説明

液体吸引装置、及び液体吸引方法

複数の液体を一ポンプに連なる複数吸引路で同時に吸引する際、一の吸引終了が、他の吸引を妨げることがある。
複数の吸引路とポンプの間に、各吸引路とポンプを一体一に接続する多連弁を配置する。そして、吸引路とポンプの連通を、時分割で順次切り替えながら吸引する。ある一定時間において、ポンプと吸引路は他の吸引路から独立している。これにより、他の吸引路における吸引終了の影響を受けずに吸引できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、複数の液体を吸引する装置及び方法に関する。例えば、複数容器に保持された血液や尿等の生体試料を吸引する核酸抽出装置及び方法に適用される。
【背景技術】
生体試料を吸引する従来技術として、例えば、特開平5−45365号が存在する。ここでは、以下の技術が開示されている。まず、単独の保持部に保持された複数のプローブが同時に複数の試料容器内に下降し、各試料容器内の試料面を検知する。そして、最も高い試料面にプローブが到達したとき、一旦、複数のプローブは停止する。停止している間に、所定のプローブが試料を吸引する。吸引終了後、再び、複数のプローブは下降する。2番目に高い試料面にプローブが到達したとき、再び、一旦、複数のプローブは停止する。停止している間に、所定のプローブが試料を吸引する。このような工程を順に繰り返して、所定の試料容器が試料を吸引する。
生体試料は、試料毎に物理的特性、例えば粘性の異なることが多い。この差異は、試料を吸引する装置の処理時間及び性能に影響を与えることがある。例えば、試料が流体抵抗体を通過する場合、物性の違いにより、その通過時間に差異が生じる。これにより、各試料の移動時間が異なり、各試料の吸引処理時間が変動する。そして、一つの試料のみ吸引が終了し、他の試料の吸引が完了しない不都合が生じる。
【発明の開示】
本発明は、複数の液体吸引部とポンプの連通を順次切り替える切替弁を備えた液体吸引装置に関する。ある時点において、ポンプは特定の液体吸引部のみと連通している。この為、他の液体吸引部の状況に吸引が影響を受けない。例えば、他の液体吸引部において吸引が終了しても影響を受けることなく吸引できる。また、切り替えは所定間隔で実施される為、各液体吸引部による吸引処理時間が大きく異なることが無い。
また、本発明は、複数の液体吸引部にそれぞれ設けられたチャンバーと、これを減圧するポンプを備えた液体吸引装置に関する。各チャンバーを減圧した後に、各チャンバーと液体導入部をそれぞれ連通して液体を吸引する。この為、他の液体導入部の状況によらず吸引できる。
以下、上述及びその他の本発明の新規な特徴と効果について、図面を参酌して説明する。尚、本明細書では以下の様に用語を定義する。
「連通」とは、二つの液体処理機構を機能的に結合して、液体の移動可能な状態とすることである。
「液体吸引部」とは、所定の系(機械,システム等)の一部であり、この系に液状体を取り込む機能を備える箇所を意味する。液体吸引部は、大気等に露出していることを前提とせず、他の系(器具,機械等)と物理的接続をしている場合もある。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例1の液体吸引機構の概略図である。
第2図は核酸抽出装置全体の斜視図である。
第3図は核酸抽出に用いるチップの断面図である。
第4図は核酸抽出に用いるチップの変形例の断面図である。
第5図はチャンバーの概略説明図である。
第6図はチャンバーの変形例の斜視図である。
第7図は実施例1の液体吸引機構のブロックダイアグラムである。
第8図は実施例1の液体吸引動作を示す動作フロー図である。
第9図は多連弁の斜視図である。
第10図は多連弁の構成部品である回転弁の斜視図である。
第11図は実施例2の液体吸引機構の概略図である。
第12図は実施例2の液体吸引機構のブロックダイアグラムである。
第13図は実施例2の液体吸引動作を示す動作フロー図である。
第14図は実施例3の液体吸引機構の概略図である。
第15図は実施例3の液体吸引機構のブロックダイアグラムである。
第16図は実施例3の液体吸引動作を示す動作フロー図である。
