説明

液体吐出装置およびそのプログラム

【課題】サブタンクに貯留された液体の粘度が増大することに起因する画像品質の低下を抑制することができる、液体吐出装置を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ10は、インク吐出ヘッド12と、メインタンク60と、サブタンク62と、メインタンク60からサブタンク62にインクRを供給する第2ポンプ72と、大気連通路78と、サブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηTを算出する第1粘度算出部98と、インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHを算出する第2粘度算出部100と、メンテナンス制御部102とを備える。メンテナンス制御部102は、粘度差(ηT−ηH)に基づいて、粘度差(ηT−ηH)を小さくするように、少なくともサブタンク62内のインクRに関するメンテナンス処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインタンクから流入した液体を一時的に貯留するとともに、貯留した液体を液体吐出ヘッドに供給するサブタンクを備え、サブタンクの内部と大気とが大気連通手段を介して連通されている、液体吐出装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、メインタンクとサブタンクとインクジェットヘッドとを備える記録装置の一例が記載されている。この記録装置では、サブタンクの内部と外部とが大気開放孔を介して連通されており、これによりサブタンクに貯留されたインクから気体を分離できるようになっている。しかし、この記録装置では、サブタンク内で蒸発したインクの一部(揮発性成分)が大気開放孔から大気中に放散されるため、印字頻度が低い場合のように、サブタンクにおけるインクの貯留時間が長くなる場合には、サブタンク内のインクの粘度がインクジェットヘッド内のインクの粘度より著しく大きくなることがあった。このような粘度差が生じた状態で大量の印字が行われると、インクジェットヘッド内のインクが使用される印字部分とサブタンク内のインクが使用される印字部分との間でインクの粘度が大きく異なるため、印字の途中で画像の濃度が変わったり、印字の途中でインクの粘度が高過ぎることにより印字ができなくなるおそれがあった。
【0003】
一方、特許文献2には、インクの粘度の増加に対応して記録ヘッドの作動電圧を上昇させることによって、記録ヘッドから吐出されるインク滴のインク量を一定に保持するようにしたインクジェット式記録装置が記載されている。しかし、この記録装置では、インク容器の装着時間に基づいて記録ヘッドのインク吐出能力を調整していたので、インク容器と記録ヘッドとの間にサブタンクを設けた場合には、サブタンクにおけるインクの粘度の増大分をインク吐出能力の調整に反映させることができなかった。そのため、インク吐出能力を適正に調整することができず、画像品質の低下を抑制することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−173417号公報
【特許文献2】特開平9−141869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、サブタンクに貯留された液体の粘度が増大することに起因する画像品質の低下を抑制することができる、液体吐出装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出するためのノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するメインタンクと、前記メインタンクから流入した液体を一時的に貯留するとともに、貯留される液体を前記液体吐出ヘッドに供給するサブタンクと、前記メインタンクから前記サブタンクに液体を供給する液体供給手段と、前記サブタンクの内部と大気とを連通させる大気連通手段と、前記サブタンクに貯留された液体の粘度を算出する第1粘度算出手段と、前記液体吐出ヘッドに存在する液体の粘度を算出する第2粘度算出手段と、前記第1粘度算出手段で算出した粘度と前記第2粘度算出手段で算出した粘度との粘度差に基づいて、前記粘度差を小さくするように、少なくとも前記サブタンクに貯留された液体に関するメンテナンス処理を実行するメンテナンス制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
この構成では、第1粘度算出手段および第2粘度算出手段によって、サブタンクに貯留された液体の粘度および液体吐出ヘッドに存在する液体の粘度が算出される。そして、これらの液体の粘度の粘度差に基づいて、当該粘度差を小さくするように、少なくともサブタンクに貯留された液体に関するメンテナンス処理がメンテナンス制御手段によって実行される。したがって、印字中にサブタンクから液体吐出ヘッドに供給されるインクの粘度が急激に変化することはなく、画像の濃度が変わったり、印字ができなくなったりすることを防止できる。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置のプログラムは、上記の液体吐出装置におけるメンテナンス制御手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記の構成によって、サブタンクに貯留された液体の粘度が増大することに起因する画像品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係るインクジェットプリンタの全体構成を示す概念図である。
【図2】インク吐出ヘッドのヘッド部の構成を示す平面図である。
【図3】インク吐出ヘッドのヘッド部の構成を示す部分拡大断面図である。
【図4】インクジェットプリンタに用いられる制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】制御部により制御される第1制御動作を示すフロー図である。
