説明

液体吐出装置、ヘッドノズルキャップおよび液体吐出装置の保守方法

【課題】インク充填、クリーニングおよびフラッシングの各工程において、ヘッドノズルから吐出されるインクの飛散を防止できる液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態にかかる液滴吐出装置1は、液滴を吐出するヘッドノズル20と、ヘッドノズル20の蓋をするヘッドノズルキャップ10と、を備え、ヘッドノズルキャップ10は、ヘッドノズル20の蓋をするものであり、ヘッドノズルキャップ当接面12およびヘッドノズル当接面22のうち少なくとも一方には、ヘッドノズルキャップ10の内側と外側とを連続空間にする連通構造が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非印刷時に実施されるヘッドノズルの保守作業において、インクが周囲を汚染することを防ぐ機構を備えた液体吐出装置およびヘッドノズルキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、ヘッドノズルが所定のコンディションから変化した場合、印刷の質は著しく劣化する。印刷の質の劣化を防ぐために、インクジェット記録装置が印刷をしていない非印刷時において、クリーニングおよびフラッシングと呼ばれる工程が行われる。
【0003】
特許文献1には、クリーニングおよびフラッシング等において吐出されたインクが飛散して周囲が汚染されることを防ぐために、記録ヘッドが吐出するインクをキャッピング手段が受ける技術が開示されている。記録ヘッドとキャッピング手段とが圧接された状態において、記録ヘッドとキャッピング手段とが形成する空間は密閉状態となる。したがって、記録ヘッドが吐出したインクをキャッピング手段が受ける構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−255075号公報(2000年9月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにヘッドノズルをヘッドノズルキャップがキャップすることにより形成されるヘッドノズルキャップ内の空間の密閉性が高い場合、クリーニングおよびフラッシング等の実施にともなって、当該空間の圧力が上昇する。これは、ヘッドノズルからインクが吐出されると、当該空間内の容積がインクで占められていき、元々当該空間内に存在していた空気の圧力が上昇するからである。
【0006】
この圧力の上昇にともない上記空間の密閉性が破られた場合、高い圧力が開放されると同時に、インクが飛沫となって周囲を汚染する。仮に、インク充填、クリーニングおよびフラッシングの工程中は上記空間の密閉性を保てた場合でも、ヘッドノズルとヘッドノズルキャップとを離間する際には、高い圧力が開放される。その際に、インクが飛沫となって周囲を汚染する。
【0007】
本願の目的は、インク充填、クリーニングおよびフラッシング等のように、液体カードリッジに圧送方式で液体を送るヘッドノズルのクリーニングおよびフラッシング等の工程において、ヘッドノズルから吐出されるインクの飛散を防止することができる液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、液滴を吐出するヘッドノズルと、上記ヘッドノズルの蓋をするヘッドノズルキャップと、を備え、上記ヘッドノズルキャップは、上記液滴の吐出孔が形成されているヘッドノズルの表面における当該吐出孔以外の部分に当接することにより、上記ヘッドノズルの蓋をするものであり、上記ヘッドノズルキャップの上記ヘッドノズルの表面に当接する面であるヘッドノズルキャップ当接面、および、上記ヘッドノズルの上記ヘッドノズルキャップに当接する面であるヘッドノズル当接面のうち少なくとも一方には、上記ヘッドノズルキャップの内側と外側とを連続空間にする連通構造が形成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明に係るヘッドノズルキャップは、液滴を吐出するヘッドノズルのキャップであって、上記液滴の吐出孔が形成されているヘッドノズルの表面における当該吐出孔以外の部分に直接接する面であるヘッドノズルキャップ当接面により、上記ヘッドノズルの蓋をするものであり、上記ヘッドノズルキャップ当接面には、自キャップの内側と外側とを連続空間にする連通構造が形成