説明

液体吐出装置及び液体吐出方法

【課題】ノズルから液体を吐出する液体吐出装置であって、液体吐出を良好に行うためのフラッシング動作を被吐出媒体の種類に応じて効率的に実行することのできる液体吐出装置等を提供する。
【解決手段】被吐出媒体を搬送する搬送部と、前記搬送される被吐出媒体に対して液体を吐出するノズルを備えたヘッド部と、前記搬送部及び前記ヘッド部を制御する制御部とを有する液体吐出装置において、前記制御部が、前記ノズルから前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出するフラッシング動作を実行する際に、前記液体吐出による前記被吐出媒体上のフラッシング画像が前記被吐出媒体の種類に応じて形成され、前記フラッシング画像の少なくとも一部の領域において前記液体吐出によって生成されるドットが互いに重なるように、前記制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置等に関し、特に、液体吐出を良好に行うためのフラッシング動作を被吐出媒体の種類に応じて効率的に実行することのできる液体吐出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンターなどの液体吐出装置が使用されている。当該液体吐出装置では、通常、ノズルから液体が被吐出媒体に噴射(吐出)されて所定の処理が実行される。インクジェットプリンターの場合には、色材である各色のインクがヘッドに備えられる複数のノズルから用紙などの印刷媒体に噴射されて印刷が実行される。
【0003】
このような液体吐出装置においては、ノズルが使用されずに液体を吐出しない状態が続くと、乾燥のためにノズル近傍の液体が増粘し又は固着し、液体の吐出が不安定になったり不可能になる虞がある。
【0004】
そのため、通常、インクジェットプリンターなどでは、ノズルからの良好なインク吐出を確保するためのクリーニング動作の一つとして、定期的に各ノズルからインクを吐出させるフラッシング動作を実行している。
【0005】
当該フラッシング動作は、ノズルを備えるヘッドが通常の処理位置から容易に退避可能である場合には、フラッシングによって吐出されたインクを吸収または回収するようにヘッドをフラッシング動作用の位置へ移動させた後に行われる。しかしながら、長尺であり移動機構を有しない、いわゆるラインヘッドタイプである場合には、通常の処理位置でフラッシング動作が実行される。すなわち、被吐出媒体に対して、プリンターの場合には被吐出媒体である用紙に対して、フラッシング動作によるインク吐出がなされる。
【0006】
下記特許文献1では、このようなフラッシング動作を行うプリンターにおける印刷不良を抑えるための発明について記載され、フラッシング動作で形成されるフラッシング画像において、ノズルから吐出されるインクが互いに重ならないようにすることなどが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−159785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるように、ノズルの良否を判断するためにフラッシング動作におけるドットを重ねないようにする場合には、実際の処理に使用される用紙上でのフラッシング画像の領域が大きくなってしまい、用紙の無駄が多いという課題がある。また、印刷物である用紙に対しフラッシング動作をするので、見た目を損なわないように、できるだけ小さい範囲に留めることが好ましい。
【0009】
また、当該課題のためには上記ドットを重ねるという対応が考えられるが、用紙の種類によってインクの滲みや吸収力、いわゆる裏抜けの状況が異なるため、これらによる不具合が発生しないようにする工夫も望まれる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置であって、液体吐出を良好に行うためのフラッシング動作を被吐出媒体の種類に応じて効率的に実行することのできる液体吐出装置、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、被吐出媒体に対して液体を吐出するノズルを備えたヘッド部と、前記ヘッド部を制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記ノズルから前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出するフラッシング動作を実行する際に、前記被吐出媒体の種類に応じてフラッシングデータを生成し、前記フラッシング動作により前記被吐出媒体上に形成されるフラッシング画像の少なくとも一部の領域において、前記フラッシング画像を構成する複数のドットが互いに重なるように、前記ヘッド部を制御する、ことである。
