説明

液体吐出装置及びインクジェットヘッド駆動方法

【課題】圧電素子の薄膜化を達成しつつ、圧電素子への電圧印加による素子破壊を簡便に防止する液体吐出装置及びインクジェットヘッド駆動方法を提供する。
【解決手段】圧電素子(58)を具備するインクジェットヘッド(16)に圧電素子の周囲の空間を囲む気体室(60)が設けられ、圧電素子へ駆動電圧が印加される期間中(インクジェットヘッドの通電中)は、乾燥気体供給部(70)から気体室へ前記インクジェットヘッドの周囲の露点以下の乾燥気体が供給され、圧電素子へ駆動電圧が印加されない期間は乾燥気体の供給が停止される。乾燥気体の供給が停止されると、乾燥気体供給流路(78)の供給バルブ80が閉じられるとともに、気体回収流路(82)の回収バルブ(84)が閉じられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出装置及びインクジェットヘッド駆動方法に係り、特にインクジェットヘッドに具備される圧電素子の駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に具備されるインクジェットヘッドの駆動方式として、圧電素子のたわみ変形を利用してノズルからインクを吐出させるピエゾ方式や、ノズルと連通する液室内に貯留されるインクの膜沸騰現象を利用してノズルからインクを吐出させるサーマル方式が知られている。ピエゾ方式は、サーマル方式と比較してインクの吐出量や吐出速度を制御しやすいという利点がある。
【0003】
インクジェットヘッドに用いられる圧電素子は、高い圧電定数(電気‐機械変換定数)を有する必要があり、例えば、鉛チタン酸化物(PT)や鉛チタンジルコニウム酸化物(PZT)、PZTにマグネシウム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、ニオブ、スカンジウム、タンタル、ビスマスなどを添加したものが知られている。また、インクジェットヘッドに用いられる圧電素子は、インク吐出に必要な圧力を発生させるために、数キロボルト毎センチメートル程度の電界が印加される。
【0004】
ここで、圧電素子は、微小な亀裂や孔などの欠陥が多数存在することが知られており、水分(湿気)が存在する環境下において鉛を含有する圧電素子に高い強度の電界が印加されると、欠陥部の鉛化合物とその周辺部に大電流が流れ、該大電流の発生箇所がジュール熱により破壊され、より大きな欠陥となってしまう。
【0005】
圧電素子の厚みを大きくすることで、破壊により素子を貫通してしまうような大きな欠陥ができてしまうことを回避しうるものの、所望の発生圧力を得るために高い強度の電界を印加しなければならず、消費電力の増加が懸念される。
【0006】
特許文献1は、インクジェット式記録装置において、圧電素子の薄膜化を達成しつつ、圧電素子への電圧印加による素子破壊を簡便に防止する技術を開示している。特許文献1に開示されたインクジェット式記録装置は、圧電素子及び圧電素子近傍雰囲気の露点を、インクジェット式記録装置が設置される環境の露点よりも低い値に保つように露点制御手段を有している。
【0007】
特許文献1は、露点制御手段として、コンプレッサー23aと、コンプレッサー23aからの圧縮空気を乾燥させて、圧電素子13が封入されるケース24へ送るエアドライヤー23bと、を備える構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−322605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された構成には、以下の課題が存在している。ケース24への圧縮空気の供給が停止すると、ケース24の導入口24a及び排出口24bから湿気が逆流するおそれがある。また、乾燥した空気が供給される前の圧電素子13の周囲が高湿であると、圧電素子に電圧が印加された瞬間に故障が発生するおそれがある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、圧電素子の薄膜化を達成しつつ、圧電素子への電圧印加による素子破壊を簡便に防止する液体吐出装置及びインクジェットヘッド駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出させるノズルと、前記ノズルと連通する圧力室と、前記圧力室を構成する壁の前記圧力室の外側に取り付けられ、前記圧力室内の液体を加圧する圧電素子と、前記圧電素子及び前記圧電素子の周囲の空間を囲む気体室と、を具備するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの周囲の露点以下の乾燥気体を生成するとともに、前記インクジェットヘッドの通電開始前に前記気体室への乾燥気体の供給が開始され、前記インクジェットヘッドの通電中は前記気体室への乾燥気体の供給が継続され、前記インクジェットヘッドの通電停止後に前記気体室への乾燥気体の供給が停止される乾燥気体供給手段と、一方の端は前記乾燥気体供給手段と連通され、他方の端は前記気体室と連通される乾燥気体供給流路と、前記乾燥気体供給流路に設けられ、前記乾燥気体供給手段と前記気体室との連通、遮断を切り換える乾燥気体供給流路開閉手段と、一方の端は前記気体室と連通され、他方の端は大気開放される気体回収流路と、前記気体回収流路に設けられ、前記気体室と大気との連通と非連通とを切り換える気体回収流路開閉手段と、前記乾燥気体供給手段から前記気体室への乾燥気体の供給停止中は、前記乾燥気体供給流路開閉手段を閉じて前記乾燥気体供給手段と前記気体室とを遮断するとともに、前記気体回収流路開閉手段を閉じて前記気体室と大気とを遮断するように前記乾燥気体供給流路開閉手段及び前記気体回収流路開閉手段を制御する開閉制御手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクジェットヘッドに具備される圧電素子及び該圧電素子の周囲へ、前記インクジェットヘッドの周囲の露点以下の乾燥気体を供給して該圧電素子の周囲の露点を下げることで、圧電素子への電圧印加による劣化を防止する液体吐出装置において、乾燥気体の供給停止中は気体室と連通される乾燥気体供給流路に及び気体回収流路が閉じられるので、乾燥気体の供給停止中に湿気が含まれる気体が気体室内へ浸入することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す全体構成図
【図2】図1に示す印字部の構成例を示す平面図
【図3】図1に示す印字部の他の構成例を示す平面図
【図4】図2に示すインクジェットヘッドの構造を示す平面透視図
【図5】図4に示すヘッドモジュールのノズル配置を示す平面透視図
【図6】図2に示すインクジェットヘッドの一吐出素子分の立体構造を示す断面図
【図7】乾燥気体供給部の概略構成を示すブロック図
【図8】図1に示すインクジェット記録装置における制御系の概略構成を示すブロック図
【図9】ベンチレーション機能の制御の流れを示すフローチャート
【図10】図9に示す湿度監視シーケンスの流れを示すフローチャート
【図11】図9に示すベンチレーション機能の停止シーケンスを示すフローチャート
【図12】本発明の第1変形例に係る乾燥気体供給部の概略構成を示すブロック図
【図13】第1変形例に係るベンチレーション機能の制御の流れを示すフローチャート
【図14】図13に示す湿度監視シーケンスの流れを示すフローチャート
【図15】本発明の第2変形例に係る乾燥気体供給部の概略構成を示すブロック図
【図16】本発明に係るインクジェット記録装置の他の態様の概略構成を示す全体構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
【0015】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置10の全体構成図である。図1に示すインクジェット記録装置10は、オンデマンド型インクジェット記録装置であり、記録媒体12を保持して搬送する記録媒体搬送部14と、記録媒体搬送部14に保持された記録媒体12に対して、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)に対応するカラーインクを吐出させるインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yを含む印字部17と、を含んで構成されている。
【0016】
記録媒体搬送部14は、記録媒体12が保持される記録媒体保持領域に多数の吸着穴(不図示)が設けられた無端状の搬送ベルト18と、搬送ベルト18が巻き掛けられる搬送ローラ(駆動ローラ20、従動ローラ22)と、記録媒体保持領域の搬送ベルト18の裏側(記録媒体12が保持される記録媒体保持面と反対側の面)に設けられ、記録媒体保持領域に設けられた不図示の吸着穴にと連通しているチャンバー24と、チャンバー24に負圧を発生させる真空ポンプ26と、を含んでいる。
【0017】
