,47c間にグランド電圧が供給されると、圧電層47aの収縮状態が解除され、圧力室56の容積がもとの大きさに戻される。つまり、圧力室56の容積が大きくなる。したがって、基本状態が保持された状態で、電極47b,47c間にグランド電圧が瞬間的に供給されると、グランド電圧が供給されるタイミングで圧力室56の容積が変動され、圧力室56内のインクに吐出エネルギが付与される。この吐出エネルギによってノズル20からインクが吐出される。
【0018】
図2に示すように、複数の駆動部46のそれぞれの近傍に位置する部分、または、駆動部46の一部(本実施形態では流路ユニット44の上面44b)には、インク吐出ヘッド15の温度を検出する「ヘッド温度測定手段」としての温度センサ60が設けられている。そして、図4に示すように、これらの温度センサ60が制御装置24に対して電気的に接続されている。したがって、制御装置24は、温度センサ60の出力に基づいて、インク吐出ヘッド15の温度を駆動部46ごとに把握できる。なお、駆動部46と温度センサ60とは、必ずしも1対1で対応している必要はなく、複数の駆動部46に対して共通の1つの温度センサ60が対応していてもよい。この場合でも、制御装置24は、温度センサ60からの距離等に基づいて、複数の駆動部46のそれぞれの温度を把握できる。
【0019】
図4に示すように、インクジェットプリンタ10は、さらに、電源部70と、複数の駆動部46のそれぞれに対応して設けられた複数のリニアレギュレータ72と、複数の駆動部46のそれぞれに対応して設けられた複数のドライバIC74とを有している。制御装置24、電源部70、複数のリニアレギュレータ72および温度センサ60等によって、インク吐出ヘッド15の電源装置11が構成されている。電源部70から出力された元電圧V1は、複数のリニアレギュレータ72で対応する複数の駆動部46の駆動電圧V2まで降下され、この駆動電圧V2がドライバIC74から対応する駆動部46にパルス電圧として供給される。
【0020】
図4に示すように、電源部70は、所定の元電圧V1を出力するスイッチングレギュレータ76を有している。スイッチングレギュレータ76は、入力電圧を高速にスイッチングしてパルスに変換し、安定した直流の元電圧V1を得るものであり、本実施形態では、DC/DCコンバータが用いられている。DC/DCコンバータの方式は、特に限定されるものではなく、降圧(ステップダウン)、昇圧(ステップアップ)および昇降圧のいずれの方式が用いられてもよい。また、スイッチングレギュレータ76の種類は、DC/DCコンバータに限定されるものではなく、スイッチトキャパシタ(降圧)や、チャージポンプ(昇圧)等が用いられてもよい。図4に示すように、電源部70には、制御装置24の第1制御部80が接続されており、元電圧V1の大きさや、電源部70の動作のON/OFFは、第1制御部80によって制御される。
【0021】
図4に示すように、リニアレギュレータ72は、元電圧V1を抵抗などにより降圧させて、安定化した駆動電圧V2を出力するものであり、本実施形態では、3端子レギュレータが用いられている。リニアレギュレータ72の種類は、3端子レギュレータに限定されるものではなく、シャントレギュレータ等が用いられてもよい。図5に示すように、リニアレギュレータ72の入力端子72aに元電圧V1が供給されると、当該元電圧V1が対応する駆動部46の駆動電圧V2まで降下され、出力端子72bから出力される。図4に示すように、複数のリニアレギュレータ72のそれぞれには、制御装置24の第1制御部80が接続されており、リニアレギュレータ72のレギュレート幅の大きさや、動作のON/OFFは、第1制御部80によって制御される。なお、本実施形態では、電源部70から出力された元電圧V1が、降圧または昇圧されることなく、そのまま複数のリニアレギュレータ72に供給される。また、複数のリニアレギュレータ72から出力された駆動電圧V2が、降圧または昇圧されることなく、そのまま複数のドライバIC74に供給される。
【0022】
図5に示すように、リニアレギュレータ72において安定した駆動電圧V2を得るためには、元電圧V1と駆動電圧V2との電圧差(V1−V2)を所定の固定電圧Vs以上(V1−V2≧Vs)に設定する必要がある。本実施形態では、固定電圧Vsが1.5Vに設定されており、元電圧V1は、基準駆動電圧V2max(例えば28V)より固定電圧Vs(1.5V)だけ高い電圧(29.5V)に設定されている。基準駆動電圧V2maxは、設計により予め定められた駆動電圧V2の基準値であり、元電圧V1が変更されると、それに伴って同じ値だけ基準駆動電圧V2maxも変更される。
【0023】
入力端子72aと出力端子72bとの間の電圧差(V1−V2)が大きくなり過ぎると、リニアレギュレータ72における発熱量が大きくなり過ぎるため、リニアレギュレータ72の回路が劣化するおそれがある。そのため、図6に示すように、リニアレギュレータ72の駆動電圧V2については、基準駆動電圧V2max(28V)との関係で発熱許容電圧Vt(例えば1.5V)が設定されており、基準駆動電圧V2max(28V)から発熱許容電圧Vt(1.5V)を引いた値が駆動電圧の許容最小値V2min(26.5V)となっている。駆動電圧V2は、基準駆動電圧V2max(28V)と許容最小値V2min(26.5V)との間で設定される必要がある。なお、この発熱許容電圧Vtの設定には、図6に示すように基準駆動電圧V2maxが高くなるとリニアレギュレータ72を流れる電流が大きくなり、発熱量が増えることが反映されている。
【0024】
図4に示すように、ドライバIC74は、駆動部46に接続されたフレキシブルプリント配線基板(図示省略)に搭載されており、複数のドライバIC74のそれぞれには、制御装置24の第2制御部82が接続されている。ドライバIC74では、リニアレギュレータ72から供給された駆動電圧V2と、第2制御部82から供給された印刷データとに基づいてパルス電圧が生成され、このパルス電圧が対応する駆動部46の複数のアクチュエータ47(図3)のそれぞれに供給される。ドライバIC74の動作のON/OFFは、第2制御部82によって制御される。
【0025】
図4に示すように、制御装置24は、図示しないCPUと、CPUが実行するプログラムや各種のデータを書き替え可能に記憶する不揮発メモリと、プログラムの実行時にデータを一時的に記憶するRAMとを有するコンピュータである。制御装置24がプログラムに従って動作することによって、画像データ記憶部84、吐出情報記憶部86、「ヘッド温度予測手段」としての予測温度算出部88、「電圧算出手段」としての電圧算出部90、第1制御部80および第2制御部82が実現される。つまり、制御装置24が各種の制御を行う「制御手段」として機能する。
【0026】
図4に示すように、画像データ記憶部84は、パーソナルコンピュータ等(図示省略)から送信されてきた画像データを記憶するものである。画像データは、用紙P(図1)の印刷領域に対応する各画素について、色の濃度値を有している。第2制御部82は、画像データ記憶部84に記憶された画像データに基づいて印刷データを生成するとともに、当該印刷データをドライバIC74に供給するものである。印刷データは、各画素について、色の濃度値に応じて設定された吐出量データを有しており、当該吐出量データを含む吐出情報が第2制御部82から吐出情報記憶部86に供給される。また、第2制御部82は、ドライバIC74の動作のON/OFFを制御する。
【0027】
図4に示すように、吐出情報記憶部86は、第2制御部82から与えられたインクの吐出情報を記憶するものである。「ヘッド温度予測手段」としての予測温度算出部88は、インク吐出ヘッド15の将来の温度を予測するものである。予測温度算出部88は、温度センサ60で測定された温度と、インクの吐出情報から定まる温度上昇の程度等とに基づいて、インク吐出ヘッド15の将来の温度を算出する。例えば、吐出情報に含まれる吐出量データに基づいてインクの吐出量が多くなると予測できる場合には、予測温度算出部88は、インク吐出ヘッド15の将来の温度を高く算出する。
【0028】
図4に示すように、「電圧算出手段」としての電圧算出部90は、「ヘッド温度測定手段」としての温度センサ60で測定された温度、または、「ヘッド温度予測手段」としての予測温度算出部88で算出された温度に基づいて、元電圧V1と、複数の駆動部46のそれぞれに供給すべき駆動電圧V2とを算出するものである。図5に示すように、本実施形態では、基準駆動電圧V2maxV2maxを28Vに設定したとすると、固定電圧Vsが1.5Vに設定されているので、電圧算出部90では、元電圧V1が「基準駆動電圧V2max+固定電圧Vs」の式に従って29.5Vと算出される。図3に示すように、本実施形態のアクチュエータ47は、圧電式アクチュエータであり、圧電層47aの温度が低いほど同じ変形をさせるのに高い駆動電圧V2を供給する必要がある。そして、インク吐出ヘッド15の周囲の外気温度が低ければ全てのリニアレギュレータ72における駆動電圧V2が高くなるので、先に述べたように全ての駆動電圧V2を基準駆動電圧V2maxと許容最小値V2minとの間で設定するためには、元電圧V1を高くする必要がある。温度センサ60で測定された温度、または、予測温度算出部88で算出された温度とリニアレギュレータ72における駆動電圧V2との関係は、予め制御装置24内に記憶されており、電圧算出部90は、それぞれのリニアレギュレータ72における駆動電圧V2のうち最大値に合わせて元電圧V1を算出する。具体的には、リニアレギュレータ72における駆動電圧V2のうち最大値に固定電圧Vs(1.5V)を加えたものが元電圧V1となる。なお、複数のリニアレギュレータ72の特性のばらつきなどを考慮して、それぞれのリニアレギュレータ72について、温度と駆動電圧V2との関係を記憶しておき、リニアレギュレータ72ごとに駆動電圧V2および元電圧V1を算出してもよい。
【0029】
それぞれのリニアレギュレータ72における駆動電圧V2は、インク吐出ヘッド15の温度に応じて基準駆動電圧V2maxから補正された値として算出される。つまり、インク吐出ヘッド15の温度が上昇すると、同じ駆動電圧V2を供給したとしてもノズル20から吐出されるインクの量が多くなる。そこで、電圧算出部90では、インクの吐出量を最適化するために、駆動電圧V2が、温度に応じて基準駆動電圧V2maxよりも低くなるように算出される。本実施形態では、インク吐出ヘッド15の温度がインクの吐出履歴等に従って低くなることはないと考えられるため、駆動電圧V2が基準駆動電圧V2maxより高くなることはない。
【0030】
図4に示すように、第1制御部80は、電源部70から出力される元電圧V1の大きさや、電源部70の動作のON/OFFを制御するとともに、リニアレギュレータ72のレギュレート幅の大きさや、その動作のON/OFFを制御するものである。制御装置24は、電圧算出部90により算出された元電圧V1と、電圧算出部90により算出された駆動電圧V2のうち最小値のものとの電圧差(V1−V2)が所定の許容値以上であった場合、電源部70による元電圧V1の出力、複数のリニアレギュレータ72による駆動電圧V2の供給および複数の駆動部46の駆動のうち少なくともいずれか1つを停止させ、または、元電圧V1および駆動電圧V2の少なくともいずれか一方を調整して全てのリニアレギュレータ72における電圧差(V1−V2)を所定の許容値未満とさせるように、第1制御部80および第2制御部82によって電源部70、複数のリニアレギュレータ72および複数の駆動部46を制御する。図5に示すように、本実施形態では、基準駆動電圧V2maxが28Vであり、固定電圧Vsが1.5Vであり、元電圧V1は、基準駆動電圧V2max(28V)より固定電圧Vs(1.5V)だけ高い29.5Vである。また、図6のグラフより、発熱許容電圧Vtは1.5Vである。したがって、駆動電圧の許容最小値V2minは26.5Vであり、上記所定の許容値すなわち許容される電圧差(V1−V2min)は3Vである。また、第1制御部80は、予め選択された動作モードが電圧調整モード(図8)であるか否かを判断する。この判断は、動作モードの入力スイッチ等(図示省略)から入力されたデータに基づいて行われる。本実施形態では、電圧調整モード(図8,ステップS31〜S37)と停止モード(図7,ステップS13〜ステップ23)の2つのモードが設定されている。