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る液体吐出装置の保守方法は、液滴を吐出するヘッドノズルと、上記ヘッドノズルの蓋をするヘッドノズルキャップと、液体カートリッジと、を備える液滴吐出装置のヘッドノズルの保守方法であって、大気圧より高い圧力を液体に印加する圧送方式により上記液体カートリッジに液体を送り込む液体送入工程を含み、上記ヘッドノズルキャップの上記ヘッドノズルの表面に当接する面であるヘッドノズルキャップ当接面、および、上記ヘッドノズルの上記ヘッドノズルキャップに当接する面であるヘッドノズル当接面のうち少なくとも一方には、上記ヘッドノズルキャップの内側と外側とを連続空間にする連通構造が形成されおり、上記液体送入工程では、上記ヘッドノズルキャップで上記ヘッドノズルを覆うことを特徴としている。
【0011】
上記連通構造が形成されていることによって、上記ヘッドノズルと上記ヘッドノズルキャップとが当接されることで形成されるキャップ内部の空間がキャップ外部の空間と連通され、上記キャップ内部の空間が密閉空間になることを防ぐ。このことによって、インク充填、クリーニングおよびフラッシング等の工程において、上記空間の圧力が上昇することを防ぐ。したがって、液体カードリッジに圧送方式で液体を送るヘッドノズルのクリーニングおよびフラッシング等の工程において、ヘッドノズルから吐出されるインクの飛散を防止することができる。
【0012】
上記ヘッドノズルキャップ当接面は、上記吐出孔が形成されている面において当該面の周囲を囲む弾性体であることがより好ましい。このことによって、ヘッドノズルに対してヘッドノズルキャップを当接する際に、上記弾性体が備える弾性を利用することができる。よって、ヘッドノズルとヘッドノズルキャップとは密接に接触する。したがって、ヘッドノズルのクリーニングおよびフラッシング等の工程において、ヘッドノズルから吐出されるインクが、ヘッドノズルとヘッドノズルキャップとの当接部分から漏れ出ることを防止する。
【0013】
上記連通構造は、凸構造であることがより好ましい。上記の構成を備えることによって、上記ヘッドノズルに対して上記ヘッドノズルキャップを当接した際に、上記ヘッドノズルキャップが備える上記凸構造が上記ヘッドノズルに接触する。この時、上記ヘッドノズルキャップの上記凸構造以外の部分は上記ヘッドノズルに接触しない。したがって、ヘッドノズルキャップの内側と外側とが連通する空間を形成する。このことによって上記ヘッドノズルと上記ヘッドノズルキャップとが当接された場合に形成される空間が、密閉空間になることを防ぐ。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る液体吐出装置は、ヘッドノズルに当接するヘッドノズルキャップ当接面に、ヘッドノズルキャップの内側および外側を連続空間とするための連通構造を備えているので、液体カードリッジに圧送方式で液体を送るヘッドノズルのクリーニングおよびフラッシング等の工程において、ヘッドノズルから吐出されるインクの飛散を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドノズルキャップおよびヘッドノズルの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るヘッドノズルキャップおよびヘッドノズルの概略図である。
【図3】(a)は本発明の一実施形態に係るヘッドノズルキャップのの概略を示す斜視図である。(b)は本発明の一実施形態に係る液体吐出装置200の断面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一態様に係る実施形態について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0017】
〔実施形態1〕
本発明の一態様にかかる液体吐出装置1は、図1に示すヘッドノズルキャップ10およびヘッドノズル20を備えている。
【0018】
(ヘッドノズル20)
ヘッドノズル20は、吐出する液体(以下、本実施形態ではインクとする)を被印刷物に対して吐出するノズル(吐出孔)21を備えている。
【0019】
