液体吐出記録ヘッドおよびそれを備える液体吐出記録装置
【課題】ヘッドの個別情報などを記憶可能な情報記憶素子を備える液体吐出記録ヘッドにおいて、情報記憶素子が静電気の影響を受けにくくする。
【解決手段】液体吐出記録ヘッドは、液体吐出記録装置の、対応する複数の接点にそれぞれ接続される複数の外部信号入力端子H1302を有し、外部信号入力端子H1302は、周囲より凹となった第1の面H1305と、それより高くなった第2の面H1306に配置されている。液体吐出記録ヘッドに設けられた情報記憶素子に直接的に接続されたIDコンタクトパッドH1302dは、第1の面H1305に、第2の面H1306との境界に沿って列状に配置されている。
【解決手段】液体吐出記録ヘッドは、液体吐出記録装置の、対応する複数の接点にそれぞれ接続される複数の外部信号入力端子H1302を有し、外部信号入力端子H1302は、周囲より凹となった第1の面H1305と、それより高くなった第2の面H1306に配置されている。液体吐出記録ヘッドに設けられた情報記憶素子に直接的に接続されたIDコンタクトパッドH1302dは、第1の面H1305に、第2の面H1306との境界に沿って列状に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体(以下単にインクと称する)を吐出して記録動作を行う液体吐出記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)およびそれを備える液体吐出記録装置(インクジェット記録装置)に関する。本発明は、インクジェット記録ヘッドを利用した一般的なプリント装置のほか、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、あるいは、これらの装置を複合した多機能記録装置等に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置に対して着脱可能なインクジェット記録ヘッドに、自身のID(Identity)コードやインク吐出機構の駆動特性といったヘッド固有の情報(個別情報)を読み出し自在に保持させることが提案されている。それによって、例えば、インクジェット記録装置側で、装着されたインクジェット記録ヘッドに関する情報を認識し、そのヘッドでのインク吐出に最適な駆動制御を実行するといったことが可能となる。このために、インクジェット記録基板にROM(Read Only Memory)を搭載することが知られており、特許文献1には、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)を搭載することが開示されている。
【0003】
上記の他、インクジェット記録ヘッドのインクジェット記録用基板のベース基板に、インク吐出機構などを構成する層膜とともにヘッド固有の情報を示す抵抗を形成する手法も知られている。この場合、インクジェット記録装置側で、ベース基板に形成された抵抗の値を読み込むことで、搭載されたインクジェット記録ヘッドに関する情報を得ることができる。この手法は、情報量が比較的少ない場合有効である。
【0004】
また、特許文献2には、インクジェット記録用基板を製造するためのベース基板に、インク吐出機構などを構成する層膜を形成するときに、ROMとして機能するヒューズを同時に形成することが開示されている。このヒューズは、同時に形成したロジック回路などを利用して選択的に溶断され、それによって、二値データが書き込まれ保持される。
【0005】
また、記録装置に対して着脱可能なインクジェット記録ヘッドの場合、使用者の手が装着時に必ず触れることになり、この際に、ヘッドの、記録装置側との接続用の電気端子に静電気の影響が及ぶことが懸念される。このような静電気からヘッドを保護するための提案として、特許文献3には、インクジェット記録装置本体との電気的接続を行うコンタクトパッドの周囲に放電回路を設けることが開示されている。
【特許文献1】特開平3−126560号
【特許文献2】特許第3428683号
【特許文献3】特開平07−060953号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような、ROMやEEPROMなどの情報記憶素子を搭載するインクジェット記録ヘッドにおいては、どうしても装置構成が複雑になるため、生産性の向上や小型軽量化を図るための種々の改善が望まれている。基本的に、ROMチップは、記録データが大容量の場合は有用であるが、記録データが大容量でない場合には、コスト面で不利になることがあり、この点で改善の余地が残されている。
【0007】
これに対して、層膜形成工程でヘッド固有の情報を保持する素子を形成する手法によれば、ヘッドの固有情報保持のために、構造が複雑になったり、工程が増えたりするのを抑制できる。このため、個別情報を保持したヘッドを、簡素な構造で、小型軽量なものとし、生産性を損なうことなく、低コストで提供することができる。
【0008】
このようにして個別情報を記憶可能としたインクジェット記録ヘッドの場合、静電気への配慮が特に重要である。すなわち、インクジェット記録用基板上に設けられた、ヘッド固有の情報を記憶する微細な情報記憶素子は、特に静電気に対して弱く、静電気によって、破壊され、もしくは情報内容が書き換えられてしまうことが危惧される。
【0009】
特許文献3に記載のインクジェット記録ヘッドにおいては、静電気の影響は回避されるものの、基板上に放電回路を別途設けなければならない。このため、スペース効率の向上、ヘッドの小型化、低コスト化などを図るための種々の改善が望まれている。
【0010】
以上のことから、本発明の目的は、ヘッドの個別情報などを記憶可能な情報記憶素子を備えながら、簡単な構成を有し、情報記憶素子が静電気の影響を受けにくい液体吐出記録ヘッドおよびそれを備える液体吐出記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の液体吐出記録ヘッドは、液体吐出記録装置に着脱可能な液体吐出記録ヘッドであって、液体吐出記録装置に備えられた複数の接点に接触して電気的に接続される複数のコンタクトパッドと、液体吐出記録装置によって読み出し可能な情報を記憶する情報記憶素子とを有し、コンタクトパッドは、外面の、周囲に対して凹となった第1の面と、第1の面より高くなった第2の面とに配置されており、コンタクトパッドは、情報記憶素子に直接的に接続された情報出力コンタクトパッドを含み、情報出力コンタクトパッドは第1の面に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特別な回路を設けることなく、ヘッドの形状に少し工夫を加えることで、ヘッドの着脱時に発生する可能性のある静電気によって情報記憶素子が破壊されたり、情報記憶素子に記憶された情報が書き換えられたりするのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施例)
図3,4に、第1の実施例の記録ヘッド(液体吐出記録ヘッド)H1001を示す。
【0014】
図示の記録ヘッドH1001は、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを吐出させるものであり、これらのインクの収容部が一体に構成されたインクタンク一体型のものである。この記録ヘッドH1001は、後述するように、インクジェット記録装置本体に搭載されているキャリッジ上に着脱可能に装着され、保持しているインクが消費されて無くなった場合は、新たな記録ヘッドと交換することができる。
【0015】
記録ヘッドH1001は、図4の分解斜視図に示すように、インク吐出機構を構成する記録素子基板(液体吐出機構部)H1101を有している。記録素子基板H1101は、それに供給されるインクの収容部を蓋部材H1901と共に形成し、また、インク収容部から記録素子H1101へのインク供給路を形成するインク供給保持部材H1501に取り付けられている。また、インク供給保持部材H1501には、記録素子基板H1101とキャリッジとを電気的に接続するための電気配線テープH1301も取り付けられている。以下、記録ヘッドH1001の、これらの構成要素についてより詳細に説明する。
【0016】
(1)記録素子基板H1101
図5は、記録素子基板H1101の構成を説明する、一部を破断して示す斜視図である。
【0017】
この記録素子基板H1101は、インクに膜沸騰を生じさせるための熱エネルギを電気信号に応じて生成する電気熱変換素子(記録素子)H1103を用いたバブルジェット(登録商標)方式のインク吐出機構を構成している。このインク吐出機構は、電気熱変素子H1103と吐出口H1108とが対向するように配置された、いわゆるサイドシュータ型の構成を有している。
【0018】
記録素子基板H1101は、例えば、厚さ0.5mm〜1mmのSi基板H1110を有している。Si基板H1110には、シアン、マゼンタ、イエロー用の3個のインク供給口H1102が並列して形成されている。インク供給口H1102は長溝状の貫通口であり、Siの結晶方位を利用した異方性エッチングやサンドブラストなどの方法で形成することができる。
【0019】
Si基板H1110上には、各インク供給口H1102を挟んでその両側に、電気熱変換素子H1103が1列ずつ並べて配置されており、さらに電気熱変換素子H1103に電力を供給するAlなどからなる電気配線などを含む電気回路(不図示)が形成されている。これら電気熱変換素子H1103と電気回路は、既存の成膜技術を利用して形成することができる。各列の電気熱変換素子H1103は、互いに千鳥状になるように配列されている。すなわち、各列の電気熱変換素子H1103は、両列の電気熱変換素子H1103が、その列の方向に直交する方向に並ばないように、両列間で少しずれて配置されている。
【0020】
また、Si基板H1110上には、電気回路に外部から電力を供給したり、電気熱変換素子H1103を駆動するための電気信号を外部から供給したりするための電極部H1104が設けられている。電極部H1104は、Si基板H1110上の、電気熱変換素子H1103の列の両端側に位置する辺部に沿って配列されている。各電極部H1104にはAuなどからなるバンプH1105が形成されている。
【0021】
Si基板H1110上の、電気変換素子H1103や電気回路が形成された面上には、樹脂材料からなる構造体がフォトリソ技術によって形成されている。この構造体は、インク供給口H1102から各電気熱変換素子H1103上に延びる各インク流路を形成するインク流路壁H1106と、その上方を覆う天井部とを有している。天井部には吐出口H1107が、各電気熱変換素子H1103に対向して設けられており、これによって、各色毎に吐出口群H1108が形成されている。
【0022】
上記のように構成された記録素子基板H1101では、インク供給口H1102から供給されたインクが、各電気熱変換素子H1103の発熱によって発生した気泡の圧力によって、各電気熱変換素子H1103に対向する吐出口1107から選択的に吐出される。
【0023】
次に、Si基板H1110上に形成された回路について、図6の概略図を参照して説明する。
【0024】