【図6】制御部により制御される第2制御動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る液体吐出装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、本発明に係る「液体吐出装置」がインクジェットプリンタに適用されており、「液体」としてインクが用いられており、「液体吐出ヘッド」としてインク吐出ヘッドが用いられている。
【0012】
[インクジェットプリンタの全体構成]
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタ10の全体構成を示す概念図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、用紙Pの表面の印刷領域にインクRを用いて画像を形成するものであり、所定の画像形成領域QにおいてインクRを吐出するインク吐出ヘッド12と、用紙Pを水平方向に搬送して画像形成領域Qに通過させる用紙搬送機構14と、インク吐出ヘッド12にインクRを供給するインク供給機構16と、各種の演算処理や制御動作を実行する制御部18とを備えている。本実施形態のインクジェットプリンタ10は、ライン式のプリンタであり、インク吐出ヘッド12は、用紙Pの搬送方向に対して直交する方向に延びて設けられている。インク吐出ヘッド12の延びる方向が「主走査方向」であり、画像形成領域Qにおける用紙Pの搬送方向が「副走査方向」である。
【0013】
[インク吐出ヘッドの構成]
図2は、インクジェットプリンタ10に用いられるインク吐出ヘッド12のヘッド部22の構成を示す平面図であり、図3は、ヘッド部22の構成を示す部分拡大断面図である。図4は、インクジェットプリンタ10に用いられる制御部18の構成を示すブロック図である。図1に示すように、インク吐出ヘッド12は、主走査方向に延びて設けられた略直方体状のヘッドホルダ20と、ヘッドホルダ20の下面に主走査方向に延びて設けられたヘッド部22と、ヘッドホルダ20の内部におけるヘッド部22の上方に設けられたリザーバー24とを有している。
【0014】
図2および図3に示すように、ヘッド部22は、1つの流路ユニット26と、その上面に接合された複数(本実施形態では8つ)の駆動部28とを有している。図3に示すように、流路ユニット26は、複数の金属製プレートからなる積層体であり、最下層を構成するノズルプレート26aの下面が、複数のノズル30が形成されたノズル面30aとなっている。また、図3に示すように、流路ユニット26の内部には、マニホールド32(図2)と、マニホールド32(図2)に連通する副マニホールド34と、副マニホールド34からアパーチャ36および圧力室38を経てノズル30に至る複数の個別インク流路40とが形成されている。そして、図2に示すように、流路ユニット26の上面26bには、マニホールド32に連通する複数のインク供給口32aが形成されており、当該インク供給口32aに対してリザーバー24(図1)に接続された流路が接続されている。図1に示すように、リザーバー24は、インク供給機構16から供給されたインクRを一時的に貯留する容器であり、後述する第1流路64および第2流路66はリザーバー24に接続されている。なお、リザーバー24については、インクRを一時的に貯留できればよいので、容器ではなく流路を拡大してインクRを一時的に貯留できるように構成してもよい。
【0015】
図2に示すように、複数の駆動部28のそれぞれは、平面視形状が略台形となるように形成されており、隣接する駆動部28どうしは、上底および下底が互いに逆方向に位置するように、主走査方向に並べて配置されている。図3に示すように、複数の駆動部28のそれぞれは、圧力室38に対応する複数の駆動部42(図3中に格子線で示す。)を有しており、複数の駆動部42のそれぞれは、圧電層42aと、これを挟むように配置された一対の電極42b,42cとを有している。そして、図1に示すように、駆動部42(図3)には、ドライバIC44を搭載したフレキシブル配線基板46を介して制御部18および電源部90が電気的に接続されている。この構成は、公知のピエゾ式アクチュエータと同様である。
【0016】
図4に示すように、ドライバIC44は、電源部90から供給された駆動電圧と、第1ヘッド制御部94から供給された印刷データとに基づいてパルス電圧を生成するとともに、このパルス電圧を駆動部28に供給するものである。電源部90から出力される駆動電圧の大きさは、第2ヘッド制御部106によって制御可能であり、駆動電圧が大きくなるほど駆動部28に供給される電気的なエネルギが大きくなり、圧力室38に貯留されたインクRに加えられる吐出エネルギが大きくなる。
【0017】
図3に示すように、駆動部42の電極42b,42c間に駆動電圧(例えば28Vの電位差)が供給されると、圧電層42aが厚み方向に対して直交する方向に収縮される。これにより、圧電層42aの下方に位置する部分が圧力室38の内側に凸となるように変形され、圧力室38の容積が小さくなる。この状態が基本状態である。基本状態において、電極42b,42c間にグランド電圧(例えば0Vの電位差)が供給されると、圧電層42aの収縮状態が解除される。すると、圧力室38の容積がもとの大きさに戻され、圧力室38の容積が大きくなる。基本状態が保持された状態で、電極42b,42c間にグランド電圧が瞬間的に供給されると、グランド電圧が供給されるタイミングで圧力室38の容積が駆動電圧の大きさに応じて瞬間的に変動され、圧力室38に存在するインクRに吐出エネルギが付与される。この吐出エネルギによってノズル30からインクRが吐出される。この駆動方法は、いわゆる引き打ち方法と言われており、駆動部42の電極42b,42c間の電圧を駆動電圧からグランド電圧とすることで圧力室38内に負圧の圧力波が発生する。この圧力波が個別インク流路40を伝播して正圧の圧力波として圧力室38の位置に戻ってくるタイミングで、再び圧力室38の容積を小さくするように駆動部42の電極42b,42c間の電圧をグランド電圧から駆動電圧に戻すことにより、圧力室38の容積変化が小さい場合でもインクに加えられる吐出エネルギーを大きくすることができる。