記録媒体12が搬入される搬入部28には、記録媒体12の浮きを防止するための押圧ローラ30が設けられるとともに、記録媒体12が排出される排出部32にもまた、押圧ローラ34が設けられている。
【0018】
搬入部28から搬入された記録媒体12は、記録媒体保持領域に設けられた吸着穴から負圧が付与され、搬送ベルト18の記録媒体保持領域に吸着保持される。
【0019】
記録媒体12の搬送路上には、印字部17の前段側(記録媒体搬送方向上流側)に、記録媒体12の表面温度を所定範囲に調整するための温度調節部36が設けられるとともに、印字部17の後段側(記録媒体搬送方向下流側)に、記録媒体12上に記録された画像を読み取る読取装置(読取センサ)38が設けられている。
【0020】
搬入部28から搬入された記録媒体12は、搬送ベルト18の記録媒体保持領域に吸着保持され、温度調節部36による温度調節処理が施された後に、印字部17において画像記録が行われる。
【0021】
図1に示すように、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yは、記録媒体搬送方向の上流側からこの順番で配置されている。記録媒体12がインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yの直下を通過する際に、記録媒体12に対してKCMYの各色のインクを吐出させて、所望のカラー画像が形成される。
【0022】
なお、印字部17は上述した形態に限定されない。例えば、LC(ライトシアン)やLM(ライトマゼンタ)に対応するインクジェットヘッド16LC,16LMを具備してもよい。また、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yの配置順も適宜変更可能である。
【0023】
画像記録がされた記録媒体12は、読取装置38によって記録画像(テストパターン)が読み取られた後に、排出部32から排出される。
【0024】
また、図1に示すインクジェット記録装置10は、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yに具備される圧電素子(図1中不図示、図6に符号56を付して図示)の周囲に乾燥気体を供給して、圧電素子の周囲を低湿度状態にするベンチレーション機能を有している。
【0025】
なお、図1に符号40を付して一点破線で図示した構成は、乾燥気体が供給される気体室(図1中不図示、図7に符号60を付して図示)と連通する回収流路(図1中不図示、図7に符号82を付して図示)の大気開放される端(気体の出口)である。かかるベンチレーション機能の詳細は後述する。
【0026】
〔印字部の構成〕
図2は、印字部17の構成例を示す平面図であり、記録媒体12の描画面側から見た図である。同図に示すように、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yは、記録媒体12の全幅に対応する長さにわたって複数のノズル(図2中不図示、図5に符号50を付して図示)を有するフルライン型ヘッドであり、記録媒体12とインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yとを相対的に一回だけ走査させることで、記録媒体12の全域にわたって画像を形成することができる。
【0027】
記録媒体12の「全幅」とは、記録媒体12の搬送方向(符号Sを付して図示した副走査方向)と直交する方向(符号Mを付して図示した主走査方向)における記録媒体12の全長であり、余白を考慮した場合には画像が形成される画像形成領域の同方向における全長としてもよい。
【0028】
図3は、印字部の他の構成例を示す平面図である。同図に示す印字部17’は、いわゆるシリアル方式が適用されている。すなわち、複数のノズル(図3中不図示、図6に符号50を付して図示)が副走査方向Sに沿って、一列又は複数列に並べられた構造を有するインクジェットヘッド16K’,16C’,16M’,16Y’が、主走査方向Mに沿ってこの順に配置され、キャリッジ13Aに搭載されている。
【0029】
キャリッジ13Aをガイド13Bに沿って主走査方向Mに走査させながら、インクジェットヘッド16K’,16C’,16M’,16Y’からインクを吐出させて、同方向における画像形成が実行される。記録媒体12のある領域について画像形成が終了すると、記録媒体12を副走査方向Sについて所定量だけ移動させ、次の領域における画像形成が実行される。この動作を繰り返して記録媒体12の全域について画像が形成される。
【0030】
本発明には、図2に示すライン型ヘッドを適用してもよいし、図3に示すシリアル型ヘッドを適用してもよい。以下の説明では、ライン型ヘッドが適用される態様について説明する。
【0031】
〔インクジェットヘッドの構成〕
図4は、印字部17に具備されるインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yの構造例を示す透視平面図(インク吐出面の反対側面から見た図)である。なお、図1に図示したインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yは同一の構造を適用することができるので、以下の説明において、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yを共通の符号16により示す場合がある。
【0032】
図4に示すインクジェットヘッド16は、複数のヘッドモジュール16Aが主走査方向Mについてつなぎ合わせられた構造を有している。各ヘッドモジュール16Aは、それ自体がインクジェットヘッドとして機能しうる流路構造を有している。
【0033】
図5は、図4に示すヘッドモジュール16Aのノズル配置を示す平面透視図であり、図4に図示されている複数のヘッドモジュール16Aが一つ取り出されて図示されている。なお、図5に符号62,64を付して図示した構造は、後述する気体室(図6に符号60を付して図示)の乾燥気体供給口及び気体回収口である。
【0034】
同図に示すヘッドモジュール16Aは、主走査方向Mに沿う行方向、及び主走査方向M及び副走査方向Sと直交しない斜めの列方向に沿って複数のノズル50(吐出素子)がマトリクス配置された構造を有している。
【0035】
図5に示すようにノズル50をマトリクス配置させることで、主走査方向Mの実質的なノズル配置密度が高密度化される。なお、本発明に適用可能なインクジェットヘッドのノズル配置は図5に図示したマトリクス配置に限定されない。
【0036】
例えば、インクジェットヘッド16の長手方向に沿って複数のノズル50を配置したノズル列を一列有する態様や、同方向に複数のノズル50を二列の千鳥配置させる態様などを適用することができる。
【0037】
図6は、インクジェットヘッド16(ヘッドモジュール16A)の一吐出素子分の立体構造を示す断面図である。同図に示すように、インクジェットヘッド16(ヘッドモジュール16A)は、インクを吐出させるノズル50と、ノズル50と連通する圧力室52と、圧力室52の天井面を構成する振動板55と、振動板55に設けられる圧電素子56と、を備えている。
【0038】
圧力室52は、供給口(供給絞り)54を介して共通流路58と連通され、さらに、共通流路58は、不図示の流路等を介してインクジェットヘッド16の外部に配置されるインクタンクと連通している。
【0039】
圧電素子56は、上部電極56A及び下部電極56Bに圧電体56Cがはさまれた構造を有し、上部電極56Aと下部電極56Bとの間に駆動電圧を印加することでたわみ変形が生じ、圧電素子56のたわみ変形により圧力室52が変形することで、圧力室52の内部に収容されているインクがノズル50から吐出される。
【0040】
圧電素子56のたわみ変形が元の状態に復元されると、共通流路58から供給口54を介して圧力室52内にインクが充填される。なお、振動板55に金属材料が適用される場合は、振動板55と下部電極56Bとを共通化してもよい。
【0041】
図6に示すインクジェットヘッド16は、複数のキャビティプレートを積層させた構造を有している。例えば、ノズル50の開口部50Aが形成されるノズルプレートと、圧力室52、供給口54、共通流路58等が形成される流路プレートと、振動板と、圧電素子とを、この順に積層させる態様が挙げられる。なお、上記した各プレートをさらに複数のプレートにより構成することも可能である。
【0042】
図6に示すように、インクジェットヘッド16には、圧電素子56が配設される空間を覆う気体室60が形成されている。気体室60は、圧電素子56のカバーとして機能するとともに、乾燥気体(詳細後述)が供給される空間と他の空間とを隔てる隔壁として機能する。
【0043】
ヘッドモジュール16Aごとに設けられている気体室60は、図5に図示した乾燥気体供給口62から乾燥気体が導入され、乾燥空気を充満させることができる。また、気体室60の容量を超える乾燥空気が導入されると、気体室60から気体回収口64を介して気体が外部へ回収される。