【0012】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記制御部は、前記フラッシング動作時に、前記ノズル毎に複数回液体を吐出するように、前記ヘッド部を制御する、ことを特徴とする。
【0013】
更にまた、上記発明において、好ましい態様は、前記ヘッド部は、固定位置で前記液体吐出を実行し、複数のヘッドユニットに分割され、当該ヘッドユニット間で前記被吐出媒体の搬送と交わる方向について前記ノズルの位置が重なるオーバーヘッド部があるものであり、前記制御部は、前記フラッシング画像の当該オーバーヘッド部によって形成される領域において、前記ドットが互いに重なるように制御する、ことを特徴とする。
【0014】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記制御部は、前記フラッシング画像におけるドットの重なり具合が、前記オーバーヘッド部による領域とその他の領域で同様となるように制御する、ことを特徴とする。
【0015】
更にまた、上記発明において、一つの態様は、前記制御部は、前記フラッシング画像が前記被吐出媒体の予め定められた範囲内に入るように制御する、ことを特徴とする。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、被吐出媒体に対して液体を吐出するノズルを備えたヘッド部を有する液体吐出装置における液体吐出方法であって、前記ノズルから前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出するフラッシング動作を実行する際に、前記被吐出媒体の種類に応じてフラッシングデータを生成し、前記フラッシング動作により前記被吐出媒体上に形成されるフラッシング画像の少なくとも一部の領域において、前記フラッシング画像を構成する複数のドットが互いに重なるようにする、ことである。
【0017】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した液体吐出装置の実施の形態例に係る構成図である。
【図2】プリンター2のヘッド部23の概略配置を例示した図である。
【図3】第一のフラッシングデータによるフラッシング画像を示した図である。
【図4】第二のフラッシングデータによるフラッシング画像を示した図である。
【図5】第三のフラッシングデータによるフラッシング画像を示した図である。
【図6】フラッシング画像の対比例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の
形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0020】
図1は、本発明を適用した液体吐出装置の実施の形態例に係る構成図である。図1に示すプリンター2が本実施の形態例に係る液体吐出装置であり、上記フラッシング動作で用紙上に生成するフラッシング画像を用紙の種類によって変更し、かつ、フラッシング画像の少なくとも一部の領域においてドットが重なるようにすることを特徴とするものである。従って、本プリンター2では、ノズルからのインク吐出を良好にするためのフラッシング動作を用紙の種類に応じて適正に実行できるので、用紙の裏抜けなどの不具合を抑えることができると共に、フラッシング画像のドットを重ねるので当該画像に必要な用紙の面積を小さくでき用紙の無駄な使用を少なく抑えることができる。
【0021】
図1に示すホストコンピューター1は、プリンター2に対して印刷指示を行うプリンター2のホスト装置であり、例えば、パーソナルコンピューターで構成される。従って、ホストコンピューター1は、図示していないが、CPU、RAM、ROM、HDD、ディスプレイ、操作装置等で構成されている。
【0022】
アプリケーション11は、印刷要求元であり、例えば、文章作成アプリケーション、図形作成アプリケーションなど、様々な機能を有するアプリケーションが存在し得る。当該アプリケーション11は、処理内容を指示するプログラム、当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU、及び上記RAM等で構成され、印刷要求時には印刷内容を表す画像データを出力する。
【0023】
ドライバー12は、プリンター2用のドライバーであり、上記アプリケーション11から出力された画像データに画像処理を施してプリンター2用の画像データ(印刷データ)とし、当該印刷データをプリンター2に送信して、アプリケーション11から要求を受けた印刷について印刷指示を行う部分である。プリンター2に送信する印刷データは、プリンター2用のコマンドで表現され、ここでは、一例として、各ドット(例えば、大・中・小ドット)のオン/オフを表現した、いわゆるスクリーン処理後のデータとなっている。
【0024】
