説明

液体吐出装置上への非湿潤性コーティング

【課題】耐久性のある非湿潤コーティングの提供。
【解決手段】第1の表面、第2の表面、および第2の表面と接触した液体を吐出できるオリフィス140を有する液体吐出装置において、少なくとも第1の表面上に露出された非湿潤性層、および第2の表面上に露出された保護層190を有し、保護層190は、非湿潤性層よりも湿潤性である。この装置の製造には、第1と第2の表面に非湿潤性層を堆積させ、第1の表面にマスキングし、必要に応じて、第2の表面から非湿潤性層を除去し、第2の表面上に保護層190を堆積させる各工程が含まれ得る。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2006年12月22日に出願された係属中の米国仮特許出願第60/871763号、2006年12月4日に出願された係属中の米国仮特許第60/868536号、および2006年12月1日に出願された係属中の米国仮特許第60/868328号の優先権を主張するものであり、これらの各々の全ての内容をここに引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、液体吐出装置上へのコーティングに関するものである。
【背景技術】
【0003】
液体吐出装置(例えば、インクジェット・プリントヘッド)は一般に、内面と、液体がそこを通って吐出されるオリフィスと、外面とを有する。液体がオリフィスから吐出されるときに、その液体は、液体吐出装置の外面に蓄積し得る。液体がオリフィスに隣接した外面に蓄積すると、オリフィスから吐出されるさらなる液体が、蓄積した液体との相互作用(例えば、表面張力による)によって、意図した移動経路から逸らされるまたは完全に妨げられることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テフロン(登録商標)およびフルオロカーボンポリマーなどの非湿潤性コーティングを用いて、表面を被覆することができる。しかしながら、「テフロン」およびフルオロカーボンポリマーは、一般に軟らかく、耐久性のあるコーティングではない。これらのコーティングは、高価であり、模様を付けることが難しいことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この開示には、第1の表面、第2の表面、および第2の表面と接触した液体を吐出できるオリフィスを有する液体吐出装置が取り上げられている。ある態様において、この液体吐出装置は、少なくとも第1の表面の部分を被覆する非湿潤性層、および第2の表面の部分を被覆するが第1の表面の大部分は被覆しない保護層を有し、この保護層は非湿潤性層よりも湿潤性である。
【0006】
この装置の実施の形態は、以下の特徴を1つ以上含む。非湿潤性層は、炭素とフッ素の各々を少なくとも1原子有する分子を含んでよい。非湿潤性層は単層であってよい。非湿潤性層は疎水性であってよい。非湿潤性層は、無機シード層上に直接形成されてもよい。保護層は、二酸化ケイ素などの無機酸化物を含んでもよい。保護層は親水性であってもよい。ある実施の形態において、保護層は非湿潤性層上に直接形成されてもよい。代わりの実施の形態において、保護層は無機酸化物層上に直接形成されてもよい。ある実施の形態において、第1の表面は液体吐出装置の外面であってもよい。
【0007】
この開示には、液体吐出装置の選択された部分上に非湿潤性単層を形成する方法も取り上げられている。非湿潤性層を液体吐出装置の第1と第2の表面に堆積させ、第1の表面にマスキングを施し、湿潤性層を必要に応じて第2の表面から除去し、保護層を第2の表面に堆積させる。
【0008】
これらの方法の実施の形態は、以下の特徴を1つ以上含む。非湿潤性層は蒸着により堆積させてもよい。マスキングは、テープ、フォトレジスト、またはワックスの内の少なくとも1つを施すことを含んでよい。保護層の堆積は、無機酸化物を堆積させることを含んでよい。無機酸化物は二酸化ケイ素であってよい。ある実施の形態において、マスクは、保護層を堆積させた後に第1の表面から除去してよく、マスクの除去で、マスク上に堆積された保護層も除去してよい。他の実施の形態において、マスクは、保護層を堆積させる前であるが、液体吐出装置を酸素プラズマに曝露した後に除去してよい。無機層は、非湿潤性層の堆積前に、第1と第2の表面に堆積させてもよい。第1の表面は、液体吐出装置内のオリフィスを取り囲む領域を含んでよく、第2の表面は、液体吐出装置により吐出すべき液体と接触する領域を含んでよい。第1の表面は外面であってよく、第2の表面は内面であってよい。
【発明の効果】
【0009】
