説明

液体吸収性内部層と不浸透性外部層とを含むフィルム

液体吸収性層と不浸透性層とを含むフィルムを提供する。また、これらのフィルムの製造方法も提供する。このフィルムは、チューブ状ケーシング(casing)およびシュリンクバッグ、特に燻製にされる食料品用のケーシングの調製のために適切である。チューブ状ケーシング中で加工される食料品も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料品の包装および/または詰め込みに有用な積層フィルムに関する。特に、本発明は、食料品中に添加剤を組み入れるために使用可能なケーシング(casing)およびシュリンクバッグを製造するために有用なフィルムである。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2002年11月12日出願の米国特許仮出願第60/425,604号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、食料品ケーシングは、セルロースまたは動物の腸のような天然材料、あるいは合成材料のいずれかから製造される。通常、食料品はケーシング中に包装される。燻製品が望まれる場合、詰め込まれた食料品はさらに燻煙プロセスを受ける。従来の燻煙プロセスにおいて、製品を、木材の燃焼からの熱燻煙に暴露される燻室中に吊るす。このプロセスには、天然ケーシング、すなわち、燻煙に対して自然な浸透性を示す、例えば腸から得られるもの、あるいはセルロースまたはコラーゲンケーシングのみが、このプロセスで使用可能であるという不都合がある。
【0004】
燻製品の調製および貯蔵において重要な点は、ケーシングが、プロセスの工程次第で、異なる浸透性を示さなければならないということである。燻煙プロセスの間は、高温(典型的に50℃と100℃との間)および高湿度で、高い浸透性が必要とされる。典型的に、高浸透性セルロースケーシングおよび繊維状ケーシング(木材繊維によって再強化されたセルロースケーシング)は、1000g.25ミクロン/m2.24時間を超える水蒸気透過速度を有する。製品が燻製にされて、冷却されると、ケーシングが水分に対するバリアとして作用することが好ましいため、浸透性は、好ましくは低く、50℃未満、好ましくは30℃未満の温度で1000g.25ミクロン/m2.24時間未満の速度であるべきである。具体的な適用次第で、30℃未満の温度における所望の浸透性は、実質的に1000g.25ミクロン/m2.24時間未満であり得る。
【0005】
天然製品および/またはセルロースから製造されたケーシングは、多くの不都合を提供する可能性がある。すなわち、それらは高価であり、蒸気に対するそれらの高い浸透性は、食料品からの著しい重量損失を引き起こし、乾燥および/または表面の脂肪の酸化のため、製品は不安定である。また、天然ケーシングの微生物による腐敗によって引き起こされる灰色化も、しばしばケーシング上に現れる。繊維状ケーシングおよびセルロースケーシングの製造方法は、大気への二硫化炭素および硫化水素の放射を伴い、これは環境的懸念であるか、または放射を最小化するための高価なガス洗浄システムを必要とする。
【0006】
これらの課題の克服を試みる様々なアプローチがある。例えば、ソーセージ包装用の単層および多層プラスチックケーシングは、当該分野において既知である。最近では、PCT特許出願公報(特許文献1)に、吸収性ポリマーにブレンドすることによって、より燻煙可能なポリアミドをベースとするケーシングを製造する開発が記載されている。
【0007】
また従来の燻煙プロセスは、燻室中で生じた燻煙と関係して、燻煙香味剤および着色剤の不在下では非効率的である。従来の燻煙プロセスの不都合を克服するために、燻煙を水中に通過させて、燻煙から吸収された香味剤および着色剤の濃縮溶液を調製することができ、そしてかかる溶液を食品加工材料として使用することができる。食料品に香味および色を与えるために、塩漬け加工間に、この「燻液(liquid smoke)」を食料品に塗布することができる。シャワー、アトマイズまたはスプレーによって、典型的な燻液を食品の表面に塗布する。しかしながら、調理間に食料品との良好な接触下に燻液が保持されない限り、なお燻液は相対的に非効率的であり、より多くの燻液が、塗布されるよりも損失する。加えて、燻液は腐敗する傾向があり、適切に塗布されない場合は、不均一な色および香味を生じる。
【0008】
燻液の使用に関する商業的な実施は、ポリエチレンおよびポリアミドのキャスト多層フィルム上へ特別な紙製品を積層する工程と、次いで継目で特別なシールストリップによってフィルムをチューブ状ケーシングへと変換する工程とを伴う。次いで、調理プロセス間の食料品への移動のために、燻液を紙層へ塗布する。
【0009】
米国特許公報(特許文献2)は、調理間に肉の外部表面へと移動し得る燻液のような変性剤を含有する熱可塑性フィルムを記載する。熱可塑性フィルムの内部表面は、15重量%〜40重量%のポリエチレンオキシドとブレンドされたエチレン酢酸ビニルコポリマーまたはポリエチレンのような非吸収性ポリオレフィンポリマーである。
【0010】
米国特許公報(特許文献2)は、摂取可能な脂質または他の油溶性脂肪酸もしくはワックス内に被包された燻液を含有する食用コラーゲン食品ラッピングを記載する。ここでは、塩漬けまたは調理間に、そしてコラーゲン封入食品の消費前に、燻液は放出する。
【0011】
しかしながら、従来の方法のいずれにも課題がある。貯蔵、および燻液を利用する燻煙プロセスに関して、有効かつ効率的に使用可能な合成ケーシングが望まれている。
【0012】
【特許文献1】国際公開第02/054878号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,382,391号明細書
【特許文献3】米国特許第4,725,481号明細書
【特許文献4】米国特許第5,408,000号明細書
【特許文献5】米国特許第4,174,358号明細書
【特許文献6】米国特許第3,393,210号明細書
【特許文献7】米国特許第2,512,606号明細書
【特許文献8】米国特許第2,312,966号明細書
【特許文献9】米国特許第2,241,322号明細書
【特許文献10】米国特許第4,076,698号明細書
【特許文献11】米国特許第3,645,992号明細書
【特許文献12】米国特許第5,198,401号明細書
【特許文献13】米国特許第5,405,922号明細書
【特許文献14】米国特許第3,278,663号明細書
【特許文献15】米国特許第3,337,665号明細書
【特許文献16】米国特許第3,456,044号明細書
【特許文献17】米国特許第4,590,106号明細書
【特許文献18】米国特許第4,760,116号明細書
【特許文献19】米国特許第4,769,421号明細書
【特許文献20】米国特許第4,797,235号明細書
【特許文献21】米国特許第4,886,634号明細書
【非特許文献1】エンサイクロペディア オブ ポリマー サイエンス アンド エンジニアリング(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering),第12巻,第76〜177頁(1985)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様において、本発明は、(i)調理間に、肉に香味および色を均一に付与するために有用な液体吸収性内部層と、(ii)外部不浸透性バリア層とを含む積層フィルムであって、
