説明

液体吐出装置

【課題】吐出面と対向する吐出空間の湿度を短時間で均一にする。
【解決手段】プリンタは、ヘッド10の吐出面10aと対向する吐出空間V1の封止状態と開放状態とを選択的に取り得るキャップ手段と、キャップ手段の凹状部材52に形成された2つの開口30,31と、加湿空気を生成するとともに開口30,31から加湿空気を吐出空間V1に供給する加湿ユニット60と、制御部とを含んでいる。制御部は、加湿空気を封止状態の吐出空間V1に供給する際に、2つの開口30,31から交互に加湿空気を供給するように、加湿ユニット60を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置は、インク等の液体を吐出する吐出口が開口した吐出面を有するヘッドを備えている。この吐出口から液体が吐出されない状況が長時間続くと、吐出口近傍の液体の水分が蒸発して粘度が増加し、吐出口に目詰まりが生じる。この吐出口の目詰まりを抑制するための技術として、例えば、下記特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1に記載された技術では、凹状のキャッピング部によって吐出面を覆うことで、外部空間から隔てられた吐出空間を形成する。そして、キャッピング部の底面に空気供給口及び空気排出口が形成された空気流路を有する空調装置により、高湿度とした空気を空気供給口から吐出空間内に供給し、且つ吐出空間内の空気を空気排出口から排出することで吐出口近傍の液体水分蒸発が抑制され、吐出口の目詰まりが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−212138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吐出空間内に供給された高湿度の空気と吐出口内の液体とは湿度差がある(空気と液体との間で水分の授受が発生する)のが実際であり、また、吐出空間内に供給された高湿度の空気により粘度が増加した吐出口近傍の液体に水分を供給して、吐出口の目詰まりを抑制したい場合もある。これらの場合に、特許文献1に記載された技術では、吐出空間に高湿度とした空気を供給したとき、空気供給口付近の湿度は短時間で所望湿度となるが、空気排出口付近の湿度を所望湿度とするには、吐出空間全体を均一に加湿する必要がある。つまり、空気供給口付近の吐出口は高湿度にされやすいが、空気排出口付近の吐出口は高湿度にされにくい。このため、すべての吐出口を高湿度にするためには、吐出空間全体を均一に高湿度にする必要があり、これに時間を要する。
【0006】
そこで、本発明の目的は、吐出面と対向する吐出空間の湿度を短時間で均一にすることが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための複数の吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から封止する封止状態と、前記吐出空間を前記外部空間に対して封止しない開放状態とを取り得るキャップ手段と、一方向に関して少なくとも前記吐出面の一部を挟む位置に配置され、前記吐出空間に対して空気の供給を行うための第1開口及び第2開口と、加湿空気を生成する生成手段と、前記生成手段で生成された加湿空気を前記第1開口又は第2開口を介して前記吐出空間に供給する供給手段と、前記加湿空気を前記封止状態の前記吐出空間に供給する際、前記第1開口及び前記第2開口から交互に前記加湿空気を供給するように、前記供給手段を制御する制御手段とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体吐出装置によると、加湿空気が第1及び第2開口から交互に供給されるため、一方向に関して吐出面と対向する吐出空間の湿度を短時間で均一にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。
【図2】図1に示すヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニット、並びに凹状部材を示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】図1に示すヘッド、凹状部材、及び加湿ユニットを示す概略図である。
【図6】図1に示すヘッド、凹状部材、及び加湿ユニットを示す概略図である。
【図7】図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図8】図1のプリンタの制御部が実行する加湿メンテナンスに関する一連の動作フローを示すフローチャート図である。
【図9】本発明に係る凹状部材の変形例を示す要部拡大図である。
【図10】本発明に係るキャップ手段の変形例を示す要部拡大図である。
【図11】本発明に係る加湿ユニットの変形例を示す概略図である。
【図12】本発明に係る加湿ユニットの別の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
先ず、図1を参照し、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0012】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部35が設けられている。筐体1aにより画定される空間には、後述の給紙ユニット1cから排紙部35に向けて、図1に示す太矢印に沿って、記録媒体である用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
【0013】
筐体1aは、ヘッド(液体吐出ヘッド)10、ヘッド10の吐出面10aと対向する位置を通過するように用紙Pを搬送する搬送機構33と、ヘッド10に対応する支持・キャップユニット50、加湿メンテナンスに用いられる加湿ユニット60(図5参照)、ヘッド10に供給するブラックインクを貯留するカートリッジ(図示せず)、プリンタ1の各部の動作を制御する制御部100等を収容している。
【0014】
ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。ヘッド10の下面は、多数の吐出口14a(図3及び図4参照)が開口した吐出面10aである。画像記録(画像形成)に際して、吐出口14aからブラックのインクが吐出される。また、ヘッド10は、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aと後述の支持面51aとの間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド10を保持している。ヘッド10のより具体的な構成については後に詳述する。
【0015】
制御部100は、用紙Pに向けて吐出口14aからインクを吐出する記録モード時においては、外部装置から転送された印刷データ(液体吐出信号)に基づいて、プリンタ1各部による用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作を制御する。また、制御部100は、吐出面10aの保守を行うメンテナンス時においては、吐出性能の回復・維持に係るメンテナンス動作を制御する。