ある実施の形態は、以下の利点を1つ以上有するであろう。オリフィスを取り囲む外面は非湿潤性であってよく、吐出すべき液体に接触する内面は湿潤性であってよい。非湿潤性層は、液体吐出装置の外面上の液体の蓄積を減少させ、それによって、液体吐出装置の信頼性が改善されるであろう。非湿潤性層は、耐久性であり、ほとんどの溶媒中に不溶性であり、数多くの種類のインクがこの液体吐出装置に使用可能になる。保護層は、先の洗浄工程において内面から除去されていない非湿潤性層のどの部分を被覆してもよく、それによって、内面が高湿潤性である層により被覆されることを確実にしてもよい。吐出すべき液体と接触する表面上の高湿潤性の保護層により、液滴のサイズ、吐出速度、および他の液体吐出装置の性質についての制御を改善することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】未被覆の液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図1B】全ての露出表面に無機層が堆積されている、図1Aからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図1C】全ての露出表面に非湿潤性コーティングが堆積されている、図1Aからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図1D】マスクが外面を被覆している図1Cからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図1E】非湿潤性コーティングが内面から部分的に除去されている、図1Dからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図1F】マスクが除去された、図1Eからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図1G】保護層が内面を被覆している、図1Fからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図2A】保護層が内面を被覆している、図1Dからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図2B】マスクが除去された、図2Aからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図3A】内面から非湿潤性コーティングが除去された、図1Dからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図3B】保護層が内面を被覆している、図3Aからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【図3C】マスクが除去された、図3Bからの液体吐出装置の実施の形態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1Aは、ここにその内容を引用する、2005年10月21日に出願された米国特許出願第11/256669号明細書に記載されたように構成できる、未被覆の液体吐出装置100(例えば、インクジェット・プリントヘッド・ノズル)の断面図である。未被覆の液体吐出装置100は、流路モジュール110およびノズル層120を備え、その両方とも、シリコン(例えば、単結晶シリコン)から製造できる。ある実施の形態において、未被覆の液体吐出装置100は単一ユニットであり、流路モジュール110およびノズル層120は別個の部品ではない。膜層182がポンピングチャンバ上に配置されている。アクチュエータ172がポンピングチャンバ135内の液体(例えば、水性インクなどのインク)を加圧する。液体は、降下部130を流通し、ノズル層120内のオリフィス140を通して吐出される。アクチュエータ172は、圧電層176、下側電極178(例えば、接地電極)、および上側電極174(例えば、駆動電極)を備えることができる。膜層182およびアクチュエータ172は、以下の図面には示されていないが、存在している。
【0012】
図1Bに示したように、未被覆の液体吐出装置100は、必要に応じて、内面と外面を備えた液体吐出装置(例えば、ノズル層120および流路モジュール110)の露出表面上に形成された無機シード層165を備えることができる。そのような場合、未被覆の吐出装置の表面は、無機シード層165の表面であると考えられる。無機シード層165は、シランまたはシロキサンのコーティングの付着を促進させる材料、例えば、無機酸化物、例えば、SiO2から形成してよい。ある実施の形態において、無機シード層165は純粋な酸化物層である(そのような純粋な酸化物は一般に、1から3nmの厚さを有する)。別の実施の形態において、無機シード層165は、SiO2などの堆積されたシード層である。
【0013】