【0018】
[用紙搬送機構の構成]
図1に示すように、用紙搬送機構14は、一対のプーリー50a,50bと、プーリー50a,50b間に掛け渡された環状の無端ベルト52と、一方のプーリー50aを回転させるモータ54とを備えている。モータ54は、その回転数を制御可能なサーボモータまたはステッピングモータ等であり、モータ54には、導電線56を介して制御部18が電気的に接続されている。したがって、用紙搬送機構14で用紙Pを所定の搬送速度で搬送しながら、インク吐出ヘッド12のノズル30(図3)からインクRを所定のタイミングで吐出させることによって、用紙Pの印刷領域に所定の画像を形成することができる。
【0019】
[インク供給機構の構成]
図1に示すように、インク供給機構16は、インク吐出ヘッド12に供給するインクRを貯留するメインタンク60と、メインタンク60から流入したインクRを一時的に貯留するとともに、貯留したインクRをインク吐出ヘッド12に供給するサブタンク62と、メインタンク60からサブタンク62へインクRを送るための第3流路68と、サブタンク62からインク吐出ヘッド12へインクRを送るための第1流路64と、インク吐出ヘッド12からサブタンク62へインクRを送るための第2流路66とを有している。つまり、インク供給機構16は、メインタンク60から第3流路68、サブタンク62および第1流路64を経てインク吐出ヘッド12に至るメイン流路F1と、サブタンク62から第1流路64、インク吐出ヘッド12および第2流路66を経てサブタンク62に戻る循環流路F2とを有している。換言すると、循環流路F2は、サブタンク62からインク吐出ヘッド12へインクRを送るための第1流路64と、インク吐出ヘッド12からサブタンク62へインクRを送るための第2流路66とを含み、サブタンク62とインク吐出ヘッド12との間でインクRを循環移送できるように構成されている。
【0020】
そして、図1に示すように、第1流路64には、循環流路F2中のインクRを循環させる「液体循環手段」としての第1ポンプ70が設けられており、第3流路68には、メインタンク60からサブタンク62にインクRを供給する「液体供給手段」としての第2ポンプ72が設けられており、第2流路66には、第2流路66を開閉する第1弁74が設けられている。第1ポンプ70、第2ポンプ72および第1弁74のそれぞれには、導電線88を介して制御部18が電気的に接続されており、制御部18によってこれらの動作を制御することができる。
【0021】
また、図1に示すように、インク供給機構16は、サブタンク62に貯留されたインクRを排出するインク排出路76と、サブタンク62の内部と大気とを連通させる「大気連通手段」としての大気連通路78と、サブタンク62に貯留されたインクRの液面の上限位置を検知する上限センサ80と、サブタンク62に貯留されたインクRの液面の下限位置を検知する下限センサ82とを有している。そして、インク排出路76には、インク排出路76を開閉する第2弁84が設けられており、大気連通路78には、大気連通路78を開閉する第3弁86が設けられている。上限センサ80、下限センサ82、第2弁84および第3弁86のそれぞれには、導電線88を介して制御部18が電気的に接続されており、制御部18によってこれらの動作を制御することができる。
【0022】
図1に示すように、サブタンク62は、インクRに混入した気泡を除去するための容器であり、メイン流路F1および循環流路F2の両方に用いられている。大気連通路78の一方端部は、サブタンク62の内部におけるインクRの液面よりも上方に配置されており、大気連通路78の他方端部は、サブタンク62の外部(大気空間)に配置されている。第3弁86が開かれると大気連通路78が開放され、サブタンク62の内部と大気とが連通される。サブタンク62においては、蒸発したインクRの一部(揮発性成分)が大気連通路78から大気中に放散され易く、サブタンク62におけるインクRの貯留時間が長くなる場合には、サブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηTが大きくなり易い。
【0023】
[制御部の構成]
図4は、インクジェットプリンタ10に用いられる制御部18の構成を示すブロック図である。図示していないが、制御部18は、CPUと、CPUが実行するプログラムや各種のデータを書き替え可能に記憶する不揮発メモリと、プログラムの実行時にデータを一時的に記憶するRAMとを有するコンピュータである。図4に示すように、制御部18においては、CPUでプログラムが実行されることによって、画像データ記憶部92、第1ヘッド制御部94、吐出情報記憶部96、第1粘度算出部98、第2粘度算出部100、メンテナンス制御部102、第2ヘッド制御部106および搬送制御部108等の機能が実現される。
【0024】
画像データ記憶部92は、パーソナルコンピュータ等(図示省略)から送信されてきた画像データを記憶するものであり、主に不揮発メモリまたはRAMにより構成される。用紙P(図1)の表面の印刷領域は、複数の単位領域の集合であり、画像データは、複数の単位領域のそれぞれに対応する画素について色の濃度値を有している。第1ヘッド制御部94は、画像データ記憶部92に画像データが記憶されたときに、印刷ジョブの登録があったことを認定する。
【0025】
第1ヘッド制御部94は、画像データ記憶部92に記憶された画像データに基づいて印刷データを生成するとともに、当該印刷データをドライバIC44および吐出情報記憶部96に供給するものである。印刷データは、各画素に対応するインクRの量を、ゼロ、小滴、中滴、大滴の4段階のドットサイズで示すものである。したがって、第1ヘッド制御部94は、印刷データに含まれる液滴のドット数やドットサイズに基づいて、或る時間内に吐出されるインクRの吐出量を求めることができる。