電気熱変換素子H1103の一端には、VH電源を供給するためのVHパッドH1104cがVH配線H1114を介して接続され、他端には、第1の駆動素子H1116が接続されている。第1の駆動素子H1116には、GNDH電源を供給するためのGNDHパッドH1104dが、GNDH配線H1113を介して接続されている。第1の駆動素子H1116は、インクジェット記録基板外部より信号が入力される信号線から、シフトレジスタ(S/R)、ラッチ回路(LT)、デコーダ、選択回路H1112を経て入力される信号に応じて電気熱変換素子H1103を駆動する。
【0025】
また、Si基板H1110上の回路には、ヘッド固有の情報を保持する情報記憶素子として機能するヒューズH1117が接続されている。本実施例では、ヒューズH1117はポリシリコン抵抗体から構成され、インク供給口H1102の短辺側方に4つ配置されている。
【0026】
各ヒューズH1117の一端には、IDパッドH1104aが接続され、また、読み出し抵抗H1111を介してID電源パッドH1104bが接続されている。各ヒューズH1117の他端には、各ヒューズH1117を選択的に溶断し、またその溶断の有無によって表される情報を選択的に読み出すのに用いられる第2の駆動素子H1118が接続されている。
【0027】
第2の駆動素子H1118は、電気熱変換素子H1103を駆動する第1の駆動素子H1116に隣接して配置されており、第1の駆動素子H1116への選択信号生成回路と同様な構造の選択信号生成回路が接続されている。本実施例の構成では、第1の駆動素子H1116と第2の駆動素子H1118とで、S/R、LT、デコーダは共用されており、したがって、両者の動作は、外部からの、共通の信号線を介した信号によって同様にコントロールすることができる。また、第2の駆動素子H1118にも、第1の駆動素子H1116と共通のGNDH配線H1113が接続されており、すなわち、第1の駆動素子H1116と第2の駆動素子H1118はGNDH配線H1113も共用している。
【0028】
各パッドH1104a〜1104d、および駆動素子H1116,1118の選択信号生成回路への、外部信号入力用のパッドは、電極部H1104の各バンプH1105(図5参照)に対応している。
【0029】
次に、ヒューズH1117の溶断、およびヒューズH1117からの情報の読み出しについて説明する。
【0030】
ヒューズH1117の溶断時には、IDパッドH1104aにヒューズ切断電源が接続され、ヒューズH1117を溶断可能な電圧(例えば電気熱変換素子の駆動電圧の24V)が印加される。そして、選択回路H1112を介して所望の第2の駆動素子H1118を動作させることによって、対応するヒューズH1117が瞬間的に溶断される。このとき、ヒューズ読み出し用電源端子であるID電源パッドH1104bはオープンにしておく。
【0031】
一方、情報の読み出し時には、ID電源パッドH1104bに読み出し用の電源が接続され、電圧(例えばロジック回路の電源電圧の3.3V)が印加される。それによって、第2の駆動素子H1118を動作させた際、対応するヒューズH1117が溶断されていればHiレベルが、溶断されていなければ、ヒューズH1117の抵抗値より明らかに大きな読み出し抵抗H1111のために、Loレベルが、IDパッドH1104aに出力される。
【0032】
ヘッド固有の情報を保持する情報記憶素子の、他の構成として、上述したヒューズH1117のかわりに単なる配線をSi基板H1110上に形成し、その配線の有無によって情報を保持するようにしてもよい。この場合、Si基板H1110上への配線の形成時に、ヘッド固有の情報に応じて選択的に配線を形成することによって、情報の書き込みを行うことになり、後からの情報の書き込みはできない。情報の読み出しは、上述したヒューズH1117を用いた場合と全く同様に行うことができる。
【0033】
さらに他の構成として、Si基板H1110上に、ヘッド固有の情報に応じた抵抗値を有する抵抗素子を形成し、その抵抗素子の一端をIDパッドH1104aに、他端をGNDHパッドH1104dに接続するようにしてもよい。この場合、インクジェット記録装置本体は、IDパッドH1104aとGNDHパッドH1104d間の抵抗値を読み取ることで、抵抗値に対応するヘッド固有情報を得ることができる。
【0034】
いずれにしても、本実施例では、情報記憶素子が、このように、記録素子基板H1101上の回路の一部として形成されているため、情報記憶素子を設けるために、記録ヘッドH1001の構造はほとんど複雑化しない。また、情報記憶素子を構成するヒューズ、配線、抵抗素子などは、Si基板H1110上の他の回路と同時に作り込むことができるので、情報記憶素子を形成するために、ほとんど工程の増加を招くこともない。したがって、情報記憶素子を有しながら、簡単な構造で、小型化の容易な記録ヘッドを低コストで提供することができる。
【0035】
(2)電気配線テープH1301
再び図3,4を参照すると、電気配線テープH1301は、記録素子基板H1101の電極部H1104の各バンプH1105とキャリッジ側の電気接続部とを接続する電気信号経路を形成するものである。この電気信号経路を介して、記録装置本体と記録素子基板H1101との間で、インクを吐出するための電気信号や、上述のようなヘッド固有情報の読み出しのための電気信号が伝達される。電気配線テープH1301は、例えば、ポリイミド製のベース基材上に銅箔の配線パターンを形成することで構成されている。
【0036】
電気配線テープH1301の一端側には、記録素子基板H1101のインク吐出面を露出させる開口部H1303が形成されている。開口部H1303の縁付近には、記録素子基板H1101の電極部H1104に接続される電極端子H1304が形成されている。電気配線テープH1301と記録素子基板H1101とは、例えば、記録素子基板H1101の電極部H1104に形成されたバンプH1105と、それらにそれぞれ対応する電気配線テープH1301の電極端子H1304とが熱超音波圧着法により電気接合されることによって電気的に接続されている。
【0037】
電気配線テープH1301の他端側には、本体装置のキャリッジの電気接続部に接続される複数の外部信号入力端子(コンタクトパッド)H1302が形成されている。外部信号入力端子H1302が形成された部分は、インク供給保持部材H1501の側面の、面H1502とH1503とで段差が生じた部分に取り付けられることによって、周囲より凹んだ第1の面H1305と、第1の面H1305と平行で第1の面H1305より外部に向かって高くなった第2の面H1306を形成している。外部信号入力端子H1302と電極端子H1304は連続した銅箔の配線パターンでつながれている。
【0038】
(3)インク供給保持部材H1501
インク供給保持部材H1501は、例えば、樹脂成形により形成されている。樹脂材料には、形状的剛性を向上させるためにガラスフィラーを5〜40%混入した樹脂材料を使用することが望ましい。
【0039】
このインク供給保持部材H1501は、インクタンク機能とインク供給機能を備えている。すなわち、インク供給保持部材H1501は、図4に示すように、シアン、マゼンタ、イエローのインクを保持するための負圧を発生するインク吸収体H1601,H1602,H1603を内部にそれぞれ独立して保持するための空間(液体収容部)を有することでインクタンク機能を実現している。また、インク供給保持部材H1501は、これらの、インク吸収体1601,H1602,H1603を保持する独立した空間から記録素子基板H1101の各インク供給口H1102にそれぞれインクを導くための独立したインク流路を形成することでインク供給機能を実現している。
【0040】
インク吸収体H1601、H1602、H1603は、例えば、PP(ポリプロピレン)繊維を圧縮したものであるが、これに替えてウレタン繊維を圧縮したものを用いてもよい。インク供給保持部材H1501内の各インク流路の上流に位置するインク吸収体H1601、H1602、H1603と各インク流路との境界部には、記録素子基板H1101内部へのゴミの進入を防ぐためのフィルタH1701,H1702,H1703が設けられている。フィルタH1701,H1702,H1703は、それぞれ溶着によりインク供給保持部材H1501に接合されている。フィルタH1701、H1702、H1703は、SUS(ステンレス)金属メッシュタイプでもよいが、SUS金属繊維焼結タイプの方がより好ましい。
【0041】
インク供給保持部材H1501内のインク流路の下流側には、記録素子基板H1101にシアン、マゼンタ、イエローの各インクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。記録素子基板H1101は、その各インク供給口H1102がインク供給保持部材H1501の各インク供給口H1201に連通するように、インク供給保持部材H1501に対して位置精度良く接着固定されている。この接着に用いられる第1の接着剤は、低粘度で硬化温度が低く、短時間で硬化し、硬化後は、比較的高い硬度を有し、かつ、耐インク性のあるものが望ましい。このような第1の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化接着剤がある。この熱硬化接着剤を用いた場合、その接着層の厚みは50μm程度とするのが望ましい。
【0042】
また、インク供給口H1201が形成された面の周囲の、少し高くなった平面には、電気配線テープH1301の裏面の、開口部H1303の周囲の部分が第2の接着剤により接着固定されている。記録素子基板H1101と電気配線テープH1301との電気接続部分は、図7に示すように、第1の封止剤H1307および第2の封止剤H1308により封止されている。これにより電気接続部分はインクによる腐食や外的衝撃から保護されている。第1の封止剤H1307は、電気配線テープH1301の裏面側で、主に、電気配線テープH1301の電極端子H1304と記録素子基板H1101のバンプH1105との接続部周囲において、記録素子基板H1101外周部分を封止し、第2の封止剤H1308は、その接続部の表側を封止している。そして、電気配線テープH1301の、開口部H1303が形成された側の端部部分から延びる部分は、折り曲げられ、インク供給保持部材H1501のインク供給口H1201を有する面にほぼ直交した側面の、面H1502とH1503とで段差になった部分に熱カシメや接着等で固定されている。
【0043】
また、インク供給保持部材H1501には、記録ヘッドH1001をキャリッジに搭載するのに利用される構造部が設けられている。すなわち、記録ヘッドH1001の、記録素子基板H1101が取り付けられた部分付近には、インク供給保持部材H1501の一縁に沿う方向に突出した装着ガイドH1560が設けられている。また、精度良く所定の位置にくるように形成された、X方向(キャリッジスキャン方向)の突き当て部H1570、Y方向(記録媒体の搬送方向)の突き当て部H1580、およびZ方向(インク吐出方向)の突き当て部H1590が設けられている。
【0044】
(4)蓋部材H1901