【0016】
メンテナンス動作としては、フラッシング(画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてヘッド10のアクチュエータを駆動することにより吐出口14aからインクを強制的に吐出させる動作)、パージ(パージ機構8(図7参照)により、ヘッド10内のインクに圧力を付与して全吐出口14aからインクを強制的に吐出させる動作)、ワイプ(ワイパ9(図7参照)により吐出面10a上の異物(インク等)を払拭する動作)、加湿メンテナンス(ヘッド10の吐出面10aと後述の凹状部材52により封止された吐出空間V1(図5及び図6参照)内に加湿空気を供給する動作)等を含む。パージ及びフラッシング(以下、強制吐出メンテナンスと総称する)は、吐出口14aからインクが所定時間以上吐出されていない場合に行われる(ここで、フラッシングよりもパージに係る上記所定時間を長く設定してもよい)。パージやフラッシングにより、吐出口14a内の増粘したインクや吐出口14a内に混入した気泡や粉塵がインクと共に排出される。加湿メンテナンスについては後に詳述する。なお、パージ機構8には、例えば、カートリッジからヘッド10にインクを強制的に送るポンプなどを用いることができる。
【0017】
搬送機構33は、給紙ユニット1c、ガイド29、送りローラ対22,26〜28、及び、レジローラ対23を有しており、給紙ユニット1cから排紙部35までの用紙搬送経路を構成している。これら給紙ユニット1c、送りローラ対22,26〜28、及び、レジローラ対23は、制御部100により制御される。
【0018】
給紙ユニット1cは、給紙トレイ20及び給紙ローラ21を有する。このうち給紙トレイ20が筐体1aに対して副走査方向に着脱可能である。給紙トレイ20は、上方に開口する箱であり、用紙Pを収容可能である。給紙ローラ21は、制御部100の制御により回転し、給紙トレイ20の最も上方にある用紙Pを送り出す。
【0019】
給紙ローラ21によって送り出された用紙Pは、ガイド29によりガイドされ、且つ送りローラ対22によって挟持されつつレジローラ対23へと送られる。レジローラ対23は、設定されたレジ掛け時間の間、送りローラ対22によって搬送されてきた用紙Pの前端を無回転状態で挟持する。これにより、用紙Pの前端がレジローラ対23に挟持された状態でその傾きが補正(用紙Pの斜行が補正)される。そして、レジ掛け時間が経過した後、レジローラ対23が回転され、斜行補正された用紙Pがヘッド10と支持・キャップユニット50との間へと送られる。
【0020】
ここで、副走査方向とは、レジローラ対23による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0021】
レジローラ対23によりヘッド10と支持・キャップユニット50との間へ送られた用紙Pは、ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出口14aからインクが吐出されて用紙P上にモノクロ画像が形成される。吐出口14aからのインク吐出動作は、用紙センサ37からの検出信号に基づき、制御部100による制御の下で行われる。用紙Pは、その後ガイド29によりガイドされ且つ送りローラ対26〜28によって挟持されつつ上方に搬送され、筐体1a上部に形成された開口38から排紙部35へと排出される。
【0022】
次に、図2〜図4を参照し、ヘッド10の構成について説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0023】
ヘッド10は、リザーバユニット11(図5参照)及び流路ユニット12(図4参照)、流路ユニット12の上面12xに固定された8つのアクチュエータユニット17(図2参照)、各アクチュエータユニット17に接合されたFPC(平型柔軟基板)19(図4参照)等を有する。リザーバユニット11には、カートリッジから供給されたインクを一時的に貯留するリザーバを含むインク流路が形成されている。流路ユニット12には、上面12xの開口12y(図2参照)から下面(吐出面10a)の各吐出口14aに至るインク流路が形成されている。アクチュエータユニット17は、吐出口14a毎の圧電型アクチュエータを有する。
【0024】
リザーバユニット11の下面には凹凸が形成されている。凸部は、流路ユニット12の上面12xにおけるアクチュエータユニット17が配置されていない領域(図2に示す開口12yを含む二点鎖線で囲まれた領域)に接着されている。凸部の先端面は、リザーバに接続し且つ流路ユニット12の各開口12yに対向する開口を有する。これにより、上記各開口を介して、リザーバ及び流路ユニット12のインク流路が連通する。凹部は、流路ユニット12の上面12x、アクチュエータユニット17の表面、及びFPC19の表面と、若干の隙間を介して対向している。
【0025】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a〜12i(図4参照)を互いに積層し接着することにより形成された積層体である。流路ユニット12のインク流路は、図2〜図4に示すように、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別インク流路14を含む。個別インク流路14は、図4に示すように、吐出口14a毎に形成されており、流路抵抗調整用の絞りとして機能するアパーチャ15を含む。上面12xにおける各アクチュエータユニット17の接着領域には、圧力室16を露出させる略菱形形状の開口がマトリクス状に配置されている。下面(吐出面10a)における各アクチュエータユニット17の接着領域に対向する領域には、圧力室16と同様の配置パターンで、吐出口14aがマトリクス状に配置されている。具体的には、図3に示すように、各領域には、複数の吐出口14aが主走査方向に並んでなる吐出口列が16列形成されている。
【0026】
アクチュエータユニット17は、図2に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、流路ユニット12の上面12xにおいて千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、図3に示すように、当該アクチュエータユニット17の接着領域内に形成された多数の圧力室16の開口を覆っている。図示は省略するが、アクチュエータユニット17は、多数の圧力室16に跨るように延在した複数の圧電層、及び、厚み方向に関して圧電層を挟む電極を含む。電極には、圧力室16毎に設けられた個別電極、及び、圧力室16に共通の共通電極が含まれる。個別電極は、最も上方の圧電層の表面に形成されている。
【0027】
FPC19は、アクチュエータユニット17の各電極に対応する配線を有し、その途中部にドライバIC(図示せず)が実装されている。FPC19は、一端がアクチュエータユニット17、他端がヘッド10の制御基板(リザーバユニット11上方に配置。図示せず)にそれぞれ固定されている。FPC19は、制御基板から出力された各種駆動信号をドライバICに伝達し、ドライバICが生成した信号をアクチュエータユニット17に伝達する。
