説明

液体吐出器

【課題】スプレーパターンの切換えを簡単な操作で行うことができると共に、異なるスプレーパターンによる内容液の吐出操作を、同様の操作で行える液体吐出器を提供する。
【解決手段】吐出ノズル14から液体を吐出する液体吐出器10であって、吐出ノズル14は、吐出器本体15のノズル連結部16に回転可能に装着され、回転軸Xを中心とする一つの仮想円C上に周方向に間隔をおいて配置された複数の噴口19a,19bと各噴口19a,19bの噴出方向前方に設けられた吐出筒20a,20bを有する。ノズル連結部16から圧送される液体に旋回流を生じさせる旋回溝18が、回転軸Xから偏心して仮想円Cと重なる位置に設けられる。吐出ノズル14を回転させ、選択された一つの噴口19aを旋回溝18、及びノズル連結部16から旋回溝18に至る液流路17と連通させることにより、噴口19aから液体を吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ノズルから液体を吐出する液体吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトリガー式スプレイヤー等の液体吐出器を取り付けた吐出容器では、トリガー等を介した吐出操作によって吐出ノズルの噴口から噴出する内容液を、噴出方向前方に配置される吐出筒によって吐出範囲を規制しつつ例えば霧状態で噴出させる。また、噴口から内容液を噴出させる液体吐出器では、噴口の前方に空気を供給することにより、吐出筒を発泡筒として機能させて内容液を発泡状態で吐出させることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
さらに、例えば内容液を吐出する箇所によっては、扁平で幅の広いスプレーパターンで吐出させた方が、被吐出面に対して効率良く内容液を吐出できる場合もあることから、扁平な長楕円形状や長円形状のスプレーパターンと、幅の狭いスポット的なスプレーパターンとを切り換えることを可能にした液体吐出器も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらにまた、吐出器本体のノズル連結部に装着した吐出ノズルを回転操作することにより、吐出筒を備えていない吐出ノズルの一箇所の噴口から、噴射角度の異なる2種類の吐出パターンを選択できるようにした液体吐出器も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平4−285746号公報
【特許文献2】特開2004−255327号公報
【特許文献3】米国特許第4247048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の液体吐出器では、内容液を発泡状態で吐出させる発泡ノズルは、幅の広いスプレーパターンと幅の狭いスプレーパターンとの切り換えを、発泡ノズルにヒンジ連結されたノズルカバーの開閉操作によって行うようになっている。このため、ノズルカバーを閉じた状態の幅の狭いスプレーパターンでは、ノズルカバーに設けた吐出開口から内容液が吐出されることから、ノズルカバーに内容液が付着して、付着した内容液がノズルカバーの開閉時に周囲にこぼれ易くなると共に、開閉操作を行う際に手や指を汚しやすい。
【0006】
また、特許文献2に記載の液体吐出器では、ノズルカバーの開閉操作によるスプレーパターンの切り換えを行いにくい。さらに、吐出可能状態と吐出が制限された状態の切り換えはノズルの回転によって制御されるため、スプレーパターンと吐出の制御の操作部位、操作方法が異なるため、操作がわかりにくく、また、操作しずらい場合がある。また、ノズルカバーを開いた状態の幅の広いスプレーパターンでは、幅の狭いスプレーパターンの場合と異なり、ノズルカバーによって吐出開口が遮られないように、ノズルカバーを上方に回転させて持ち上げた状態を保持しておく必要があると共に、液体吐出器の向きによっては、ノズルカバーがかえって邪魔になる場合がある。
【0007】