蓋部材H1901は、インク供給保持部材H1501の上部開口部に溶着されることで、インク供給保持部材H1501内部の独立した空間をそれぞれ閉塞するものである。但し、蓋部材H1901にはインク供給保持部材H1501内部の各部屋の圧力変動を逃がすための細口H1911、H1912、H1913と、これらにそれぞれ一端部が連通した微細溝H1921、H1922、H1923が形成されている。微細溝H1921、H1922の他端は、微細溝H1923の途中に合流している。さらに、微細溝H1923のほとんどと、細口H1911、H1912、H1913と微細溝H1921、H1922の全部とはシール部材H1801で覆われている。微細溝H1923の他端部は、シール部材1801から露出しており、それによって大気連通口H1925を形成している。また、蓋部材H1901は、記録ヘッドH1001をインクジェット記録装置に固定するのに利用される係合部H1930を有している。
【0045】
次に、上述した記録ヘッドH1001の、インクジェット記録装置への装着について説明する。
【0046】
記録ヘッドH1001は、装着ガイドH1560をキャリッジの対応部に当接させて、キャリッジの、所定の装着位置に容易に導くことができる。記録ヘッドH1001がキャリッジの装着位置に達すると、各突き当て部H1570,H1580,H1590がキャリッジの、対応する位置基準部に突き当たる。それによって、記録ヘッドH1001は、所定の装着位置に精度良く位置決めされる。そして、キャリッジ側の固定レバーを記録ヘッドH1001の係合部H1930に係合するように動かすことによって、記録ヘッドH1001はキャリッジに固定される。
【0047】
このように、記録ヘッドH1001がキャリッジの所定の装着位置に位置精度良く固定されることによって、電気配線テープH1301の外部信号入力端子H1302とキャリッジに設けられた電気接続部のコンタクトピンとが正確に接触させられ、電気的に接続される。
【0048】
<インクジェット記録装置>
次に、上述したような記録ヘッドH1001を搭載可能な一例のインクジェット記録装置について図8を参照して説明する。
【0049】
この記録装置は、図3に示したのと同様の2つの記録ヘッドH1001a,H1001bが位置決めされて交換可能に搭載されるキャリッジ102を有する。記録ヘッドH1001a,H1001bは、例えば、一方がシアン、マゼンタ、イエローの3色のインクの吐出用、他方がブラックのインクの吐出用であってよい。ブラックのインクのみの吐出用の記録ヘッドは、単一のインク吸収体を収容し、単一のインク供給口、吐出口群を備える記録素子基板を組み込んだものとして構成することができる。
【0050】
図示していないが、キャリッジ102には、記録ヘッドH1001aおよびH1001b上の外部信号入力端子H1302と接続される電気接続部が設けられている。この電気接続部は、互いに平行な第1の面H1305と第2の面H1306に配列されている各外部信号入力端子H1304に接触するように、第1、第2の面H1305,H1306に整合する段差を有する面に配置されている。また、キャリッジ102には、各記録ヘッドの装着ガイドH1560の案内部、各突き当て部H1570,H1580,H1590に対応する位置基準部、係合部H1930に当接させることができる固定レバーなどが設けられている。
【0051】
キャリッジ102は、主走査方向に延在して装置本体に設置されたガイドシャフト103に沿って往復移動可能に支持されている。キャリッジ102には、主走査モータ104に連結されたモータプーリ105と従動プーリ106に支持されたタイミングベルト107が連結されている。キャリッジ102は、主走査モータ104によって往復駆動され、その位置および移動を制御される。また、キャリッジ102には、キャリッジ102の移動経路の所定の位置に配置された遮蔽板136を検知するホームポジションセンサ130が設けられている。ホームポジションセンサ130が遮蔽板136上にくる位置が、キャリッジ102のホームポジションとなる。
【0052】
また、記録装置は、印刷用紙やプラスチック薄板等の記録媒体108を一枚ずつ分離して給紙するオートシートフィーダ(ASF)132を有している。ASF132は、給紙モータ135によってギアを介して回転駆動されるピックアップローラ131を有している。
【0053】
ASF132の後には、LFモータ134によってギアを介して回転駆動される搬送ローラ109が設けられている。搬送ローラ109は、記録媒体108を、記録ヘッドH1001a及びH1001bの吐出口面と対向する位置(プリント部)を通って搬送(副走査)することができる。記録媒体108の搬送経路には、記録媒体108の端部の位置を検出するペーパエンドセンサ133が設けられている。記録媒体108が給紙されたかどうかの判定や、給紙時の頭出し位置の確定などが、記録媒体108がペーパエンドセンサ133を通過したかどうかを示す検出信号によって行われる。このペーパエンドセンサ133は、記録媒体108の後端が実際にどこに有るかを算出したり、実際の後端の位置から現在の記録位置を最終的に割り出したりするのにも使用することができる。
【0054】
プリント部には、記録媒体108のプリント面がプリント部において平坦に位置するように、記録媒体108の裏面を支持する不図示のプラテンが設けられている。記録ヘッドH1001a及びH1001bは、それらの吐出口面がキャリッジ102から下方へ突出し、プラテン上の記録媒体108のプリント面に平行になるようにキャリッジ102に保持される。また、記録ヘッドH1001aおよびH1001bの各吐出口群H1108における吐出口H1107の並び方向は、キャリッジ102の走査方向に対して交差する方向になっている。
【0055】
この記録装置による記録動作では、まず、セットされた記録媒体108がASF132によって給紙され、搬送ローラ109によって搬送されて、記録媒体108の所望の位置のプリント面がプリント部に配置される。次に、キャリッジ102が往復移動させられ、この際、所望の記録画像に応じた所定のタイミングで各記録ヘッド1001a,H1001bが駆動され、各吐出口H1107から選択的にインクが吐出される。これによって、記録媒体108の、所定の幅の領域に画像が記録される。その後、記録媒体108の位置が搬送ローラ109によって所定量だけずらされ、再び所定幅の画像記録が行われ、これが繰り返されて、記録媒体108の所望の領域に所望の画像が記録される。
【0056】
この記録装置は、例えば、通常の画質の記録を行う場合に用いる記録ヘッドH1001a,H1001bの一方を、これらと同等の構成で、ライトマゼンタ、ライトシアン、ブラックのインクを吐出する記録ヘッドに交換することによって、通常の画質の記録と、高画質のフォト画像の記録とを適宜切り換えて行う運用をすることも可能である。
【0057】
次に、図1,2を参照して、本実施例の記録ヘッドH1001における、ヘッド固有の情報を記憶する情報記憶素子の静電気対策について説明する。
【0058】
図1は、記録ヘッドH1001における外部信号入力端子H1302が設けられた部分を拡大して示している。同図を参照すると、電気配線テープH1301には、32個の外部信号入力端子H1302が設けられており、そのうち17個の外部信号入力端子H1302は外部に対し相対的に凹の第1の面H1305上に、残りの15個の外部信号入力端子は第2の面H1306上に配置されている。第1の面H1305は、第2の面H1306に対して、図中下方に位置している。
【0059】
これら外部信号入力端子H1302のうち6個はIDコンタクトパッド(情報出力コンタクトパッド)H1302aであり、これらは第1の面H1305上の、図中最上部に、第2の面H1306との境界に沿って配置されている。これらIDコンタクトパッドH1302aは、図6に示したヒューズH1117(または単なる結線や抵抗素子でもよい)とつながっているIDパッドH1104aに各々接続されている。したがって、IDコンタクトパッドH1302aは、情報記憶素子に、他の素子を介さず直接的に接続されている。
【0060】
外部信号入力端子H1302のうち、他の6個はGNDHコンタクトパッド(グラウンドコンタクトパッド)H1302dであり、これらは、IDコンタクトパッドH1302aの列に対して図中下方に隣接する列を形成している。これらGNDHコンタクトパッドH1302dは、図6に示したGNDHパッドH1104dに接続されている。
【0061】
また、6個のVHコンタクトパッド(電源コンタクトパッド)H1302cの列が、IDコンタクトパッドH1302aの列に隣接して、第2の面H1306上の図中最下部に、したがって第1の面H1305との境界に沿って列状に並んで位置している。これらVHコンタクトパッドH1302cは、図6に示したVHパッドH1104cに接続されている。
【0062】
IDコンタクトパッドH1302a、VHコンタクトパッドH1302c、およびGNDHコンタクトパッド(グラウンドコンタクトパッド)H1302dを除く残りの外部信号入力端子H1302は、トランジスタ電源供給用や制御信号用等、その他の用途に使用される。
【0063】
記録ヘッドH1101は、前述したように、保持しているインクが無くなった時に新しいものと交換する場合、あるいは、通常の画質の画像記録用のものと、フォト画像記録用のものとを交換する場合に、使用者の手に触れることになる。この際、図2に示すように、使用者が、帯電した指101を不用意に外部入力端子H1302の部分に近づけてしまうことが考えられる。
【0064】
本実施例の記録ヘッドH1101では、電気熱変換素子H1103などの他の素子に比べて比較的静電気に弱い情報記憶素子を構成するヒューズH1117に接続されたIDコンタクトパッドH1302aが、周囲に対して一段低くなった第1の面H1305上に配列されている。したがって、使用者が上記のように、指101を外部入力端子H1302の部分に近づけたとしても、指101がIDコンタクトパッドH1302aに直接触れにくくなっている。また、特に、IDコンタクトパッドH1302aが、第1の面H1305と第2の面H1306の境界に沿う位置にあるため、両面の段差によって、指101がIDコンタクトパッドH1302aに触れるのを効果的に抑制することができる。このように指101がIDコンタクトパッドH1302aに触れないようにすることによって、IDコンタクトパッドH1302aを介して、ヒューズH1101に静電気の影響が及ぶのを抑制することができる。
【0065】
加えて、IDコンタクトパッドH1302aは、VHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dに隣接しており、しかもそれらコンタクトパッドの間に挟まれているので、帯電した指101がIDコンタクトパッドH1302aに接近して放電が発生する場合でも、この放電は、VHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dの方に起こりやすい。それによって、ヒューズH1101に静電気の影響が及ぶのを抑制することができる。放電がVHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302d側に起こりやすい理由としては、これらが各電気熱変換体H1103に電力を供給するように構成されたものであり、構成上、電気が比較的流れやすいこと、これらのパッドの配置上、IDコンタクトパッドH1302aよりも指の表面に近い位置にきやすいことが挙げられる。
【0066】