【0031】
図7は、インクジェットプリンタ10の制御動作を示すフロー図であり、図8は、電圧調整処理における制御動作を示すフロー図である。図9は、元電圧V1と駆動電圧V2のうち最小値のものとの電圧差(V1−V2)が許容値未満である状態を示すブロック図である。以下には、図7および図8に従って、制御装置24によるインクジェットプリンタ10の制御動作を説明する。
【0032】
図7に示すように、制御装置24の制御動作が実行されると、まず、ステップS1において、インクジェットプリンタ10が印刷待機状態にされる。印刷待機状態は、第2制御部82(図4)からドライバIC74(図4)に供給される印刷データに基づいて印刷動作が可能な状態である。インクジェットプリンタ10が印刷待機状態になると、ステップS3において、温度センサ60でインク吐出ヘッド15の温度が測定され、または、予測温度算出部88でインク吐出ヘッド15の温度が予測される。そして、ステップS5において、元電圧V1と駆動電圧V2とが電圧算出部90で算出される。
【0033】
ステップS7では、元電圧V1と、駆動電圧V2のうち最小値のものとの電圧差(V1−V2)が所定の許容値(3V)以上であるか否かが判断される。そして、「NO」すなわち許容値以上でないと判断されると、ステップS9において、印刷データに基づく通常の印刷動作が実行される。印刷動作が終了すると、ステップS11において、インクジェットプリンタ10の動作を終了するか否かが判断され、「YES」と判断されると終了し、「NO」と判断されるとステップS1に戻る。一方、ステップS7において、「YES」すなわち許容値(3V)以上であると判断されると、ステップS12に進む。図9の例では、元電圧V1(29.5V)と駆動電圧V2のうち最小値のもの(26.6V)との電圧差(V1−V2)が2.9Vであり、ステップS7において「NO」と判断される。図10の例では、元電圧V1(29.5V)と駆動電圧V2のうち最小値のもの(26.0V)との電圧差(V1−V2)が3.5Vであり、ステップS7において「YES」と判断される。
【0034】
ステップS12では、動作モードが電圧調整モードであるか否かが判断され、「NO」すなわち電圧調整モードでないと判断されると、ステップS13〜S23において、インク吐出ヘッド15の動作を停止させる停止モードが実行される。停止モードでは、まず、ステップS13において、印刷動作の停止処理が実行される。つまり、図4に示すように、電源部70による元電圧V1の出力、複数のリニアレギュレータ72による駆動電圧V2の供給および複数の駆動部46の駆動のうち少なくともいずれか1つを停止させるように、第1制御部80および第2制御部82によって電源部70、複数のリニアレギュレータ72および複数の駆動部46が制御される。
【0035】
印刷動作の停止後は、ステップS15において、温度センサ60でインク吐出ヘッド15の温度が測定され、または、予測温度算出部88でインク吐出ヘッド15の温度が予測される。続いて、ステップS17において、元電圧V1と駆動電圧V2とが電圧算出部90で算出され、ステップS19において、元電圧V1と、駆動電圧V2のうち最小値のものとの電圧差(V1−V2)が所定の許容値(3V)以上であるか否かが判断される。そして、「YES」すなわち許容値(3V)以上であると判断されると、ステップS15に戻って停止状態が継続され、「NO」すなわち許容値(3V)以上でないと判断されると、ステップS21に進む。
【0036】
ステップS21では、制御装置24によって所定の待機時間が経過したか否かが判断され、「NO」と判断されるとステップS15に戻り、所定の待機時間が経過するまで待機される。一方、「YES」と判断されると、ステップS23で印刷動作の再開処理が実行された後、ステップS1に戻る。印刷動作の再開処理では、電源部70による元電圧V1の出力、複数のリニアレギュレータ72による駆動電圧V2の供給、および複数の駆動部46の駆動のうち停止しているものを再開させるように、第1制御部80および第2制御部82によって電源部70、複数のリニアレギュレータ72および複数の駆動部46が制御される。
【0037】
一方、ステップS12において「YES」と判断されると、ステップS25において電圧調整処理が実行される。図8に示すように、電圧調整処理が開始されると、まず、ステップS31において駆動電圧V2が調整され、ステップS33において元電圧V1が調整される。そして、ステップS35において、電圧算出部90(図4)により算出された元電圧V1が上限値を超えるか否かが判断され、且つ、電圧算出部90(図4)により算出された複数の駆動部46(図4)のそれぞれの駆動電圧V2のうちいずれかが下限値未満となるか否かが判断される。上限値および下限値は、電圧算出部90において予め設定されており、入力装置(図示省略)によって適宜変更できるようになっている。つまり、電圧算出部90が上限値および下限値を設定する「限界値設定手段」として機能する。ステップS35において「NO」すなわち上限値および下限値を超えないと判断されるとステップS1に戻る。一方、「YES」すなわち上限値および下限値を超えると判断されるとステップS37を経てステップS1に戻る。ステップS37において、制御部24(図4)は、元電圧V1が上限値を超える場合、元電圧V1を上限値とさせるよう電源部70(図4)を制御し、且つ、複数の駆動部46のそれぞれの駆動電圧V2のうちいずれかが下限値未満となる場合、下限値未満となる駆動電圧V2を下限値とさせるよう複数のリニアレギュレータ72(図4)を制御する。
【0038】
以下には、ステップS31およびS33における電圧調整処理について具体的に説明する。以下の説明で用いる図9〜図15では、8つの駆動部46に対応させて符号46a〜46hを付し、8つのリニアレギュレータ72に対応させて符号72a〜72hを付している。また、電源部70には元電圧V1の値を記載し、リニアレギュレータ72a〜72hには駆動電圧V2の値を記載している。なお、以下のいずれの電圧調整処理を選択するかは、ユーザの判断により決定されてもよいし、印刷データ等に基づいて制御装置24によって自動的に決定されてもよい。
【0039】
[第1の電圧調整処理]
図9は、電圧調整処理前の駆動電圧V2および元電圧V1を記載したインク吐出ヘッドの電源装置11のブロック図である。図10は、第1の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧V2および元電圧V1を記載したインク吐出ヘッドの電源装置11のブロック図である。図9に示すように、電圧算出部90(図4)で算出された駆動電圧V2は、複数の駆動部46a〜46hのそれぞれに理想的な駆動電圧V2であり、電圧算出部90(図4)で算出された元電圧V1は、電源部70に理想的な元電圧V1である。したがって、図9の例のように、元電圧V1(29.5V)と、駆動電圧V2のうち最小値のもの(26.6V)との電圧差(V1−V2)が所定の許容値(3V)未満であれば、駆動電圧V2および元電圧V1を調整する必要はない。
【0040】
一方、図10に示すように、1つの駆動部46cに係る理想的な駆動電圧V2が著しく低い値(26.0V)である場合には、リニアレギュレータ72cにおける元電圧V1(29.5V)と駆動電圧V2(26.0V)との電圧差(V1−V2)が所定の許容値(3V)以上となるため、理想的な駆動電圧V2(26.0V)を採用することができない。この場合、第1の電圧調整処理では、制御装置24(図4)が、電源部70から出力する元電圧V1を小さくさせるように電源部70を制御し、且つ、電圧差(V1−V2)が所定の許容値以上の駆動部46cに係る駆動電圧V2を大きくさせるように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。図10の例では、制御装置24(図4)は、電源部70から出力する元電圧V1を29.5Vから29.2Vに降圧させるように電源部70を制御し、且つ、駆動部46cに係る駆動電圧V2を26.0Vから26.3Vに昇圧させるように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。これにより、電圧差(V1−V2)は所定の許容値(3V)未満の2.9Vになる。元電圧V1を29.5Vから29.2Vに降圧させると、これに伴って駆動電圧V2の上限が28.0Vから27.7Vとなる。したがって、最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bでは、駆動電圧V2が28.0Vから27.7Vに降圧される。
【0041】
ここで、電圧差(V1−V2)を所定の許容値(3V)未満にするために、駆動部46cの駆動電圧V2だけを0.6V昇圧させる場合を考える。この場合、駆動電圧V2と理想的な駆動電圧V2との電圧差Vzに着目すると、駆動部46cに係る電圧差Vzは+0.6Vとなり、他の駆動部46a,46b,46d〜46hに係る電圧差Vzは0Vとなる。したがって、駆動部46cに係る画像の品質だけが著しく低下し、その部分だけが目立つようになる。これに対し、図10に示した第1の電圧調整処理では、駆動部46cに係る電圧差Vzが+0.3Vとなり、駆動部46bに係る電圧差Vzが−0.3Vとなり、他の駆動部46a,46d〜46hに係る電圧差Vzは0Vとなるので、駆動部46cまたは駆動部46bに係る画像の品質だけが著しく低下することはなく、より均質な画像を得ることができる。
【0042】
[第2の電圧調整処理]
図11は、第2の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧V2および元電圧V1を記載したインク吐出ヘッドの電源装置11のブロック図である。第2の電圧調整処理は、第1の電圧調整処理において、1つの駆動部46cに係るリニアレギュレータ72cにおける駆動電圧V2が極めて低い値(25.5V)になっている場合の処理である。第2の電圧調整処理では、制御装置24(図4)が、電源部70から出力する元電圧V1を小さくさせるように電源部70を制御し、且つ、電圧差(V1−V2)が所定の許容値以上の駆動部46cに係る駆動電圧V2を大きくさせるように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。図11の例では、制御装置24(図4)は、電源部70から出力する元電圧V1を29.5Vから29.0Vに降圧させるように電源部70を制御し、且つ、駆動部46cに係る駆動電圧V2を25.5Vから26.1Vに昇圧させるように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。これにより、電圧差(V1−V2)は所定の許容値(3V)未満の2.9Vになる。元電圧V1を29.5Vから29.0Vに降圧させると、これに伴って駆動電圧V2の上限が28.0Vから27.5Vとなる。したがって、最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bでは、駆動電圧V2が0.5V降圧されて27.5Vにされる。また、2番目に大きい駆動電圧V2に係る駆動部46hでも、駆動電圧V2が0.3V降圧されて27.5Vにされる。つまり、駆動電圧V2の最大値が27.5Vを超えることはない。
【0043】
[第3の電圧調整処理]