また、ドライバー12は、後述のようにプリンター2がフラッシングデータを生成する他、プリンター2におけるノズルからのインク吐出を良好に保つためのフラッシング動作をプリンター2に実行させるべく、印刷処理の間などの所定タイミングでフラッシング動作用のフラッシングデータをプリンター2に送信するようにしてもよい。当該フラッシング動作用の印刷データには、フラッシング動作で用紙上に形成されるフラッシング画像のフラッシングデータが含まれるが、ドライバー12は、当該フラッシングデータを用紙の種類毎に保持している。言い換えれば、複数の異なるフラッシング用のフラッシングデータが用意され、用紙の種類毎にそれらの中からどのフラッシングデータを使用するかが予め定められている。これらのフラッシングデータは、具体的には、フラッシング動作により用紙上に形成されるフラッシング画像におけるドットの重ね方が異なる。なお、フラッシング画像用のフラッシングデータは、基本的には、上記通常印刷時の印刷データと同形式のデータになっている。
【0025】
当該ドライバー12は、上記HDD等に記憶されるドライバープログラム及び上記フラッシング動作用のフラッシングデータ、当該ドライバープログラムに従って処理を実行する上記CPU、上記RAM等で構成され、その具体的な処理内容は後述する。また、このドライバープログラムやフラッシング動作用のフラッシングデータは、CD等の記憶媒体からホストコンピューター1に複写される、または、インターネット等のネットワークを介してホストコンピューター1にダウンロードされる、ことにより、ホストコンピューター1の上記HDDに格納される。
【0026】
プリンター2(液体吐出装置)は、上記ホストコンピューター1の印刷指示に従って印刷処理を実行する、例えば、ラインヘッドタイプのインクジェットプリンターである。また、プリンター2はロール紙25への印刷を行うタイプのプリンターである。
【0027】
プリンター2には、図1に示されるように、コントローラー部21と印刷実行部22が備えられる。コントローラー部21(液体吐出装置の制御部)は、上記印刷指示による印刷データを受信して、当該印刷データに従った印刷処理を印刷実行部22に実行させる部分である。具体的には、印刷実行部22のヘッド部23の制御、すなわち、インクの吐出に係る制御と、印刷実行部22の搬送系の制御、すなわち、用紙26の搬送に係る制御を行う。
【0028】
また、コントローラー部21は、ヘッド部23におけるノズルからのインク吐出を良好に保つためのフラッシング動作を実行させるべく、印刷処理の間などの所定タイミングでフラッシング動作用のフラッシングデータを生成する。当該フラッシング動作用のフラッシングデータは、用紙の種類毎に生成される。言い換えれば、複数の異なるフラッシング用のフラッシングデータが用意され、用紙の種類毎にそれらの中からどのフラッシングデータを使用するかが予め定められている。各フラッシングデータは、予め用紙の種類と対応しているテーブルにより用意され、コントローラー部21に含まれる記憶部に記憶されていてもよい。テーブルから読み出して使用することができる。これらのフラッシングデータは、具体的には、フラッシング動作により用紙上に形成されるフラッシング画像におけるドットの重ね方が異なるように構成される。なお、フラッシングデータは、基本的には、上記通常印刷時の印刷データと同形式のデータになっている。
【0029】
また、コントローラー部21は、タイミングを見計らって、フラッシング動作時には、上記フラッシング動作用のフラッシングデータを生成し、または読み出して、当該データに従い、印刷実行部22にフラッシング動作を実行させる。
【0030】
なお、コントローラー部21は、具体的には、処理内容を記述したプログラム、当該プログラムに従って処理を実行するCPU、RAM、プログラムを格納するROM、ロジック回路であるASIC等で構成される。
【0031】
次に、印刷実行部22は、上述の通り、インク吐出系と用紙搬送系(搬送部)を備える。用紙搬送系には、ロール紙25として保持される用紙26を搬送路に供給するための給紙ローラー27、供給された用紙26を印刷位置に搬送するための搬送ローラー28、印刷後の用紙26を装置外へ排出するための排紙ローラー29等が備えられ、印刷処理中には一定速度で用紙26を搬送する。また、図示していないが、用紙搬送系には、これら以外に、各ローラー用の駆動装置、位置検出装置等が備えられる。
【0032】
インク吐出系には、プラテン24とその上に位置するヘッド部23が備えられる。ヘッド部23は、用紙26(被吐出媒体)に対して色材であるインク(液体)を吐出する複数のノズルを備える、いわゆるラインヘッドである。ここでは、一例として、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)4色のインクを用いるものとする。また、ラインヘッドは、複数のヘッドユニット(231a−c)に分割されており、それらが千鳥状に配置される構成である。かかるヘッド部は、固定位置で上記用紙搬送系により一定速度で搬送される用紙26に対し、インクを吐出して印刷処理を実行する。
【0033】
