説明

液体吐出装置及び液体吐出方法

【課題】フラッシングによりノズルから吐出される液体の堆積による印刷不良を防止する

【解決手段】本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、前
記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ノズルから吐出された液体を受ける液体受
け部と、前記液体受け部を回動させる回動部と、を備えることを特徴とする。かかる液体
吐出装置によれば、フラッシングによりノズルから吐出される液体の堆積による印刷不良
を防止することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズル面に付着した異物等を除去するため、ノズルから強制的に連続してインク滴を吐
出させるフラッシングと呼ばれるメンテナンスを行う液体吐出装置が知られている(たと
えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−150722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる液体吐出装置は、フラッシングを行う際、フラッシングボックスに向けて吐出さ
せたインクを、当該フラッシングボックス内に配置された吸収材に吸収させるようになっ
ている。
ところが、吸収材に吸収されたインクが再溶解性又は再分散性の低いインクである場合
、このインクが乾燥すると、吸収材の空隙が乾燥インクにより埋まってしまうため、吸収
材はインクを吸収できなくなる。このため、フラッシングボックスに向けて吐出されたイ
ンクは、吸収されずに吸収材上に堆積してしまう。そして、堆積したインクがノズル面に
接触して印刷不良を生じさせる場合がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フ
ラッシングによりノズルから吐出される液体の堆積による印刷不良を防止することにある

【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための主たる発明は、
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ノズルから吐出された液体を受ける液
体受け部と、
前記液体受け部を回動させる回動部と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】液体吐出装置1の構成を示す概略図である。
【図2】液体吐出装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】フラッシングユニット35の構成例を説明する図である。
【図4】図4Aは、円筒パイプのローラー39がキャリッジの底板42aに当接した状態を示す図である。図4Bは、円筒パイプ36の回動動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0008】
即ち、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ノズルから吐出された液体を受ける液
体受け部と、
前記液体受け部を回動させる回動部と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置である。
このような液体吐出装置によれば、フラッシングによりノズルから吐出された液体を、
回動する液体受け部の外周全面に付着させることができるため、該液体の堆積による印刷
不良を防止することができる。
【0009】
また、かかる液体吐出装置であって、
回動する前記液体受け部に当接することにより、前記液体受け部が受けた液体を掻き取
る掻き取り部を有することとしてもよい。
このような液体吐出装置によれば、フラッシングにより液体受け部に付着した液体を掻
き取り部により掻き取ることができるため、液体受け部を該液体が付着する前の状態に復
帰させることができる。
【0010】
また、かかる液体吐出装置であって、
前記液体受け部は、円筒状に形成され、前記ノズルから下方に吐出された液体を曲面で
受けることとしてもよい。
このような液体吐出装置によれば、回動後のいずれの位置であっても、ノズルから吐出
された液体の落下距離を一定に保つことができるため、該液体のミスト化(霧状になるこ
と)を軽減させつつ、液体受け部に該液体を安定して付着させることができる。
【0011】
また、かかる液体吐出装置であって、
前記ヘッドと一体となって移動するキャリッジを備え、
前記回動部は、
前記キャリッジを移動させて前記液体受け部に係合させることにより、前記液体受け部
を回動させることとしてもよい。
このような液体吐出装置によれば、キャリッジの移動を利用して液体受け部を回動させ
ることができる。
【0012】
また、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ノズルから吐出された液体を受ける液
体受け部と、
前記液体受け部を回動させる回動部と、
を備えた液体吐出装置を用いてフラッシング動作を行うことを特徴とする液体吐出方法
である。
このような液体吐出方法によれば、フラッシングによりノズルから吐出された液体を、
回動する液体受け部の外周全面に付着させることができるため、該液体の堆積による印刷
不良を防止することができる。
【0013】
===実施の形態===
以下、本発明の実施形態に係る液体吐出装置1について説明する。