図12は、第3の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧V2および元電圧V1を記載したインク吐出ヘッドの電源装置11のブロック図である。図12に示すように、第3の電圧調整処理では、3つ以上の駆動部46a〜46hが所定の方向に並べて配置され、当該3つ以上の駆動部46a〜46hのうち駆動電圧V2が最小となる駆動部46cと駆動電圧V2が最大となる駆動部46bとが隣接することが前提となる。第3の電圧調整処理において、制御装置24(図4)は、最小の駆動電圧V2に係る駆動部46cを基準として最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bが存在する側とは反対側に存在する全ての駆動部46d〜46hの駆動電圧V2を電圧算出部90(図4)により算出された駆動電圧V2よりも大きくさせるように複数のリニアレギュレータ72d〜72hを制御し、且つ、最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bを基準として最小の駆動電圧V2に係る駆動部46cが存在する側とは反対側に存在する全ての駆動部46a(この例では1つのみ)の駆動電圧V2を電圧算出部90(図4)により算出された駆動電圧V2よりも小さくさせるようにリニアレギュレータ72aを制御する。図12の例では、制御装置24(図4)は、駆動部46d〜46hの駆動電圧V2を0.4Vだけ大きくするように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御し、且つ、駆動部46aの駆動電圧V2を0.2Vだけ小さくするように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。なお、図12の例では、駆動部46fの駆動電圧V2が理想的な駆動電圧V2よりも0.3Vだけ大きくなっており、駆動部46hの駆動電圧V2が理想的な駆動電圧V2と同じになっている。これは、駆動部46d〜46hの駆動電圧V2を一律に0.4Vだけ大きくした後に、上限値を超える駆動部46f,46hの駆動電圧V2を、上限値の27.8Vに再調整したためである。
【0044】
図10に示した第1の電圧調整処理では、最小の駆動電圧V2に係る駆動部46cについて、駆動電圧V2がプラスに電圧調整され、最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bについて、駆動電圧V2がマイナスに電圧調整される。したがって、これらの駆動部46c,46bでは、電圧調整後の駆動電圧V2と理想的な駆動電圧V2との電圧差Vzが大きくなる。図10の例では、駆動部46cに係る電圧差Vzが+0.3Vとなり、駆動部46bに係る電圧差Vzが−0.3Vとなる。したがって、最小の駆動電圧V2に係る駆動部46cと最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bとが隣接する場合、これらの駆動部46c,46bの間、駆動部46cと他の駆動部46dとの間、および駆動部46bと他の駆動部46aとの間において、電圧差Vzの程度に差が生じ、これらの3つの境界において画像の品質が低下するおそれがある。これに対し、図12に示した第3の電圧調整処理では、駆動部46c,46bの境界を挟んだ両側のそれぞれにおいて、電圧差Vzがほぼ均一にされるので、画像の品質が低下するおそれのある境界を駆動部46c,46bの間だけにすることができ、より均質な画像を得ることができる。
【0045】
[第4の電圧調整処理]
図13は、第4の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧V2および元電圧V1を記載したインク吐出ヘッドの電源装置11のブロック図である。図13に示すように、第4の電圧調整処理では、3つ以上の駆動部46a〜46hが所定の方向に並べて配置され、当該3つ以上の駆動部46a〜46hのうち駆動電圧V2が最小となる駆動部46eと駆動電圧V2が最大となる駆動部46bとの間に他の駆動部46c,46dが存在することが前提となる。第4の電圧調整処理において、制御装置24(図4)は、最小の駆動電圧V2に係る駆動部46eを基準として最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bが存在する側とは反対側に存在する全ての駆動部46f〜46hの駆動電圧V2を電圧算出部90(図4)により算出された駆動電圧V2よりも大きくさせるように複数のリニアレギュレータ72f〜72hを制御し、且つ、最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bを基準として最小の駆動電圧V2に係る駆動部46eが存在する側とは反対側に存在する全ての駆動部46a(この例では1つのみ)の駆動電圧V2を電圧算出部90(図4)により算出された駆動電圧V2よりも小さくさせるように複数のリニアレギュレータ72aを制御し、且つ、最小の駆動電圧V2に係る駆動部46eと最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bとの間に存在する他の駆動部46c,46dの駆動電圧V2を電圧算出部90(図4)により算出された駆動電圧V2と同じにさせるように複数のリニアレギュレータ72c,72dを制御する。第4の電圧調整処理では、駆動電圧V2がプラスに電圧調整される駆動部46cと、駆動電圧V2がマイナスに電圧調整される駆動部46bとの間に、駆動電圧V2が調整されない駆動部46c,46dを配置しているので、駆動部46a〜46hの全体として、電圧差Vzのバランスを高めることができる。
【0046】
[第5の電圧調整処理]
図14は、画質が低下すると考えられる駆動部間の境界が印字率の低い部分に位置している状態を示すブロック図である。図15は、画質が低下すると考えられる駆動部間の境界が印字率の高い部分に位置している状態を示すブロック図である。図4に示すように、制御装置24の第2制御部82は、インク吐出ヘッド15から用紙P(図1)に対して吐出されるインクの吐出情報に基づいて用紙P(図1)の所定領域に対する印字率を算出する「印字率算出手段」としての機能を有している。第5の電圧調整処理では、第2制御部82で算出された印字率が所定値より高い場合、制御装置24(図4)は、電源部70から出力する元電圧V1を小さくさせるように電源部70を制御し、且つ、電圧差(V1−V2)が所定の許容値以上の駆動部46に係る駆動電圧V2を大きくさせるように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。
【0047】
図14に示すように、用紙P(図1)の印刷領域に、ベタ印刷等のような印字率が高い(高Duty)部分と、テキスト印字等のような印字率が低い(低Duty)部分とが存在していると、電圧調整処理の態様によっては、印字率が高い(高Duty)部分に画像品質の低下が生じる場合がある。印字率が高い部分は画像品質の低下が視認されやすいので問題となりやすい。
【0048】
図14の例は、第1の電圧調整処理(図10)を示すものであり、駆動部46b,46c間、駆動部46a,46b間、および駆動部46c,46d間において電圧差Vzの程度に差が生じている。したがって、これらの境界に対応する部分(図14中の一点鎖線で示す部分)で画像品質の低下が生じるおそれがある。図14の例では、これらの境界がテキスト等の印字率が低い(低Duty)部分に対応しているため、画像品質の低下が生じても目立つことはなく、画像全体の品質が損なわれることはない。しかし、これらの境界がベタ塗り等の印字率が高い(高Duty)部分に対応するならば、画像の品質低下が目立ち、画像全体の品質が損なわれることになる。そこで、この場合、制御装置24(図4)は、インク吐出ヘッド15の印刷を停止させる。
【0049】
図15の例は、第3の電圧調整処理(図12)を示すものであり、駆動部46b,46c間および駆動部46g,46h間で電圧差Vzの程度に差が生じている。したがって、これらの境界に対応する部分(図15中の一点鎖線で示す部分)で画像品質の低下が生じるおそれがある。図15の例では、これらの境界の一部がベタ塗り等の印字率が高い(高Duty)部分に対応しているため、画像品質の低下が目立ち、画像全体の品質が損なわれるおそれがある。そこで、制御装置24(図4)は、インク吐出ヘッド15の印刷を停止させるか、または、電圧調整処理の態様を、駆動部46g,46h間で電圧差Vzの程度に差が生じない他の態様に切り替える。図15の例では、他の態様として第1の電圧調整処理(図14)に切り替えることが考えられる。この場合、用紙P(図1)の1枚を単位として印字率を監視し、用紙P(図1)に対する印刷を開始する前に電圧調整処理の態様を切り替えてもよい。また、用紙P(図1)の個別の領域を単位として印字率を監視し、当該領域に対する印刷を開始する前に電圧調整処理の態様を切り替えてもよい。
【0050】
上述したように、印字率が高い部分は画像品質の低下が視認されやすいので問題となりやすい。そこで、用紙P(図1)の印刷領域に、ベタ印刷等のような印字率が高い部分がある場合は、元電圧V1を低減するように電圧調整処理を行うのがよい。これは、図6に示すように、基準駆動電圧V2maxが小さいと、発熱許容電圧Vtが大きくなるので、印字途中で再度電圧を調整したりすることによる印字率が高い部分の画像の品質低下が抑制できるからである。つまり、図7では、印字待機時における印刷可否または電圧調整の判断がなされているが、印字途中に一連の判断および制御がなされてもよく、この場合に印字率が高い部分の画像の品質低下を抑制できる。
【0051】
(他の実施形態)
図2に示すように、上述の実施形態では、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれが、複数(例えば8個)の駆動部46を有する1つのインク吐出ヘッド15を備えているが、他の実施形態では、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれが、上記の複数(例えば8個)の駆動部46を構成する駆動部46をそれぞれ1以上有する複数の液体吐出ヘッド15を備えていてもよい。例えば、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれは、上述の8個の駆動部46を構成する駆動部46を1個ずつ有する8個のインク吐出ヘッド15、当該駆動部46を2個ずつ有する4個のインク吐出ヘッド15、および当該駆動部46を4個ずつ有する2個のインク吐出ヘッド15等を備えていてもよい。
【0052】
また、図7に示すように、上述の実施形態では、印刷待機時に実行されるステップS7において印刷可否の判断が行われているが、他の実施形態では、印刷動作の最中に印刷可否の判断が行われてもよい。さらに、印刷動作の最中に、印刷可否の判断と、電圧調整処理(図8)、または、停止処理から再開処理(図7)までの制御動作とが一連に行われてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、電圧調整処理において、元電圧V1と駆動電圧V2の両方の調整が行われているが、他の実施形態では、元電圧V1および駆動電圧V2の少なくともいずれか一方を調節するようにしてもよい。
【0054】
そして、図1に示すように、上述の実施形態では、本発明を、インクを吐出するインクジェットプリンタに適用しているが、他の実施形態では、本発明を、他の液体を吐出する液体吐出装置に適用してもよい。さらに、液体吐出方式としては、アクチュエータ方式に代えて、発熱素子で液体の体積を膨張させたときの圧力を利用して吐出させる方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0055】
V1… 元電圧
V2… 駆動電圧
10… インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
15… インク吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)
24… 制御装置(制御手段)
46… 駆動部
60… 温度センサ(ヘッド温度測定手段)
70… 電源部
72… リニアレギュレータ