【0044】
気体室60は、ヘッドモジュール16Aに具備されるすべての圧電素子56を一体的に覆う構造としてもよいし、複数の区画を有する構造としてもよい。また、複数のヘッドモジュール16Aについて、1つの(一体の)気体室60が設けられる態様も可能である。
【0045】
気体室60が複数の領域に区画される構造の一例として、圧電素子56の配置に対応して気体室60を区画する態様が挙げられる。斜め方向(図5参照)に配置された圧電素子56の一列に一つの区画が適用される態様や、一つの区画が圧電素子56の列の複数列に対応する態様が可能である。
【0046】
気体室60は、インクジェットヘッド16を形成する際の積層プロセスを利用して形成されてもよいし、別途形成された気体室60をインクジェットヘッド16に接合させてもよい。
【0047】
〔乾燥気体供給部の説明〕
次に、インクジェットヘッド16の気体室60へ乾燥気体を供給する乾燥気体供給部について詳細に説明する。
【0048】
図7は、乾燥気体供給部70の概略構成を示すブロック図である。乾燥気体供給部70は、ベンチレーション機能(圧電素子56の周囲を低湿度状態とする機能)を実行するための手段として機能する。なお、以下の説明において、先に説明した部分と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0049】
同図に示す乾燥気体供給部70は、インクジェットヘッド16に設けられた気体室60に乾燥気体(例えば、空気)を供給して、圧電素子56の周囲の気体の露点が所定値以下に保たれるように構成されている。
【0050】
「乾燥気体」とは、露点がマイナス4.4度以下となる状態の気体であり、雰囲気中の湿気を吸収して、雰囲気中の湿度を下げる機能を発揮するものである。なお、「乾燥気体の露点」は、露点温度計により直接測定することにより求めてもよいし、気温と相対湿度から水蒸気圧を求め、その水蒸気圧を飽和水蒸気圧とする温度を求めることにより算出してもよい。
【0051】
すなわち、乾燥気体供給部70は、圧縮空気を生成するコンプレッサー72と、コンプレッサー72により生成された圧縮空気からゴミ等の異物を除去するフィルタ74と、フィルタ74により異物が除去された圧縮空気から乾燥空気を生成するエアドライヤ76と、を備えて構成されている。
【0052】
エアドライヤ76は、乾燥気体供給流路78により気体室60(乾燥気体供給口62)と連通されている。乾燥気体供給流路78は、供給バルブ80が設けられており、エアドライヤ76と気体室60との連通及び遮断を切り換えることができる。
【0053】
気体室60へ乾燥気体が供給されるときは供給バルブ80が開かれ、エアドライヤ76から気体室60へ乾燥気体が導入される。一方、気体室60への乾燥気体の供給が停止されると供給バルブ80が閉じられる。気体室60への乾燥気体の供給停止中に供給バルブ80が閉じられることで、低湿度状態となっている気体室60の中への湿気の浸入が防止される。
【0054】
気体室60の気体回収口64は回収流路82の一方の端と接続されており、回収流路82の他方の端は大気開放されている。回収流路82には回収バルブ84が設けられており、気体室60と大気との遮断及び連通を切り換えに構成されている。
【0055】
また、回収流路82の大気開放される端である気体の出口40は、図1に示すように、印字部17の外部に配置されており、気体室60から回収された湿気を含んでいる可能性がある気体が、印字部17やインクジェットヘッド16の液体吐出面の近傍に回り込んでしまうことによるインク吐出面の結露の発生が防止されるとともに、該気体の流れ(風)によって吐出されたインクが影響を受けることが防止される。
【0056】
先行技術文献(特許文献1)に開示されたインクジェット式記録装置では、ケース24から排出された高い湿度を有する空気によるノズル面の結露が懸念される。また、該空気の流れ(風)のノズル周辺への影響が懸念される。
【0057】
回収流路82の大気開放される端である気体の出口40が、印字部17の外部に配置されることで、かかる課題を解決しうる。
【0058】
気体室60へ乾燥気体が供給されるときは回収バルブ84が開かれ、気体室60の内部が高圧になることが防止される。気体室60への乾燥気体の供給が停止されると回収バルブ84が閉じられる。気体室60への乾燥気体の供給停止中に回収バルブ84が閉じられることで、低湿度状態となっている気体室60の中への大気からの湿気の逆流が防止される。
【0059】
また、回収流路82には湿度センサ86が設けられており、気体室60から回収された気体の湿度が検出され、湿度情報が取得される。湿度センサ86によって得られた湿度情報に基づいて、気体室60内の湿度が把握される。
【0060】
乾燥気体供給流路78のエアドライヤ76と供給バルブ80との間には、リリーフバルブ88が設けられている。気体室60の気体回収口64が詰まった場合など、気体室60内の圧力が所定値を超えた場合には、リリーフバルブ88が動作して乾燥気体供給流路78が大気開放され、気体室60等の破損が防止される。
【0061】
先行技術文献(特許文献1)に開示されたインクジェット式記録装置では、ケース24の排出口の詰まりが発生すると、ケース24の内部が高圧になってしまい、インクジェットヘッドを機械的に破損させてしまうおそれがある。乾燥気体供給流路78のエアドライヤ76と供給バルブ80との間にリリーフバルブ88が設けられることで、かかる課題を解決しうる。
【0062】
コンプレッサー72は、0.5メガパスカル(ニートン毎平方メートル)程度の圧縮空気をエアドライヤ76へ導入する。コンプレッサー72には空気を圧縮する際に発生する水を排出させるドレインが設けられている。
【0063】
フィルタ74は、空気中のほこりを除去するエアフィルタ、空気中の油成分を除去するオイルフィルタを含む構成を適用することができる。なお、フィルタ74がエアドライヤ76に内蔵される態様もありうる。フィルタ74には、水や捕獲されたほこりや油成分を排出させるドレインが設けられている。
【0064】
エアドライヤ76は、温度を下げることにより空気中の水分を除去する冷凍式エアドライヤが適用される。もちろん、吸湿式のエアドライヤを適用することも可能である。エアドライヤ76により生成された乾燥気体は、乾燥気体供給流路78を介して乾燥気体供給口62から気体室60へ導入される。
【0065】
乾燥気体供給流路78は、禁油処理されることが好ましい。また、気体室60よりも気体の流れ方向上流側の配管や流路部材は禁油処理されることが好ましい。
【0066】
乾燥気体供給流路78に設けられる供給バルブ80、及び回収流路82に設けられる回収バルブ84は、制御信号により開閉を制御することができる制御バルブ(例えば、電磁弁)が適用される。なお、供給バルブ80及び回収バルブ84に、手動により開閉をさせる手動弁を適用することも可能である。
【0067】
供給バルブ80及び回収バルブ84は、ノーマルクローズ式、ノーマルオープン式、ラッチ式など、いずれの形態も適用することができる。電源オフ時に閉じられるノーマルクローズ式は、電源オフ時に乾燥気体供給流路78と気体室60が遮断されるとともに、気体室60と回収流路82が遮断されるので、気体室60からの乾燥気体の流出及び気体室60への高湿度を有する気体の流入が防止され、好ましい。また、開放時に発熱の影響が少ないラッチ式がより好ましい。
【0068】
湿度センサ86は、気体室60に乾燥気体が供給されているか否かを監視するために設けられている。湿度センサ86の配置位置は、エアドライヤ76よりも気体の流れ方向の下流側であればよく、気体室60よりも気体の流れ方向の下流側であると、より好ましい。
【0069】
気体室60は、吸湿材90が設けられている。気体室60へ乾燥気体が供給されていないときに隙間から気体室60へ湿気が浸入しても、該湿気を吸収して気体室60内の湿度が一定に保たれる。吸湿材90は、気体室60を構成する壁に取り付けられる。また、吸湿材90は乾燥気体を流すことで所定の吸湿性能を回復させることができる。
【0070】
図7には、気体室60に吸湿材90が設けられる態様を図示したが、乾燥気体供給流路78に吸湿材90が設けられる態様や、気体室60及び乾燥気体供給流路78の両方に吸湿材90が設けられていてもよい。
【0071】
すなわち、吸湿材90は、供給バルブ80から回収バルブ84までの乾燥気体の経路(気体室60を含む)に設けられていればよい。
【0072】
本例では、気体室60に供給される乾燥気体として、乾燥した(除湿処理が施された)空気を例示したが、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを適用することも可能である。本例に適用される乾燥気体は、露点がマイナス15度以下とされ、気体室60内の気体の露点がマイナス4.4度以下とされている。
【0073】
上記した「乾燥気体の露点」の基準値は、加速試験により実験的に圧電素子56(図6参照)の寿命を見積もったときの環境条件から決めることができる。かかる試験の結果を〔表1〕に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
