説明

液体吐出検査装置、液体吐出検査方法、印刷装置、及びプログラム

【課題】印刷画像を読み取るセンサーを用いた吐出検査の欠点を補うことにある。
【解決手段】本発明に係る液体吐出検査装置は、媒体に形成された印刷画像を読み取る第一センサーと、ノズル毎に液体の吐出不良の有無を検知する第二センサーと、を備え、前記印刷画像を形成するための印刷処理と並行して前記第一センサーにより媒体に形成された印刷画像を読み取り、読み取った当該印刷画像に基づいて吐出不良の有無を検出する第一検出処理を実行し、前記第一検出処理において吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二センサーからの検知結果に基づいて吐出不良の有無をノズル毎に検出する第二検出処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出検査装置、液体吐出検査方法、印刷装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙やフィルム等の各種媒体に対してインク等の液体を吐出することにより印刷画像を形成するヘッドと、前記ヘッドにより形成された前記印刷画像を読み取るセンサー(たとえば、スキャナー等)と、を有するインクジェットプリンター等の印刷装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−240911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このインクジェットプリンターでは、ノズルが目詰まりして液滴を吐出できない場合がある(吐出不良)。これによってドット抜けが発生し、印刷画像を劣化させる原因となる。
このような吐出不良を検出するための吐出検査の1つとして、印刷画像をスキャナーで読み取り、スキャナーで読み取った読取データと基準データとを比較して、ノズルの吐出不良を検出する吐出検査がある。しかし、この吐出検査では、印刷中に検査することができるものの、複数色のドットが重なった印刷画像をスキャナーで読み取るため、ノズル毎に検査することが困難であった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、印刷画像を読み取るセンサーを用いた吐出検査の欠点を補うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための主たる発明は、
媒体に形成された印刷画像を読み取る第一センサーと、
ノズル毎に液体の吐出不良の有無を検知する第二センサーと、
を備え、
前記印刷画像を形成するための印刷処理と並行して前記第一センサーにより媒体に形成された印刷画像を読み取り、
読み取った当該印刷画像に基づいて吐出不良の有無を検出する第一検出処理を実行し、
前記第一検出処理において吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二センサーからの検知結果に基づいて吐出不良の有無をノズル毎に検出する第二検出処理を実行する液体吐出検査装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンター1の構成を示すブロック図である。
【図2】プリンター1の構成を示す概略図である。
【図3】複数のヘッド31の配列を示す図である。
【図4】ヘッド31の断面図である。
【図5】ヘッド31のノズル配列を示す図である。
【図6】ノズル配列とドット形成の様子を説明する図である。
【図7】吐出不用発生時の印刷画像を示す図である。
【図8】図7において四角枠で囲ったドット不良箇所の拡大図である。
【図9】スキャンレートを7msとした場合に、スキャナー71で印刷画像を読み取った読取データを説明する図である。
【図10】図7に示す印刷画像をスキャナー71で読み取った読取画像を示す図である。
【図11】図10において四角枠で囲ったドット不良箇所の拡大図である。
【図12】第二検査ユニット80の一例を説明する図である。
【図13】図13Aは、ピエゾ素子の残留振動に応じて出力される信号を示す図である。図13Bは、オペアンプの出力をコンデンサーと抵抗からなる高域通過フィルターを通過した後に出力される信号を示す図である。図13Cは、コンパレーターを通過した後に出力される信号を示す図である。
【図14】図14Aは、気泡が混入した状態を示す図である。図14Bは、乾燥増粘した状態を示す図である。図14Cは、紙粉がノズルに付着した状態を示す図である。
【図15】ドット抜け検査の動作例を示すフローチャートである。
【図16】ドット抜け検査動作における判定条件を説明する図である。
【図17】図17A乃至図17Dは、第一検出処理における異常ノズルの配置と第二検出処理における異常ノズルの配置とを比較して示した図である。
【図18】図18Aは、第二検査ユニット80の他の例を説明する図である。図18Bは、検出制御部87を説明するブロック図である。
【図19】図19Aは、駆動信号を示す図である。図19B及び図19Cは、増幅器から出力される電圧信号を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
即ち、媒体に形成された印刷画像を読み取る第一センサーと、
ノズル毎に液体の吐出不良の有無を検知する第二センサーと、
を備え、
前記印刷画像を形成するための印刷処理と並行して前記第一センサーにより媒体に形成された印刷画像を読み取り、
読み取った当該印刷画像に基づいて吐出不良の有無を検出する第一検出処理を実行し、
前記第一検出処理において吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二センサーからの検知結果に基づいて吐出不良の有無をノズル毎に検出する第二検出処理を実行する液体吐出検査装置である。
このような液体吐出検査装置によれば、第一センサーが吐出不良を印刷中に検知した場合に、第二センサーが吐出不良をノズル毎に検知するため、第一センサーの欠点を補うことができる。このため、吐出不良の検出精度を向上させることができる。
【0008】
また、かかる液体吐出検査装置であって、
前記第二検出処理において、吐出不良が有る場合と無い場合のうち、吐出不良が有ると判定した場合に、吐出不良の有る異常ノズルに対して液体の吐出を回復させる回復処理をコントローラーが行うこととしてもよい。
このような液体吐出検査装置によれば、異常ノズル及び正常ノズルのうちの異常ノズルに対して回復処理が行われるため、消費インクの無駄を抑えることができるとともに、回復処理を短時間で行うことができる。
【0009】
また、かかる液体吐出検査装置であって、
前記第一検出処理において吐出不良の有る異常ノズルを推定し、前記第二検出処理において、前記第一検出処理で推定された前記異常ノズル以外の正常ノズルに対して吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二センサーの検知結果に基づき前記回復処理をコントローラーが行うこととしてもよい。
このような液体吐出検査装置によれば、第一センサーよりも検出精度が高い第二センサーの検出結果を重視することにより、再検査を行うことなく、早期に回復処理を行うことができる。
【0010】
また、かかる液体吐出検査装置であって、
前記第一検出処理において吐出不良の有る異常ノズルを推定し、前記第二検出処理において、前記第一検出処理で推定された前記異常ノズルに対して吐出不良が無いと判定した場合に、再び前記第二検出処理をコントローラーが行うこととしてもよい。
このような液体吐出検査装置によれば、かかる場合に再検査を行うことにより、直ちに回復動作を行わずに済むため、消費インクの無駄を抑えることができる。また、再検査の際、第一検出処理よりも検出精度が高い記第二検出処理を行うことにより、吐出不良の検出精度を向上させることができる。
【0011】
また、媒体に対してノズルから液体を吐出することにより印刷画像を形成するヘッドと、上記の液体吐出検査装置と、を備える印刷装置である。
このような印刷装置によれば、第一センサーが吐出不良を印刷中に検知した場合に、第二センサーが吐出不良をノズル毎に検知するため、第一センサーの欠点を補うことができる。
【0012】
また、液体吐出検査装置を用いる液体吐出検査方法であって、
前記液体吐出検査装置は、媒体に形成された印刷画像を読み取る第一センサーと、ノズル毎に液体の吐出不良の有無を検知する第二センサーと、コントローラーと、を有し、
前記コントローラーにより、前記印刷画像を形成するための印刷処理と並行して前記第一センサーにより媒体に形成された印刷画像を読み取り、読み取った当該印刷画像に基づいて吐出不良の有無を検出する第一検出処理を実行し、前記第一検出処理において吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二センサーからの検知結果に基づいて吐出不良の有無をノズル毎に検出する第二検出処理を実行する液体吐出検査方法である。
このような液体吐出検査方法によれば、第一センサーが吐出不良を印刷中に検知した場合に、第二センサーが吐出不良をノズル毎に検知するため、第一センサーの欠点を補うことができる。
【0013】
また、媒体に形成された印刷画像を読み取る第一センサーと、ノズル毎に液体の吐出不良の有無を検知する第二センサーと、コントローラーと、を有する液体吐出検査装置に、