【0014】
<<<液体吐出装置1の構成例について>>>
液体吐出装置1の構成例について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、液体吐出
装置1の概略断面図である。図2は、液体吐出装置1のブロック図である。
なお、以下の説明において、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は、図1に矢印で
示した方向を基準として示すものとする。また、「前後方向」をいう場合は、図1におい
て紙面に直交する方向を示すものとする。
また、本実施の形態においては、液体吐出装置1が画像を記録する媒体としてロール紙
(連続紙)を用いて説明する。
【0015】
本実施の形態に係る液体吐出装置1は、図1及び図2に示すように、搬送部の一例とし
ての搬送ユニット20と、及び、該搬送ユニット20がロール紙2を搬送する搬送経路に
沿って、給送ユニット10と、媒体支持部の一例としてのプラテン29と、巻き取りユニ
ット90と、を有し、さらに、搬送経路上の印刷領域Rにおいて印刷を行うためのヘッド
ユニット30と、ヘッド移動部の一例としてのキャリッジユニット40と、熱供給部の一
例としてのヒーターユニット70と、プラテン29上のロール紙2に風を送る送風ユニッ
ト80と、これらのユニット等を制御し液体吐出装置1としての動作を司るコントローラ
ー60と、検出器群50と、を有している。
【0016】
給送ユニット10は、ロール紙2を搬送ユニット20に給送するものである。この給送
ユニット10は、ロール紙2が巻かれ回転可能に支持される巻軸18と、巻軸18から繰
り出されたロール紙2を巻き掛けて搬送ユニット20に導くための中継ローラー19と、
を有している。
【0017】
搬送ユニット20は、給送ユニット10により送られたロール紙2を、予め設定された
搬送経路に沿って搬送するものである。この搬送ユニット20は、図1に示すように、中
継ローラー19に対して水平右方に位置する中継ローラー21と、中継ローラー21から
見て右斜め下方に位置する中継ローラー22と、中継ローラー22から見て右斜め上方(
プラテン29から見て搬送方向上流側)に位置する第一搬送ローラー23と、第一搬送ロ
ーラー23から見て右方(プラテン29から見て搬送方向下流側)に位置する第二搬送ロ
ーラー24と、第二搬送ローラー24から見て鉛直下方に位置する反転ローラー25と、
反転ローラー25から見て右方に位置する中継ローラー26と、中継ローラー26から見
て上方に位置する送り出しローラー27と、を有している。
【0018】
中継ローラー21は、中継ローラー19から送られたロール紙2を、左方から巻き掛け
て下方に向かって弛ませるローラーである。
中継ローラー22は、中継ローラー21から送られたロール紙2を、左方から巻き掛け
て右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
【0019】
第一搬送ローラー23は、不図示のモーターにより駆動される第一駆動ローラー23a
と、該第一駆動ローラー23aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第
一従動ローラー23bとを有している。この第一搬送ローラー23は、下方に弛ませたロ
ール紙2を上方に引き上げ、プラテン29に対向する印刷領域Rへ搬送するローラーであ
る。第一搬送ローラー23は、印刷領域R上のロール紙2の部位に対して画像印刷がなさ
れている期間、一時的に搬送を停止させるようになっている。なお、コントローラー60
の駆動制御により、第一駆動ローラー23aの回転駆動に伴って第一従動ローラー23b
が回転することによって、プラテン29上に位置させるロール紙2の搬送量(ロール紙の
部位の長さ)が調整される。
【0020】
搬送ユニット20は、上述したとおり、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー2
3との間に巻き掛けたロール紙2の部位を下方に弛ませて搬送する機構を有している。こ
のロール紙2の弛みは、コントローラー60により、不図示の弛み検出用センサーからの
検出信号に基づき監視される。具体的には、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー
23との間において弛ませたロール紙2の部位を、弛み検出用センサーが検出した場合に
は、該部位に適切な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20は
ロール紙2を弛ませた状態で搬送することが可能となる。一方、弛み検出用センサーが弛
ませたロール紙2の部位検出しない場合は、該部位に過剰な大きさの張力が与えられてい
ることになるため、搬送ユニット20によるロール紙2の搬送が一時的に停止され、張力
が適切な大きさに調整される。
【0021】
第二搬送ローラー24は、不図示のモーターにより駆動される第二駆動ローラー24a
と、該第二駆動ローラー24aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第
二従動ローラー24bとを有している。この第二搬送ローラー24は、ヘッドユニット3
0により画像が記録された後のロール紙2の部位を、プラテン29の支持面に沿って水平
右方向に搬送した後に鉛直下方に搬送するローラーである。これにより、ロール紙2の搬