SiO2の無機シード層165は、SiCl4および水蒸気を、未被覆の液体吐出装置100を収容している化学蒸着(CVD)反応装置内に導入することによって、ノズル層120および流路モジュール110の露出表面上に形成できる。CVDチャンバと真空ポンプとの間のバルブを、このチャンバをポンプダウンした後に閉じ、SiCl4およびH2Oの蒸気をチャンバに導入する。SiCl4の分圧は0.05および40トールの間(例えば、0.1から5トールまで)であって差し支えなく、H2Oの分圧は0.05および20トールの間(例えば、0.2から10トールまで)であって差し支えない。シード層165は、ほぼ室温と約100℃の間の温度まで加熱された基体上に堆積される。例えば、基体は加熱されていなくてもよいが、CVDチャンバは35℃であり得る。あるいは、無機シード層165をスパッタリングしても差し支えない。無機シード層165を被覆すべき表面は、例えば、酸素プラズマを施すことによって、被覆前に洗浄することができる。このプロセスにおいて、誘導結合プラズマ(ICP)源を用いて、有機材料をエッチングする活性酸素ラジカルを生成して、清浄な酸化物表面を形成する。製造プロセスのある実施の形態では、一回の連続工程でシード層全体を堆積させて、一体のモノリスシード層を提供する。
【0014】
シード層165の厚さは約5nmおよび約200nmの間であって差し支えない。吐出すべきある種の液体について、無機シード層の厚さにより性能が影響を受け得る。例えば、ある種の「困難な」液体について、より厚い層、例えば、40nm以上、50nm以上などの30nm以上の層により、改善された性能が与えられる。そのような「困難な」液体としては、例えば、様々な導電性ポリマーおよび発光ポリマー、例えば、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、またはダウ・ケミカル社(Dow Chemical)からのDOW Green K2などの発光ポリマーが挙げられる。他の発光ポリマー(ポリマー発光ダイオードとしても知られている)が、ケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジーズ社(Cambridge Display Technologies)、住友化学、およびコヴィオン社(Covion)(Merck KGaAの子会社)を含む供給会社から得られる。
【0015】
液体吐出装置がそれから製造されるある材料(例えば、シリコンまたは酸化ケイ素)は親水性であり、それは一般に、液体が吐出されたときに、外面上の液体蓄積の問題を悪化させる。図1Cを参照すると、非湿潤性コーティング170、例えば、疎水性材料の層を、未被覆の液体吐出装置(または、必要に応じて、無機シード層が被覆された液体吐出装置)の露出表面上に堆積させて、被覆液体吐出装置105が形成される。ある実施の形態において、非湿潤性コーティング170は自己組織化単層膜、すなわち、単分子層を形成する。非湿潤性コーティング170は、はけ塗り、ロール塗り、または回転塗りされるのではなく、蒸着を用いて堆積させることができる。液体吐出装置の外面は、非湿潤性コーティング170を塗布する前に洗浄することができる(例えば、酸素プラズマを施すことによって)。
【0016】
非湿潤性コーティング170は、例えば、前駆体と水の蒸気を低圧でCVDチャンバ中に導入することによって、堆積させることができる。前駆体の分圧は0.05および1トールの間(例えば、0.1から0.5トールまで)であって差し支えなく、H2Oの分圧は0.05および20トールの間(例えば、0.1から2トールまで)であって差し支えない。堆積温度は室温と約100℃の間であって差し支えない。被覆プロセスおよび無機シード層165は、一例として、アプライド・マイクロストラクチャーズ社(Applied MicroStructures, Inc)から市販されているMolecular Vapor Deposition(MVD)(商標)を用いて形成することができる。
【0017】
非湿潤性コーティング170の適切な前駆体としては、一例として、非湿潤性である末端、および液体吐出装置の表面に付着できる末端を備えた分子を含有する前駆体が挙げられる。例えば、一端が−CF3基で終端し、他端が−SiCl3基で終端している炭素鎖を含む前駆体分子を使用できる。シリコン表面に付着する適切な前駆体の特別な例としては、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)および1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシル−トリクロロシラン(FDTS)が挙げられる。どの特定の理論により制限するものではないが、その分子が−SiCl3末端を含む前駆体(FOTSまたはFDTSなどの)が水蒸気と共にCVD反応装置中に導入されるときに、−SiCl3基からのケイ素原子が、液体吐出装置の露出表面上の純粋な酸化物、すなわち無機シード層165の−OH基からの酸素原子と結合し、露出された他の末端、すなわち、非湿潤性末端を有する分子の、単層膜などのコーティングが形成されると考えられる。
【0018】