(A)内部層が、ブロックコポリエーテルエステルポリマーまたはブロックコポリエーテルアミドポリマーから選択されるポリマーを含み、そして
(B)外部不浸透性フィルム層が、(a)ポリアミドもしくはそれらの混合物、エチレンビニルアルコールコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィンまたはこれらの任意の混合物よりなる群のポリマーから選択されるポリマーを含む少なくとも1つのポリマー層と、(b)任意の少なくとも1つの結合層(tie layer)とを含む、単層フィルムであるか、あるいは積層または多層フィルムである、積層フィルムである。
【0014】
もう1つの態様において、本発明は、(i)調理間に、肉に香味および色を均一に付与するために有用な液体吸収性内部層と、(ii)外部不浸透性バリア層とを含む積層フィルムを含む、チューブ状ケーシング(casing)またはバッグであって、
(A)内部層が、ブロックコポリエーテルエステルポリマーまたはブロックコポリエーテルアミドポリマーから選択されるポリマーを含み、そして
(B)外部不浸透性フィルム層が、(a)ポリアミドもしくはそれらの混合物、エチレンビニルアルコールコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィンまたはこれらの任意の混合物よりなる群のポリマーから選択されるポリマーを含む少なくとも1つのポリマー層と、(b)任意の少なくとも1つの結合層とを含む、単層フィルムであるか、あるいは積層または多層フィルムである、チューブ状ケーシングまたはバッグである。
【0015】
もう1つの態様において、本発明は、不浸透性層および吸収性層を一工程でチューブ状積層フィルムへと共押出する工程を含む、本発明の積層フィルムの製造方法である。
【0016】
さらにもう1つの態様において、本発明は、(1)インフレート法(blowing process)、または(2)キャスト共押出法、または(3)共押出コーティング法による本発明のフィルムの製造方法である。
【0017】
もう1つの態様において、本発明は、本発明のフィルムを使用して調製された食料品である。
【0018】
さらにもう1つの態様において、本発明は、本発明の配向フィルムの製造方法である。
【0019】
なおもう1つの態様において、本発明は、パッケージ内に水分を保持しながら、パッケージが食料品からの水分を吸収する食料品用パッケージである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
特記されない限り、発明の詳細な説明において本明細書に開示される参照文献は全て、参照として組み入れられる。
【0021】
「コポリマー」は、2種以上の異なるモノマーを含有するポリマーを意味する。用語「ジポリマー」および「ターポリマー」は、それぞれ2種および3種の異なるモノマーのみを含有するポリマーを意味する。語句「様々なモノマーのコポリマー」は、その単位が様々なモノマーから誘導されるコポリマーを意味する。
【0022】
一実施形態において、本発明は、吸収性内部層と外部バリア層とを含む積層フィルムである。この用語が本明細書で使用される場合、内部層は、外部バリア層以外のいずれかの層であり得る。例えば、内部層は、最も内側の層、すなわち、ケーシングの内部に配置された食料品と直接接触し得る層であり得るか、または吸収性内部層は、最も内側の層と外部バリア層との間に配置されたいずれかの層であり得る。外部バリア層は、食料品から最も遠くに離れているフィルム層である。
【0023】
本発明の吸収性層において使用するために適切なポリマーは、それらが親水性および吸水性であるという事実を特徴とする。吸収性内部層は、ブロックコポリエーテルエステルポリマーおよびブロックコポリエーテルアミドポリマーよりなる群のポリマーから選択されるポリマーを含む。
【0024】
本発明での使用に適切なコポリエーテルエステル(PEPE)は、熱可塑性ポリマーである。本発明の実施において使用するために適切なPEPEは、標準法ISO11443に従って決定される場合、約20パスカル秒(Pa.s)〜約3000Pa.sの範囲の粘度を有する。好ましくは、粘度は、標準法ISO11443に従って測定される場合、約20Pa.s〜約2000Pa.s、より好ましくは約40Pa.s〜1000Pa.s、そして最も好ましくは約50Pa.s〜約700Pa.sの範囲内である。
【0025】
好ましくは、コポリエーテルエステルの融点は120℃より高く、より好ましくは約120℃〜約220℃以上の範囲内である。標準ISO3146に従って、示差走査熱量測定法(DSC)によって融点を決定する。
【0026】
本発明での使用に適切なコポリエーテルエステルは、米国特許公報(特許文献3)に記載されており、その開示は、本明細書に参照として組み入れられる。好ましくは、コポリエーテルエステルは、頭−尾エステル結合によってランダムに結合した、繰り返し長鎖エステル単位と短鎖エステル単位との多様性を有する。繰り返し長鎖エステル単位を、式(I):
【0027】
【化1】

【0028】
によって表すことができ、そして繰り返し短鎖エステル単位を、次式:
【0029】
【化2】

【0030】
によって表すことができる(式中、
【0031】
【化3】

【0032】
は、コポリエーテルエステルポリマーの残りの明示されていない部分を示し、
Gは、約400〜約3500、好ましくは約1000〜約2500の範囲の分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールからの末端ヒドロキシル基の除去後に残る二価の基であり、
短鎖エステル単位(II)は、ジオールとジカルボン酸との間のエステル化反応から得られる反応生成物であり、
Dは、約250未満の分子量を有するジオールからのヒドロキシル基の除去後に残る二価の基であり、そして
Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からの両カルボン酸基の除去後に残る二価の基であるが、
ただし、エステル単位は、末端エステル単位ではない場合、両端部で長鎖エステル単位に結合し得るか、または両端部で短鎖エステル単位に結合し得るか、または一端で長鎖エステル単位に、もう一端で短鎖エステル単位に結合し得、そしてさらに、エステル単位が末端単位である場合は、式Iまたは式IIにおける明示されていない部分の1つは、長鎖エステル単位または短鎖エステル単位以外の置換基である)。本明細書で使用される場合、用語「末端」は、エステル単位と関連して使用される場合、ポリマー分野における従来の意味を有し、すなわち、ポリマー鎖の端部に位置するエステル単位を指す。
【0033】
本発明のPEPEは、ASTM D6701−01に従って決定される場合、少なくとも約1200g.25ミクロン/m2.24時間、好ましくは約1200g.25ミクロン/m2.24時間〜約20000g.25ミクロン/m2.24時間の水蒸気透過速度を有する。
【0034】