上記〔表1〕に示すように、環境温度が30度における相対湿度が40%(露点14.9度)の環境下において、圧電素子の寿命は約7.5年と見積もられる。
【0076】
かかる実試験結果によれば、圧電素子56の周囲を除湿するための乾燥空気の露点が15度(14.9度)以下であれば、実用上十分な圧電素子の寿命を得ることができるといえる。
【0077】
また、吸湿材90を内蔵したモジュール(図7のインクジェットヘッド16に対応する構造体)を用い、該モジュールに乾燥気体が充填され、かつ、乾燥気体の供給が止められた状態で該モジュールを水に浸漬させて、該モジュール内部の相対湿度を測定し、モジュール内部の空気の湿度が上記相対湿度40%に到達するまでの期間を評価し、以下の結果を得た。
【0078】
【表2】

【0079】
上記〔表2〕に示すように、乾燥気体の相対湿度が10%以下(露点がマイナス4.4度以下)であれば、乾燥気体の供給が3か月間停止されても、当該期間中のモジュール内部の空気の相対湿度は40%以下を保持でき、実用上十分な乾燥気体の供給停止期間を得ることができる。
【0080】
モジュールに供給された乾燥気体の相対湿度がより低いほど、モジュールに内蔵された吸湿材がより乾燥状態になるためと考えられる。
【0081】
すなわち、気体室60に供給される乾燥気体の露点がマイナス4.4度以下であれば、実用上十分な乾燥気体の供給停止期間を得ることができる。
【0082】
〔制御系の説明〕
図8は、インクジェット記録装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、通信インターフェース100、システム制御部102、搬送制御部104、画像処理部106、ヘッド駆動部108を備えるとともに、画像メモリ110、ROM112を備えている。
【0083】
通信インターフェース100は、ホストコンピュータ114から送られてくるラスター画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース100は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース100は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0084】
システム制御部102は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ110及びROM112のメモリコントローラとして機能する。
【0085】
すなわち、システム制御部102は、通信インターフェース100、搬送制御部104等の各部を制御し、ホストコンピュータ114との間の通信制御、画像メモリ110及びROM112の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0086】
ホストコンピュータ114から送出された画像データは通信インターフェース100を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、画像処理部106によって所定の画像処理が施される。
【0087】
画像処理部106は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッド駆動部108に供給する制御部である。
【0088】
画像処理部106において所要の信号処理が施されると、該印字データ(ハーフトーン画像データ)に基づいて、ヘッド駆動部108を介してインクジェットヘッド16の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。
【0089】
これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図8に示すヘッド駆動部108には、インクジェットヘッド16の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0090】
搬送制御部104は、画像処理部106により生成された印字データに基づいて記録媒体12(図1参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図8における搬送駆動部116は、記録媒体12を搬送する記録媒体搬送部14の駆動ローラ20(22)を駆動するモータが含まれており、搬送制御部104は該モータのドライバーとして機能している。
【0091】
画像メモリ(一時記憶メモリ)110は、通信インターフェース100を介して入力された画像データを一旦格納する一時記憶手段としての機能や、ROM112に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部106の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ110には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
【0092】
ROM112は、システム制御部102のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部102を通じてデータの読み書きが行われる。ROM112は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
【0093】
パラメータ記憶部118は、インクジェット記録装置10の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部102は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
【0094】
プログラム格納部120は、インクジェット記録装置10を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。システム制御部102(又は装置各部)は、装置各部の制御を実行する際にプログラム格納部120から必要な制御プログラムを読み出し、該制御プログラムは適宜実行される。
【0095】
表示部122は、システム制御部102から送出される各種情報を表示する手段であり、LCDモニタなどの汎用ディスプレイ装置が適用される。なお、表示部122の表示形態には、ランプの点灯(点滅、消灯)を適用してもよい。また、スピーカーなどの音(音声)出力手段を備えてもよい。
【0096】
入力インターフェース(I/F)124は、キーボード、マウス、ジョイスティックなどの情報入力手段が適用される。入力インターフェース124を介して入力された情報は、システム制御部102へ送出される。
【0097】
バルブ制御部126は、システム制御部102から送られた指令信号に基づいて、図7に図示した供給バルブ80及び回収バルブ84に制御信号を送出し、供給バルブ80及び回収バルブ84の開閉動作を制御する。
【0098】
乾燥気体生成制御部128は、システム制御部102から送られた指令信号に基づいて、図7に図示したコンプレッサー72、冷凍式エアドライヤ76に制御信号を送出して動作を制御する。
【0099】
すなわち、気体室60へ乾燥気体を生成するときは、コンプレッサー72を動作させて圧縮空気をエアドライヤ76へ導入させ、エアドライヤ76を動作させて乾燥気体が生成される。換言すると、コンプレッサー72及び冷凍式エアドライヤ76は、乾燥気体生成部として機能している。
【0100】
湿度センサ86は、気体室60から回収された気体の湿度を検出し、検出結果(湿度情報)がシステム制御部102へ送出される。システム制御部102は、湿度センサ86から取得した湿度情報に基づいて、気体室60内の湿度の異常の有無を判断する。気体室60に湿度の異常が発生している場合には、表示部122にエラーメッセージが表示される。
【0101】
〔ベンチレーション機能の説明〕
次に、本発明に係るインクジェット記録装置10(インクジェットヘッド16)に適用されるベンチレーション機能について詳説する。以下に示すベンチレーション機能は、インクジェットヘッド16に具備される圧電素子56の周囲環境を低湿度状態に保つことで、高湿度状態において生じやすい駆動電圧の印加による圧電素子56の性能劣化、破損を回避するものである。
【0102】
なお、低湿度状態とは、少なくとも印字部17(17’)の周囲湿度よりも低い状態であり、好ましくは露点がマイナス4.4度以下となる状態である。
【0103】
また、ベンチレーション機能が停止される際に、乾燥気体供給流路78の供給バルブ80及び回収流路82の回収バルブ84が閉じられることで、気体室60への乾燥気体の供給が停止されている期間では、気体室60への湿気の浸入が防止される。
【0104】
このように、乾燥気体の供給停止中において、気体室60内への湿気の浸入が防止されることで、ベンチレーション機能の停止中や、実行開始直後にインクジェットヘッド16(圧電素子56)が動作しても、動作開始の瞬間に圧電素子56が破損してしまうことが防止される。
