説明

液体吐出ヘッド及び画像形成装置並びに電気構造物の実装構造体。

【課題】圧電部材と配線部材の電気的接続信頼性を確保するために生産性が低下する。
【解決手段】CSP16の出力端子162と駆動柱12Aの個別外部電極23とははんだバンプ164による半田41Bで接合され、CSP16の入力端子161とFPC15の配線電極とははんだバンプ163による半田41Aで接合され、CSP16の出力端子と圧電部材12の個別外部電極23とを接合する半田41Bの厚みは、CSP16の入力端子とFPC15の配線電極15Aとを接合する半田41Aの厚みよりも薄くしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及び画像形成装置並びに電気構造物の実装構造体。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドとしては、例えば液室内の液体であるインクを加圧し圧力を発生するための圧力発生手段としての圧電体、特に圧電層と内部電極を交互に積層した積層型圧電部材に溝加工を施して複数の柱状の圧電素子(圧電柱)を形成した圧電アクチュエータを備え、積層型圧電部材のd33またはd31方向の変位で液室に壁面を形成する弾性変形可能な振動板部材を変形させ、液室内容積、圧力を変化させて液滴を吐出させるいわゆる圧電型ヘッドが知られている。
【0004】
このような圧電型ヘッドでは、圧電柱の内部電極を端面に引き出した共通電極となる共通外部電極(端面電極ともいう。)及び個別電極となる個別外部電極にそれぞれFPC(フレキシブル基板、フレキシブルプリントケーブル、フレキシブル配線基板)などの配線部材の共通配線電極、個別配線電極を接合し、各圧電柱に画像信号に応じた駆動信号を与えるようにしている。
【0005】
しかしながら、FPCの膨張収縮により端子の累積ピッチ変動が生じ、狭くなった圧電素子の個別柱に対して接合ズレが発生し、接合部の断線、ショートが発生するおそれがある。
【0006】
そこで、従来、共通電極及び個別電極として異なる面に形成された圧電素子の外部電極が、成形樹脂上に形成され、かつ、樹脂の端部から延長した樹脂との非接触領域をもつ立体配線基板の非接触領域に位置する電極部と接続している構造としたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−000746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、圧電部材に複数の圧電柱をダイシング加工で形成するとき、配線パターンに合わせて圧電部材をダイシング加工する必要があり、ワークとなる圧電部材の配列精度を確保するために生産性が大幅に低減してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、生産性を低下させることなく、圧電部材と配線部材の電気的接続信頼性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液滴を吐出する複数のノズルがそれぞれ通じる複数の個別液室を形成する流路部材と、
前記個別液室の一部の壁面を形成する振動板部材と、
前記振動板部材を変位させる圧電部材と、
前記圧電部材を駆動する駆動回路が実装されたチップサイズパッケージと、
前記駆動回路に接続される配線部材と、を有し、
前記チップサイズパッケージの出力端子と前記圧電部材の電極とは半田で接合され、前記チップサイズパッケージの入力端子と前記配線部材の配線電極とは半田で接合され、
前記チップサイズパッケージの出力端子と前記圧電部材の電極とを接合している半田の厚みよりも、前記チップサイズパッケージと入力端子と前記配線部材の配線電極とを接合している半田の厚みが厚い
構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、圧電部材の接合面と配線部材の接合面との間に段差があっても両者の電気的接続信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例の外観斜視説明図である。
【図2】同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向:図1のA−A線)に沿う断面説明図である。
【図3】同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向:図1のB−B線)に沿う断面説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態の説明に供する要部拡大説明図である。
【図5】CSPの一例の説明に供する説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態の説明に供するCSPの平面説明図である。
【図7】同じくはんだバンプを設けた状態の図6の正面説明図である。
【図8】同じく圧電部材及びFPCとCSPとの関係の説明に供する説明図である。
【図9】同じくノズル配列方向(圧電柱配列方向)における圧電部材及びFPCとCSPとの関係の説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態の説明に供する要部拡大説明図である。
【図11】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部の側面説明図である。