このように、本実施例によれば、静電気の影響が、ヘッド固有情報を記憶する情報記憶素子に及ぶのを抑制することができ、それによって、静電気のために情報記憶素子が破壊されたり、情報記憶素子に記憶されているヘッド固有情報が書き換えられたりするのを抑制することができる。本実施例の構成では、このように、情報記憶素子を静電気から保護するのに、特別な回路を形成することがなく、記録ヘッドH1001の複雑化や、その製造工程の増加などをほとんど招くことがない。したがって、本実施例によれば、簡単な構成でありながら、情報記憶素子が静電気の影響を受けにくい記録ヘッドH1001を提供することができる。
【0067】
(実施例2)
本発明の第2の実施例の記録ヘッドについて図9および図10を参照して説明する。図10は本実施例の記録ヘッドH1001の全体を示しており、図9は、外部信号入力端子部を拡大したものである。この記録ヘッドH1001は、外部信号入力端子部の形状のみが第1の実施例と異なっており、記録素子基板などの他の構成は第1の実施例のものと同等であってよい。
【0068】
図9を参照すると、本実施例では、電気配線テープH1301上の32個の外部信号入力端子H1302のうち、6個のIDコンタクトパッドH1302aが、外部に対し相対的に凹の第1の面H1305上に、残りの26個の外部信号入力端子が第2の面H1306上に配置されている。6個のIDコンタクトパッドH1302aに図中上下に隣接して、第2の面H1306上に、それぞれ6個のGNDHコンタクトパッドH1302d及び6個のVHコンタクトパッドH1302cの列が配置されている。
【0069】
本実施例の記録ヘッドH1001では、比較的静電気に弱い情報記憶素子を構成するヒューズH1117(または結線や抵抗素子)に接続されたIDコンタクトパッドH1302aが、周囲に比べて一段低くなった第1の面H1305上に配列されており、かつ両側に隣接するコンタクトパッド列は、一段高い第2の面H1306上に配列されている構造となっている。このため、使用者がこの記録ヘッドH1001を手にした時、IDコンタクトパッドH1302aに触れるのを、さらに効果的に抑制することができる。
【0070】
加えて、IDコンタクトパッドH1302aには、VHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dが隣接しているため、使用者の帯電した指が不用意にIDコンタクトパッドH1302aに接近して、放電が生じた場合でも、この放電は、VHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dの方に起こりやすく、IDコンタクトパッドH1302a側には起こりにくい。
【0071】
このように、本実施例によれば、静電気の影響が情報記憶素子に及ぶのを抑制し、静電気による情報記憶素子の破壊や情報記憶素子に記憶されたヘッド固有情報の書き換えを抑制することができる。
【0072】
(第3の実施例)
本発明の第3の実施例の記録ヘッドについて図11および図12を参照して説明する。図12は本実施例の記録ヘッドH1001の全体を示しており、図11は、外部信号入力端子部を拡大したものである。この記録ヘッドH1001は、外部信号入力端子部の形状のみが第1、第2の実施例と異なっており、記録素子基板などの他の構成は第1の実施例のものと同等であってよい。
【0073】
図11を参照すると、電気配線テープH1301上の32個の外部信号入力端子H1302のうち、16個の外部信号入力端子H1302は外部に対し相対的に凹の第1の面H1305上に、残りの16個の外部信号入力端子は第2の面H1306上に配置されている。第1の面H1305は、第2の面H1306に対して、図中上方に位置している。
【0074】
これら外部信号入力端子H1302のうち、6個のIDコンタクトパッドH1302aは第1の面H1305上の、図中最下部に、したがって第2の面H1306との境界に沿って配置されている。このIDコンタクトパッドH1302aの列に隣接して、図中上方には6個のVHコンタクトパッドH1302cの列、図中下方には6個のGNDHコンタクトパッドH1302dの列が配置されている。したがって、GNDHコンタクトパッドH1302dの列は、第2の面H1306上の、図中最上部に、第1の面H1305との境界に沿って位置している。
【0075】
本実施例では、第1の実施例と同様、比較的静電気に弱い、情報記憶素子を構成するヒューズH1117(または結線や抵抗素子)に接続されたIDコンタクトパッドH1302aが、周囲に比べて一段低くなった第1の面H1305上に配列されているため、使用者がこの記録ヘッドH1001を手にした場合、IDコンタクトパッドH1302aに触れにくくなっている。加えて、IDコンタクトパッドH1302aの列が、隣接するVHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dの列に挟まれているので、使用者の帯電した指が不用意にIDコンタクトパッドH1302aに接近して放電が発生した場合でも、この放電はVHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dの方に起こりやすく、IDコンタクトパッドH1302a側には起こりにくい。したがって、本実施例によれば、静電気による情報記憶素子の破壊や情報記憶素子に記憶されたヘッド固有情報の書き換えを抑制することができる。
【0076】
以上説明した各実施例は、本発明の一例であって、その構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、上述の説明では、サイドシュータ型の記録ヘッドを例に挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、吐出口が電気熱変換素子の形成面に対して交差する面上に形成された、いわゆるエッジシュータ型の記録ヘッドに対しても、本発明は問題なく適用可能である。また、本発明は、バブルジェット(BJ)方式や、インク吐出過程において、インク中に生成された気泡が大気に連通するBTJ(バブルスルージェット)方式の他、種々のインク吐出方式を採用したインクジェット記録ヘッドへの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施例のインクジェット記録ヘッドの外部信号入力端子部を示す図である。
【図2】図1のインクジェット記録ヘッドに使用者の指が近付く様子を示す図である。
【図3】図1のインクジェット記録ヘッドの全体を示す斜視図であり、(a)は記録素子基板側から、(b)は蓋部材側から見た図である。
【図4】図1のインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。
【図5】図1のインクジェット記録ヘッドの記録素子基板を、一部を破断して示す斜視図である。
【図6】図5の記録素子基板上に形成された回路の模式図である。
【図7】図1のインクジェット記録ヘッドの、電気配線テープと記録素子基板の接続部を示す断面図である。
【図8】図1のインクジェット記録ヘッドを搭載可能な一例のインクジェット記録装置を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施例のインクジェット記録ヘッドの外部信号入力端子部を示す図である。
【図10】図9のインクジェット記録ヘッドの全体を示す斜視図であり、(a)は記録素子基板側から、(b)は蓋部材側から見た図である。
【図11】本発明の第3の実施例のインクジェット記録ヘッドの外部信号入力端子部を示す図である。
【図12】図11のインクジェット記録ヘッドの全体を示す斜視図であり、(a)は記録素子基板側から、(b)は蓋部材側から見た図である。
【符号の説明】
【0078】
H1001 記録ヘッド(液体吐出記録ヘッド)
H1117 ヒューズ(情報記憶素子の構成要素)
H1302 外部信号入力端子(コンタクトパッド)
H1305 第1の面
H1306 第2の面
H1302a IDコンタクトパッド(情報出力コンタクトパッド)
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体(以下単にインクと称する)を吐出して記録動作を行う液体吐出記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)およびそれを備える液体吐出記録装置(インクジェット記録装置)に関する。本発明は、インクジェット記録ヘッドを利用した一般的なプリント装置のほか、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、あるいは、これらの装置を複合した多機能記録装置等に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置に対して着脱可能なインクジェット記録ヘッドに、自身のID(Identity)コードやインク吐出機構の駆動特性といったヘッド固有の情報(個別情報)を読み出し自在に保持させることが提案されている。それによって、例えば、インクジェット記録装置側で、装着されたインクジェット記録ヘッドに関する情報を認識し、そのヘッドでのインク吐出に最適な駆動制御を実行するといったことが可能となる。このために、インクジェット記録基板にROM(Read Only Memory)を搭載することが知られており、特許文献1には、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)を搭載することが開示されている。
【0003】
上記の他、インクジェット記録ヘッドのインクジェット記録用基板のベース基板に、インク吐出機構などを構成する層膜とともにヘッド固有の情報を示す抵抗を形成する手法も知られている。この場合、インクジェット記録装置側で、ベース基板に形成された抵抗の値を読み込むことで、搭載されたインクジェット記録ヘッドに関する情報を得ることができる。この手法は、情報量が比較的少ない場合有効である。
【0004】
また、特許文献2には、インクジェット記録用基板を製造するためのベース基板に、インク吐出機構などを構成する層膜を形成するときに、ROMとして機能するヒューズを同時に形成することが開示されている。このヒューズは、同時に形成したロジック回路などを利用して選択的に溶断され、それによって、二値データが書き込まれ保持される。
【0005】
また、記録装置に対して着脱可能なインクジェット記録ヘッドの場合、使用者の手が装着時に必ず触れることになり、この際に、ヘッドの、記録装置側との接続用の電気端子に静電気の影響が及ぶことが懸念される。このような静電気からヘッドを保護するための提案として、特許文献3には、インクジェット記録装置本体との電気的接続を行うコンタクトパッドの周囲に放電回路を設けることが開示されている。
【特許文献1】特開平3−126560号
【特許文献2】特許第3428683号
【特許文献3】特開平07−060953号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような、ROMやEEPROMなどの情報記憶素子を搭載するインクジェット記録ヘッドにおいては、どうしても装置構成が複雑になるため、生産性の向上や小型軽量化を図るための種々の改善が望まれている。基本的に、ROMチップは、記録データが大容量の場合は有用であるが、記録データが大容量でない場合には、コスト面で不利になることがあり、この点で改善の余地が残されている。
【0007】
