説明

液体吐出装置、及び、液体循環方法

【課題】供給流路内の液体を簡易な構成を用いて流動させることにある。
【解決手段】液体を貯留する貯留部と、液体を媒体に吐出するヘッドユニットと、前記貯留部から前記ヘッドユニットへ液体を供給するための複数の供給流路と、互いに異なる前記供給流路間に掛け渡された複数のバイパス流路と、前記貯留部、前記ヘッドユニット、前記供給流路、前記バイパス流路のうちの該供給流路及び該バイパス流路のみで構成される循環流路内で液体を循環させるコントローラーと、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び、液体循環方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を貯留する貯留部と、液体を媒体に吐出するヘッドユニットと、貯留部からヘッドユニットへ液体を供給するための複数の供給流路を有する液体吐出装置は既によく知られている。かかる液体吐出装置としては、例えば、紙、フィルムなどの各種媒体にインクを吐出して、印刷を行うインクジェットプリンターを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3106013号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、貯留部からヘッドユニットへ液体を供給するための前述した供給流路内で、液体が滞留し当該液体の成分が沈降する不都合が生じていた。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、供給流路内の液体を簡易な構成を用いて流動させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
主たる本発明は、液体を貯留する貯留部と、
液体を媒体に吐出するヘッドユニットと、
前記貯留部から前記ヘッドユニットへ液体を供給するための複数の供給流路と、
互いに異なる前記供給流路間に掛け渡された複数のバイパス流路と、
前記貯留部、前記ヘッドユニット、前記供給流路、前記バイパス流路のうちの該供給流路及び該バイパス流路のみで構成される循環流路内で液体を循環させるコントローラーと、
を備えることを特徴とする液体吐出装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】画像記録装置1の構成を示す概略図である。
【図2】画像記録装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】ホワイトインク補給ユニット36の模式図である。
【図4】ホワイトインク補給ユニット36のブロック図である。
【図5】インク循環処理が実行される前のホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。
【図6】インク循環処理が実行されているときのホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。
【図7】インク充填処理が実行される前のホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。
【図8】供給チューブ充填処理が実行されているときのホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。
【図9】バイパスチューブ充填処理の第一ステップが実行されているときのホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。
【図10】バイパスチューブ充填処理の第二ステップが実行されているときのホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。
【図11】比較例に係るホワイトインク補給ユニット36のブロック図である。
【図12】第二実施形態に係るホワイトインク補給ユニット36のブロック図である。
【図13】第二実施形態においてバイパスチューブ充填処理が行われるときの不都合を説明するための説明ブロック図である。
【図14】第三実施形態に係るホワイトインク補給ユニット36のブロック図である。
【図15】第四実施形態に係るホワイトインク補給ユニット36のブロック図である。
【図16】変形例に係るホワイトインク補給ユニット36のブロック図である。
【図17】変形例において、バイパスチューブ充填処理の第一ステップが実行されているときのホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。
【図18】変形例において、バイパスチューブ充填処理の第二ステップが実行されているときのホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0008】
液体を貯留する貯留部と、
液体を媒体に吐出するヘッドユニットと、
前記貯留部から前記ヘッドユニットへ液体を供給するための複数の供給流路と、
互いに異なる前記供給流路間に掛け渡された複数のバイパス流路と、
前記貯留部、前記ヘッドユニット、前記供給流路、前記バイパス流路のうちの該供給流路及び該バイパス流路のみで構成される循環流路内で液体を循環させるコントローラーと、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
かかる液体吐出装置によれば、供給流路内の液体を簡易な構成を用いて流動させることが可能となる。
【0009】
また、前記供給流路を三つ以上有し、
前記循環流路は、三つ以上の前記供給流路のうちのどの二つの前記供給流路の組に対しても複数のバイパス流路が二つの前記供給流路間に掛け渡されないように構成されることとしてもよい。
かかる場合には、バイパス流路を液体で充填する処理が適切に行われる。
【0010】
また、三つ以上の前記供給流路として、第一供給流路、第二供給流路、第三供給流路、第四供給流路を有し、
前記第一供給流路と前記第二供給流路に掛け渡された第一バイバス流路と、
前記第二供給流路と前記第三供給流路に掛け渡された第二バイバス流路と、
前記第三供給流路と前記第四供給流路に掛け渡された第三バイバス流路と、
前記第四供給流路と前記第一供給流路に掛け渡された第四バイバス流路と、
を有し、
前記循環流路は、前記第一供給流路、前記第一バイバス流路、前記第二供給流路、前記第二バイバス流路、前記第三供給流路、前記第三バイバス流路、前記第四供給流路、前記第四バイパス流路により構成されることとしてもよい。
かかる場合には、バイパス流路の長さを短くすることが可能となる。
【0011】
また、前記第一供給流路乃至前記第四供給流路を這わせるためのケーブルベアを備え、
前記第一バイパス流路及び前記第三バイパス流路は、前記ケーブルベア外であって、該ケーブルベアと前記貯留部との間に設けられており、
前記第二バイパス流路及び前記第四バイパス流路は、前記ケーブルベア外であって、該ケーブルベアと前記ヘッドユニットとの間に設けられていることとしてもよい。
かかる場合には、供給流路内の液体を広い範囲で流動させることが可能となる。
【0012】
次に、液体を貯留する貯留部と、液体を媒体に吐出するヘッドユニットと、前記貯留部から前記ヘッドユニットへ液体を供給するための複数の供給流路と、互いに異なる前記供給流路間に掛け渡された複数のバイパス流路と、を備える液体吐出装置を準備することと、
前記貯留部、前記ヘッドユニット、前記供給流路、前記バイパス流路のうちの該供給流路及び該バイパス流路のみで構成される循環流路内で液体を循環させることと、
を備えることを特徴とする液体循環方法。
かかる液体循環方法によれば、供給流路内の液体を簡易な構成を用いて流動させることが可能となる。
【0013】
===画像記録装置1の構成例について===
液体吐出装置の一例としての画像記録装置1(本実施の形態においては、インクジェット式プリンター)の構成例について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、画像記録装置1の概略断面図である。図2は、画像記録装置1のブロック図である。
なお、以下の説明において、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、「前後方向」をいう場合は、図1において紙面に直交する方向を示すものとする。
また、本実施の形態においては、画像記録装置1が画像を記録する媒体の一例として、ロール状に巻かれた用紙(以下、ロール紙(連続紙)という)を用いて説明する。
【0014】
本実施の形態に係る画像記録装置1は、図1及び図2に示すように、搬送ユニット20、及び、該搬送ユニット20がロール紙2を搬送する搬送経路(図1において、当該搬送経路は、巻軸18から巻き取り駆動軸92までの間の、ロール紙2が位置する部分により表されている)に沿って、給送ユニット10、プラテン29、巻き取りユニット90、を有し、さらに、搬送経路上の画像記録領域Rにおいて液体の一例としてのインクを吐出して画像記録を行うヘッドユニット30と、インク補給ユニット35と、キャリッジユニット40と、クリーニングユニット43と、ヒーターユニット70と、プラテン29上のロール紙2に風を送る送風ユニット80と、これらのユニット等を制御し画像記録装置1としての動作を司るコントローラー60と、検出器群50と、を有している。
【0015】
給送ユニット10は、ロール紙2を搬送ユニット20に給送するものである。この給送ユニット10は、ロール紙2が巻かれ回転可能に支持される巻軸18と、巻軸18から繰り出されたロール紙2を巻き掛けて搬送ユニット20に導くための中継ローラー19と、を有している。