【図12】同機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの一例について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの外観斜視説明図、図2は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向:図1のA−A線)に沿う断面説明図、図3は同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向:図1のB−B線)に沿う断面説明図である。
【0014】
この液体吐出ヘッドは、SUS基板などで形成した流路板(流路部材、流路基板、液室基板)1と、この流路板1の下面に接合した振動板を形成する振動板部材2と、流路板1の上面に接合したノズル板3とを有している。
【0015】
これらの部材によって、液滴を吐出する複数のノズル4がそれぞれ連通する個別流路としての複数の液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。)6、液室6にインクを供給する供給路を兼ねた流体抵抗部7、この流体抵抗部7を介して液室6に通じる液体導入部8を形成し、液体導入部8に振動板部材2に形成した供給口9を介して後述するフレーム部材17に形成した共通液室10からインクを供給する。
【0016】
流路板1は、SUS基板を、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいは打ち抜き(プレス)などの機械加工することで、加圧液室6、流体抵抗部7などの開口をそれぞれ形成している。なお、流路板1は、例えば単結晶シリコン基板をエッチングして形成することなどもできる。
【0017】
振動板部材2は、第1層2Aと第2層2Bとで形成されて、第1層2Aで薄肉部を形成し、第1層2A及び第2層2Bで厚肉部を形成している。そして、この振動板部材2は、各液室6に対応してその壁面を形成する第1層2Aで形成された各振動領域(ダイアフラム部)2aを有し、この振動領域2aの中に、面外側(液室6と反対面側)に第1層2A及び第2層2Bの厚肉部で形成された島状凸部2bが設けられ、また、液室間隔壁30に対応する部分に同様に厚肉部2cが設けられている。
【0018】
そして、この振動板部材2の液室6と反対側に振動領域2aを変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0019】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接着剤接合した複数(ここでは2つとする)の積層型圧電部材12を有し、圧電部材12にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材12に対して所要数の柱状の圧電素子(以下「圧電柱」という。)12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0020】
なお、圧電部材12の圧電柱12A、12Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電柱を駆動柱12A、駆動波形を与えないで単なる支持柱として使用する圧電柱を非駆動柱12Bとして区別している。つまり、所謂バイピッチ構成としている。
【0021】
そして、駆動柱12Aの上端面(接合面)を振動板部材2の島状凸部2bに接合して接合している。また、非駆動柱12Bの上端面は液室間隔壁30に対応する位置で振動板部材2の厚肉部2cに接合している。
【0022】
ここで、圧電部材12は、圧電材料層21と内部電極22A、22Bとを交互に積層したものであり、内部電極22A、22Bをそれぞれ端面、即ち圧電部材12の振動板部材2に略垂直な側面(積層方向に沿う面)に引き出して、この側面に形成された端面電極である個別外部電極23、共通外部電極24に接続し、外部電極23、24間に電圧を印加することで積層方向の変位を生じる。なお、共通外部電極24は図示しない内部電極を通じて個別外部電極23側の端面であって、圧電部材12のノズル配列方向の端部に引出されている。
【0023】
また、ベース部材13のノズル配列方向と直交する方向の両側面には配線部材としてのフレキシブル配線基板であるFPC15が設けられている。そして、圧電部材12とFPC15との間には、圧電部材12の駆動柱12Aに駆動信号を与える駆動回路を実装したチップサイズパッケージ(以下「CSP」という。)16を設けている。
【0024】
このCSP16の出力端子と圧電部材12の駆動柱12Aの個別外部電極23及び図示しない取出し用共通外部電極(以下、単に「個別外部電極」のみで説明する。)とは半田で接合され、CSP16の入力端子とFPC15の配線電極とは半田で接合されている。
【0025】
ノズル板3は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で製造している。このノズル板3には各液室6に対応して直径10〜35μmのノズル4を形成し、流路板1に接着剤接合している。そして、このノズル板3の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室6側と反対の面)には撥水層を設けている。
【0026】
さらに、これらの圧電部材12、ベース部材13及びFPC15、CSP16などで構成される圧電アクチュエータ11の外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材17を接合している。そして、このフレーム部材17には前述した共通液室10を形成し、更に共通液室10に外部からインクを供給するための供給口を形成し、この供給口19は更に図示しないサブタンクやインクカートリッジなどのインク供給源に接続される。