【0105】
図9は、ベンチレーション機能の制御の流れを示すフローチャートである。以下に説明するベンチレーション機能は装置の電源オン時に開始され、インクジェットヘッドの通電中は常時実行される。なお、ベンチレーション機能は、インクジェットヘッドの電源オンよりも前に開始され、インクジェットヘッド16の電源オフよりも後に終了されればよい。
【0106】
なお、インクジェットヘッド16の動作中は、常時ベンチレーション機能が実行される。インクジェットヘッド16の動作とは、画像形成のためのインク吐出だけでなく、立ち上げ時のイニシャライズ動作や、画像形成休止中のメンテナンス動作等が含まれる。すなわち、圧電素子56の静定状態を維持するための電圧印加や、インクを吐出させない程度にメニスカスを振動させる際の電圧印加がされるなど、圧電素子56の上部電極56Aと下部電極56Bとの間に何らかの電圧が印加される場合も、インクジェットヘッド16の動作に含まれる。
【0107】
図9に示すように、ベンチレーション機能が開始されると(ステップS10)、図7に図示したコンプレッサー72が起動され(図9のステップS12)、図7のエアドライヤ76に圧縮空気が導入される。
【0108】
次に、エアドライヤ76が起動され(図9のステップS14)、所定量の乾燥気体が生成されるまで乾燥気体の生成を継続しつつ、待機状態となる(図9のステップS16)。所定量の乾燥気体が生成されると、供給バルブ80及び回収バルブ84が開かれる(ステップS18)。
【0109】
その後、図7の湿度センサ86の検出値と予め決められた規定値が比較される(図9のステップS20)。湿度センサ86の検出値が規定値以下であれば(Yes判定)、ステップS22に進み、気体室60内が乾燥気体に置換されたか否かが判断される。
【0110】
本例に係るベンチレーション機能では、湿度センサ86の検出値を気体室60の湿度とみなしている。なお、湿度センサ86の検出値に所定の係数を乗じた値を気体室60の湿度としてもよいし、湿度センサ86の検出値に所定の係数を加算した値を気体室60の湿度としてもよい。
【0111】
一方、ステップS20において、湿度センサ86の検出値が規定値を超えている(高湿度状態であり規定値以下にならない)場合には(No判定)、図9のステップS26に進み、湿度が所定の規定値を超える旨のエラーを通知してステップS28に進む。なお、ステップS20では、湿度センサ86の検出値が規定値を超えているか否かを複数回判断し、湿度センサ86の検出値が規定値を超えているという判断が規定回数連続すると何らかのエラーが発生していると判断される。
【0112】
エラー通知の例として、ステップS26では図7の表示部122にエラーメッセージを表示させる態様、音声による通知、異常を示すランプの点灯(点滅)などが挙げられる。
【0113】
ステップS26においてエラーが通知されると、ステップS28(ベンチレーション機能停止シーケンス)に進み、当該ベンチレーション機能は終了される(ステップS30)。
【0114】
ステップS22において、気体室60内が乾燥気体に置換されたと判断されると(Yes判定)、ステップS24に進む。一方、ステップS22において、気体室60内が乾燥気体に置換されていないと判断されると(No判定)、ステップS20に戻り、ステップS20、及びステップS22が繰り返し実行される。
【0115】
気体室60内が乾燥気体に置換されたか否かは、図7の乾燥気体供給流路78を流れる気体の流量、及び供給バルブ80が開かれてからの経過時間に基づいて把握される。例えば、気体室60へ供給された乾燥気体の体積が、気体室60の容積及び乾燥気体供給流路78(エアドライヤ76から気体室60へ至るまでの流路)の容積の100パーセント以上になった状態を、気体室60内が乾燥気体に置換された状態とすることができる。
【0116】
ステップS24では、気体室60内の湿度監視シーケンスが実行される。すなわち、当該制御がステップS24に移行されると、気体室60内が所定の低湿度状態となっているので、インクジェットヘッド16の電源がオンとされ、動作(圧電素子56への電圧印加)を開始させることができる。なお、ステップS24に示す湿度監視シーケンスの詳細は後述する。
【0117】
所定の停止条件を満たすと、湿度監視シーケンス(ステップS24)は終了される。湿度監視シーケンスが終了されると、ベンチレーション機能停止シーケンス(ステップS28)を経て、当該ベンチレーション機能は終了される(ステップS30)。
【0118】
なお、ベンチレーション機能の停止条件は、気体室60の湿度が規定値を超えた場合、インクジェット記録装置10の電源オフの場合などがある。
【0119】
図10は、図9の湿度監視シーケンス(ステップS24)のフローチャートである。図10に示す温度監視シーケンスが開始されると(ステップS100)、湿度センサ86の検出値が規定値以下であるか否かが判断される(ステップS102)。なお、ステップS102では、図9に図示したステップS20と同様に複数回の判定が行われる。また、ステップS102において判断基準となる規定値は、図9のステップS20で使用される規定値を適用してもよいし、別途規定値を設定してもよい。
【0120】
図10のステップS102において、湿度センサ86の検出値が規定値以下の場合には(Yes判定)、湿度センサ86による湿度検出及び湿度検出値と規定値との比較(気体室60の湿度監視)が継続される。一方、ステップS102において、湿度センサ86の検出値が規定値を超えた場合(No判定)は、エラーが通知され(ステップS104)、当該湿度監視シーケンスは終了される(ステップS106)。
【0121】
図11は、図9のステップS28に示すベンチレーション機能停止シーケンスのフローチャートである。ベンチレーション機能を停止させるときは、以下の手順に従う。
【0122】
ベンチレーション停止条件を満たすと、ベンチレーション機能停止シーケンスに移行する(ステップS200)。まず、図7のコンプレッサー72を停止させ(図11のステップS202)、図7のエアドライヤ76を停止させる(図11のステップS204)。次に、図7の供給バルブ80及び回収バルブ84を閉じ(図11のステップS206)、ベンチレーション機能の停止が完了する(ステップS208)。
【0123】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10によれば、インクジェットヘッド16を動作させる前に圧電素子56が収容される気体室60に乾燥気体が供給されて低湿度状態とされ、インクジェットヘッド16の通電中(少なくとも、圧電素子56への電圧印加中)は、気体室60の低湿度状態が維持される。気体室60への乾燥気体の供給が停止されると、供給バルブ80及び回収バルブ84が閉じられることで、低湿度状態とされた気体室60の中へ湿気が浸入することが防止される。
【0124】
また、気体室60への乾燥気体の供給を開始してから所定時間経過後に、圧電素子56へ電圧が印加されるので、乾燥気体が供給される前の気体室60が高湿状態であった場合でも、低湿度状態に移行した後に圧電素子56へ電圧が印加され、該圧電素子56の破損や性能劣化が防止される。
【0125】
さらに、回収流路82の大気連通側の出口40が印字部17の外部に配置されることで、出口40から排出された気体によるインク吐出面の結露や、該気体の流れがインク吐出へ影響することが防止される。
【0126】
さらにまた、乾燥気体供給流路78にリリーフバルブ88が接続されるので、気体回収口64や回収流路82が詰まって気体室60の内部が高圧状態になった場合にも、気体室60及び乾燥気体供給流路78等の破損が防止される。
【0127】
また、気体室60の内部に吸湿材90を備えることで、乾燥気体の供給停止中に気体室60内に浸入した湿気が除去される。
【0128】
〔乾燥気体供給部の変形例〕
次に、上述した乾燥気体供給部70の変形例について説明する。
【0129】
(第1変形例)
図12は、フィルタ式エアドライヤ76’を備えた乾燥気体供給部70’の概略構成を示すブロック図である。同図に示す乾燥気体供給部70’は、フィルタ式エアドライヤ76’と供給バルブ80との間にレギュレータ77を備え、レギュレータ77には圧力ゲージ9が取り付けられている。また、図7に図示した湿度センサ86に代わり、流量センサ87が設けられている。
【0130】
図12に示すフィルタ式エアドライヤ76’は、水分のみを選択的に通過させる性質を有する特殊な樹脂でできた多数の中空糸を備え、圧縮空気がこの中空糸を通過する際に水分のみを中空糸の外部へ通過させることにより、空気中の水分を除去するように構成されている。
【0131】
フィルタ式エアドライヤ76’を備える態様では、より高い圧力が必要となるので、フィルタ式エアドライヤ76’の気体の流れ方向下流側にレギュレータ77(圧力ゲージ79)が必要となる。また、かかる態様では、乾燥気体が流れていれば低湿度状態を保つことができるので、図7に示す湿度センサ86に代わり流量センサ87が設けられている。