【0026】
吐出情報記憶部96は、第1ヘッド制御部94から供給された印刷データを記憶するとともに、当該印刷データを第2粘度算出部100に供給するものである。吐出情報記憶部96には、現在印刷が行われている用紙Pに関する印刷データだけでなく、過去に行われた用紙Pに関する印刷データ(履歴)も記録される。
【0027】
第1粘度算出部98は、サブタンク62(図1)に貯留されたインクRの粘度ηTを算出する「第1粘度算出手段」としての機能を有している。図1に示すように、本実施形態における第1粘度算出部98(図4)では、メインタンク60からサブタンク62にインクRが供給された時点からの経過時間に基づいてサブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηTが算出される。つまり、サブタンク62に設けられた下限センサ82がインクRの液面を検知したとき、メインタンク60からサブタンク62にインクRが上限まで供給され、且つ、第1粘度算出部98が有するタイマ(図示省略)による時間カウントが開始される。そして、予め準備された「インクRの貯留時間と粘度ηTとの関係式」に基づいて、所定の経過時間におけるインクRの粘度ηTが算出される。なお、他の実施形態では、サブタンク62に貯留されたインクRの光の透過度等から粘度ηTを算出する粘度センサが用いられてもよい。
【0028】
第2粘度算出部100は、インク吐出ヘッド12(図1)に存在するインクRの粘度ηHを算出する「第2粘度算出手段」としての機能を有している。図1に示すように、本実施形態における第2粘度算出部100(図4)では、第1粘度算出部98(図4)により算出されるサブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηT、サブタンク62からインク吐出ヘッド12の内部にインクRが供給された時点からの経過時間およびインク吐出ヘッド12から吐出されるインクRの吐出情報に基づいてインク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHが算出される。つまり、(a)インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHは、サブタンク62からインク吐出ヘッド12の内部にインクRが供給された時点で最も小さい値(この時点の粘度ηTと同じ値)になっている。(b)インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHは、時間の経過に伴って徐々に大きくなっていく。ただし、インク吐出ヘッド12のリザーバー24および流路の内部は、サブタンク62の内部とは異なり空気に接していないので、インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHの増加度合は、サブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηTの増加度合よりも小さい。(c)インク吐出ヘッド12から吐出されるインクRの吐出量が小さい場合は、サブタンク62からインク吐出ヘッド12にインクRが供給されてから、当該インクRがノズル30から吐出されるまでの時間が長くなるので、インクRの吐出量が大きい場合よりもインクRの粘度ηHは大きくなり易い。そこで、本実施形態では、これらの事項(a)〜(c)の全てを考慮して、インクRの粘度ηHが算出される。なお、他の実施形態では、リザーバー24に貯留されたインクRの光の透過度等から粘度ηHを算出する粘度センサが用いられてもよい。
【0029】
メンテナンス制御部102は、メンテナンス処理を実行する「メンテナンス制御手段」としての機能を有している。つまり、メンテナンス制御部102は、第1粘度算出部98で算出したインクRの粘度ηTと第2粘度算出部100で算出したインクRの粘度ηHとの粘度差(ηT−ηH)に基づいて、当該粘度差(ηT−ηH)を小さくするように、少なくともサブタンク62(図1)に貯留されたインクRに関するメンテナンス処理を実行する。本実施形態では、メンテナンス処理を含む制御動作として、第1制御動作(図5)および第2制御動作(図6)が準備されており、メンテナンス制御部102には、操作部104(図4)が接続されている。そして、ユーザが操作部104(図4)を操作することによって、第1制御動作(図5)および第2制御動作(図6)のいずれか一方が選択される。メンテナンス制御部102は、選択された制御動作においてメンテナンス処理を実行するように、インク供給機構16の各構成要素を制御する。
【0030】
第2ヘッド制御部106は、電源部90から出力される駆動電圧の大きさを制御する「駆動部制御手段」としての機能を有している。第2ヘッド制御部106には、メンテナンス制御部102が接続されており、メンテナンス制御部102から第2ヘッド制御部106には、インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHが供給される。そして、第2ヘッド制御部106は、インクRの粘度ηHに基づいて電源部90を制御し、インクRの粘度ηHが大きくなるほど駆動電圧を大きくするように調整する。つまり、インクRの粘度ηHが大きくなるとインクRの吐出量が少なくなる傾向があるため、その場合には、駆動電圧を大きくしてインクRの吐出量を一定に保持する。これにより、画像品質が保たれる。なお、他の実施形態では、第2ヘッド制御部106は、粘度ηTと粘度ηHとの平均粘度ηAに基づいて電源部90を制御し、平均粘度ηAが大きくなるほど駆動電圧を大きくするように調整してもよい。
【0031】
搬送制御部108は、用紙搬送機構14のモータ54を制御するものである。搬送制御部108でモータ54が制御されることによって、用紙Pの搬送速度や搬送のタイミングが制御される。これにより、画像形成領域Qに対して用紙Pが所定の搬送速度および所定のタイミングで供給される。