【0028】
次に、支持・キャップユニット50について、図1、図2及び図5を参照しつつ説明する。
【0029】
支持・キャップユニット50は、図1に示すように、対応するヘッド10の吐出面10aに鉛直方向に対向して配置されている。支持・キャップユニット50は、主走査方向の軸を有し且つ制御部100の制御により当該軸を中心として回転可能な回転体58、回転体58の周面に固定されたプラテン51とキャップ固定部材57、キャップ固定部材57に固定された凹状部材52、及び回転体58を鉛直方向に昇降させる回転体昇降機構56(図7参照)を含む。
【0030】
プラテン51は、主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aより一回り大きなサイズを有し、且つ、鉛直方向に関して、キャップ固定部材57に対して対向して配置されている。プラテン51の表面は、吐出面10aに対向しつつ用紙Pを支持する支持面51aであり、用紙Pを保持できるように材料や加工に工夫が施されている。例えば支持面51aに、弱粘着性のシリコン層を形成したり、副走査方向に沿ったリブを多数形成したりすることで、支持面51a上に載置された用紙Pの浮き等が防止される。また、プラテン51は、樹脂により構成されている。
【0031】
回転体58は、制御部100の制御により、支持面51aが吐出面10aに対向し且つ後述の対向面80(図5参照)が吐出面10aに対向しない第1回転状態(図1参照)と、この第1回転状態から180°回転した状態であって支持面51aが吐出面10aに対向せず且つ後述の対向面80が吐出面10aに対向する第2回転状態(図5参照)とを選択的に取り得るように回転される。本実施形態における制御部100は、記録モード時、及び、印刷データを待つ記録待機モード時は第1回転状態、メンテナンスモード時は第2回転状態となるように、回転体58の回転を制御する。
【0032】
回転体昇降機構56は、回転体58の軸を支持しており、制御部100の制御により、回転体58を鉛直方向に昇降させる。この回転体58の鉛直方向の昇降に伴い、回転体58にキャップ固定部材57を介して固定された凹状部材52も昇降し、これにより、凹状部材52の吐出面10aに対する鉛直方向の相対位置が変化する。なお、回転体昇降機構56としては、例えば、ラックとピニオンやソレノイド等を用いることができる。
【0033】
凹状部材52は、図5に示すように、吐出面10aに対向する対向部材53及び対向部材53の周縁部において立設された環状部材54が一体として形成されたものであり、キャップ固定部材57に固定されている。環状部材54は、ゴムなどの弾性材料からなり、図2に示すように平面視で吐出面10aの周縁部と対向している。つまり、環状部材54は、平面視において、全アクチュエータユニット17および全吐出口14aを囲むように、環状に形成されている。
【0034】
凹状部材52は、対向面80が吐出面10aに対向しているときにおいて、回転体昇降機構56による回転体58の昇降により、環状部材54の先端54aが吐出面10aに当接する当接位置(図5参照)と、環状部材54の先端54aがヘッド10の吐出面10aから離隔した離隔位置とを選択的に取る。図5及び図6に示すように、凹状部材52が当接位置にあるとき、凹状部材52と吐出面10aとで、吐出面10aと対向する吐出空間V1が外部空間V2から封止される。
【0035】
なお、凹状部材52が離隔位置にあるときは、吐出面10aと対向する吐出空間V1は、外部空間V2に対して封止されない。本実施形態においては、上記のように、凹状部材52と回転体昇降機構56と制御部100とで、吐出空間V1を外部空間V2から封止する封止状態(凹状部材52が当接位置にある状態)と、吐出空間V1を外部空間V2に対して封止しない開放状態(凹状部材52が離隔位置にある状態)とを取り得るキャップ手段を構成している。また、本実施形態においては、キャップ手段は、凹状部材52を昇降させるだけで、封止状態と開放状態とを取り得るので簡素な構成とされている。
【0036】
対向部材53は、ガラスや金属(例えばSUS)等の、水分を吸収しない又は吸収し難い材料から構成されている。また、対向部材53は、主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aとほぼ同様なサイズを有する平板状部材である。また、対向面80は、吐出面10aと対向しているときに、吐出口14aから排出(強制吐出等)されたインクを受け取る。なお、受け取ったインクは、図示しない廃液部に廃棄される。
【0037】
対向面80の主走査方向の両端部には、2つの開口30,31(第1開口、第2開口)が形成されている。加湿メンテナンスの際においては、後述のタンク64により加湿された加湿空気の吐出空間V1への供給、及び、吐出空間V1からの排出が2つの開口30,31を介して交互に行われる。また、2つの開口30,31は、図2に示すように、対向面80が吐出面10aに対向しているときにおいて、吐出面10aの主走査方向の両端部と対向する位置に配置されている。つまり、平面視において、主走査方向に関して、2つの開口30,31間にはすべての吐出口14aが配置されている。換言すると、2つの開口30,31は、主走査方向に関して吐出面10aの一部であってすべての吐出口14aを挟む位置に配置されている。
【0038】
次に、図5及び図6を参照し、加湿ユニット60の構成について説明する。
【0039】
加湿ユニット60は、図5に示すように、配管65a〜65e、切換弁66、ポンプ63、並びにタンク64を含む。配管65aは、開口31と切換弁66とを接続する。配管65bは、切換弁66とポンプ63とを接続する。配管65cは、ポンプ63とタンク64とを接続する。配管65dは、タンク64と切換弁66とを接続する。配管65eは、切換弁66と開口30とを接続する。
【0040】
タンク64(生成手段)は、下部空間に水を貯留し、且つ、上部空間に、下部空間の水により加湿された加湿空気を貯蔵している。配管65cは、タンク64内の水面よりも下方に接続され、タンク64の下部空間と連通している。配管65dは、タンク64内の水面よりも上方に接続され、タンク64の上部空間と連通している。切換弁66は、制御部100の制御によって、配管65aと配管65b、配管65dと配管65eを連通させる第1切換状態(図5参照)と、配管65aと配管65d、配管65bと配管65eを連通させる第2切換状態(図6参照)とを選択的に取り得るように切り換えられる。ポンプ63は、制御部100により制御されることで、吐出空間V1とタンク64との間で空気循環を生む。なお、タンク64内の水が少なくなった場合には、図示しない水補給タンクより水がタンク64に補給される。
【0041】