90… 電圧算出部(電圧算出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源部から出力された所定の元電圧を降下させて液体吐出ヘッドの複数の駆動部に供給される駆動電圧を得るようにした、液体吐出ヘッドの電源装置、この電源装置を用いた液体吐出装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スイッチング電源装置から出力された元電圧を印刷ヘッド電圧制御回路によって降下させて複数の印刷ヘッドの駆動電圧を得るようにした印刷ヘッド電圧制御装置が記載されている。この先行技術では、印刷ヘッド電圧制御回路に安価な3端子レギュレータが用いられており、安定した出力を得るために、3端子レギュレータのIN端子とOUT端子との電圧差が固定電圧(例えば1.5V)以上に設定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−203018号公報(段落[0043]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の先行技術では、3端子レギュレータのIN端子とOUT端子との電圧差が固定電圧(例えば1.5V)以上に設定されていたが、この電圧差が大きくなり過ぎると、3端子レギュレータにおける発熱量が大きくなり過ぎるため、3端子レギュレータの回路が劣化するおそれがあった。つまり、上記先行技術では、印刷ヘッド電圧制御回路が、駆動電圧テーブルに温度環境別に記憶された駆動電圧を目標として第2の電圧制御を行っていたが(段落[0052]参照)、目標とする駆動電圧が低くなり過ぎた場合には、降圧幅(レギュレート幅)が大きくなって3端子レギュレータの発熱量が大きくなり、その回路が熱で劣化するおそれがあった。
【0005】
本発明は、熱によるリニアレギュレータの劣化を防止できる、液体吐出ヘッドの電源装置、液体吐出装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出ヘッドの電源装置は、複数の駆動部を有する1つの液体吐出ヘッド、または、前記複数の駆動部を構成する駆動部をそれぞれ1以上有する複数の液体吐出ヘッドと、所定の元電圧を出力するスイッチングレギュレータを有する電源部と、前記複数の駆動部のそれぞれに対応して設けられ、前記元電圧を、前記複数の駆動部のそれぞれの駆動電圧まで降下させて対応する前記複数の駆動部に供給する複数のリニアレギュレータと、前記液体吐出ヘッドの温度を測定するヘッド温度測定手段と、前記ヘッド温度測定手段が測定した温度に基づいて、前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれに供給すべき前記駆動電圧とを算出する電圧算出手段と、前記電源部および前記複数のリニアレギュレータを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記電圧算出手段により算出された前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれの前記駆動電圧との電圧差に所定の許容値以上のものが含まれている場合、前記複数の駆動部全てについての前記電圧差が前記所定の許容値未満となるように、前記電源部および前記複数のリニアレギュレータのうち少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする。
【0007】
この構成では、電圧算出手段により算出された元電圧と複数の駆動部のそれぞれの駆動電圧との電圧差に所定の許容値以上のものが含まれている場合、複数の駆動部全てについての電圧差が所定の許容値未満とされるので、リニアレギュレータにおける発熱を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記の構成によって、熱によるリニアレギュレータの劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す概念図である。
【図2】インクジェットプリンタに用いられるインク吐出ヘッドを示す平面図である。
【図3】インク吐出ヘッドを示す部分拡大断面図である。
【図4】インク吐出ヘッドの電源装置の構成を示すブロック図である。
【図5】リニアレギュレータの構成を示すブロック図である。
【図6】基準駆動電圧と発熱許容電圧との関係を示すグラフである。
【図7】インクジェットプリンタの制御動作を示すフロー図である。
【図8】電圧調整処理における制御動作を示すフロー図である。
【図9】元電圧と駆動電圧のうち最小値のものとの電圧差が許容値未満である状態を示すブロック図である。
【図10】第1の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧および元電圧を記載したインク吐出ヘッドの電源装置のブロック図である。
【図11】第2の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧および元電圧を記載したインク吐出ヘッドの電源装置のブロック図である。
【図12】第3の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧および元電圧を記載したインク吐出ヘッドの電源装置のブロック図である。
【図13】第4の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧および元電圧を記載したインク吐出ヘッドの電源装置のブロック図である。
【図14】画質が低下すると考えられる駆動部間の境界が印字率の低い部分に位置している状態を示すブロック図である。
【図15】画質が低下すると考えられる駆動部間の境界が印字率の高い部分に位置している状態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る液体吐出装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明に係る「液体吐出装置」をインクジェットプリンタに適用したものであり、「液体」としてインクを用いており、「液体吐出ヘッド」としてインク吐出ヘッドを用いている。また、「記録媒体」として用紙を用いている。
【0011】
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成を示す概念図である。図2は、インクジェットプリンタ10に用いられるインク吐出ヘッド15を示す平面図であり、図3は、インク吐出ヘッド15を示す部分拡大断面図である。図4は、インクジェットプリンタ10の電源装置11の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、筐体12と、4色(マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック)のインクのそれぞれに対応する4つのヘッドユニット14a〜14dと、4色のインクのそれぞれを個別に収容する4つのインクタンク16a〜16dとを備えている。また、インクジェットプリンタ10は、用紙Pを収容する用紙カセット18と、用紙Pを搬送する用紙搬送機構22と、制御装置24とを備えている。
【0013】
図1に示すように、筐体12は、その内部に各種の機器を収容する空間Sを有しており、筐体12の上面には、筐体12の外部に排出された用紙Pを受ける排紙部12aが設けられている。また、空間Sの底部には、インクタンク16a〜16dが着脱自在に配置されており、空間Sの底部におけるインクタンク16a〜16dの上方には、用紙カセット18が着脱自在に配置されている。そして、空間Sの上部には、ヘッドユニット14a〜14dおよび制御装置24が配置されており、空間Sの上下方向中央部および上部には、用紙搬送機構22が配置されている。
【0014】
図1に示すように、用紙搬送機構22は、用紙Pを水平方向に向けて搬送する搬送ユニット28と、搬送ユニット28の搬送方向上流側に設けられ、用紙カセット18に収容された用紙Pを搬送ユニット28に供給する給紙ユニット30と、搬送ユニット28の搬送方向下流側に設けられ、用紙Pを排紙部12aに排出する排紙ユニット32とを有している。搬送ユニット28による用紙Pの搬送方向が「副走査方向」となっており、用紙Pの搬送方向に対して直交し、且つ、図1の水平面に沿う方向が「主走査方向」となっている。そして、搬送ユニット28の上方には、複数のヘッドユニット14a〜14dが副走査方向に並んで配置されており、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれの下方に位置する領域が、インクが吐出される吐出領域Q1〜Q4となっている。
【0015】
図1に示すように、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれは、主走査方向に延びて設けられた略直方体状のヘッドホルダ40と、ヘッドホルダ40の下面に主走査方向に延びて設けられたインク吐出ヘッド15とを有している。つまり、インクジェットプリンタ10はライン式のプリンタである。図2および図3に示すように、インク吐出ヘッド15は、1つの流路ユニット44と、その上面に接合された複数(本実施形態では8つ)の駆動部46とを有している。
【0016】
図3に示すように、流路ユニット44は、複数の金属製プレートからなる積層体であり、最下層を構成するノズルプレート44aの下面が、複数のノズル20が形成されたノズル面20aとなっている。また、流路ユニット44の内部には、マニホールド50(図2)と、マニホールド50に連通する副マニホールド52と、副マニホールド52からアパーチャ54および圧力室56を経てノズル20に至る複数の個別インク流路58とが形成されている。図2に示すように、流路ユニット44の上面44bには、マニホールド50に連通する複数のインク供給口50aが形成されている。そして、図1に示すように、ヘッドホルダ40の内部におけるインク吐出ヘッド15の上方には、インク供給口50a(図2)に連通するリザーブタンク(図示省略)が配置されており、このリザーブタンクがチューブおよびポンプ(図示省略)を介してインクタンク16a〜16dのいずれかに接続されている。
【0017】
図2に示すように、複数の駆動部46のそれぞれは、平面視形状が略台形となるように形成されており、隣接する駆動部46どうしは、上底および下底が互いに逆方向に位置するように、主走査方向に並べて配置されている。図3に示すように、複数の駆動部46のそれぞれは、圧力室56に対応する複数のアクチュエータ47(図3中に格子線で示す。)を有しており、複数のアクチュエータ47のそれぞれは、圧電層47aと、これを挟むように配置された一対の電極47b,47cとを有している。そして、電極47b,47c間には、ドライバIC74(図4)から出力されたパルス電圧に基づいて、駆動電圧V2(例えば28V)およびグランド電圧(0V)が供給される。電極47b,47c間に駆動電圧V2が供給されると、圧電層47aが厚み方向と直交する方向に収縮され、圧電層47aの下方に位置する部分が圧力室56の内側に凸となるように変形される。これにより、圧力室56の容積が小さくなる。この状態が基本状態である。基本状態において、電極47b,47c間にグランド電圧が供給されると、圧電層47aの収縮状態が解除され、圧力室56の容積がもとの大きさに戻される。つまり、圧力室56の容積が大きくなる。したがって、基本状態が保持された状態で、電極47b,47c間にグランド電圧が瞬間的に供給されると、グランド電圧が供給されるタイミングで圧力室56の容積が変動され、圧力室56内のインクに吐出エネルギが付与される。この吐出エネルギによってノズル20からインクが吐出される。
【0018】
図2に示すように、複数の駆動部46のそれぞれの近傍に位置する部分、または、駆動部46の一部(本実施形態では流路ユニット44の上面44b)には、インク吐出ヘッド15の温度を検出する「ヘッド温度測定手段」としての温度センサ60が設けられている。そして、図4に示すように、これらの温度センサ60が制御装置24に対して電気的に接続されている。したがって、制御装置24は、温度センサ60の出力に基づいて、インク吐出ヘッド15の温度を駆動部46ごとに把握できる。なお、駆動部46と温度センサ60とは、必ずしも1対1で対応している必要はなく、複数の駆動部46に対して共通の1つの温度センサ60が対応していてもよい。この場合でも、制御装置24は、温度センサ60からの距離等に基づいて、複数の駆動部46のそれぞれの温度を把握できる。
【0019】