第17図は実施例4の液体吸引機構の概略図である。
第18図は実施例4の液体吸引機構のブロックダイアグラムである。
第19図は実施例4の液体吸引動作を示す動作フロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
以下、本実施例の液体吸引装置を、第1図〜第10図を参照して説明する。本実施例の液体吸引装置は、核酸捕捉担体を有するチップ(tip)を用いる核酸抽出装置である。
第2図は、吸引装置を含む核酸抽出装置全体図である。本装置は、筐体100に、それぞれ独立して動作が可能な2本の可動アーム16,19が取り付けられている。可動アーム16には試料の吸引及び吐出を行う分注ノズル17が取り付けられている。同様に可動アーム19には試薬分注用のロボットアーム18が取り付けられている。作業テーブル5上には、核酸抽出用,試料吸引用、及び試薬吸引用の、複数種類のチップが配置されているチップラック14が設置されている。チップは、分注ノズル17,ロボットアーム18のそれぞれが使用する。
試料ラック12には、全血,尿,血清等の試料が設置可能である。反応容器23,25は試薬と試料を反応させるための容器である。それぞれの容器は反応をより安定して行うために温度制御されていて、それぞれの温度は異なった値になっている。試薬設置部30には複数種類の試薬が設置されており、試薬の劣化防止のため冷却機能をもっている。
第1図は、吸引機構の概略図である。本実施例の吸引機構は、核酸捕捉容器31,チャンバー204,多連弁205、およびポンプユニット201を含む。複数、例えば96個の核酸捕捉容器31とチャンバー204は、比較的細い流路により、各々連通している。また、各チャンバー204と多連弁205は、比較的太い流路により連通している。
第3図は、核酸捕捉容器31の概略図である。核酸捕捉容器31は、核酸を含む試料を保持する容器である。その形態はチューブ状,カップ状,チップ状のものなど、容器内に核酸捕捉用担体と、試料を吸引できる容積があればよい。本実施例では、チップ状のものを用いている。核酸捕捉容器31は、核酸含有試料を保持でき、これを担体部材32に透過させることで核酸を捕捉できる。また、一回の使用毎に廃棄するディスポーザブル形式を採用している。
容器本体は、二つの開口部を備えた管状部材である。開口部の一つはテーパー状であり、シール部材を介して流路に接続される。ここから、本容器内に保持された試料が吸引される。他方の開口部は、容器本体の内径とほぼ同一の大きさであり、ここから本容器内に試料が分注される。
容器内部は、核酸を捕捉する担体部材32と、それを支えるための保持具211が、テーパー状開口部近傍に設置されている。担体部材32は、一般に、シリカやガラスを素材とし、繊維形状やフィルタ形状で使用される。本実施例ではガラスを焼結したフィルタ状のものを使用するが、グラスウール、磁性ビーズ等も利用できる。保持具211は、核酸捕捉容器31の内径より若干大きく、いくつかの開口部を持つ円盤状板である。容器内に押し込むことで、容器に固定されている。試料注入は、テーパー状開口部を下方に向け、上方開口部より行われる。担体部材32は流体抵抗が高いため、血液等の高粘性試料は、担体部材32上に漏れ出すことなく保持される。
核酸捕捉容器31は、機密性を保つためシール材を介して吸引機構の流路に接続されている。シール部材は上面にも設置するが、本実施例のように核酸捕捉容器を使用する場合は、それ自身を移動させるため核酸捕捉容器31上部に分注ノズルを挿入して固定している。その場合には分注ノズル側の弁を閉めることによって同様の状態を実現できる。更に分注ノズルがシリンジポンプ等通常大気と連通しないポンプの場合には弁の操作も不要である。ピンを挿入しない種別のものは、板状のものなど、容器上面を封止できるもので抑える形となる。
試料吸引時は、テーパー状開口部が下向きとし、これをチャンバーに連なる流路に接続する。上面の開口部をカバーで覆い、内部の気密を保った状態で、テーパー状開口部から吸引を開始する。そして、減圧により、試料が担体部材32を透過し、保持具211の開口部を経由して容器外に移動する。