このような構成において、制御部100の制御により、切換弁66が第1切換状態においてポンプ63が駆動されると、図5に示すように、開口31から配管65a,65b,65cを介して回収した吐出空間V1内の空気をタンク64で加湿し、この加湿空気を、配管65d,65eを介して開口30から吐出空間V1内へと供給することが可能となる。一方、制御部100の制御により、切換弁66が第2切換状態においてポンプ63が駆動されると、図6に示すように、開口30から配管65e,65b,65cを介して回収した吐出空間V1内の空気をタンク64で加湿し、この加湿空気を、配管65d,65aを介して開口31から吐出空間V1内へと供給することが可能となる。このように吐出空間V1とタンク64との間で空気が循環されるので、比較的高い湿度の空気を再利用して加湿を行うことにより加湿源であるタンク64内の水の消費低減を図ることができる。また、吐出空間V1を加湿することで、吐出口14a近傍のインクの増粘が解消され、吐出口14aの目詰まりを防止することができる。なお、タンク64内の水がポンプ63に流れ込まないよう、配管65cには逆止弁(図示せず)が取り付けられている。本実施形態においては、ポンプ63、配管65a〜65e、切換弁66によって供給手段が構成されている。
【0042】
次に、図7を参照しつつ、制御部100についてより詳細に説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御プログラムは、ROMに記憶されている。そして、この制御プログラムがCPUで実行されることにより、図7に示す制御部100を構成する各機能部が実現される。制御部100は、I/Fを介して、外部装置(プリンタ1に接続されたPC(Personal Computer)等)とのデータ送受信等を行う。
【0043】
図7に示すように、制御部100は、プリンタ1全体を制御するものであり、モード変更部131、回転体回転制御部132、回転体昇降制御部133、印刷制御部134、吐出履歴記憶部135、加湿制御部136、強制吐出制御部137、ワイプ制御部138、プリンタ1の動作モードが記憶される動作モード記憶部139、判定部140、時間計測部141、及び、実行時間記憶部142を有している。
【0044】
モード変更部131は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを変更する。具体的には、外部装置から印刷データを受信した場合には、プリンタ1の動作モードを記録モードに変更する。また、モード変更部131は、印刷データに伴う画像記録が完了した場合、動作モードを記録待機モードに変更する。また、印刷データに伴う画像記録が完了した後、所定時間経過するまで新たな印刷データを受信しなかった場合、動作モードをメンテナンスモードに変更する。動作モード記憶部139には、記録モード、記録待機モード、及びメンテナンスモードのうちのいずれかが記憶されている。
【0045】
回転体回転制御部132は、モード変更部131が記録待機モードからメンテナンスモードに変更した際に、回転体58を第1回転状態から第2回転状態へと切り替えるように、回転体58を制御する。また、回転体回転制御部132は、モード変更部131がメンテナンスモードから記録モードに変更した際には、回転体58を第2回転状態から第1回転状態へと切り替えるように、回転体58を制御する。
【0046】
回転体昇降制御部133は、モード変更部131が記録待機モードからメンテナンスモードに変更した際に、凹状部材52が離隔位置から当接位置まで上昇するように、回転体昇降機構56を制御する。また、回転体昇降制御部133は、モード変更部131がメンテナンスモードから記録モードに変更した際に、凹状部材52が当接位置から離隔位置まで下降するように、回転体昇降機構56を制御する。
【0047】
印刷制御部134は、外部装置から受信した印刷データ(ヘッド10からのインク吐出データや搬送データを含む)に基づいて、用紙Pに対してインクが吐出されるように、ヘッド10、及び搬送機構33を制御して、画像記録を行う。なお、本実施形態において、インク吐出データは各吐出口14aから印字周期ごとに吐出されるインクの量が4種類(ゼロ、小量、中量、大量)のいずれであるかを示している。また、印刷制御部134は、加湿メンテナンスが行われている最中に印刷データを受信した場合、加湿メンテナンスが中止されてから、当該受信した印刷データに基づいて、ヘッド10及び搬送機構33を制御して画像記録を行う。
【0048】
吐出履歴記憶部135は、印刷データに基づいて各吐出口14aから用紙Pに吐出されたインクの吐出履歴を記憶する。なお、吐出履歴記憶部135は、新たな印刷データを受信する度に、前回の印刷データに関するすべての吐出口14aに係る吐出履歴を消去し、今回受信した印刷データによるインクの吐出履歴を記憶する。
【0049】
判定部140は、吐出履歴記憶部135に記憶された吐出履歴に基づいて、主走査方向に関して吐出面10aの中心よりも一側及び他側の吐出口14aのいずれからのインク吐出量が多いかを判定する。ここでいう吐出面10aの一側とは、封止状態において開口30と対向する位置を含む領域である。一方、他側とは、封止状態において開口31と対向する位置を含む領域である。
【0050】
時間計測部(計測手段)141は、加湿空気の供給が開口30から実行された時間である第1実行時間(ポンプ63の稼働中において第1切換状態を取る実行時間)と、加湿空気の供給が開口31から実行された時間である第2実行時間(ポンプ63の稼働中において第2切換状態を取る実行時間)とを計測する。実行時間記憶部142は、時間計測部141によって計測された第1及び第2実行時間を記憶する。なお、実行時間記憶部142は、加湿メンテナンスを行う度に、前回の加湿メンテナンスによる第1及び第2実行時間を消去し、今回の加湿メンテナンスによる第1及び第2実行時間を記憶する。
【0051】
加湿制御部136は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードがメンテナンスモードであるときに、吐出空間V1内の空気が加湿されるように、ポンプ63及び切換弁66を制御して、加湿メンテナンスを行う。より詳細には、加湿制御部136は、封止状態において、各開口30,31から吐出空間V1に加湿空気を供給する供給動作の回数を同じにするとともに、各開口30,31における供給動作の時間が同じになるように、切換弁66を制御する。本実施形態においては、開口30及び開口31のそれぞれから1回5秒の加湿空気の供給動作が交互に2回ずつ行われる。つまり、開口30から吐出空間V1に加湿空気が供給される第1供給時間(2回の供給動作の累積時間)が10秒となり、開口31から吐出空間V1に加湿空気が供給される第2供給時間(2回の供給動作の累積時間)が10秒となる。
【0052】
また、加湿制御部136は、判定部140が吐出面10aの一側からのインク吐出量が多いと判定した場合、開口31から加湿空気を供給した後、開口30から加湿空気が供給されるように、切換弁66を制御する。つまり、切換弁66を、まず第2切換状態とし、その後に第1切換状態とする。また、加湿制御部136は、判定部140が吐出面10aの他側からのインク吐出量が多いと判定した場合、開口30から加湿空気を供給した後、開口31から加湿空気が供給されるように、切換弁66を制御する。つまり、切換弁66を、まず第1切換状態とし、その後に第2切換状態とする。なお、加湿制御部136は、吐出履歴記憶部135に記憶された吐出履歴に基づいて、吐出面10aの一側及び他側からのインク吐出量が同じ場合、前回の加湿メンテナンスにおいて最後に吐出空間V1に供給した開口から今回の加湿空気の供給を行うように、切換弁66を制御する。これにより、加湿空気を供給する際に、不要な切換弁66の切り換え動作がなくなり、今回の加湿空気の供給動作を早く行うことが可能となる。