【0016】
搬送ユニット20は、給送ユニット10により送られたロール紙2を、予め設定された搬送経路に沿って搬送するものである。この搬送ユニット20は、図1に示すように、中継ローラー19に対して水平右方に位置する中継ローラー21と、中継ローラー21から見て右斜め下方に位置する中継ローラー22と、中継ローラー22から見て右斜め上方(プラテン29から見て搬送方向上流側)に位置する第一搬送ローラー23と、中継ローラー22と第一搬送ローラー23との間に位置するステアリングユニット(舵取りユニット)20aと、第一搬送ローラー23から見て右方(プラテン29から見て搬送方向下流側)に位置する第二搬送ローラー24と、第二搬送ローラー24から見て鉛直下方に位置する反転ローラー25と、反転ローラー25から見て右方に位置する中継ローラー26と、中継ローラー26から見て上方に位置する送り出しローラー27と、を有している。
【0017】
中継ローラー21は、中継ローラー19から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて下方に向かって弛ませるローラーである。
中継ローラー22は、中継ローラー21から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
【0018】
第一搬送ローラー23は、不図示のモーターにより駆動される第一駆動ローラー23aと、該第一駆動ローラー23aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第一従動ローラー23bとを有している。この第一搬送ローラー23は、下方に弛ませたロール紙2を上方に引き上げ、プラテン29に対向する画像記録領域Rへ搬送するローラーである。第一搬送ローラー23は、画像記録領域R上のロール紙2の部位に対して画像印刷がなされている期間、一時的に搬送を停止させるようになっている。なお、コントローラー60の駆動制御により、第一駆動ローラー23aの回転駆動に伴って第一従動ローラー23bが回転することによって、プラテン29上に位置させるロール紙2の搬送量が調整される。
【0019】
搬送ユニット20は、上述したとおり、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間に巻き掛けたロール紙2の部位を下方に弛ませて搬送する機構を有している。このロール紙2の弛みは、コントローラー60により、不図示の弛み検出用センサーからの検出信号に基づき監視される。具体的には、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間において弛ませたロール紙2の部位を、弛み検出用センサーが検出した場合には、該部位に適切な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20はロール紙2を弛ませた状態で搬送することが可能となる。一方、弛み検出用センサーが弛ませたロール紙2の部位を検出しない場合は、該部位に過剰な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20によるロール紙2の搬送が一時的に停止され、張力が適切な大きさに調整される。
【0020】
ステアリングユニット20aは、図1に示すように、傾斜した状態で搬送経路上に位置し、回動することによりロール紙2の幅方向位置(幅方向(図1に示す前後方向)においてロール紙2が位置する位置)を変化させるためのものである。すなわち、ロール紙2が搬送経路に沿って搬送される際、中継ローラー等の軸ずれや組み付け誤差等によりロール紙2に作用する張力が変動すること等に起因して、ロール紙2の幅方向位置が変位する場合がある。そして、当該ステアリングユニット20aは、ロール紙2の当該幅方向位置を調整するためのものである。
【0021】
第二搬送ローラー24は、不図示のモーターにより駆動される第二駆動ローラー24aと、該第二駆動ローラー24aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第二従動ローラー24bとを有している。この第二搬送ローラー24は、ヘッドユニット30により画像が記録された後のロール紙2の部位を、プラテン29の支持面に沿って水平右方向に搬送した後に鉛直下方に搬送するローラーである。これにより、ロール紙2の搬送方向が転換されることになる。なお、コントローラー60の駆動制御により、第二駆動ローラー24aの回転駆動に伴って第二従動ローラー24bが回転することによって、プラテン29上に位置するロール紙2の部位に対して付与される所定の張力が調整される。
【0022】
反転ローラー25は、第二搬送ローラー24から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
中継ローラー26は、反転ローラー25から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて上方に向かって搬送するローラーである。
送り出しローラー27は、中継ローラー26から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて巻き取りユニット90に送り出すようになっている。
【0023】
このように、ロール紙2が各ローラーを順次経由して移動することにより、ロール紙2を搬送するための搬送経路が形成されることになる。なお、ロール紙2は、搬送ユニット20により、画像記録領域Rと対応した領域単位で間欠的にその搬送経路に沿って搬送される。
【0024】
ヘッドユニット30は、搬送経路上の画像記録領域Rに位置するロール紙2の部位に画像を記録するためのものである。すなわち、ヘッドユニット30は、搬送ユニット20により搬送経路上の画像記録領域Rに(プラテン29上に)送り込まれたロール紙2の部位に、インクを吐出して画像を形成する。本実施の形態において、このヘッドユニット30は、15個のヘッド31を有している。
【0025】
各々のヘッド31は、その下面に、列方向にノズルが並んだノズル列を有している。本実施の形態においては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ホワイト(W)等の色毎にそれぞれ複数のノズル♯1〜♯Nからなるノズル列を有している。各ノズル列の各ノズル♯1〜♯Nは、ロール紙2の搬送方向に交差する交差方向(つまり、当該交差方向が前述した列方向である)に直線状に配列されている。各ノズル列は、当該搬送方向に沿って相互に間隔をあけて平行に配置されている。
【0026】
各ノズル♯1〜♯Nには、インク滴を吐出するための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯Nから吐出される。
【0027】
そして、かかるヘッド31が、前記交差方向(前記列方向)において15個並べられ、このことにより、ヘッドユニット30が形成されている。そのため、ヘッドユニット30は、色毎に15×N個のノズルを有している。
【0028】
インク補給ユニット35は、ヘッド31によるインクの吐出に起因してヘッドユニット30内のインクの量が減った際に、ヘッドユニット30にインクを補給するためのものである。なお、インク補給ユニット35については、後に詳述する。
【0029】
キャリッジユニット40は、ヘッドユニット30(ヘッド31)を移動させるためのものである。このキャリッジユニット40は、搬送方向(左右方向)に延びるキャリッジガイドレール41と(図1に二点鎖線で示す)、キャリッジガイドレール41に沿って搬送方向(左右方向)へ往復移動可能に支持されたキャリッジ42と、不図示のモーターとを有する。
【0030】
キャリッジ42には、ヘッドユニット30、すなわち、15個のヘッド31が設けられている。より具体的には、キャリッジ42は、4つのサブキャリッジ(第一サブキャリッジ乃至第四サブキャリッジ)に分かれており、第一サブキャリッジ乃至第三サブキャリッジには、それぞれ4個のヘッド31が、第四サブキャリッジには、3個のヘッド31が設けられている。
【0031】
換言すれば、15個のヘッド31は、4つのヘッド群、すなわち、第一ヘッド乃至第四ヘッドが属する第一ヘッド群302、第五ヘッド乃至第八ヘッドが属する第二ヘッド群304、第九ヘッド乃至第十二ヘッドが属する第三ヘッド群306、第十三ヘッド乃至第十五ヘッドが属する第四ヘッド群308を構成している。そして、第一ヘッド群302は第一サブキャリッジに、第二ヘッド群304は第二サブキャリッジに、第三ヘッド群306は第三サブキャリッジに、第四ヘッド群308は第四サブキャリッジに、それぞれ設けられている。
【0032】
そして、4つのサブキャリッジからなるキャリッジ42は、不図示のモーターの駆動により、ヘッドユニット30(換言すれば、4つのヘッド群、又は、15個のヘッド31)と一体となって搬送方向(左右方向)へ移動するよう構成されている。
【0033】
クリーニングユニット43(図1においては、不図示)は、ヘッド31をクリーニングするためのものである。このクリーニングユニット43は、ホームポジション(以下、HPと呼ぶ。図1参照)に設けられており、不図示のキャップと、吸引ポンプ43a(図4等参照)等とを有している。ヘッド31(キャリッジ42)が搬送方向(左右方向)に移動してHPに位置すると、ヘッド31の下面(ノズル面)に不図示のキャップが密着するようになっている。このようにキャップが密着した状態で吸引ポンプ43aが作動すると、ヘッド31内のインクが、増粘したインクや紙粉と共に吸引される。このようにして、目詰まりしたノズルが不吐出状態から回復することによってヘッドのクリーニングが完了する。なお、当該クリーニングユニット43は、後に詳述するインク充填処理の際にも用いられる。
