説明

液体吐出装置及び液体吐出方法

【課題】ノズルから吐出される液体の温度を目標温度に近づけるようにして、印刷画質を安定させる。
【解決手段】本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有するヘッド部と、前記ヘッド部に設けられ、温度を検出するための温度センサーと、前記ヘッド部に供給される液体を予め目標温度の範囲内に加熱する加熱部と、前記温度センサーの検出温度が前記目標温度の範囲外となったときに、前記ノズルから液体を吐出してフラッシングを行うフラッシング動作を前記ヘッド部に実行させた後、前記ノズルから液体を吐出して印刷を行う印刷動作を前記ヘッド部に実行させるコントローラーと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例として、紙やフィルム等の各種媒体にインク等の液体を吐出して、画像の印刷を行うインクジェットプリンターが知られている。このインクジェットプリンターは、ヘッド制御回路が駆動素子に駆動信号を印加することにより、ヘッド内に供給された液体をノズルから吐出させるものである(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−82969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このインクジェットプリンターでは、駆動素子に駆動信号が印加されるときに生じるヘッド制御回路の発熱等により、ヘッド内に供給された液体の温度が変化する場合がある。このような温度変化が生じると、液体の温度が高いときと低いときでノズルから吐出される液体の粘性に差異が生じることになるため、印刷画質が安定しないものになってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ノズルから吐出される液体の温度を目標温度に近づけるようにして、印刷画質を安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための主たる発明は、
液体を吐出するノズルを有するヘッド部と、
前記ヘッド部に設けられ、温度を検出するための温度センサーと、
前記ヘッド部に供給される液体を予め目標温度の範囲内に加熱する加熱部と、
前記温度センサーの検出温度が前記目標温度の範囲外となったときに、前記ノズルから液体を吐出してフラッシングを行うフラッシング動作を前記ヘッド部に実行させた後、前記ノズルから液体を吐出して印刷を行う印刷動作を前記ヘッド部に実行させるコントローラーと、
を有することを特徴とする液体吐出装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリンター1の構成を示すブロック図である。
【図2】プリンター1のヘッド31周辺の概略図である。
【図3】キャリッジ21の横面の概略図である。
【図4】図4A及び図4Bは、キャリッジ21とインクカートリッジ37との位置関係を示す概略図である。
【図5】ヘッド31のノズルの概略図である。
【図6】ヘッド31のノズル群の周辺の断面図である。
【図7】ヘッド制御部HCのブロック図である。
【図8】各信号のタイミングを説明する説明図である。
【図9】プリンター1の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0009】
即ち、液体を吐出するノズルを有するヘッド部と、
前記ヘッド部に設けられ、温度を検出するための温度センサーと、
前記ヘッド部に供給される液体を予め目標温度の範囲内に加熱する加熱部と、
前記温度センサーの検出温度が前記目標温度の範囲外となったときに、前記ノズルから液体を吐出してフラッシングを行うフラッシング動作を前記ヘッド部に実行させた後、前記ノズルから液体を吐出して印刷を行う印刷動作を前記ヘッド部に実行させるコントローラーと、
を有することを特徴とする液体吐出装置である。
このような液体吐出装置によれば、印刷動作前にフラッシング動作を行うことにより目標温度の範囲外の液体が予め吐出されることになるため、印刷動作時においては目標温度の範囲内の液体を吐出することができ、印刷画質を安定させることができる。
【0010】
また、かかる液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記フラッシング動作を前記ヘッド部に実行させるときに、前記ヘッド部内の流路に存在する供給済みの液体を前記ノズルから吐出させることとしてもよい。
このような液体吐出装置によれば、フラッシング動作の際に、ヘッド部内の供給済みの液体を廃液とすることができる。
【0011】
また、液体を吐出するノズルを有するヘッド部と、前記ヘッド部に設けられ、温度を検出するための温度センサーと、前記ヘッド部に供給される液体を予め目標温度の範囲内に加熱する加熱部と、コントローラーと、を備える液体吐出装置を準備することと、
前記コントローラーが、前記温度センサーの検出温度が前記目標温度の範囲外となったときに、前記ノズル液体をから吐出してフラッシングを行うフラッシング動作を前記ヘッド部に実行させた後、前記ノズルから液体を吐出して印刷を行う印刷動作を前記ヘッド部に実行させることと、
を有することを特徴とする液体吐出方法である。
このような液体吐出方法によれば、印刷動作前にフラッシング動作を行うことにより目標温度の範囲外の液体が予め吐出されることになるため、印刷動作時においては目標温度の範囲内の液体を吐出することができ、印刷画質を安定させることができる。