【0053】
また、加湿制御部136は、加湿メンテナンスを行っている最中に印刷データを受信したときに、実行時間記憶部142に記憶された第1及び第2実行時間のうち、短い方の実行時間が長い方と同じ長さになるように、短い方の実行時間に係る開口から吐出空間V1に加湿空気が供給されるように、切換弁66の切換制御を行う。この後、加湿制御部136は、吐出空間V1への加湿空気の供給を中止するように、ポンプ63を停止する。
【0054】
強制吐出制御部137は、モード変更部131が、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードをメンテナンスモードから記録モードに変更するとき等において、ヘッド10から対向面80に向けてインクをパージするように、パージ機構8を制御して、強制吐出メンテナンスを行う。本実施形態における強制吐出制御部137は、ヘッド10からパージを行うようにパージ機構8を制御しているが、フラッシングによる強制吐出メンテナンスを行うように、ヘッド10を制御してもよい。
【0055】
ワイプ制御部138は、強制吐出制御部137による強制吐出メンテナンスが終了したときに、吐出面10a上の異物が払拭されるようにワイパ9を制御する。なお、ワイパ9は、ゴム等の弾性体からなり、副走査方向に延在する板状部材である。ワイプ制御部138は、ワイパ9を吐出面10aに接触しつつ主走査方向に移動させることで、吐出面10a上の異物(インク等)を払拭する。
【0056】
次に、図8を参照し、加湿メンテナンスに係るプリンタ1の一連の動作フローについて説明する。なお、この図8の動作フローの開始時における、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードは記録待機モードである。
【0057】
まず、モード変更部131が、印刷制御部134による画像記録が完了した時から所定時間経過したか否かを判断する(S1)。所定時間経過していないと判断した場合(S1:NO)には、ステップS1の処理に戻る。なお、所定時間経過する前に外部装置から印刷データを受信した際には、モード変更部131は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを記録モードに変更し、印刷制御部134が印刷データに伴う画像記録を行う。
【0058】
一方、所定時間経過したと判定した場合(S1:YES)には、モード変更部131は動作モード記憶部139に記憶されている動作モードをメンテナンスモードに変更する(S2)。次に、回転体回転制御部132は、回転体58が第1回転状態から第2回転状態へと移行するように、回転体58を回転させる(S3)。これにより、対向部材53の対向面80が吐出面10aと対向することになる。
【0059】
次に、回転体昇降制御部133が、回転体昇降機構56を制御して回転体58を上昇させることにより、凹状部材52を離隔位置から当接位置へと上昇させる(S4)。これにより、凹状部材52の環状部材54の先端54aが吐出面10aと当接されるので、吐出面10aと対向する吐出空間V1は、外部空間V2から封止されることになる。
【0060】
次に、加湿制御部136が、吐出空間V1とタンク64との間で空気循環が生じるように、ポンプ63及び切換弁66を駆動して、加湿メンテナンス行う(S5)。具体的には、加湿制御部136は、判定部140が吐出面10aの一側からのインク吐出量が多いと判定した場合、まず、切換弁66を第2切換状態とし、ポンプ63を駆動する。その後、5秒経過する度に、切換弁66を第2切換状態→第1切換状態→第2切換状態→第1切換状態へと切り換える。一方、加湿制御部136は、判定部140が吐出面10aの他側からのインク吐出量が多いと判定した場合、まず、切換弁66を第1切換状態とし、ポンプ63を駆動する。その後、5秒経過する度に、切換弁66を第1切換状態→第2切換状態→第1切換状態→第2切換状態へと切り換える。このような、各開口30,31から交互に加湿空気を供給する加湿メンテナンスを行うことで、主走査方向に関して、吐出空間V1の湿度を短時間で均一にすることが可能となる。このため、開口30近傍、及び、開口31近傍のインクの増粘も短時間で抑制することができる。
【0061】
次に、加湿制御部136が、開口30から第1供給時間、開口31から第2供給時間だけ吐出空間V1に加湿空気を供給したか否か判定する(S6)。そして、第1及び第2供給時間だけ加湿空気が供給された場合(S6:YES)、加湿制御部136がポンプ63を停止し、加湿メンテナンスを終了する(S7)。次に、モード変更部131が、外部装置から印刷データを受信したか否かを判定する(S8)。印刷データを受信していないと判定した場合(S8:NO)には、ステップS8の処理に戻る。一方、印刷データを受信したと判定した場合(S8:YES)には、モード変更部131は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを記録モードに変更する(S9)。この後、後述のS13に進む。
【0062】
一方、第1供給時間及び第2供給時間の少なくともいずれかが経過しておらず、加湿メンテナンスが行われている場合(S6:NO)、モード変更部131が、外部装置から印刷データを受信したか否かを判定する(S10)。
【0063】
印刷データを受信していないと判定した場合(S10:NO)には、ステップS6の処理に戻る。一方、加湿メンテナンスの最中(加湿空気の供給動作中)に印刷データを受信したと判定した場合(S10:YES)には、モード変更部131は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを記録モードに変更する(S11)。
【0064】
次に、加湿制御部136は、印刷データを受信したときに、実行時間記憶部142に記憶された第1及び第2実行時間のうち、短い方の実行時間が長い方と同じ長さになるように、短い方の実行時間に係る開口から吐出空間V1に加湿空気が供給されるように、切換弁66の切換制御を行う。例えば、開口30からの加湿空気の1回目の供給動作が行われている途中に印刷データを受信すると、この時点での第1実行時間と同じ時間だけ、開口31からの加湿空気の供給動作が行われるように、切換弁66を第1切換状態から第2切換状態へと切り換える。そして、第2実行時間が第1実行時間と同じ時間になるときに、ポンプ63を停止させる。こうして、加湿メンテナンスを中止する(S12)。
【0065】
次に、強制吐出制御部137が、パージ機構8を制御することにより、ヘッド10から対向面80に向けてインクをパージして、強制吐出メンテナンスを行う(S13)。なお、対向面80にパージされたインクは、廃液部に廃棄される。なお、加湿メンテナンスが中止されたS12を経由した場合の方が、加湿メンテナンスが完了したS9を経由する場合に比べて、この強制吐出メンテナンスにおいてパージされるインクの量が多い。