【0132】
図13は、第1変形例に係るベンチレーション機能のフローチャートである。図13に示すフローチャートでは、図9のステップS14が省略されるとともに、ステップS20がステップS20’変更されている。すなわち、フィルタ式エアドライヤ76’は起動が不要であるので、エアドライヤ起動工程(図9のステップS14)が省略され、湿度センサ86に代わり流量センサ87が設けられているので、ステップS20’において流量センサ87により検出される気体室60から回収される気体の流量が規定値を以上であるか否かが判断される。
【0133】
ステップS20’において、流量センサ87により検出される流量値が規定値未満の場合には(No判定)、気体室60は所定の低湿度状態になっていないと判断され、ステップS26に進み、エラーが通知される。
【0134】
一方、ステップS20’において、流量センサ87により検出される流量値が規定値以上の場合には(Yes判定)、気体室60は所定の低湿度状態になっていると判断され、ステップS22へ進む。なお、ステップS20’では、図9に図示したステップS20と同様に複数回の判定が行われ、所定回数連続して流量センサ87により検出される流量値が規定値未満となる場合にステップS26へ進むように構成される。
【0135】
図14は、第1変形例に係る湿度監視シーケンスのフローチャートである。図14に示すフローチャートでは、図10のステップS102がステップS102’に変更されている。すなわち、図10のステップS102における気体室60から回収される気体の湿度検出に代わり、気体室60から回収される気体の流量検出が行われ、検出された気体の流量値が規定値未満の場合には、気体室60は所定の低湿度状態になっていないと判断され、ステップS104に進み(No判定)、エラーが通知される。
【0136】
一方、ステップS102’において、検出された気体の流量値が規定値以上の場合には(Yes判定)、気体室60は所定の低湿度状態になっていると判断され、気体室60から回収される気体の流量検出が再度実行される(ステップS102’)。なお、ステップS102’では、図9に図示したステップS20、図13に図示したステップS20’と同様に複数回の判定が行われ、所定回数連続して流量センサ87により検出される流量値が規定値未満となる場合にステップS104へ進むように構成される。
【0137】
かかる第1変形例によれば、冷凍式エアドライヤ76に代わりフィルタ式エアドライヤ76’を備えることで、エアドライヤ起動工程を省略することができる。また、湿度センサ86に代わり流量センサ87を備えることで、気体室60から回収される気体の流量に基づいて気体室60内の湿度を把握することができる。
【0138】
(第2変形例)
次に、乾燥気体供給部の第2変形例について説明する。図15は、複数のインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yを備え、各インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yについて気体室60K,60C,60M,60Yを備えた態様における、乾燥気体供給部70”の概略構成を示すブロック図である。
【0139】
図15に示す乾燥気体供給部70”は、図12に図示した乾燥気体供給部70’に対して、供給側マニホールド92及び回収側マニホールド94が追加されている。供給側マニホールド92は、乾燥気体供給流路78を4つのインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yに対応する気体室60K,60C,60M,60Yへ分配する分配手段として機能している。また、回収側マニホールド94は、気体室60K,60C,60M,60Yを回収流路82へ統合させる統合手段として機能している。
【0140】
なお、供給側マニホールド92及び回収側マニホールド94を継ぎ手により代用することも可能である。
【0141】
図15に図示した構成は、図4に図示した1つのヘッドが複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせて形成される態様にも適用可能である。すなわち、乾燥気体供給流路を複数のヘッドモジュールに対応する複数の気体室へ分配する供給側マニホールド(または、継ぎ手)と、複数の気体室を回収流路へ統合する回収側マニホールド(または、継ぎ手)と、を備える態様がありうる。
【0142】
かかる第2変形例によれば、複数のインクジェットヘッドを備える態様、及び複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドを備える態様において、各インクジェットヘッド、ヘッドモジュールへ乾燥気体を均一に分配することができ、かつ、各インクジェットヘッド、ヘッドモジュールから気体を回収させることができる。
【0143】
図15に示す態様では、供給側マニホールド92の気体の流れ方向の上流側に供給バルブ80が設けられ、回収側マニホールド94の気体の流れ方向下流側に回収バルブ84が設けられているが、供給側マニホールド92とインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yとの間のそれぞれに供給バルブを備える態様や、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yと回収側マニホールド94との間のそれぞれに回収バルブを備える態様も可能である。
【0144】
なお、図15に示す乾燥気体供給部70”のフィルタ式エアドライヤ76’に代わり、冷凍式エアドライヤ76を備える態様(図7参照)も可能である。また、制御フローチャートは、図9から図11、図13,24に図示したフローチャートを適宜適用することができる。さらに、図7に図示した吸湿材90が供給側マニホールド92や回収側マニホールド94に設けられる態様もありうる。
【0145】
〔装置の変形例〕
次に、装置の変形例について説明する。図16は、本変形例に係るインクジェット記録装置10”の概略構成を示す全体構成図である。同図に示すインクジェット記録装置10”は、圧胴14”の外周面14A”に記録媒体12を固定して、圧胴14”を回転させることで圧胴14”の外周面14A”に沿って記録媒体を回転搬送させる圧胴搬送方式が適用されている。
【0146】
インクジェットヘッド16K”,16C”,16M”,16Y”は、圧胴14”の外周面に沿って、水平面に対して斜めに傾けられて配置される。なお、インクジェットヘッド16K”,16C”,16M”,16Y”は、図1に図示したインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yの構成を適用することができる。
【0147】
不図示の給紙部から送り出された記録媒体12は、渡し胴15Aに保持され、圧胴14”に受け渡される。画像形成がされた記録媒体12は、圧胴14”から後段側の渡し胴15Bへ受け渡される。
【0148】
なお、図16に図示されたインクジェット記録装置10”には、画像形成の前工程(記録媒体の前処理工程等)や後工程(乾燥工程、定着工程等)を追加してもよい。
【0149】
本発明の実施形態及び変形例では、記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置に具備されるインクジェットヘッドのインク吐出面の異常検出を例に挙げて説明したが、本発明の適用範囲はインクジェット記録装置に限定されない。
【0150】
例えば、樹脂粒子や金属粒子を含有する機能性液体により、所定のパターン(マスクパターン、配線パターン)を形成するパターン形成装置なと、インクジェット方式により媒体上に液体を噴射させる液体吐出装置に広く適用することが可能である。
【0151】
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。
【0152】
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す態様を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0153】