本発明のコポリエーテルエステルを調製するために使用されるポリ(アルキレンオキシド)グリコールは、好ましくは、ポリ(プロピレンエーテル)グリコールおよび/またはポリ(エチレンエーテル)グリコールを含む。最も好ましくは、本発明のコポリエーテルエステル中にエチレンオキシド基を組み入れる。本発明のコポリエーテルエステルを調製するために有用な長鎖グリコール(すなわち、400より高い分子量を有するグリコール)は、好ましくは、コポリエーテルエステルが、コポリエーテルエステルの総重量を基準として約5重量%〜約68重量%のエチレンオキシド単位、好ましくは約15重量%〜約68重量%、より好ましくは約20重量%〜約55重量%のエチレンオキシド単位を組み入れることができるように、十分なエチレンオキシドを含む。コポリエーテルエステルに組み入れられたエチレンオキシド基に関しては、長鎖エステル単位中の(−CH2−CH2−O−)基の総コポリエーテルエステル中の重量%が記載される。ポリマー中のエチレンオキシド基の数を決定するために計算されるコポリエーテルエステル中のエチレンオキシド基は、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールから誘導されるものであり、低分子量ジオールによってコポリエーテルエステル中に導入されるエチレンオキシド基ではない。
【0035】
適切な長鎖グリコールとしては、得られるコポリエーテルエステルが少なくとも約5重量%のエチレンオキシド基の量を有することを条件として、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドキャップドポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(エチレンオキシド)グリコールと、エチレンオキシドキャップドポリ(プロピレンオキシド)グリコールのような他のグリコールとの混合物、および/またはポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが挙げられる。約600〜2500の分子量を有するポリ(エチレンオキシド)グリコールから調製されるPEPEが好ましい。約2150の分子量を有するエチレンオキシドキャップドポリ(プロピレンオキシド)から調製されるPEPEが特に好ましい。
【0036】
本発明の目的のために有用な適切な低分子量ジオールとしては、非環式、脂環式および芳香族ジオールが挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソブチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ペンタメチレングリコール、2,2−ジメチルトリメチレングリコールおよびデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレンならびに同様のジオールのような2〜15個の炭素原子を有するジオールである。特に好ましくは、2〜8個の炭素原子を含有する脂肪族ジオールであり、最も特に1,4−ブタンジオールである。有用なビスフェノールとしては、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタンおよびビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。ジオールの同等のエステル形成誘導体も有用であり得る。例えば、本発明の実施において、エチレングリコールの代わりにエチレンオキシドまたは炭酸エチレンを使用することができる。しかしながら、分子量の必要条件がジオールに関連し、その誘導体に関連しないことを条件として、本発明の実施において有用な低分子量ジオールは、同等のエステル形成誘導体を含む。
【0037】
本発明のコポリエーテルエステルを製造するために有用なジカルボン酸は、脂肪族、脂環族または芳香族ジカルボン酸、およびそれらの官能性同等物である。これらの同等物としては、エステル、ならびにハロゲン化物および無水物のようなエステル形成誘導体が挙げられる。分子量の必要条件は、酸型に関連し、その同等のエステルまたはエステル形成誘導体に関連しない。
【0038】
用語「脂肪族ジカルボン酸」は、本明細書で使用される場合、それぞれ飽和炭素原子に結合している2つのカルボキシル基を有するカルボン酸を意味する。カルボキシル基が結合している炭素原子が飽和型で環中に存在する場合、酸は脂環族である。共役不飽和を有する脂肪族または脂環族の酸は、単独重合のため、しばしば使用不可能である。しかしながら、マレイン酸のようないくつかの不飽和酸を使用することができる。
【0039】
芳香族ジカルボン酸は、本明細書で用語が使用される場合、炭素環式芳香族環構造中で炭素原子に結合した2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸である。官能性カルボキシル基が両方とも同一芳香族環に結合する必要はなく、2以上の環が存在する場合、脂肪族もしくは芳香族の二価の基、または−O−もしくは−SO2−のような二価の基によってそれらを結合することができる。
【0040】
使用することができる代表的な脂肪族および脂環族の酸としては、セバシン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、グルタル酸、4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、2−エチルコハク酸、シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ−1,5−ナフチレンジカルボン酸、4,4’−ビシクロヘキシルジカルボン酸、デカヒドロ−2,6−ナフチレンジカルボン酸、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシル)カルボン酸および3,4−フランジカルボン酸が挙げられる。好ましい酸は、シクロヘキサンジカルボン酸およびアジピン酸である。
【0041】
代表的な芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸、ジベンゾイン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタンのような2つのベンゼン核によって置換されたジカルボキシ化合物、p−オキシ−1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホニルジベンゾイン酸、ならびにC1〜C12アルキルおよびそれらの環置換誘導体、例えば、ハロ、アルコキシおよびアリール誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸も存在するという条件下であれば、p−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸のようなヒドロキシル酸も使用可能である。
【0042】
本発明のために有用なコポリエーテルエステルポリマーの調製に関して、芳香族ジカルボン酸が好ましい種類である。芳香族酸の中でも、8〜16個の炭素原子を有するものが好ましく、特に、単独の、またはフタル酸および/またはイソフタル酸の混合物とのテレフタル酸が好ましい。