【0066】
次に、回転体昇降制御部133は、回転体昇降機構56を制御して回転体58を下降させることにより、凹状部材52を当接位置から離隔位置へと下降させる(S14)。これにより、凹状部材52の環状部材54の先端54aと、吐出面10aとが離隔されるので、吐出面10aと対向する吐出空間V1は、外部空間V2に対して開放される。なお、このS13の処理では、凹状部材52を当接位置から離隔位置へと下降させた後において、ワイプ制御部138がワイパ9を制御して吐出面10a上の異物を払拭する処理も行われる。
【0067】
次に、回転体回転制御部132は、回転体58が第2回転位置状態から第1回転位置状態へと移行するように、回転体58を回転させる(S15)。これにより、プラテン51の支持面51aが吐出面10aと対向することになる。
【0068】
そして、印刷制御部134が、受信した印刷データに基づいて、ヘッド10及び搬送機構33を制御して、用紙Pへの画像記録を行う(S16)。次に、モード変更部131が、印刷データに伴う画像記録の完了時に、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを記録待機モードに変更し(S17)、ステップS1の処理に戻る。
【0069】
以上に述べたように、本実施形態によると、加湿メンテナンスにおいて、加湿空気が2つの開口30,31から交互に供給されるため、主走査方向に関して吐出面10aと対向する吐出空間V1の湿度に高低差が生じにくくなる。つまり、封止状態の吐出空間V1の湿度を短時間で均一にすることが可能となる。
【0070】
また、加湿メンテナンスを行う際の吐出空間V1への加湿空気の供給を、インク吐出量の少ない方の開口30(又は開口31)側から行う。このため、吐出面10aにおいて、吐出口14a内のインクの乾燥が進む割合が多い側から加湿空気を供給して、複数の吐出口14aの粘度を短時間で均一とすることが可能となる。
【0071】
変形例として、判定部140は、吐出履歴記憶部135に記憶された吐出履歴に基づいて、主走査方向に関して吐出面10aの中心よりも一側及び他側の吐出口14aのいずれからのインク吐出回数が多いかを判定してもよい。そして、加湿制御部136は、判定部140が吐出面10aの一側からのインク吐出回数が多いと判定した場合、開口31から加湿空気を供給した後、開口30から加湿空気が供給されるように、切換弁66を制御する。また、加湿制御部136は、判定部140が吐出面10aの他側からのインク吐出回数が多いと判定した場合、開口30から加湿空気を供給した後、開口31から加湿空気が供給されるように、切換弁66を制御する。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、別の変形例として、加湿制御部136は、前回の加湿メンテナンスにおいて最後に吐出空間V1に供給した開口から今回の加湿空気の供給を行うように、切換弁66を制御してもよい。こうすれば、吐出履歴記憶部135、判定部140などを設ける必要がなくなり、制御構成が簡易になる。さらには、加湿空気を供給する際に、不要な開口の切り換え動作がなくなり、今回の加湿空気の供給動作を早く行うことが可能となる。
【0073】
また、加湿メンテナンスにおける第1供給時間及び第2供給時間が同じであるため、主走査方向に関して吐出空間V1の湿度をより短時間で均一にすることが可能となる。
【0074】
また、別の変形例として、加湿制御部136は、判定部140が吐出面10aの一側からのインク吐出量(又は吐出回数)が多いと判定した場合、第2供給時間が第1供給時間よりも長くなるように、判定部140が吐出面10aの他側からのインク吐出量(又は吐出回数)が多いと判定した場合、第1供給時間が第2供給時間よりも長くなるように、切換弁66を制御してもよい。これにより、吐出面10aにおいて、吐出口14a内のインクの乾燥が進む割合が多い側への加湿空気の供給を多くし、吐出口14a内のインクの乾燥を効果的に抑制することが可能となる。
【0075】
また、加湿制御部136は、加湿メンテナンスの最中に印刷データを受信しても、吐出空間V1に加湿空気を供給した第1及び第2実行時間を同じ長さにした状態で加湿メンテナンスを中止する。このように第1及び第2実行時間が同じ長さになることで、複数の吐出口14aの粘度を均一にした状態で当該加湿空気の供給を中止し、安定したインク吐出を行うことが可能となる。
【0076】
また、別の変形例として、モード変更部131は、プリンタ1の電源スイッチ(不図示)がユーザによって操作され、装置の電源をオフにする電源オフ信号及び装置を省電力モードに切り換えるスリープ信号(待機信号)を受信した場合、動作モードをメンテナンスモードに変更する。このとき、加湿制御部136は、電源オフ信号及びスリープ信号の受信によるメンテナンスモードにおいては、封止状態の吐出空間V1に開口30(又は開口31)から所定時間(第1及び第2供給時間の合計よりも長い時間)だけ加湿空気を供給するように、ポンプ63及び切換弁66を制御する。一方、加湿制御部136は、これ以外(電源オフ信号及びスリープ信号の受信以外によるメンテナンスモード:画像記録が完了した後、所定時間経過するまで新たな印刷データを受信せず、モード変更部131によってメンテナンスモードに変更されたとき)において、封止状態の吐出空間V1に各開口30,31から交互に加湿空気を供給するように、ポンプ63及び切換弁66を制御する。これにより、プリンタ1の電源オフ状態及びスリープ状態においては、吐出空間V1の湿度を短時間で均一にする必要がないので、開口30,31の切り換えに要する消費電力を抑制することが可能となる。
【0077】
また、別の変形例として、図9に示すように、対向面80の主走査方向及び副走査方向の中心(開口30,31を結ぶ直線の中心)には、吐出空間V1に供給された加湿空気を排出する排出口(第3開口)250が形成されていてもよい。この排出口250は、配管251が接続されている。配管251には、封止状態の吐出空間V1の圧力が大気圧以上であって吐出口14aに形成されたインクメニスカス耐圧を越える直前に、吐出空間V1の空気を外部空間V2に排出するように設定されたリリーフ弁が設けられている。この場合、開口30,31からは、加湿空気の供給だけが交互に行われればよい。このように、2つの開口30,31から加湿空気の供給だけが行われる構成であっても、排出口250を別途設けることにより、吐出空間V1内の空気の排出をスムーズに行うことができる。
【0078】
また、上述の実施形態では、キャップ手段は凹状部材52を昇降させることで封止状態と開放状態とを取り得るようにされていたが、図10に示すように、ヘッド10の周囲に環状移動体500を設け、この環状移動体500を昇降させることにより、封止状態と開放状態とを取り得るようにしてもよい。なお、上述の実施形態と同一の構成においては、同符号で示し説明を省略する。
【0079】