図2は、本プリンター2のヘッド部23の概略配置を例示した図である。ここでは、ヘッド部23は、3つのヘッドユニット231a、231b、231cに分割されており、被印刷媒体である用紙26の搬送方向(図中の矢印a)に対して、図2に示すように、千
鳥状に配置されている。
【0034】
各ヘッドユニットには、それぞれ、4つのノズル列232が備えられ、各ノズル列232は複数の(ここでは、一例として360の)ノズルで構成される。また、これらノズル列232は、各ノズルユニットにおいて、左から順番に、KCMYのインクをそれぞれ吐出するように構成される。すなわち、左端のノズル列232ではノズルからK色のインクが吐出され、その右隣のノズル列232ではノズルからC色のインクが吐出され、さらに右隣のノズル列232ではノズルからM色のインクが吐出され、右端のノズル列232ではノズルからY色のインクが吐出される。
【0035】
従って、色毎に、この例では1080のノズルが備えられる。そして、図2に示されるように、隣り合うヘッドユニットは、用紙26の幅方向に一部が重なり合うように配置され、図2にbで示すオーバーラップ部では、各色で、用紙26の幅方向の同じ位置に対して、2つのノズルが配置される(2つのノズルでインクを吐出できる)ようになっている。
【0036】
印刷時には、搬送方向に移動する用紙26に対して、固定のヘッドユニットに備えられる、このような配置の各ノズルから各色のインクが吐出される。
【0037】
また、図2のcの領域は、用紙26上の印刷領域であり、図2のdの領域は、用紙26上のフラッシング領域である。印刷領域は通常の印刷処理が実行された部分であり、フラッシング領域はフラッシング動作によりフラッシング画像が形成された部分である。用紙26が区切りのない連続紙である場合には、印刷処理の内容により印刷領域を可変とすることができ、フラッシング領域は任意の位置に形成され得、また、その大きさは任意に選択できる。一方、用紙26がダイカットラベル用のものである場合には、フラッシング動作はラベルのない台紙上に行うのが好ましく、従って、印刷領域及びフラッシング領域の大きさと位置は予め定められたものになる。このような印刷領域(c)及びフラッシング領域(d)が用紙26上に連続して存在することになる。
【0038】
以上説明したような構成を有するホストコンピューター1及びプリンター2では、以下のようにして印刷処理が実行される。まず、ホストコンピューター1において、アプリケーション11が印刷要求を出すと、その画像データがドライバー12で受信される。その後、ドライバー12は、受信した画像データに対して各種の画像処理を施す。具体的には、まず、オブジェクト単位で表現される画像データにラスタライズ処理を施し、受信した画像データを、画素毎に各色の濃度階調値を有するビットマップデータに変換する。次に、当該ビットマップデータの色表現をプリンター2で使用される色材の色表現に変換する色変換処理を実行する。具体的には、例えば、RGB(レッド、グリーン、ブルー)で表現されたデータを上記CMYKで表現されたデータに変換する。次に、ビットマップデータに対してプリンター2の装置に依存した補正処理を施した後、スクリーン処理によりドット(例えば、大・中・小ドット)のオン/オフを示す画像データとする。
【0039】
このようにして画像処理が施された後、ドライバー12は、処理後の画像データを含む印刷指示のための印刷データを生成する。当該印刷データは、プリンター2用のコマンドで表現され、使用する用紙の種類など印刷に係る各種の情報も含む。
【0040】
当該印刷データは、ドライバー12からプリンター2へ送信され、コントローラー部21で受信される。コントローラー部21は、受信した印刷データを解釈し、その結果に従って、順次、印刷実行部22に指示を出し印刷処理を実行させる。
【0041】
当該指示に従って、印刷実行部22の用紙搬送系は、用紙26を所定の位置に移動させ
た後、印刷処理が終了するまで、用紙26を上述した一定速度で搬送する。また、印刷実行部22のヘッド部23は、上記指示に従って、各ノズルユニット231のノズル列232における各ノズルからインクを吐出する。具体的には、上記ドットのオン/オフを示すデータに基づいて、そのドットを形成する位置にあるノズルからのインク吐出の有無が決定されて、上記インク吐出が実行される。
【0042】
その後、指示された印刷処理が終了すると、コントローラー部21からの指示により、印刷実行部22で、印刷された部分の用紙26が切断されプリンター2から排出される。
【0043】
次に、フラッシング動作を実行する際の処理について説明する。ここでは、ドライバー12側に上述したフラッシング用のフラッシングデータが保持され、ドライバー12がフラッシング動作を指示する場合について説明する。
【0044】