【0012】
===実施の形態===
<<<プリンター1の構成例について>>>
以下、図1乃至図5を参照しながら液体吐出装置の一例としてのプリンター1について説明する。図1は、プリンター1の構成を示すブロック図である。図2は、プリンター1のヘッド周辺の概略図である。図3は、キャリッジ21の横面の概略図である。図4A及び図4Bは、キャリッジ21とインクカートリッジ37との位置関係を示す概略図である。図5は、ヘッド31のノズルの概略図である。図6は、ヘッド31のうちのノズル群の周辺の断面図である。ここでは、図の紙面に向かう方向に複数のノズルが並ぶようなノズル群の断面を示している。また、ヘッド31の上方には加熱ユニット80の断面図を示している。
【0013】
プリンター1は、紙、フィルム等の媒体に向けて、電磁波の一例としての紫外線(以下、UV)の照射によって硬化する電磁波硬化型インクの一例としての紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を吐出することにより、媒体に画像を印刷する装置である。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。なお、本実施形態のプリンター1は、CMYKの4色のUVインクを用いて画像を印刷する。
【0014】
プリンター1は、搬送部の一例としての搬送ユニット10、移動部の一例としてのキャリッジユニット20、ヘッド部の一例としてのヘッドユニット30、インク供給部の一例としてのインク供給ユニット35、照射ユニット40、検出器群50、コントローラー60、及び加熱部の一例としての加熱ユニット80を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、インク供給ユニット35、照射ユニット40、加熱ユニット80)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0015】
搬送ユニット10は、媒体を搬送方向に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、図3に示すように、給紙ローラー(不図示)と、搬送ローラー13と、プラテン14と、排紙ローラー15とを有する。給紙ローラーは、紙挿入口に挿入された媒体をプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー13は、給紙ローラーによって給紙された媒体を印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーターによって駆動される。プラテン14は、印刷中の媒体を支持する。排紙ローラー15は、媒体をプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0016】
キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター(不図示)とを有する。キャリッジ21は、図2及び図3に示すように、後述するヘッド31、仮硬化用照射部41、42及び加熱ユニット80を備えており、当該ヘッド31、仮硬化用照射部41、42及び加熱ユニット80を移動方向に移動させるためのものである。
【0017】
すなわち、キャリッジ21は、キャリッジモーターによって駆動されて移動方向に移動する。そして、キャリッジ21の当該移動により、当該キャリッジ21に設けられたヘッド31、仮硬化用照射部41、42及び加熱ユニット80も移動することとなる。なお、キャリッジ21は、図2乃至図4Bに示すように、移動方向に沿ったガイド軸24に支持されており、ガイド軸24に沿って往復移動する。
【0018】
ヘッドユニット30は、複数のノズルを有するヘッド31を備える。このヘッド31は、媒体にUVインクを吐出するものである。ヘッド31は、キャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が前記移動方向に移動すると、ヘッド31も前記移動方向に移動する。そして、ヘッド31が前記移動方向に移動しながらUVインクを断続的に吐出することによって、前記移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が媒体に形成される。なお、以下、ヘッド31の移動について、図2の一端側から他端側に向かって移動することを往動と呼び、他端側から一端側に移動することを復動と呼ぶ。本実施形態では、往動の期間中及び復動の期間中にUVインクの吐出が行われる。すなわち、本実施の形態に係るプリンター1は双方向印刷を行う。
【0019】
ヘッド31の下面にはUVインクを吐出するための複数のノズルが設けられている。本実施形態のヘッド31は、図5に示すように、CMYKのインク色毎に複数のノズルを有する。複数のノズルは、一定のノズルピッチで、前記搬送方向に並んでいる。このようにヘッド31には、CMYK4色分のノズル列Nc、Nm、Ny、Nkが形成されている。
【0020】
本実施形態では、各ノズル列には、搬送方向に並ぶ180個のノズルがノズルピッチD(例えば360dpi)で設けられている。また、各ノズル列のノズルには、搬送方向下流側のノズルほど若い番号が付されている。各ノズルには、各ノズルからUVインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。このピエゾ素子を駆動信号によって駆動させることにより、前記各ノズルから滴状のUVインクが噴射される。吐出されたUVインクは、媒体に着弾してドットを形成する。