テーパー状の開口部,担体部材32、及び保持具211は、大きな流体抵抗となり得る。このため、試料の物性、特に粘性に従い、試料吸引に必要な時間は異なる。
第4図は、核酸捕捉容器31の変形例の概略図である。前述の容器と異なり、試料を下方から上方へ吸引する場合に用いる。基本的な構成は第3図と同様であるが、下方から上方へ液体が移動するため、保持具211が担体部材32の上方にも設置されている。また、容器本体は、第3図の容器に比べて、より長い形状となっている。これは、上方に吸引する場合、容器と装置本体の接続部分の機密性を保つために、接続部を長くする必要がある為である。
第5図及び第6図はチャンバーの概略図である。チャンバー204は、吸引する試料よりも容積の大きい領域である。チャンバー204の容積は、検体の粘性等の外乱の影響を少なくするため十分な容積が必要である。例えば、本発明では約10倍程度の容量である。第5図に開示されたチャンバーは、その下部がテーパー形状となっている。これは、第3図記載の核酸捕捉容器31を用いた際、粘性の高い試料を円滑に移動させる為である。また、第6図は、スパイラル形状チャンバーの概略図である。これは、本装置において流路として用いられているパイプを、らせん状に構成したものである。これにより、特別な部材を用いずとも、チャンバーを構成できる。
各チャンバーは核酸捕捉容器31に対応して配置され、流路により核酸捕捉容器31と多弁連205にそれぞれ連通している。核酸捕捉容器31からチャンバー204までの流路は、ポンプユニット201からの流路より内径が細く、例えばφ1程度ある。これにより、流路を十分な負圧にするまでの時間を短縮できる。
多連弁205は特定の流路を、ポンプユニット201に連通させる弁である。多連弁205はモータ206により駆動し、回転することにより、上記連通を順次切り替える。吸引機構201と多連弁205を動作させることにより、チャンバー204を経由し、核酸捕捉容器31に接続している流路内は負圧となっていく。核酸捕捉容器31内の試料は各種試薬と混合された状態で納められているため、一般に粘性の高い状態となっている。このため前述のポンプユニット201と多連弁205の動作が開始されてもすぐに試料の吸引が開始されるわけではなく、吸引装置内の負圧が一定以上になるまで試料はとどまったままである。吸引装置内の負圧が一定以下になると、試料は核酸捕捉用担体32(第3図,第4図参照)を通過し、吸引機構内へ吸引される。チャンバー204から多連弁205にいたる流路は十分大きな内径を持つため、試料をある程度吸引した後はポンプユニット201を停止させ、試料の自重で廃液させることが可能であり、省電力の点からも望ましい動作である。この部分の内径は、例えばφ4程度である。より短時間で吸引を行うには、核酸捕捉容器31内の試料を吸引し終わるまでポンプユニット201を動作させたままにすればよい。
第9図は、多連弁の概略図である。多連弁205は、回転式の弁であり、チャンバーとは複数の流路により、ポンプとは単一の流路により接続している。多連弁の構成は、ポンプ201を接続するための流路307307を接続する固定弁302,回転軸306を介してモータ206に接続した回転弁303,各流路との切替流路305を多数有する固定弁304である。そして、モータ206により駆動する。
第10図は、回転弁303の概略図である。回転弁303は、固定弁304に連通する流路307を有し、回転により、任意の切替流路305と流路307を連通させる。この回転弁をモータ206により回転させると、各切替流路305と流路307を時間分割で順次連通できる。つまり、多連弁205の駆動により、ポンプ201は、各チャンバー204と次々と瞬間的に連通する。この状態でポンプ201を駆動すると、各チャンバー内を次々に連続的に減圧できる。本動作は連続的に行われるが、ある瞬間において、ポンプ201と連通する流路(チャンバー)は一つである。このため、一流路(チャンバー)の吸引圧力は他流路の状態に影響されず、各流路とも均等な圧力で吸引できる。一容器内の試料吸引が終了し、その流路系の流体抵抗が大幅に低下しても、他流路系の吸引は影響されない。このため、複数容器に保持された試料を、余すことなく吸引できる。本発明における多連弁は弁を回転させて特定の流路と連通させることを繰り返して目的の機能を実現しているが、各々の流路に弁、例えば電磁弁等を配置しても同様の機能を実現することは可能である。