製造プロセスは、無機シード材料の層および非湿潤性コーティングの層を交互に形成してもよい。これらの場合、個々のシード層は、約5nmおよび約200nm厚の間であって差し支えない。装置の露出表面は、シード材料の層を形成する前に洗浄することができる(例えば、酸素プラズマを施すことによって)。仮定で、この製造プロセスにより、シード材料と非湿潤性コーティングの交互の層を備えた積層体が形成され得る。しかしながら、どの特定の理論により制限するものではないが、ある条件下で、洗浄プロセスで、直前に堆積された非湿潤性コーティングが除去され、よって、得られた装置は、単一の連続した厚いシード層(酸化物と非湿潤性コーティングの交互の層ではなく)を有する。明白にするために、このプロセスにおいて、最後の工程で、非湿潤性コーティングの層が形成され、よって、最も外側の表面は非湿潤性である。
【0019】
別の実施の形態において、被覆液体吐出装置105は、無機シード層165を備えておらず、非湿潤性コーティング170が、液体吐出装置のそのままの表面に直接施される。
【0020】
図1Dを参照すると、液体吐出装置の外面、すなわち、オリフィス140を取り囲む領域に、マスク180を施す。このマスキング層は、様々な材料から形成してよい。例えば、テープ、ワックス、またはフォトレジストをマスクとして用いることができる。マスク180は、それが施される表面を、洗浄工程中に生じる損傷または除去から(例えば、酸素プラズマへの曝露から)、および/またはその後の堆積から(例えば、保護層の堆積から)、保護する。マスク180は、その下にある非湿潤性コーティング170を除去する、または損傷する、もしくは他の様式で物質的に変えることなく、除去されるように十分に低い付着性を有するであろう。
【0021】
図1Eを参照すると、液体吐出装置に、マスク180により被覆されていない非湿潤性コーティングの部分を除去する洗浄工程、例えば、洗浄ガス、例えば、酸素プラズマ処理を施すことができる。酸素プラズマは、チャンバの内部の基体に施しても、もしくは酸素プラズマの供給源を流路の入口に接続しても差し支えない。前者の場合、マスク180は、液体吐出装置の外側のチャンバ内の酸素プラズマが、外面上の非湿潤性コーティングを除去するのを妨げる。後者の場合、マスク180は、酸素プラズマが、オリフィスを通って逃げるのを妨げ(この場合、マスクは、オリフィス自体を被覆することしか必要ない)、外面の非湿潤性コーティング170が除去されるのを妨げる。
【0022】
洗浄工程は、特にノズルの領域において、内面から非湿潤性コーティングを除去する上で完全には効果的ではないかもしれない。しかしながら、洗浄工程は、その後に堆積される保護層が、液体吐出装置の内面に残っている非湿潤性コーティングと付着し、それを被覆するほど十分に効果的である。どの特定の理論により制限するものではないが、内面には、非湿潤性コーティングのパッチまたは領域、および保護層の付着を可能にするほど十分に大きい露出されたシード層の他のパッチまたは領域が残されているかもしれず、もしくは内面上の非湿潤性コーティングが、保護層の付着を可能にするほど損傷されているかもしれない。
【0023】
図1Fを参照すると、洗浄工程後、マスク180が除去される。あるいは、マスクは、保護層の堆積後に除去しても差し支えない。
【0024】
図1Gを参照すると、保護層190を、被覆液体吐出装置105の露出(マスクがまだ存在する場合には、マスクされていない)表面に施して、選択的に被覆された液体吐出装置107が形成される。非湿潤性コーティングの材料は、保護層が、堆積中に非湿潤性コーティング170に付着しないようなものであって差し支えない(それゆえ、マスクは、保護層の堆積前に除去することができるが、保護層は、非湿潤性コーティング170に付着せず、その上には形成されない)。しかしながら、上述したように、洗浄工程は、保護層が、洗浄が施された液体吐出装置の表面、例えば、内面上に残っている任意の非湿潤性材料に付着し、被覆するほど十分に効果的である。
【0025】
保護層190は、非常に湿潤性である露出表面、例えば、完成した装置の内面を提供する。ある実施の形態において、保護層190は無機酸化物から形成される。例えば、無機酸化物はケイ素を含んでよく、例えば、無機酸化物はSiO2であってよい。保護層190は、上述したCVDなどの従来の手段により堆積してよく、最初の洗浄工程、例えば、酸素プラズマを用い、非湿潤性コーティングが所望の表面に付着するようにして差し支えない。その上、同じ装置を用いて、堆積すべき表面を洗浄し、かつ保護層を堆積させてもよい。保護層190は、非湿潤性コーティング170よりも湿潤性であってよい。
【0026】
ある実施の形態において、保護層190は、同じ条件下で堆積させ、シード層165と同じ材料特性、例えば、同じ湿潤性を有していてよい。保護層190はシード層165よりも薄くて差し支えない。
【0027】