なお、ヘッドユニット30の詳細については後述する。
【0021】
インク供給ユニット35は、インクカートリッジ37を有する。このインクカートリッジ37は、UVインクを貯留しており、ヘッド31によるUVインクの吐出に起因してヘッド31内のUVインクの量が減った際に、ヘッド31へUVインクを供給(補給)する役割を果たす。インクカートリッジ37は、本実施の形態においては、図4A及び図4Bに示すように、プリンター1の筐体1aの前記移動方向における中央部に着脱可能に設けられている。なお、図を分かり易くするために、図4A及び図4Bには、一つのインクカートリッジ37のみが表されているが、インクカートリッジ37は、UVインクの色毎に設けられている(本実施の形態においては、CMYKの4色なので、4つのインクカートリッジ37が存在する)。
【0022】
照射ユニット40は、媒体に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。媒体上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることにより、硬化する。本実施形態の照射ユニット40は、ヘッド31により吐出された媒体上のUVインクにUVを照射して、UVインクを仮硬化させる仮硬化用照射部41、42と前記媒体上のUVインクにUVを照射して、UVインクを本硬化させる本硬化用照射部43とを備えている。なお、仮硬化とは、媒体に着弾したUVインクの流動(ドットの広がり)を抑えるためのものであり、本硬化とは、UVインクを完全に硬化させるためのものである。仮硬化用照射部41、42及び本硬化用照射部43は、それぞれ媒体に向けてUVを照射するための光源を備えている。
【0023】
仮硬化用照射部41、42は、図2に示すように、それぞれキャリッジ21に搭載されている。仮硬化用照射部41は、キャリッジ21の前記移動方向の一端側に設けられ、仮硬化用照射部42は、キャリッジ21の前記移動方向の他端側に設けられている。したがって、キャリッジ21の移動に伴って、ヘッド31と仮硬化用照射部41、42とは一体的に移動方向に移動する。換言すると、ヘッド31の各色のノズル列が往復移動する際、仮硬化用照射部41、42は、各色のノズル列に対する相対位置を維持しながら往復移動する。この際に仮硬化用照射部41、42から、媒体に向けてUVが照射される。具体的には、往動の期間には仮硬化用照射部41からUVが照射され、復動の期間には仮硬化用照射部42からUVが照射される。このように仮硬化は、ヘッド31が前記移動方向に移動する期間に行われるものであり、ドットを形成するのと同じパスにおいて行なわれる。
【0024】
本硬化用照射部43は、ヘッド31よりも搬送方向下流側に設けられており、前記移動方向の長さが印刷対象となる媒体の幅よりも長くなっている。そして、本硬化用照射部43は、移動することなく媒体に向けてUVを照射する。この構成により、パスによってドットの形成された媒体が、搬送動作によって本硬化用照射部43の下まで搬送されると、本硬化用照射部43によるUVの照射を受けるようになっている。
【0025】
なお、本硬化用照射部43による照射は、パス(インク吐出)と搬送を交互に行なう搬送によって媒体が本硬化用照射部43に達したら行なわれてもよいし、本硬化用照射部43がより搬送方向下流にあり、1頁などの所定の印刷が完了した後に媒体を排出する搬送動作によって媒体が本硬化用照射部43に達したら行なわれてもよい。
【0026】
なお、本実施形態では、仮硬化用照射部41、42の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いている。LEDは入力電流の大きさを制御することによって、照射量を容易に変更することが可能である。また、本硬化用照射部43の光源としては、ランプ(メタルハライドランプ、水銀ランプなど)を用いている。
【0027】
加熱ユニット80は、ノズル列ごとに設けられており、ノズル列に属する各ノズルに供給されるUVインクを予め目標温度の範囲内に加熱するものである。この加熱ユニット80は、図6に示すように、加熱体の一例としてのヒーター81と、UVインクが流れる流路となる加熱流路部82と、を有している。本実施形態に係る加熱ユニット80は、図3に示すように、キャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が前記移動方向に移動すると、加熱ユニット80も前記移動方向に移動する。
【0028】
ヒーター81は、加熱流路部82の近傍に配置されたニクロム線を有している。そして、ヒーター81は、通電されることによってニクロム線自体が発熱し、加熱流路部82内のUVインクに熱を伝導させることができる。
【0029】
加熱流路部82は、インク供給用チューブ72から受け取ったUVインクをヘッド31へと送る役割を果たす。すなわち、加熱流路部82を流れるUVインクは、ヒーター81によって目標温度の範囲内に加熱された後にヘッド31へ送られることになる。
【0030】