【0027】
このヘッドでは、圧電柱12A、12Bは300dpiの間隔でダイシングされており.それが対向して2列配置され、個別液室6及びノズル4は、1列150dpiの間隔で2列がそれぞれ千鳥配置に整列しており,300dpiの解像度を1スキャンで得ることができる構成としている。
【0028】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば駆動柱12Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって駆動柱12Aが収縮し、振動板部材2の液室壁面を形成する振動領域2aが下降して個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内にインクが流入し、その後駆動柱12Aに印加する電圧を上げて駆動柱12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材2の振動領域2aをノズル4方向に変形させて液室6の容積を収縮させることにより、液室6内のインクが加圧され、ノズル4からインク滴が吐出(噴射)される。
【0029】
そして、駆動柱12Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材2の振動領域2aが初期位置に復元し、液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室10から液室6内にインクが充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0030】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0031】
次に、本発明の第1実施形態について図4及び図5を参照して説明する。なお、図4は同実施形態の説明に供する要部拡大説明図、図5はCSPの一例の説明に供する説明図である。
【0032】
まず、CSPとは、半導体素子の電極端子をアクティブ領域にまで形成することで、端子ピッチを大きく(千鳥配置)したり、電極端子面積を大きくできるようにしたもので、チップサイズそのままに、配線を積層し再配線として形成したパッケージ構造の総称である。
【0033】
本実施形態のCSP16は、圧電部材12の駆動柱12Aを駆動するドライバIC160の入力端子161の配線パターンと出力端子162の配線パターンをアクティブ領域にまで形成し、入力端子161及び出力端子162にそれぞれはんだバンプ163、164を形成している。
【0034】
そして、CSP16の出力端子162と駆動柱12Aの個別外部電極23とははんだバンプ164による半田164Aで接合され、CSP16の入力端子161とFPC15の配線電極とははんだバンプ163による半田163Aで接合されている。
【0035】
ここで、CSP16の出力端子と圧電部材12の個別外部電極23とを接合する半田164Aの厚みは、CSP16の入力端子とFPC15の配線電極15Aとを接合する半田163Aの厚みよりも薄くしている。
【0036】
言い換えれば、CSP16の圧電部材12側(出力端子162側)のはんだバンプ高さに対して、FPC15側(入力端子161側)のはんだバンプを高く形成している。この場合、CSP16の電極端子としては、出力端子162側は圧電部材12の駆動柱12Aに対応してライン状に形成することが好ましい。一方、CSP16の入力端子161側ははんだバンプを高く形成するため、電極形状を出力端子162よりも大きくすることが好ましい。
【0037】
つまり、ベース部材13の接合された圧電部材12とベース部材13に配置されたFPC15との間には段差があり、平行度のばらつきも発生する。そこで、CSP16の入力端子161側(FPC15側)のはんだバンプ高さを高くすることにより、段差を吸収するとともに傾きを吸収することができる。
【0038】
また、CSP16の出力端子162の接合構造としては、入力端子161側に向かうに従って、圧電部材12とのギャップが大きくなるように接合している。これにより、半田の濡れを活用してフィレットを形成することができる。そして、ギャップ部の端部で確実なる半田濡れと接合を確保することができ、ギャップが大きく形成された領域で圧電部材12とCSP16間の微細はんだ接合部の熱応力等に対して高い接合信頼性を確保することができる。
【0039】
このように、圧電部材を駆動する駆動回路が実装されたチップサイズパッケージを有し、チップサイズパッケージの出力端子と圧電部材の電極とは半田で接合され、チップサイズパッケージの入力端子と配線部材の配線電極とは半田で接合され、チップサイズパッケージの出力端子と圧電部材の電極とを接合している半田の厚みよりも、チップサイズパッケージと入力端子と配線部材の配線電極とを接合している半田の厚みが厚い構成とすることで、圧電部材の接合面と配線部材の接合面との間に段差があっても両者の電気的接続信頼性を確保することができる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態について図6ないし図9を参照して説明する。なお、図6は同実施形態の説明に供するCSPの平面説明図、図7は同じくはんだバンプを設けた状態の図6の正面説明図、図8は同じく圧電部材及びFPCとCSPとの関係の説明に供する説明図、図9は同じくノズル配列方向(圧電柱配列方向)における圧電部材及びFPCとCSPとの関係の説明図である。
【0041】