図4に示すように、インクジェットプリンタ10は、さらに、電源部70と、複数の駆動部46のそれぞれに対応して設けられた複数のリニアレギュレータ72と、複数の駆動部46のそれぞれに対応して設けられた複数のドライバIC74とを有している。制御装置24、電源部70、複数のリニアレギュレータ72および温度センサ60等によって、インク吐出ヘッド15の電源装置11が構成されている。電源部70から出力された元電圧V1は、複数のリニアレギュレータ72で対応する複数の駆動部46の駆動電圧V2まで降下され、この駆動電圧V2がドライバIC74から対応する駆動部46にパルス電圧として供給される。
【0020】
図4に示すように、電源部70は、所定の元電圧V1を出力するスイッチングレギュレータ76を有している。スイッチングレギュレータ76は、入力電圧を高速にスイッチングしてパルスに変換し、安定した直流の元電圧V1を得るものであり、本実施形態では、DC/DCコンバータが用いられている。DC/DCコンバータの方式は、特に限定されるものではなく、降圧(ステップダウン)、昇圧(ステップアップ)および昇降圧のいずれの方式が用いられてもよい。また、スイッチングレギュレータ76の種類は、DC/DCコンバータに限定されるものではなく、スイッチトキャパシタ(降圧)や、チャージポンプ(昇圧)等が用いられてもよい。図4に示すように、電源部70には、制御装置24の第1制御部80が接続されており、元電圧V1の大きさや、電源部70の動作のON/OFFは、第1制御部80によって制御される。
【0021】
図4に示すように、リニアレギュレータ72は、元電圧V1を抵抗などにより降圧させて、安定化した駆動電圧V2を出力するものであり、本実施形態では、3端子レギュレータが用いられている。リニアレギュレータ72の種類は、3端子レギュレータに限定されるものではなく、シャントレギュレータ等が用いられてもよい。図5に示すように、リニアレギュレータ72の入力端子72aに元電圧V1が供給されると、当該元電圧V1が対応する駆動部46の駆動電圧V2まで降下され、出力端子72bから出力される。図4に示すように、複数のリニアレギュレータ72のそれぞれには、制御装置24の第1制御部80が接続されており、リニアレギュレータ72のレギュレート幅の大きさや、動作のON/OFFは、第1制御部80によって制御される。なお、本実施形態では、電源部70から出力された元電圧V1が、降圧または昇圧されることなく、そのまま複数のリニアレギュレータ72に供給される。また、複数のリニアレギュレータ72から出力された駆動電圧V2が、降圧または昇圧されることなく、そのまま複数のドライバIC74に供給される。
【0022】
図5に示すように、リニアレギュレータ72において安定した駆動電圧V2を得るためには、元電圧V1と駆動電圧V2との電圧差(V1−V2)を所定の固定電圧Vs以上(V1−V2≧Vs)に設定する必要がある。本実施形態では、固定電圧Vsが1.5Vに設定されており、元電圧V1は、基準駆動電圧V2max(例えば28V)より固定電圧Vs(1.5V)だけ高い電圧(29.5V)に設定されている。基準駆動電圧V2maxは、設計により予め定められた駆動電圧V2の基準値であり、元電圧V1が変更されると、それに伴って同じ値だけ基準駆動電圧V2maxも変更される。
【0023】
入力端子72aと出力端子72bとの間の電圧差(V1−V2)が大きくなり過ぎると、リニアレギュレータ72における発熱量が大きくなり過ぎるため、リニアレギュレータ72の回路が劣化するおそれがある。そのため、図6に示すように、リニアレギュレータ72の駆動電圧V2については、基準駆動電圧V2max(28V)との関係で発熱許容電圧Vt(例えば1.5V)が設定されており、基準駆動電圧V2max(28V)から発熱許容電圧Vt(1.5V)を引いた値が駆動電圧の許容最小値V2min(26.5V)となっている。駆動電圧V2は、基準駆動電圧V2max(28V)と許容最小値V2min(26.5V)との間で設定される必要がある。なお、この発熱許容電圧Vtの設定には、図6に示すように基準駆動電圧V2maxが高くなるとリニアレギュレータ72を流れる電流が大きくなり、発熱量が増えることが反映されている。
【0024】
図4に示すように、ドライバIC74は、駆動部46に接続されたフレキシブルプリント配線基板(図示省略)に搭載されており、複数のドライバIC74のそれぞれには、制御装置24の第2制御部82が接続されている。ドライバIC74では、リニアレギュレータ72から供給された駆動電圧V2と、第2制御部82から供給された印刷データとに基づいてパルス電圧が生成され、このパルス電圧が対応する駆動部46の複数のアクチュエータ47(図3)のそれぞれに供給される。ドライバIC74の動作のON/OFFは、第2制御部82によって制御される。
【0025】
図4に示すように、制御装置24は、図示しないCPUと、CPUが実行するプログラムや各種のデータを書き替え可能に記憶する不揮発メモリと、プログラムの実行時にデータを一時的に記憶するRAMとを有するコンピュータである。制御装置24がプログラムに従って動作することによって、画像データ記憶部84、吐出情報記憶部86、「ヘッド温度予測手段」としての予測温度算出部88、「電圧算出手段」としての電圧算出部90、第1制御部80および第2制御部82が実現される。つまり、制御装置24が各種の制御を行う「制御手段」として機能する。
【0026】
図4に示すように、画像データ記憶部84は、パーソナルコンピュータ等(図示省略)から送信されてきた画像データを記憶するものである。画像データは、用紙P(図1)の印刷領域に対応する各画素について、色の濃度値を有している。第2制御部82は、画像データ記憶部84に記憶された画像データに基づいて印刷データを生成するとともに、当該印刷データをドライバIC74に供給するものである。印刷データは、各画素について、色の濃度値に応じて設定された吐出量データを有しており、当該吐出量データを含む吐出情報が第2制御部82から吐出情報記憶部86に供給される。また、第2制御部82は、ドライバIC74の動作のON/OFFを制御する。
【0027】
図4に示すように、吐出情報記憶部86は、第2制御部82から与えられたインクの吐出情報を記憶するものである。「ヘッド温度予測手段」としての予測温度算出部88は、インク吐出ヘッド15の将来の温度を予測するものである。予測温度算出部88は、温度センサ60で測定された温度と、インクの吐出情報から定まる温度上昇の程度等とに基づいて、インク吐出ヘッド15の将来の温度を算出する。例えば、吐出情報に含まれる吐出量データに基づいてインクの吐出量が多くなると予測できる場合には、予測温度算出部88は、インク吐出ヘッド15の将来の温度を高く算出する。
【0028】
図4に示すように、「電圧算出手段」としての電圧算出部90は、「ヘッド温度測定手段」としての温度センサ60で測定された温度、または、「ヘッド温度予測手段」としての予測温度算出部88で算出された温度に基づいて、元電圧V1と、複数の駆動部46のそれぞれに供給すべき駆動電圧V2とを算出するものである。図5に示すように、本実施形態では、基準駆動電圧V2maxV2maxを28Vに設定したとすると、固定電圧Vsが1.5Vに設定されているので、電圧算出部90では、元電圧V1が「基準駆動電圧V2max+固定電圧Vs」の式に従って29.5Vと算出される。図3に示すように、本実施形態のアクチュエータ47は、圧電式アクチュエータであり、圧電層47aの温度が低いほど同じ変形をさせるのに高い駆動電圧V2を供給する必要がある。そして、インク吐出ヘッド15の周囲の外気温度が低ければ全てのリニアレギュレータ72における駆動電圧V2が高くなるので、先に述べたように全ての駆動電圧V2を基準駆動電圧V2maxと許容最小値V2minとの間で設定するためには、元電圧V1を高くする必要がある。温度センサ60で測定された温度、または、予測温度算出部88で算出された温度とリニアレギュレータ72における駆動電圧V2との関係は、予め制御装置24内に記憶されており、電圧算出部90は、それぞれのリニアレギュレータ72における駆動電圧V2のうち最大値に合わせて元電圧V1を算出する。具体的には、リニアレギュレータ72における駆動電圧V2のうち最大値に固定電圧Vs(1.5V)を加えたものが元電圧V1となる。なお、複数のリニアレギュレータ72の特性のばらつきなどを考慮して、それぞれのリニアレギュレータ72について、温度と駆動電圧V2との関係を記憶しておき、リニアレギュレータ72ごとに駆動電圧V2および元電圧V1を算出してもよい。
【0029】
それぞれのリニアレギュレータ72における駆動電圧V2は、インク吐出ヘッド15の温度に応じて基準駆動電圧V2maxから補正された値として算出される。つまり、インク吐出ヘッド15の温度が上昇すると、同じ駆動電圧V2を供給したとしてもノズル20から吐出されるインクの量が多くなる。そこで、電圧算出部90では、インクの吐出量を最適化するために、駆動電圧V2が、温度に応じて基準駆動電圧V2maxよりも低くなるように算出される。本実施形態では、インク吐出ヘッド15の温度がインクの吐出履歴等に従って低くなることはないと考えられるため、駆動電圧V2が基準駆動電圧V2maxより高くなることはない。
【0030】
図4に示すように、第1制御部80は、電源部70から出力される元電圧V1の大きさや、電源部70の動作のON/OFFを制御するとともに、リニアレギュレータ72のレギュレート幅の大きさや、その動作のON/OFFを制御するものである。制御装置24は、電圧算出部90により算出された元電圧V1と、電圧算出部90により算出された駆動電圧V2のうち最小値のものとの電圧差(V1−V2)が所定の許容値以上であった場合、電源部70による元電圧V1の出力、複数のリニアレギュレータ72による駆動電圧V2の供給および複数の駆動部46の駆動のうち少なくともいずれか1つを停止させ、または、元電圧V1および駆動電圧V2の少なくともいずれか一方を調整して全てのリニアレギュレータ72における電圧差(V1−V2)を所定の許容値未満とさせるように、第1制御部80および第2制御部82によって電源部70、複数のリニアレギュレータ72および複数の駆動部46を制御する。図5に示すように、本実施形態では、基準駆動電圧V2maxが28Vであり、固定電圧Vsが1.5Vであり、元電圧V1は、基準駆動電圧V2max(28V)より固定電圧Vs(1.5V)だけ高い29.5Vである。また、図6のグラフより、発熱許容電圧Vtは1.5Vである。したがって、駆動電圧の許容最小値V2minは26.5Vであり、上記所定の許容値すなわち許容される電圧差(V1−V2min)は3Vである。また、第1制御部80は、予め選択された動作モードが電圧調整モード(図8)であるか否かを判断する。この判断は、動作モードの入力スイッチ等(図示省略)から入力されたデータに基づいて行われる。本実施形態では、電圧調整モード(図8,ステップS31〜S37)と停止モード(図7,ステップS13〜ステップ23)の2つのモードが設定されている。
【0031】
図7は、インクジェットプリンタ10の制御動作を示すフロー図であり、図8は、電圧調整処理における制御動作を示すフロー図である。図9は、元電圧V1と駆動電圧V2のうち最小値のものとの電圧差(V1−V2)が許容値未満である状態を示すブロック図である。以下には、図7および図8に従って、制御装置24によるインクジェットプリンタ10の制御動作を説明する。
【0032】
図7に示すように、制御装置24の制御動作が実行されると、まず、ステップS1において、インクジェットプリンタ10が印刷待機状態にされる。印刷待機状態は、第2制御部82(図4)からドライバIC74(図4)に供給される印刷データに基づいて印刷動作が可能な状態である。インクジェットプリンタ10が印刷待機状態になると、ステップS3において、温度センサ60でインク吐出ヘッド15の温度が測定され、または、予測温度算出部88でインク吐出ヘッド15の温度が予測される。そして、ステップS5において、元電圧V1と駆動電圧V2とが電圧算出部90で算出される。
【0033】