【0043】
コポリエーテルエステルは、上記式(II)に相当する約25重量%〜約80重量%の短鎖エステル単位を含有し、残りは、上記式(I)に相当する長鎖エステル単位である。コポリエーテルエステルが約25重量%未満の短鎖エステル単位を含有する場合、次いで、結晶化速度は非常に遅くなり、そしてコポリエーテルエステルは粘性であり、取扱いが困難である。約80重量%より多い短鎖エステル単位が存在する場合、コポリエーテルエステルは一般的に非常に硬質となる。コポリエーテルエステルは、好ましくは約30重量%〜約60重量%、より好ましくは約40重量%〜約60重量%の短鎖エステル単位を含有し、残りは長鎖エステル単位である。一般的に、コポリエーテルエステル中の短鎖エステル単位のパーセントが増加するほど、ポリマーは高い引張強度およびモジュラスを有し、そして水蒸気透過速度は減少する。最も好ましくは、上記式(I)および(II)中のRによって表される基の少なくとも約70%が1,4−フェニレン基であり、そして上記式(II)中のDによって表される基の少なくとも約70%が1,4−ブチレン基であり、そして1,4−フェニレン基ではないR基と1,4−ブチレン基ではないD基との合計のパーセントが30%を超えない。コポリエーテルエステルを製造するために第2のジカルボン酸を使用する場合、イソフタル酸が酸の選択であり、そして第2の低分子量ジオールを使用する場合、1,4−ブタンジオールまたはヘキサメチレングリコールがジオールの選択である。
【0044】
様々なコポリエーテルエステルポリマーのブレンドが、本発明に含まれることは理解される。
【0045】
反応プロセス、または得られたコポリエーテルエステルの性能を最適化するために、任意に他の少量の成分を添加してもよい。
【0046】
ブロックコポリエーテルエステルおよびそれらの調製については、(非特許文献1)およびその中に報告される文献に記載されている。
【0047】
本発明で使用するために適切なブロックコポリエーテルエステルは、様々な商品名で様々な会社から市販品として入手可能な製品であり、例えば、本願特許出願人から入手可能なハイトレル(Hytrel)(登録商標)、チコナ(Ticona)から入手可能なライトフレックス(Riteflex)(登録商標)およびDSMから入手可能なアルナイテル(Arnitel)(登録商標)である。
【0048】
本発明のフィルム中の吸収性層は、ブロックコポリエーテルアミドを含んでもよい。かかるブロックコポリエーテルアミドは典型的に、結晶性ポリアミドおよび非晶質ポリエーテルブロックからなる。典型的なポリアミドは、ナイロン6またはナイロン12であってよいが、本発明は、これらのポリアミドによって製造されたコポリエーテルアミドに限定されない。市販品として入手可能な一連のポリエーテルアミドは、アトフィナ(Atofina)から商品名「ペバックス(Pebax)(登録商標)」で入手可能である。
【0049】
(不浸透性外部層)
本発明のフィルムの第2の必須成分は、不浸透性外部層である。本発明の不浸透性層は、ポリアミド、エチレンビニルアルコールコポリマー、ポリ塩化ビニリデンおよびポリオレフィンよりなる群のポリマーから選択されるポリマーを含むフィルムの少なくとも1層を含む、単層フィルムであっても、積層または多層フィルムであってもよい。不浸透性外部層は、積層外部層の2つの非適合性層の間の結合層として有用な接着層を任意に含み得る。接着層(結合層)は、無水物変性エチレンホモポリマーおよび/または無水物変性エチレンコポリマーを含み得る。
【0050】
不浸透性バリア構造は、水分および酸素に対して有効なバリア、ならびに透明度、強靭性および耐穿刺性のような食料品の加工および/または包装に適切なバルクメカニカル特性を提供するポリマーのいくつかの層を含み得る。燻煙および/または調理プロセスのために、収縮性は重要であり得る。本発明での使用のために適切な多層バリア構造の例としては、最も外側の層から最も内側の層まで、ポリエチレン/結合層/ポリアミド;ポリエチレン/結合層/ポリアミド/結合層/ポリエチレン;ポリプロピレン/結合層/ポリアミド/EVOH/ポリアミド;ポリアミド/結合層/ポリエチレン;ポリアミド/結合層/ポリエチレン/結合層/ポリアミド;ポリアミド/結合層/ポリアミド/EVOH/ポリアミドが挙げられる。不浸透性構造の最も内側の層の性質次第で、追加の内部結合層を不浸透性構造と吸収性層との間に挿入し、吸収性層への所望のレベルの接着を提供することができる。
【0051】
本発明での使用に適切なポリアミドとしては、脂肪族ポリアミド、非晶質ポリアミドまたはそれらの混合物が挙げられる。「脂肪族ポリアミド」という用語は、本明細書で使用される場合、脂肪族ポリアミド、脂肪族コポリアミドおよびこれらのブレンドまたは混合物を指す。本発明での使用のために好ましい脂肪族ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド6.66、それらのブレンドおよび混合物である。ポリアミド6.66は、BASFから商品名「ウルトラミド(Ultramid)C4」および「ウルトラミド(Ultramid)C35」、または宇部興産株式会社から商品名「ウベ(Ube)5033FXD27」で市販品として入手可能である。ポリアミド6は、例えば、本願特許出願人から商品名ナイロン(Nylon)4.12で市販品として入手可能である。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、ISO307に従って、96%H2SO4中0.5%で測定した場合、脂肪族ポリアミドは、1グラムあたり約140立方センチメートル〜約270立方センチメートル(cm3/g)の範囲の粘度を有する。
【0053】
フィルムは、本明細書に参照として組み入れられる米国特許公報(特許文献4)、米国特許公報(特許文献5)、米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)、米国特許公報(特許文献8)および米国特許公報(特許文献9)に記載のもののような他のポリアミドをさらに含んでもよい。またフィルムは、部分的芳香族ポリアミドを含んでもよい。適切な部分的芳香族ポリアミドは、次式の非晶質コポリアミド6−I/6−Tである。
【0054】
【化4】

【0055】
本発明での使用のために適切ないくつかの部分的芳香族コポリアミドは、例えば、本願特許出願人から商品名セラー(Selar)(登録商標)PAで市販品として入手可能であるか、またはEMS−ヒェミー AG(EMS−Chemie AG)から商品名グリボリー(Grivory)(登録商標)G21で市販品として入手可能な非晶質ナイロン樹脂6−I/6−Tである。
【0056】