検出器群50には、リニア式エンコーダー、ロータリー式エンコーダー、紙検出センサー、光学センサー等が含まれる。リニア式エンコーダーは、キャリッジ21の前記移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダーは、搬送ローラー13の回転量を検出する。紙検出センサーは、給紙中の媒体の先端の位置を検出する。光学センサーは、キャリッジ21に取付けられている発光部と受光部により、媒体の有無を検出する。そして、光学センサーは、キャリッジ21によって移動しながら媒体の端部の位置を検出し、媒体の幅を検出することができる。また、光学センサーは、状況に応じて、媒体の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0031】
また、検出器群50には、ヘッド31内に貯留されるUVインクの温度を検出する温度センサー51が含まれる。この温度センサー51は、ノズル列ごとに設けられている。
【0032】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、駆動信号生成回路65(駆動信号生成部)を有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。駆動信号生成回路65は、共通駆動信号COMを生成する。この共通駆動信号COMは、本体側(コントローラー60)からヘッド側(ヘッドユニット30)へ送信される。
【0033】
<<<ヘッドユニット30について>>>
<ヘッド31の構成>
ヘッド31は、図6に示すように、駆動ユニット32と、駆動ユニット32を収納するためのケース33と、ケース33に装着される流路ユニット34とを備えている。
【0034】
駆動ユニット32は、複数のピエゾ素子321によって構成されるピエゾ素子群と、このピエゾ素子群が固定される固定板323と、各ピエゾ素子321に給電するためのフレキシブルケーブル324とを有している。各ピエゾ素子321は、所謂片持ち梁の状態で固定板323に取り付けられている。固定板323は、ピエゾ素子321からの反力を受け止め得る剛性を備えた板状部材である。フレキシブルケーブル324は、可撓性を有するシート状の配線基板であり、固定板323とは反対側となる固定端部の側面でピエゾ素子321と電気的に接続されている。そして、このフレキシブルケーブル324の表面には、ピエゾ素子321の駆動等を制御するための制御用ICであるヘッド制御部HCが実装されている。このヘッド制御部HCは、ノズル群毎にそれぞれ設けられる。なお、ヘッド制御部HCの詳細については後述する。
【0035】
ケース33は、駆動ユニット32を収納可能な収納空部331を有する直方体ブロック状の外形である。このケース33の先端面には上記の流路ユニット34が接合される。この収納空部331は、駆動ユニット32が丁度嵌合可能な大きさである。また、このケース33には、インク供給路332も形成されている。インク供給路332は、加熱流路部82内においてヒーター81によって目標温度の範囲内に加熱されたUVインクをリザーバ341cに供給するための供給路である。
【0036】
流路ユニット34は、流路形成基板341と、ノズルプレート342と、弾性板343とを有し、流路形成基板341がノズルプレート342と弾性板343に挟まれるようにそれぞれを積層して一体的に構成される。ノズルプレート342は、ノズルが形成されたステンレス鋼製の薄いプレートである。流路形成基板341には、圧力室341a及びインク供給口341bとなる空部が各ノズルに対応して複数形成される。リザーバ341cは、インクカートリッジに貯留されたUVインクを各圧力室341aに供給するための液体貯留室であり、インク供給口341bを通じて対応する圧力室341aの他端と連通している。そして、インクカートリッジからのUVインクは、加熱ユニット80を経由してインク供給路332に流入し、このインク供給路332を通ってリザーバ341c内に導入されるようになっている。また、リザーバ341cの近傍には温度センサー51が設けられている。この温度センサー51は、リザーバ341c内のUVインクの温度を検出するものである。
【0037】
駆動ユニット32は、ピエゾ素子321の自由端部を流路ユニット34側に向けた状態で収納空部331内に挿入され、この自由端部の先端面が対応する島部343aに接着される。また、固定板323の背面が収納空部331を区画するケース33の内壁面に接着される。この収納状態でフレキシブルケーブル324を介してピエゾ素子321に駆動信号を供給すると、ピエゾ素子321は伸縮して圧力室341aの容積を膨張・収縮させる。このような圧力室341aの容積変化により、圧力室341a内のインクには圧力変動が生じる。そして、このインク圧力の変動を利用することでノズルからインク滴を吐出させることができる。
【0038】
<ヘッド制御部HC>
(ヘッド制御部HCの動作)
図7は、ヘッド制御部HCのブロック図であり、図8は、各信号のタイミングの説明図である。
【0039】
ヘッド制御部HCは、第1シフトレジスタ91Aと、第2シフトレジスタ91Bと、第1ラッチ回路92Aと、第2ラッチ回路92Bと、デコーダー93と、制御ロジック94と、スイッチ96を備えている。そして、制御ロジック94を除いた各部(すなわち、第1シフトレジスタ91A、第2シフトレジスタ91B、第1ラッチ回路92A、第2ラッチ回路92B、デコーダー93、スイッチ96)は、それぞれピエゾ素子321毎に設けられる。なお、ピエゾ素子321は、ノズルからインクを吐出するために駆動される素子(駆動素子)であり、ヘッド31においてノズル毎に設けられている。
【0040】
ヘッド制御部HCには、共通駆動信号COM、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、画素データSI、クロック信号CLKが入力される。以下、これらの信号について説明する。