ヘッドノズル20は、図示していないインクカートリッジを備えている。インクカートリッジには、図示していない液体貯留タンクよりインクが充填される。インクカートリッジにインクを充填する方法はいくつか知られているが、ここでは圧送式を採用しているものとして説明を進める。圧送式の場合、インクカートリッジの上流側をポンプで大気圧より高い圧力まで加圧する。この加圧された圧力によって、液体貯留タンクより液体カートリッジへインクを圧送する。圧送されるインクを圧送インク32として図1に示す。インクを充填するとき、もともとヘッドノズル20のノズル21付近に存在していたインクが吐出インク30としてノズルより吐出される。
【0020】
ノズル21にゴミが付着する、インクが蒸発することによってインクの粘度が高まる、インクの流路に空気が混入するなどの外的要因によって、ヘッドノズル20のコンディションが悪化することがある。このコンディションの悪化は、印刷品質の劣化の原因となる。したがって、ヘッドノズル20のコンディションを悪化する前の状態に戻すために、又は悪化を防止するために、クリーニングおよびフラッシングと呼ばれる工程が実施される。クリーニングとは、ヘッドノズル20の上流側を加圧することによって、強制的にノズル21より多量の吐出インク30を吐出する工程である。一方、フラッシングとはダミーの駆動信号をヘッドノズルに出力することによって、突出インク30を吐出する工程である。なお、インク充填、クリーニングおよびフラッシング等のように、液体カードリッジに圧送方式で液体を送ることでヘッドノズルの保守を行なう工程を、本明細書では「保守工程」という。また、保守工程を実施するための方法を総称して保守方法とする。
【0021】
保守工程では、ノズル21より吐出インク30が吐出される。吐出インク30が液体吐出装置の内部を汚染することを防ぐために、液体吐出装置はヘッドノズルキャップ10を備えている。
【0022】
(ヘッドノズルキャップ10)
ヘッドノズルキャップ10について、図1を参照しながら説明する。上述したように、ヘッドノズルキャップ10は吐出インク30が液体吐出装置の内部を汚染することを防ぐための部材である。ヘッドノズルキャップ10は図1に示すように、ヘッドノズル20のノズル21を含む面(ヘッドノズル当接面22とする)に当接して設置される。ヘッドノズルキャップ10のヘッドノズル当接面22に対向する面のうち、ヘッドノズル20に最も近接している面をヘッドノズルキャップ当接面12とする。
【0023】
ヘッドノズルキャップ当接面12には、凸構造の突出部11が設けられている。ヘッドノズル20にヘッドノズルキャップ10を当接させた場合、ヘッドノズル当接面22のうちノズル21を除く領域に、突出部11が接触する。その結果、ヘッドノズル当接面22とヘッドノズルキャップ当接面12とは直接接することなく、2面の間には図1に示すように隙間が形成される。ヘッドノズル20にヘッドノズルキャップ10を当接させた場合でも、ヘッドノズルキャップ10の内側と外側とは、上記隙間によって連通され連続空間となる。したがって、突出部11は本発明に係るヘッドノズルキャップが有する連通構造として機能する。
【0024】
液体吐出装置1は、ヘッドノズルキャップ当接面12がヘッドノズル21の周囲を囲むようにしてヘッドノズル当接面22に当接することによって、ヘッドノズルキャップ10が吐出インク30を受け止める。ヘッドノズルキャップ10をヘッドノズル20に当接する際、ヘッドノズルキャップ当接面12はヘッドノズル当接面22の面内であり、かつ、ヘッドノズル21に接触しない領域に当接すればよい。ヘッドノズルキャップ当接面12の大きさに対して、ヘッドノズル当接面22の面積を大きめに設定しておくことがより好ましい。このことによって、ヘッドノズルキャップ10のヘッドノズル20に対する当接位置がずれた場合でも、ヘッドノズルキャップ10とヘッドノズル20とは適切に当接することができる。したがって、ヘッドノズルキャップ10をヘッドノズル20に当接する際の位置を精度良く制御する必要はない。
【0025】
ヘッドノズルキャップ10をヘッドノズル20に当接する際の位置は、液体吐出装置1を構成する各種部品自体の加工精度、および各種部品を組み付ける際の組み付け精度などに依存する。液体吐出装置1は、ヘッドノズルキャップ10をヘッドノズル20に当接する際、その当接する位置に関して高い精度を要求しない。なぜなら、仮に、加工精度および組み付け精度が悪く、ヘッドノズルキャップ10とヘッドノズル20との間にズレが生じたとしても、弾性体でヘッドノズル20の周囲が覆われているので、インクの飛散が抑制されるからである。したがって、ヘッドノズルキャップ10をヘッドノズル20に当接する際の精度とは関係なく、液体吐出装置1を構成する各種部品の精度、および、各種部品を組み付ける際に求められる精度を決定することができる。