第7図は、本装置の電気系のブロックダイヤグラムである。動作制御部としてのパーソナルコンピュータ(PC)60には、操作条件及び検体情報を入力するための操作パネルとしてのキーボード61,入力情報や警告情報等を表示するための表示装置としてのCRT62,装置の各機構部を制御する機構制御部65が接続される。機構制御部65は、試料を吸引するポンプ201と、多連弁205を駆動するためのモータ206の動作を制御する。これにより、所定条件やオペレータの操作により、ポンプ201や多連弁205等の装置の各機構を制御できる。
第8図は、本装置の吸引動作のフロー図である。以下、本装置の吸引動作について説明する。尚、核酸捕捉容器31には、分注ノズル17及びロボットアーム18により、既に吸引されるべき試料が保持されているものとする。
まず、ポンプユニット201、およびモータ206を動作させる。モータ206の回転により多連弁が駆動し、吸引されるべき流路が順次切り替えられていく。モータ206はACモータ,DCモータ,パルスモータ等何でも良いが、速度が変えられるものが望ましい。
多連弁は構造上、ある流路から次の流路へ切り替わる際、二つの流路を仕切る部分を通過するため、流路の断面積が一時的に小さくなる。このため、モータ206の回転速度が遅すぎるとポンプユニット201の負荷が大きくなる。逆に早すぎると気密面の磨耗が早まる。このためモータ206の回転速度は多連弁の材質、接続された流路数によって、最適な速度を選択する必要があり、一分間当たり数十〜数百回転程度である。
また、前述のように、多連弁は構造上、ある流路から次の流路へ切り替わる際、二つの流路を仕切る部分を通過するが、逆に複数流路を同時に吸引できるようにすることも可能である。この場合、本来は流路の仕切りがある部分を最小化して、現在吸引している流路と次に吸引すべき流路を同時に吸引できるようにする。これによって流路の断面積の減少が少なくなるため、ポンプユニット201への負担を軽減でき、多連弁を駆動するモータ206の制御を、より自由に行うことができる。
また、本発明では核酸捕捉容器31と多連弁の間にチャンバー204を設置している。これは、吸引しようとする試料の容積よりも大きなチャンバーを設置することにより、試料の吸引を裕度を持って行うことを目的にしている。ポンプユニット201の動作によりチャンバー204を含めた流路の吸引が始まる。前述のように核酸捕捉容器31の試料は各種試薬と混合された状態で納められているため、一般に粘性の高い状態となっている。このため前述のポンプユニット201と多連弁205の動作が開始されてもすぐに試料の吸引が開始されるわけではなく、吸引装置内の負圧が一定以下になるまで試料はとどまったままである。吸引装置内の負圧が一定以上になると、試料は核酸捕捉用担体32を通過し、吸引機構内へ吸引される。試料が吸引される過程で流路内の圧力は徐々に大気圧に近づいていくが、流路が試料の容積よりも十分大きな容積を有することにより圧力の変動が少なく、安定した吸引を実現することができる。
吸引後は試料への汚染を防ぐため、流路の洗浄が行う必要がある。核酸捕捉容器31を移動させた後、分注ノズル17にディスポーザブルのチップを装着し、試薬設置部30内に設置した洗浄試薬を吸引し流路内に吐出する。試薬吐出後は試料の吸引と同様、ポンプユニット201およびモータ206を動作させて洗浄試薬を吸引する。
単一流路34内に溜まった廃液は、吸引ポンプ201停止後、廃液電磁弁202を動作させて流路と廃液容器210と連通させる。単一にまとめられた流路の直径は十分大きいため、廃液は自重で排出される。チャンバー以降の流路は十分な断面積が確保されているため、試料は自然落下する。更に積極的に試料を落下させるには、チャンバー上部に吐出用ポンプを接続し、エアブローを行うことも可能である。
次に核酸捕捉容器31に洗浄液を注入し、前述の吸着工程と同様に洗浄液を吸引する。核酸捕捉用担体部分の洗浄が終了した核酸捕捉用容器31は、ロボットアーム等の移動手段(図示せず)、もしくは用手法により、次工程を行う位置へ移動させられる。核酸捕捉容器31を移動させた後、流路洗浄を行うため、流路内に分注機構(図示せず)、あるいは用手法で流路洗浄用試薬を吐出する。吸着工程と同様に吸引動作を行うことにより、流路内を洗浄し、コンタミネーションを防止することができる。