【0032】
[第1制御動作]
図5は、制御部18により制御される第1制御動作を示すフロー図である。操作部104から入力された信号に基づいて、第1制御動作が選択されると、制御部18によって図5に示す第1制御動作が実行される。この第1制御動作は、印刷ジョブが登録されるより前にメンテナンス処理を実行し、印刷ジョブが登録された後に印刷処理を実行するものである。
【0033】
図5に示すように、制御部18による第1制御動作が開始されると、ステップS1において、インクジェットプリンタ10が印刷待機の状態にされる。印刷待機の状態において、大気連通路78を開閉する第3弁86(図1)は開かれ、これによりサブタンク62(図1)の内部の圧力上昇が抑制される。次のステップS3では、サブタンク62(図1)に貯留されたインクRの粘度ηTと、インク吐出ヘッド12(図1)に存在するインクRの粘度ηHとの粘度差(ηT−ηH)が画像品質に影響を与える第1所定値α1以上であるか否かが判断される。そして、「NO」と判断されると、ステップS13に進み、「YES」と判断されると、ステップS5に進む。
【0034】
ステップS13において、印刷ジョブの登録があったと判断されると、直ちにステップS15の印刷処理が実行されるので、ステップS3の判断を行う時点では、粘度差(ηT−ηH)が画像品質に影響を与えない程度に小さいことが必要である。そのため、ステップS3の第1所定値は、そのまま印刷処理が実行されても画像品質に影響を与えることのない粘度差(ηT−ηH)の最大許容値に設定されている。この粘度差(ηT−ηH)の最大許容値は画質を評価することにより実験的に求められる。
【0035】
ステップS5では、第1粘度算出部98が算出するインクRの粘度ηTと、第2粘度算出部100が算出するインクRの粘度ηHとの平均粘度ηAがメンテナンス制御部102(図4)において算出され、平均粘度ηAが第2所定値α2以上であるか否かがメンテナンス制御部102(図4)において判断される。なお、平均粘度ηAは、サブタンク62に貯留されたインクRとインク吐出ヘッド12に存在するインクRとの体積比等により算出される。そして、ステップS5において、「NO」すなわち平均粘度ηAが第2所定値α2未満であると判断されると、ステップS7においてインクRの循環処理が実行された後、ステップS13に進む。ステップS7におけるインクRの循環処理では、図1に示すように、第2流路66を開閉する第1弁74が開かれるとともに、大気連通路78を開閉する第3弁86が閉じられ、第1流路64に設けられた第1ポンプ70が駆動される。すると、循環流路F2においてインクRが循環されて攪拌されることにより、サブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηTと、インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHとが均一化される。なお、十分に循環が行われた場合、粘度ηTと粘度ηHは平均粘度ηAと等しくなる。これにより、サブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηTが小さくされる。循環処理において、サブタンク62の内部で分離された気泡は、その後、第3弁86が開かれたときに、大気連通路78から大気中に放散される。
【0036】
ステップS13において、印刷ジョブの登録があったと判断されると、直ちにステップS15の印刷処理が実行されるので、ステップS7では、平均粘度ηAが画像品質に影響を与えないように小さくされる必要がある。そのため、ステップS5の第2所定値は、インクRの循環処理によって画像品質に影響を与えないようにすることができる平均粘度ηAの最大許容値に設定されている。なお、平均粘度ηAの最大許容値は、駆動電圧の増大によって、インクRの吐出量を一定に保持できる範囲におけるインクRの最大粘度と等しい。
【0037】
ステップS5において、「YES」すなわち平均粘度ηAが第2所定値α2以上であると判断されると、ステップS9においてインクRの廃棄処理が実行され、ステップS11においてインクRの補給処理が実行され、その後、ステップS13に進む。ステップS9における廃棄処理では、サブタンク62に貯留されたインクRおよびインク吐出ヘッド12に存在するインクRの両方が捨てられる。ステップS11における補給処理では、サブタンク62およびインク吐出ヘッド12の両方に対してメインタンク60から新たなインクRが補給される。
【0038】
本実施形態では、インクRの廃棄処理と補給処理とが一連の動作によって同時に実行される。つまり、図1に示すように、まず、第2弁84によってインク排出路76が開放され、サブタンク62に貯留されたインクRがインク排出路76から外部に排出される。なお、外部に排出されたインクRは、図示しない廃液タンクなどに貯留される。続いて、第2弁84が閉じられた後、第3流路68に設けられた第2ポンプ72が駆動され、空になったサブタンク62の内部にメインタンク60から新たなインクRが補給される。このとき、第1弁74によって第2流路66が閉鎖されるとともに、第1流路64に設けられた第1ポンプ70が駆動され、インク吐出ヘッド12の内部にサブタンク62から新たなインクRが供給される。インク吐出ヘッド12の内部の古いインクRは、新たなインクRに押されてノズル30(図3)から外部に排出される。なお、この場合も外部に排出されたインクRは、図示しない廃液タンクなどに貯留される。したがって、本実施形態では、第2弁84およびインク排出路76が、サブタンク62に貯留されたインクRを排出する「第1排液手段」として機能し、第1ポンプ70が、インク吐出ヘッド12に存在する古いインクRを排出する「第2排液手段」として機能する。
【0039】