本発明での使用に適切なポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレンポリマーおよびコポリマーから選択される。本発明での使用に有用なポリエチレンを、周知のチーグラー−ナッタ(Ziegler−Natta)触媒重合(例えば、米国特許公報(特許文献10)および米国特許公報(特許文献11)を参照のこと)、メタロセン触媒重合(例えば、米国特許公報(特許文献12)および米国特許公報(特許文献13)を参照のこと)、およびフリーラジカル重合を含む様々な方法によって調製することができる。本発明で有用なポリエチレンポリマーとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPEまたはULDPE)のような直鎖ポリエチレン、および低密度ポリエチレン(LDPE)のような分枝鎖ポリエチレンを挙げることができる。本発明での使用のために適切なポリエチレンの密度は、0.865g/cc〜0.970g/ccの範囲である。本発明で使用するための直鎖ポリエチレンは、記載されたような密度範囲内で密度を低下させるために、ブテン、ヘキセンまたはオクテンのようなα−オレフィンコモノマーを組み入れることができる。本発明の不浸透性層は、エチレンビニルエステル、エチレンアルキルアクリレート、エチレン酸ジポリマー、エチレン酸ターポリマーおよびそれらのイオノマーのようなエチレンコポリマーを含み得る。かかるエチレンコポリマーの例は、エチレン酢酸ビニル、エチレンメチルアクリレートおよびエチレン(メタ)アクリル酸ポリマー、ならびにそれらのイオノマーである。本発明の実施において有用なポリプロピレンポリマーとしては、プロピレンホモポリマー、衝撃変性ポリプロピレン、およびプロピレンとα−オレフィンとのコポリマー、ならびにそれらのブレンドが挙げられる。
【0057】
約20モル%〜約50モル%のエチレンを有するポリエチレン/ビニルアルコールコポリマー(「EVOH」)は、本発明での使用に適切であり得る。適切なポリエチレンビニルアールコールコポリマーは、例えば、クラレ(Kuraray)から商品名エバルカ(Evalca)(登録商標)で市販品として入手可能であるか、または日本合成化学工業株式会社から商品名ノルテックス(Noltex)(登録商標)で市販品として入手可能である。
【0058】
本発明で使用するために適切なポリ塩化ビニリデン(PVDC)を、例えば、ダウ ケミカル(Dow Chemical)から商品名サラン(Saran)(登録商標)で市販品として得ることができる。
【0059】
ポリマーが互いに良好に接着しない場合、ポリマーの層の結合を改善するために、押出可能な接着層(結合層としても既知である)として、無水物または酸変性エチレンならびにプロピレンホモ−およびコ−ポリマーを使用し、そのようにして多層構造中の層と層との結合を改善する。多層構造に結合される必要がある隣接層の組成に従って、結合層の組成を決定することができる。ポリマー分野の当業者は、構造中で使用される他の材料に基づき、適切な結合層を選択することができる。様々な結合層組成物は、例えば、本願特許出願人から商品名バイネル(Bynel)(登録商標)で市販品として入手可能である。
【0060】
本発明の不浸透性フィルムは、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料または顔料、充填剤、難燃剤、潤滑剤、ガラス繊維およびフレークのような強化剤、加工助剤、抗ブロック剤、離型剤および/またはそれらの混合物を含むポリマーフィルム中で使用される従来の添加剤のような任意の材料を追加的に含み得る。
【0061】
様々な技術によって、本明細書に記載されるポリマーを本発明の積層フィルムへと変換することができる。例えば、次のような共押出によって積層フィルムを得ることができる。様々な成分の顆粒を押出機中で溶融し、溶融ポリマーをダイ、またはダイの組に通過させて、溶融ポリマーの層を形成し、次いで層流として加工する。溶融ポリマーを冷却して、層状構造を形成することができる。1つまたは複数の他の層上へ、本発明の共押出ポリマーを積層することができる。
【0062】
他の適切な変換技術は、例えば、インフレートフィルム押出(blown film extrusion)、キャストフィルム押出、キャストシート押出および押出コーティングである。好ましくは、本発明の不浸透性バリアフィルムは、インフレートフィルム押出法によって得られるインフレートフィルム(blown film)である。
【0063】
フィルムの直接急冷またはキャスティングを超えて、本発明の積層フィルムをさらに配向することが可能である。このプロセスは、溶融ポリマーの多層の層流を共押出する工程と、共押出物を急冷する工程と、十分に急冷された共押出物を少なくとも一方向で配向する工程とを含む。「十分に急冷された」という用語は、本明細書で使用される場合、固体フィルム材料を得るために、その融点未満まで実質的に冷却された押出物を記載する。
【0064】
フィルムは、一軸配向されていてもよいが、好ましくは、機械的および物理的特性の満足できる組み合わせを達成するために、フィルムの平面における2つの相互に垂直な方向での引抜きによって二軸配向(biaxially oriented)されている。
【0065】
フィルムを一軸または二軸延伸するための配向および延伸装置は当該分野で既知であり、本発明のフィルムを製造するために当業者によって適合されてよい。かかる装置および方法の例としては、例えば、米国特許公報(特許文献14)、米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)、米国特許公報(特許文献18)、米国特許公報(特許文献19)、米国特許公報(特許文献20)および米国特許公報(特許文献21)に開示されるものが挙げられる。
【0066】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の積層フィルムは、ダブルバブル押出法を使用して配向される。ここでは、一次チューブを押出して、その後に急冷し、再加熱し、次いで内部気体圧力によって展開させて、横断配向を誘発し、そして異周速ニップまたは輸送ローラーによって流れ配向を誘発する速度で引抜くことによって、同時二軸配向が実行される。
【0067】
配向されたインフレートフィルムを得る方法は、ダブルバブル技術として当該分野において既知であり、米国特許公報(特許文献16)に、パールク(Pahlke)によって記載されるように実行することができる。特に、環状ダイ(annular die)から一次チューブを溶融押出する。この押出された一次チューブを迅速に冷却し、結晶化を最小化させる。次いで、(例えば、水浴によって、)その配向温度まで加熱する。フィルム製作装置の配向領域において、膨張によって二次チューブを形成し、それによってフィルムは横断方向で迅速に展開され、そして好ましくは同時に、両方向で展開が生じるような温度で流れ方向で引くか、または延伸し、そしてチューブの膨張は、延伸点での厚さの鋭く急激な減少を伴う。次いで、ニップロールを通してチューブ状フィルムを再び平坦化する。アニーリング工程を通して、フィルムを補強することができ(熱定着)、この工程の間、収縮特性を調節するために、もう一度加熱する。食料品ケーシング(例えば、ソーセージケーシング、シュリンクバッグ)の調製のため、フィルムをチューブ形状に保持することが望ましい。フラットフィルムの調製のために、その長さに沿ってチューブ状フィルムに切れ目を入れて、フラットシートへと開放することができる。これを巻くことができ、そして/またはさらに加工することができる。
【0068】