前記印刷画像を形成するための印刷処理と並行して前記第一センサーにより媒体に形成された印刷画像を読み取り、読み取った当該印刷画像に基づいて吐出不良の有無を検出する第一検出処理を実行させ、前記第一検出処理において吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二センサーからの検知結果に基づいて吐出不良の有無をノズル毎に検出する第二検出処理を実行させるためのプログラムである。
このようなプログラムによれば、第一センサーが吐出不良を印刷中に検知した場合に、第二センサーが吐出不良をノズル毎に検知するため、第一センサーの欠点を補うことができる。
【0014】
===実施の形態===
<<<液体吐出検査装置について>>>
液体吐出検査装置は、印刷装置に組み込んだ状態で用いられる。また、工程内で用いる場合には専用装置として構成することもできる。以下に説明する実施形態では、印刷装置に組み込まれた液体吐出検査装置について説明する。具体的には、インクジェットプリンター1(以下、単に「プリンター1」ともいう。)を例に挙げて説明する。この場合、プリンター1は、印刷装置の一例であり、液体吐出検査装置の一例でもある。
【0015】
<<<プリンター1の構成例について>>>
プリンター1の構成例について、図1乃至図8を用いて説明する。図1は、プリンター1のブロック図である。図2は、プリンター1の構成を示す概略図である。図3は、複数のヘッド31の配列を示す図である。図4は、ヘッド31の断面図である。図5は、ヘッド31のノズル配列を示す図である。図6は、簡略説明用のノズル配置とドット形成の様子の説明図である。図7は、吐出不用発生時の印刷画像を示す図である。図8は、図7において四角枠で囲ったドット不良箇所の拡大図である。
【0016】
プリンター1は、用紙、布、フィルム等の媒体に向けて、液体の一例としてのインクを吐出するものであり、コンピューターCPと通信可能に接続されている。コンピューターCPは、プリンター1に画像を印刷させるため、その画像に応じた印刷データをプリンター1に送信することができる。
【0017】
本実施の形態に係るプリンター1は、図1に示すように、搬送ユニット10と、キャリッジユニット20と、ヘッドユニット30と、駆動信号生成部40と、インク吸引ユニット50と、ワイピングユニット55と、フラッシングユニット60と、第一検査ユニット70と、第二検査ユニット80と、検出器群90と、これらのユニット等を制御しプリンター1としての動作を司るコントローラー100と、を有している。
【0018】
搬送ユニット10は、媒体(例えば、連続紙Sなど)を所定の方向(以下、「搬送方向」という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、図2に示すように、上流側ローラー12A及び下流側ローラー12Bと、ベルト14とを有する。不図示の搬送モーターが回転すると、上流側ローラー12A及び下流側ローラー12Bが回転し、ベルト14が回転する。給紙された連続紙Sは、ベルト14によって、印刷処理の実行可能な領域、つまり、ヘッドユニット30(ヘッド31)と対向する領域(以下、「印刷エリア」という)まで搬送される。ベルト14が連続紙Sを搬送することによって、連続紙Sがヘッド31に対して搬送方向に移動する。印刷エリアを通過した連続紙Sは、ベルト14によって下流側の第一検査ユニット70(スキャナー71)へ向って搬送される。なお、搬送中の連続紙Sは、ベルト14に静電吸着又はバキューム吸着されている。
【0019】
キャリッジユニット20は、ヘッドユニット30(ヘッド31)を移動させるためのものである。このキャリッジユニット20は、ガイドレール(不図示)に沿って連続紙Sの紙幅方向へ往復移動可能に支持されたキャリッジ(不図示)と、キャリッジモーター(不図示)とを有する。キャリッジは、このキャリッジモーターの駆動により、ヘッド31と一体となって移動するよう構成されている。キャリッジ(ヘッド31)のガイドレールにおける位置(紙幅方向の位置)は、コントローラー100がキャリッジモーターに設けられたエンコーダーから出力されるパルス信号における立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出してこのエッジをカウントすることにより、求めることができる。本実施形態においては、後述する第二検出処理が行われる際に、キャリッジが紙幅方向に移動することにより、印刷エリアに位置していたヘッド31は、そこから離れたメンテナンスエリア(回復処理の実行可能な領域)に位置することになる(図2参照)。
【0020】
ヘッドユニット30は、搬送ユニット10により印刷エリアに搬送された連続紙Sに対してインクを吐出するものである。ヘッドユニット30は、搬送中の連続紙Sに対してインクを吐出することによって、連続紙Sにドットを形成し、画像を連続紙Sに印刷する。本実施形態に係るプリンター1は、ラインプリンターであり、ヘッドユニット30は紙幅分のドットを一度に形成することができる。また、ヘッドユニット30は、図3に示すように、紙幅方向に沿って千鳥列状に並んだ複数のヘッド31と、コントローラー100からのヘッド制御信号に基づいてヘッド31を制御するヘッド制御部HC(図1参照)と、を有している。
【0021】
各ヘッド31は、図4に示すように、ケース32と、流路ユニット33と、ピエゾ素子ユニット34とを有する。ケース32は、ピエゾ素子PZTなどを収容して固定するための部材であり、例えばエポキシ樹脂等の非導電性の樹脂材によって作製される。
【0022】
流路ユニット33は、流路形成基板33aと、ノズルプレート33bと、振動板33cとを有する。流路形成基板33aにおける一方の表面にはノズルプレート33bが接合され、他方の表面には振動板33cが接合されている。流路形成基板33aには、圧力室331、インク供給路332、及び、共通インク室333となる空部や溝が形成されている。この流路形成基板33aは、例えばシリコン基板によって作製されている。ノズルプレート33bには、複数のノズルNzからなるノズル群が設けられている。このノズルプレート33bは、導電性を有する板状の部材、例えば薄手の金属板によって作製されている。振動板33cにおける各圧力室331に対応する部分にはダイヤフラム部334が設けられている。このダイヤフラム部334はピエゾ素子PZTによって変形し、圧力室331の容積を変化させる。なお、振動板33cや接着層等が介在していることで、ピエゾ素子PZTとノズルプレート33bとは電気的に絶縁された状態になっている。
【0023】
ピエゾ素子ユニット34は、ピエゾ素子群341と、固定板342とを有する。ピエゾ素子群341は櫛歯状をしている。そして、櫛歯の1つ1つがピエゾ素子PZTである。各ピエゾ素子PZTの先端面は、対応するダイヤフラム部334が有する島部335に接着される。固定板342は、ピエゾ素子群341を支持するとともに、ケース32に対する取り付け部となる。ピエゾ素子PZTは、電気機械変換素子の一例であり、駆動信号COMが印加されると長手方向に伸縮し、圧力室331内の液体に圧力変化を与える。圧力室331内のインクには、圧力室331の容積の変化に起因して圧力変化が生じる。この圧力変化を利用して、ノズルNzからインク滴を吐出させることができる。なお、電気機械変換素子としてのピエゾPZTに代えて、印加される駆動信号COMに応じた気泡を発生させることによりインク滴を吐出させる構造にしてもよい。
【0024】
各ヘッド31は、図5に示すように、ブラックインクノズル列K、シアンインクノズル列C、マゼンタインクノズル列M、及び、イエローインクノズル列Yを、その下面に有しており、各ノズル列からそれぞれ異なる色のインクを連続紙Sに向けて吐出する。各ノズル列を構成する複数のノズルは、紙幅方向に沿って、一定のノズルピッチで並んでいる。すなわち、各ヘッド31のノズル列によって、紙幅分のノズル群が構成されている。なお、本実施形態に係るヘッド31は、各インク色のノズル列を夫々1列ずつ備えなくてもよく、複数列ずつ備えるようにしてもよい。つまり、たとえばあるラスタラインを複数のブラックインクノズル列Kにより形成してもよい。また、本実施形態に係るヘッド31は、ある特定のインク色だけのノズル列を備えるようにしてもよい。
【0025】
ここで、ノズル配列とドット形成との関係について、図6を用いて説明する。図6に示すように、ここでは、ヘッドユニット30には、各ヘッド31のノズル列によって、所定のノズルピッチのノズル群が構成されているものとする。実際のノズルの位置は図5に示すように搬送方向の位置が異なるが、吐出するタイミングを異ならせることによって、各ヘッド31のノズル列から構成されるノズル群のことを、図6のように一列に並ぶノズルとして考えることができる。また、説明の簡略化のため、ブラックインクのノズル群311だけが設けられているものとする。
このノズル群311は、1/720インチ間隔で紙幅方向に並ぶノズルから構成されている。各ノズルに対して、図中の上から順に、番号を付している。
【0026】
なお、搬送中の連続紙Sに対して、各ノズルから断続的にインク滴が吐出されることによって、ノズル群311は、連続紙Sにラスタラインを形成する。例えば、ノズル♯1は第1ラスタラインを連続紙S上に形成し、ノズル♯2は第2ラスタラインを連続紙S上に形成する。各ラスタラインは、搬送方向に沿って形成される。以下の説明において、ラスタラインの方向をラスタ方向と言う。
【0027】