ステップS7では、元電圧V1と、駆動電圧V2のうち最小値のものとの電圧差(V1−V2)が所定の許容値(3V)以上であるか否かが判断される。そして、「NO」すなわち許容値以上でないと判断されると、ステップS9において、印刷データに基づく通常の印刷動作が実行される。印刷動作が終了すると、ステップS11において、インクジェットプリンタ10の動作を終了するか否かが判断され、「YES」と判断されると終了し、「NO」と判断されるとステップS1に戻る。一方、ステップS7において、「YES」すなわち許容値(3V)以上であると判断されると、ステップS12に進む。図9の例では、元電圧V1(29.5V)と駆動電圧V2のうち最小値のもの(26.6V)との電圧差(V1−V2)が2.9Vであり、ステップS7において「NO」と判断される。図10の例では、元電圧V1(29.5V)と駆動電圧V2のうち最小値のもの(26.0V)との電圧差(V1−V2)が3.5Vであり、ステップS7において「YES」と判断される。
【0034】
ステップS12では、動作モードが電圧調整モードであるか否かが判断され、「NO」すなわち電圧調整モードでないと判断されると、ステップS13〜S23において、インク吐出ヘッド15の動作を停止させる停止モードが実行される。停止モードでは、まず、ステップS13において、印刷動作の停止処理が実行される。つまり、図4に示すように、電源部70による元電圧V1の出力、複数のリニアレギュレータ72による駆動電圧V2の供給および複数の駆動部46の駆動のうち少なくともいずれか1つを停止させるように、第1制御部80および第2制御部82によって電源部70、複数のリニアレギュレータ72および複数の駆動部46が制御される。
【0035】
印刷動作の停止後は、ステップS15において、温度センサ60でインク吐出ヘッド15の温度が測定され、または、予測温度算出部88でインク吐出ヘッド15の温度が予測される。続いて、ステップS17において、元電圧V1と駆動電圧V2とが電圧算出部90で算出され、ステップS19において、元電圧V1と、駆動電圧V2のうち最小値のものとの電圧差(V1−V2)が所定の許容値(3V)以上であるか否かが判断される。そして、「YES」すなわち許容値(3V)以上であると判断されると、ステップS15に戻って停止状態が継続され、「NO」すなわち許容値(3V)以上でないと判断されると、ステップS21に進む。
【0036】
ステップS21では、制御装置24によって所定の待機時間が経過したか否かが判断され、「NO」と判断されるとステップS15に戻り、所定の待機時間が経過するまで待機される。一方、「YES」と判断されると、ステップS23で印刷動作の再開処理が実行された後、ステップS1に戻る。印刷動作の再開処理では、電源部70による元電圧V1の出力、複数のリニアレギュレータ72による駆動電圧V2の供給、および複数の駆動部46の駆動のうち停止しているものを再開させるように、第1制御部80および第2制御部82によって電源部70、複数のリニアレギュレータ72および複数の駆動部46が制御される。
【0037】
一方、ステップS12において「YES」と判断されると、ステップS25において電圧調整処理が実行される。図8に示すように、電圧調整処理が開始されると、まず、ステップS31において駆動電圧V2が調整され、ステップS33において元電圧V1が調整される。そして、ステップS35において、電圧算出部90(図4)により算出された元電圧V1が上限値を超えるか否かが判断され、且つ、電圧算出部90(図4)により算出された複数の駆動部46(図4)のそれぞれの駆動電圧V2のうちいずれかが下限値未満となるか否かが判断される。上限値および下限値は、電圧算出部90において予め設定されており、入力装置(図示省略)によって適宜変更できるようになっている。つまり、電圧算出部90が上限値および下限値を設定する「限界値設定手段」として機能する。ステップS35において「NO」すなわち上限値および下限値を超えないと判断されるとステップS1に戻る。一方、「YES」すなわち上限値および下限値を超えると判断されるとステップS37を経てステップS1に戻る。ステップS37において、制御部24(図4)は、元電圧V1が上限値を超える場合、元電圧V1を上限値とさせるよう電源部70(図4)を制御し、且つ、複数の駆動部46のそれぞれの駆動電圧V2のうちいずれかが下限値未満となる場合、下限値未満となる駆動電圧V2を下限値とさせるよう複数のリニアレギュレータ72(図4)を制御する。
【0038】
以下には、ステップS31およびS33における電圧調整処理について具体的に説明する。以下の説明で用いる図9〜図15では、8つの駆動部46に対応させて符号46a〜46hを付し、8つのリニアレギュレータ72に対応させて符号72a〜72hを付している。また、電源部70には元電圧V1の値を記載し、リニアレギュレータ72a〜72hには駆動電圧V2の値を記載している。なお、以下のいずれの電圧調整処理を選択するかは、ユーザの判断により決定されてもよいし、印刷データ等に基づいて制御装置24によって自動的に決定されてもよい。
【0039】
[第1の電圧調整処理]
図9は、電圧調整処理前の駆動電圧V2および元電圧V1を記載したインク吐出ヘッドの電源装置11のブロック図である。図10は、第1の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧V2および元電圧V1を記載したインク吐出ヘッドの電源装置11のブロック図である。図9に示すように、電圧算出部90(図4)で算出された駆動電圧V2は、複数の駆動部46a〜46hのそれぞれに理想的な駆動電圧V2であり、電圧算出部90(図4)で算出された元電圧V1は、電源部70に理想的な元電圧V1である。したがって、図9の例のように、元電圧V1(29.5V)と、駆動電圧V2のうち最小値のもの(26.6V)との電圧差(V1−V2)が所定の許容値(3V)未満であれば、駆動電圧V2および元電圧V1を調整する必要はない。
【0040】
一方、図10に示すように、1つの駆動部46cに係る理想的な駆動電圧V2が著しく低い値(26.0V)である場合には、リニアレギュレータ72cにおける元電圧V1(29.5V)と駆動電圧V2(26.0V)との電圧差(V1−V2)が所定の許容値(3V)以上となるため、理想的な駆動電圧V2(26.0V)を採用することができない。この場合、第1の電圧調整処理では、制御装置24(図4)が、電源部70から出力する元電圧V1を小さくさせるように電源部70を制御し、且つ、電圧差(V1−V2)が所定の許容値以上の駆動部46cに係る駆動電圧V2を大きくさせるように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。図10の例では、制御装置24(図4)は、電源部70から出力する元電圧V1を29.5Vから29.2Vに降圧させるように電源部70を制御し、且つ、駆動部46cに係る駆動電圧V2を26.0Vから26.3Vに昇圧させるように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。これにより、電圧差(V1−V2)は所定の許容値(3V)未満の2.9Vになる。元電圧V1を29.5Vから29.2Vに降圧させると、これに伴って駆動電圧V2の上限が28.0Vから27.7Vとなる。したがって、最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bでは、駆動電圧V2が28.0Vから27.7Vに降圧される。
【0041】
ここで、電圧差(V1−V2)を所定の許容値(3V)未満にするために、駆動部46cの駆動電圧V2だけを0.6V昇圧させる場合を考える。この場合、駆動電圧V2と理想的な駆動電圧V2との電圧差Vzに着目すると、駆動部46cに係る電圧差Vzは+0.6Vとなり、他の駆動部46a,46b,46d〜46hに係る電圧差Vzは0Vとなる。したがって、駆動部46cに係る画像の品質だけが著しく低下し、その部分だけが目立つようになる。これに対し、図10に示した第1の電圧調整処理では、駆動部46cに係る電圧差Vzが+0.3Vとなり、駆動部46bに係る電圧差Vzが−0.3Vとなり、他の駆動部46a,46d〜46hに係る電圧差Vzは0Vとなるので、駆動部46cまたは駆動部46bに係る画像の品質だけが著しく低下することはなく、より均質な画像を得ることができる。
【0042】
[第2の電圧調整処理]
図11は、第2の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧V2および元電圧V1を記載したインク吐出ヘッドの電源装置11のブロック図である。第2の電圧調整処理は、第1の電圧調整処理において、1つの駆動部46cに係るリニアレギュレータ72cにおける駆動電圧V2が極めて低い値(25.5V)になっている場合の処理である。第2の電圧調整処理では、制御装置24(図4)が、電源部70から出力する元電圧V1を小さくさせるように電源部70を制御し、且つ、電圧差(V1−V2)が所定の許容値以上の駆動部46cに係る駆動電圧V2を大きくさせるように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。図11の例では、制御装置24(図4)は、電源部70から出力する元電圧V1を29.5Vから29.0Vに降圧させるように電源部70を制御し、且つ、駆動部46cに係る駆動電圧V2を25.5Vから26.1Vに昇圧させるように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。これにより、電圧差(V1−V2)は所定の許容値(3V)未満の2.9Vになる。元電圧V1を29.5Vから29.0Vに降圧させると、これに伴って駆動電圧V2の上限が28.0Vから27.5Vとなる。したがって、最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bでは、駆動電圧V2が0.5V降圧されて27.5Vにされる。また、2番目に大きい駆動電圧V2に係る駆動部46hでも、駆動電圧V2が0.3V降圧されて27.5Vにされる。つまり、駆動電圧V2の最大値が27.5Vを超えることはない。
【0043】
[第3の電圧調整処理]
図12は、第3の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧V2および元電圧V1を記載したインク吐出ヘッドの電源装置11のブロック図である。図12に示すように、第3の電圧調整処理では、3つ以上の駆動部46a〜46hが所定の方向に並べて配置され、当該3つ以上の駆動部46a〜46hのうち駆動電圧V2が最小となる駆動部46cと駆動電圧V2が最大となる駆動部46bとが隣接することが前提となる。第3の電圧調整処理において、制御装置24(図4)は、最小の駆動電圧V2に係る駆動部46cを基準として最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bが存在する側とは反対側に存在する全ての駆動部46d〜46hの駆動電圧V2を電圧算出部90(図4)により算出された駆動電圧V2よりも大きくさせるように複数のリニアレギュレータ72d〜72hを制御し、且つ、最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bを基準として最小の駆動電圧V2に係る駆動部46cが存在する側とは反対側に存在する全ての駆動部46a(この例では1つのみ)の駆動電圧V2を電圧算出部90(図4)により算出された駆動電圧V2よりも小さくさせるようにリニアレギュレータ72aを制御する。図12の例では、制御装置24(図4)は、駆動部46d〜46hの駆動電圧V2を0.4Vだけ大きくするように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御し、且つ、駆動部46aの駆動電圧V2を0.2Vだけ小さくするように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。なお、図12の例では、駆動部46fの駆動電圧V2が理想的な駆動電圧V2よりも0.3Vだけ大きくなっており、駆動部46hの駆動電圧V2が理想的な駆動電圧V2と同じになっている。これは、駆動部46d〜46hの駆動電圧V2を一律に0.4Vだけ大きくした後に、上限値を超える駆動部46f,46hの駆動電圧V2を、上限値の27.8Vに再調整したためである。