(第1態様):液体を吐出させるノズルと、前記ノズルと連通する圧力室と、前記圧力室を構成する壁の前記圧力室の外側に取り付けられ、前記圧力室内の液体を加圧する圧電素子と、前記圧電素子及び前記圧電素子の周囲の空間を囲む気体室と、を具備するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの周囲の露点以下の乾燥気体を生成するとともに、前記インクジェットヘッドの通電開始前に前記気体室への乾燥気体の供給が開始され、前記インクジェットヘッドの通電中は前記気体室への乾燥気体の供給が継続され、前記インクジェットヘッドの通電停止後に前記気体室への乾燥気体の供給が停止される乾燥気体供給手段と、一方の端は前記乾燥気体供給手段と連通され、他方の端は前記気体室と連通される乾燥気体供給流路と、前記乾燥気体供給流路に設けられ、前記乾燥気体供給手段と前記気体室との連通、遮断を切り換える乾燥気体供給流路開閉手段と、一方の端は前記気体室と連通され、他方の端は大気開放される気体回収流路と、前記気体回収流路に設けられ、前記気体室と大気との連通と非連通とを切り換える気体回収流路開閉手段と、前記乾燥気体供給手段から前記気体室への乾燥気体の供給停止中は、前記乾燥気体供給流路開閉手段を閉じて前記乾燥気体供給手段と前記気体室とを遮断するとともに、前記気体回収流路開閉手段を閉じて前記気体室と大気とを遮断するように前記乾燥気体供給流路開閉手段及び前記気体回収流路開閉手段を制御する開閉制御手段と、を備えた液体吐出装置。
【0154】
第1の態様によれば、インクジェットヘッドに具備される圧電素子及び該圧電素子の周囲へ乾燥気体を供給して該圧電素子の周囲の露点を下げることで、圧電素子への電圧印加による劣化を防止する液体吐出装置において、乾燥気体の供給停止中は気体室と連通される乾燥気体供給流路及び気体回収流路が閉じられるので、乾燥気体の供給停止中に湿気が含まれる気体が気体室内へ浸入することが防止される。
【0155】
(第2態様):第2態様に係る液体吐出装置は、前記開閉制御手段は、前記乾燥気体供給手段による乾燥気体の生成が開始されてから所定時間経過後に前記乾燥気体供給流路開閉手段を開いて、前記気体室内へ乾燥気体を導入する。
【0156】
かかる態様によれば、気体室への乾燥気体の導入前に、気体室に高湿度の気体が侵入することが防止される。
【0157】
(第3態様):第3態様に係る液体吐出装置は、前記乾燥気体供給手段から前記気体室への乾燥気体の供給が開始されてから所定時間経過後に、前記圧電素子への駆動電圧の印加を開始する駆動電圧印加手段を備えている。
【0158】
かかる態様によれば、乾燥気体が導入される前の気体室が高湿度状態の場合でも、圧電素子への駆動電圧の印加時までに所定の低湿度状態とされ、圧電素子への駆動電圧の印加時における圧電素子の破損が防止される。
【0159】
(第4態様):第4態様に係る液体吐出装置は、前記気体室内の湿度を検出する湿度検出手段を備え、前記駆動電圧印加手段は、前記検出された湿度が所定の規定値以下となった後に、前記圧電素子へ駆動電圧を印加する。
【0160】
かかる態様によれば、気体室の湿度が所定の規定値以下になった後に圧電素子へ駆動電圧を印加することで、駆動電圧印加時における圧電素子の破損が確実に防止される。
【0161】
(第5態様):第5態様に係る液体吐出装置は、前記湿度検出手段は、前記乾燥気体供給手段よりも前記乾燥気体の流れ方向の下流側に配設される湿度検出装置を含んでいる。
【0162】
かかる態様において、気体室から回収される気体の湿度に基づいて、気体室の湿度を把握しうる。
【0163】
(第6態様):第6態様に係る液体吐出装置は、前記気体室、前記乾燥気体供給流路及び前記気体回収流路の少なくともいずれかに吸湿材が設けられている。
【0164】
かかる態様によれば、乾燥気体の供給が停止されている場合に気体室内に湿気が浸入したとしても、該湿気を除去することが可能となる。
【0165】
(第7態様):第7態様に係る液体吐出装置は、前記乾燥気体供給流路にリリーフ弁が配設される構造を有している。
【0166】
かかる態様によれば、気体回収流路の詰まりなどにより気体室内の圧力が上昇しても、リリーフ弁の動作により、気体室や乾燥気体供給流路の破損が防止される。
【0167】
(第8態様):第8態様に係る液体吐出装置は、複数の前記インクジェットヘッドを具備し、前記乾燥気体供給流路と連通され、前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれと連通される複数の乾燥気体分配手段を備えている。
【0168】
(第9態様):第9態様に係る液体吐出装置は、前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれと連通され、前記気体回収流路と連通する気体統合手段を備えている。
【0169】
(第10態様):第10態様に係る液体吐出装置は、前記インクジェットヘッドは、複数のヘッドモジュールを含み、前記乾燥気体供給流路と連通され、前記複数のヘッドモジュールのそれぞれと連通される複数の乾燥気体分配手段を備えている。
【0170】
第8態様及び第10態様における乾燥気体分配手段の具体例として、マニホールド、継ぎ手が挙げられる。
【0171】
(第11態様):第11態様に係る液体吐出装置は、前記複数のヘッドモジュールのそれぞれと連通され、前記気体回収流路と連通する気体統合手段を備えている。
【0172】
第9態様及び第11態様における気体統合手段の具体例として、マニホールド、継ぎ手が挙げられる。
【0173】
(第12態様):第12態様に係る液体吐出装置は、前記乾燥気体分配手段及び前記気体統合手段の少なくともいずれかに吸湿材が設けられている。
【0174】
かかる態様によれば、乾燥気体の供給が停止されている場合に乾燥気体分配手段又は前記気体統合手段内に湿気が浸入したとしても、該湿気を除去することが可能となる。
【0175】
(第13態様):第13態様に係る液体吐出装置は、前記乾燥気体供給手段は、気体を圧縮する圧縮装置と、前記圧縮された気体の異物を捕獲するフィルタと、前記フィルタを通過した圧縮された気体から水分を除去するエアドライヤと、備えている。
【0176】
かかる態様におけるエアドライヤにフィルタが内蔵される態様もありうる。
【0177】
(第14態様):第14態様に係る液体吐出装置は、前記乾燥気体供給手段は、フィルタ式エアドライヤを含み、前記フィルタ式エアドライヤと前記インクジェットヘッドとの間にレギュレータが設けられている。
【0178】
かかる態様によれば、フィルタ式エアドライヤを適用することで、エアドライヤオンオフの制御が不要となる。
【0179】
(第15態様):第15態様に係る液体吐出装置は、前記フィルタ式のエアドライヤの前記乾燥気体の流れ方向下流側に流量センサ又は湿度検出素子を備えている。
【0180】
かかる態様によれば、乾燥気体がエアドライヤから供給されない異常状態を検出しうる。
【0181】
(第16態様):第16態様に係る液体吐出装置は、前記乾燥気体供給流路は、禁油処理されている。
【0182】
かかる態様によれば、気体室内へほこりなどの異物が混入することが防止される。
【0183】
(第17態様):第17態様に係る液体吐出装置は、前記気体回収流路の前記他方の端は、前記気体室から流出した乾燥気体を排出させる気体出口が設けられ、前記気体出口は、前記インクジェットヘッドが配設される印字部の外部に配置されている。
【0184】
かかる態様によれば、気体室から排出された気体によるインクジェットヘッド(特に、液体吐出面)の結露や、吐出させた液体へ気体の流れ(風)が影響を及ぼすことが防止される。
【0185】
(第18態様):第18態様に係る液体吐出装置は、前記乾燥気体の露点は15度以下である。
【0186】
かかる態様によれば、気体室内が低湿度状態に保たれるので、圧電素子の所定の寿命を確保しうる。
【0187】
(第19態様):第19態様に係る液体吐出装置は、前記乾燥気体供給流路開閉手段又は前記気体回収流路開閉手段は、電源が供給されていない状態で閉じられるノーマルクローズ式の制御弁である。
【0188】
かかる態様によれば、乾燥気体供給流路開閉手段、気体回収流路開閉手段の電源がオフになった状態で乾燥気体供給流路、気体回収流路が閉じられるので、電源オフ時に気体室からの乾燥気体の流出が防止されるとともに、気体室への高い湿度を有する気体の流入が防止される。
【0189】
(第20態様):第20態様に係る液体吐出装置は、前記乾燥気体供給流路開閉手段又は前記気体回収流路開閉手段は、ラッチ式の制御弁である。
【0190】
かかる態様によれば、乾燥気体供給流路開閉手段、気体回収流路開閉手段が開放されたときの乾燥気体供給流路開閉手段、気体回収流路開閉手段の発熱の影響が少なくなる。
【0191】
(第21態様):液体を吐出させるノズルと、前記ノズルと連通する圧力室と、前記圧力室を構成する壁の前記圧力室の外側に取り付けられ、前記圧力室内の液体を加圧する圧電素子と、前記圧電素子及び前記圧電素子の周囲の空間を囲む気体室と、を具備するインクジェットヘッドの通電開始前に、前記気体室へ前記インクジェットヘッドの周囲の露点以下の乾燥気体の供給が開始され、前記インクジェットヘッドの通電中は前記気体室への前記乾燥気体の供給が継続され、前記インクジェットヘッドの通電停止後に前記気体室への前記乾燥気体の供給が停止され、前記気体室への前記乾燥気体の供給停止中は、前記気体室と連通される乾燥気体供給流路に設けられる乾燥気体供給流路開閉手段が閉じられて、前記乾燥気体供給手段と前記気体室とが遮断され、かつ、前記気体室への前記乾燥気体の供給停止中は、前記気体室と連通される気体回収流路に設けられる気体回収流路開閉手段が閉じられて、前記気体室と大気とが遮断されるインクジェットヘッドの駆動方法。