特許文献3に記載の液体吐出器では、吐出筒を備えていない吐出ノズルの一箇所の噴口の位置を、吐出ノズルの回転操作によって移動させ、当該一箇所の噴口をノズル連結部の上部の旋回流路を介した流路と連通させるか、或いは当該一箇所の噴口をノズル連結部の下部の旋回流路を介さない流路と連通させるかにより、単に噴射状態での液体の吐出と、水鉄砲状態での液体の吐出との切り換えを行えるようにしたものである。従って、噴口は各々の吐出状態で180度回転した上下に異なる位置に開口することになるため、吐出対象物の特定の箇所に正確に液体を吐出させる操作を行い難い。また、特許特許文献3に記載の液体吐出器では、旋回流路を介した噴射状態、或いは発泡状態での種々のスプレーパターンを選択させるものではない。
【0008】
本発明は、手や指を汚すことなくスプレーパターンの切換えを簡単な操作で容易に行うことができると共に、種々のスプレーパターンに容易に対応することができ、且つ異なるスプレーパターンによる内容液の吐出操作を、同様の操作で吐出対象物に対して精度良く行うことのできる液体吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、吐出ノズルから液体を吐出する液体吐出器であって、前記吐出ノズルは、吐出器本体のノズル連結部に回転可能に装着され、回転軸を中心とする一つの仮想円上に周方向に間隔をおいて配置された複数の噴口と各噴口の噴出方向前方に設けられた吐出筒を有しており、前記ノズル連結部に圧送される液体の流路は、前記回転軸から偏心した前記仮想円に沿った所定位置まで連通可能に形成され、前記吐出ノズルを回転させて、前記複数の噴口から選択された一つの噴口を前記所定位置に配置することにより、前記ノズル連結部の流路と噴口まで至る流路とを連通させて前記噴口から液体を吐出させる液体吐出器を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体吐出器によれば、手や指を汚すことなくスプレーパターンの切換えを簡単な操作で容易に行うことができると共に、種々のスプレーパターンに容易に対応することができ、且つ異なるスプレーパターンによる内容液の吐出操作を、同様の操作で吐出対象物に対して精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい一実施形態に係る液体吐出器は、図1に示すように、例えばトリガースプレイヤー10であって、液体吐出容器であるトリガー式スプレイヤー容器11の容器本体12の口首部13に装着固定されて用いられる。トリガースプレイヤー10の基本的な構造は、例えば液体洗剤等の液体を霧状態又は発泡状態にして吐出させるスプレイヤーとして公知のものであり、スプレイヤー本体(吐出器本体)15に回動可能にピン結合されたトリガー15aを操作部として、例えばスプレイヤー本体15の内部に設けたシリンダー部の付勢力に抗して、口首部13側に繰り返し引き寄せる操作を行うことにより、容器本体12から吸引パイプを介して内容液(液体)をスプレイヤー本体15に汲み上げると共に、汲み上げた内容液を霧状態又は発泡状態にして先端の吐出ノズル14から吐出させる機能を備えるものである。
【0012】
そして、本実施形態の液体吐出器としてのトリガースプレイヤー10は、吐出ノズル14から内容液を吐出する吐出器であって、図2〜図5に示すように、吐出ノズル14は、吐出器本体15のノズル連結部16に回転可能に装着され、回転軸Xを中心とする一つの仮想円C(図3,図5参照)上に周方向に間隔をおいて配置された複数(本実施形態では2つ)の噴口19a,19bと各噴口19a,19bの噴出方向前方に設けられた吐出筒20a,20bを有しており、噴口19a,19bの上流側に設けられてノズル連結部16から圧送される液体に旋回流を生じさせる旋回流路が、回転軸Xから偏心して仮想円Cと重なる位置に設けられており、図5によれば、旋回溝18によって旋回流路が形成されている。そして、吐出ノズル14を回転させ、複数の噴口19a,19bから選択された一つの噴口(例えば噴口19a)を旋回溝18(旋回流路)、及びノズル連結部16から旋回溝18(旋回流路)に至る液流路17(図4参照)と連通させることにより、噴口19aから液体を吐出させるようになっている。
【0013】