【0034】
また、搬送方向(左右方向)におけるHPとプラテン29との間には、フラッシングユニット44が設けられており、ヘッド31(キャリッジ42)が搬送方向(左右方向)に移動してフラッシングユニット44に対向する位置に位置すると、ヘッド31は前記ノズル列に属する各ノズルからインクを吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作を実行する。
【0035】
プラテン29は、搬送経路上の画像記録領域Rに位置するロール紙2の部位を支持するとともに、該部位を加熱するものである。このプラテン29は、図1に示すように、搬送経路上の画像記録領域Rに対応させて設けられ、かつ、第一搬送ローラー23と第二搬送ローラー24との間の搬送経路に沿った領域に配置されている。そして、プラテン29は、ヒーターユニット70が発生させた熱の供給を受けることにより、ロール紙2の該部位を加熱することができる。
【0036】
ヒーターユニット70は、ロール紙2を加熱するためのものであり、不図示のヒーターを有している。このヒーターは、ニクロム線を有しており、当該ニクロム線をプラテン29内部に、プラテン29の支持面から一定距離となるように配置させて構成されている。このため、ヒーターは、通電されることによってニクロム線自体が発熱し、プラテン29の支持面上に位置するロール紙2の部位に熱を伝導させることができる。このヒーターは、プラテン29の全域にニクロム線を内蔵させて構成されているため、プラテン29上のロール紙2の部位に対して熱を均一に伝導することができる。本実施の形態において、プラテン上のロール紙2の部位の温度が45℃となるように、該ロール紙2の部位を均一に加熱する。これにより、該ロール紙2の部位に着弾されたインクを乾燥させることができる。
【0037】
送風ユニット80は、プラテン29上のロール紙2に風を送るためのものである。この送風ユニット80は、ファン81とファン81を回転させるモーター(不図示)とを備えている。ファン81は、回転することにより、プラテン29上のロール紙2に風を送り、ロール紙2に着弾されたインクを乾燥させるためのものである。このファン81は、図1に示すように、本体部に設けられた開閉可能なカバー(不図示)に複数設けられている。そして、この各々のファン81は、カバーが閉じた際に、プラテン29の上方に位置して、当該プラテン29の支持面(当該プラテン29上のロール紙2)と対向するようになっている。
【0038】
巻き取りユニット90は、搬送ユニット20により送られたロール紙2(画像記録済みのロール紙)を巻き取るためのものである。この巻き取りユニット90は、送り出しローラー27から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め下方へ搬送するための中継ローラー91と、回転可能に支持され中継ローラー91から送られたロール紙2を巻き取る巻き取り駆動軸92と、を有している。
【0039】
コントローラー60は、画像記録装置1の制御を行うための制御ユニットである。このコントローラー60は、図2に示すように、インターフェース部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、を有している。インターフェース部61は、外部装置であるホストコンピューター110と画像記録装置1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、画像記録装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路64により各ユニットを制御する。
【0040】
検出器群50は、画像記録装置1内の状況を監視するものであり、例えば、前述の弛み検出用センサー、搬送ローラーに取り付けられてロール紙2の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送されるロール紙2の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ42(又はヘッド31)の搬送方向(左右方向)の位置を検出するためのリニア式エンコーダー、ロール紙2の幅方向における紙端(エッジ)位置を検出する紙端位置検出センサー、後述するサブタンクセンサーなどがある。
【0041】
===インク補給ユニット35について===
<<<インク補給ユニット35の構成例について>>>
次に、インク補給ユニット35について、図1、図3、及び、図4を用いて説明する。図3は、ホワイトインク補給ユニット36の模式図である。図4は、ホワイトインク補給ユニット36のブロック図である。なお、図4は、図3を見易くするためにブロック図状にしたものであり、図3と図4は、同じものを表している(説明は、見易い図4を用いて行う)。
【0042】
インク補給ユニット35は、前述したとおり、ヘッド31によるインクの吐出に起因してヘッドユニット30内のインクの量が減った際に、ヘッドユニット30にインクを補給(供給)するためのものである。
【0043】
このインク補給ユニット35は、インクの色毎に設けられている。すなわち、イエローインクを補給するためのイエローインク補給ユニット、マゼンタインクを補給するためのマゼンタインク補給ユニット、シアンインクを補給するためのシアンインク補給ユニット、ブラック(黒)インクを補給するためのブラックインク補給ユニット、ホワイト(白)インクを補給するためのホワイトインク補給ユニット36等が設けられている。
【0044】
ここで、理由については後述するが、ホワイトインク補給ユニット36は、ホワイトインク以外の他の色のインク補給ユニットの構成とは異なる構成を有している(一方で、ホワイトインク以外の他の色のインク補給ユニットの構成は、共通である)。以下では、これらの複数のインク補給ユニット35のうち、主としてホワイトインク補給ユニット36について説明し、他の色のインク補給ユニットについては、ホワイトインク補給ユニット36との構成の相違点のみを後に説明する。
【0045】
ホワイトインク補給ユニット36は、図4に示すように、インクカートリッジ362と、インクを貯留する貯留部の一例としてのサブタンク364と、インクの流路(通り道)となる多数のチューブと、当該チューブを開閉するための多数のバルブ(本実施の形態において、当該バルブはソレノイドバルブであるが、これに限定されるものではない)と、ポンプ366(本実施の形態においては、当該ポンプはチューブポンプであるが、これに限定されるものではない)と、を有している。なお、当該インクカートリッジ362及び当該サブタンク364が設置されている場所を、図1における符号35及び36で表している。
【0046】
インクカートリッジ362は、ヘッドユニット30に供給するためのインクを収容する。このインクカートリッジ362は、画像記録装置本体に対して着脱可能に構成されている。
【0047】
また、インクカートリッジ362は、図4に示すように、インクカートリッジ362とサブタンク364を繋ぐチューブ(当該チューブを、便宜上、IC−ST間チューブ370と呼ぶ)を介して、サブタンク364に接続されている。
【0048】
サブタンク364は、インクカートリッジ362からヘッドユニット30へ供給されるインクを一時的に貯留するものである。このサブタンク364は、画像記録装置本体に固定されている。すなわち、サブタンク364は、インクカートリッジ362とは異なり、画像記録装置本体に対して着脱することができない構成を有している。
【0049】
また、サブタンク364が、IC−ST間チューブ370を介して、インクカートリッジ362に接続されている点については既に説明したが、当該IC−ST間チューブ370には、図4に示すように、バルブ(当該バルブを、便宜上、IC−ST間バルブ390と呼ぶ)が備えられている。さらに、サブタンク364には、サブタンク364内のインクの量が閾値未満となるとその旨を検知するサブタンクセンサー(不図示)が備えられている。
【0050】
そして、コントローラー60が、サブタンクセンサーからの検知信号を受けることによりサブタンク364内のインクの量が閾値未満であることを把握すると、閉じていたIC−ST間バルブ390を開放して、インクカートリッジ362からサブタンク364へインクを流入させるようになっている。このように、サブタンク364においては、閾値以上の量のインクが常時存在するように(貯留されるように)、インクの量が制御されている。
【0051】
また、サブタンク364は、図4に示すように、サブタンク364とヘッドユニット30とを繋ぐ4つの供給チューブを介して、ヘッドユニット30に接続されている。この4つの供給チューブ(第一供給チューブ372、第二供給チューブ374、第三供給チューブ376、第四供給チューブ378)は、サブタンク364からヘッドユニット30へインクを供給するための供給流路としての役割を果たす。
【0052】
すなわち、画像記録(印刷)等が行われることによりインクがヘッドユニット30(ヘッド31)から吐出されて、ヘッドユニット30(ヘッド31)内のインクが消費されると、消費された当該インクを補うように、サブタンク364内のインクが第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378を通ってヘッドユニット30(ヘッド31)へ流入するようになっている。
【0053】