一方で、ノズルが目詰まりする等してインク滴が適切に吐出されないと、連続紙S上には適切なドットが形成されない。以下の説明において、適切に形成されていないドットをドット不良と言う。さて、ノズルの吐出不良は一度生じると、印刷中に自然に吐出が回復することはほとんどないので、吐出不良は連続的に生じる。そうすると、ドット不良は、連続紙S上ではラスタ方向に連続して生じ、印刷画像上ではドット不良は白又は明るい筋として観察される。たとえば、図7に示すように、ノズルに吐出不良が発生した場合には、印刷画像にドット不良が生じる。すなわち、図7において四角枠で囲ったドット不良箇所を拡大すると、図8において矢印で示すように、縦に白い筋が観察される。
【0028】
駆動信号生成部40は、駆動信号COMを生成するためのものである。駆動信号COMがピエゾ素子PZTに印加されると、ピエゾ素子は伸縮し、各ノズルNzに対応する圧力室331の容積が変化する。そのため、駆動信号COMは、印刷処理時、後述する第二検出処理時、ドット抜けするノズルNzに対して行うフラッシング処理時などに、ヘッド31に印加される。
【0029】
インク吸引ユニット50は、ヘッド31のノズルNzから、ヘッド内のインクを吸引してヘッド外へ排出するためのものである。このインク吸引ユニット50は、不図示のキャップをヘッド31の下面(ノズル面)に密着させた状態で、不図示の吸引ポンプを動作させ、キャップの空間を負圧にすることにより、ヘッド内のインクを、ヘッド内(ノズル内)に混入した気泡と共に吸引する。これにより、ドット抜けノズルを回復させることができる。
【0030】
ワイピングユニット55は、ヘッド31のノズル面に付着した紙粉等の異物を除去するためのものである。このワイピングユニット55は、ヘッド31のノズル面に当接可能なワイパー(不図示)を有している。ワイパーは、可撓性を有する弾性部材により構成されている。キャリッジ(ヘッド31)がキャリッジモーターの駆動により紙幅方向に移動すると、ワイパーの先端部はヘッド31のノズル面に当接して撓み、ノズル面の表面をクリーニング(拭き掃除)する。これにより、ワイピングユニット55は、ノズル面に付着した紙粉等の異物を取り除き、当該異物により目詰まりしていたノズルから正常にインクを吐出させることが可能となる。
【0031】
フラッシングユニット60は、ヘッド31がフラッシング動作を行うことにより吐出されたインクを受けて貯留するためのものである。このフラッシング動作とは、印刷する画像とは関係のない駆動信号を駆動素子(ピエゾ素子)に印加し、ノズルから強制的に連続してインク滴を吐出させる動作である。これにより、ヘッド内(ノズル内)のインクが増粘・乾燥して、適正な量のインクが吐出されなくなってしまうことを防止することができるため、目詰まりしたノズルが不吐出状態から回復することが可能となる。
【0032】
第一検査ユニット70は、連続紙Sに形成された印刷画像の状態に基づいて吐出不良を検査するためのものである。すなわち、搬送ユニット10により搬送された連続紙Sに印刷された画像を読み取る第一センサーとして機能するものである。なお、この第一検査ユニット70の具体的な構成等については、追って詳述する。
【0033】
第二検査ユニット80は、ヘッド31の内部におけるインクの状態に基づいて吐出不良をノズル毎に検査するためのものである。すなわち、この第二検査ユニット80は、後述する第二吐出検査時においてノズル毎にインクの吐出不良の有無を検知する第二センサーとして機能する。なお、この第二検査ユニット80の具体的な構成等については、追って詳述する。
【0034】
コントローラー100は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。このコントローラー100は、図1に示すように、インターフェース部101と、CPU102と、メモリー103と、ユニット制御回路104と、を有している。インターフェース部101は、外部装置であるホストコンピューターCPとプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU102は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー103は、CPU102のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU102は、メモリー103に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路104により各ユニットを制御する。
【0035】
検出器群90は、プリンター1内の状況を監視するものであり、例えば、媒体の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送される媒体の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ(又はヘッド31)の移動方向の位置を検出するためのリニア式エンコーダーなどがある。
【0036】
<第一検査ユニット70について>
次に、第一検査ユニット70について説明する。第一検査ユニット70は、後述する第一検出処理時に、連続紙Sの搬送方向に沿う移動に伴って、連続紙Sに印刷された印刷画像を読み取るためのセンサーである。
【0037】
(構 成)
この第一検査ユニット70は、図2に示すように、ヘッドユニット30(ヘッド31)よりも搬送方向の下流側の位置に設けられ、連続紙Sの紙幅分の印刷画像を一度に読み取ることができるスキャナー71を有している。このスキャナー71は、連続紙Sに対して照明光を照射する光源部と、連続紙Sで反射した反射光を受光する感光部とを有しており、プリンター1が印刷した印刷画像をスキャナーの色毎に読み取ることができる。光源部は、複数の白色LEDが配置された基板を有している。感光部は、CCDなどのイメージセンサーと、反射光をイメージセンサーに集めるためのレンズとを有しており、受光した反射光の強度に応じた大きさの電圧を出力する。
【0038】
(吐出検査の原理)
本実施形態に係るスキャナー71は、ラスタ方向の読取解像度が連続紙Sに印刷された画像の解像度よりも低くなるように読み込む。例えば、連続紙Sの搬送速度が254mm/sとし、1読取ライン分を読み取るのに必要な時間(1走査周期)が7msとすると、読み取る間に連続紙Sは1.78mm搬送される。すなわち、1読取ラインのライン幅は1.78mmとなる。つまり、ラスタ方向の印刷解像度を1440dpiであるとすると、1読取ラインが1.78mm×1440dpi=100.8ドット分に相当する。つまり、読取データのラスタ方向の読取解像度は、印刷された画像から約1/100に圧縮した画像に相当する。読取データの各読取ラインは、各色についてラスタ方向において印刷された画像の約100ドットの画素値を平均化した画素値で構成される。
【0039】
図9は、スキャンレートを7msとした場合に、スキャナー71で印刷画像を読み取った読取データを説明する図である。同図に示すように、読取データは平面をラスタ方向と紙幅方向について方眼状に区画したセルについて、セルの位置とその位置での読み取った画素値とを関連付けて有するデータである。以下、説明のために、同図に示すように、ラスタ方向の列を順に第1読取列から第1440読取列とし、紙幅方向のラインを第1読取ラインから第N読取ラインまでスキャナー71の読み取りの順に番号を付することとする。
【0040】
また、図10は、図7に示す印刷画像をスキャナー71で読み取った画像を示す図である。図10に示すように、スキャナー71で読み取る画像は、ラスタ方向に約1/100に圧縮した画像になる。一方、図11は、図10において四角枠で囲ったドット不良箇所の拡大図である。図11の矢印が示すように、縦に白い筋が観察される。
【0041】
コントローラー100は、スキャナー71が読み取った画像のデータ(読取データ)と、コンピューターCPから画像データとを取得する。そして、コントローラー100は、画像データの解像度に基づいて読取データの読取解像度と同じ解像度である基準データを作成し、読取データと基準データを比較してノズルの吐出不良を検出する。
【0042】
(検査時の動作)
まず、コントローラー100は、連続紙Sに対してコンピューターCPから受信した画像データに基づき印刷処理を開始する。スキャナー71は、印刷処理と並行して、連続紙Sに印刷された画像を、ラスタ方向において画像データの解像度よりも読取解像度が低くなるように読み込む。具体的には、スキャンレートを7msに設定し、1読取ラインが100.8ドット分に相当するように、第1読取ラインから第N読取ラインまで読み込む。すなわち、印刷画像の搬送方向約100ドット分が1画素となるように印刷画像を読み取る。
【0043】
コントローラー100は、コンピューターCPから画像データを取得し、その画像データをデジタル加工することによって、読取データの読取解像度と同じ解像度である基準データを作成する。具体的には、ラスタ方向については、1読取ラインが100.8ドット分に相当するので、第1読取ラインに対応するドットは各ヘッド31による第1ドットから第100ドットの画素値の和に、第101ドットの画素値に8/10を乗じた値を加え、その値を100.8で除することで作成できる。なお、基準データは、スキャナーの各色について作成される。
【0044】
コントローラー100は、第1読取ラインから第N読取ラインまでの各読取ラインについて、基準データの画素値から読取データの画素値を差引くことで、第1から第14
40番目までの読取列の各色について画素値の差分を算出する。コントローラー100は、第1読取ラインから第N読取ラインまでの各読取ラインについて、算出された画素値の差分に基づいて、各色のドット不良箇所を判定する。具体的には、画素値の差分が所定値α以下であれば、ドット不良箇所は無いと判定し、画素値の差分が所定値αを上回れば、ドット不良箇所が有ると判定する。