本実施例では、一の容器の状況に、他の容器の吸引が影響を受けない。このため、すべての容器に試料が注入されていなくとも、吸引を行うことできる。また、ひとつの容器の吸引が終了しても、他の容器の吸引性能が低下しない。
【実施例2】
本実施例は、切替弁を有し、チャンバー204と核酸捕捉容器31の間に流路切替弁33を備えた液体吸引装置である。第11図は、本実施例の吸引装置の概略図である。第12図は本実施例のブロックダイアグラム。第13図は動作フロー図である。以下、第11図〜第13図を参照に、主に、実施例1との相違点について説明する。
本実施例の吸引機構は、核酸捕捉容器31,チャンバー204,多連弁205,ポンプユニット201、そして流路切替弁33を含む。複数の核酸捕捉容器31とチャンバー204は、比較的細い流路により各々連通している。この流路は、切替弁33が配置されている。また、各チャンバー204と多連弁205は、比較的太い流路により連通している。
流路切替弁33は、各流路の開閉を行う弁で、ソレノイド43により駆動する。実施例1同様、チャンバー204までの流路は負圧にするまでの時間を短縮するため、比較的細い内径、例えばφ1程度を用いている。本実施例では各流路の開閉を一括で行うことのできる弁を、単一のソレノイドで駆動しているが、複数個の弁、およびソレノイドを配置して、それぞれ独立して制御することも可能である。また流路切替弁33を駆動するものはソレノイドに限らず、モータ等でもかまわない。
本実施例では、流路切替弁33を閉状態し、試料側の流路を完全に閉塞状態する。次にポンプユニット201とモータ206を動作させることにより、流路およびチャンバー204内を一定圧力以下、例えば−0.5気圧以下に減圧する。本実施例では核酸捕捉容器31を設置する以前に流路を負圧に制御しておくことが可能である。核酸捕捉容器31設置後、流路切替弁33を開状態にすることにより、短時間で試料を吸引することが可能である。流路切替弁33の開放は同時である必要は無く、個別に制御してもかまわない。より短時間に吸引を行いたい場合はポンプユニット201を停止させず、そのまま運転することも可能であるが、事前に流路内を十分負圧にすることが可能なので、流路切替弁33解放後にはポンプユニット201を停止することも可能である。この場合、ポンプユニット201内を試料を通過させないことも可能である。この場合、ポンプユニット201内での試薬つまりや、ポンプユニット201自身の長寿命を図ることが可能である。
本実施例は容器への試料注入と、チャンバー内の減圧を、それぞれ独立に実施できる。このため、吸引工程前提の処理時間を短縮することが可能である。
【実施例3】
本実施例は、チャンバーの両端に流路開閉弁を備えた液体吸引装置である。第14図は本実施例の概略図、第15図は本実施例のブロックダイヤグラム、第16図は動作フロー図である。以下、第14図〜第16図を参照に、本実施例の特徴について、実施例1及び2と比較して説明する。
本装置では、複数の核酸捕捉容器31に、それぞれチャンバー204が配置されている。そして、各チャンバー204からの流路は合流して一つとなり、吸引モータ201と連通している。核酸捕捉容器31とチャンバー204の間には、連通を制御できる第1流路開閉弁333が存在する。また、チャンバー204と、流路合流箇所の間には、第2流路開閉弁334が存在する。
第1流路開閉弁333は、第1ソレノイド343により駆動し、各核酸捕捉容器31と各チャンバー204の連通を同時に制御できる。また、第2流路開閉弁334は、第2ソレノイド344により駆動し、各チャンバー204と流路合流箇所の連通を同時に制御できる。両方の弁とも、その具体的構成等は、実施例2の流路開閉弁と同一である。また、連通制御をそれぞれ実施する構成とすることもできる。
吸引ポンプ201,第1流路開閉弁333及び第2流路開閉弁334は、制御機構部65を介して制御される。そして、以下の吸引動作を実施する。