【0041】
駆動信号COMは、繰り返し周期T毎に繰り返し生成される。この繰り返し周期Tは、キャリッジ21が所定距離移動するために要する時間である。このように、キャリッジ21が所定距離移動する毎に、同じ波形COMが駆動信号生成回路65から繰り返し生成される。そして、この共通駆動信号COMは、繰り返し周期Tにおける期間T11で生成される第1波形部SS11と、期間T12で生成される第2波形部SS12と、期間T13で生成される第3波形部SS13とを有する。ここで、第1波形部SS11は駆動パルスPS1を有している。また、第2波形部SS12は駆動パルスPS2を、第3波形部SS13は駆動パルスPS3をそれぞれ有している。そして、駆動パルスPS1、駆動パルスPS2及び駆動パルスPS3は、後で詳述する大ドットの形成時にピエゾ素子321へ印加されるものであり、互いに同じ波形をしている。また、駆動パルスPS1と駆動パルスPS2は、後で詳述する中ドットの形成時にも、ピエゾ素子321へ印加されるものである。また、駆動パルスPS1は、後で詳述する小ドットの形成時にも、ピエゾ素子321へ印加されるものである。なお、駆動パルスがピエゾ素子321に印加されない場合は、インクが噴射されない(ドットが形成されない)。
【0042】
この駆動信号COMは、ピエゾ素子321毎に設けられたスイッチ96にそれぞれ入力されている。スイッチ96は、駆動信号COMをピエゾ素子321に印加するか否かのオン/オフ制御を行う。このオン/オフ制御により、駆動信号COMの一部分を、選択的にピエゾ素子321へ印加させることができ、これにより、ドットの大きさを変更することができる。このように、各波形部は、ピエゾ素子321へ印加される一単位である。
【0043】
ラッチ信号LATは、繰り返し周期T(1画素の区間をヘッド31が移動する期間)を示す信号である。すなわち、ラッチ信号LATは、キャリッジ21が所定距離移動する毎に出力されるリニア式エンコーダーの信号に基づいて、コントローラー60によって生成され、制御ロジック94とラッチ回路(第1ラッチ回路92A、第2ラッチ回路92B)に入力される。
【0044】
チェンジ信号CHは、繰り返し周期Tを3等分した期間を示す信号である。チェンジ信号CHは、リニア式エンコーダーの信号に基づいてコントローラー60によって生成され、制御ロジック94に入力される。
【0045】
画素データSIは、画素毎の階調(ドット無し、小ドット、中ドット、大ドット)を示す信号である。この画素データは、1個のノズルに対して2ビットずつで構成されている。例えば、ノズル数が180個の場合、2ビット×180の画素データSIが繰り返し周期T毎にコントローラー60から送られてくることになる。なお、画素データSIは、第1シフトレジスタ91A及び第2シフトレジスタ91Bに入力される。
【0046】
クロック信号CLKは、コントローラー60から送られる画素データSIを、各シフトレジスタ(第1シフトレジスタ91A、第2シフトレジスタ91B)にセットする際に用いられる信号である。
【0047】
次に、ヘッド制御部HCで生成される信号について説明する。ヘッド制御部HCでは、選択信号q0〜q3、スイッチ制御信号SW、印加信号が生成される。
【0048】
選択信号q0〜q3は、ラッチ信号LATとチェンジ信号CHに基づいて、制御ロジック94で生成される。そして生成された選択信号q0〜q3は、ピエゾ素子321毎に設けられたデコーダー93にそれぞれ入力される。
【0049】
スイッチ制御信号SWは、各ラッチ回路(第1ラッチ回路92A、第2ラッチ回路92B)にラッチされた画素データ(2ビット)に基づいて、選択信号q0〜q3の何れかがデコーダー93によって選択されたものである。各デコーダー93で生成されたスイッチ制御信号SWは、対応するスイッチ96にそれぞれ入力される。
【0050】
印加信号は、共通駆動信号COMとスイッチ制御信号に基づいてスイッチ96から出力される。この印加信号は、各スイッチ96と対応するピエゾ素子321にそれぞれ印加される。
【0051】
(画素データとドットの関係)
まず、ドットの非形成の場合(画素データSIがデータ[00]の場合)について説明する。画素データ[00]がラッチされている場合、スイッチ制御信号SWとして選択信号q0が出力される。選択信号q0は、画素データSIが[00]であるノズルに対し、任意の時点で、スイッチ96をオンするかオフするかを示す信号で、制御ロジック94が出力するが、制御ロジック94は、ラッチ信号LATかチェンジ信号CHのパルスごとに(予め定められたとおりに)値が規定される(なお、選択信号q1〜q3も同様である)。これにより、期間Tにおいてスイッチ96がオフ状態になる。この結果、共通駆動信号COMの駆動パルスはピエゾ素子321へ印加されない。この場合、ノズルからはインク滴は吐出されない。
【0052】
次に、小ドットの形成の場合(画素データSIがデータ[01]の場合)について説明する。画素データ[01]がラッチされている場合、スイッチ制御信号SWとして選択信号q1が出力される。これにより、期間T11においてスイッチ96がオン状態になり、期間T12及び期間T13においてスイッチ96がオフ状態になる。この結果、共通駆動信号COMの第1波形部SS11が有する駆動パルスPS1がピエゾ素子321へ印加され、ノズルからは小ドットに対応する量のインク滴が噴射される。
【0053】