また、本実施形態では、旋回溝18は、複数の噴口19a,19bの背面側に各々配置されて、吐出ノズル14に設けられている(図7参照)。さらに、本実施形態では、複数の噴口19a,19bの噴出方向前方に各々設けられた吐出筒20a,20bは、異なる形状及び/又は大きさの開口形状を有している(図3、図5参照)。
【0014】
本実施形態では、トリガースプレイヤー10を構成する吐出ノズル14は、例えば合成樹脂成形品であって、図8にも示すように、ノズル本体22とノズルチップ23とからなる。ノズル本体22は、回転円盤部24を挟んだ噴出方向前方側に配置されるチップ嵌着部25と、噴出方向後方側に配置される回転装着部26とからなる。
【0015】
チップ嵌着部25は、回転円盤部24の周縁部から前方に一体として延設する高さの低い円環状の壁部分である。チップ嵌着部25には、その基端部内周面の段差部25bに近接して係合凹部25aが設けられており、この係合凹部25aに、ノズルチップ23の後端部外周面に設けられた係合凸部23aを係止して、チップ嵌着部25にノズルチップ23が嵌着固定される。
【0016】
回転装着部26は、回転円盤部24の周縁部から後方に一体として延設する円筒状の外殻スカート部27と、外殻スカート部27の内側に同心状に配置されて回転円盤部24から後方に一体として延設する円環状ガイドリブ部28と、円環状ガイドリブ部28の内側に同心状に配置されて回転円盤部24の中央部分から後方に一体として延設する円筒スリーブ部29とからなり、ノズル連結部16に対して周方向に回動可能に装着される。
【0017】
外殻スカート部27には、その後端部の内側面に係合凹部27aが設けられており、この係合凹部27aを、ノズル連結部16の基端部から外側に張り出す円盤状の回転支持フランジ部30の外周面に設けられた係合凸部30aに回転可能に係止することにより、外殻スカート部27がノズル連結部16を覆って取り付けられる。なお、外殻スカート部27の外周面には、好ましくはローレット加工等を適宜施しておくことにより、吐出ノズル14のノズル連結部16に対する回転操作を行い易くすることができる。また、外殻スカート部27の外周面には、表示部を設けて例えば「広」、「狭」、「止」等の表示を施しておき、これらの表示を例えば吐出器本体15に設けた目印と合致させることにより、吐出筒20a,20bの形状、大きさに応じた吐出パターンや、吐出ノズル14から内容液を吐出させない状態への切り換えを行い易くすることができる。
【0018】
円環状ガイドリブ部28は、回転装着部26がノズル連結部16に装着された際に、ノズル連結部16の先端部分に設けられた先端円盤部31の外周面に沿って回転スライド可能に密着配置される。円環状ガイドリブ部28は、先端円盤部31の外周面に沿って回転スライドすることにより、先端円盤部31と共に回転ガイド部を構成し、吐出ノズル14のノズル連結部16に対する回転操作をより安定した状態で行えるようにする。また、円環状ガイドリブ部28は、先端円盤部31の外周面と密着してアウターリングとしても機能し、先端円盤部31の連通路21(図6参照)に流入した内容液が、先端円盤部31と回転円盤部24との間の隙間を介してノズル連結部16の外側に漏れ出るのを防止する。
【0019】
円筒スリーブ部29は、回転装着部26がノズル連結部16に装着された際に、ノズル連結部16の中央を貫通すると共に先端円盤部31の先端面の中央部分に開口する連絡流路32に挿入配置される。すなわち、円筒スリーブ部29は、その外周面を連絡流路32の内周面に回転可能に密着させた状態で連絡流路32の先端開口から挿入され、連絡流路32の先端を閉塞する。また、円筒スリーブ部29には、その外周面に、周方向にノズル連結部16の連通路21の間隔に合わせた間隔をおいて、例えば概ね120度の中心間の角度間隔をおいて3箇所に切欠き形成した、切欠き連通溝33a,33b,33cが設けられる(図5、図7、図8参照)。ここで、3箇所の切欠き連通溝33a,33b,33cは、後述する旋回流路(旋回溝18)を挟んだ両側に位置する一対の切欠き連通溝33a,33b、或いは一対の切欠き連通溝33b,33cの間の角度間隔を120度よりやや小さくし、中間部分に旋回流路(旋回溝18)が配置されない残りの一対の切欠き連通溝33c,33aの間の角度間隔を120度より大きくすると、旋回流路(旋回溝18)が設けられていない切欠き連通溝33aと切欠き連通溝33cとの間の範囲で、ノズル連結部16の連通路21を配置させても、切欠き連通溝33a,33cと連通路21とが連通することなく、回転円盤部24に至る前に切欠き連通溝33から連通路21に至る流路を閉塞することができる。