【0044】
図10に示した第1の電圧調整処理では、最小の駆動電圧V2に係る駆動部46cについて、駆動電圧V2がプラスに電圧調整され、最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bについて、駆動電圧V2がマイナスに電圧調整される。したがって、これらの駆動部46c,46bでは、電圧調整後の駆動電圧V2と理想的な駆動電圧V2との電圧差Vzが大きくなる。図10の例では、駆動部46cに係る電圧差Vzが+0.3Vとなり、駆動部46bに係る電圧差Vzが−0.3Vとなる。したがって、最小の駆動電圧V2に係る駆動部46cと最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bとが隣接する場合、これらの駆動部46c,46bの間、駆動部46cと他の駆動部46dとの間、および駆動部46bと他の駆動部46aとの間において、電圧差Vzの程度に差が生じ、これらの3つの境界において画像の品質が低下するおそれがある。これに対し、図12に示した第3の電圧調整処理では、駆動部46c,46bの境界を挟んだ両側のそれぞれにおいて、電圧差Vzがほぼ均一にされるので、画像の品質が低下するおそれのある境界を駆動部46c,46bの間だけにすることができ、より均質な画像を得ることができる。
【0045】
[第4の電圧調整処理]
図13は、第4の電圧調整処理が実行された後の駆動電圧V2および元電圧V1を記載したインク吐出ヘッドの電源装置11のブロック図である。図13に示すように、第4の電圧調整処理では、3つ以上の駆動部46a〜46hが所定の方向に並べて配置され、当該3つ以上の駆動部46a〜46hのうち駆動電圧V2が最小となる駆動部46eと駆動電圧V2が最大となる駆動部46bとの間に他の駆動部46c,46dが存在することが前提となる。第4の電圧調整処理において、制御装置24(図4)は、最小の駆動電圧V2に係る駆動部46eを基準として最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bが存在する側とは反対側に存在する全ての駆動部46f〜46hの駆動電圧V2を電圧算出部90(図4)により算出された駆動電圧V2よりも大きくさせるように複数のリニアレギュレータ72f〜72hを制御し、且つ、最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bを基準として最小の駆動電圧V2に係る駆動部46eが存在する側とは反対側に存在する全ての駆動部46a(この例では1つのみ)の駆動電圧V2を電圧算出部90(図4)により算出された駆動電圧V2よりも小さくさせるように複数のリニアレギュレータ72aを制御し、且つ、最小の駆動電圧V2に係る駆動部46eと最大の駆動電圧V2に係る駆動部46bとの間に存在する他の駆動部46c,46dの駆動電圧V2を電圧算出部90(図4)により算出された駆動電圧V2と同じにさせるように複数のリニアレギュレータ72c,72dを制御する。第4の電圧調整処理では、駆動電圧V2がプラスに電圧調整される駆動部46cと、駆動電圧V2がマイナスに電圧調整される駆動部46bとの間に、駆動電圧V2が調整されない駆動部46c,46dを配置しているので、駆動部46a〜46hの全体として、電圧差Vzのバランスを高めることができる。
【0046】
[第5の電圧調整処理]
図14は、画質が低下すると考えられる駆動部間の境界が印字率の低い部分に位置している状態を示すブロック図である。図15は、画質が低下すると考えられる駆動部間の境界が印字率の高い部分に位置している状態を示すブロック図である。図4に示すように、制御装置24の第2制御部82は、インク吐出ヘッド15から用紙P(図1)に対して吐出されるインクの吐出情報に基づいて用紙P(図1)の所定領域に対する印字率を算出する「印字率算出手段」としての機能を有している。第5の電圧調整処理では、第2制御部82で算出された印字率が所定値より高い場合、制御装置24(図4)は、電源部70から出力する元電圧V1を小さくさせるように電源部70を制御し、且つ、電圧差(V1−V2)が所定の許容値以上の駆動部46に係る駆動電圧V2を大きくさせるように複数のリニアレギュレータ72a〜72hを制御する。
【0047】
図14に示すように、用紙P(図1)の印刷領域に、ベタ印刷等のような印字率が高い(高Duty)部分と、テキスト印字等のような印字率が低い(低Duty)部分とが存在していると、電圧調整処理の態様によっては、印字率が高い(高Duty)部分に画像品質の低下が生じる場合がある。印字率が高い部分は画像品質の低下が視認されやすいので問題となりやすい。
【0048】
図14の例は、第1の電圧調整処理(図10)を示すものであり、駆動部46b,46c間、駆動部46a,46b間、および駆動部46c,46d間において電圧差Vzの程度に差が生じている。したがって、これらの境界に対応する部分(図14中の一点鎖線で示す部分)で画像品質の低下が生じるおそれがある。図14の例では、これらの境界がテキスト等の印字率が低い(低Duty)部分に対応しているため、画像品質の低下が生じても目立つことはなく、画像全体の品質が損なわれることはない。しかし、これらの境界がベタ塗り等の印字率が高い(高Duty)部分に対応するならば、画像の品質低下が目立ち、画像全体の品質が損なわれることになる。そこで、この場合、制御装置24(図4)は、インク吐出ヘッド15の印刷を停止させる。
【0049】
図15の例は、第3の電圧調整処理(図12)を示すものであり、駆動部46b,46c間および駆動部46g,46h間で電圧差Vzの程度に差が生じている。したがって、これらの境界に対応する部分(図15中の一点鎖線で示す部分)で画像品質の低下が生じるおそれがある。図15の例では、これらの境界の一部がベタ塗り等の印字率が高い(高Duty)部分に対応しているため、画像品質の低下が目立ち、画像全体の品質が損なわれるおそれがある。そこで、制御装置24(図4)は、インク吐出ヘッド15の印刷を停止させるか、または、電圧調整処理の態様を、駆動部46g,46h間で電圧差Vzの程度に差が生じない他の態様に切り替える。図15の例では、他の態様として第1の電圧調整処理(図14)に切り替えることが考えられる。この場合、用紙P(図1)の1枚を単位として印字率を監視し、用紙P(図1)に対する印刷を開始する前に電圧調整処理の態様を切り替えてもよい。また、用紙P(図1)の個別の領域を単位として印字率を監視し、当該領域に対する印刷を開始する前に電圧調整処理の態様を切り替えてもよい。
【0050】
上述したように、印字率が高い部分は画像品質の低下が視認されやすいので問題となりやすい。そこで、用紙P(図1)の印刷領域に、ベタ印刷等のような印字率が高い部分がある場合は、元電圧V1を低減するように電圧調整処理を行うのがよい。これは、図6に示すように、基準駆動電圧V2maxが小さいと、発熱許容電圧Vtが大きくなるので、印字途中で再度電圧を調整したりすることによる印字率が高い部分の画像の品質低下が抑制できるからである。つまり、図7では、印字待機時における印刷可否または電圧調整の判断がなされているが、印字途中に一連の判断および制御がなされてもよく、この場合に印字率が高い部分の画像の品質低下を抑制できる。
【0051】
(他の実施形態)
図2に示すように、上述の実施形態では、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれが、複数(例えば8個)の駆動部46を有する1つのインク吐出ヘッド15を備えているが、他の実施形態では、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれが、上記の複数(例えば8個)の駆動部46を構成する駆動部46をそれぞれ1以上有する複数の液体吐出ヘッド15を備えていてもよい。例えば、ヘッドユニット14a〜14dのそれぞれは、上述の8個の駆動部46を構成する駆動部46を1個ずつ有する8個のインク吐出ヘッド15、当該駆動部46を2個ずつ有する4個のインク吐出ヘッド15、および当該駆動部46を4個ずつ有する2個のインク吐出ヘッド15等を備えていてもよい。
【0052】
また、図7に示すように、上述の実施形態では、印刷待機時に実行されるステップS7において印刷可否の判断が行われているが、他の実施形態では、印刷動作の最中に印刷可否の判断が行われてもよい。さらに、印刷動作の最中に、印刷可否の判断と、電圧調整処理(図8)、または、停止処理から再開処理(図7)までの制御動作とが一連に行われてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、電圧調整処理において、元電圧V1と駆動電圧V2の両方の調整が行われているが、他の実施形態では、元電圧V1および駆動電圧V2の少なくともいずれか一方を調節するようにしてもよい。
【0054】
そして、図1に示すように、上述の実施形態では、本発明を、インクを吐出するインクジェットプリンタに適用しているが、他の実施形態では、本発明を、他の液体を吐出する液体吐出装置に適用してもよい。さらに、液体吐出方式としては、アクチュエータ方式に代えて、発熱素子で液体の体積を膨張させたときの圧力を利用して吐出させる方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0055】
V1… 元電圧
V2… 駆動電圧
10… インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
15… インク吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)
24… 制御装置(制御手段)
46… 駆動部
60… 温度センサ(ヘッド温度測定手段)
70… 電源部
72… リニアレギュレータ
90… 電圧算出部(電圧算出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動部を有する1つの液体吐出ヘッド、または、前記複数の駆動部を構成する駆動部をそれぞれ1以上有する複数の液体吐出ヘッドと、
所定の元電圧を出力するスイッチングレギュレータを有する電源部と、
前記複数の駆動部のそれぞれに対応して設けられ、前記元電圧を、前記複数の駆動部のそれぞれの駆動電圧まで降下させて対応する前記複数の駆動部に供給する複数のリニアレギュレータと、
前記液体吐出ヘッドの温度を測定するヘッド温度測定手段と、
前記ヘッド温度測定手段が測定した温度に基づいて、前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれに供給すべき前記駆動電圧とを算出する電圧算出手段と、
前記電源部および前記複数のリニアレギュレータを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記電圧算出手段により算出された前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれの前記駆動電圧との電圧差に所定の許容値以上のものが含まれている場合、前記複数の駆動部全てについての前記電圧差が前記所定の許容値未満となるように、前記電源部および前記複数のリニアレギュレータのうち少なくともいずれか1つを制御する、液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記電圧算出手段により算出された前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれの前記駆動電圧との電圧差に所定の許容値以上のものが含まれている場合、前記電源部から出力する前記元電圧を小さくさせるように前記電源部を制御し、且つ、前記電圧差が所定の許容値以上の前記駆動部に係る前記駆動電圧を大きくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御する、請求項1に記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項3】