【0045】
なお、ノズルに吐出不良がなく画像データどおりにドットが形成されていれば、基準データと読取データとの画素値の差分は理論上ゼロになる。一方、プリンター1のノズルに吐出不良があり、そのノズルがドットを形成していなければ、理論上当該ドット不良箇所について読取データの画素値はゼロとなり基準データの画素値がそのまま差分として表れる。すなわち、理論上は画素値の差分がゼロでなければドット不良がある可能性がある。しかし、各ヘッド31により形成されたドットが重なった印刷画像をスキャナー71により読み取る場合には、ドット不良箇所の原因となるノズルを特定することが難しい。また、スキャナー71の読取誤差や連続紙S上に付着した塵、照明光の強度などの影響により、吐出不良がなくても差分がゼロにならない可能性もある。そこで、本実施形態においては、ドット不良がある場合の理論上の差分である基準データの画素値と、ドット不良がない場合の理論上の差分であるゼロとの間のある値を所定値αとして、各読取列についてドット不良の有無を判定する。所定値αは、固定値としてもよく、また基準データの画素値の所定割合(例えば80%)としてもよい。
【0046】
次に、第1読取ラインから第N読取ラインまでの各読取ラインについて判定されたドット不良箇所について読取列毎に集計する。コントローラー100は、各読取列について、N行の読取ラインのうち所定割合(例えば5%)の読取ラインにドット不良箇所があった場合、その読取列にドット不良があると判定する。この際、コントローラー100は、各ヘッド31のドットの重なりやスキャナー71の読取誤差などの影響を受けることにより、吐出不良が生じているノズルを特定できないため、そのドット不良のある読取列に対応するノズルを推定する。具体的には、ドット不良がある第n読取列に対応する第m番目のノズルは、次の式1により推定する。
m=n×(印刷の画像解像度/読取解像度)・・・(式1)
【0047】
以上のとおり、本実施形態によれば、図8に示すように、ノズルの吐出不良が生じると、ドット不良のラスタラインは白い筋又は明るい筋になって観察される。また、図11に示すように、スキャナー71がラスタ方向に100ドット分をまとめて読み取っても、画像がラスタ方向に圧縮されるだけで白い筋又は明るい筋は依然として観察される。こうした点に着目し、スキャナー71で読込む際に、ラスタ方向にデータ量を圧縮することによって(ラスタ方向について読取解像度を低くすることによって)、吐出不良検出における処理データの量を削減することができる。
【0048】
<第二検査ユニット80について>
ここでは、第二検査ユニット80について説明する。第二検査ユニット80は、後述する第二検出処理時にヘッド31の内部におけるインク状態に基づいて吐出不良を検知するセンサーである。
【0049】
(吐出検査の原理)
図4に示すように、ピエゾ素子PZTに駆動信号COMが印加されると、ピエゾ素子PZTが撓んで振動板33cが振動する。ピエゾ素子PZTへの駆動信号COMの印加を止めても、振動板33cには残留振動が生じている。振動板33cが残留振動により振動すると、ピエゾ素子PZTは、振動板33cの残留振動に応じて振動し信号を出力する。よって、振動板33cに残留振動を発生させて、そのときのピエゾ素子PZTに発生する信号を検出することで、各ピエゾ素子PZTの特性(周波数特性)を求めることができる。
【0050】
具体的には、駆動信号生成部40から出力される駆動信号COMが、対応するピエゾ素子PZTに印加されると、当該ピエゾ素子PZTと接する振動板33cが振動する。その振動板33cの振動はすぐに停止せず残留振動が生じる。このため、ピエゾ素子PZTが残留振動に応じて振動して信号(逆起電圧)を出力する。そして、その信号が第二検査ユニット80に入力される。第二検査ユニット80は、入力される信号に基づいて、そのピエゾ素子PZTの周波数特性を検出する。この処理を各ノズルに対応するピエゾ素子PZTについて順次行っていけば、各ピエゾ素子PZTの周波数特性を検出することができる。このようにして検出された周波数特性は、ヘッド31の内部のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)によって異なる。すなわち、残留振動の振動パターンが、ヘッド31の内部のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)に応じて異なる。
【0051】
(構 成)
図12は、第二検査ユニット80の構成の説明図である。第二検査ユニット80は、増幅部801と、パルス幅検出部802とを有する。
増幅部801では、ピエゾ素子341からの信号に含まれる低周波成分をコンデンサーC1と抵抗R1からなる高域通過フィルターによって除去し、オペアンプ801aにより所定の増幅率で増幅する。次に、オペアンプ801aの出力をコンデンサーC2と抵抗R4からなる高域通過フィルターに通過させることにより、基準電圧Vrefを中心に上下に振動する信号に変換する。そして、コンパレーター801bによって基準電圧Vrefと比較し、基準電圧Vrefより高いか否かによって信号を2値化する。
【0052】
(検査時の動作)
図13Aは、ピエゾ素子PZTが残留振動に応じて出力する信号を示す図である。周波数特性はヘッド内のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)に応じて異なるため、そのインク状態それぞれに対応する固有の電圧波形(振動パターン)が出力されることになる。
【0053】
図13Bは、オペアンプ801aの出力をコンデンサーC2と抵抗R4からなる高域通過フィルターに通過させた後の信号、及び基準電圧Vrefを示す図である。すなわち、これらはコンパレーター801bに入力される信号である。
【0054】
図13Cは、コンパレーター801bからの出力信号を示す図である。すなわち、パルス幅検出部802に入力される信号である。
【0055】
パルス幅検出部802は、図13Cに示されるパルスが入力されると、パルスの立ち上がりでカウント値をリセットし、その後のクロック信号毎にカウント値をインクリメントし、次のパルスの立ち上がりでのカウント値をコントローラー100のCPU102に出力する。CPU102は、パルス幅検出部802の出力するカウント値に基づいて、すなわち、第二検査ユニット80から出力される検知結果に基づいて、ピエゾ素子PZTの出力する信号の周期を検出することができる。
【0056】
以上のように、第二検査ユニット80が残留振動に応じた周波数特性を有する振動パターンを出力することにより、コントローラー100は、ヘッド内のインク状態(正常であるのか、又は、ヘッド内に気泡混入が原因で吐出不良が生じているのか、又は、インクの増粘が原因で吐出不良が生じているのか、又は、紙粉等の異物がノズルNzに密着しているのか)を特定することができるため、当該インク状態それぞれに対応する適切な回復動作を行うことができる。
【0057】
<<<プリンター1の動作例について>>>
<全体的な動作について>
ここでは、プリンター1の全体的な動作について説明する。本実施形態に係るプリンター1では、コントローラー100が、メモリー103に格納されたコンピュータープログラムに従って、制御対象(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、駆動信号生成部40、インク吸引ユニット50、ワイピングユニット55、フラッシングユニット60、第一検査ユニット70、第二検査ユニット80)を制御して、各処理を行う。従って、このコンピュータープログラムは、これらの処理を実行するため、制御対象を制御するためのコードを有する。
【0058】
コントローラー100は、印刷処理及びドット抜け検査処理を行う。具体的には、コントローラー100は、印刷命令の受信、給紙動作、ドット形成動作、搬送動作、印刷終了判断、第一検出動作、第二検出動作、回復動作を行う。以下、各処理について、簡単に説明する。
【0059】
印刷命令の受信は、コンピューターCPからの印刷命令を受信する処理である。この処理において、コントローラー100はインターフェース部101を介して印刷命令を受信する。
【0060】
給紙動作は、印刷対象となる連続紙Sを移動させ、印刷開始位置(所謂頭出し位置)に位置決めする動作である。この動作において、コントローラー100は、搬送モーターを駆動させることにより、連続紙Sを移動させる。
【0061】
ドット形成動作は、連続紙Sにドットを形成するための動作である。この動作において、コントローラー100は、ヘッド31に対して制御信号を出力する。このとき、駆動信号生成部40が生成した駆動信号COMがピエゾ素子PZTに印加されることにより、ノズルNzからインクが吐出される。これにより、ヘッド31のノズルNzから断続的にインクがされ、連続紙Sにドットが形成される。
【0062】
搬送動作は、連続紙Sを搬送方向へ移動させる動作である。コントローラー100は、搬送モーターを駆動させることにより、先程のドット形成動作によって形成されたドットとは異なる位置に、ドットを形成することができる。
【0063】
印刷終了判断は、印刷を続行するか否かの判断である。コントローラー100は、印刷対象となっている連続紙Sに対する印刷データの有無に基づき印刷終了判断を行う。
【0064】