また、既に説明したとおり、本実施の形態に係るヘッドユニット30は、15個のヘッド31を有し、当該15個のヘッド31は、4つのヘッド群、すなわち、第一ヘッド群302乃至第四ヘッド群308を備えているが、4つの供給チューブの各々は、図4に示すように、それぞれ4つのヘッド群の各々に接続されている。
【0054】
すなわち、第一供給チューブ372(第二供給流路に相当)は、第一ヘッド群302(第一ヘッド乃至第四ヘッド)に接続されており、第一ヘッド乃至第四ヘッドへインクを供給する。また、第二供給チューブ374(第三供給流路に相当)は、第二ヘッド群304(第五ヘッド乃至第八ヘッド)に接続されており、第五ヘッド乃至第八ヘッドへインクを供給する。また、第三供給チューブ376(第四供給流路に相当)は、第三ヘッド群306(第九ヘッド乃至第十二ヘッド)に接続されており、第九ヘッド乃至第十二ヘッドへインクを供給する。また、第四供給チューブ378(第一供給流路に相当)は、第四ヘッド群308(第十三ヘッド乃至第十五ヘッド)に接続されており、第十三ヘッド乃至第十五ヘッドへインクを供給する。
【0055】
なお、図1から明らかなように、インク補給ユニット35のサブタンク364とヘッドユニット30とは遠く離れた位置にある。そのため、第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378の各々は、非常に長いチューブとなっており、その長さは、5〜6メートルである。そして、図4に示すように、第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378を這わせるためのケーブルベア400が設けられており、第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378は当該ケーブルベア400内に収容されている。
【0056】
また、図4に示すように、互いに異なる供給チューブ間には、バイパスチューブが掛け渡されている。より具体的には、4つのバイパスチューブ(第一バイパスチューブ382乃至第四バイパスチューブ388)が備えられており、第一供給チューブ372と第二供給チューブ374に、第一バイパスチューブ382(第二バイパス流路に相当)が掛け渡され、第二供給チューブ374と第三供給チューブ376に、第二バイパスチューブ384(第三バイパス流路に相当)が掛け渡され、第三供給チューブ376と第四供給チューブ378に、第三バイパスチューブ386(第四バイパス流路に相当)が掛け渡され、第四供給チューブ378と第一供給チューブ372に、第四バイパスチューブ388(第一バイパス流路に相当)が掛け渡されている。
【0057】
なお、第一バイパスチューブ382乃至第四バイパスチューブ388の各々は、第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378とは異なり、非常に短いチューブとなっており、その長さは、5〜20cmである。
【0058】
また、図4に示すように、第二バイパスチューブ384及び第四バイパスチューブ388は、共に、サブタンク364及びヘッドユニット30のうちのサブタンク364により近い位置に位置しており、一方、第一バイパスチューブ382及び第三バイパスチューブ386は、共に、サブタンク364及びヘッドユニット30のうちのヘッドユニット30により近い位置に位置している。換言すれば、第二バイパスチューブ384(第三バイパス流路に相当)及び第四バイパスチューブ388(第一バイパス流路に相当)は、前記ケーブルベア400外であって、ケーブルベア400とサブタンク364との間に設けられており、第一バイパスチューブ382(第二バイパス流路に相当)及び第三バイパスチューブ386(第四バイパス流路に相当)は、前記ケーブルベア400外であって、ケーブルベア400とヘッドユニット30との間に設けられている。
【0059】
そして、これらのバイパスチューブは、供給チューブ内でインクが滞留し当該インクの成分が沈降する不都合を改善するために、供給チューブとバイパスチューブで構成される循環流路内でインクを循環させるために、設けられたものである。
【0060】
すなわち、当該バイパスチューブが設けられていることで、第一供給チューブ372、第一バイパスチューブ382、第二供給チューブ374、第二バイパスチューブ384、第三供給チューブ376、第三バイパスチューブ386、第四供給チューブ378、第四バイパスチューブ388により構成される閉流路が形成される(当該閉流路を図4において太線で示す。なお、当該太線については、図4中のどの部分が閉流路であるかを表すために便宜上太くしたものであり、線の太さとチューブの太さとは無関係である)。すなわち、形成される閉流路は、サブタンク364、ヘッドユニット30、供給チューブ、バイパスチューブのうちの供給チューブ及びバイパスチューブのみで構成されるものである。
【0061】
そして、当該閉流路にインクを流すためのポンプ366が、チューブ(本実施の形態においては、第四バイパスチューブ388だが、これに限定されるものではない)に設けられており、当該ポンプ366が作動すると、当該閉流路が循環流路となり、当該循環流路内でインクが循環するようになっている(このようなインクの循環により、前記沈降に係る不都合が改善される)。
【0062】
なお、図4に示すように、4つの供給チューブの各々には、2つのバルブ(サブタンク側バルブとヘッドユニット側バルブ)が設けられており、合計で8個のバルブが供給チューブに備えられている。
【0063】
すなわち、サブタンク側バルブとして、第一供給チューブ372においては、第四バイパスチューブ388が接続されている第一接続部372aとサブタンク364との間に第一サブタンク側バルブ391が、第二供給チューブ374においては、第二バイパスチューブ384が接続されている第二接続部374aとサブタンク364との間に第二サブタンク側バルブ392が、第三供給チューブ376においては、第二バイパスチューブ384が接続されている第三接続部376aとサブタンク364との間に第三サブタンク側バルブ393が、第四供給チューブ378においては、第四バイパスチューブ388が接続されている第四接続部378aとサブタンク364との間に第四サブタンク側バルブ394が、それぞれ設けられている。
【0064】
また、ヘッドユニット側バルブとして、第一供給チューブ372においては、第一バイパスチューブ382が接続されている第五接続部372bとヘッドユニット30との間に第一ヘッドユニット側バルブ395が、第二供給チューブ374においては、第一バイパスチューブ382が接続されている第六接続部374bとヘッドユニット30との間に第二ヘッドユニット側バルブ396が、第三供給チューブ376においては、第三バイパスチューブ386が接続されている第七接続部376bとヘッドユニット30との間に第三ヘッドユニット側バルブ397が、第四供給チューブ378においては、第三バイパスチューブ386が接続されている第八接続部378bとヘッドユニット30との間に第四ヘッドユニット側バルブ398が、それぞれ設けられている。
【0065】
なお、これらのサブタンク側バルブ及びヘッドユニット側バルブが設けられている理由については、後に明らかにする。
【0066】
<<<インクを循環させるインク循環処理について>>>
次に、循環流路内でインクを循環させる処理(便宜上、インク循環処理と呼ぶ)について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、インク循環処理が実行される前のホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。図6は、インク循環処理が実行されているときのホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。
【0067】
上述したとおり、供給チューブ(すなわち、第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378)内でインクが滞留すると、当該インクの成分が沈降する現象(不都合)が発生し得る。そして、かかる現象が発生すると、当該成分が不足したインクがロール紙2に吐出されるため、画質の劣化という問題を招く。
【0068】
そして、かかる現象は、画像記録装置1が長い時間使用されない場合に、発生し易い。そのため、本実施の形態においては、設定により、電源がONされた際に当該インク循環処理が実行されるようになっている。
【0069】
図5には、インク循環処理が実行される前のホワイトインク補給ユニット36の様子、換言すれば、電源ON直後のホワイトインク補給ユニット36の様子が示されている。このときには、図5に示されているように、サブタンク側バルブ及びヘッドユニット側バルブは開いており(“O”は、「バルブ開」を表す)、ポンプ366は作動していない(点線矢印は、「ポンプ不作動」を表す)。そして、電源がOFFされていたときには画像記録装置1が使用されていなかったため、第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378内でインクが滞留しインクの成分が沈降している。
【0070】
そして、かかる状態で、インク循環処理が、コントローラー60により行われる。すなわち、コントローラー60は、供給チューブ及びバイパスチューブのみで構成される循環流路内で、インクを循環させる。そして、本実施形態において、コントローラー60は、かかる処理を実現するために、以下を実行する。
【0071】