もう1つの実施形態において、本発明は、1)本発明の吸収性内部層および本発明の不浸透性外部層を含む多層押出物を共押出するか、または共押出積層する工程と、2)フラットダイ(flat die)を通して、工程1)の組成物を加工して、十分に急冷された一次シートを形成し、次いで、横断方向配向に拡幅するフレーム(flame)を横送りすること、および流れ方向配向に異周速ニップまたは輸送ローラーを操作することを通して、幅出伸張機(tenterframe stretcher)によってシートを配向する工程とを含み、両工程が、同時または連続的に起こってよい、配向されたフラットフィルムの製造方法である。
【0069】
もう1つの態様において、本発明は、(1)本発明の吸収性内部層を含む多層押出物を共押出する工程と、(2)環状ダイを通して工程(1)の押出物を加工して、バブルフィルムを形成し、これを空気または内部バブル冷却の他の手段によって急冷して、その後、潰してチューブ状フィルムを製造する工程とを含む、チューブ状フィルムの製造方法である。
【0070】
なおもう1つの態様において、本発明は、1)本発明の吸収性内部層および本発明の不浸透性外部層を含む多層押出物を共押出するか、または共押出積層する工程と、2)フラットダイを通して、チルド金属ロール上に、工程1)の組成物を加工して、可撓性の積層フィルムを形成する工程とを含む、キャストフラットフィルムの製造方法である。
【0071】
配向されたフラットフィルム、キャストフラットフィルム、または切れ目を入れてフラットフィルムへと開放されるチューブ状フィルムは、水性積層、溶媒積層、無溶媒積層等のような当該分野で既知の積層法によって、もう1つのフィルム基材にさらに積層されてもよい。
【0072】
一実施形態において、任意の結合層を有する吸収性内部層を、予め形成されたバリア構造上に押出コーティングして、本発明のフィルムを形成することができる。
【0073】
好ましくは、1分あたり約50メートル(m/分)の速度〜約200m/分の速度のフィルム製作機において、本発明のフィルムを加工することができる。
【0074】
本発明のフィルムは、食料品の詰め込みおよび加工のために有用であり得る。典型的に、直接的にチューブ形状を調製するインフレートフィルム技術を使用すること、またはフィルムのフラットシートからチューブ状構造を形成し、そしてチューブの長さに沿う継ぎ目でシートの端部を定着することのいずれかによって、フィルムをチューブ状ケーシングに製造する。チューブ状ケーシングの内部への食料品の導入を促進するために、ケーシングは任意に、食料品の導入の前にシャーリング(shirr)されてもよい。用語「シャーリングされる」は、チューブ状ケーシングが、チューブの円周に平行な多数の列へと集められることを意味する。開放端部を介して、任意にシャーリングされたチューブ状ケーシングの内部に食料品を導入し、そしてチューブを引き伸ばし、食料品を詰め込む。食料品包装の当業者は、十分確立された手順を使用して、ケーシング中に食料品を容易に導入することができる。
【0075】
少なくとも1つの液体食品加工香味剤および/または着色剤をケーシングの吸収性層中に吸着させることによって、チューブ状ケーシングをさらに処理することができる。その後、例えば、加熱、保存処理、燻煙または調理のような食品加工間に、香味剤および/または着色剤は食料品へと移動する。
【0076】
好ましい実施形態において、本発明のチューブ状ケーシングは、香味剤および着色剤の両方として作用する食品加工材料として「燻液」を含む。燻液は、食品加工の当業者に周知であり、多数の変異形が既知であり、また市販品として入手可能である。好ましくは、燻液を含むチューブ状ケーシングは、ソーセージの加工に有用であり得る。
【0077】
本発明のフィルムを使用して加工可能な食料品は、牛肉、豚肉、鳥肉(例えば、鶏および七面鳥)、魚介類(例えば、魚および軟体動物)ならびにチーズが挙げられる。肉製品としては、限定されないが、ソーセージ、ランチミート、ハム、ターキー、ホットドッグ、キルバサが挙げられる。肉製品は、全筋であり得るか、様々な肉スラリーに配合されてもよく、ある形状に形成されてもよく、または粉砕されてもよい。形成されたか、または粉砕された肉の場合、任意に、肉が、2種以上に由来する材料の混合物であることも可能である。本発明のケーシング中に導入する前に食料品を加工することができ、次いで、ケーシング中で加工することもできる。
【0078】
もう1つの実施形態において、本発明のフィルムを、真空バッグ、シュリンクバッグおよびポーチのようなバッグの形状に製造することもできる。横断方向でフィルムを封着し、次いで切断することによって、かかるバッグをチューブ状フィルムから形成することができる。あるいは、チューブ状フィルムに切れ目を入れてフラットフィルムとし、次いで上部および底部で横断方向に封着して、バッグを製造する。あるいは、チューブプロセスまたはキャストプロセスのいずれかによって製造されたフラットフィルムから、フィルムを折り畳み、次いで2つの暴露された長さに沿って封着および切断することによって、バッグを製造することもできる。バッグおよびポーチの他の製造方法は既知であり、本発明のフィルムに関しても使用することができる。
【0079】
もう1つの実施形態において、パッケージ内に水分を残しながら、食料品からの水分の吸収が望ましい場合に、食料品を包装するために本発明のフィルムを使用することができる。例えば、食料品からの水分または食料品上の過剰なマリネードが食料品を通過可能であり、かつ下に溜まる、未調理の肉または調理肉(例えば、牛肉、豚肉、鳥肉または魚介類)を包装するために、本発明のフィルムを使用することができる。かかるフィルムは、ポーチ、バッグ、ケーシングまたは熱形成フィルムの形状であってよい。熱形成される前に、本発明のフィルムが他の基材上に積層され得ることも本発明の範囲内である。
【実施例】
【0080】
次の表に、実施例および比較例の吸収性層の組成を記載する。実施例は単なる例証であり、本明細書に記載および/または主張される本発明の範囲に限定するものとして解釈されるべきではない。
【0081】
【表1】

【0082】
フィルムの吸収性層が容易に取り外される3層フィルムを生じるために、表1のポリマーを他の非接着性ポリマーと一緒に、3層インフレートフィルムライン上に共押出した。全ての場合において、HDPE(高密度ポリエチレン)またはナイロン6のいずれかが、表1のポリマーに対して共押出される他の層であった。多くの場合、以下の場合に記載されるように、本願特許出願人によってコンポール(Conpol)(登録商標)AC Bとして販売される抗ブロック濃縮物も添加した。ブローアップ比は2:1であり、ストリップフィルム層は、25ミクロン〜64ミクロンの範囲の様々な厚さを有した。
【0083】
24時間後の水分取り込みを決定するために、押出フィルムを15.24cm×15.24cm(6インチ×6インチ)の正方形に切断し、次いで剥がした。次いで、重量測定前に、少なくとも24時間、23℃および20%相対湿度に吸収性フィルム層を条件付けし、次いで水の容器中に置いた。24時間後、フィルムを取り出して、フィルム表面上の自由水分が見えなくなるようにペーパータオルで押さえて水気を取り、次いで直ちに重量測定した。表2の各実施例に関して、水分吸収の重量%として、3つの試料の平均を報告する。少なくとも24時間、23℃および20%相対湿度に条件付けしたフィルムは、38℃および100%相対湿度における水蒸気透過速度(MVTR)に関しても測定された。高い水分浸透性を有する試料に関して、ASTM D6701−01に従って、モコン パーマトラン(Mocon Permatran)−W(登録商標)101Kにおいて透過試験を実行した。他の試料に関して、ASTM F1249−01に従って、モコン パーマトラン(Mocon Permatran)−W(登録商標)700において透過試験を実行した。