ステップS13では、画像データ記憶部92(図4)に対して印刷ジョブの登録があったか否かが判断される。そして、「NO」と判断されると、ステップS3に戻り、「YES」と判断されると、ステップS15に進む。第1ヘッド制御部94(図4)は、画像データ記憶部92に画像データが記憶されたときに、印刷ジョブの登録があったことを認定する。
【0040】
ステップS15では、通常の印刷処理が実行される。図1に示すように、通常の印刷処理では、第1弁74が閉じられるとともに、第3弁86が開かれ、第1ポンプ70が停止される。そして、インク吐出ヘッド12および用紙搬送機構14が駆動され、インク吐出ヘッド12のノズル30(図3)からインクRが吐出される。ノズル30(図3)からインクRが吐出されると、インク吐出ヘッド12の内部とサブタンク62の内部との間に圧力差が生じるため、この圧力差によって、サブタンク62の内部のインクRがインク吐出ヘッド12の内部に自然に補給される。なお、インク吐出ヘッド12に自然に補給されるインクRは、第1ポンプ70の内部に形成された隙間などを通過して補給される。また、第1弁74を解放しておけば、第2流路66を通してインク吐出ヘッド12にインクRを補給することも可能となる。サブタンク62の内部のインクRの液面が下限位置に達したことを下限センサ82が検知すると、第2ポンプ72が駆動され、メインタンク60からサブタンク62にインクRが補給される。そして、サブタンク62の内部のインクRの液面が上限位置に達したことを上限センサ80が検知すると、第2ポンプ72が停止される。印刷処理において、サブタンク62の内部で分離された気泡は、サブタンク62の内部に貯留され、その後、第3弁86が開かれたときに、大気連通路78から大気中に放散される。
【0041】
図5に示すように、ステップS15の印刷処理が終了すると、ステップS17において、第1制御動作を終了するか否かが判断される。そして、「NO」と判断されるとステップS3に戻り、「YES」と判断されると第1制御動作が終了される。
【0042】
[第2制御動作]
図6は、制御部18により制御される第2制御動作を示すフロー図である。操作部104から入力された信号に基づいて、第2制御動作が選択されると、制御部18によって図6に示す第2制御動作が実行される。この第2制御動作は、印刷ジョブが登録された後にメンテナンス処理を実行し、その後、印刷処理を実行するものである。
【0043】
図6に示すように、制御部18による第2制御動作が開始されると、ステップS21において、インクジェットプリンタ10が印刷待機の状態にされた後、ステップS23において、印刷ジョブの登録があったか否かが判断される。そして、ステップS23において、「NO」と判断されると、ステップS21に戻って印刷待機の状態が継続され、「YES」と判断されるとステップS25に進む。ステップS25では、サブタンク62(図1)に貯留されたインクRの粘度ηTと、インク吐出ヘッド12(図1)に存在するインクRの粘度ηHとの粘度差(ηT−ηH)が画像品質に影響を与える第1所定値α1以上であるか否かが判断される。そして、ステップS25において、「NO」と判断されると、ステップS27に進み、「YES」と判断されると、ステップS33〜S45のメンテナンス処理を経てステップS27に進む。
【0044】
ステップS27で駆動電圧が調整されると、直ちにステップS29の印刷処理が実行されるので、ステップS25の判断を行う時点では、粘度ηTが駆動電圧の増大によって画像品質に影響を与えない程度に小さくすることが可能な値である必要がある。そのため、ステップS25の第1所定値は、駆動電圧の増大によって画像品質に影響を与えないようにすることができる粘度差(ηT−ηH)の最大許容値に設定されている。この粘度差(ηT−ηH)の最大許容値は上述したように、画質を評価することにより実験的に求められる。
【0045】
ステップS33では、第1粘度算出部98が算出するインクRの粘度ηTと、第2粘度算出部100が算出するインクRの粘度ηHとの平均粘度ηAがメンテナンス制御部102(図4)において算出され、平均粘度ηAが第2所定値α2以上であるか否かがメンテナンス制御部102(図4)において判断される。そして、ステップS33において、「NO」すなわち平均粘度ηAが第2所定値α2未満であると判断されると、ステップS41においてインクRの循環処理が実行された後、ステップS27に進む。ステップ41におけるインクRの循環処理では、図1に示すように、第2流路66を開閉する第1弁74が開けられるとともに、大気連通路78を開閉する第3弁86が閉じられ、第1流路64に設けられた第1ポンプ70が駆動される。すると、循環流路F2においてインクRが循環され、サブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηTと、インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHとが均一化される。これにより、サブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηTが小さくされる。循環処理において、サブタンク62の内部で分離された気泡は、その後、第3弁86が開かれたときに、大気連通路78から大気中に放散される。
【0046】
ステップS27で駆動電圧が調整されると、直ちにステップS29の印刷処理が実行されるので、ステップS41では、平均粘度ηAが画像品質に影響を与えないように小さくされる必要がある。そのため、ステップS33の第2所定値は、駆動電圧を増大させることによって画像品質に影響を与えないようにすることができる平均粘度ηAの最大許容値に設定されている。なお、上述したように、平均粘度ηAの最大許容値は、駆動電圧の増大によって、インクRの吐出量を一定に保持できる範囲におけるインクRの最大粘度と等しい。
【0047】