【0026】
ヘッドノズルキャップ10は、6個の突出部11を備えている。本発明に係るヘッドノズルキャップが備える凸構造の数は、複数であることがより好ましい。凸構造の数が複数であることにより、凸構造とヘッドノズル当接面とが接触する箇所が複数となる。このことによって、ヘッドノズルとヘッドノズルキャップとを当接する際に、安定した接触状態を得ることができる。言い換えると、ヘッドノズルキャップの内側と外側とを連通する空間を安定して形成することができる。ヘッドノズルおよびヘッドノズルキャップの大きさ、そして、ヘッドノズルキャップを構成する材料が備える特性を考慮して、凸構造の数を決定すればよい。
【0027】
ヘッドノズルキャップ10は、黒色のフッ素ゴムからなる。本実施形態のように本発明に係るヘッドノズルキャップを構成する材料は、弾性体であることが好ましい。例えば、フッ素ゴム、シリコンゴムおよびウレタン樹脂など挙げられる。ヘッドノズルキャップが弾性体からなることにより、ヘッドノズルに対してヘッドノズルキャップを当接する際に、弾性体が備える弾性を利用することができる。よって、上記連通構造を除く領域において、ヘッドノズルとヘッドノズルキャップとは密接に接触する。
【0028】
また、ヘッドノズルキャップ10を構成する材料は、可視領域および紫外領域の光のうち少なくともいずれか一方を吸収する材料であることが好ましい。本発明に係る液体吐出装置に使用するインクが、黒、シアン、マゼンタ、およびイエローなどに代表される顔料を含んだ液体である場合、可視領域および紫外領域の光を照射されることによって退色または変色する虞がある。一方、印刷に用いるインクは顔料を含んだ液体ではなく、感光性を有する材料を有機溶媒にて希釈した液体、例えばフォトレジストである場合も想定される。フォトレジストに代表される感光性を有する液体は、屋内照明装置が発生する可視領域および紫外領域の光によって感光する。ヘッドノズルキャップが、可視領域および紫外領域の光のうち少なくともいずれか一方を吸収する材料であることによって、上記感光性を有する液体が感光することを防止できる。
【0029】
本実施形態においては、突出部11の高さを100μmとしている。突出部11の形状は特に限定されないが、たとえば平面視において円形であり、断面視において円弧からなる形状を用いることができる。
【0030】
(ヘッドノズルキャップ10を用いた保守方法)
ヘッドノズルキャップ10を、ヘッドノズル20に当接させた状態において、ヘッドノズル20の保守工程を実施することによって、吐出インク30はヘッドノズルキャップ10に捉えられる。すなわち、吐出インク30がヘッドノズルキャップ10の外側へ漏れ出し周囲を汚染することはない。加えて、ヘッドノズルキャップ10とヘッドノズル20とによって形成される空間の圧力が上昇することもない。したがって、保守工程の実施に伴い吐出インク30が液体吐出装置1の周辺を汚染することを防止できる。
【0031】
液体吐出装置1周辺のインクによる汚染は、印刷物の汚染および印刷の質の劣化の原因になる。保守工程において吐出インク30が液体吐出装置1の周辺を汚染しないということは、液体吐出装置1のメンテナンスを行なう頻度を少なくすることができることを意味する。したがって、液体吐出装置1のランニングコストを低減することができる。
【0032】
液体吐出装置1が印刷しない状態、すなわち非印刷時において、ヘッドノズル20は被印刷物に対して対向しない位置に待機している。この非印刷時においてヘッドノズル20が待機する位置を本明細書では「待機位置」とする。液体吐出装置1が備えるヘッドノズルキャップ10は、ヘッドノズル20の待機位置に対向した位置に設置される。液体吐出装置1は、ヘッドノズル20が待機位置に待機していることを検出すると、ヘッドノズルキャップ10を機械的に移動させてヘッドノズル20に当接させる。このとき液体吐出装置1は、ヘッドノズル20を機械的に移動させてヘッドノズルキャップ10に当接させてもよい。なお、ヘッドノズルキャップ10をヘッドノズル20に当接する操作は手動で行なってもよい。
【0033】
液体吐出装置1は非印刷時において、常にヘッドノズル20とヘッドノズルキャップ10とが当接するように設定されていることがより好ましい。印刷時を除いて、ヘッドノズル20に蓋がされていることにより、吐出インク30が液体吐出装置1の周辺を汚染しないことに加えて、以下に示す更なる利点が得られる。