他の実施の形態において、保護層190は、異なる条件下で堆積し、シード層165とは異なる材料特性を有してよい。例えば、保護層190は、シード層165よりも、密度が小さく、より多孔質であってよい。例えば、保護層190は、X線反射率により測定して、約2.4g/cm3未満、例えば、約2.2g/cm3未満、例えば、約2.0g/cm3未満の密度を有していてよい。これとは反対に、上述した方法によって(すなわち、堆積中に基体を、ほぼ室温と約100℃の間に加熱することによって)堆積された、シード層165は、約2.4g/cm3より大きい、例えば、2.6g/cm3の密度を有していてよい。これらの実施の形態において、保護層190はシード層165よりも湿潤性であってよい。例えば、保護層190は、約30度未満、例えば、約20度未満、例えば、10度未満の水との接触角を有してよい。これとは反対に、シード層165は、約30度より大きい、例えば、約40度の水との接触角を有してよい。
【0028】
要約すると、最終製品において、オリフィス140を取り囲む表面(例えば、外面)は、非湿潤性であり、吐出すべき液体と接触する表面(例えば、内面)は、非湿潤性コーティングで被覆された表面よりも湿潤性である。
【0029】
図2A〜2Bを参照すると、ある実施の形態において、保護層190は、事前の洗浄工程がない場合でさえも、非湿潤性コーティングに付着する材料である。この場合、保護層190は、事前の洗浄工程がなくとも、内面に施すことができる。
【0030】
図2Aを参照すると、マスク180は、非湿潤性コーティング170の堆積後に施される。マスク180は、可逆的に取り付けてよく、マスキングされた表面の保護が、例えば、保護層190の堆積後に、もはや必要ないときに、除去される。
【0031】
さらに図2Aを参照すると、次いで、保護層190を堆積させることができる。保護層190は、液体吐出装置の露出された内面を被覆できる。保護層はまた、マスク180の露出表面、例えば、露出された内面および外面を被覆できる。例えば、マスクが取り付けられた液体吐出装置105をCVD反応装置内に配置してよく、その中に、保護層190の前駆体、例えば、SiCl4および水蒸気が導入される。そのような実施の形態において、保護層は、マスクの外面およびノズルに及ぶ内面の部分上に形成される。
【0032】
図2Bを参照すると、マスク上の保護層は、マスクが非湿潤性コーティング170から除去されるときに除去される。それゆえ、図2Bの完成した装置は、非湿潤性の特定の表面および非湿潤性コーティングで被覆された表面よりも湿潤性である他の表面を有する。
【0033】
代わりの実施の形態において、保護層190は、保護層190は内面(例えば、開口に及ぶ内面の部分)のみに堆積されているから、または保護層はマスクに物理的に付着しないからのいずれかの理由のために、マスク180の露出された外面を被覆しない。前者の場合は、例えば、液体吐出装置105に、保護層190の前駆体(例えば、SiCl4および水蒸気)のみが液体吐出装置の露出された内面(すなわち、液体吐出装置から吐出すべき液体に接触する表面)のみに導入されるように適切な付着物を設けることによって、行ってもよい。これらの実施の形態において、マスク180は、保護層が外面領域に到達するのを防ぐためにオリフィス140を取り囲む十分に局所化された領域に施してよい。
【0034】
図3A〜Cを参照すると、洗浄工程は、保護層190を堆積させる前に、非湿潤性コーティング170が内面から完全に除去されるほど十分に効果的であり得る。図3Aにおいて、非湿潤性コーティング170は、ここにその全てを引用する米国特許出願第11/479152号明細書に記載されているように、内面から除去されている(例えば、酸素プラズマをポンピングチャンバ135および下降部130に施すことによって)か、または内面に堆積されていない。
【0035】
図3Bを参照すると、保護層190は、少なくとも露出された内面上に堆積され(例えば、上述したようなCVDにより)、液体吐出装置109が形成される。保護層190は、非常に湿潤性である完成した装置の露出された酸化物表面を提供する。上述したように、保護層190は、シード層165とは異なる条件下で堆積され、異なる材料特性を有し得る。
【0036】
図3Cは、マスク180が除去された液体吐出装置109を示している。このマスクは、保護層190の堆積の前または後いずれに除去してもよい。図3Cに示された最終的な完成装置は、非湿潤性である外面、および非湿潤性表面よりも湿潤性である内面を備えた液体吐出装置である。
【0037】
本発明の数多くの実施の形態を説明してきた。それでも、様々な改変が、本発明の精神および範囲から逸脱せずに行えることが理解されよう。例えば、方法の工程は、異なる順序で行ってよく、それでも所望の結果が得られるであろう。したがって、本発明の実施の形態も以下の特許請求の範囲内である。
【符号の説明】
【0038】
100,105,109 液体吐出装置
110 流路モジュール
120 ノズル層
130 下降部
140 オリフィス
165 無機シード層
170 非湿潤性コーティング
172 アクチュエータ
174,178 電極層
176 圧電層
180 マスク
190 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを有するノズル層であって、該ノズル層が第1の表面と第2の表面とを含むものであり、前記第1の表面が前記ノズル層の外面、前記第2の表面が前記ノズル層の内面であり、前記第1の表面に形成され、該第2の表面と接触した液体を吐出可能にするオリフィスを備えた前記ノズル層と、