次に、中ドットの形成の場合(画素データSIがデータ[10]の場合)について説明する。画素データ[10]がラッチされている場合、スイッチ制御信号SWとして選択信号q2が出力される。これにより、期間T11及び期間T12においてスイッチ96がオン状態になり、期間T13ではスイッチ96がオフ状態になる。この結果、共通駆動信号COMの第1波形部SS11が有する駆動パルスPS1と、共通駆動信号COMの第2波形部SS12が有する駆動パルスPS2がピエゾ素子321へ印加され、ノズルからは中ドットに対応する量のインク滴(中インク滴)が噴射される
次に、大ドットの形成の場合(画素データSIがデータ[11]の場合)について説明する。画素データ[11]がラッチされている場合、スイッチ制御信号SWとして選択信号q3が出力される。これにより、期間T11、期間T12及び期間T13においてスイッチ96はオン状態になる。この結果、共通駆動信号COMの第1波形部SS11が有する駆動パルスPS1と、共通駆動信号COMの第2波形部SS12が有する駆動パルスPS2と、共通駆動信号COMの第3波形部SS13が有する駆動パルスPS3とがピエゾ素子417へ順に印加され、ノズルからは大ドットに対応する量のインク滴(大インク滴)が吐出される。
【0054】
(ヘッド制御部HCの発熱)
上述したとおり、ヘッド制御部HCが、印刷データに基づいてスイッチ96のオン/オフを制御し、共通駆動信号COMの必要な波形部を選択的にピエゾ素子321へ印加させることにより、所定の大きさのインク滴がノズルから媒体Sに向けて噴射される。そして、本実施形態に係るプリンター1では、このようなインク滴の吐出を繰り返すことによって印刷が行われる。
【0055】
しかし、印刷が長時間に亘って行われると、駆動素子に駆動信号を印加するか否かのオンオフ制御がスイッチ96によって頻繁に繰り返されることになる。そうすると、スイッチ96を構成するトランジスタから過度に熱が発生し、ヘッド制御部HC内の温度が大幅に上昇することとなる。その結果、発生した熱がヘッド31内を移動することにより、リザーバ341c内に貯留されるUVインクの温度が上昇することになる。このインク温度の上昇によってUVインクの粘性が小さくなる。
【0056】
一方で、印刷動作が停止すると、駆動素子に駆動信号を印加するか否かのオンオフ制御も停止することになる。そうすると、スイッチ96を構成するトランジスタから熱が発生しないため、ヘッド制御部HC内の温度が上昇することはない。そして、このような印刷の停止状態が長く継続すると、リザーバ341c内に貯留されるUVインクの温度が次第に下降することとなる。このようにしてUVインクが冷やされることによってUVインクの粘性が大きくなる。
【0057】
本実施形態において使用されるUVインクは、かかる温度変化によってその粘度が変化する。すなわち、上記のように、インク温度が高いときはUVインクの粘度が低くなってノズルからインク滴を吐出しやすくなるが、その一方で、インク温度が低いときはUVインクの粘度が高くなってノズルからインク滴を吐出しにくくなる。そのため、吐出するインクの温度が異なると、同じ駆動信号をピエゾ素子321に印加した場合であっても、インク滴の吐出量が異なることとなる。具体的には、同じ駆動信号をピエゾ素子321に印加した場合であっても、温度が高い(粘度が低い)場合は温度が低い(粘度が高い)場合よりも大きなサイズのインク滴が吐出されることとなる。このように、温度によってインク滴の吐出量が異なることとなると、温度によって媒体に形成される画像が異なることとなる。その結果、印刷画質が安定しないものになってしまう。
【0058】
<<<プリンター1の動作について>>>
本実施形態に係るプリンター1は、ノズル列毎に以下の動作を行う。図9は、プリンター1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0059】
先ず、コントローラー60は、温度センサー51によって検出された検出温度を取得する(S101)。
次いで、コントローラー60は、温度センサー51の検出温度が予め設定した目標温度の範囲内であるか否かを判定する(S102)。
温度センサー51の検出温度が目標温度の範囲内である場合には(S102:YES)、コントローラー60は印刷動作を実行するために各ユニットを制御する(S105)。この印刷動作については追って詳述する。
一方、温度センサー51の検出温度が目標温度の範囲外である場合には(S102:NO)、コントローラー60はフラッシング動作を実行するために各ユニットを制御する(S103)。
【0060】
フラッシングとは、ノズル付近のインクの増粘によりノズルが目詰まりしたり、ノズル内に気泡が混入したりして、適正な量のインクが吐出されなくなってしまうことを防止すべく、ノズルを回復させるためのメンテナンスである。具体的には、記録する画像とは関係の無い駆動信号を駆動素子(ピエゾ素子)に印加し、強制的にインクを吐出させる動作である。
【0061】
本実施形態においては、コントローラー60は、キャリッジユニット20を制御することにより、キャリッジ21を移動方向に移動させてフラッシングを行うためのフラッシング位置に位置させる。移動が完了すると、コントローラー60は、フラッシング動作をヘッド31に実行させて、ノズル列に属する各ノズルから目標温度の範囲外のUVインクをヘッド31の外部へ吐出させる。これにより、ヘッド31の内部に存在していたUVインク、すなわち、インク供給路332内のUVインク及びリザーバ341cからノズルに到達するまでの流路内のUVインクが外部に排出される。
【0062】