まず、ドライバー12は、予め定められたタイミングに従ってフラッシング動作の実行を決定する。そして、通常の印刷処理の合間においてフラッシング動作を実行すべく、通常の印刷データの送信の合間に、前述したフラッシング動作用の印刷データを生成してプリンター2へ送信する。当該印刷データの生成においては、ドライバー12は、その時にプリンター2で使用されている用紙26の種類に対して決定されている前述したフラッシングデータを選択して印刷データに含める。各フラッシングデータによってフラッシング領域に形成されるフラッシング画像の具体的な内容については後述するが、ファイン紙のように滲みが少なく裏抜けが発生しにくい用紙種類にはドットの重なりが多いフラッシングデータが選択されるように対応付けられ、普通紙のように滲みが多く裏抜けが発生しやすい用紙種類にはドットの重なりが少ないフラッシングデータが選択されるように対応付けられている。
【0045】
プリンター2では、上記送信されたフラッシング動作用の印刷データを受信し、上述した通常印刷の場合と同様に、当該印刷データに従った印刷処理を実行する。すなわち、コントローラー部21の指示に従って印刷実行部22の用紙搬送系及びヘッド部23が動作し、上記フラッシング用のフラッシングデータに従ったインク吐出が各ノズルからなされ、用紙26のフラッシング領域にフラッシング画像が形成される。すなわち、インク吐出を良好にするための全ノズルからのインク吐出が実行される。
【0046】
次に、上述したフラッシング用の各フラッシングデータで形成されるフラッシング画像について説明する。ここでは、一例として、フラッシング動作で各ノズルから2回のインク吐出を行うものとしている。すなわち、全ノズルについてそれぞれ2個のドットを形成するように動作させる。
【0047】
また、本実施形態では、複数のフラッシング用フラッシングデータとして、ドットの重なり具合の異なる3つのフラッシングデータを備えるものとしている。
【0048】
図3は、第一のフラッシングデータによるフラッシング画像を示した図である。第一のフラッシングデータは、上述したオーバーラップ部のみフラッシング動作によって形成されるドットを重ねるものである。言い換えれば、フラッシング画像において、オーバーラップ部の同色で用紙26の幅方向に同位置する2つのノズルによって形成されたドットを同位置にする。
【0049】
図3の(a)は、前述した各ノズルユニット231の配置を示し、図3の(b)は、形成されるフラッシング画像をノズルユニット231の位置に合わせて示し、図3の(c)は、(b)におけるe1の領域を拡大して示している。
【0050】
当該第一のフラッシングデータでは、上下のノズルユニット231a及び231cの各ノズルによって形成される2個ずつのドットの全てが、用紙26の搬送方向の同位置(図中のW1の領域内)に、重ならないように隣接して並んだ画像が形成され、中間に位置するノズルユニット231bについても、同じ領域(図中のW1の領域)に同様に形成される。従って、上述したように、オーバーラップ部のみ2つのドットが重なり合った画像が形成される。
【0051】
図3の(b)において、KCMYは、それぞれ、その色のノズル列232によって形成された上記ドット2個分の幅のフラッシング画像であり、f1で示すオーバーラップ部のみがドットの重なりにより他の部分よりも濃い画像となっている。
【0052】
図3の(c)では、オーバーラップ部の画像f1とその他の画像の境目部分が拡大表示されており、上述の通り、オーバーラップ部の画像において(図の下部i1)ドット(g1)が重なっており、他の部分の画像において(図の上部h1)ドット(g1)が重なっていないことがわかる。
【0053】
このように、第一の画像では、ドットの重なりが少なく(本実施形態の3つのフラッシングデータの中で最もドットの重なりが少なく)、滲みの多い用紙26に適している。例えば、普通紙の場合に選択されるように定められる。しかしながら、フラッシング画像の一部でドットを重ねているので、すべてドットを重ねない場合よりもフラッシング画像の領域を小さくすることができる。
【0054】
図6は、フラッシング画像の対比例を示した図である。図6に示す例は、すべてドットを重ねない場合であり、(a)〜(c)には、それぞれ、図3の場合と同様の対象が示されている。このフラッシング画像では、(b)に示されるように、オーバーラップ部においてもドットを重ねないので、中間のノズルユニット231bの画像は、他のノズルユニット231a及び231cの画像と、用紙26の搬送方向にずれた位置となり、フラッシング画像領域(図中のW4)が広い。(c)には、ドット(g4)がオーバーラップ部の画像(図の下部i4)及びその他の画像(図の上部h4)で重なっていないことが示される。
【0055】
上述した第一のフラッシングデータの場合には、図3のW1と図6のW4を比較して分かるように、フラッシング画像領域が図6の場合の半分になる。
【0056】