ドット抜け検査動作は、吐出不良(ドット抜け)の有無を検査する動作である。コントローラー100は、印刷処理と並行して第一検査ユニット70を用いた第一検出処理を行い、第一検出処理の検知結果から吐出不良があった場合に第二検査ユニット80を用いた第二検出処理を行う。そして、コントローラー100は、第二検出処理の検知結果に基づいて予め設定された複数種類の回復動作の中から適切な回復動作を選択する。なお、このドット抜け検査動作については、追って詳述する。
【0065】
回復動作は、吐出不良の状態にあるヘッド31を、インクを正常に吐出できる状態に回復させる動作である。コントローラー100は、吐出不良の原因に応じて、フラッシング動作、インク吸引動作、ワイピング動作のうちのいずれかの動作を行う。
【0066】
ここで、本実施形態に係るプリンター1において、吐出不良の原因に応じた回復動作を行うことには、以下のようなメリットがある。
【0067】
フラッシング動作、インク吸引動作、ワイピング動作をそれぞれ行う際、回復のために消費されるインク量はそれぞれ異なる。たとえば、ワイピング動作はノズル面をワイパー56でクリーニング(拭き掃除)する動作であるから、回復のために消費されるインク量は極少量である。一方で、フラッシング動作は増粘・乾燥したインクと共にヘッド内のインクを吐き捨てる動作であるから、回復のために消費されるインク量はワイピング動作時の消費インク量に比べて多い。また、インク吸引動作はヘッド内のインクを混入した気泡と共に吸引する動作であり、回復のために消費されるインク量はフラッシング動作時の消費インク量に比べてさらに多い。このため、たとえば、紙粉がノズル面に付着したことに起因して吐出不良が発生した場合、ワイピング動作を選択することによって回復することができるのにも関わらず、フラッシング動作やインク吸引動作を選択することになれば、回復のために消費されるインク量が無駄になってしまう。
【0068】
このため、本実施形態に係るプリンター1においては、第一検査ユニット70の検知結果により吐出不良が有ると判定されたときに、第二検査ユニット80の検知結果に基づいて予め設定された複数種類の回復動作の中から適切な回復動作を選択することにより、無駄なインク消費を抑えることが可能となる。
【0069】
<ドット抜け検出動作について>
次に、ドット抜け検査動作について、図14A乃至図14C、図15、図16、図17A乃至図17Dを用いて説明する。図14Aは、気泡が混入した状態を示す図である。図14Bは、インクが増粘・乾燥した状態を示す図である。図14Cは、紙粉等の異物がノズルに密着した状態を示す図である。図15は、ドット抜け検査の動作例を示すフローチャートである。図16は、ドット抜け検査動作における判定条件を説明する図である。図17A乃至図17Dは、第一検出処理における異常ノズルの配置と第二検出処理における異常ノズルの配置とを比較して示した図である。
【0070】
図15に示すように、まず、コントローラー100は、ヘッド31を印刷エリアに位置させた状態で(図2参照)、印刷処理と並行して第一検出処理を行う(S101)。
【0071】
この第一検出処理では、第一検査ユニット70の検知結果を取得することにより、ヘッドの外部にインク滴が吐出されないことに起因する吐出不良(ドット不良)の有無が検査される。そして、この第一検出処理により、第一検査ユニット70の検知結果として、ヘッド外に向けてインク滴が正常に吐出されていること(ドット不良なし)、ヘッド外に向けてインク滴が正常に吐出されていないこと(ドット不良あり)、のいずれかの結果を、コントローラー100は取得すると共に、ドット不良がある第n読取列に対応する異常ノズルを推定することができる。
【0072】
次いで、コントローラー100は、第一検査ユニット70の検知結果に基づいて、ドット不良(吐出不良)が有るか無いか判定し(S102)、ドット不良が無いと判定した場合(S102:NO)、ヘッド31には吐出不良が生じていない正常状態にあるため、そのまま処理を終了し、ドット不良が有ると判定した場合には(S102:YES)、印刷処理を停止させて、第二検出処理を行う(S103)。
【0073】
この第二検出処理では、第二検査ユニット80の検知結果を取得することにより、ヘッド内のインク状態に起因する吐出不良(ドット抜け)の有無が各ヘッド31のノズル毎に検査される。そして、この第二検出処理により、第二検査ユニット80の検知結果として、インクの状態が正常であること(ドット抜けなし)、気泡混入が原因で吐出異常が生じていること(図14A参照)、インクの増粘・乾燥が原因で吐出異常が生じていること(図14B参照)、紙粉等の異物がノズルNzに密着することにより吐出異常が生じていること(図14C参照)、のいずれかの結果を、コントローラー100は取得することができる。すなわち、コントローラー100は、吐出不良の原因と共に、吐出不良のある異常ノズルを具体的に特定することができる。
【0074】
次いで、コントローラー100は、第一検出処理によって取得した第一検査ユニット70の検知結果、及び、第二検出処理によって取得した第二検査ユニット80の検知結果から、吐出不良(ドット抜け)の有無に応じた適切な回復動作を判定条件に基づき選択する。この判定条件は、図16に示すように、第一検出処理の検知結果と第二検出処理の検知結果との組合せごとに適切な回復動作が選択されるように設定されている。
【0075】
なお、本実施形態においては、この判定条件に基づく判定は、全ノズルに対する検知結果を集計して全体的に行うものであるが、ノズル毎に行ってもよい。
【0076】
具体的には、コントローラー100は、ステップS104において、第一検出処理の検知結果と第二検出処理の検知結果との組合せから、判定結果がパターン1であると判定した場合、回復処理を行う(S105)。
【0077】
すなわち、図16に示すように、第一検出処理の検査結果が異常であり(「×」:ドット抜けあり)、かつ、第二検出処理の検査結果が異常であり(「×」:ドット抜けあり)、さらに、第一検出処理の結果により異常ノズルであると推定されたノズル(ノズル番号)と、第二検出処理の結果により異常ノズルであると特定されたノズル(ノズル番号)とが一致する、の判定条件を満たす場合には、回復処理を行う。
【0078】
たとえば、図17Aに示すように、或るノズル列に着目したときに、第一検出処理の検知結果により「ノズル♯3」が異常ノズルと推定され、かつ、第二検出処理の検知結果により「ノズル♯3」が異常ノズルと特定された場合、異常ノズルが共に「ノズル♯3」で一致する。このため、異常ノズルと特定された「ノズル♯3」に対して回復処理が行われる。
【0079】
本実施形態における回復処理は、すべてのノズルに対して行われるわけではなく、異常ノズルとして特定されたノズルに対して行われる。このように、全ノズルのうちの一部のノズル(吐出異常が有るノズル)に対して回復処理が行われることにより、全ノズルに対して行う場合に比べて短時間で回復処理を完了させることができる。
【0080】
なお、全ノズル列のうち、異常ノズルを含むノズル列に対して回復処理を行ってもよい。また、インク色ごとにヘッドが設けられている場合には、異常ノズルのインク色と同じ色のヘッドに対して回復処理を行っても良い。これにより、全ノズル列、全ヘッドに対して行う場合に比べて短時間で回復処理を完了させることができる。
【0081】
また、この回復処理では、第二検出処理の結果に基づき、吐出不良の原因に応じた適切な回復動作が選択される。たとえば、気泡混入が原因で吐出不良が生じている場合には(図14A参照)、インク吸引ユニット50による回復動作が行われ、ヘッド内に混入した気泡がヘッド内のインクと共に吸引される。また、インクの増粘・乾燥が原因で吐出不良が生じている場合には(図14B参照)、フラッシングユニット60による回復動作が行われ、増粘したインクがヘッド外へ吐き出される。また、紙粉等の異物がノズルNzに付着することにより吐出不良が生じている場合には(図14C参照)、ワイピングユニット55による回復動作が行われ、ノズル面から紙粉等の異物が除去される。このように、第一検出処理の結果から吐出異常があると判定されたときは、第二検出処理の結果に基づいて回復動作を選択することにより、吐出不良の原因に応じた適切な回復動作が行われ、回復のために消費されるインク量の無駄を抑えることができる。
【0082】
引き続き、コントローラー100は、ステップS104において、第一検出処理の検知結果と第二検出処理の検知結果との組合せから、判定結果がパターン2又はパターン3であると判定した場合、ステップS103に戻って再検査を行う。なお、この再検査は、異常ノズルに対してのみ行われる。
【0083】
すなわち、図16に示すように、第一検出処理の検査結果が異常であり(「×」:ドット抜けあり)、かつ、第二検出処理の検査結果が異常であり(「×」:ドット抜けあり)、さらに、第一検出処理の結果により異常ノズルであると推定されたノズル(ノズル番号)と、第二検出処理の結果により異常ノズルであると特定されたノズル(ノズル番号)とが一致しない、の判定条件を満たす場合(パターン2)、または、第一検出処理の検査結果が異常であり(「×」:ドット抜けあり)、かつ、第二検出処理の検査結果が正常である(「○」:ドット抜けなし)、の判定条件を満たす場合(パターン3)には、再び第二検出処理を行う。
【0084】
たとえば、図17Bに示すように、或るノズル列に着目したときに、第一検出処理の検知結果では「ノズル♯3」が異常ノズルと推定され、かつ、第二検出処理の検知結果では「ノズル♯9」が異常ノズルと特定された場合、「ノズル♯3」と「ノズル♯9」で異常ノズルが一致しない。