(a)ノズル21に空気中に存在する塵などが付着することを防止する。
(b)顔料を含むインクの場合、インクの退色および変色を防止する。インクがフォトレジストなどの場合は、インクが感光することを防止する。
(c)インクが含む溶媒の蒸発量を抑制し、ノズル付近のインクの粘土上昇を抑える。したがって、ノズルの目詰まりの可能性を低減させる。
本実施形態における連通構造は小さいため、ヘッドノズルキャップの内側と外側とにおいて連続的な空気の流れはない。よって、インクが含む溶媒の蒸発量を抑制し、ノズルの目詰まりの可能性を低減させる。
【0034】
ヘッドノズルキャップ10の内側は、ヘッドノズルキャップ当接面12より掘り下げられた凹構造を有している。したがって、突出インク30は凹構造部分に貯留する。貯留したインクを貯留インク31とする。ヘッドノズル20の保守工程を繰り返すことによって、貯留インク31は増加する。よって、貯留インク31を適切なタイミングでヘッドノズルキャップ10より回収する必要がある。貯留インク31を回収するために、ヘッドノズルキャップ10は、ヘッドノズルキャップ10の内側から外側へ貫通する貫通口13を有している。図1には図示していないバルブによって、通常、貫通口13は閉まっている。貯留インク31を回収する時のみ、バルブは開かれる。貫通口13の下流側には、ポンプ40が設置されており貯留インク31を吸引する。
【0035】
〔実施形態2〕
液体吐出装置100は、図2に示すヘッドノズルキャップ50およびヘッドノズル20を備えている。なお、実施形態1にて説明した部材と同一の部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。具体的には、液体吐出装置100が備えるヘッドノズル20は実施形態1におけるヘッドノズル20と同一である。したがって、実施形態2においては、ヘッドノズル20の説明を省略し、ヘッドノズルキャップ50についてのみ説明する。
【0036】
(ヘッドノズルキャップ50)
ヘッドノズルキャップ50の構成は、ヘッドノズルキャップ10の構成と比較して、ヘッドノズルキャップ当接面52に設けられる連通構造が異なる。ヘッドノズルキャップ当接面52には、凸構造の連通構造が設けられていない。したがって、ヘッドノズルキャップ50をヘッドノズル20に当接する場合、ヘッドノズルキャップ当接面52とヘッドノズル当接面22とが直接接触する。その状態でヘッドノズルキャップ50の内側と外側とを連続空間とするために、ヘッドノズルキャップ50は連通構造である切り込み51を備えている。
【0037】
ヘッドノズルキャップを構成する材料の弾性と、ヘッドノズルキャップをヘッドノズルに当接する際にヘッドノズルキャップに加える力の大きさと、を考慮して切り込み構造の深さを決定すればよい。
【0038】
ノズルキャップ50は、10個の切り込み51を備えている。本発明に係るヘッドノズルキャップが備える切り込み構造の数は、複数であることがより好ましい。切り込み構造を複数備えることにより、保守工程の実施中に、ヘッドノズルから吐出されたインクによっていずれかの切り込み構造が塞がれたとしても、ヘッドノズルキャップが複数の切り込み構造を備えることによって、支障なく保守工程を続けることができる。
【0039】
ヘッドノズルキャップ50は、黒色のフッ素ゴムからなる。ヘッドノズルキャップを構成する材料は弾性体であることがより好ましい。また、ヘッドノズルキャップを構成する材料は、可視領域および紫外領域の光のうち少なくともいずれか一方を吸収する材料であることがより好ましい。本実施形態に係るヘッドノズルキャップが、これらの構成を備えることがより好ましい理由は、実施形態1に記載した理由と同様である。
【0040】
ヘッドノズルキャップ50を用いた保守方法についても、ヘッドノズルキャップ10を用いた保守方法と同様である。
【0041】
なお、連通構造はヘッドノズル及びヘッドノズルキャップのうち少なくとも一方に設けられていればよいが、ヘッドノズルキャップにある方がより好ましい。連通構造が、例えばインク等で汚染されたり、磨耗したりするなどして、連通構造としての機能を果たせなくなった場合においても、ヘッドノズルキャップを取り替えることで、容易にヘッドノズルキャップの保守を再開できるからである。
【0042】
また、ヘッドノズル当接面が連通構造を備える場合、その具体的な構造は、例えば、実施形態1と同様に凸構造であってもよく、実施形態2と同様に切り込み構造であってもよい。