【0192】
かかる態様において、気体室内の湿度を検出する湿度検出工程、該湿度検出工程の検出結果に基づき、気体室の湿度の異常の有無を判断する判断工程、該判断工程により気体室の湿度が異常であると判断された場合に、その旨を報知する報知工程、を含む態様がありうる。
【符号の説明】
【0193】
10,10’,10”…インクジェット記録装置、16,16K,16C,16M,16Y…インクジェットヘッド、16A…ヘッドモジュール、40…出口、60…気体室、70,70’,70”…乾燥気体供給部、72…コンプレッサー、74…フィルタ、76…エアドライヤ、77…レギュレータ、78…乾燥気体供給流路、79…圧力ゲージ、80…供給バルブ、82…回収流路、84…回収バルブ、86…湿度センサ、87…流量センサ、88…リリーフバルブ、102…システム制御部、108…ヘッド駆動部、126…バルブ制御部、128…乾燥気体生成制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出させるノズルと、前記ノズルと連通する圧力室と、前記圧力室を構成する壁の前記圧力室の外側に取り付けられ、前記圧力室内の液体を加圧する圧電素子と、前記圧電素子及び前記圧電素子の周囲の空間を囲む気体室と、を具備するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの周囲の露点以下の乾燥気体を生成するとともに、前記インクジェットヘッドの通電開始前に前記気体室への乾燥気体の供給が開始され、前記インクジェットヘッドの通電中は前記気体室への乾燥気体の供給が継続され、前記インクジェットヘッドの通電停止後に前記気体室への乾燥気体の供給が停止される乾燥気体供給手段と、
一方の端は前記乾燥気体供給手段と連通され、他方の端は前記気体室と連通される乾燥気体供給流路と、
前記乾燥気体供給流路に設けられ、前記乾燥気体供給手段と前記気体室との連通、遮断を切り換える乾燥気体供給流路開閉手段と、
一方の端は前記気体室と連通され、他方の端は大気開放される気体回収流路と、
前記気体回収流路に設けられ、前記気体室と大気との連通と非連通とを切り換える気体回収流路開閉手段と、
前記乾燥気体供給手段から前記気体室への乾燥気体の供給停止中は、前記乾燥気体供給流路開閉手段を閉じて前記乾燥気体供給手段と前記気体室とを遮断するとともに、前記気体回収流路開閉手段を閉じて前記気体室と大気とを遮断するように前記乾燥気体供給流路開閉手段及び前記気体回収流路開閉手段を制御する開閉制御手段と、
を備えた液体吐出装置。
【請求項2】
前記開閉制御手段は、前記乾燥気体供給手段による乾燥気体の生成が開始されてから所定時間経過後に前記乾燥気体供給流路開閉手段を開いて、前記気体室内へ乾燥気体を導入する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記乾燥気体供給手段から前記気体室への乾燥気体の供給が開始されてから所定時間経過後に、前記圧電素子への駆動電圧の印加を開始する駆動電圧印加手段を備えた請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記気体室内の湿度を検出する湿度検出手段を備え、
前記駆動電圧印加手段は、前記検出された湿度が所定の規定値以下となった後に、前記圧電素子へ駆動電圧を印加する請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記湿度検出手段は、前記乾燥気体供給手段よりも前記乾燥気体の流れ方向の下流側に配設される湿度検出装置を含む請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記気体室、前記乾燥気体供給流路及び前記気体回収流路の少なくともいずれかに吸湿材が設けられる請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記乾燥気体供給流路にリリーフ弁が配設される構造を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
複数の前記インクジェットヘッドを具備し、
前記乾燥気体供給流路と連通され、前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれと連通される複数の乾燥気体分配手段を備えた請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれと連通され、前記気体回収流路と連通する気体統合手段を備えた請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記インクジェットヘッドは、複数のヘッドモジュールを含み、
前記乾燥気体供給流路と連通され、前記複数のヘッドモジュールのそれぞれと連通される複数の乾燥気体分配手段を備えた請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記複数のヘッドモジュールのそれぞれと連通され、前記気体回収流路と連通する気体統合手段を備えた請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記乾燥気体分配手段及び前記気体統合手段の少なくともいずれかに吸湿材が設けられる請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記乾燥気体供給手段は、気体を圧縮する圧縮装置と、
前記圧縮された気体の異物を捕獲するフィルタと、
前記フィルタを通過した圧縮された気体から水分を除去するエアドライヤと、
備えた請求項1から12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記乾燥気体供給手段は、フィルタ式エアドライヤを含み、
前記フィルタ式エアドライヤと前記インクジェットヘッドとの間にレギュレータが設けられる請求項1から12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記フィルタ式のエアドライヤの前記乾燥気体の流れ方向下流側に流量センサ又は湿度検出素子を備えた請求項14に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記乾燥気体供給流路は、禁油処理されている請求項1乃至15のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記気体回収流路の前記他方の端は、前記気体室から流出した乾燥気体を排出させる気体出口が設けられ、
前記気体出口は、前記インクジェットヘッドが配設される印字部の外部に配置される請求項1から16のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
前記乾燥気体の露点は15度以下である請求項1から17のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項19】
前記乾燥気体供給流路開閉手段又は前記気体回収流路開閉手段は、電源が供給されていない状態で閉じられるノーマルクローズ式の制御弁である請求項1から18のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項20】
前記乾燥気体供給流路開閉手段又は前記気体回収流路開閉手段は、ラッチ式の制御弁である請求項1から18のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項21】
液体を吐出させるノズルと、前記ノズルと連通する圧力室と、前記圧力室を構成する壁の前記圧力室の外側に取り付けられ、前記圧力室内の液体を加圧する圧電素子と、前記圧電素子及び前記圧電素子の周囲の空間を囲む気体室と、を具備するインクジェットヘッドの通電開始前に、前記気体室へ前記インクジェットヘッドの周囲の露点以下の乾燥気体の供給が開始され、
前記インクジェットヘッドの通電中は前記気体室への前記乾燥気体の供給が継続され、
前記インクジェットヘッドの通電停止後に前記気体室への前記乾燥気体の供給が停止され、
前記気体室への前記乾燥気体の供給停止中は、前記気体室と連通される乾燥気体供給流路に設けられる乾燥気体供給流路開閉手段が閉じられて、前記乾燥気体供給手段と前記気体室とが遮断され、かつ、
前記気体室への前記乾燥気体の供給停止中は、前記気体室と連通される気体回収流路に設けられる気体回収流路開閉手段が閉じられて、前記気体室と大気とが遮断されるインクジェットヘッドの駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−103452(P2013−103452A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249971(P2011−249971)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】