【0085】
また、図17Cに示すように、或るノズル列に着目したときに、第一検出処理の検知結果では「ノズル♯3」が異常ノズルと推定され、かつ、第二検出処理の検知結果では全てのノズルが正常ノズルと特定された場合、「ノズル♯3」が異常ノズルと正常ノズルとで一致しない。
【0086】
そこで、本実施形態においては、このように、第一検出処理の検知結果に対して第二検出処理の検知結果が食い違っている場合、すなわち、第一検出処理の検知結果により異常ノズルと推定されたノズルが、第二検出処理の検知結果により正常ノズルとされた場合を含む際には、再検査を行うようにした。これは、以下の理由によるものである。
【0087】
第一検出処理では、吐出不良の有る異常ノズルを推定することに留まるが、第二検出処理では、ノズル毎に吐出不良の有無を判別することができるため、吐出不良の有る異常ノズルを特定することができる。このため、第二検出処理の方が第一検出処理よりも検出精度が高いといえる。したがって、上記のように食い違っている場合において、第二検出処理よりも検査精度の低い第一検出処理の検知結果により異常ノズルと推定された場合には、誤検出の可能性があるため、先ずは再検査を行うようにした。これにより、直ちに回復処理が行われないため、消費インクを節約することができる。
【0088】
そして、この再検査の際には、第一検出処理は行わずに、第二検出処理のみを行うようにした。これは、再検査を行う際に、第一検出処理よりも検出精度の高い第二検出処理を行うことで、ドット抜けの検出精度を向上させることができるからである。したがって、「ノズル♯3」に対して第二検出処理のみを再び行うことになる。
【0089】
引き続き、コントローラー100は、ステップS104において、第一検出処理の検知結果と第二検出処理の検知結果との組合せから、判定結果がパターン4であると判定した場合、回復処理を行う(S105)。
【0090】
すなわち、図16に示すように、第一検出処理の検査結果が異常であり(「×」:ドット抜けあり)、かつ、第二検出処理の検査結果が異常であり(「×」:ドット抜けあり)、さらに、第一検出処理の結果により異常ノズルであると推定されたノズル(ノズル番号)と、第二検出処理の結果により異常ノズルであると特定されたノズル(ノズル番号)とが一致する、の判定条件を満たす場合であって、第一検出処理の検査結果が異常であり(「×」:ドット抜けあり)、かつ、第二検出処理の検査結果が異常であり(「×」:ドット抜けあり)、さらに、第一検出処理の結果により異常ノズルであると推定されたノズル(ノズル番号)と、第二検出処理の結果により異常ノズルであると特定されたノズル(ノズル番号)とが一致しない、の判定条件を満たす場合には、回復処理を行う。
【0091】
たとえば、図17Dに示すように、或るノズル列に着目したときに、第一検出処理の検知結果では「ノズル♯3」が異常ノズルと推定され、第二検出処理の検知結果では「ノズル♯3」及び「ノズル♯9」が異常ノズルと特定された場合、「ノズル♯3」については異常ノズルが一致するものの、「ノズル♯9」については異常ノズルが一致しない。
【0092】
そこで、本実施形態においては、このように、第一検出処理の検知結果に対して第二検出処理の検知結果が食い違っている場合、すなわち、第二検出処理において、第一検出処理で推定された異常ノズルに対して吐出不良が有ると判定した場合であって、第一検出処理で推定された異常ノズル以外の正常ノズルに対して吐出不良が有ると判定した場合には、第二検出処理の異常ノズルに対して回復処理を行うようにした。これは、第一検出処理よりも検出精度が高い第二検出処理の結果を重視することにより、再検査を行うまでもなく直ちに回復処理を行って、異常ノズルを早期に回復させるためである。したがって、第二検出処理の結果と一致している「ノズル♯3」を回復させるとともに、第二検出処理の結果を重視して「ノズル♯9」も回復させことになる。
【0093】
以上のように、本実施形態に係るドット抜け検査処理においては、第一検出処理を行って、吐出不良が有ると判定した場合には、第二検出処理をノズル毎に行うことで、ドット抜けの検出精度を高めている。このように、先に第一検出処理を行ってから第二検出処理を行うことによって、以下の点で有効となる。
【0094】
たとえば、仮に、第二検出処理を行わずに、第一検出処理のみを行ったとすると、印刷中において常に吐出不良が発生するか否かをチェックすることが可能となるが、第二検出処理よりも検出精度が低いため、吐出不良の有る異常ノズルを推定することができても、各ヘッド31のノズル毎に吐出不良の有無を検出することによって異常ノズルを特定することができない。逆に、第二検出処理のみを行ったとすると、第一検出処理よりも検出精度の高いドット抜け検査を行うことができるものの、印刷処理と並行して行われないため(印刷を中断し、ヘッドユニット30を印刷エリアからメンテナンスエリアへ移動させて行うことになるため)、印刷中において常に吐出不良が発生するか否かをチェックすることができずに検出漏れが発生する可能性が高くなる。検出漏れを防ぐために、第二検出処理を行う検査頻度を増やすことも考えられるが、印刷を中断する回数も増えることになるため、印刷が完了するまで長時間かかってしまう。これに対し、本実施形態では、印刷処理と並行して第一検出処理を行うことにより、印刷中に常に吐出不良の有無かをチェックし、吐出不良の有ると判定した場合には、印刷を停止した後に第二検出処理を行うことにより、各ヘッド31のノズル毎に吐出不良の有無をチェックし、吐出不良の有る異常ノズルを特定するようにした。そのため、印刷中に吐出不良を検出できずにそのまま印刷を続けることによって大量の不良印刷物を作成することを回避することができ、印刷中に吐出不良が生じた際には、直ちに印刷を停止させて第二検出処理を行うことにより、吐出不良の有る異常ノズルを特定できるため、全ノズルのうちの異常ノズルに対してクリーニングを行って、目詰まり等の吐出不良の原因を解消することにより、印刷を速やかに再開することが可能となる。
【0095】
<<<本実施の形態に係るプリンター1の有効性について>>>
上述したとおり、本実施形態に係るプリンター1は、連続紙Sに対してノズルからインクを吐出することにより印刷画像を形成するヘッド31と、ヘッド31により形成された前記印刷画像を読み取る第一検査ユニット70と、ノズル毎にインクの吐出不良の有無を検知する第二検査ユニット80と、前記印刷画像を形成するための印刷処理と並行して連続紙Sに形成された印刷画像を第一検査ユニット70により読み取り、読み取った当該印刷画像に基づいて吐出不良の有無を検出する第一検出処理を実行し、前記第一検出処理において吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二検査ユニット80の検知結果に基づいて吐出不良の有無をノズル毎に検出する第二検出処理を実行するコントローラーと、を備えている。
【0096】
インクカートリッジからヘッドへインクを充填する際に気泡が混入したり、長時間ノズルNzからインク(液体)が吐出されないことによりインクが増粘・乾燥したり、ノズルNzに紙粉などの異物が付着したりすると、ノズルNzが目詰まりすることがある。このようにノズルNzが目詰まりすると、ノズルNzからインクが吐出されるべき時にインクが吐出されず、ドット抜けが発生する(吐出不良)。ドット抜けとは、本来ノズルNzからインクが吐出されてドットが形成されるべき所にドットが形成されない現象をいう。ドット抜けが発生すると画質劣化の原因となる。上述したとおり、ドット抜けを検出するための吐出検査の1つとして、印刷画像をスキャナーで読み取り、スキャナーで読み取った読取データと基準データとを比較して、ノズルの吐出不良を検出する吐出検査がある。しかしながら、印刷中に吐出検査をリアルタイムに行うことができるものの、各ヘッド31のドットが重なった印刷画像を読み取る点や、スキャナーの読取誤差や、連続紙上に付着した塵、照明光の強度などの影響により、ドット不良のある読取列に対応する異常ノズルを特定することができなかった。そのため、異常ノズルを回復させる際には、異常ノズルだけでなく正常ノズルも回復処理の対象となっていた。そこで、本実施形態では、第一センサーが吐出不良を印刷中に検知した場合に、第一検出処理では特定できない異常ノズルを特定できる第二検出処理を行うことにより、第一検出処理の欠点を補うようにしたため、吐出不良の検出精度を向上させることが可能となる。
【0097】
また、コントローラー100は、第二検出処理において、吐出不良が有る場合と無い場合のうち、吐出不良が有ると判定した場合に、吐出不良の有る異常ノズルに対してインクの吐出を回復させる回復処理を行うこととした。このため、異常ノズルに対して回復処理が行われるため、消費インクの無駄を抑えることができるとともに、回復処理を短時間で行うことができる。
【0098】
また、コントローラー100は、第一検出処理において吐出不良の有る異常ノズルを推定し、第二検出処理において、第一検出処理で推定された異常ノズル以外の正常ノズルに対して吐出不良が有ると判定した場合に、第二センサーの検知結果に基づき回復処理を行うこととした。このため、第一センサーよりも検出精度が高い第二センサーの検出結果を重視することにより、再検査を行うことなく、早期に回復処理を行うことができる。
【0099】