前記第1の表面の少なくとも一部と前記第2の表面の少なくとも一部とを被覆する非湿潤性層と、
前記第1の表面の大部分ではなく前記第2の表面の少なくとも一部上に前記非湿潤性層を備えた前記第2の表面を被覆する保護層であって、前記非湿潤性層よりも湿潤性である前記保護層と、
を備えた液体吐出装置。
【請求項2】
前記非湿潤性層が前記第2の表面を完全に被覆し、前記保護層が前記第2の表面上の前記非湿潤性層を完全に被覆するもものであることを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1の表面および第2の表面上であって前記非湿潤性層および前記保護層より下に堆積されたシード層をさらに備えた請求項1または2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記ノズル層がシリコンからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記保護層が二酸化ケイ素からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の液体吐出装置。
【請求項6】
ノズル層を備えた液体吐出装置上に非湿潤性層を形成する方法であって、
前記液体吐出装置の第1の表面および第2の表面上に非湿潤性層を堆積させる工程であって、前記第1の表面が前記液体吐出装置の外面であり、前記第2の表面が前記液体吐出装置の内面であり、前記ノズル層内に第2の表面に接触した液体を吐出可能にするオリフィスが形成されている前記工程と、
前記第2の表面から前記非湿潤性層の一部を除去する工程と、
前記第2の表面上の前記非湿潤性層のいかなる残存部分を含む前記第2の表面上に保護層を堆積させる工程であって、前記保護層が前記非湿潤性層よりも湿潤性である前記工程と、
を有してなる方法。
【請求項7】
前記第2の表面から前記非湿潤性層の少なくとも一部を除去する前に前記第1の表面にマスクを施す工程をさらに含み、該マスクを施す工程が、テープ、フォトレジスト、またはワックスの内の少なくとも1つを施す工程を含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記保護層を堆積させた後、前記第1の表面から前記マスクを除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記マスクを除去する工程が、前記マスク上に堆積された保護層も除去することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記保護層を堆積させる前であるが、前記第2の表面から前記非湿潤性層の少なくとも一部を除去した後に、前記第1の表面から前記マスクを除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記非湿潤性層の少なくとも一部を除去する工程が、前記液体吐出装置を酸素プラズマに曝露する工程を含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記非湿潤性層の少なくとも一部を除去する工程が、該非湿潤性層の全ては除去しないことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記非湿潤性層を堆積させる前に、前記第1と第2の表面上に無機層を堆積させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項6〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記非湿潤性層を蒸着により堆積させることを特徴とする請求項6〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記保護層を堆積させる工程が、無機酸化物を堆積させる工程を含むことを特徴とする請求項6〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記無機酸化物が二酸化ケイ素であることを特徴とする請求項15記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2013−60017(P2013−60017A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−257320(P2012−257320)
【出願日】平成24年11月26日(2012.11.26)
【分割の表示】特願2009−539523(P2009−539523)の分割
【原出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(502122794)フジフィルム ディマティックス, インコーポレイテッド (73)
【Fターム(参考)】