送方向が転換されることになる。なお、コントローラー60の駆動制御により、第二駆動
ローラー24aの回転駆動に伴って第二従動ローラー24bが回転することによって、プ
ラテン29上に位置するロール紙2の部位に対して付与される所定の張力が調整される。
【0022】
反転ローラー25は、第二搬送ローラー24から送られたロール紙2を、左側上方から
巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
中継ローラー26は、反転ローラー25から送られたロール紙2を、左側下方から巻き
掛けて上方に向かって搬送するローラーである。
送り出しローラー27は、中継ローラー26から送られたロール紙2を、左側下方から
巻き掛けて巻き取りユニット90に送り出すようになっている。
【0023】
このように、ロール紙2が各ローラーを順次経由して移動することにより、ロール紙2
を搬送するための搬送経路が形成されることになる。なお、ロール紙2は、搬送ユニット
20により、印刷領域Rと対応した領域単位で間欠的にその搬送経路に沿って搬送される

【0024】
ヘッドユニット30は、搬送ユニット20により搬送経路上の印刷領域Rに(プラテン
29上に)送り込まれたロール紙2の部位に、インクを吐出するためのものである。この
ヘッドユニット30は、ヘッド31とバルブユニット34とを有している。
【0025】
ヘッド31は、その下面に、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック
(K)等の色ごとにそれぞれ複数のノズル♯1〜♯180からなるノズル列を有している
。このヘッド31は、フラッシング時、ノズル列毎にフラッシングを行う。
【0026】
各ノズル列の各ノズル♯1〜♯180は、ロール紙2の搬送方向に交差する方向に沿っ
て直線状に配列されている。各ノズル列は、ヘッド31の移動方向(走査方向)に沿って
相互に間隔をあけて平行に配置されている。各ノズル♯1〜♯180には、インク滴を吐
出するための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。ピエゾ素子は、そ
の両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸
張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素
子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各ノ
ズル♯1〜♯180から吐出される。
【0027】
バルブユニット34は、インクを一時貯留するためのものであり、不図示のインク供給
チューブを介してヘッド31に接続されている。このため、ヘッド31は、バルブユニッ
ト34から供給されたインクをノズルからプラテン29上に搬送されて停止された状態の
ロール紙2の部位に向けて吐出することにより、画像印刷を行うことができる。
【0028】
キャリッジユニット40は、ヘッド31を移動させるためのものである。このキャリッ
ジユニット40は、左右方向に延びるガイドレール41と(図1に二点鎖線で示す)、ガ
イドレール41に沿って左右方向(移動方向)へ往復移動可能に支持されたキャリッジ4
2と、不図示のキャリッジモーターとを有する。なお、本実施形態において、かかるキャ
リッジモーターは、円筒パイプ36を回動させる回動部としても機能する。
【0029】
キャリッジ42は、不図示のキャリッジモーターの駆動により、ヘッド31と一体とな
って移動するよう構成されている。キャリッジ42(ヘッド31又は各ノズル列)のガイ
ドレール41における位置(左右方向の位置)は、コントローラー60が不図示のモータ
ーに設けられたエンコーダーから出力されるパルス信号における立ち上がりエッジ及び立
ち下がりエッジを検出してこのエッジをカウントすることにより、求めることができる。
【0030】
そして、キャリッジ42は、画像印刷後にヘッド31のクリーニングを行う際、ヘッド
31と一体となってガイドレール41に沿って搬送方向の上流側(プラテン29から見て
搬送方向上流側)へ移動し、クリーニングを行うホームポジションHPで停止する(図1
参照)。
【0031】
ホームポジションHPには、不図示のクリーニングユニットが設けられている。このク
リーニングユニットは、キャップと、吸引ポンプ等とを有している。キャリッジ42がホ
ームポジションHPに位置すると、ヘッド31の下面(ノズル面)に不図示のキャップが
密着するようになっている。このようにキャップが密着した状態で吸引ポンプ(不図示)
が作動すると、ヘッド31内のインクが、増粘したインクや紙粉と共に吸引される。この
ようにして、目詰まりしたノズルが不吐出状態から回復することによってヘッドのクリー
ニングが完了する。
【0032】
また、キャリッジ42は、画像印刷後にヘッド31のフラッシングを行う際には、ヘッ
ド31と一体となって、プラテン29側からホームポジションHP側へ向かって移動する
。この際、ヘッド31は、キャリッジ42と共に移動しながら、プラテン29とホームポ
ジションHPとの間に配置されるフラッシングユニット35においてフラッシング動作を
行う。なお、フラッシングユニット35については、後に詳述する。
【0033】
プラテン29は、搬送経路上の印刷領域Rに位置するロール紙2の部位を支持するとと
もに、該部位を加熱するものである。このプラテン29は、図1に示すように、搬送経路