CSP16には、FPC15の配線電極15Aと接続する入力端子161と、圧電部材12の個別外部電極23と接続する出力端子162とが設けられている。CSP16の出力端子162は圧電部材12の個別外部電極23に対向してライン状に配置されている。
【0042】
また、CSP16の出力端子162は圧電部材12の個別外部電極23と接続する側を先端側とし、その反対側、即ち入力端子161側を根元側とするとき、根元側の面積を先端側よりも広く形成している。具体的には、出力端子162の入力端子161側に幅広部165を形成している。
【0043】
この幅広部165の形状は、この例では円形状であるが、出力端子162と個別外部電極23との接合部のはんだ供給量を調整することを目的とするため、幅広部165が形成されていれば、その他の形状でも良い。ただし、図8に示すように、隣接する個別外部電極23あるいは出力端子162のパターン相互の短絡を防止するため、圧電部材12と対向する接合部とは重なっていないことが条件となる。
【0044】
ここで、このCSP16を実装する圧電部材12とFPC15との平行度は保証されているものではない。つまり、微細接合を必要とする出力端子162の接合においては、出力端子162の配列方向(ノズル配列方向)両端部の出力端子162、162間において、接合高さにばらつきが発生する。
【0045】
このとき、出力端子162に幅広部165を形成していることで、出力端子162と個別外部電極23との接合部の半田量が足りない場合は、幅広部165の半田溜りから表面張力により接合部に半田が供給され、接合部で余剰の半田が発生した場合は、半田溜りで吸収することができる。
【0046】
この点について図9を参照して具体的に説明する。図9に示すように、圧電部材12とFPC15とはノズル配列方向で平行でない場合がある。CSP16の実装に当っては、端子ピッチの狭い圧電部材12側を基準に辺の平行度を調整して実装することになる。この結果、FPC15とCSP16とは傾きを有した状態で接合されることになる。
【0047】
そこで、このノズル配列方向におけるCSP16の傾きを吸収するために、入力端子161側のはんだバンプ163の高さを高くすることで、傾きを持たせたまま確実に接合することができる。
【0048】
また、圧電部材12とFPC15とは異なる構造物で構成されているため、接合面の高さにもばらつきを生じる。そこで、この接合面の高さばらつきを吸収するため、出力端子162の幅広部165において接合部へのはんだ量調整を行えるようにしている。
【0049】
これにより、出力端子162と個別外部電極23との接合部の断線、短絡等の発生を防止できるとともに、接合信頼性を向上させることができる。
【0050】
次に、本発明の第3実施形態について図10を参照して説明する。なお、図10は同実施形態の説明に供する要部拡大説明図である。
本実施形態では、CSP16の出力端子側の面における圧電部材12側の一辺166を圧電部材12の個別外部電極23の電極面に対して平行としている。そして、CSP16の上記一辺166を圧電部材12の個別外部電極23の電極面に当てて接触させることで、CSP16の出力端子162と圧電部材12の個別外部電極23との平行を確保している。
【0051】
CSP16の出力端子162と圧電部材12の個別外部電極23とを平行に配置することで、CSP16のノズル配列方向における左右端の接合部の接合ギャップを均一にでき、微細はんだの接合状態を均一化することができる。
【0052】
また、CSP16の一辺166を圧電部材12の個別外部電極23の電極面に当てて接触させる構成とすることで、簡単に平行を確保することができる。
【0053】
ここで、CSP16の出力端子162と圧電部材12の個別外部電極23との接合部は、入力端子161側に近づくに従い接合ギャップが広くなっている。一方、FPC15と接合する入力端子161側の接合部では、平行度が確保されていない場合もあるが、はんだんバンプ163を高く形成していることから、そのばらつきを吸収して安定した接合信頼性を確保することができる。
【0054】
なお、上記各実施形態の液体吐出ヘッドにインクを供給するタンクを一体にしインクタンク一体型ヘッドを構成することもできる。
【0055】
また、上記実施形態では、2つの電気構造物である液体吐出ヘッドの圧電部材と配線部材とをCSPを介して接続する例で説明したがこれに限るものではない。
【0056】
すなわち、2つの電気構造物間にチップサイズパッケージを実装するとき、チップサイズパッケージは2つの電気構造物にそれぞれ半田接合され、チップサイズパッケージの端子ピッチが狭い端子側の半田の厚みに比べて端子ピッチの広い端子側の半田の厚みが厚く、端子ピッチの狭い端子側の接合部から端子ピッチの広い側に向かうに従ってチップサイズパッケージと2つの電気構造物間のギャップが広くなっている構成とすれば、2つの電気構造物の接続信頼性を向上することができる。
【0057】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は同装置の機構部の側面説明図、図12は同機構部の要部平面説明図である。
【0058】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0059】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドと同ヘッドに供給するインクを収容するタンクを一体化した記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0060】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有し、一方の記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方の記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0061】