前記元電圧の上限値および駆動電圧の下限値を設定する限界値設定手段を備え、
前記制御手段は、前記電圧算出手段により算出された前記元電圧が前記上限値を超える場合、前記元電圧を前記上限値とさせるよう前記電源部を制御し、且つ、前記電圧算出手段により算出された前記複数の駆動部のそれぞれの前記駆動電圧のうちいずれかが前記下限値未満となる場合、下限値未満となる前記駆動電圧を前記下限値とさせるよう前記複数のリニアレギュレータを制御する、請求項2に記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項4】
3つ以上の前記駆動部が所定の方向に並べて配置され、前記3つ以上の駆動部のうち前記駆動電圧が最小となる駆動部と駆動電圧が最大となる駆動部とが隣接する場合、
前記制御手段は、
前記最小の駆動電圧に係る駆動部を基準として前記最大の駆動電圧に係る駆動部が存在する側とは反対側に存在する全ての前記駆動部の前記駆動電圧を前記電圧算出手段により算出された前記駆動電圧よりも大きくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御し、且つ、前記最大の駆動電圧に係る駆動部を基準として前記最小の駆動電圧に係る駆動部が存在する側とは反対側に存在する全ての前記駆動部の前記駆動電圧を前記電圧算出手段により算出された前記駆動電圧よりも小さくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御する、請求項2または3に記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項5】
3つ以上の前記駆動部が所定の方向に並べて配置され、前記3つ以上の駆動部のうち前記駆動電圧が最小となる駆動部と駆動電圧が最大となる駆動部との間に他の駆動部が存在する場合、
前記制御手段は、
前記最小の駆動電圧に係る駆動部を基準として前記最大の駆動電圧に係る駆動部が存在する側とは反対側に存在する全ての前記駆動部の前記駆動電圧を前記電圧算出手段により算出された前記駆動電圧よりも大きくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御し、且つ、前記最大の駆動電圧に係る駆動部を基準として前記最小の駆動電圧に係る駆動部が存在する側とは反対側に存在する全ての前記駆動部の前記駆動電圧を前記電圧算出手段により算出された前記駆動電圧よりも小さくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御し、且つ、前記最小の駆動電圧に係る駆動部と前記最大の駆動電圧に係る駆動部との間に存在する前記他の駆動部の前記駆動電圧を前記電圧算出手段により算出された前記駆動電圧と同じにさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御する、請求項2または3に記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項6】
前記1以上の液体吐出ヘッドから記録媒体に対して吐出される液体の吐出情報に基づいて記録媒体の所定領域に対する印字率を算出する印字率算出手段を備え、
前記印字率算出手段で算出された印字率が所定値より高い場合、前記制御手段が、前記電源部から出力する前記元電圧を小さくさせるように前記電源部を制御し、且つ、前記電圧差が所定の許容値以上の前記駆動部に係る前記駆動電圧を大きくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御する、請求項2または3に記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項7】
ユーザの入力に従って停止モードを選択する停止モード選択手段を備え、
前記制御手段は、
前記停止モード選択手段で前記停止モードが選択され、且つ、前記電圧算出手段により算出された前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれの前記駆動電圧との電圧差に所定の許容値以上のものが含まれている場合、前記電源部による前記元電圧の出力、前記複数のリニアレギュレータによる前記駆動電圧の供給、および前記複数の駆動部の駆動のうち少なくともいずれか1つを停止させるように、前記電源部、前記複数のリニアレギュレータ、および前記複数の駆動部を制御する、請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの電源装置を備える、液体吐出装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの電源装置における少なくとも前記制御手段としてコンピュータを機能させる、電源装置のプログラム。
【請求項1】
複数の駆動部を有する1つの液体吐出ヘッド、または、前記複数の駆動部を構成する駆動部をそれぞれ1以上有する複数の液体吐出ヘッドと、
所定の元電圧を出力するスイッチングレギュレータを有する電源部と、
前記複数の駆動部のそれぞれに対応して設けられ、前記元電圧を、前記複数の駆動部のそれぞれの駆動電圧まで降下させて対応する前記複数の駆動部に供給する複数のリニアレギュレータと、
前記液体吐出ヘッドの温度を測定するヘッド温度測定手段と、
前記ヘッド温度測定手段が測定した温度に基づいて、前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれに供給すべき前記駆動電圧とを算出する電圧算出手段と、
前記電源部および前記複数のリニアレギュレータを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記電圧算出手段により算出された前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれの前記駆動電圧との電圧差に所定の許容値以上のものが含まれている場合、前記複数の駆動部全てについての前記電圧差が前記所定の許容値未満となるように、前記電源部および前記複数のリニアレギュレータのうち少なくともいずれか1つを制御する、液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記電圧算出手段により算出された前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれの前記駆動電圧との電圧差に所定の許容値以上のものが含まれている場合、前記電源部から出力する前記元電圧を小さくさせるように前記電源部を制御し、且つ、前記電圧差が所定の許容値以上の前記駆動部に係る前記駆動電圧を大きくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御する、請求項1に記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項3】
前記元電圧の上限値および駆動電圧の下限値を設定する限界値設定手段を備え、
前記制御手段は、前記電圧算出手段により算出された前記元電圧が前記上限値を超える場合、前記元電圧を前記上限値とさせるよう前記電源部を制御し、且つ、前記電圧算出手段により算出された前記複数の駆動部のそれぞれの前記駆動電圧のうちいずれかが前記下限値未満となる場合、下限値未満となる前記駆動電圧を前記下限値とさせるよう前記複数のリニアレギュレータを制御する、請求項2に記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項4】
3つ以上の前記駆動部が所定の方向に並べて配置され、前記3つ以上の駆動部のうち前記駆動電圧が最小となる駆動部と駆動電圧が最大となる駆動部とが隣接する場合、
前記制御手段は、
前記最小の駆動電圧に係る駆動部を基準として前記最大の駆動電圧に係る駆動部が存在する側とは反対側に存在する全ての前記駆動部の前記駆動電圧を前記電圧算出手段により算出された前記駆動電圧よりも大きくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御し、且つ、前記最大の駆動電圧に係る駆動部を基準として前記最小の駆動電圧に係る駆動部が存在する側とは反対側に存在する全ての前記駆動部の前記駆動電圧を前記電圧算出手段により算出された前記駆動電圧よりも小さくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御する、請求項2または3に記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項5】
3つ以上の前記駆動部が所定の方向に並べて配置され、前記3つ以上の駆動部のうち前記駆動電圧が最小となる駆動部と駆動電圧が最大となる駆動部との間に他の駆動部が存在する場合、
前記制御手段は、
前記最小の駆動電圧に係る駆動部を基準として前記最大の駆動電圧に係る駆動部が存在する側とは反対側に存在する全ての前記駆動部の前記駆動電圧を前記電圧算出手段により算出された前記駆動電圧よりも大きくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御し、且つ、前記最大の駆動電圧に係る駆動部を基準として前記最小の駆動電圧に係る駆動部が存在する側とは反対側に存在する全ての前記駆動部の前記駆動電圧を前記電圧算出手段により算出された前記駆動電圧よりも小さくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御し、且つ、前記最小の駆動電圧に係る駆動部と前記最大の駆動電圧に係る駆動部との間に存在する前記他の駆動部の前記駆動電圧を前記電圧算出手段により算出された前記駆動電圧と同じにさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御する、請求項2または3に記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項6】
前記1以上の液体吐出ヘッドから記録媒体に対して吐出される液体の吐出情報に基づいて記録媒体の所定領域に対する印字率を算出する印字率算出手段を備え、
前記印字率算出手段で算出された印字率が所定値より高い場合、前記制御手段が、前記電源部から出力する前記元電圧を小さくさせるように前記電源部を制御し、且つ、前記電圧差が所定の許容値以上の前記駆動部に係る前記駆動電圧を大きくさせるように前記複数のリニアレギュレータを制御する、請求項2または3に記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項7】
ユーザの入力に従って停止モードを選択する停止モード選択手段を備え、
前記制御手段は、
前記停止モード選択手段で前記停止モードが選択され、且つ、前記電圧算出手段により算出された前記元電圧と前記複数の駆動部のそれぞれの前記駆動電圧との電圧差に所定の許容値以上のものが含まれている場合、前記電源部による前記元電圧の出力、前記複数のリニアレギュレータによる前記駆動電圧の供給、および前記複数の駆動部の駆動のうち少なくともいずれか1つを停止させるように、前記電源部、前記複数のリニアレギュレータ、および前記複数の駆動部を制御する、請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの電源装置を備える、液体吐出装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドの電源装置における少なくとも前記制御手段としてコンピュータを機能させる、電源装置のプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−49256(P2013−49256A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189969(P2011−189969)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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