次に、第二のフラッシングデータについて説明する。図4は、第二のフラッシングデータによるフラッシング画像を示した図である。図4の(a)〜(c)には、それぞれ、図3の場合と同様の対象が示されている。第二のフラッシングデータは、オーバーラップ部で4個のドットが重なり、他の部分では2個のドットが重なるようなフラッシング画像を形成するフラッシングデータである。
【0057】
当該フラッシングデータによれば、上下のノズルユニット231a及び231cについては、各ノズルによって形成される2個のドットが重なり、異なるノズルによるドットは重ならないように隣接して並べた画像が、用紙26の搬送方向の同位置(図中のW2の領域内)に、形成される。中間に位置するノズルユニット231bについても、同じ領域(図中のW2の領域)に同様に形成される。従って、上述したように、オーバーラップ部のみ4つのドットが重なり合った画像が形成される。
【0058】
図4の(b)において、KCMYは、それぞれ、その色のノズル列232によって形成された上記ドット1個分の幅のフラッシング画像であり、f2で示すオーバーラップ部のみが4個のドットの重なりにより他の部分よりも濃い画像となっている。
【0059】
図4の(c)では、オーバーラップ部の画像f2とその他の画像の境目部分(e2)が拡大表示されており、上述の通り、オーバーラップ部の画像において(図の下部i2)ドット(g2)が4つ重なっており、他の部分の画像において(図の上部h2)ドット(g2)が2つ重なっていることがわかる。
【0060】
このように、第二のフラッシングデータでは、ドットの重なりが多く(本実施形態の3つのフラッシングデータの中で最もドットの重なりが多く)、滲みの少ない用紙26に適している。例えば、ファイン紙の場合に選択されるように定められる。そして、フラッシング画像の領域(W2)は、図6に示した場合(W4)の4分の1になる。
【0061】
次に、第三のフラッシングデータについて説明する。図5は、第三のフラッシングデータによるフラッシング画像を示した図である。図5の(a)〜(c)には、それぞれ、図3の場合と同様の対象が示されている。第三のフラッシングデータは、オーバーラップ部を含み全ての領域でドットが2個重なるようなフラッシング画像を形成するものである。
【0062】
当該フラッシングデータは、オーバーラップ部について各ノズルからのインク吐出が1回である(各ノズルによって形成されるドットが1個である)点のみが第二のフラッシングデータと異なり、他は同じである。
【0063】
図5の(b)において、KCMYは、それぞれ、その色のノズル列232によって形成された上記ドット1個分の幅のフラッシング画像であり、f3で示すオーバーラップ部も2個のドットが重なり他の部分と同様の濃さになっている。
【0064】
図5の(c)では、オーバーラップ部の画像f3とその他の画像の境目部分(e3)が拡大表示されており、上述の通り、オーバーラップ部の画像においても(図の下部i3)、他の部分の画像においても(図の上部h3)ドット(g3)が2つ重なっていることがわかる。
【0065】
このように、第三のフラッシングデータでも、ドットの重なりが比較的多く(本実施形態の3つのフラッシングデータの中で2番目にドットの重なりが多く)、比較的滲みの少ない用紙26に適している。また、第三のフラッシングデータでは、ドットの重なり具合が均一なフラッシング画像が形成される。そして、フラッシング画像の領域(W3)は、図6に示した場合(W4)の4分の1になる。
【0066】
なお、フラッシング動作用のフラッシングデータは、上述の3つに限ることなく、プリンター2で使用される用紙の種類などに応じて、重ねるドットの数や領域を変更した他のフラッシングデータを用いることができる。
【0067】
また、上述したダイカットラベル用の用紙を用いる場合など、フラッシング画像を形成できる領域が予め定められている場合には、その領域内に入るようにドットを重ねたフラッシングデータを用いることができる。この場合は、その領域が狭ければ、オーバーラップ部以外の部分についても異なるノズルで形成されたドットを重ねるフラッシング画像を形成してもよい。
【0068】
なお、上述の実施形態では、フラッシング動作の開始判断をドライバー12が行ったが、当該判断をプリンター2のコントローラー部21が行ってもよい。また、フラッシング動作用のフラッシングデータがホストコンピューター1側に保持されたが、プリンター2側に保持されていてもよい。また、コントローラー部21が使用するフラッシングデータを決定する際には、用紙種類の情報を、ユーザーがドライバー12に設定した情報に基づ
きドライバー12から送信される場合や、又は、ユーザーがプリンター2の操作パネルから設定される場合、プリンター2による用紙検出センサーにより検出する場合があり、これらによって用紙情報を取得することができる。取得した用紙情報は、コントローラー部21に含まれる記憶部に記憶してもよい。取得した用紙情報から対応するフラッシングデータを生成し、またはテーブルから読み出して使用することができる。
【0069】