まず、第1流路開閉弁333を閉じ、第2流路開閉弁334を開き、各チャンバー204を減圧可能な状態とする。そして、チャンバー204内が所定圧力と成るまで、吸引ポンプ201を駆動して減圧する。また、この吸引動作と別個独立に、核酸捕捉容器内31に試料51を分注する。
吸引ポンプ201を停止した後、第1流路開閉弁を閉じる。そして、第2流路開閉弁を開き、チャンバー204内に試料を吸引する。
その後、第1流路開閉弁を閉じ、第2流路開閉弁を開き、吸引ポンプ206を駆動する。これにより、チャンバー204内の試料を吸引して排除し、チャンバー204内を空にする。
最後に、吸引ポンプ206を停止し、第2流路開閉弁344を閉じて、吸引動作は完了する。
【実施例4】
本実施例は、核酸捕捉容器とチャンバーの間に流路開閉弁を、その反対側に逆止弁をそれぞれ備えた液体吸引装置である。
第17図は本実施例の概略図、第18図は本実施例のブロックダイヤグラム、第19図は動作フロー図である。以下、第17図〜第19図を参照に、本実施例の特徴について、実施例1,2及び3と比較して説明する。
本装置では、複数の核酸捕捉容器31に、それぞれチャンバー204が配置されている。そして、各チャンバー204からの流路は合流して一つとなり、吸引201と連通している。核酸捕捉容器31とチャンバー204の間には、連通を制御できる流路開閉弁433が存在する。また、チャンバー204と流路合流箇所の間には、チャンバー204から吸引ポンプ201方向のみ開く逆止弁が存在する。
逆止弁203は、一般的にばねとシール部材からなる弁で、動力を必要とせず、流路内の圧力差によって開閉する。逆止弁203は構造上一方向の圧力差でしか開閉しないようになっているため、特定の方向にのみ流体を流動させることが可能である。逆止弁203は実施例2の流路切替弁33に相当する機能を持ちながら、動力源を必要としないのが大きな特徴である。吸引ポンプ201、及び流路開閉弁433は、制御機構部65を介して制御される。そして、以下の吸引動作を実施する。
先ず、流路開閉弁443を閉じ、チャンバー204を減圧できる状態とする。そして、吸引ポンプ201を駆動し、各チャンバー内を減圧する。その後、吸引ポンプ201を駆動しつつ、流路開閉弁433を開き、試料31の吸引を開始する。この時チェック弁は一方向にしか流体が流れることはないため、試料の特性由来による圧力差が生じても、吸引に必要な圧力を流路毎に保つことが可能となる。
試料吸引に十分な時間が経過した後,吸引ポンプ201を停止し、吸引動作を終了する。
本実施例により、吸引ポンプと流路開閉弁の制御のみで試料吸引を実施できる簡素な装置構成が提供できる。
【産業上の利用可能性】
粘性度の異なる複数の液体を吸引する際に、1の液体吸引が、他の液体吸引に影響を与えない装置及び方法を提供できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を含む液体吸引装置;
複数の液体吸引部;
流体を吸引できるポンプ機構;
各液体吸引部及びポンプ機構と繋がり、ポンプ機構を特定数の液体吸引部と連通させ、液体吸引の際に連通を一定時間毎に切り替える切替弁。
【請求項2】
以下の構成を含む、請求項1記載の液体吸引装置;
前記複数の液体吸引部と前記切替弁を各々結ぶ流路に設けられた複数のチャンバー。
【請求項3】
以下の構成を含む、請求項2記載の液体吸引装置;
前記液体吸引部と前記チャンバーを各々結ぶ流路の連通を制御する流路開閉弁。
【請求項4】
以下の構成を含み、核酸を含む液体を吸引する請求項1記載の液体吸引装置;
前記複数の液体吸引部と各々連通し、核酸を捕捉できる担体を有する複数の核酸捕捉容器。
【請求項5】
請求項1記載の液体吸引装置であって、
吸引する液体が、全血,尿、又は/及び血清を含む試料である液体吸引装置。
【請求項6】
請求項1記載の液体吸引装置であって、
前記切替弁が多連弁である液体吸引装置。
【請求項7】
請求項2記載の液体吸引装置であって、
前記チャンバーの容量が、吸引する液体体積の10倍以上である液体吸引装置。
【請求項8】
請求項2記載の液体吸引装置であって、
前記液体吸引部と前記チャンバーを結ぶ流路が、前記チャンバーと前記切替弁を結ぶ流路より細い液体吸引装置。