また、コントローラー100は、第一検出処理において吐出不良の有る異常ノズルを推定し、前記第二検出処理において、第一検出処理で推定された前記異常ノズルに対して吐出不良が無いと判定した場合に、再び前記第二検出処理を行うこととした。このため、直ちに回復動作を行わずに済むため、消費インクの無駄を抑えることができる。また、再検査の際、第一検出処理よりも検出精度が高い記第二検出処理を行うことにより、吐出不良の検出精度を向上させることができる。
【0100】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として印刷装置(液体吐出検査装置)について記載されているが、液体吐出検査方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0101】
<印刷装置について>
上記の実施形態においては、印刷装置としてインクジェット式プリンターを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、インク以外の他の液体を吐出する印刷装置であってもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の印刷装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、印刷装置が吐出させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。印刷装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する印刷装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する印刷装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する印刷装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する印刷装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する印刷装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する印刷装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の印刷装置に本発明を適用することができる。
【0102】
<第一センサーについて>
上記の実施形態においては、第一検査ユニット70(第一センサー)の一例として、画像データに基づき連続紙Sに印刷画像を記録し、その印刷画像をスキャナー71で読み取り、スキャナー71で読み取った読取データと基準データとを比較して、ノズルの吐出不良を検出するものを挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、スキャナー71に限らず、ラインセンサーカメラ等の撮像装置を用いてもよい。
また、上記の実施形態においては、スキャナー71で印刷画像をそのまま読み取ることにより、読取データを生成するものを挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、連続紙Sに画像を印刷する際に、印刷画像と印刷画像との間の空き領域に検査用パターンを印刷し、この検査用パターンをスキャナー71で読み取るようにしてもよい。この検査用パターンは、インクの色ごとに分けて印刷されるため、色が混在する印刷画像に比べ、インクの色ごとに異常ノズルを特定し易くすることができる。
【0103】
<第二センサーについて>
上記の実施形態においては、第二検査ユニット80(第二センサー)の一例として、ピエゾ素子等のアクチュエーターが振動板を振動させ、この振動板に生じる残留振動の周波数特性(振動パターン)の変化を検知するもの(図12及び図13)を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0104】
たとえば、光源と光学センサーを有する検出器を第二センサーとして用いてもよい。具体的には、かかる検出器は、ノズルからヘッド外に吐出されたインク滴が、光源と光学センサーとの間を通過し、光源と光学センサーとの間の光を遮断したこと、を検出する。そして、インク滴が光を遮断した場合には、インクが正常に吐出されたものと判断され、インク滴が光を遮断しなかった場合には、吐出不良(ドット抜け)と判定される。そして、この判定をノズルそれぞれに対して行う。
【0105】
また、第二検査ユニット80の他の例として、帯電させたインク滴をノズルから検出用の電極に向けて吐出させ、この電極に生じる電気的な変化を検知するようにしてもよい。以下、この第二検査ユニット80の他の例について、具体的に説明する。
【0106】
(構 成)
図18Aは、第二検査ユニット80の他の構成例を説明する図であり、図18Bは、検出制御部87を説明するブロック図である。
【0107】
第二検査ユニット80は、図18Aに示すように、検出用電極513と、高圧電源ユニット81と、第1制限抵抗82と、第2制限抵抗83と、検出用コンデンサー84と、増幅器85と、平滑コンデンサー86と、検出制御部87とを有する。なお、ヘッド31のノズルプレート33bは、接地されており、第二検査ユニット80の一部としても機能する。
【0108】
前述した第二検出処理時において、図18Aに示すように、ノズルプレート33bと検出用電極513とが所定の間隔dを空けて対向するように配置される。
【0109】
この検出用電極513は、前述した第二検出処理時には600V〜1kV程度の高電位に設定される。
【0110】
高圧電源ユニット81は、検出用電極513を所定電位にする電源である。この高圧電源ユニット81は、600V〜1kV程度の直流電源によって構成され、検出制御部87からの制御信号によって動作が制御される。
【0111】
第1制限抵抗82及び第2制限抵抗83は、高圧電源ユニット81の出力端子と検出用電極513との間に配置され、高圧電源ユニット81と検出用電極513との間で流れる電流を制限する。ここでは、第1制限抵抗82と第2制限抵抗83は同じ抵抗値(例えば1.6MΩ)とし、第1制限抵抗82と第2制限抵抗83は直列に接続する。図18Aに示すように、第1制限抵抗82の一端を高圧電源ユニット81の出力端子に接続し、他端を第2制限抵抗83の一端と接続し、第2制限抵抗83の他端を検出用電極513に接続する。
【0112】
検出用コンデンサー84は、検出用電極513の電位変化成分を抽出するための素子であり、一方の導体が検出用電極513に接続され、他方の導体が増幅器85に接続されている。この間に検出用コンデンサー84を介在させることで、検出用電極513のバイアス成分(直流成分)を除くことができ、信号の扱いを容易にすることができる。本実施形態では、検出用コンデンサー84を容量が4700pFとする。
【0113】
増幅器85は、検出用コンデンサー84の他端に現れる信号(電位変化)を増幅して出力する。この増幅器85は増幅率が4000倍のものによって構成されている。これにより、電位の変化成分を2〜3V程度の変化幅を持った電圧信号として取得できる。これらの検出用コンデンサー84及び増幅器85の組は検出部の一種に相当し、インク滴の吐出によって生じた検出用電極513に生じた電気的な変化を検出する。
【0114】
平滑コンデンサー86は、電位の急激な変化を抑制する。本実施形態の平滑コンデンサー86は一端が第1制限抵抗82と第2制限抵抗83とを接続する信号線に接続され、他端がグランドに接続されている。そして、その容量は0.1μFである。
【0115】
検出制御部87は、第二検査ユニット80の制御を行う。この検出制御部87は、図18Bに示すように、レジスタ群87a、AD変換部87b、電圧比較部87c、及び、制御信号出力部87dを有する。レジスタ群87aは、複数のレジスタによって構成されている。各レジスタには、ノズルNz毎の判定結果や判定用の電圧閾値などが記憶される。AD変換部87bは、増幅器85から出力された増幅後の電圧信号(アナログ値)をデジタル値に変換する。電圧比較部87cは、増幅後の電圧信号に基づく振幅値の大きさを電圧閾値と比較する。制御信号出力部87dは、高圧電源ユニット51の動作を制御するための制御信号を出力する。
【0116】
(吐出検査の原理)
ノズルプレート33bのノズルからインクが吐出されると、検出用電極513の電位が変化し、この電位変化を検出用コンデンサー84及び増幅器85が検出し、検出信号が検出制御部87に出力される。異常ノズルからインクを吐出させようとしても、インクがヘッド31の外部へ吐出されないため、検出用電極513の電位は変化せず、検出信号に電圧変化は現れないことになる。
【0117】
具体的には、ノズルプレート33bをグランド電位に設定し、キャップ51に配置された検出用電極513を600V〜1kV程度の高い電位に設定する。ノズルプレート33bがグランド電位に設定されているため、ノズルから吐出されるインク滴もグランド電位になる。ノズルプレート33bと検出用電極513とを、所定間隔d(図18Aを参照)を空けた状態で対向させ、検出対象のノズルからインク滴を吐出させる。インク滴が吐出されると、これに起因して検出用電極513側に生じた電気的な変化を検出用コンデンサー84及び増幅器85を介して検出制御部87が電圧信号SGとして取得する。そして、検出制御部87は、電圧信号SGにおける振幅値(電位変化)に基づいて、検出対象のノズルからインク滴が正常に吐出されたか否かを判断する。
【0118】