【0020】
この切欠き連通溝33a,33b,33cが、先端円盤部31に設けられた連通路21と合致するように、吐出ノズル14をノズル連結部16に対して回転操作することにより、連通路21への流路を開放してノズル連結部16から旋回溝18(旋回流路)に至る液流路17を形成し、ノズル連結部16の連絡流路32から切欠き連通溝33a,33b,33cを介して連通路21に液体を送り込むことが可能になる。また切欠き連通溝33a,33b,33cが連通路21と合致しないように吐出ノズル14を回転操作することにより、連通路21への流路を閉塞することが可能になる。すなわち、ノズル連結部16から旋回溝18(旋回流路)に至る液流路17は、吐出ノズル14をノズル連結部16に対して回転させることにより連通路21への流路を開閉して、開放状態と閉塞状態を切り換えることができる。
【0021】
ノズル本体22の回転円盤部24は、チップ嵌着部25と回転装着部26とを区画する円形平板状の部分である。回転円盤部24には、吐出ノズル14の回転軸Xを中心とする一つの仮想円C上に、例えば120度の中心間の角度間隔をおいて、当該回転円盤部24を貫通する噴口19a,19bが2箇所に開口形成される(図3、図5参照)。また回転円盤部24の背面には、中心を各噴口19a,19bに各々合致させて、導入部18aと旋回部18bとからなる旋回溝18が、2箇所に形成される(図5,図7参照)。これらの旋回溝18は、各噴口19a,19bが配置される中心を、例えば概ね120度の中心間の角度間隔で円筒スリーブ部29に形成された切欠き連通溝33a,33b,33cの中間の角度位置に配設して設けられる。本実施形態では、ノズル本体22の各噴口19a,19bの裏側に、各々旋回溝18が設けられるので、各噴口19a,19bの旋回流を異なるものとすることが可能で、吐出筒20a,20bと旋回溝18(旋回流路)との組合せによってスプレーパターンを任意のものに設計することができる。例えば、旋回流を強くかけるとスプレーパターンは広がり、旋回流が全くかからないと水鉄砲状に吐出され、その中間ではストリーム状に吐出される。
【0022】
ノズル本体22のチップ嵌着部25に嵌め込まれるノズルチップ23は、チップ嵌着部25の段差部25bよりも前方部分の中空内部と同様の外径及び高さを備える円盤ドラム形状を有している(図4、図5、図8参照)。ノズルチップ23には、異なる形状及び/又は大きさの開口形状として、開口面積の大きな長円形断面形状の第1吐出筒20aと、開口面積の小さな円形断面形状の第2吐出筒20bとが、例えば120度の中心間の角度間隔をおいて、ノズルチップ23を貫通して開口形成される。ノズルチップ23は、後端部外周面に設けられた係合凸部23aをチップ嵌着部25の係合凹部25aに係止してチップ嵌着部25に嵌着する際に、第1吐出筒20aと第2吐出筒20bの中心を、ノズル本体22の回転円盤部24に形成された噴口19a,19bに各々合致させて固定することにより、吐出筒20a,20bを各噴口19a,19bの噴出方向前方に配置する。
【0023】
また、ノズルチップ23は、その背面部23cの周縁部分を段差部25bに当接させた状態でチップ嵌着部25に嵌着固定されることにより、背面部23cとノズル本体22の回転円盤部24との間に隙間34が保持される。例えばチップ嵌着部25の基端部分に設けた通気孔(図示せず。)や、液流路17と連通して液体を吐出する例えば噴口19aとは別の噴口19bの前方に設けられた吐出筒20bから、隙間34に空気を導入することにより、噴口19aの噴出方向前方に空気を供給して、噴口19aから霧状態で噴出する液体に空気を巻き込ませて発泡状態で吐出させることが可能になる。
【0024】