本変形例においては、図10に示すように、キャップ固定部材57には、凹状部材52の代りに、凹状部材52から環状部材54を省いた対向部材53のみが固定されている。また、支持・キャップユニット50は回転体昇降機構56の代わりに、上述したように環状移動体500を含む。また、対向部材53は、主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aより一回り大きなサイズを有している。
【0080】
環状移動体500は、弾性部材からなり、平面視でヘッド10の吐出面10aを囲む環状に形成されている。環状移動体500の下端には、断面視逆三角形状の突出部501が形成されている。
【0081】
環状移動体500は、ギア502の駆動により上下に移動可能である。当該移動によって、環状移動体500は、突出部501が吐出面10aよりも上方に位置する上昇位置と、突出部501が吐出面10aよりも下方に位置する下降位置(図10参照)とを取り得る。制御部100は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードがメンテナンスモードである場合には、環状移動体500が下降位置を取り、それ以外の時には環状移動体500が上昇位置を取るように、ギア502の駆動を制御する。
【0082】
環状移動体500が下降位置をとるときには、図10に示すように、対向面80の周縁部82に突出部501の先端501aが当接することによって吐出空間V1が外部空間V2から封止される。また環状移動体500が上昇位置をとるときには、対向面80の周縁部82から、突出部501の先端501aが離隔されており吐出空間V1が外部空間V2に開放される。本変形例においては、環状移動体500、ギア502、対向部材53、及び制御部100でキャップ手段が構成されている。このようなキャップ手段であっても、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0083】
さらに変形例として、開口30,31が環状移動体500に設けられていてもよい。この場合、開口30,31が、主走査方向に関して吐出面10aを挟む位置に配置される。また、別の変形例として、開口30,31が、吐出面10aの主走査方向の両端部に形成されていてもよい。この場合、2つの開口30,31が、主走査方向に関して、すべての吐出口14aを挟む位置に配置されていることが好ましい。これにおいても、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0084】
また、上述の実施形態における加湿ユニット60は、図11に示すような加湿ユニット360であってもよい。この加湿ユニット360は、8つの配管365a〜365h、2つのポンプ363a,363b、4つの開閉弁366a〜366d、及び、タンク64を含む。配管365aは、開口31とポンプ363aとを接続する。配管365bは分岐されており、ポンプ363aと開閉弁366a,366bとを接続する。配管365cは、開閉弁366aとタンク64とを接続する。配管365dは、開閉弁366bとタンク64とを接続する。配管365eは、タンク64と開閉弁366cとを接続する。配管365fは、タンク64と開閉弁366dとを接続する。配管365gは分岐されており、ポンプ363bと開閉弁366c,366dとを接続する。配管365hは、開口30とポンプ363bとを接続する。
【0085】
配管365d,365fは、タンク64内の水面よりも下方に接続され、タンク64の下部空間と連通している。配管365c,365eは、タンク64内の水面よりも上方に接続され、タンク64の上部空間と連通している。なお、配管365d,365fには逆止弁が取り付けられており、タンク64内の水が開閉弁366b,366d側に流れないように構成されている。
【0086】
このような構成において、制御部100の制御により、開閉弁366a,366dを閉じ開閉弁366b,366cを開けた状態でポンプ363aが駆動されると、図11(a)に示すように、開口31から配管365a,365b,365dを介して回収した吐出空間V1内の空気をタンク64で加湿し、この加湿空気を、配管365e,365g,365hを介して開口30から吐出空間V1内へと供給することが可能となる。一方、制御部100の制御により、開閉弁366b,366cを閉じ開閉弁366a,366dを開けた状態でポンプ363bが駆動されると、図11(b)に示すように、開口30から配管365h,365g,365fを介して回収した吐出空間V1内の空気をタンク64で加湿し、この加湿空気を、配管365c,365b,365aを介して開口31から吐出空間V1内へと供給することが可能となる。このように本変形例においても、上述の実施形態と同様な効果を得ることが可能となる。なお、ポンプ363a,363bは駆動されていなときは、配管同士を繋ぐ流路として機能する。
【0087】
また、別の変形例として、図12に示すような加湿ユニット460であってもよい。この加湿ユニット460は、3つの配管465a〜465c、ポンプ463、タンク64及びヒータ466を含む。配管465aは、開口31とポンプ463とを接続する。配管465bは、ポンプ463とタンク64とを接続する。配管465cは、タンク64と開口30とを接続する。配管465b,465cは、タンク64内の水面よりも上方に接続され、タンク64の上部空間と連通している。ヒータ466は、制御部100の制御により、タンク64の下部を加熱する。これにより、タンク64内の水が加熱されて上部空間に加湿空気が生成される。ポンプ463は、正逆回転可能に構成されている。
【0088】
このような構成において、制御部100の制御により、ヒータ466が加熱されポンプ463が正回転で駆動されると、開口31から配管465a,465bを介して回収した吐出空間V1内の空気をタンク64に供給し、タンク64の上部空間の加湿空気を、配管465cを介して開口30から吐出空間V1内へと供給することが可能となる。一方、制御部100の制御により、ヒータ466が加熱されポンプ463が逆回転で駆動されると、開口30から配管465cを介して回収した吐出空間V1内の空気をタンク64に供給し、タンク64の上部空間の加湿空気を、配管465b,465aを介して開口31から吐出空間V1内へと供給することが可能となる。このように本変形例においても、上述の実施形態と同様な効果を得ることが可能となる。
【0089】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、一方の開口30(又は開口31)から吐出空間V1に加湿空気を供給する際は、他方の開口31(又は開口30)から吐出空間V1の空気を排出しているが、いずれの開口30,31からも吐出空間V1へ加湿空気の供給だけが交互に行われていてもよい。この場合、封止状態の吐出空間V1の圧力が大気圧以上であって吐出口14aに形成されたインクメニスカス耐圧を越える直前に、吐出空間V1の空気を外部空間V2に排出することが可能なように、吐出面10aと環状部材54の先端54aと(対向面80の周縁部82と突出部501の先端501aと)を接触させておけばよい。
【0090】