【0084】
【表2】

【0085】
表2の実施例は、高い水分吸収ならびに高い水分透過の両方を有するのに対して、比較例は、乏しい水分吸収および乏しい透過のいずれか、または良好な水分吸収であるが乏しい透過のいずれかを示す。
【0086】
24時間までの時間に応じる水分取り込みについても記録した。このフィルムに、表2に関して記載されたものと同一の処理を受けさせた。水中での各暴露時間後、フィルムを取り出して、フィルム表面上の自由水分が見えなくなるようにペーパータオルで押さえて水気を取り、次いで直ちに重量測定した。次いで、これらのフィルムを処分し、異なる暴露時間の水分取り込みを測定するために、異なる組のフィルムを使用した。表3の各実施例および時間に関して、水分吸収の重量%として、3つの試料で測定された平均を報告する。
【0087】
【表3】

【0088】
この表は、実施例および比較例の両方に関して、水分取り込みが迅速に生じることを示す。実施例では、0.5時間以内で23℃における水分取り込みの平衡レベル付近となる。
【0089】
時間および温度に応じるフィルムからの水分放出についても記録した。これらの実験において、少なくとも24時間、23℃および20%相対湿度にフィルムを条件付けし、「乾燥」重量として重量測定し、次いで、少なくとも24時間(いくつかの場合、2〜3日間)、23℃の水中に置き、取り出して、フィルム表面上の自由水分が見えなくなるようにペーパータオルで押さえて水気を取り、そして直ちに、水分吸収重量を重量測定した。重量測定の直後、90℃に設定された放射熱オーブン中にフィルムを吊るした。個々のフィルムが互いに、またはオーブンの壁の側に接触しないように、いずれも1回につき3以下のフィルムをオーブン中に置いた。次いで、重量測定のために、5分、10分および60分でフィルムを取り出した。以下の表4に、5〜8個のフィルム試料の平均を報告する。
【0090】
【表4】

【0091】
表4の結果は、水分吸収フィルムが、90℃で5分以内にそれらの水分含有物を非常に迅速に放出することを示す。留意すべきことに、多くの場合、フィルムの重量は、フィルムの最初の「乾燥」重量よりも低い値まで低下する。これは、最初の「乾燥」重量は20%相対湿度で測定されるが、熱処理によってフィルムはより低い相対湿度にあるだろうという事実に起因する。
【0092】
実施例および比較例によって取り込まれた燻液の量を決定するために、次の組の試験を実行した。このフィルム試料は、以前の組に記載されたものと同様であった。次いで、レッド アロー プロダクツ(Red Arrow Products)からの燻液、チャーソル シュプリーム(Charsol Supreme)(商標)、またはリー&ペリンス(Lea & Perrins)からのウスターソースで充填されてスクリューキャップされた1リットルのナルゲン(Nalgene)(商標)高密度ポリエチレン容器に、6インチ×6インチのストリップフィルムを置いた。1日〜5日の間、いくつかのフィルムを浸漬させたが、液体媒体の吸収による色変化は、約24時間までに本質的に完了するように見えた。表5のフィルムを48時間浸漬させ、次いで、容器から取り出し、ペーパータオルで十分に乾燥させ、次いで、紙のホワイトシートに対して置いた。表5に、結果の記述を与える。
【0093】
【表5】

【0094】
総ゲージ55ミクロンで、チューブの外側から内側へナイロン(Nylon)6(28μ)/バイネル(Bynel)(登録商標)21E787(3μ)/PE(5μ)/バイネル(Bynel)(登録商標)21E787(5μ)/実施例1(14μ)の構造による5層ダブルバブルラインで、透明な多層チューブ状フィルムを製造した。このフィルムの一部分も燻液の容器に48時間置き、取り出し、そしてパーパータオルで乾燥させた。取り出し時に多層フィルムは茶色であった。
【0095】
典型的な調理および燻煙条件での肉への燻液移動に関して、異なる実施例を含有する多層フィルムを試験した。最初の試験で、約210mm×300mmの実施例のシートおよび比較例6のケーシング材料を調製した。比較例6は、ビスコースコーティング紙上に積層された多層ポリエチレン(15μ)/結合層/ポリアミド(30μ)/結合層/ポリエチレン(15μ)共押出物を含む市販品として入手可能な燻煙用ケーシング材料である。本発明の実施例は、表6に記載されるような様々な材料と(共)押出され、そして名目上25〜50ミクロンの間であった。
【0096】
燻液の吸収および食料品(例えば、肉)への移動を評価するために、次のようにケーシング材料を処理した。
【0097】
点眼器によって試験フィルムの表面に燻液を適用し、そして表面上に広げた。約2分後、材料の表面上の過剰量の燻液を拭き取った。比較例6に関しては、この材料のために確立された手順に従って、約2日間、燻煙含浸を実行した。
【0098】
燻煙含浸層をハム製品に接触させて、燻煙含浸材料を焼成皿上に置いた。180℃で約2〜3時間、典型的な「燻煙」サイクルで、試験ユニットを処理した。
【0099】
ケーシング材料から食料品への燻煙移動の指示として、ハム製品の燻製色を1〜5の段階で評価した。1は最小の燻製色を示し、そして5は最大の燻製色を示す。結果を表6に示す。
【0100】
【表6】

【0101】
次の試験において、内部吸収性層として実施例を含有する、折り径約16.5cm(または直径10.5cm)の多層インフレートフィルムチューブに燻液を予め吸収させ、そして乾燥させた。チューブは、ナイロン6(50ミクロン)/バイネル(Bynel)(登録商標)(18ミクロン)/吸収性層(表7を参照のこと)の3層構造を有した。吸収性層に対してチューブにハム配合物を手で詰め込み、次いで、特定の肉製品のために適切な典型的な調理条件下で調理した。使用された典型的な調理サイクルは、30分間、60℃(乾燥バルブ)/49℃(湿潤バルブ)、続いて30分間、68℃(乾燥バルブ)/57℃(湿潤バルブ)、続いて2.5時間、77℃(乾燥バルブ)/77℃(湿潤バルブ)であった。表7に、調理後にケーシングを取り外した時の肉製品の色を記載する。
【0102】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)肉に香味および色を均一に付与するために有用な液体吸収性内部層と、(ii)外部不浸透性バリア層とを含む積層フィルムであって、
(A)前記内部層が、ブロックコポリエーテルエステルポリマーまたはブロックコポリエーテルアミドポリマーから選択されるポリマーを含み、そして