吐出ノズル14が回転可能に装着される吐出器本体15のノズル連結部16は、吐出器本体15の吐出ノズル14側の端部に設けられ、上述のように、吐出ノズル14の外殻スカート部27を支持する回転支持フランジ部30と、吐出ノズル14の円環状ガイドリブ部28が装着される先端円盤部31と、回転支持フランジ部30と先端円盤部31との間に介在してこれらを連結一体化する中空パイプ部35とからなる(図2、図4、図8参照)。中空パイプ部35の内側には、連絡流路32が貫通形成される。連絡流路32の両端は、先端円盤部31の先端面の中央部分及び回転支持フランジ30の後端面の中央部分で開口する。本体流路36を介して吐出器本体15から圧送される液体は、ノズル本体22を回転操作して円筒スリーブ部29に形成した切欠き連通溝33a,33b,33cが先端円盤部31に設けた連通路21に合致した際に、連絡流路32から切欠き連通溝33a,33b,33c及び連通路21を介して旋回流路(旋回溝18)に至る液流路17を通過し、旋回流路(旋回溝18)に流入する。旋回流路(旋回溝18)に流入した液体は、その圧送圧力によって、旋回流路(旋回溝18)を通過しつつ旋回流となり、噴口19a及び吐出筒20aを経て前方に噴射される。
【0025】
本第1実施形態では、ノズル連結部16の先端において先端円盤部31に形成され、ノズル連結部16の連絡流路32と旋回流路(旋回溝18)とを連通する連通路21は、周方向の所定の位置として、例えば先端円盤部31の上部に配置される(図5、図6参照)。また、連通路21は、略扇形の平面形状を有しており、先端円盤部31の中央を上下に縦断する中心線Zを挟んだ両側に対称に配置されて、一対設けられる。連通路21は、略扇形の平面形状の内側縁部が連絡流路32の開口縁部を切り欠くようにして連絡流路32と連通すると共に、連絡流路32から放射方向に延設し、仮想円Cの内側と外側に跨るように形成される。吐出ノズル14を回転操作して、例えば噴口19aが仮想円C上の最上部に配置された際に、旋回流路(旋回溝18)の両側の導入部18aの先端が各々と連通路21と重なって、連通路21から液体が旋回流路(旋回溝18)に流入可能な状態となる。
【0026】
また、旋回流路を形成する旋回溝18は、上述のように、噴口19aが開口する中心を、円筒スリーブ部29に形成された切欠き連通溝33a,33b,33cの中間の角度位置に配設してノズル本体22に設けられているので、噴口19aが仮想円C上の最上部に配置された際に、切欠き連通溝33a,33b,33cが連通路21の内側縁部と各々合致して(図5参照)、ノズル連結部16から旋回溝18に至る液流路17が開放されることになる(図4参照)。これらによって、仮想円C上の最上部を吐出ノズル14における一定の吐出位置として、噴口19a(又は噴口19b)から、トリガー15aを操作しつつ液体を安定した状態で精度良く吐出対象物に向けて噴出することが可能になる。
【0027】
上述の構成を備える本実施形態の液体吐出器としてのトリガースプレイヤー10では、吐出ノズル14をノズル連結部16に対して概ね120度づつ回転させ、図9(a)〜(c)に模式図として示すように、長円形断面形状の第1吐出筒20aの中心に配置した噴口19aが仮想円C(図3参照)上の最上部に配置されて、噴口19a及び第1吐出筒20aから内溶液を吐出可能な状態(図9(a)参照)と、円形断面形状の第2吐出筒20bの中心に配置した噴口19bが仮想円C上の最上部に配置されて、噴口19b及び第2吐出筒20bから内溶液を吐出可能な状態(図9(b)参照)と、噴口19a,19bから周方向に120度離れた部分38が仮想円C上の最上部に配置されて、液体の吐出が遮断された「止め」の状態(図9(c)参照)とを切り換えながら、当該トリガースプレイヤー10が装着されたトリガー式スプレイヤー容器11を使用する。
【0028】
すなわち、図9(a)に示す状態では、トリガースプレイヤー10のトリガー15aを操作して、長軸方向の長さの長い長円形断面形状の第1吐出筒20aから、吐出対象物に対して扁平で幅の広いスプレーパターンで発泡させつつ液体を吐出させることが可能になる。また図9(b)に示す状態では、トリガースプレイヤー10のトリガー15aを操作して、内径の短い円形断面形状の第2吐出筒20bから、吐出対象物に対して幅の狭いスポット的なスプレーパターンで発泡させつつ内容液を吐出させることが可能になる。さらに、図9(c)に示す状態では、例えばノズル連結部16から旋回流路(旋回溝18)に至る液流路17を閉塞状態として液体の吐出を遮断することにより、トリガー15aを口首部13側に引き寄せる操作を誤って行った場合でも、このような誤動作によって吐出ノズル14から内容液が吐出されないようにすることが可能になる。