【0043】
ヘッドノズル当接面が連通構造として凸構造を備える場合には、ヘッドノズルを構成する材料と同一の材料からなりヘッドノズル当接面と一体形成された構造でもよい。ヘッドノズル当接面が連通構造として凸構造を備える場合には、ヘッドノズルを構成する材料とは異なる材料からなり、ヘッドノズル当接面に取り付ける構造でもよい。
【0044】
また、連通構造がヘッドノズル当接面にあるある形態においても、その数は、複数であることがより好ましい。ヘッドノズルキャップを構成する材料と、ヘッドノズルが備える連通構造を構成する材料と、がそれぞれ備える弾性を考慮し、ヘッドノズルキャップの内側と外側とを連通する空間が適切に設けられるように、連通構造の数を決定すればよい。
【0045】
〔実施形態3〕
液体吐出装置200は、図3に示すヘッドノズル20およびヘッドノズルキャップ60を備えている。なお、実施形態1にて説明した部材と同一の部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。具体的には、液体吐出装置200が備えるヘッドノズル20は実施形態1におけるヘッドノズル20と同一である。したがって、実施形態3においては、ヘッドノズル20の説明を省略し、ヘッドノズルキャップ60についてのみ説明する。
【0046】
(ヘッドノズルキャップ60)
ヘッドノズルキャップ60は、キャップ内壁61、キャップ外壁62を備えている。キャップ内壁には、切り込み63が設けられている。図3(a)はヘッドノズルキャップ60の概略を示す斜視図である。図3(b)は、切り込み63の位置における液体吐出装置200の断面を示す概略図である。
【0047】
ヘッドノズルキャップ60において、キャップ内壁61の上面が、ヘッドノズルキャップ当接面となりヘッドノズル当接面に直接接触する。切り込み63は、キャップ内壁61の内側および外側に形成される空間を連続空間とするための連通構造である。さらに、キャップ外壁62とヘッドノズル20との間には隙間が形成されている。この隙間は、キャップ外壁62の内側および外側に形成される空間を連続空間とするための連通構造である。
【0048】
ヘッドノズル60において、キャップ内壁61がノズル21から吐出されるインクの飛散を防ぐキャップとして機能する。保守工程においてインクと共に吐出される空気は、切り込み63およびキャップ外壁とヘッドノズル20との間に設けられる隙間を介してヘッドノズル60の外側に形成される空間に排出される。したがって、保守工程に際してキャップ内壁61の内側に形成される空間の圧力が高まることはない。
【0049】
ノズル21から吐出される空気が多い場合、空気と共にインクが切り込み63からキャップ内壁61の外側へ漏れる可能性がある。その場合でも、ヘッドノズルキャップ60がキャップ外壁62を備えるために、インクがヘッドノズルキャップ60の外側へ漏れ出す虞はない。
【0050】
キャップ内壁61に加えてキャップ外壁62を備えているために、ヘッドノズル60はインクが周囲に飛散することを防ぐことができる。
【0051】
<付記事項>
以上のように、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置1は、インクを吐出するヘッドノズル20と、ヘッドノズル20の蓋をするヘッドノズルキャップ10と、を備え、ヘッドノズルキャップ10は、インクのノズル21が形成されているヘッドノズル20の表面におけるノズル21以外の部分に当接することにより、ヘッドノズル20の蓋をするものであり、ヘッドノズルキャップ10のヘッドノズル20の表面に当接する面であるヘッドノズルキャップ当接面12、および、ヘッドノズル20のヘッドノズルキャップ10に当接する面であるヘッドノズル当接面22のうち少なくとも一方には、ヘッドノズルキャップ10の内側と外側とを連続空間にする連通構造が形成されていることを特徴としている。
【0052】
本発明の一実施形態に係るヘッドノズルキャップ10は、インクを吐出するヘッドノズル20のキャップであって、インクのノズル21が形成されているヘッドノズル20の表面におけるノズル21以外の部分に直接接する面であるヘッドノズルキャップ当接面12により、ヘッドノズル20の蓋をするものであり、ヘッドノズルキャップ当接面12には、自キャップの内側と外側とを連続空間にする連通構造が形成されていることを特徴としている。