(B)前記外部不浸透性フィルム層が、(a)ポリアミドもしくはそれらの混合物、エチレンビニルアルコールコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィンまたはこれらの任意の混合物よりなる群のポリマーから選択されるポリマーを含む少なくとも1つのポリマー層と、(b)任意の少なくとも1つの結合層(tie layer)とを含む、単層フィルムであるか、あるいは積層または多層フィルムであることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記吸収性層が、少なくとも約1200g.25ミクロン/m2.24時間の水蒸気透過速度(MVTR)を有するコポリエーテルエステルまたはコポリエーテルアミドポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記吸収性層が、約1200g.25ミクロン/m2.24時間〜約20,000g.25ミクロン/m2.24時間のMVTRを有することを特徴とする請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記吸収性層が、約2150の分子量を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリエーテルグリコールから得られる長鎖エステルを含むコポリエーテルエステルであることを特徴とする請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フィルムが、インフレートフィルム(blown film)またはキャストフィルム(cast film)であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィルムがキャストフィルムであることを特徴とする請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルムがインフレートフィルムであることを特徴とする請求項5に記載のフィルム。
【請求項8】
前記フィルムが二軸配向(biaxially oriented)であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
前記フィルムが、ケーシング(casing)またはバッグに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルムを含む物品。
【請求項10】
液体香味剤および液体着色剤から選択される少なくとも1つの食品加工材料をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記食品加工材料が燻液(liquid smoke)であることを特徴とする請求項10に記載の物品。
【請求項12】
1)請求項1に記載の吸収性内部層を含む多層押出物を共押出する工程と、
2)前記押出物を冷却して、積層フィルムを形成する工程と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項13】
1)請求項1に記載の吸収性内部層を含む多層押出物を共押出する工程と、
2)環状ダイ(annular die)を通して工程(1)の前記押出物を加工して、十分に急冷された一次チューブを形成する工程と、
3)(a)前記チューブを加熱し、続いて(b)前記加熱されたチューブを膨張させると同時に、横断方向配向および流れ方向配向それぞれに、異周速ニップローラー(differential speed nip rollers)を操作することによって、前記チューブを配向する工程と
を含むことを特徴とする配向チューブ状フィルムの製造方法。
【請求項14】
(1)請求項1に記載の吸収性内部層および不浸透性外部層を含む多層押出物を共押出するか、または共押出積層する工程と、
(2)フラットダイ(flat die)を通して工程(1)の前記押出物を加工して、十分に急冷された一次シートを形成する工程と、
(3)(a)横断方向配向に拡幅するフレーム(frame)を横送りすることと、(b)流れ方向配向に異周速ニップまたは輸送ローラーを操作することを通して、幅出伸張機(tenterframe stretcher)によってシートを配向する工程と
を含み、工程(3)(a)および(3)(b)が、同時に、または任意の順序で連続的に起こってよいことを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項15】
(1)請求項1に記載のフィルムを少なくとも1つの食品加工材料と接触させることによって、前記フィルムを処理する工程と、
(2)工程(1)の前記処理されたフィルムを食料品と接触させる工程と、
(3)前記処理されたフィルムの存在下で食料品を加熱する工程と
を含むことを特徴とする食料品の加工方法。
【請求項16】
前記食品加工材料が燻液であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フィルムがチューブ状ケーシングまたはバッグの形態であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記食料品がソーセージであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法を使用して加工されることを特徴とする食料品。
【請求項20】
前記フィルムがチューブ状ケーシングまたはバッグの形態であることを特徴とする請求項19に記載の食料品。
【請求項21】
前記食品加工材料として燻液を使用して加工されることを特徴とする請求項19に記載の食料品。
【請求項22】
前記食料品がソーセージであることを特徴とする請求項19に記載の食料品。
【請求項23】
前記パッケージが、前記パッケージの内部に包装された食品からの液体を吸収すると同時に、前記パッケージ内に水分を保持する吸収性フィルムを有することを特徴とする請求項1に記載のフィルムを含む食料品パッケージ。
【請求項24】
前記吸収性層が、少なくとも約1200g.25ミクロン/m2.24時間のMVTRを有するコポリエーテルエステルまたはコポリエーテルアミドポリマーを含むことを特徴とする請求項23に記載のパッケージ。
【請求項25】
前記吸収性層が、約2150の分子量を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリエーテルグリコールから得られる長鎖エステルを含むコポリエーテルエステルであることを特徴とする請求項24に記載のパッケージ。
【請求項26】
前記フィルムが、インフレートフィルムまたはキャストフィルムであることを特徴とする請求項25に記載のパッケージ。
【請求項27】
前記押出物が環状ダイを通して加工されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項28】
前記押出物がフラットダイを通して加工されることを特徴とする請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2006−516107(P2006−516107A)
【公表日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552167(P2004−552167)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/036166
【国際公開番号】WO2004/043156
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】