その後、コントローラー60は、インク供給ユニット35を制御することにより、加熱流路部82においてヒーター81により目標温度の範囲内に加熱されたUVインクをヘッド31の内部へ供給する(S104)。これにより、インク供給路332及びリザーバ341cからノズルに到達するまでの流路は、目標温度の範囲内のUVインクによって満たされることになる。
【0063】
次いで、プリンター1は印刷動作を行う(S105)。本実施の形態に係るプリンター1は、所謂インターレース印刷を実行する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいてインターレース印刷を行なう際、プリンター1の各ユニットに以下の処理を行わせる。
【0064】
まず、コントローラー60は、給紙ローラーを回転させ、印刷すべき媒体を搬送ローラー13の所まで送る。次に、コントローラー60は、搬送モーター(不図示)を駆動させることによって搬送ローラー13を回転させる。搬送ローラー13が所定の回転量にて回転すると、媒体は所定の搬送量にて搬送される。
【0065】
媒体がヘッド31の下部まで搬送されると、コントローラー60は、キャリッジユニット20を制御することにより、キャリッジモーターを回転させる。このキャリッジモーターの回転に応じて、キャリッジ21が前記移動方向に移動(具体的には、往動)する。また、キャリッジ21が移動することによって、キャリッジ21に設けられたヘッド31及び仮硬化用照射部41、42も前記移動方向に移動する。コントローラー60は、ヘッド31及び仮硬化用照射部41、42が移動(往動)している間に、ヘッド31に目標温度の範囲内のインク滴を断続的に吐出させ、仮硬化用照射部41にUV照射を行なわせる(仮硬化用照射部42からのUV照射は行なわれない)。すなわち、コントローラー60は、キャリッジユニット20、ヘッド31、仮硬化用照射部41を制御することにより、ヘッド31を媒体に対して移動(往動)させながら、目標温度の範囲内のUVインクを媒体に吐出する吐出動作をヘッド31に実行させ、かつ、仮硬化用照射部41を媒体に対して移動(往動)させながら、媒体上のUVインクにUVを照射する照射動作を仮硬化用照射部41に実行させる。
【0066】
そして、この1パス目のUVインク吐出動作及び照射動作により、前記移動方向に複数のドットが並ぶドット列が形成される。
【0067】
次に、コントローラー60は、搬送ユニット10を制御して、搬送モーターを駆動させる。搬送モーターは、コントローラー60からの指令された駆動量に応じて回転方向の駆動力を発生する。そして、搬送モーターは、この駆動力を用いて搬送ローラー13を回転させる。搬送ローラー13が所定の回転量にて回転すると、媒体は所定の搬送量にて搬送される。
【0068】
次に、コントローラー60は、キャリッジユニット20を制御することにより、キャリッジモーターを回転させる。このキャリッジモーターの回転に応じて、キャリッジ21が前記移動方向に移動(具体的には、復動)する。また、キャリッジ21が移動することによって、キャリッジ21に設けられたヘッド31及び仮硬化用照射部41、42も前記移動方向に移動する。コントローラー60は、ヘッド31及び仮硬化用照射部41、42が移動(復動)している間に、目標温度の範囲内のインク滴を断続的に吐出させ、仮硬化用照射部42にUV照射を行なわせる(仮硬化用照射部41からのUV照射は行なわれない)。すなわち、コントローラー60は、キャリッジユニット20、ヘッド31、仮硬化用照射部42を制御することにより、ヘッド31を媒体に対して移動(復動)させながら、目標温度の範囲内のUVインクを媒体に吐出する吐出動作をヘッド31に実行させ、かつ、仮硬化用照射部42を媒体に対して移動(復動)させながら、媒体上のUVインクにUVを照射する照射動作を仮硬化用照射部42に実行させる。
そして、この2パス目のUVインク吐出動作及び照射動作により、前記移動方向に複数のドットが並ぶドット列が形成される。
【0069】
以降、コントローラー60は、媒体の搬送と、(3パス以降の)UVインクの吐出及びUVインクへの仮硬化処理と、を繰り返し、媒体の各画素にドットを形成していく。
なお、搬送ユニット10により媒体が搬送されて、媒体上のドット(UVインク)が本硬化用照射部43の下部に至ると、コントローラー60が本硬化用照射部43を制御し、本硬化用照射部43によりUVインクにUVインクが照射される。そして、このことにより、UVインクの本硬化が行なわれる。
印刷の終わった媒体は、排紙ローラーによって、排出される。
【0070】
以上のようにして、印刷動作の際には目標温度の範囲内のUVインクが吐出されることになるため、画質の安定した画像が印刷される。
【0071】
<<<本実施の形態に係るプリンター1の有効性について>>>
上述したとおり、本実施形態に係るプリンター1は、UVインクを吐出するノズルを有するヘッドユニット30と、前記ヘッドユニト30に設けられ、温度を検出するための温度センサー51と、前記ヘッドユニト30に供給されるUVインクを予め目標温度の範囲内に加熱する加熱ユニット80と、前記温度センサー51の検出温度が前記目標温度の範囲外となったときに、前記ノズルからUVインクを吐出してフラッシングを行うフラッシング動作を前記ヘッドユニット30に実行させた後、前記ノズルからUVインクを吐出して印刷を行う印刷動作を前記ヘッドユニット30に実行させるコントローラー60と、を備えている。そして、このことにより、印刷動作前にフラッシング動作を行うことで、目標温度の範囲外のUVインクをヘッド31の外部へ吐出した後、目標温度に近づけたUVインクをノズルから吐出するようにしたため、印刷画質を安定させることができる。