【0029】
そして、本実施形態のトリガースプレイヤー10によれば、手や指を汚すことなくスプレーパターンの切換えを簡単な操作で容易に行うことができると共に、種々のスプレーパターンに容易に対応することができ、且つ異なるスプレーパターンによる内容液の吐出操作を、同様の操作で吐出対象物に対して精度良く行うことが可能になる。
【0030】
すなわち、本実施形態によれば、吐出ノズル14をノズル連結部16に対して回転させ、複数の噴口19a,19bから一つの噴口を選択して例えば仮想円C上の最上部に位置決めすることにより、異なる形状の吐出筒20a,20bによるスプレーパターンを適宜選択することができる。これによって、吐出ノズル14を指で把持して回転させるだけの簡単な操作により、ノズルカバー等の開閉蓋を開閉する操作を要することなく、容易にスプレーパターンを切り換えることが可能になる。また、ノズルカバー等の開閉蓋を使用しないので、これらに内容液が付着したり、切り換え操作時に手や指に内容液が付着するのを効果的に回避することが可能になる。さらに、スプレーパターンの切り換えは、吐出ノズル14の回転操作のみによって行われるので、幅の広いスプレーパターンによる内容液の吐出と幅の狭いスポット的なスプレーパターンによる内容液の吐出の操作自体を何等変更することなく、かつ開閉蓋が邪魔になって煩わしさ感じることなく、スムーズに吐出操作を行うことが可能になる。
【0031】
さらにまた、例えば仮想円C上の最上部を吐出ノズル14における一定の吐出位置として、当該吐出位置に噴口19a,19b及び吐出筒20a,20bを移動させながらスプレーパターンを切り換えて液体を吐出するので、スプレーパターンのいかんにかかわらず、吐出ノズル14の先端部の特定の位置から常時液体を吐出させることができ、これによって吐出対象物の所定の吐出箇所に内容液を精度良く吐出させることが可能になる。
【0032】
また、本実施形態によれば、吐出ノズル14の回転操作によって、内容液の吐出を「止め」の状態に容易に切り換えることも可能になり、また例えば吐出ノズル14の適宜の位置に、「広」、「狭」、「止」等の表示を設けて、これらの表示を例えば吐出器本体15に設けた目印に合わるように吐出ノズル14を回転させてスプレーパターンの切り換えを行うようにしておくことにより、ノズル部14の先端等を覗き見ることなく、容易にスプレーパターンを切り換えたり、識別したりすることが可能になる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、噴口の噴出方向前方に設けられる吐出筒の開口形状は、円形や長円形以外の、その他の種々の形状や大きさを備えるものであっても良く、これによって種々のスプレーパターンに容易に対応させることが可能になる。また、噴口及び吐出筒は、仮想円上に、周方向に間隔をおいて3箇所以上設けることもできる。さらに、吐出ノズルは、液体を泡状にして吐出させる発泡ノズルである必要は必ずしもなく、液体を単に霧状に吐出させるもの等であっても良い。さらにまた、液体吐出器は、トリガースプレイヤー以外の、吐出ノズルから液体を吐出するその他の種々の液体吐出器であっても良い。
【0034】
また、旋回流路を形成する旋回溝は、噴口の背面側に配置して吐出ノズルに設ける必要は必ずしもなく、吐出器本体のノズル連結部に設けることもできる。例えば、図10に示すように、旋回溝18’を、一対の連通路21と連通させてノズル連結部16の先端円盤部31に設けておき、吐出ノズルを回転操作して吐出ノズルに形成した複数の噴口から選択された一つの噴口を旋回溝18’の中心に合致させることにより、当該合致した噴口から液体を吐出させることもできる。この場合は、旋回溝18は一つであるため、各噴口19a,19b、即ち各吐出筒20a,20bに同じ旋回溝18による旋回流がかけられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る液体吐出器を取り付けた液体吐出容器の要部側面図である。