すなわち、コントローラー60は、図6に示すように、ポンプ366を作動させる(実線矢印は、「ポンプ作動」を表す)。そして、このことにより、循環流路内でインクが循環し、インクの成分が沈降する不都合が改善される。そのため、画質の劣化が抑止されることとなる。
【0072】
なお、循環流路内でインクを循環させる際には、当該循環が滞りなく実行されるように、また、当該循環によってインクが動くことによる悪影響がサブタンク364に及ぶ可能性を完全に消し去るために、コントローラー60は、図6に示すように、第一サブタンク側バルブ391乃至第四サブタンク側バルブ394を閉じる(“C”は、「バルブ閉」を表す)。
【0073】
また、同様に、当該循環が滞りなく実行されるように、また、当該循環によってインクが動くことによる悪影響がヘッドユニット30に及ぶ可能性を完全に消し去るために、コントローラー60は、図6に示すように、第一ヘッドユニット側バルブ395乃至第四ヘッドユニット側バルブ398を閉じる。
【0074】
なお、インク循環処理が、インクの成分が沈降する現象(不都合)を改善することを目的としていることについては、既に説明したが、ホワイトインクについては他のインクに比べてかかる現象(不都合)が発生し易くなっている。すなわち、ホワイトインクの顔料成分には酸化チタンなどの重い物質が含まれているため、当該顔料成分が顕著に沈降する傾向にある。
【0075】
そのため、本実施の形態においては、ホワイトインクのみに対して、インク循環処理が行われるようになっている。したがって、バイパスチューブ、ポンプ366、及び、ヘッドユニット側バルブは、ホワイトインク補給ユニット36のみにしか備えられておらず、他の色のインク補給ユニット35には、備えられていない(サブタンク側バルブは、他の用途のために必要なので、他の色のインク補給ユニット35にも備えられている)。
【0076】
しかしながら、上記に限定されるものではなく、他の色のインクに対してインク循環処理を行うべく、他の色のインク補給ユニット35にも、バイパスチューブ、ポンプ366、及び、ヘッドユニット側バルブが備えられていることとしてもよい。
【0077】
<<<インクを充填させるインク充填処理について>>>
前述したとおり、画像記録(印刷)等が行われることによりインクがヘッドユニット30(ヘッド31)から吐出されて、ヘッドユニット30内のインクが消費されると、消費された当該インクを補うように、サブタンク364内のインクが第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378を通ってヘッドユニット30へ流入するが、当該第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378に空気(気泡)が含まれていると、当該空気(気泡)がインクと共にヘッドユニット30へ流入し画像記録(印刷)へ悪影響を及ぼす可能性がある。
【0078】
そこで、かかる不都合の発生を抑えるために、第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378をインクで予め充填して、空気(気泡)が第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378に存在しないようにするインク充填処理が行われる。
【0079】
また、本実施の形態においては、バイパスチューブが設けられていることを考慮して、バイパスチューブに対する充填処理も行われる(当然のことながら、当該充填処理の対象は、ホワイトインク補給ユニット36のみである)。すなわち、第一バイパスチューブ382乃至第四バイパスチューブ388に空気(気泡)が含まれていると、インク循環処理の実行により当該空気(気泡)が第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378に流入する可能性がある。そして、流入した当該空気(気泡)がインクと共にヘッドユニット30へ流入し画像記録(印刷)へ悪影響を及ぼす可能性がある。
【0080】
そこで、かかる不都合の発生を抑えるために、第一バイパスチューブ382乃至第四バイパスチューブ388をインクで予め充填して、空気(気泡)が第一バイパスチューブ382乃至第四バイパスチューブ388に存在しないようにするインク充填処理も行われる。
【0081】
なお、このようなインク充填処理(初期充填処理とも呼ばれる)は、画像記録装置1の出荷の際に製造者によって行われる。また、画像記録装置1のメンテナンスの際にメンテナンス担当者やユーザー等により行われる場合もある。
【0082】
以下では、インク充填処理について、図7乃至図10を用いて説明する。図7は、インク充填処理が実行される前のホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。図8は、供給チューブに対するインク充填処理(便宜上、供給チューブ充填処理と呼ぶ)が実行されているときのホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図である。図9及び図10は、バイパスチューブに対するインク充填処理(便宜上、バイパスチューブ充填処理と呼ぶ)が実行されているときのホワイトインク補給ユニット36の様子を示したブロック図であり、図9は、バイパスチューブ充填処理の第一ステップを、図10は、バイパスチューブ充填処理の第二ステップを、それぞれ表したものである。
【0083】
先ず、図7に着目する。図7には、インク循環処理が実行される前のホワイトインク補給ユニット36の様子が示されている。このときには、図7に示されているように、サブタンク側バルブ及びヘッドユニット側バルブは開いている。また、図には示されていないが、ヘッドユニット30(ヘッド31)はHPに位置しており、ヘッド31の下面(ノズル面)にキャップが密着している。
【0084】
そして、かかる状態で、先ず、供給チューブ充填処理が、コントローラー60により行われる。すなわち、コントローラー60は、供給チューブにインクを流して当該供給チューブにインクを充填させる。より具体的には、サブタンク364から第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378の各々を経由してヘッドユニット30へインクを流すことにより、第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378にインクを充填させる。そして、本実施形態において、コントローラー60は、かかる処理を実現するために、クリーニングユニット43の吸引ポンプ43aを作動させる。このことにより、図8の矢印で示すようにインクが流れて、第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378にインクが充填されることとなる。
【0085】
次に、バイパスチューブ充填処理が、コントローラー60により行われる。すなわち、コントローラー60は、バイパスチューブにインクを流して当該バイパスチューブにインクを充填させる。より具体的には、サブタンク364からバイパスチューブを経由してヘッドユニット30へインクを流すことにより、バイパスチューブにインクを充填させる。
【0086】
なお、本実施の形態においては、当該バイパスチューブ充填処理を二つのステップに分けて行う。
【0087】
第一ステップにおいては、図9に示すように、サブタンク364から、第四供給チューブ378(第一供給流路に相当)、第四バイパスチューブ388(第一バイパス流路に相当)、第一供給チューブ372(第二供給流路に相当)、第一バイパスチューブ382(第二バイパス流路に相当)、及び、第二供給チューブ374(第三供給流路に相当)を経由してヘッドユニット30(より具体的には、第二ヘッド群304)へインクを流すことにより、第四バイパスチューブ388及び第一バイパスチューブ382にインクを充填させる。
【0088】
そして、本実施形態において、コントローラー60は、かかる処理を実現するために、図9に示すように、第四サブタンク側バルブ394及び第二ヘッドユニット側バルブ396以外のバルブ(すなわち、第一サブタンク側バルブ391、第二サブタンク側バルブ392、第三サブタンク側バルブ393、第一ヘッドユニット側バルブ395、第三ヘッドユニット側バルブ397、第四ヘッドユニット側バルブ398)を閉じ、さらに、第二ヘッド群304に対応した吸引ポンプ43aを作動させる。このことにより、図9の矢印で示すようにインクが流れて、第四バイパスチューブ388及び第一バイパスチューブ382にインクが充填されることとなる。
【0089】
第二ステップにおいては、図10に示すように、サブタンク364から、第二供給チューブ374(第三供給流路に相当)、第二バイパスチューブ384(第三バイパス流路に相当)、第三供給チューブ376(第四供給流路に相当)、第三バイパスチューブ386(第四バイパス流路に相当)、及び、第四供給チューブ378(第一供給流路に相当)を経由してヘッドユニット30(より具体的には、第四ヘッド群308)へインクを流すことにより、第二バイパスチューブ384及び第三バイパスチューブ386にインクを充填させる。
【0090】
そして、本実施形態において、コントローラー60は、かかる処理を実現するために、図10に示すように、第二サブタンク側バルブ392及び第四ヘッドユニット側バルブ398以外のバルブ(すなわち、第一サブタンク側バルブ391、第三サブタンク側バルブ393、第四サブタンク側バルブ394、第一ヘッドユニット側バルブ395、第二ヘッドユニット側バルブ396、第三ヘッドユニット側バルブ397)を閉じ、さらに、第四ヘッド群308に対応した吸引ポンプ43aを作動させる。このことにより、図10の矢印で示すようにインクが流れて、第二バイパスチューブ384及び第三バイパスチューブ386にインクが充填されることとなる。