【0053】
本発明の一実施形態に係る液体吐出装置1の保守方法は、インクを吐出するヘッドノズル20と、ヘッドノズル20の蓋をするヘッドノズルキャップ10と、液体カートリッジと、を備える液滴吐出装置1のヘッドノズル20の保守方法であって、大気圧より高い圧力をインクに印加する圧送方式により上記インクカートリッジにインクを送り込むインク送入工程を含み、ヘッドノズルキャップ10のヘッドノズル20の表面に当接する面であるヘッドノズルキャップ当接面12、および、ヘッドノズル20のヘッドノズルキャップ10に当接する面であるヘッドノズル当接面22のうち少なくとも一方には、ヘッドノズルキャップ10の内側と外側とを連続空間にする連通構造が形成されおり、上記インク送入工程では、ヘッドノズルキャップ10でヘッドノズル20を覆うことを特徴としている。
【0054】
上記連通構造が形成されていることによって、ヘッドノズル10とヘッドノズルキャップ20とが当接されることで形成されるキャップ内部の空間がキャップ外部の空間と連通され、上記空間が密閉空間になることを防ぐ。このことによって、インク充填、クリーニングおよびフラッシング等の工程において、上記空間の圧力が上昇することを防ぐ。したがって、液体カードリッジに圧送方式で液体を送るヘッドノズル20のクリーニングおよびフラッシング等の工程において、ヘッドノズル20からの吐出インク30を受け止めることができる。したがって、吐出インク30が飛散して液体吐出装置1の周囲を汚染することを防止する。
【0055】
ヘッドノズルキャップ当接部12は、ノズル21が形成されているヘッドノズル当接面22においてヘッドノズル当接面22の周囲を囲む弾性体である。このことによって、ヘッドノズル20に対してヘッドノズルキャップ10を当接する際に、弾性体が備える弾性を利用することができる。よって、ヘッドノズルキャップ当接面12における突出部11を除く領域において、ヘッドノズル20とヘッドノズルキャップ10とは密接に接触する。したがって、ヘッドノズル20のクリーニングおよびフラッシング等の工程において、ヘッドノズルから吐出されるインクが、ヘッドノズルとヘッドノズルキャップとの当接部分から漏れ出ることを防止する。
【0056】
ヘッドノズルキャップ10が備える連通構造は突出部11である。上記の構成を備えることによって、ヘッドノズル20に対してヘッドノズルキャップ10を当接した際に、上記ヘッドノズルキャップ10が備える突出部11がヘッドノズル20に接触する。この時、ヘッドノズルキャップ10の突出部11以外の部分はヘッドノズル20に接触しない。したがって、ヘッドノズルキャップの内側と外側とが連通する空間を形成する。このことによってヘッドノズル20とヘッドノズルキャップ10とが当接された場合に形成される空間が、密閉空間になることを防ぐ。
【0057】
ヘッドノズルキャップ10は複数の突出部11を備える。上記構成を備えることによって、突出部11とヘッドノズル20とが接触する箇所が複数となる。このことによって、ヘッドノズル20とヘッドノズルキャップ10とを当接する際に、安定した接触状態を得ることができる。言い換えると、ヘッドノズルキャップの内側と外側とを連通する空間を安定して形成することができる。
【0058】
吐出部11の形状は、平面視において円形であり、断面視において円弧からなる。上記構成を備えることによって、ヘッドノズル当接面22が平滑でない場合でも、ヘッドノズルキャップ当接面12をヘッドノズル当接面22に安定した状態で当接させることができる。
【0059】
ヘッドノズルキャップ50が備える連通構造は、ヘッドノズルキャップ50の内側と外側とを連通する切り込み51である。上記の構成を備えることによって、ヘッドノズルキャップ50とヘッドノズル20とを当接する際の接触面積を広く設定することができる。したがって、ヘッドノズルキャップ50とヘッドノズル50とを安定した状態で当接することができる。
【0060】
ヘッドノズルキャップ50が備える切り込み51の数は複数である。上記の構成を備えることによって、いずれかの切り込み51が吐出インク30によって塞がれた場合でも、ヘッドノズル20とヘッドノズルキャップ10とが当接された場合に形成される空間を連続した状態に保つことができる。
【0061】
液体吐出装置1および100が備えるヘッドノズルキャップ10および50は、それぞれのヘッドノズルキャップの内側から外側へ貫通する貫通口13を備えている。このことによって、貯留インク31をそれぞれのヘッドノズルキャップの外側へ排出することが可能となる。