これに対して、層膜形成工程でヘッド固有の情報を保持する素子を形成する手法によれば、ヘッドの固有情報保持のために、構造が複雑になったり、工程が増えたりするのを抑制できる。このため、個別情報を保持したヘッドを、簡素な構造で、小型軽量なものとし、生産性を損なうことなく、低コストで提供することができる。
【0008】
このようにして個別情報を記憶可能としたインクジェット記録ヘッドの場合、静電気への配慮が特に重要である。すなわち、インクジェット記録用基板上に設けられた、ヘッド固有の情報を記憶する微細な情報記憶素子は、特に静電気に対して弱く、静電気によって、破壊され、もしくは情報内容が書き換えられてしまうことが危惧される。
【0009】
特許文献3に記載のインクジェット記録ヘッドにおいては、静電気の影響は回避されるものの、基板上に放電回路を別途設けなければならない。このため、スペース効率の向上、ヘッドの小型化、低コスト化などを図るための種々の改善が望まれている。
【0010】
以上のことから、本発明の目的は、ヘッドの個別情報などを記憶可能な情報記憶素子を備えながら、簡単な構成を有し、情報記憶素子が静電気の影響を受けにくい液体吐出記録ヘッドおよびそれを備える液体吐出記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の液体吐出記録ヘッドは、液体吐出記録装置に着脱可能な液体吐出記録ヘッドであって、液体吐出記録装置に備えられた複数の接点に接触して電気的に接続される複数のコンタクトパッドと、液体吐出記録装置によって読み出し可能な情報を記憶する情報記憶素子とを有し、コンタクトパッドは、外面の、周囲に対して凹となった第1の面と、第1の面より高くなった第2の面とに配置されており、コンタクトパッドは、情報記憶素子に直接的に接続された情報出力コンタクトパッドを含み、情報出力コンタクトパッドは第1の面に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特別な回路を設けることなく、ヘッドの形状に少し工夫を加えることで、ヘッドの着脱時に発生する可能性のある静電気によって情報記憶素子が破壊されたり、情報記憶素子に記憶された情報が書き換えられたりするのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施例)
図3,4に、第1の実施例の記録ヘッド(液体吐出記録ヘッド)H1001を示す。
【0014】
図示の記録ヘッドH1001は、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを吐出させるものであり、これらのインクの収容部が一体に構成されたインクタンク一体型のものである。この記録ヘッドH1001は、後述するように、インクジェット記録装置本体に搭載されているキャリッジ上に着脱可能に装着され、保持しているインクが消費されて無くなった場合は、新たな記録ヘッドと交換することができる。
【0015】
記録ヘッドH1001は、図4の分解斜視図に示すように、インク吐出機構を構成する記録素子基板(液体吐出機構部)H1101を有している。記録素子基板H1101は、それに供給されるインクの収容部を蓋部材H1901と共に形成し、また、インク収容部から記録素子H1101へのインク供給路を形成するインク供給保持部材H1501に取り付けられている。また、インク供給保持部材H1501には、記録素子基板H1101とキャリッジとを電気的に接続するための電気配線テープH1301も取り付けられている。以下、記録ヘッドH1001の、これらの構成要素についてより詳細に説明する。
【0016】
(1)記録素子基板H1101
図5は、記録素子基板H1101の構成を説明する、一部を破断して示す斜視図である。
【0017】
この記録素子基板H1101は、インクに膜沸騰を生じさせるための熱エネルギを電気信号に応じて生成する電気熱変換素子(記録素子)H1103を用いたバブルジェット(登録商標)方式のインク吐出機構を構成している。このインク吐出機構は、電気熱変素子H1103と吐出口H1108とが対向するように配置された、いわゆるサイドシュータ型の構成を有している。
【0018】
記録素子基板H1101は、例えば、厚さ0.5mm〜1mmのSi基板H1110を有している。Si基板H1110には、シアン、マゼンタ、イエロー用の3個のインク供給口H1102が並列して形成されている。インク供給口H1102は長溝状の貫通口であり、Siの結晶方位を利用した異方性エッチングやサンドブラストなどの方法で形成することができる。
【0019】
Si基板H1110上には、各インク供給口H1102を挟んでその両側に、電気熱変換素子H1103が1列ずつ並べて配置されており、さらに電気熱変換素子H1103に電力を供給するAlなどからなる電気配線などを含む電気回路(不図示)が形成されている。これら電気熱変換素子H1103と電気回路は、既存の成膜技術を利用して形成することができる。各列の電気熱変換素子H1103は、互いに千鳥状になるように配列されている。すなわち、各列の電気熱変換素子H1103は、両列の電気熱変換素子H1103が、その列の方向に直交する方向に並ばないように、両列間で少しずれて配置されている。
【0020】
また、Si基板H1110上には、電気回路に外部から電力を供給したり、電気熱変換素子H1103を駆動するための電気信号を外部から供給したりするための電極部H1104が設けられている。電極部H1104は、Si基板H1110上の、電気熱変換素子H1103の列の両端側に位置する辺部に沿って配列されている。各電極部H1104にはAuなどからなるバンプH1105が形成されている。
【0021】
Si基板H1110上の、電気変換素子H1103や電気回路が形成された面上には、樹脂材料からなる構造体がフォトリソ技術によって形成されている。この構造体は、インク供給口H1102から各電気熱変換素子H1103上に延びる各インク流路を形成するインク流路壁H1106と、その上方を覆う天井部とを有している。天井部には吐出口H1107が、各電気熱変換素子H1103に対向して設けられており、これによって、各色毎に吐出口群H1108が形成されている。
【0022】
上記のように構成された記録素子基板H1101では、インク供給口H1102から供給されたインクが、各電気熱変換素子H1103の発熱によって発生した気泡の圧力によって、各電気熱変換素子H1103に対向する吐出口1107から選択的に吐出される。
【0023】
次に、Si基板H1110上に形成された回路について、図6の概略図を参照して説明する。
【0024】
電気熱変換素子H1103の一端には、VH電源を供給するためのVHパッドH1104cがVH配線H1114を介して接続され、他端には、第1の駆動素子H1116が接続されている。第1の駆動素子H1116には、GNDH電源を供給するためのGNDHパッドH1104dが、GNDH配線H1113を介して接続されている。第1の駆動素子H1116は、インクジェット記録基板外部より信号が入力される信号線から、シフトレジスタ(S/R)、ラッチ回路(LT)、デコーダ、選択回路H1112を経て入力される信号に応じて電気熱変換素子H1103を駆動する。
【0025】
また、Si基板H1110上の回路には、ヘッド固有の情報を保持する情報記憶素子として機能するヒューズH1117が接続されている。本実施例では、ヒューズH1117はポリシリコン抵抗体から構成され、インク供給口H1102の短辺側方に4つ配置されている。
【0026】
各ヒューズH1117の一端には、IDパッドH1104aが接続され、また、読み出し抵抗H1111を介してID電源パッドH1104bが接続されている。各ヒューズH1117の他端には、各ヒューズH1117を選択的に溶断し、またその溶断の有無によって表される情報を選択的に読み出すのに用いられる第2の駆動素子H1118が接続されている。
【0027】
第2の駆動素子H1118は、電気熱変換素子H1103を駆動する第1の駆動素子H1116に隣接して配置されており、第1の駆動素子H1116への選択信号生成回路と同様な構造の選択信号生成回路が接続されている。本実施例の構成では、第1の駆動素子H1116と第2の駆動素子H1118とで、S/R、LT、デコーダは共用されており、したがって、両者の動作は、外部からの、共通の信号線を介した信号によって同様にコントロールすることができる。また、第2の駆動素子H1118にも、第1の駆動素子H1116と共通のGNDH配線H1113が接続されており、すなわち、第1の駆動素子H1116と第2の駆動素子H1118はGNDH配線H1113も共用している。
【0028】
各パッドH1104a〜1104d、および駆動素子H1116,1118の選択信号生成回路への、外部信号入力用のパッドは、電極部H1104の各バンプH1105(図5参照)に対応している。
【0029】
次に、ヒューズH1117の溶断、およびヒューズH1117からの情報の読み出しについて説明する。
【0030】
ヒューズH1117の溶断時には、IDパッドH1104aにヒューズ切断電源が接続され、ヒューズH1117を溶断可能な電圧(例えば電気熱変換素子の駆動電圧の24V)が印加される。そして、選択回路H1112を介して所望の第2の駆動素子H1118を動作させることによって、対応するヒューズH1117が瞬間的に溶断される。このとき、ヒューズ読み出し用電源端子であるID電源パッドH1104bはオープンにしておく。
【0031】
一方、情報の読み出し時には、ID電源パッドH1104bに読み出し用の電源が接続され、電圧(例えばロジック回路の電源電圧の3.3V)が印加される。それによって、第2の駆動素子H1118を動作させた際、対応するヒューズH1117が溶断されていればHiレベルが、溶断されていなければ、ヒューズH1117の抵抗値より明らかに大きな読み出し抵抗H1111のために、Loレベルが、IDパッドH1104aに出力される。
【0032】
ヘッド固有の情報を保持する情報記憶素子の、他の構成として、上述したヒューズH1117のかわりに単なる配線をSi基板H1110上に形成し、その配線の有無によって情報を保持するようにしてもよい。この場合、Si基板H1110上への配線の形成時に、ヘッド固有の情報に応じて選択的に配線を形成することによって、情報の書き込みを行うことになり、後からの情報の書き込みはできない。情報の読み出しは、上述したヒューズH1117を用いた場合と全く同様に行うことができる。
【0033】
さらに他の構成として、Si基板H1110上に、ヘッド固有の情報に応じた抵抗値を有する抵抗素子を形成し、その抵抗素子の一端をIDパッドH1104aに、他端をGNDHパッドH1104dに接続するようにしてもよい。この場合、インクジェット記録装置本体は、IDパッドH1104aとGNDHパッドH1104d間の抵抗値を読み取ることで、抵抗値に対応するヘッド固有情報を得ることができる。
【0034】
いずれにしても、本実施例では、情報記憶素子が、このように、記録素子基板H1101上の回路の一部として形成されているため、情報記憶素子を設けるために、記録ヘッドH1001の構造はほとんど複雑化しない。また、情報記憶素子を構成するヒューズ、配線、抵抗素子などは、Si基板H1110上の他の回路と同時に作り込むことができるので、情報記憶素子を形成するために、ほとんど工程の増加を招くこともない。したがって、情報記憶素子を有しながら、簡単な構造で、小型化の容易な記録ヘッドを低コストで提供することができる。