上の印刷領域Rに対応させて設けられ、かつ、第一搬送ローラー23と第二搬送ローラー
24との間の搬送経路に沿った領域に配置されている。そして、プラテン29は、ヒータ
ーユニット70が発生させた熱の供給を受けることにより、ロール紙2の該部位を加熱す
ることができる。
【0034】
ヒーターユニット70は、ロール紙2を加熱するためのものであり、不図示のヒーター
を有している。このヒーターは、ニクロム線を有しており、当該ニクロム線をプラテン2
9内部に、プラテン29の支持面から一定距離となるように配置させて構成されている。
このため、ヒーターは、通電されることによってニクロム線自体が発熱し、プラテン29
の支持面上に位置するロール紙2の部位に熱を伝導させることができる。このヒーターは
、プラテン29の全域にニクロム線を内蔵させて構成されているため、プラテン29上の
ロール紙2の部位に対して熱を均一に伝導することができる。本実施の形態において、プ
ラテン上のロール紙2の部位の温度が45℃となるように、該ロール紙2の部位を均一に
加熱する。これにより、該ロール紙2の部位に着弾されたインクを乾燥させることができ
る。
【0035】
送風ユニット80は、送風機の一例としてのファン81と、ファン81を回転させるモ
ーター(不図示)とを備えている。ファン81は、回転することにより、プラテン29上
のロール紙2に風を送り、ロール紙2に着弾されたインクを乾燥させるためのものである
。このファン81は、図1に示すように、本体部に設けられた開閉可能なカバー(不図示
)に複数設けられている。そして、この各々のファン81は、カバーが閉じた際に、プラ
テン29の上方に位置して、当該プラテン29の支持面(当該プラテン29上のロール紙
2)と対向するようになっている。
【0036】
巻き取りユニット90は、搬送ユニット20により送られたロール紙2(画像印刷済み
のロール紙)を巻き取るためのものである。この巻き取りユニット90は、送り出しロー
ラー27から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め下方へ搬送するため
の中継ローラー91と、回転可能に支持され中継ローラー91から送られたロール紙2を
巻き取る巻き取り駆動軸92と、を有している。
【0037】
コントローラー60は、液体吐出装置1の制御を行うための制御ユニットである。この
コントローラー60は、図2に示すように、インターフェース部61と、CPU62と、
メモリー63と、ユニット制御回路64と、を有している。インターフェース部61は、
外部装置であるホストコンピューター110と液体吐出装置1との間でデータの送受信を
行うためのものである。CPU62は、液体吐出装置1全体の制御を行うための演算処理
装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確
保するためのものである。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従
ったユニット制御回路64により各ユニットを制御する。
【0038】
検出器群50は、液体吐出装置1内の状況を監視するものであり、例えば、搬送ローラ
ーに取り付けられて媒体の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送
される媒体の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ42(又はヘッド31)の移
動方向(左右方向)の位置を検出するためのリニア式エンコーダーなどがある。
【0039】
<<<フラッシングユニット35について>>>
本実施の形態にかかる液体吐出装置1では、フラッシングユニット35においてフラッ
シングが行われる。
【0040】
フラッシングとは、ノズル付近のインクの増粘によりノズルが目詰まりしたり、ノズル
内に気泡が混入したりして、適正な量のインクが吐出されなくなってしまうことを防止す
べく、ノズルを回復させるためのメンテナンスである。具体的には、印刷する画像とは関
係の無い駆動信号を駆動素子(ピエゾ素子)に印加し、強制的にインクを吐出させる動作
である。通常の印刷時には画像データに基づいて選択されたノズルからインクが吐出され
るのに対して、フラッシング時には、印刷とは関係の無いインクが吐出されるため、多く
のノズル(全てのノズル又は吐出不良であるノズル)から多量の液体がフラッシングユニ
ット35に向けて吐出される。そのため、フラッシング時に最もインクミストが発生し易
い状態となる。
【0041】
ここで、従来の液体吐出装置では、フラッシングを行う際、ヘッドによりフラッシング
ボックスに向けて吐出されたインクを、フラッシングボックス内に配置された吸収材に吸
収させるようになっていた。これにより、フラッシング時のインクミストの発生等による
ノズル面(ノズルプレート)や媒体の汚れ等を防止することができた。
【0042】
ところが、吸収材に吸収されたインクが再溶解性又は再分散性の低いインクである場合
、このインクが乾燥すると、吸収材の空隙が乾燥インクにより埋まってしまうため、吸収
材はインクを吸収できなくなる。このため、吸収材はその機能を果たさなくなり、フラッ
シングボックスに向けて吐出されたインクは、吸収されずに吸収材上に堆積してしまう。
【0043】
このように吸収材上にインクが堆積してしまうと、この堆積したインクが、ノズル面(
ノズルプレート)に接触して、ノズルを汚したり塞いだりする場合がある。これによって