【0062】
液体吐出装置1および100が備えるヘッドノズルキャップ10および50は、可視領域および紫外領域の光のうち、少なくともいずれか一方の光を吸収する材料により形成されている。印刷に用いるインクには、黒、シアン、マゼンタ、およびイエローなどに代表される顔料を含んだ液体である場合、上記可視領域および紫外領域の光を照射されることによって退色または変色する虞がある。印刷に用いるインクは上記顔料を含んだ液体ではなく、感光性を有する材料を有機溶媒にて希釈した液体、例えばフォトレジストである場合もある。フォトレジストに代表される感光性を有する液体は、屋内照明装置が発生する可視領域および紫外領域の光によって感光してしまう。ヘッドノズルキャップ10および50が上記構成を備えることによって、上記顔料を含んだ液体の退色または変色を防止できる。同様に、上記感光性を有する液体が感光することを防止できる。
【0063】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、液体吐出装置が備えるヘッドノズルのコンディションを保つために実施する保守工程に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 液滴吐出装置
10 ヘッドノズルキャップ
11 突出部
12 ヘッドノズルキャップ当接面
13 貫通口
20 ヘッドノズル
21 ノズル(吐出孔)
22 ヘッドノズル当接面
30 吐出インク
31 貯留インク
32 圧送インク
40 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するヘッドノズルと、
上記ヘッドノズルの蓋をするヘッドノズルキャップと、を備え、
上記ヘッドノズルキャップは、上記液滴の吐出孔が形成されているヘッドノズルの表面における当該吐出孔以外の部分に当接することにより、上記ヘッドノズルの蓋をするものであり、
上記ヘッドノズルキャップの上記ヘッドノズルの表面に当接する面であるヘッドノズルキャップ当接面、および、上記ヘッドノズルの上記ヘッドノズルキャップに当接する面であるヘッドノズル当接面のうち少なくとも一方には、上記ヘッドノズルキャップの内側と外側とを連続空間にする連通構造が形成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
上記ヘッドノズルキャップ当接面は、上記吐出孔が形成されている面において当該面の周囲を囲む弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
上記連通構造は、凸構造であることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
液滴を吐出するヘッドノズルのキャップであって、
上記液滴の吐出孔が形成されているヘッドノズルの表面における当該吐出孔以外の部分に直接接する面であるヘッドノズルキャップ当接面により、上記ヘッドノズルの蓋をするものであり、
上記ヘッドノズルキャップ当接面には、自キャップの内側と外側とを連続空間にする連通構造が形成されていることを特徴とするヘッドノズルキャップ。
【請求項5】
液滴を吐出するヘッドノズルと、上記ヘッドノズルの蓋をするヘッドノズルキャップと、液体カートリッジと、を備える液滴吐出装置のヘッドノズルの保守方法であって、
大気圧より高い圧力を液体に印加する圧送方式により上記液体カートリッジに液体を送り込む液体送入工程を含み、
上記ヘッドノズルキャップの上記ヘッドノズルの表面に当接する面であるヘッドノズルキャップ当接面、および、上記ヘッドノズルの上記ヘッドノズルキャップに当接する面であるヘッドノズル当接面のうち少なくとも一方には、上記ヘッドノズルキャップの内側と外側とを連続空間にする連通構造が形成されおり、
上記液体送入工程では、上記ヘッドノズルキャップで上記ヘッドノズルを覆うことを特徴とする液体吐出装置の保守方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−56521(P2013−56521A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197692(P2011−197692)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】