【0072】
また、コントローラー60は、フラッシング動作をヘッドユニット30に実行させるときに、ヘッド31内の流路に存在する供給済みのUVインクをノズルから吐出させるようにした。ヘッド31内の流路に存在する供給済みのUVインクはその温度が目標温度の範囲外となったものであるため、フラッシング動作の際にヘッド31内の冷めたUVインクを廃液とすることができる。
【0073】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、液体吐出方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0074】
<液体吐出装置>
上記の実施形態においては、液体吐出装置としてインクジェット式プリンターを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、インク以外の他の液体を吐出する液体吐出装置であってもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体吐出装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体吐出装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体吐出装置が吐出させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する液体吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する液体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体吐出装置に本発明を適用することができる。
【0075】
<加熱ユニット>
上記の実施形態においては、ヒーター81と、加熱流路部82と、を有する加熱ユニット80を例に挙げて説明したが、この構成に限定されるものではない。たとえば、これらに加えて温度センサーを別途設けても良い。これにより、コントローラー60は、かかる温度センサーの検出温度を取得することにより、加熱流路部82内に存在するUVインクがヒーター81の加熱によって確実に目標温度になるように制御することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 プリンター、1a 筐体、10 搬送ユニット、
13 搬送ローラー、14 プラテン、15 排紙ローラー、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、
21a 一端部、21b 他端部、
24 ガイド軸、30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
35 インク供給ユニット、37 インクカートリッジ、
40 照射ユニット、41 仮硬化用照射部、
42 仮硬化用照射部、43 本硬化用照射部、
50 検出器群、51 温度センサー、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、
62 CPU、63 メモリー、64 ユニット制御回路、
65 駆動信号生成回路、72 インク供給用チューブ、
80 加熱ユニット、81 ヒーター、82 加熱流路部、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有するヘッド部と、
前記ヘッド部に設けられ、温度を検出するための温度センサーと、
前記ヘッド部に供給される液体を予め目標温度の範囲内に加熱する加熱部と、
前記温度センサーの検出温度が前記目標温度の範囲外となったときに、前記ノズルから液体を吐出してフラッシングを行うフラッシング動作を前記ヘッド部に実行させた後、前記ノズルから液体を吐出して印刷を行う印刷動作を前記ヘッド部に実行させるコントローラーと、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記フラッシング動作を前記ヘッド部に実行させるときに、前記ヘッド部内の流路に存在する供給済みの液体を前記ノズルから吐出させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
液体を吐出するノズルを有するヘッド部と、前記ヘッド部に設けられ、温度を検出するための温度センサーと、前記ヘッド部に供給される液体を予め目標温度の範囲内に加熱する加熱部と、コントローラーと、を備える液体吐出装置を準備することと、
前記コントローラーが、前記温度センサーの検出温度が前記目標温度の範囲外となったときに、前記ノズル液体をから吐出してフラッシングを行うフラッシング動作を前記ヘッド部に実行させた後、前記ノズルから液体を吐出して印刷を行う印刷動作を前記ヘッド部に実行させることと、
を有することを特徴とする液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228851(P2012−228851A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99929(P2011−99929)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】