また、第1供給時間及び第2供給時間のいずれか一方又は両方が、1回の供給動作に係る時間であってもよい。つまり、上述の実施形態においては、各開口30,31から2回ずつ供給動作が行われているが、いずれか一方の供給動作が1回、両方の供給動作が1回であってもよい。さらに、第1供給時間及び第2供給時間が3以上の供給動作に係る累積時間であってもよい。
【0091】
また、2つの開口30,31は、主走査方向に関して、すべての吐出口14aを挟む位置に形成されていなくてもよい。つまり、複数の吐出口14aを主走査方向に関して挟む位置に配置されておればよい。また、2つの開口30,31が、環状部材54に形成されていてもよい。
【0092】
また、上述の実施形態において、回転体58を含む支持・キャップユニット50ではなく、記録モードからメンテナンスモードに変更した際、プラテン51を下降させ、主走査方向に待機させていた凹状部材52をプラテン51と吐出面10aの間に移動させ、その後、凹状部材52の環状部材54の先端54aを吐出面10aと当接させる構成としてもよい。
【0093】
本発明は、モノクロプリンタのみならず、カラープリンタにも適用可能である。さらに本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。ヘッドは、インク以外の任意の液体を吐出してよい。また、液体吐出装置に含まれるヘッドの数は複数であってもよい。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な任意の媒体であってよい。
【符号の説明】
【0094】
1 プリンタ(液体吐出装置)
10 ヘッド(液体吐出ヘッド)
10a 吐出面
14a 吐出口
30 開口(第1開口)
31 開口(第2開口)
100 制御部(制御手段)
135 吐出履歴記憶部
140 判定部
141 時間計測部(計測手段)
142 実行時間記憶部
250 排出口(第3開口)
V1 吐出空間
V2 外部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数の吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から封止する封止状態と、前記吐出空間を前記外部空間に対して封止しない開放状態とを取り得るキャップ手段と、
一方向に関して少なくとも前記吐出面の一部を挟む位置に配置され、前記吐出空間に対して空気の供給を行うための第1開口及び第2開口と、
加湿空気を生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された加湿空気を前記第1開口又は第2開口を介して前記吐出空間に供給する供給手段と、
前記加湿空気を前記封止状態の前記吐出空間に供給する際、前記第1開口及び前記第2開口から交互に前記加湿空気を供給するように、前記供給手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
記録媒体に対する前記複数の吐出口からの液体吐出履歴を記憶する吐出履歴記憶部と、
前記吐出履歴記憶部に記憶された前回の記録媒体に対する液体吐出履歴に基づいて、前記一方向に関して、前記第1開口及び第2開口に挟まれた前記吐出面の中心よりも前記第1開口側及び前記第2開口側のいずれからの液体吐出量又は液体吐出回数が多いかを判定する判定部とをさらに備えており、
前記制御手段は、前記判定部が前記第1開口側からの前記液体吐出量又は液体吐出回数が多いと判定した場合、前記第2開口から前記加湿空気を供給した後、前記第1開口から前記加湿空気を供給するように、前記判定部が前記第2開口側からの前記液体吐出量又は液体吐出回数が多いと判定した場合、前記第1開口から前記加湿空気を供給した後、前記第2開口から前記加湿空気を供給するように、前記供給手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前回の前記加湿空気の供給において最後に前記吐出空間に供給した前記第1及び第2開口の一方から今回の前記加湿空気の供給を行うように、前記供給手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、加湿空気の前記吐出空間への供給終了時において、前記加湿空気を前記第1開口から前記吐出空間に供給する第1供給時間と、前記加湿空気を前記第2開口から前記吐出空間に供給する第2供給時間とが同じ長さになるように、前記供給手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記判定部が前記第1開口側からの前記液体吐出量又は液体吐出回数が多いと判定した場合、前記加湿空気を前記第2開口から前記吐出空間に供給する第2供給時間が前記加湿空気を前記第1開口から前記吐出空間に供給する第1供給時間よりも長くなるように、前記判定部が前記第2開口側からの前記液体吐出量又は液体吐出回数が多いと判定した場合、前記第1供給時間が前記第2供給時間よりも長くなるように、前記供給手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1開口からの前記加湿空気の供給が既に実行された時間である第1実行時間、及び、前記第2開口からの前記加湿空気の供給が既に実行された時間である第2実行時間を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測された前記第1及び第2実行時間を記憶する実行時間記憶部とをさらに備えており、
前記制御手段は、前記加湿空気を前記吐出空間へ供給している最中に前記液体吐出ヘッドからの液体吐出信号を受信したとき、前記実行時間記憶部に記憶された前記第1及び第2実行時間のうち、短い方の実行時間が長い方と同じ長さになるように、前記短い方の実行時間に係る開口から前記吐出空間に前記加湿空気を供給した後、前記吐出空間への前記加湿空気の供給を中止するように、前記供給手段を制御することを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御手段は、電源オフ信号及び待機信号のいずれかを受信したときに、前記第1及び第2開口のいずれかだけから前記加湿空気を前記封止状態の前記吐出空間に供給するように、前記供給手段を制御し、これ以外において前記加湿空気を前記封止状態の前記吐出空間に供給する際に、前記第1開口及び前記第2開口から交互に前記加湿空気を供給するように、前記供給手段を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記供給手段は、前記吐出空間に供給された前記加湿空気を前記第2開口又は前記第1開口を介して前記吐出空間から前記生成手段に戻すことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記吐出空間に対して空気の排出を行うための第3開口をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−10300(P2013−10300A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145441(P2011−145441)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】