すなわち、図8Aに示すように、ノズルプレート33bと検出用電極513とを所定間隔dを空けて配置したことにより、これらの部材が恰もコンデンサーの様に振る舞う構成ができる。一般的に、コンデンサーを構成する2個の導体の間隔dが変化すると、コンデンサーに蓄えられる電荷Qが変化することが知られている。グランド電位のノズルプレート33bから高電位の検出用電極513に向ってインクが吐出されると、グランド電位のインク滴と検出用電極513との間隔dが変化し、コンデンサーの2個の導体の間隔dが変化したときのように、検出用電極513に蓄えられる電荷Qが変化する(コンデンサーの静電容量が変化する)。そして、コンデンサーにおける静電容量が小さくなると、ノズルプレート33bと検出用電極513との間で蓄えることのできる電荷の量が減少することになるため、余剰の電荷が検出用電極513から各制限抵抗82、83を通って高圧電源ユニット81側へ移動する。すなわち、高圧電源ユニット81へ向けて電流が流れる。一方、静電容量が増えたり、減少した静電容量が戻ったりすると、電荷が高圧電源ユニット81から各制限抵抗82、83を通って検出用電極613側へ移動する。すなわち、検出用電極613へ向けて電流が流れる。このような電流(便宜上、吐出検査用電流Ifともいう)が流れることにより、検出用電極513の電位が変化する。検出用電極513の電位の変化は、検出用コンデンサー84における他方の導体(増幅器85側の導体)の電位変化としても現れる。従って、他方の導体の電位変化を監視することで、インク滴が吐出されたか否かを判定できる。
【0119】
(検査時の動作)
図19Aは、吐出検査時に用いる駆動信号COMの一例を示す図であり、図19Bは、図19Aの駆動信号COMによってノズルからインクが吐出された場合に増幅器55から出力される電圧信号SGを説明する図であり、図19Cは、複数のノズル(#1〜#10)の吐出検査結果である電圧信号SGを示す図である。駆動信号COMは、図19Aに示すように、繰り返し期間Tの前半期間TAにノズルからインクを吐出するための複数の駆動波形W(例えば24個)を有し、後半期間TBでは中間電位で一定の電位が保たれる。駆動信号生成部40は、複数の駆動波形W(24個の駆動波形)を繰り返し期間T毎に繰り返し生成する。この繰り返し期間Tが1つのノズルの検査に要する時間に相当する。
【0120】
まず、検査対象の中の或るノズルに対応するピエゾ素子に、繰り返し期間Tに亘って駆動信号COMを印加する。そうすると、前半期間TAにて吐出検査対象のノズルからインク滴が連続的に吐出される(例えば24ショット打たれる)。これにより、検出用電極513の電位が変化し、増幅器85は、その電位変化を図9Bに示す電圧信号SG(サインカーブ)として検出制御部87に出力する。なお、1ショット分のインク滴による電圧信号SGの振幅が小さいため、ノズルからインク滴を連続的に吐出させることで、検査に十分な振幅である電圧信号SGが得られるようにした。
【0121】
そして、検出制御部87は、検査対象のノズルの検査期間(T)の電圧信号SGから最大振幅Vmax(最高電圧VHと最低電圧VLの差)を算出し、最大振幅Vmaxと所定の閾値THとを比較する。駆動信号COMに応じて検査対象のノズルからインクが吐出されれば、検出用電極513の電位が変化し、電圧信号SGの最大振幅Vmaxが閾値THよりも大きくなる。一方、目詰まり等により、検査対象のノズルからインクが吐出されなかったり、吐出されるインク量が少なかったりすると、検出用電極513の電位が変化しなかったり、電位変化が小さかったりするため、電圧信号SGの最大振幅Vmaxが閾値TH以下となる。
【0122】
或るノズルに対応するピエゾ素子に駆動信号COMを印加した後は、次の検査対象ノズルに対応するピエゾ素子に繰り返し期間Tに亘って駆動信号COMを印加するというように、検査対象の1ノズルごとに、繰り返し期間Tに亘って、そのノズルに対応するピエゾ素子に駆動信号COMを印加する。その結果、検出制御部87は、図19Cに示すように、繰り返し期間Tごとに、サインカーブの電位変化が発生する電圧信号SGを取得できる。
【0123】
例えば、図19Cの結果では、ノズル#5の検査期間に対応する電圧信号SGの最大振幅Vmaxが閾値THよりも小さいため、検出制御部57はノズル#5がドット抜けノズルであると判断する。他のノズル(#1〜#4・#6〜#10)の各検査期間に対応する電圧信号SGの最大振幅Vmaxは閾値TH以上であるため、検出制御部87は他のノズルは正常なノズルであると判断する。
【0124】
<回復処理について>
上記の実施形態においては、回復処理の一例として、インク吸引処理、ワイピング処理、フラッシング処理を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、ドット抜け検査の結果により特定された異常ノズルに対してクリーニングを行うのではなく、異常ノズルの周囲に存在する正常ノズルから、色の濃いインクを吐出させたり、増量したインクを吐出させたりして、連続紙S上のドット不良箇所を補完する処理を行っても良い。
【符号の説明】
【0125】
1 プリンター、 10 搬送ユニット、
20 キャリッジユニット、
30 ヘッドユニット、 31 ヘッド、
32 ケース、 33 流路ユニット、
33a 流路形成基板、 33b ノズルプレート、
331 圧力室、 332 インク供給路、
333 共通インク室、 334 ダイヤフラム部、
335 島部、 34 ピエゾ素子ユニット、
341 ピエゾ素子群、 342 固定板、
40 駆動信号生成部、 50 インク吸引ユニット、
55 ワイピングユニット、 60 フラッシングユニット、
70 第一検査ユニット、 71 スキャナー、
80 第二検査ユニット、
801 増幅部、 801a オペアンプ、
801b コンパレーター、 802 パルス幅検出部、
90 検出器群、 100 コントローラー、
CP コンピューター、 Nz ノズル、 PZT ピエゾ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に形成された印刷画像を読み取る第一センサーと、
ノズル毎に液体の吐出不良の有無を検知する第二センサーと、
を備え、
前記印刷画像を形成するための印刷処理と並行して前記第一センサーにより媒体に形成された印刷画像を読み取り、
読み取った当該印刷画像に基づいて吐出不良の有無を検出する第一検出処理を実行し、
前記第一検出処理において吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二センサーからの検知結果に基づいて吐出不良の有無をノズル毎に検出する第二検出処理を実行する液体吐出検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出検査装置であって、
前記第二検出処理において、吐出不良が有る場合と無い場合のうち、吐出不良が有ると判定した場合に、吐出不良の有る異常ノズルに対して液体の吐出を回復させる回復処理を行うことを特徴とする液体吐出検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出検査装置であって、
前記第一検出処理において吐出不良の有る異常ノズルを推定し、前記第二検出処理において、前記第一検出処理で推定された前記異常ノズル以外の正常ノズルに対して吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二センサーの検知結果に基づき前記回復処理を行うことを特徴とする液体吐出検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の液体吐出検査装置であって、
前記第一検出処理において吐出不良の有る異常ノズルを推定し、前記第二検出処理において、前記第一検出処理で推定された前記異常ノズルに対して吐出不良が無いと判定した場合に、再び前記第二検出処理を行うことを特徴とする液体吐出検査装置。
【請求項5】
媒体に対してノズルから液体を吐出することにより印刷画像を形成するヘッドと、
請求項1乃至4に記載の液体吐出検査装置と、を備える印刷装置。
【請求項6】
液体吐出検査装置を用いる液体吐出検査方法であって、
前記液体吐出検査装置は、媒体に形成された印刷画像を読み取る第一センサーと、ノズル毎に液体の吐出不良の有無を検知する第二センサーと、コントローラーと、を有し、
前記コントローラーにより、前記印刷画像を形成するための印刷処理と並行して前記第一センサーにより媒体に形成された印刷画像を読み取り、読み取った当該印刷画像に基づいて吐出不良の有無を検出する第一検出処理を実行し、前記第一検出処理において吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二センサーからの検知結果に基づいて吐出不良の有無をノズル毎に検出する第二検出処理を実行する液体吐出検査方法。
【請求項7】
媒体に形成された印刷画像を読み取る第一センサーと、ノズル毎に液体の吐出不良の有無を検知する第二センサーと、コントローラーと、を有する液体吐出検査装置に、
前記印刷画像を形成するための印刷処理と並行して前記第一センサーにより媒体に形成された印刷画像を読み取り、読み取った当該印刷画像に基づいて吐出不良の有無を検出する第一検出処理を実行させ、前記第一検出処理において吐出不良が有ると判定した場合に、前記第二センサーからの検知結果に基づいて吐出不良の有無をノズル毎に検出する第二検出処理を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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