【0035】
(2)電気配線テープH1301
再び図3,4を参照すると、電気配線テープH1301は、記録素子基板H1101の電極部H1104の各バンプH1105とキャリッジ側の電気接続部とを接続する電気信号経路を形成するものである。この電気信号経路を介して、記録装置本体と記録素子基板H1101との間で、インクを吐出するための電気信号や、上述のようなヘッド固有情報の読み出しのための電気信号が伝達される。電気配線テープH1301は、例えば、ポリイミド製のベース基材上に銅箔の配線パターンを形成することで構成されている。
【0036】
電気配線テープH1301の一端側には、記録素子基板H1101のインク吐出面を露出させる開口部H1303が形成されている。開口部H1303の縁付近には、記録素子基板H1101の電極部H1104に接続される電極端子H1304が形成されている。電気配線テープH1301と記録素子基板H1101とは、例えば、記録素子基板H1101の電極部H1104に形成されたバンプH1105と、それらにそれぞれ対応する電気配線テープH1301の電極端子H1304とが熱超音波圧着法により電気接合されることによって電気的に接続されている。
【0037】
電気配線テープH1301の他端側には、本体装置のキャリッジの電気接続部に接続される複数の外部信号入力端子(コンタクトパッド)H1302が形成されている。外部信号入力端子H1302が形成された部分は、インク供給保持部材H1501の側面の、面H1502とH1503とで段差が生じた部分に取り付けられることによって、周囲より凹んだ第1の面H1305と、第1の面H1305と平行で第1の面H1305より外部に向かって高くなった第2の面H1306を形成している。外部信号入力端子H1302と電極端子H1304は連続した銅箔の配線パターンでつながれている。
【0038】
(3)インク供給保持部材H1501
インク供給保持部材H1501は、例えば、樹脂成形により形成されている。樹脂材料には、形状的剛性を向上させるためにガラスフィラーを5〜40%混入した樹脂材料を使用することが望ましい。
【0039】
このインク供給保持部材H1501は、インクタンク機能とインク供給機能を備えている。すなわち、インク供給保持部材H1501は、図4に示すように、シアン、マゼンタ、イエローのインクを保持するための負圧を発生するインク吸収体H1601,H1602,H1603を内部にそれぞれ独立して保持するための空間(液体収容部)を有することでインクタンク機能を実現している。また、インク供給保持部材H1501は、これらの、インク吸収体1601,H1602,H1603を保持する独立した空間から記録素子基板H1101の各インク供給口H1102にそれぞれインクを導くための独立したインク流路を形成することでインク供給機能を実現している。
【0040】
インク吸収体H1601、H1602、H1603は、例えば、PP(ポリプロピレン)繊維を圧縮したものであるが、これに替えてウレタン繊維を圧縮したものを用いてもよい。インク供給保持部材H1501内の各インク流路の上流に位置するインク吸収体H1601、H1602、H1603と各インク流路との境界部には、記録素子基板H1101内部へのゴミの進入を防ぐためのフィルタH1701,H1702,H1703が設けられている。フィルタH1701,H1702,H1703は、それぞれ溶着によりインク供給保持部材H1501に接合されている。フィルタH1701、H1702、H1703は、SUS(ステンレス)金属メッシュタイプでもよいが、SUS金属繊維焼結タイプの方がより好ましい。
【0041】
インク供給保持部材H1501内のインク流路の下流側には、記録素子基板H1101にシアン、マゼンタ、イエローの各インクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。記録素子基板H1101は、その各インク供給口H1102がインク供給保持部材H1501の各インク供給口H1201に連通するように、インク供給保持部材H1501に対して位置精度良く接着固定されている。この接着に用いられる第1の接着剤は、低粘度で硬化温度が低く、短時間で硬化し、硬化後は、比較的高い硬度を有し、かつ、耐インク性のあるものが望ましい。このような第1の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化接着剤がある。この熱硬化接着剤を用いた場合、その接着層の厚みは50μm程度とするのが望ましい。
【0042】
また、インク供給口H1201が形成された面の周囲の、少し高くなった平面には、電気配線テープH1301の裏面の、開口部H1303の周囲の部分が第2の接着剤により接着固定されている。記録素子基板H1101と電気配線テープH1301との電気接続部分は、図7に示すように、第1の封止剤H1307および第2の封止剤H1308により封止されている。これにより電気接続部分はインクによる腐食や外的衝撃から保護されている。第1の封止剤H1307は、電気配線テープH1301の裏面側で、主に、電気配線テープH1301の電極端子H1304と記録素子基板H1101のバンプH1105との接続部周囲において、記録素子基板H1101外周部分を封止し、第2の封止剤H1308は、その接続部の表側を封止している。そして、電気配線テープH1301の、開口部H1303が形成された側の端部部分から延びる部分は、折り曲げられ、インク供給保持部材H1501のインク供給口H1201を有する面にほぼ直交した側面の、面H1502とH1503とで段差になった部分に熱カシメや接着等で固定されている。
【0043】
また、インク供給保持部材H1501には、記録ヘッドH1001をキャリッジに搭載するのに利用される構造部が設けられている。すなわち、記録ヘッドH1001の、記録素子基板H1101が取り付けられた部分付近には、インク供給保持部材H1501の一縁に沿う方向に突出した装着ガイドH1560が設けられている。また、精度良く所定の位置にくるように形成された、X方向(キャリッジスキャン方向)の突き当て部H1570、Y方向(記録媒体の搬送方向)の突き当て部H1580、およびZ方向(インク吐出方向)の突き当て部H1590が設けられている。
【0044】
(4)蓋部材H1901
蓋部材H1901は、インク供給保持部材H1501の上部開口部に溶着されることで、インク供給保持部材H1501内部の独立した空間をそれぞれ閉塞するものである。但し、蓋部材H1901にはインク供給保持部材H1501内部の各部屋の圧力変動を逃がすための細口H1911、H1912、H1913と、これらにそれぞれ一端部が連通した微細溝H1921、H1922、H1923が形成されている。微細溝H1921、H1922の他端は、微細溝H1923の途中に合流している。さらに、微細溝H1923のほとんどと、細口H1911、H1912、H1913と微細溝H1921、H1922の全部とはシール部材H1801で覆われている。微細溝H1923の他端部は、シール部材1801から露出しており、それによって大気連通口H1925を形成している。また、蓋部材H1901は、記録ヘッドH1001をインクジェット記録装置に固定するのに利用される係合部H1930を有している。
【0045】
次に、上述した記録ヘッドH1001の、インクジェット記録装置への装着について説明する。
【0046】
記録ヘッドH1001は、装着ガイドH1560をキャリッジの対応部に当接させて、キャリッジの、所定の装着位置に容易に導くことができる。記録ヘッドH1001がキャリッジの装着位置に達すると、各突き当て部H1570,H1580,H1590がキャリッジの、対応する位置基準部に突き当たる。それによって、記録ヘッドH1001は、所定の装着位置に精度良く位置決めされる。そして、キャリッジ側の固定レバーを記録ヘッドH1001の係合部H1930に係合するように動かすことによって、記録ヘッドH1001はキャリッジに固定される。
【0047】
このように、記録ヘッドH1001がキャリッジの所定の装着位置に位置精度良く固定されることによって、電気配線テープH1301の外部信号入力端子H1302とキャリッジに設けられた電気接続部のコンタクトピンとが正確に接触させられ、電気的に接続される。
【0048】
<インクジェット記録装置>
次に、上述したような記録ヘッドH1001を搭載可能な一例のインクジェット記録装置について図8を参照して説明する。
【0049】
この記録装置は、図3に示したのと同様の2つの記録ヘッドH1001a,H1001bが位置決めされて交換可能に搭載されるキャリッジ102を有する。記録ヘッドH1001a,H1001bは、例えば、一方がシアン、マゼンタ、イエローの3色のインクの吐出用、他方がブラックのインクの吐出用であってよい。ブラックのインクのみの吐出用の記録ヘッドは、単一のインク吸収体を収容し、単一のインク供給口、吐出口群を備える記録素子基板を組み込んだものとして構成することができる。
【0050】
図示していないが、キャリッジ102には、記録ヘッドH1001aおよびH1001b上の外部信号入力端子H1302と接続される電気接続部が設けられている。この電気接続部は、互いに平行な第1の面H1305と第2の面H1306に配列されている各外部信号入力端子H1304に接触するように、第1、第2の面H1305,H1306に整合する段差を有する面に配置されている。また、キャリッジ102には、各記録ヘッドの装着ガイドH1560の案内部、各突き当て部H1570,H1580,H1590に対応する位置基準部、係合部H1930に当接させることができる固定レバーなどが設けられている。
【0051】
キャリッジ102は、主走査方向に延在して装置本体に設置されたガイドシャフト103に沿って往復移動可能に支持されている。キャリッジ102には、主走査モータ104に連結されたモータプーリ105と従動プーリ106に支持されたタイミングベルト107が連結されている。キャリッジ102は、主走査モータ104によって往復駆動され、その位置および移動を制御される。また、キャリッジ102には、キャリッジ102の移動経路の所定の位置に配置された遮蔽板136を検知するホームポジションセンサ130が設けられている。ホームポジションセンサ130が遮蔽板136上にくる位置が、キャリッジ102のホームポジションとなる。
【0052】
また、記録装置は、印刷用紙やプラスチック薄板等の記録媒体108を一枚ずつ分離して給紙するオートシートフィーダ(ASF)132を有している。ASF132は、給紙モータ135によってギアを介して回転駆動されるピックアップローラ131を有している。
【0053】
ASF132の後には、LFモータ134によってギアを介して回転駆動される搬送ローラ109が設けられている。搬送ローラ109は、記録媒体108を、記録ヘッドH1001a及びH1001bの吐出口面と対向する位置(プリント部)を通って搬送(副走査)することができる。記録媒体108の搬送経路には、記録媒体108の端部の位置を検出するペーパエンドセンサ133が設けられている。記録媒体108が給紙されたかどうかの判定や、給紙時の頭出し位置の確定などが、記録媒体108がペーパエンドセンサ133を通過したかどうかを示す検出信号によって行われる。このペーパエンドセンサ133は、記録媒体108の後端が実際にどこに有るかを算出したり、実際の後端の位置から現在の記録位置を最終的に割り出したりするのにも使用することができる。