ステップS33において、「YES」すなわち平均粘度ηAが第2所定値α2以上であると判断されると、ステップS35に進む。ステップS35では、第2粘度算出部100が算出するインクRの粘度ηHが第2所定値α2より小さい第3所定値α3以上であるか否かが判断される。そして、ステップS35において、「NO」すなわちインクRの粘度ηHが第3所定値α3未満であると判断されると、ステップS37においてサブタンク62に貯留されたインクRの廃棄処理が実行され、ステップS39においてサブタンク62に対するインクRの補給処理が実行され、その後、ステップS41の循環処理を経てステップS27に進む。つまり、インクRの粘度ηHが第3所定値α3未満である場合は、サブタンク62の内部のインクRだけが新たなインクRと交換され、循環処理によって、サブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηTと、インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHとが均一化される。これにより、サブタンク62に貯留されたインクRの粘度ηTが小さくされる。
【0048】
ステップS35において、「YES」すなわちインクRの粘度ηHが第3所定値α3以上であると判断されると、ステップS43において、サブタンク62に貯留されたインクRおよびインク吐出ヘッド12に存在するインクRの両方が捨てられ、ステップS45において、サブタンク62およびインク吐出ヘッド12の両方にメインタンク60から新たなインクRが補給される。つまり、インク吐出ヘッド12に存在するインクRをノズル30(図3)から排出するには時間がかかるので、インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHが第2所定値α2より小さい第3所定値α3以上である場合に限って、インク吐出ヘッド12に存在する粘度ηHが増大したインクRが排出される。
【0049】
ステップS27では、第2ヘッド制御部106による駆動電圧調整処理が実行される。図4に示すように、第2ヘッド制御部106は、インク吐出ヘッド12(図1)に存在するインクRの粘度ηHに基づいて電源部90を制御し、当該インクRの粘度ηHが大きくなるほど駆動電圧を大きくするように調整する。つまり、インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHが大きくなるとインクRの吐出量が少なくなる傾向があるため、その場合には、駆動部28(図4)に供給される駆動電圧が増大されることによって、インクRの吐出量が一定に保持される。これにより、画像品質が保たれる。
【0050】
駆動電圧調整処理が完了すると、ステップS29において、通常の印刷処理が実行され、印刷処理が完了すると、ステップS31において、第2制御動作を終了するか否かが判断される。そして、「NO」と判断されるとステップS21に戻り、「YES」と判断されると第2制御動作が終了される。
【0051】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、図5および図6に記載した印刷待機の状態(S1,S21)において、大気連通路78を開閉する第3弁86を開くようにしているが、他の実施形態では、印刷待機の状態において、大気連通路78を開閉する第3弁86を閉じておき、サブタンク62の内部の圧力が上昇した場合にだけ、第3弁86を開くようにしてもよい。
【0052】
また、他の実施形態では、ノズル30(図3)の先端に存在するインクRを所定時間の経過ごとに排出するように、メンテナンス制御部102(図4)および第1ヘッド制御部94(図4)で駆動部28(図4)を制御するようにしてよい。図5および図6に記載した印刷待機の状態(S1,S21)では、ノズル30(図3)の先端に存在するインクRが蒸発してその粘度ηHが増大し易いが、この実施形態では、ノズル30の先端に存在するインクRを所定時間の経過ごとに排出することができるので、粘度ηHが増大したインクRによって画像品質が低下することを抑制できる。この実施形態では、メンテナンス制御部102、第1ヘッド制御部94および駆動部28が、インク吐出ヘッド12に存在するインクRを排出する「第3排液手段」として機能する。
【0053】
上述の実施形態では、ユーザが操作部104(図4)を操作することによって、第1制御動作(図5)および第2制御動作(図6)のいずれか一方が選択される構成であるが、ユーザが操作部104(図4)を操作せず、第1制御動作(図5)および第2制御動作(図6)の少なくともいずれか一方が実行される構成であってもよい。例えば、自動的に第1制御動作(図5)が実行されれば、印刷ジョブが登録される前にインクRの粘度ηTが画像品質に影響しない状態に保持されるので、画像品質を保った印刷ジョブの実行が迅速に可能となる。
【0054】
上述の実施形態では、第2制御動作(図6)において、インク吐出ヘッド12に存在するインクRの粘度ηHが第2所定値α2より小さい第3所定値α3以上である場合に限って、インク吐出ヘッド12に存在する粘度ηHが増大したインクRが排出される構成であるが、第3所定値α3が第2所定値α2より大きい値であってもよい。インク吐出ヘッド12に存在する粘度ηHが増大したインクRを捨てることが重要であり、インク吐出ヘッド12に存在する粘度ηHが低い場合は、インクRの排出を禁止してインクRの排出量の低減とインクRの排出時間の短縮を図るものだからである。
【0055】
上述の実施形態では、本発明に係る「液体吐出装置」を単色のラインプリンタに適用しているが、他の実施形態では、カラーのラインプリンタに適用してもよいし、シリアルプリンタに適用してもよい。「液体吐出装置」をカラーのラインプリンタに適用する場合には、色ごとに設けられた複数のインク吐出ヘッド12のそれぞれに対して、メインタンク60、サブタンク62、メイン流路F1および循環流路F2等が設けられることになる。
【0056】