以上説明した通り、本実施の形態例に係る液体吐出装置では、被吐出媒体(用紙26)上に行われるフラッシング動作において、少なくとも一部の領域で液体吐出が重ねて行われるので、当該動作で本来の目的以外に使用される被吐出媒体の面積を小さく抑えることができる。
【0070】
また、被吐出媒体の種類に応じて、例えば普通紙など滲みや裏抜けし易いものの場合は、フラッシング画像が形成される領域は広くなるが液体吐出の重ね具合(ドットの重ね具合)を少なくして滲みや裏抜けを抑え、ファイン紙など滲みや裏抜けし難いものの場合は、フラッシング画像が形成される領域が狭くなるように液体吐出の重ね具合を多くし、このように液体吐出の重ね具合が適正に選択されるので、フラッシング画像の領域をできるだけ狭くしながら滲みや裏抜けによる不具合を抑えることができる。
【0071】
また、フラッシング動作による液体吐出の重ね具合(ドットの重ね具合)を全域で均一にすることで、被吐出媒体の部分的な不具合を抑えることができる。
【0072】
また、予め制限された領域にフラッシング動作が入るように液体吐出の重ね具合(ドットの重ね具合)を決定しておくことで、ダイカットラベル用の用紙等にも適用することができる。
【0073】
なお、プリンターに限らず同様の液体吐出装置に本発明を適用することができる。
【0074】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0075】
1 ホストコンピューター、 2 プリンター、 11 アプリケーション、 12 ドライバー、 21 コントローラー部、 22 印刷実行部、 23 ヘッド部、 24 プラテン、 25 ロール紙、 26 用紙、 27 給紙ローラー、 28 搬送ローラー、 29 排紙ローラー、 231a−c ヘッドユニット、 232 ノズル列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吐出媒体に対して液体を吐出するノズルを備えたヘッド部と、前記ヘッド部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ノズルから前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出するフラッシング動作を実行する際に、前記被吐出媒体の種類に応じてフラッシングデータを生成し、前記フラッシング動作により前記被吐出媒体上に形成されるフラッシング画像の少なくとも一部の領域において、前記フラッシング画像を構成する複数のドットが互いに重なるように、前記ヘッド部を制御する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記フラッシング動作時に、前記ノズル毎に複数回液体を吐出するように、前記ヘッド部を制御する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1あるいは2において、
前記ヘッド部は、固定位置で前記液体吐出を実行し、複数のヘッドユニットに分割され、当該ヘッドユニット間で前記被吐出媒体の搬送と交わる方向について前記ノズルの位置が重なるオーバーヘッド部があるものであり、
前記制御部は、前記フラッシング画像の当該オーバーヘッド部によって形成される領域において、前記ドットが互いに重なるように制御する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御部は、前記フラッシング画像におけるドットの重なり具合が、前記オーバーヘッド部による領域とその他の領域で同様となるように制御する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記制御部は、前記フラッシング画像が前記被吐出媒体の予め定められた範囲内に入るように制御する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
被吐出媒体に対して液体を吐出するノズルを備えたヘッド部を有する液体吐出装置における液体吐出方法であって、
前記ノズルから前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出するフラッシング動作を実行する際に、前記被吐出媒体の種類に応じてフラッシングデータを生成し、前記フラッシング動作により前記被吐出媒体上に形成されるフラッシング画像の少なくとも一部の領域において、前記フラッシング画像を構成する複数のドットが互いに重なるようにする
ことを特徴とする液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91243(P2013−91243A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234707(P2011−234707)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】