また、記録ヘッド234のタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0062】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0063】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0064】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0065】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0066】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0067】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0068】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0069】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0070】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0071】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0072】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0073】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0074】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0075】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0076】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0077】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 流路板
2 振動板部材
3 ノズル板
4 ノズル
5 ノズル連通路
6 加圧液室(個別液室、個別液室)
10 共通液室
12 圧電部材
12A、12B 圧電柱
15 FPC(配線部材)
15 配線電極
16 CSP
23 個別外部電極
160 ドライバIC(駆動回路)
161 入力端子
162 出力端子
163、164 はんだバンプ
163A、164A 半田
165 幅広部
233 キャリッジ
234a、234b 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルがそれぞれ通じる複数の個別液室を形成する流路部材と、
前記個別液室の一部の壁面を形成する振動板部材と、
前記振動板部材を変位させる圧電部材と、
前記圧電部材を駆動する駆動回路が実装されたチップサイズパッケージと、
前記駆動回路に接続される配線部材と、を有し、
前記チップサイズパッケージの出力端子と前記圧電部材の電極とは半田で接合され、前記チップサイズパッケージの入力端子と前記配線部材の配線電極とは半田で接合され、
前記チップサイズパッケージの出力端子と前記圧電部材の電極とを接合している半田の厚みよりも、前記チップサイズパッケージと入力端子と前記配線部材の配線電極とを接合している半田の厚みが厚い
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記チップサイズパッケージの出力端子はライン状に配置され、前記圧電部材の電極と接合している部分を先端側、先端側と反対側を根元側とするとき、前記根元側は前記先端部側よりも面積が広く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記チップサイズパッケージの出力端子側の接合面側一辺は、前記圧電部材の電極の接合面と平行であることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記チップサイズパッケージの出力端子側の接合面側一辺は、前記圧電部材の電極の接合面に当たって接していることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
2つの電気構造物間にチップサイズパッケージを実装した電気構造物の実装構造体であって、
前記チップサイズパッケージは前記2つの電気構造物にそれぞれ半田接合され、
前記チップサイズパッケージの端子ピッチが狭い端子側の半田の厚みに比べて端子ピッチの広い端子側の半田の厚みが厚く、
前記端子ピッチの狭い端子側の接合部から前記端子ピッチの広い側に向かうに従って前記チップサイズパッケージと前記2つの電気構造物間のギャップが広くなっている
ことを特徴とする電気構造物の実装構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−59940(P2013−59940A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200567(P2011−200567)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】