また、上述の実施形態では、本発明に係る「液体吐出装置」を、インクを吐出するインクジェットプリンタに適用しているが、他の実施形態では、処理液等のような他の液体を吐出する処理液吐出装置に適用してもよいし、ファクシミリおよびコピー機等のようなプリンタ以外の液体吐出装置に適用してもよい。さらに、液体吐出方式としては、アクチュエータ方式に代えて、発熱素子で液体の体積を膨張させたときの圧力を利用して吐出させる方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0057】
R… インク(液体)
ηT,ηH… 粘度
α1… 第1所定値
10… インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
12… インク吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)
18… 制御部(メンテナンス制御手段)
30… ノズル
60… メインタンク
62… サブタンク
72… 第2ポンプ(液体供給手段)
78… 大気連通路(大気連通手段)
98… 第1粘度算出部(第1粘度算出手段)
100… 第2粘度算出部(第2粘度算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するためのノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するメインタンクと、
前記メインタンクから流入した液体を一時的に貯留するとともに、貯留した液体を前記液体吐出ヘッドに供給するサブタンクと、
前記メインタンクから前記サブタンクに液体を供給する液体供給手段と、
前記サブタンクの内部と大気とを連通させる大気連通手段と、
前記サブタンクに貯留された液体の粘度を算出する第1粘度算出手段と、
前記液体吐出ヘッドに存在する液体の粘度を算出する第2粘度算出手段と、
前記第1粘度算出手段で算出した粘度と前記第2粘度算出手段で算出した粘度との粘度差に基づいて、前記粘度差を小さくするように、少なくとも前記サブタンクに貯留された液体に関するメンテナンス処理を実行するメンテナンス制御手段とを備える、液体吐出装置。
【請求項2】
前記サブタンクから前記液体吐出ヘッドへ液体を送るための第1流路と、前記液体吐出ヘッドから前記サブタンクへ液体を送るための第2流路とを含み、前記サブタンクと前記液体吐出ヘッドとの間で液体を循環移送できる循環流路と、
前記循環流路中の液体を循環させる液体循環手段とを備え、
前記メンテナンス制御手段は、
前記粘度差が画像品質に影響を与える第1所定値以上である場合に、前記液体循環手段を動作させて液体を循環させる、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体吐出ヘッドに設けられ、駆動電圧に応じた吐出圧を液体に供給することによって前記ノズルから液体を吐出させる駆動部と、前記駆動部を制御する駆動部制御手段とを有し、
前記駆動部制御手段は、
少なくとも前記第2粘度算出手段が算出する前記液体吐出ヘッドに存在する液体の粘度に基づいて、当該液体の粘度が大きくなるほど前記駆動電圧を大きくするように調整する、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記サブタンクに貯留された液体を排出する第1排液手段を備え、
前記メンテナンス制御手段は、
前記第1粘度算出手段が算出する液体の粘度と前記第2粘度算出手段が算出する液体の粘度より算出される前記サブタンクおよび前記液体吐出ヘッドのそれぞれに貯留された液体の平均粘度が第2所定値以上である場合に、前記第1排液手段を動作させて前記サブタンクに貯留された液体を排出し、且つ、前記液体供給手段を動作させて前記メインタンクから前記サブタンクに新たな液体を供給する、請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2所定値は、前記駆動電圧を増大させることによって画像品質に影響を与えないようにすることができる平均粘度の最大許容値である、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッドに存在する液体を排出する第2排液手段を備え、
前記メンテナンス制御手段は、
前記第2粘度算出手段が算出する液体の粘度が前記第2所定値より小さい第3所定値以上である場合に、前記第2排液手段を動作させて前記液体吐出ヘッドに存在する粘度が増大した液体を排出する、請求項4または5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドに存在する液体を排出する第3排液手段を備え、
前記メンテナンス制御手段は、
前記ノズルの先端に存在する液体を所定時間の経過ごとに排出するように前記第3排液手段を動作させる、請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1粘度算出手段は、前記メインタンクから前記サブタンクに液体が供給された時点からの経過時間に基づいて前記サブタンクに貯留された液体の粘度を算出する、請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第2粘度算出手段は、前記第1粘度算出手段により算出される前記サブタンクに貯留された液体の粘度、前記サブタンクから前記液体吐出ヘッドに液体が供給された時点からの経過時間および前記液体吐出ヘッドから吐出される液体の吐出情報に基づいて前記液体吐出ヘッドに存在する液体の粘度を算出する、請求項1ないし8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の液体吐出装置における前記メンテナンス制御手段としてコンピュータを機能させる、液体吐出装置のプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−75482(P2013−75482A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217961(P2011−217961)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】