【0054】
プリント部には、記録媒体108のプリント面がプリント部において平坦に位置するように、記録媒体108の裏面を支持する不図示のプラテンが設けられている。記録ヘッドH1001a及びH1001bは、それらの吐出口面がキャリッジ102から下方へ突出し、プラテン上の記録媒体108のプリント面に平行になるようにキャリッジ102に保持される。また、記録ヘッドH1001aおよびH1001bの各吐出口群H1108における吐出口H1107の並び方向は、キャリッジ102の走査方向に対して交差する方向になっている。
【0055】
この記録装置による記録動作では、まず、セットされた記録媒体108がASF132によって給紙され、搬送ローラ109によって搬送されて、記録媒体108の所望の位置のプリント面がプリント部に配置される。次に、キャリッジ102が往復移動させられ、この際、所望の記録画像に応じた所定のタイミングで各記録ヘッド1001a,H1001bが駆動され、各吐出口H1107から選択的にインクが吐出される。これによって、記録媒体108の、所定の幅の領域に画像が記録される。その後、記録媒体108の位置が搬送ローラ109によって所定量だけずらされ、再び所定幅の画像記録が行われ、これが繰り返されて、記録媒体108の所望の領域に所望の画像が記録される。
【0056】
この記録装置は、例えば、通常の画質の記録を行う場合に用いる記録ヘッドH1001a,H1001bの一方を、これらと同等の構成で、ライトマゼンタ、ライトシアン、ブラックのインクを吐出する記録ヘッドに交換することによって、通常の画質の記録と、高画質のフォト画像の記録とを適宜切り換えて行う運用をすることも可能である。
【0057】
次に、図1,2を参照して、本実施例の記録ヘッドH1001における、ヘッド固有の情報を記憶する情報記憶素子の静電気対策について説明する。
【0058】
図1は、記録ヘッドH1001における外部信号入力端子H1302が設けられた部分を拡大して示している。同図を参照すると、電気配線テープH1301には、32個の外部信号入力端子H1302が設けられており、そのうち17個の外部信号入力端子H1302は外部に対し相対的に凹の第1の面H1305上に、残りの15個の外部信号入力端子は第2の面H1306上に配置されている。第1の面H1305は、第2の面H1306に対して、図中下方に位置している。
【0059】
これら外部信号入力端子H1302のうち6個はIDコンタクトパッド(情報出力コンタクトパッド)H1302aであり、これらは第1の面H1305上の、図中最上部に、第2の面H1306との境界に沿って配置されている。これらIDコンタクトパッドH1302aは、図6に示したヒューズH1117(または単なる結線や抵抗素子でもよい)とつながっているIDパッドH1104aに各々接続されている。したがって、IDコンタクトパッドH1302aは、情報記憶素子に、他の素子を介さず直接的に接続されている。
【0060】
外部信号入力端子H1302のうち、他の6個はGNDHコンタクトパッド(グラウンドコンタクトパッド)H1302dであり、これらは、IDコンタクトパッドH1302aの列に対して図中下方に隣接する列を形成している。これらGNDHコンタクトパッドH1302dは、図6に示したGNDHパッドH1104dに接続されている。
【0061】
また、6個のVHコンタクトパッド(電源コンタクトパッド)H1302cの列が、IDコンタクトパッドH1302aの列に隣接して、第2の面H1306上の図中最下部に、したがって第1の面H1305との境界に沿って列状に並んで位置している。これらVHコンタクトパッドH1302cは、図6に示したVHパッドH1104cに接続されている。
【0062】
IDコンタクトパッドH1302a、VHコンタクトパッドH1302c、およびGNDHコンタクトパッド(グラウンドコンタクトパッド)H1302dを除く残りの外部信号入力端子H1302は、トランジスタ電源供給用や制御信号用等、その他の用途に使用される。
【0063】
記録ヘッドH1101は、前述したように、保持しているインクが無くなった時に新しいものと交換する場合、あるいは、通常の画質の画像記録用のものと、フォト画像記録用のものとを交換する場合に、使用者の手に触れることになる。この際、図2に示すように、使用者が、帯電した指101を不用意に外部入力端子H1302の部分に近づけてしまうことが考えられる。
【0064】
本実施例の記録ヘッドH1101では、電気熱変換素子H1103などの他の素子に比べて比較的静電気に弱い情報記憶素子を構成するヒューズH1117に接続されたIDコンタクトパッドH1302aが、周囲に対して一段低くなった第1の面H1305上に配列されている。したがって、使用者が上記のように、指101を外部入力端子H1302の部分に近づけたとしても、指101がIDコンタクトパッドH1302aに直接触れにくくなっている。また、特に、IDコンタクトパッドH1302aが、第1の面H1305と第2の面H1306の境界に沿う位置にあるため、両面の段差によって、指101がIDコンタクトパッドH1302aに触れるのを効果的に抑制することができる。このように指101がIDコンタクトパッドH1302aに触れないようにすることによって、IDコンタクトパッドH1302aを介して、ヒューズH1101に静電気の影響が及ぶのを抑制することができる。
【0065】
加えて、IDコンタクトパッドH1302aは、VHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dに隣接しており、しかもそれらコンタクトパッドの間に挟まれているので、帯電した指101がIDコンタクトパッドH1302aに接近して放電が発生する場合でも、この放電は、VHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dの方に起こりやすい。それによって、ヒューズH1101に静電気の影響が及ぶのを抑制することができる。放電がVHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302d側に起こりやすい理由としては、これらが各電気熱変換体H1103に電力を供給するように構成されたものであり、構成上、電気が比較的流れやすいこと、これらのパッドの配置上、IDコンタクトパッドH1302aよりも指の表面に近い位置にきやすいことが挙げられる。
【0066】
このように、本実施例によれば、静電気の影響が、ヘッド固有情報を記憶する情報記憶素子に及ぶのを抑制することができ、それによって、静電気のために情報記憶素子が破壊されたり、情報記憶素子に記憶されているヘッド固有情報が書き換えられたりするのを抑制することができる。本実施例の構成では、このように、情報記憶素子を静電気から保護するのに、特別な回路を形成することがなく、記録ヘッドH1001の複雑化や、その製造工程の増加などをほとんど招くことがない。したがって、本実施例によれば、簡単な構成でありながら、情報記憶素子が静電気の影響を受けにくい記録ヘッドH1001を提供することができる。
【0067】
(実施例2)
本発明の第2の実施例の記録ヘッドについて図9および図10を参照して説明する。図10は本実施例の記録ヘッドH1001の全体を示しており、図9は、外部信号入力端子部を拡大したものである。この記録ヘッドH1001は、外部信号入力端子部の形状のみが第1の実施例と異なっており、記録素子基板などの他の構成は第1の実施例のものと同等であってよい。
【0068】
図9を参照すると、本実施例では、電気配線テープH1301上の32個の外部信号入力端子H1302のうち、6個のIDコンタクトパッドH1302aが、外部に対し相対的に凹の第1の面H1305上に、残りの26個の外部信号入力端子が第2の面H1306上に配置されている。6個のIDコンタクトパッドH1302aに図中上下に隣接して、第2の面H1306上に、それぞれ6個のGNDHコンタクトパッドH1302d及び6個のVHコンタクトパッドH1302cの列が配置されている。
【0069】
本実施例の記録ヘッドH1001では、比較的静電気に弱い情報記憶素子を構成するヒューズH1117(または結線や抵抗素子)に接続されたIDコンタクトパッドH1302aが、周囲に比べて一段低くなった第1の面H1305上に配列されており、かつ両側に隣接するコンタクトパッド列は、一段高い第2の面H1306上に配列されている構造となっている。このため、使用者がこの記録ヘッドH1001を手にした時、IDコンタクトパッドH1302aに触れるのを、さらに効果的に抑制することができる。
【0070】
加えて、IDコンタクトパッドH1302aには、VHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dが隣接しているため、使用者の帯電した指が不用意にIDコンタクトパッドH1302aに接近して、放電が生じた場合でも、この放電は、VHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dの方に起こりやすく、IDコンタクトパッドH1302a側には起こりにくい。
【0071】
このように、本実施例によれば、静電気の影響が情報記憶素子に及ぶのを抑制し、静電気による情報記憶素子の破壊や情報記憶素子に記憶されたヘッド固有情報の書き換えを抑制することができる。
【0072】
(第3の実施例)
本発明の第3の実施例の記録ヘッドについて図11および図12を参照して説明する。図12は本実施例の記録ヘッドH1001の全体を示しており、図11は、外部信号入力端子部を拡大したものである。この記録ヘッドH1001は、外部信号入力端子部の形状のみが第1、第2の実施例と異なっており、記録素子基板などの他の構成は第1の実施例のものと同等であってよい。
【0073】
図11を参照すると、電気配線テープH1301上の32個の外部信号入力端子H1302のうち、16個の外部信号入力端子H1302は外部に対し相対的に凹の第1の面H1305上に、残りの16個の外部信号入力端子は第2の面H1306上に配置されている。第1の面H1305は、第2の面H1306に対して、図中上方に位置している。
【0074】
これら外部信号入力端子H1302のうち、6個のIDコンタクトパッドH1302aは第1の面H1305上の、図中最下部に、したがって第2の面H1306との境界に沿って配置されている。このIDコンタクトパッドH1302aの列に隣接して、図中上方には6個のVHコンタクトパッドH1302cの列、図中下方には6個のGNDHコンタクトパッドH1302dの列が配置されている。したがって、GNDHコンタクトパッドH1302dの列は、第2の面H1306上の、図中最上部に、第1の面H1305との境界に沿って位置している。
【0075】
本実施例では、第1の実施例と同様、比較的静電気に弱い、情報記憶素子を構成するヒューズH1117(または結線や抵抗素子)に接続されたIDコンタクトパッドH1302aが、周囲に比べて一段低くなった第1の面H1305上に配列されているため、使用者がこの記録ヘッドH1001を手にした場合、IDコンタクトパッドH1302aに触れにくくなっている。加えて、IDコンタクトパッドH1302aの列が、隣接するVHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dの列に挟まれているので、使用者の帯電した指が不用意にIDコンタクトパッドH1302aに接近して放電が発生した場合でも、この放電はVHコンタクトパッドH1302c及びGNDHコンタクトパッドH1302dの方に起こりやすく、IDコンタクトパッドH1302a側には起こりにくい。したがって、本実施例によれば、静電気による情報記憶素子の破壊や情報記憶素子に記憶されたヘッド固有情報の書き換えを抑制することができる。