【0091】
このように、第一ステップ及び第二ステップが完了すれば、第一バイパスチューブ382乃至第四バイパスチューブ388にインクが充填される。
【0092】
===本実施の形態に係る画像記録装置1の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係る画像記録装置1は、インクを貯留するサブタンク364と、インクをロール紙2に吐出するヘッドユニット30と、サブタンク364からヘッドユニット30へインクを供給するための複数の供給チューブと、互いに異なる供給チューブ間に掛け渡された複数のバイパスチューブと、サブタンク364、ヘッドユニット30、供給チューブ、バイパスチューブのうちの供給チューブ及びバイパスチューブのみで構成される循環流路内でインクを循環させるコントローラー60と、を備えている。そして、このことにより、供給チューブ内のインクを簡易な構成を用いて流動させることが可能となる。
【0093】
すなわち、前述したとおり、供給チューブ内でインクが滞留し、当該インクの成分が沈降する現象(不都合)が発生していた。そして、かかる現象が発生すると、当該成分が不足したインクがロール紙2に吐出されるため、画質の劣化という問題を招いていた。
【0094】
かかる現象(不都合)を改善するために、比較例に係る画像記録装置1においては、本実施の形態と同様、循環流路内でインクを循環させることにより当該インクを流動させる方策を採っていた。しかしながら、比較例に係る画像記録装置1においては、図11に示すように、循環流路を形成するために、ヘッドユニット30からサブタンク364へインクを戻すためのリターン用チューブ502を設け、サブタンク364、供給チューブ(例えば、第一供給チューブ372)、ヘッドユニット30、リターン用チューブ502により構成される循環流路(図11における矢印を参照)内でインクを循環させていた。
【0095】
そして、かかる場合には、以下の不都合があった。すなわち、リターン用チューブ502はサブタンク364とヘッドユニット30に接続される必要があり、当該接続は簡易な作業とは言えなかった。また、供給チューブが複数(例えば、4つ)ある場合には、各々の供給チューブに対応する(例えば、4つの)リターン用チューブを用意して、一つ一つをサブタンク364とヘッドユニット30に接続させなければならなかった(図11参照)。このように、比較例に係るホワイトインク補給ユニット36は簡易な構成を有しているとは言えなかった。
【0096】
これに対し、本件の発明者等は、構成を簡易なものとすべく鋭意検討を行った結果、供給チューブが複数存在することに着目し、これらをバイパスチューブで繋いで循環流路を形成するという発想に至った。すなわち、本実施の形態においては、サブタンク364、ヘッドユニット30、供給チューブ、バイパスチューブのうちの供給チューブ及びバイパスチューブのみで構成される循環流路内でインクを循環させることとした。このことにより、サブタンク364とヘッドユニット30に接続する必要があるリターン用チューブ502を用いることなく、循環流路を形成することができ、構成が簡易なものとなる。すなわち、本実施の形態によれば、供給チューブ内のインクを簡易な構成を用いて流動させることが可能となる。
【0097】
また、本実施の形態においては、比較例とは異なり、循環流路を構成するバイパスチューブが互いに異なる供給チューブ間に掛け渡されているため、循環流路が複数の供給チューブで構成されている(一方で、比較例においては、循環流路が一つの供給チューブのみ(とリターン用チューブ)で構成されている)。そして、かかる相違点に起因して、本実施の形態は、比較例に存在しない以下の優位性を有している。
【0098】
すなわち、画像記録(印刷)等が行われることによりヘッドユニット30(ヘッド31)内のインクが消費されると、インクを補給するためにインクカートリッジ362を交換するが、この際に、インクのロットが旧ロットから新ロットへ変わることがある。そして、このような場合に、ある供給チューブは新ロットのインクで占められているのに、他の供給チューブは旧ロットのインクで占められたままである状況が発生し得る。
【0099】
かかる状況は、ヘッド31(又は、ヘッド群)によってインクの消費量が異なることに起因して発生する。一例を挙げると、前述したとおり、ヘッド群として第一ヘッド群302乃至第四ヘッド群308が設けられているが、画像記録(印刷)が行われているのに第四ヘッド群308からインクが全く消費されない場合が有り得る。かかる場合の例としては、第四ヘッド群308に対応する画像(第四ヘッド群308からインクを吐出することにより形成されるべき画像)自体が存在していない場合を挙げることができる。また、幅の狭いロール紙2を使っているため、第四ヘッド群308に対応する位置(第四ヘッド群308からインクを吐出することにより画像を形成すべき位置)にロール紙2がない場合もある。そして、このような場合には、第一ヘッド群302乃至第三ヘッド群306からはインクが消費される一方で、第四ヘッド群308からはインクが消費されないこととなり、したがって、第一供給チューブ372乃至第三供給チューブ376には、新ロットのインクが流入するのに、第四供給チューブ378には、旧ロットのインクがいつまでも残っている状況(新ロットのインクがなかなか入っていかない状況)となり得る。
【0100】
そして、かかる状況において、比較例においては、循環流路が一つの供給チューブのみで構成されているので、循環流路内でインクを循環させても、旧ロットのインクと新ロットのインクが適切に混ざり合わないのに対し、本実施の形態においては、循環流路が複数の供給チューブで構成されているので、循環流路内でインクを循環させると、旧ロットのインクと新ロットのインクが適切に混ざり合うこととなる。したがって、色味が互いに若干異なる旧ロットのインクと新ロットのインクの各々で形成された部分(旧ロットインク部分と新ロットインク部分)が画像に存在してしまうことによる画質の劣化を抑えることができる点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
【0101】
また、上記においては、第四バイパスチューブ388(第一バイパス流路に相当)及び第二バイパスチューブ384(第三バイパス流路に相当)は、ケーブルベア400外であって、該ケーブルベア400とサブタンク364との間に設けられており、第一バイパスチューブ382(第二バイパス流路に相当)及び第三バイパスチューブ386(第四バイパス流路に相当)は、ケーブルベア400外であって、該ケーブルベア400とヘッドユニット30との間に設けられていることとした。そのため、第一バイパスチューブ382と第二バイパスチューブ384がケーブルベア400を隔てて反対側に配置されていることとなり、双方の距離が長くなる。また、同様の理由で、第二バイパスチューブ384、第三バイパスチューブ386間の距離、第三バイパスチューブ386、第四バイパスチューブ388間の距離、第四バイパスチューブ388、第一バイパスチューブ382間の距離もそれぞれ長くなる。したがって、循環流路を構成する第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378の長さも長くなるため、供給チューブ内のインクを広い範囲で流動させることが可能となる(換言すれば、供給チューブのうちの循環流路に属さない箇所を顕著に少なくすることができる)。
【0102】
===画像記録装置1のバリエーションについて===
上記において、インクを貯留するサブタンク364と、インクをロール紙2に吐出するヘッドユニット30と、サブタンク364からヘッドユニット30へインクを供給するための複数の供給チューブと、互いに異なる供給チューブ間に掛け渡された複数のバイパスチューブと、サブタンク364、ヘッドユニット30、供給チューブ、バイパスチューブのうちの供給チューブ及びバイパスチューブのみで構成される循環流路内でインクを循環させるコントローラー60と、を備えている画像記録装置1として、図4等に一例(第一実施形態とする)を示したが、これに限定されるものではない。
【0103】
以下において、かかる画像記録装置1の他の実施形態(第二乃至第四実施形態)について説明する。
【0104】
上記においては、4つの供給チューブが設けられている画像記録装置1を挙げたが、これに限定されるものではない。図12に示すように、2つの供給チューブのみが設けられている画像記録装置1であってもよい。図12は、図4に対応した図であり、第二実施形態に係るホワイトインク補給ユニット36のブロック図である。
【0105】
すなわち、第二実施形態においては、図12に示すように、サブタンク364が、第一供給チューブ372及び第二供給チューブ374を介して15個のヘッド31を備えるヘッドユニット30に接続されている。そして、15個のヘッド31は、2つのヘッド群、すなわち、8個のヘッド31が属する第一ヘッド群302及び7個のヘッド31が属する第二ヘッド群304を備えており、2つの供給チューブの各々は、それぞれ2つのヘッド群の各々に接続されている。
【0106】
そして、互いに異なる供給チューブ間には、バイパスチューブが掛け渡されている。すなわち、第二実施形態においては、図12に示すように、2つのバイパスチューブ(第一バイパスチューブ382及び第二バイパスチューブ384)が備えられており、第一供給チューブ372と第二供給チューブ374に、第一バイパスチューブ382と第二バイパスチューブ384の双方が掛け渡されている。そして、第一供給チューブ372、第一バイパスチューブ382、第二供給チューブ374、第二バイパスチューブ384により構成される循環流路内でインクが循環するようになっている。