ドット抜け等の印刷不良が生じる虞がある。
これに対し、本実施形態にかかる液体吐出装置1では、フラッシング時にノズルから吐
出されるインクを吸収材で受けて吸収せずに、該インクを受ける液体受け部を回動させ、
該インクを液体受け部の外周全体に付着させるようにした。これにより、着弾した該イン
クを液体受け部の外周全体に広げて乾燥させることができるため、該インクの堆積による
印刷不良を防止することができるようになる。
【0044】
<フラッシングユニット35の構成例>
フラッシングユニット35の構成例について、図1、図3及び図4を用いて説明する。
図3は、フラッシングユニット35の構成例を示す図である。図4Aは、円筒パイプのロ
ーラー39がキャリッジの底板42aに当接した状態を示す図である。図4Bは、円筒パ
イプ36の回動動作を説明する図である。
【0045】
フラッシングユニット35は、図3に示すように、液体受け部の一例としての円筒パイ
プ36と、掻き取り部の一例としてのスクレーパー38と、を有している。そして、この
フラッシングユニット35は、図1に示すように、プラテン29から見て搬送方向上流側
に設けられている。
【0046】
円筒パイプ36は、円筒状に形成され、フラッシング時にノズルから吐出されたインク
滴を曲面で受けるものである。また、この円筒パイプ36は、図4Aに示すように、両端
にローラー39を有しており、このローラー39と一体になって回動部により回動する。
【0047】
本実施の形態においては、図4Bに示すように、回動部の一例としてのキャリッジモー
ターの駆動によりキャリッジ42がヘッド31と共に移動し、その移動するキャリッジ4
2の底板42aが両端のローラー39に当接することによって、円筒パイプ36が回動す
る。すなわち、回動部は、キャリッジ42を移動させて円筒パイプ36に係合させること
により、当該円筒パイプ36を回動させるようになっている。これにより、フラッシング
によりノズルから吐出されたインクを、回動する円筒パイプ36の曲面全体に付着させる
ことができる。
【0048】
そして、ローラー39がキャリッジの底板42aと当接した状態では、キャリッジの底
板42aと円筒パイプ36との間に隙間が形成される(図4A参照)。この隙間が形成さ
れることによって、キャリッジ42が円筒パイプ36の上方を通過移動したとしても、キ
ャリッジ42と一体となって移動するヘッド31が、円筒パイプ36の曲面に衝突するこ
とはない。
【0049】
このように、本実施形態における液体受け部は、円筒状に形成された円筒パイプ36で
あり、かつ、回動部によって回動可能に構成されているため、回動後のいずれの位置であ
っても、ノズルから吐出されたインクの落下距離を一定に保つことができ、該インクのミ
スト化を軽減させつつも、該インクを安定して曲面全体に付着させることができる。
【0050】
スクレーパー38は、回転する円筒パイプ36の外周面(曲面)に当接することにより
、当該円筒パイプ36が受けたインク(曲面に付着したインク)を掻き取るものである。
本実施形態にかかるスクレーパー38は、ゴム等の弾性部材からなり、図3に示すように
、円筒パイプ36の下側にて外周面に当接している。また、スクレーパー38は、着脱可
能に取り付けられているため、該スクレーパー38が劣化した場合には、新たな別のスク
レーパー38と交換することが可能である。さらに、スクレーパー38を円筒パイプ36
側に付勢するための付勢機構(不図示)が備えられている。この付勢機構がスクレーパー
38を付勢することにより、スクレーパー38の先端部が円筒パイプ36の外周面に密着
するようになる。なお、付勢機構は、スクレーパー38を付勢しない待機位置に移動させ
る機構を備えてもよい。この場合、付勢機構を制御することにより、スクレーパー38の
先端部を円筒パイプ36の外周面から離間させることができる。
【0051】
そして、図3に示すように、スクレーパー38が付勢機構により付勢されて円筒パイプ
36の外周面に当接した状態で、外周面にインクを付着させた状態の円筒パイプ36が回
動すると、円筒パイプ36は、回転しながら、スクレーパー38からの当接を受ける。こ
れにより、前記外周面に付着したインクが、スクレーパー38により掻き取られ、該外周
面から剥離するようになる。そして、円筒パイプ36は、外周面に付着していたインクが
除去され、前記外周面にインクが付着する前の状態に復帰することができる。なお、前記
外周面から剥離したインクは、不図示のボックスに貯留される。
【0052】
<フラッシング動作について>
次に、フラッシングユニット35を用いた際のフラッシング動作について、図3を用い
て説明する。便宜上、2つのノズル列(A列、B列)を下面に有するヘッド31を用いて
、フラッシング動作を説明する。
【0053】
なお、液体吐出装置1の各種動作は、主としてコントローラー60により実現される。
特に、本実施の形態においては、メモリー63に格納されたプログラムをCPU62が処
理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を
行うためのコードから構成されている。
【0054】
ホストコンピューター110からのフラッシング動作の制御信号がインターフェース部
61を介してコントローラー60に入力されると、ユニット制御回路64の制御により、
印刷領域Rに位置しているキャリッジ42が、ガイドレール41に沿ってプラテン29側
からホームポジションHP側へ移動する。このキャリッジ42はヘッド31と一体となっ