【図2】吐出ノズルを吐出器本体のノズル連結部に装着した状態を示す、吐出ノズルのみを図3のA−Aに沿った断面図で表した要部側面図である。
【図3】図2を左側から見た要部正面図である。
【図4】吐出ノズルを吐出器本体のノズル連結部に装着した状態を示す、図3のA−Aに沿った要部断面図である。
【図5】図4を左側から見た要部正面図である。
【図6】ノズル連結部を斜め前方から見た斜視図である。
【図7】吐出ノズルを斜め後方から見た斜視図である。
【図8】吐出ノズルを吐出器本体のノズル連結部に装着した状態を、上半分の部分を切り欠いて示す要部斜視図である。
【図9】(a)〜(c)は、吐出ノズルを回転させることにより、スプレーパターンの切り換えを行う状況を説明する吐出ノズルを正面から見た模式図である。
【図10】ノズル連結部の旋回溝を設けた他の形態を例示する斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10 トリガースプレイヤー(液体吐出器)
11 トリガー式スプレイヤー容器(液体吐出容器)
14 吐出ノズル
15 スプレイヤー本体(吐出器本体)
16 ノズル連結部
17 液流路
18 旋回溝(旋回流路)
19a,19b 噴口
20a 第1吐出筒
20b 第1吐出筒
21 連通路
22 ノズル本体
23 ノズルチップ
24 回転円盤部
25 チップ嵌着部
26 回転装着部
27 外殻スカート部
28 円環状ガイドリブ部
29 円筒スリーブ部
30 回転支持フランジ部
31 先端円盤部
32 連絡流路
33a,33b,33c 切欠き連通溝
34 ノズルチップの回転円盤部との間の隙間
C 仮想円
X 回転軸
Z 先端円盤部の中央を上下に縦断する中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ノズルから液体を吐出する液体吐出器であって、
前記吐出ノズルは、吐出器本体のノズル連結部に回転可能に装着され、回転軸を中心とする一つの仮想円上に周方向に間隔をおいて配置された複数の噴口と各噴口の噴出方向前方に設けられた吐出筒を有しており、
前記ノズル連結部に圧送される液体の流路は、前記回転軸から偏心した前記仮想円に沿った所定位置まで連通可能に形成され、
前記吐出ノズルを回転させて、前記複数の噴口から選択された一つの噴口を前記所定位置に配置することにより、前記ノズル連結部の流路と噴口まで至る流路とを連通させて前記噴口から液体を吐出させる液体吐出器。
【請求項2】
前記噴口の背面側には前記ノズル連結部を介して圧送される液体に旋回流を生じさせる旋回流路が、前記回転軸から偏心して前記仮想円と重なる位置に設けられ、
前記吐出ノズルを回転させ、前記複数の噴口から選択された一つの噴口を前記所定位置に配置したときに、前記ノズル連結部から前記旋回流路を経て噴口に至る流路を連通させて前記噴口から液体を吐出させる請求項1記載の液体吐出器。
【請求項3】
前記複数の噴口の噴出方向前方に各々設けられた吐出筒は、異なる形状及び/又は大きさの開口形状を有する請求項1又は2に記載の液体吐出器。
【請求項4】
前記ノズル連結部から前記旋回流路に至る液流路は、前記ノズル連結部の先端において周方向の所定の位置で放射方向に延設する連通路を介して連通するようになっており、
前記吐出ノズルを回転させ、前記複数の噴口から選択された一つの噴口を前記旋回流路及び前記連通路と連通させることにより、前記噴口から液体を吐出させる請求項1〜3のいずれかに記載の液体吐出器。
【請求項5】
前記ノズル連結部から前記旋回溝に至る液流路は、前記吐出ノズルを前記ノズル連結部に対して回転させることにより前記連通路への流路を開閉して、開放状態と閉塞状態を切り換えるようになっている請求項4記載の液体吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−319771(P2007−319771A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152162(P2006−152162)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】