【0076】
以上説明した各実施例は、本発明の一例であって、その構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、上述の説明では、サイドシュータ型の記録ヘッドを例に挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、吐出口が電気熱変換素子の形成面に対して交差する面上に形成された、いわゆるエッジシュータ型の記録ヘッドに対しても、本発明は問題なく適用可能である。また、本発明は、バブルジェット(BJ)方式や、インク吐出過程において、インク中に生成された気泡が大気に連通するBTJ(バブルスルージェット)方式の他、種々のインク吐出方式を採用したインクジェット記録ヘッドへの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施例のインクジェット記録ヘッドの外部信号入力端子部を示す図である。
【図2】図1のインクジェット記録ヘッドに使用者の指が近付く様子を示す図である。
【図3】図1のインクジェット記録ヘッドの全体を示す斜視図であり、(a)は記録素子基板側から、(b)は蓋部材側から見た図である。
【図4】図1のインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。
【図5】図1のインクジェット記録ヘッドの記録素子基板を、一部を破断して示す斜視図である。
【図6】図5の記録素子基板上に形成された回路の模式図である。
【図7】図1のインクジェット記録ヘッドの、電気配線テープと記録素子基板の接続部を示す断面図である。
【図8】図1のインクジェット記録ヘッドを搭載可能な一例のインクジェット記録装置を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施例のインクジェット記録ヘッドの外部信号入力端子部を示す図である。
【図10】図9のインクジェット記録ヘッドの全体を示す斜視図であり、(a)は記録素子基板側から、(b)は蓋部材側から見た図である。
【図11】本発明の第3の実施例のインクジェット記録ヘッドの外部信号入力端子部を示す図である。
【図12】図11のインクジェット記録ヘッドの全体を示す斜視図であり、(a)は記録素子基板側から、(b)は蓋部材側から見た図である。
【符号の説明】
【0078】
H1001 記録ヘッド(液体吐出記録ヘッド)
H1117 ヒューズ(情報記憶素子の構成要素)
H1302 外部信号入力端子(コンタクトパッド)
H1305 第1の面
H1306 第2の面
H1302a IDコンタクトパッド(情報出力コンタクトパッド)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出記録装置に着脱可能な液体吐出記録ヘッドであって、
前記液体吐出記録装置に備えられた複数の接点に接触して電気的に接続される複数のコンタクトパッドと、
前記液体吐出記録装置によって読み出し可能な情報を記憶する情報記憶素子とを有し、
前記コンタクトパッドは、外面の一部を構成する、周囲に対して凹となった第1の面と、第1の面より高くなった第2の面とに配置されており、
前記コンタクトパッドは、前記情報記憶素子に直接的に接続された情報出力コンタクトパッドを含み、該情報出力コンタクトパッドは前記第1の面に配置されている液体吐出記録ヘッド。
【請求項2】
前記情報出力コンタクトパッドは、前記第1の面上の、前記第2の面との境界に隣接して配置されている、請求項1に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項3】
前記第1の面は前記第2の面に挟まれており、前記情報出力コンタクトパッドは、前記第1の面の両側の前記第2の面との境界に隣接して配置されている、請求項1に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項4】
電力を、液体を吐出させるためのエネルギに変換する記録素子をさらに有し、
前記コンタクトパッドは、前記記録素子に電力を供給するための電源コンタクトパッドおよびグラウンドコンタクトパッドをさらに含み、
前記電源コンタクトパッドおよびグラウンドコンタクトパッドの少なくとも一方が、前記情報出力コンタクトパッドに隣接して配置されている、請求項2または3に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項5】
電力を、液体を吐出させるためのエネルギに変換する記録素子をさらに有し、
前記コンタクトパッドは、前記記録素子に電力を供給するための電源コンタクトパッドおよびグラウンドコンタクトパッドをさらに含み、
前記情報出力コンタクトパッドは列状に配置されており
前記電源コンタクトパッドと前記グラウンドコンタクトパッドの少なくとも一方が、前記情報出力コンタクトパッドの列に隣接する列を形成している、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項6】
前記記録素子が形成された記録素子基板をさらに有し、
前記情報記憶素子は前記記録素子基板上に形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項7】
前記情報記憶素子は、前記記録素子基板上の結線の有無により情報を保持する構成を有している、請求項6に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項8】
前記情報記憶素子は、外部からの電気信号により切断可能なヒューズを有している、請求項6または7に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項9】
前記情報記憶素子は、抵抗素子の抵抗値に応じた情報を保持する構成を有している、請求項6から8のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項10】
前記コンタクトパッドは、前記記録素子基板に接続された配線基板上に形成されている、請求項6から9のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項11】
液体を吐出させる液体吐出機構部と、該液体吐出機構部に供給する液体を収容する液体収容部とを有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッドと、
該液体吐出記録ヘッドの、複数の前記コンタクトパッドに接続される複数の接点とを有する液体吐出記録装置。
【請求項1】
液体吐出記録装置に着脱可能な液体吐出記録ヘッドであって、
前記液体吐出記録装置に備えられた複数の接点に接触して電気的に接続される複数のコンタクトパッドと、
前記液体吐出記録装置によって読み出し可能な情報を記憶する情報記憶素子とを有し、
前記コンタクトパッドは、外面の一部を構成する、周囲に対して凹となった第1の面と、第1の面より高くなった第2の面とに配置されており、
前記コンタクトパッドは、前記情報記憶素子に直接的に接続された情報出力コンタクトパッドを含み、該情報出力コンタクトパッドは前記第1の面に配置されている液体吐出記録ヘッド。
【請求項2】
前記情報出力コンタクトパッドは、前記第1の面上の、前記第2の面との境界に隣接して配置されている、請求項1に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項3】
前記第1の面は前記第2の面に挟まれており、前記情報出力コンタクトパッドは、前記第1の面の両側の前記第2の面との境界に隣接して配置されている、請求項1に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項4】
電力を、液体を吐出させるためのエネルギに変換する記録素子をさらに有し、
前記コンタクトパッドは、前記記録素子に電力を供給するための電源コンタクトパッドおよびグラウンドコンタクトパッドをさらに含み、
前記電源コンタクトパッドおよびグラウンドコンタクトパッドの少なくとも一方が、前記情報出力コンタクトパッドに隣接して配置されている、請求項2または3に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項5】
電力を、液体を吐出させるためのエネルギに変換する記録素子をさらに有し、
前記コンタクトパッドは、前記記録素子に電力を供給するための電源コンタクトパッドおよびグラウンドコンタクトパッドをさらに含み、
前記情報出力コンタクトパッドは列状に配置されており
前記電源コンタクトパッドと前記グラウンドコンタクトパッドの少なくとも一方が、前記情報出力コンタクトパッドの列に隣接する列を形成している、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項6】
前記記録素子が形成された記録素子基板をさらに有し、
前記情報記憶素子は前記記録素子基板上に形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項7】
前記情報記憶素子は、前記記録素子基板上の結線の有無により情報を保持する構成を有している、請求項6に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項8】
前記情報記憶素子は、外部からの電気信号により切断可能なヒューズを有している、請求項6または7に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項9】
前記情報記憶素子は、抵抗素子の抵抗値に応じた情報を保持する構成を有している、請求項6から8のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項10】
前記コンタクトパッドは、前記記録素子基板に接続された配線基板上に形成されている、請求項6から9のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項11】
液体を吐出させる液体吐出機構部と、該液体吐出機構部に供給する液体を収容する液体収容部とを有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッドと、
該液体吐出記録ヘッドの、複数の前記コンタクトパッドに接続される複数の接点とを有する液体吐出記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−289893(P2006−289893A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116666(P2005−116666)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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