て移動するため、ヘッド31もプラテン29側からホームポジションHP側へ移動するこ
とになる。そして、ヘッド31は、ユニット制御回路64の制御により、プラテン29と
ホームポジションHPとの間に配置されるフラッシングユニット35において、移動しな
がらフラッシング動作をノズル列ごとに繰り返し行う。
【0055】
具体的には、先ず、移動中のヘッド31は、図3に示すように、A列を形成するノズル
から円筒パイプ36の円筒軸に下ろした直線距離が最短となる位置において、A列のノズ
ル列についてフラッシングを行う。すわなち、ヘッド31は、当該位置において、A列を
形成する各ノズルから強制的に下方にインクを吐出する。そうすると、各ノズルから吐出
されたインク滴は、円筒パイプ36の曲面に着弾した後、やがて乾燥することによって当
該曲面に薄いインク層を形成する(当該曲面にインク滴が付着する)。引き続き、移動継
続中のヘッド31は、同様にB列のノズル列についてもフラッシングを行って、フラッシ
ング動作を完了させる。
【0056】
<円筒パイプ36の回動について>
このようにヘッド31がキャリッジ42と一体となって移動しながらフラッシング動作
を行っている際に、円筒パイプ36はキャリッジ42の移動に連動して回動動作を行う。

ここでは、円筒パイプ36の回動について、図3及び図4Bを用いて説明する。
【0057】
先ず、ヘッド31は、フラッシングユニット35においてフラッシングを行うために、
キャリッジ42と一体となってプラテン29側からホームポジションHP側へ向って移動
開始する(図4Bの左図参照)。この際、キャリッジ42は、回動部としてのキャリッジ
モーターの駆動により、ヘッド31と一体となってガイドレール41に沿って移動する。
【0058】
次いで、キャリッジ42と一体となって移動するヘッド31は、フラッシングユニット
35に徐々に近づいて行く。そして、移動継続中のキャリッジ42が円筒パイプ36の上
方を通過する際に、その移動するキャリッジ42の底板42aが円筒パイプ36の両端の
ローラー39に当接することによって、円筒パイプ36が時計回りに回動する。(図4B
の中央図参照)。
【0059】
すなわち、ヘッド31は、円筒パイプ36の上方を通過する際に、キャリッジ42の移
動に連動して回動している円筒パイプ36に対して、移動しながらフラッシング動作をノ
ズル列ごとに繰り返し行うことになる。
【0060】
このため、ヘッド31のフラッシング動作により円筒パイプ36に着弾したインク滴が
円筒パイプ36の曲面全体に薄く引き延ばされることによって、単位面積当たりのインク
滴の量が少なくなり、乾燥が促進された該インク滴が前記曲面全体に付着するようになる
。その結果、円筒パイプ36に乾燥インクが堆積したとしても、ヘッド31のノズル面に
接触することがないため、インクの堆積による印刷不良を防止することができる。また、
キャリッジ42を移動させるキャリッジモーターを駆動させることにより、円筒パイプ3
6を回動させることができるため、円筒パイプ36を回動させるための専用の駆動源(モ
ーター等)を設ける必要がない。すなわち、キャリッジ42の移動を利用して、円筒パイ
プ36を回動させることができる。
【0061】
その後、ヘッド31は、フラッシングユニット35を通過して、ホームポジションHP
に到達する(図4Bの右図参照)。
【0062】
このように、本実施形態における液体吐出装置1では、フラッシングによりノズルから
吐出された液体を、回動する液体受け部の外周全面に付着させることができるため、当該
インクの堆積による印刷不良を防止することができるようになる。
【0063】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、液体吐出方法等の開
示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発
明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変
更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に
、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0064】
<液体受け部>
上記の実施形態においては、液体受け部として円筒パイプ36を例に挙げて説明したが
、これに限定されるものではない。たとえば、円筒パイプ36のような円形の断面形状を
有する受け部材に限らず、半円形、扇形、楕円形等の断面形状を有する受け部材であって
もよい。
【0065】
<回動部>
上記の実施形態においては、回動部としてキャリッジ42を移動させるキャリッジモー
ターを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
たとえば、円筒パイプ36を回動させるための専用モーターを別途設けてもよい。
また、回動機構の一例としてベルト・プーリー機構を用いてもよい。具体的には、円筒
パイプ36の回動軸(円筒軸)及びモーターの駆動軸にプーリーをそれぞれ嵌着させ、そ
のプーリー間にベルトを架け渡す。そして、モーターの回動駆動により、その駆動力がベ
ルトを介して円筒パイプ36に伝達され、円筒パイプ36が回動する。
【0066】
<液体吐出装置>
上記の実施形態においては、液体吐出装置としてインクジェット式プリンターを例に挙
げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、インク以外の他の液体を吐
出する液体吐出装置であってもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備え
る各種の液体吐出装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体吐出装置から吐出さ
れる液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここ
でいう液体とは、液体吐出装置が吐出させることができるような材料であればよい。例え
ば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル
、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のよう
な流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物から
なる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代
表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、
インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク
等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置の具体例としては、例えば液晶
ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、
カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかた
ちで含む液体を吐出する液体吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出
する液体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置
、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機
械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球
レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐
出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液
を吐出する液体吐出装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体吐
出装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 液体吐出装置、2 ロール紙、
10 給送ユニット、18 巻軸、19 中継ローラー、
20 搬送ユニット、21 中継ローラー、22 中継ローラー、
23 第一搬送ローラー、24 第二搬送ローラー、
25 反転ローラー、26 中継ローラー、27 送り出しローラー、
29 プラテン、30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
34 バルブユニット、35 フラッシングユニット、
38 スクレーパー、39 ローラー
40 キャリッジユニット、41 ガイドレール、42 キャリッジ、
50 検出器群、60 コントローラー、70 ヒーターユニット、
80 送風ユニット、81 ファン、90 巻き取りユニット、
91 中継ローラー、92 巻き取り駆動軸、
110 ホストコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ノズルから吐出された液体を受ける液
体受け部と、
前記液体受け部を回動させる回動部と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
回動する前記液体受け部に当接することにより、前記液体受け部が受けた液体を掻き取
る掻き取り部を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出装置であって、
前記液体受け部は、円筒状に形成され、前記ノズルから下方に吐出された液体を曲面で
受けることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記ヘッドと一体となって移動するキャリッジを備え、
前記回動部は、
前記キャリッジを移動させて前記液体受け部に係合させることにより、前記液体受け部
を回動させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ノズルから吐出された液体を受ける液
体受け部と、
前記液体受け部を回動させる回動部と、
を備えた液体吐出装置を用いてフラッシング動作を行うことを特徴とする液体吐出方法


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61614(P2012−61614A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205230(P2010−205230)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】