【0107】
そして、このような第二実施形態においても、第一実施形態と同様、供給チューブ内のインクを簡易な構成を用いて流動させることが可能となる。また、旧ロットのインクと新ロットのインクの各々で形成された部分が画像に存在してしまうことによる画質の劣化を抑えることができる。
【0108】
ただし、第一実施形態と第二実施形態とを比較すると、以下の点で、第一実施形態は優位性を有している。
【0109】
すなわち、第二実施形態においては、供給チューブが2つしかないため、循環流路を構成するためには、2つの供給チューブ(の組)に対して複数のバイパスチューブを掛け渡す必要がある。そして、かかる構成を有する循環経路においては、前述したインク充填処理(より具体的には、バイパスチューブ充填処理)において、以下の不都合が発生し得る。
【0110】
図13を用いて説明する。図13は、第二実施形態においてバイパスチューブ充填処理が行われるときの不都合を説明するための説明ブロック図である。
【0111】
図13には、バイパスチューブにインクを充填させるべく、第二サブタンク側バルブ392及び第一ヘッドユニット側バルブ395を閉じて第二ヘッド群304に対応した吸引ポンプ43aを作動させたときの様子が表されている。
【0112】
しかしながら、かかる場合には、2つの供給チューブ(の組)に対して複数のバイパスチューブ(つまり、第一バイパスチューブ382及び第二バイパスチューブ384)が掛け渡されていることに起因して、サブタンク364から第二ヘッド群304までのインクが流れるルートとして2つの同等なルート(図13の矢印参照)ができてしまう。そのため、どちらかのルートに安定してインクを流すことが困難な状況が生じ得る(つまり、あるときにはインクが第一ルートを流れるが、別のときにはインクが第二ルートを流れるなど、一定してどちらかのルートにインクが流れることがない)。したがって、第一バイパスチューブ382や第二バイパスチューブ384に安定してインクを流すことが困難となり、第一バイパスチューブ382や第二バイパスチューブ384を適切に充填させることが難しくなる。
【0113】
そして、このことを解決するためには、追加のバルブを導入する必要が生じ、コストアップ等の問題が生じ得る(例えば、第一バイパスチューブ382及び第二バイパスチューブの各々(図12の記号X、Yで示す位置)にバルブを設けて、第一バイパスチューブ382の方にインクを流したい場合には、位置Xのバルブを閉じ、第二バイパスチューブ384の方にインクを流したい場合には、位置Yのバルブを閉じる)。
【0114】
これに対し、第一実施形態においては、供給チューブが3つ以上あるため、循環流路を構成するために、2つの供給チューブ(の組)に対して複数のバイパスチューブを掛け渡す必要がない。すなわち、第一実施形態に係る循環流路は、三つ以上の供給チューブのうちのどの二つの供給チューブの組にたいしても複数のバイパスチューブが当該二つの供給チューブ間に掛け渡されないように構成されている。
【0115】
そのため、前述したバイパスチューブ充填処理が行われるときの不都合が生じず、この点で第二実施形態に比べて優位性を有する。
【0116】
なお、循環流路を構成するために、2つの供給チューブ(の組)に対して複数のバイパスチューブを掛け渡している実施形態は、図12に示した2つの供給チューブのみが設けられている例に限定されるものではない。例えば、図14に示すように、4つの供給チューブが設けられている画像記録装置1であっても、2つの供給チューブ(の組)に対して複数のバイパスチューブを掛け渡している例は存在する(図14は、図4に対応した図であり、第三実施形態に係るホワイトインク補給ユニット36のブロック図である)。そして、このような第三実施形態においても、第一実施形態と同様、供給チューブ内のインクを簡易な構成を用いて流動させることが可能となる。また、旧ロットのインクと新ロットのインクの各々で形成された部分が画像に存在してしまうことによる画質の劣化を抑えることができる。
【0117】
また、第一及び第二実施形態とは異なり、図15に示すように、3つの供給チューブのみが設けられている画像記録装置1であってもよい。図15は、図4に対応した図であり、第四実施形態に係るホワイトインク補給ユニット36のブロック図である。
【0118】
すなわち、第四実施形態においては、図15に示すように、サブタンク364が、第一供給チューブ372、第二供給チューブ374、及び、第三供給チューブ376を介して、15個のヘッド31を備えるヘッドユニット30に接続されている。そして、15個のヘッド31は、3つのヘッド群、すなわち、それぞれ5個のヘッド31が属する第一ヘッド群302乃至第三ヘッド群306を備えており、3つの供給チューブの各々は、それぞれ3つのヘッド群の各々に接続されている。
【0119】
そして、互いに異なる供給チューブ間には、バイパスチューブが掛け渡されている。すなわち、第四実施形態においては、図15に示すように、3つのバイパスチューブ(第一バイパスチューブ382乃至第三バイパスチューブ386)が備えられており、第一供給チューブ372と第二供給チューブ374に、第一バイパスチューブ382が掛け渡され、第二供給チューブ374と第三供給チューブ376に、第二バイパスチューブ384が掛け渡され、第三供給チューブ376と第一供給チューブ372に、第三バイパスチューブ386が掛け渡されている。そして、第一供給チューブ372、第一バイパスチューブ382、第二供給チューブ374、第二バイパスチューブ384、第三供給チューブ376、第三バイパスチューブ386により構成される循環流路内でインクが循環するようになっている。
【0120】
そして、このような第四実施形態においても、第一実施形態と同様、供給チューブ内のインクを簡易な構成を用いて流動させることが可能となる。また、旧ロットのインクと新ロットのインクの各々で形成された部分が画像に存在してしまうことによる画質の劣化を抑えることができる。
【0121】
ただし、第一実施形態と第四実施形態とを比較すると、以下の点で、第一実施形態は優位性を有している。
【0122】
すなわち、第四実施形態においては、供給チューブが3つしかないため、循環経路を構成する第一供給チューブ372乃至第三供給チューブ376の長さを長くしようとすると(換言すれば、供給チューブのうちの循環流路に属さない箇所を少なくしようとすると)、図15に示すように、3つのバイパスチューブのうちの一つ(第四実施形態においては、第三バイパスチューブ386)の長さが、(供給チューブ並みに)長くなってしまう。
【0123】
これに対し、第一実施形態においては、第四実施形態とは異なり、三つ以上の供給チューブとして、4つの供給チューブ、すなわち、第一供給チューブ372(第二供給流路に相当)、第二供給チューブ374(第三供給流路に相当)、第三供給チューブ376(第四供給流路に相当)、第四供給チューブ378(第一供給流路に相当)を有し、第一供給チューブ372と第二供給チューブ374に掛け渡された第一バイパスチューブ382(第二バイパス流路に相当)と、第二供給チューブ374と第三供給チューブ376に掛け渡された第二バイパスチューブ384(第三バイパス流路に相当)と、第三供給チューブ376と第四供給チューブ378に掛け渡された第三バイパスチューブ386(第四バイパス流路に相当)と、第四供給チューブ378と第一供給チューブ372に掛け渡された第四バイパスチューブ388(第一バイパス流路に相当)と、を有し、循環流路は、第一供給チューブ372、第一バイパスチューブ382、第二供給チューブ374、第二バイパスチューブ384、第三供給チューブ376、第三バイパスチューブ386、第四供給チューブ378、第四バイパスチューブ388により構成される。
【0124】
そのため、図4に示したとおり、バイパスチューブの長さを短くすることが可能となり、この点で第四実施形態に比べて優位性を有する。
【0125】
また、第一実施形態においては、かかる循環流路の構成により、循環流路内でインクを循環させると、前記旧ロットのインクと前記新ロットのインクが全ての(4つの)供給チューブで適切に混ざり合うこととなる(一方で、例えば、第三実施形態においては、第一供給チューブと第二供給チューブで(又は、第三供給チューブと第四供給チューブで)混ざり合うとしても、全ての供給チューブで混ざり合うことはない)。このため、画質の劣化をより一層抑えることが可能となる。
【0126】
なお、上記においては、供給チューブが4つ以下のケースを示したが、当然のことながら、供給チューブが5つ以上のケースにも本発明を適用することが可能である。
【0127】
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、液体循環方法等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0128】
上記実施の形態においては、液体吐出装置(液体噴射装置)をインクジェット式プリンターに具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【0129】
また、上記実施の形態においては、媒体としてロール紙2を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、カット紙、フィルム、布であってもよい。
【0130】
また、上記実施の形態においては、貯留部としてサブタンク364を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、サブタンク364が存在せず、インクカートリッジ362が供給チューブを介してヘッドユニット30に接続されている場合であってもよい(この場合には、インクカートリッジ362が貯留部に相当する)。
【0131】
また、上記実施の形態においては、ヘッドユニット30が複数(15個)のヘッド31を有していることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ヘッドユニット30が、一つのヘッド31からなることとしてもよい。
【0132】
また、上記実施の形態においては、電源がONされた際に自動的にインク循環処理が実行されることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、手動で(ユーザーのリクエストにより)、インク循環処理が実行されることとしてもよい。
【0133】
また、上記実施の形態においては、三つ以上の供給流路として、第一供給流路、第二供給流路、第三供給流路、第四供給流路を有し、第一供給流路と第二供給流路に掛け渡された第一バイパス流路と、第二供給流路と第三供給流路に掛け渡された第二バイパス流路と、第三供給流路と第四供給流路に掛け渡された第三バイパス流路と、第四供給流路と第一供給流路に掛け渡された第四バイパス流路と、を有し、循環流路は、第一供給流路、第一バイパス流路、第二供給流路、第二バイパス流路、第三供給流路、第三バイパス流路、第四供給流路、第四バイパス流路により構成されることとした。また、第一バイパス流路及び第三バイパス流路は、ケーブルベア400外であって、該ケーブルベア400とサブタンク364との間に設けられており、第二バイパス流路及び第四バイパス流路は、ケーブルベア400外であって、該ケーブルベア400とヘッドユニット30との間に設けられていることとした。また、バイパス流路にインクを充填させる際には、サブタンク364から、第一供給流路、第一バイパス流路、第二供給流路、第二バイパス流路、及び、第三供給流路を経由して、ヘッドユニット30へインクを流すことにより、第一バイパス流路及び第二バイパス流路にインクを充填させ、その後、サブタンク364から、第三供給流路、第三バイパス流路、第四供給流路、第四バイパス流路、及び、第一供給流路を経由して、ヘッドユニット30へインクを流すことにより、第三バイパス及び第四バイパス流路にインクを充填させることとした。
【0134】
そして、前記第一供給流路が、第四ヘッド群308(第十三ヘッド乃至第十五ヘッド)に接続されている第四供給チューブ378に、前記第二供給流路が、第一ヘッド群302(第一ヘッド乃至第四ヘッド)に接続されている第一供給チューブ372に、前記第三供給流路が、第二ヘッド群304(第五ヘッド乃至第八ヘッド)に接続されている第二供給チューブ374に、前記第四供給流路が、第三ヘッド群306(第九ヘッド乃至第十二ヘッド)に接続されている第三供給チューブ376に、それぞれ対応することとした(そして、かかる対応関係により、前記第一バイパス流路が第四バイパスチューブ388に、前記第二バイパス流路が第一バイパスチューブ382に、前記第三バイパス流路が第二バイパスチューブ384に、前記第四バイパス流路が第三バイパスチューブ386に、それぞれ対応することとなっていた)。しかしながら、このような対応関係に限定されるものではなく、第一供給流路乃至第四供給流路に対する第一供給チューブ372乃至第四供給チューブ378の対応のさせ方は任意でよい。
【0135】
一例(便宜上、変形例と呼ぶ)として、前記第一供給流路が第一供給チューブ372に、前記第二供給流路が第二供給チューブ374に、前記第三供給流路が第四供給チューブ378に、前記第四供給流路が第三供給チューブ376に、それぞれ対応するケース(かかる際に、第一バイパス流路、第二バイパス流路、第三バイパス流路、第四バイパス流路の各々に対応するバイパスチューブを、第一バイパスチューブ382、第二バイパスチューブ384、第三バイパスチューブ386、第四バイパスチューブ388とする)について、図4、図9、図10に対応する図(図16、図17、図18)を示す。
【符号の説明】
【0136】
1 画像記録装置、2 ロール紙、
10 給送ユニット、18 巻軸、19 中継ローラー、
20 搬送ユニット、20a ステアリングユニット、
21 中継ローラー、22 中継ローラー、
23 第一搬送ローラー、23a 第一駆動ローラー、23b 第一従動ローラー、
24 第二搬送ローラー、24a 第二駆動ローラー、24b 第二従動ローラー、
25 反転ローラー、26 中継ローラー、27 送り出しローラー、
29 プラテン、30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
35 インク補給ユニット、36 ホワイトインク補給ユニット、
40 キャリッジユニット、41 ガイドレール、42 キャリッジ、
43 クリーニングユニット、43a 吸引ポンプ、44 フラッシングユニット、
50 検出器群、60 コントローラー、61 インターフェース部、
62 CPU、63 メモリー、64 ユニット制御回路、
70 ヒーターユニット、80 送風ユニット、81 ファン、
90 巻き取りユニット、91 中継ローラー、92 巻き取り駆動軸、
110 ホストコンピューター、
302 第一ヘッド群、304 第二ヘッド群、
306 第三ヘッド群、308 第四ヘッド群、
362 インクカートリッジ、364 サブタンク、
366 ポンプ、370 IC−ST間チューブ、
372 第一供給チューブ、372a 第一接続部、372b 第五接続部、
374 第二供給チューブ、374a 第二接続部、374b 第六接続部、
376 第三供給チューブ、376a 第三接続部、376b 第七接続部、
378 第四供給チューブ、378a 第四接続部、378b 第八接続部、
382 第一バイパスチューブ、384 第二バイパスチューブ、
386 第三バイパスチューブ、388 第四バイパスチューブ、
390 IC−ST間バルブ、
391 第一サブタンク側バルブ、392 第二サブタンク側バルブ、
393 第三サブタンク側バルブ、394 第四サブタンク側バルブ、
395 第一ヘッドユニット側バルブ、396 第二ヘッドユニット側バルブ、
397 第三ヘッドユニット側バルブ、398 第四ヘッドユニット側バルブ、
400 ケーブルベア、502 リターン用チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する貯留部と、
液体を媒体に吐出するヘッドユニットと、
前記貯留部から前記ヘッドユニットへ液体を供給するための複数の供給流路と、
互いに異なる前記供給流路間に掛け渡された複数のバイパス流路と、
前記貯留部、前記ヘッドユニット、前記供給流路、前記バイパス流路のうちの該供給流路及び該バイパス流路のみで構成される循環流路内で液体を循環させるコントローラーと、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記供給流路を三つ以上有し、
前記循環流路は、三つ以上の前記供給流路のうちのどの二つの前記供給流路の組に対しても複数のバイパス流路が二つの前記供給流路間に掛け渡されないように構成されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置において、
三つ以上の前記供給流路として、第一供給流路、第二供給流路、第三供給流路、第四供給流路を有し、
前記第一供給流路と前記第二供給流路に掛け渡された第一バイバス流路と、
前記第二供給流路と前記第三供給流路に掛け渡された第二バイバス流路と、
前記第三供給流路と前記第四供給流路に掛け渡された第三バイバス流路と、
前記第四供給流路と前記第一供給流路に掛け渡された第四バイバス流路と、
を有し、
前記循環流路は、前記第一供給流路、前記第一バイバス流路、前記第二供給流路、前記第二バイバス流路、前記第三供給流路、前記第三バイバス流路、前記第四供給流路、前記第四バイパス流路により構成されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置において、
前記第一供給流路乃至前記第四供給流路を這わせるためのケーブルベアを備え、
前記第一バイパス流路及び前記第三バイパス流路は、前記ケーブルベア外であって、該ケーブルベアと前記貯留部との間に設けられており、
前記第二バイパス流路及び前記第四バイパス流路は、前記ケーブルベア外であって、該ケーブルベアと前記ヘッドユニットとの間に設けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
液体を貯留する貯留部と、液体を媒体に吐出するヘッドユニットと、前記貯留部から前記ヘッドユニットへ液体を供給するための複数の供給流路と、互いに異なる前記供給流路間に掛け渡された複数のバイパス流路と、を備える液体吐出装置を準備することと、
前記貯留部、前記ヘッドユニット、前記供給流路、前記バイパス流路のうちの該供給流路及び該バイパス流路のみで構成される循環流路内で液体を循環させることと、
を備えることを特徴とする液体循環方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−63626(P2013−63626A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204918(P2011−204918)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】