【請求項9】
以下の構成を含む液体吸引装置;
複数の液体吸引部;
各液体吸引部と各々繋がる複数のチャンバー;
各チャンバー内の圧力を制御できるポンプ機構;
各液体吸引部と各チャンバーを繋ぐ流路の連通を制御する第1流路開閉弁;
各チャンバーとポンプ機構を各々繋ぐ流路の連通を制御する第2流路開閉弁。
【請求項10】
以下の構成を含み、核酸を含む液体を吸引する請求項9記載の液体吸引装置;
前記複数の液体吸引部と各々連通し、核酸を捕捉できる担体を有する複数の核酸捕捉容器。
【請求項11】
請求項9記載の液体吸引装置であって、
前記チャンバー一の容量が、吸引する液体体積の10倍以上である液体吸引装置。
【請求項12】
以下の構成を含む液体吸引装置;
複数の液体吸引部;
各液体吸引部と各々繋がる複数のチャンバー;
各チャンバーの圧力を制御できるポンプ機構;
各液体吸引部と各チャンバーを繋ぐ流路の開閉を制御する流路開閉弁;
各チャンバーとポンプ機構を結ぶ流路上に設けられ、チャンバーからポンプ機構の方向にのみ流体を通過する複数の逆止弁。
【請求項13】
以下の構成を含み、核酸を含む液体を吸引する請求項12記載の液体吸引装置;
前記複数の液体吸引部と各々連通し、核酸を捕捉できる担体を有する複数の核酸捕捉容器。
【請求項14】
請求項12記載の液体吸引装置であって、
前記チャンバーの容量が、吸引する液体体積の10倍以上である液体吸引装置。
【請求項15】
液体を吸引できるポンプ機構を用い、複数の液体吸引部から液体を吸引する液体吸引方法であって、
ポンプ機構を駆動しつつ、ポンプ機構と連通する液体吸引部を一定時間毎に切り替え、各液体吸引部から実質的同時に液体を吸引する方法。
【請求項16】
請求項15記載の液体吸引方法であって、
各液体吸引部とポンプ機構を各々結ぶ流路に、吸引する液体体積の10倍以上の容量のチャンバーを配置する方法。
【請求項17】
請求項15記載の液体吸引方法であって、
前記液体吸引部と前記チャンバーを結ぶ流路が、前記チャンバーと前記ポンプ機構を結ぶ流路より細い方法。
【請求項18】
請求項15記載の液体吸引方法であって、
吸引する液体が、全血,尿、又は/及び血清を含む試料である方法。
【請求項19】
請求項18記載の液体吸引方法であって、
前記複数の液体吸引部に核酸を補足できる固相を備えた核酸補足容器を連通し、各液体吸引部から液体を吸引して該固相に核酸を補足する方法。
【請求項20】
複数の液体吸引部に各々連通する複数のチャンバーと、各チャンバーの圧力を制御できるポンプ機構を用い、各液体吸引部から液体を吸引する液体吸引方法であって、以下の手順を含む方法;
各液体吸引部と各チャンバーを遮断し、各チャンバーとポンプ機構の連通を切り替えてポンプ機構を駆動し、各チャンバーを減圧する手順;
減圧された各チャンバーと各液体吸引部を連通し、液体を吸引する手順。
【請求項21】
請求の範囲20記載の液体吸引方法であって、以下の手順を含む方法;
各液体吸引部と各チャンバーを連通した状態において、各チャンバーとポンプ機構の連通を一定時間毎に切り替え、ポンプ機構を駆動して各液体吸引部から液体を吸引する手順。
【請求項22】
請求項20記載の液体吸引方法であって、
チャンバーの容量が、吸引する液体体積の10倍以上である方法。
【請求項23】
請求項20記載の液体吸引方法であって、
吸引する液体が、全血,尿、又は/及び血清を含む試料である方法。
【請求項24】
請求項20記載の液体吸引方法であって、
核酸を補足できる固相を備えた核酸補足容器を前記複数の液体吸引部に連通し、各液体吸引部から液体を吸引して該固相に核酸を補足する方法。
【請求項25】
複数の液体吸引部に各々連通する複数のチャンバーと、各チャンバーの圧力を制御できるポンプ機構を用い、各液体吸引部から液体を吸引する液体吸引方法であって、以下の手順を含む方法;
各液体吸引部と各チャンバーを遮断してポンプ機構を駆動し、各チャンバーを減圧する手順;
各チャンバーとポンプ機構を遮断し、各チャンバーと各液体吸引部を連通して、各液体吸引部から液体を吸引する手順。
【請求項26】
請求項23記載の液体吸引方法であって、以下の手順を含む方法;
各液体吸引部と各チャンバーを遮断し、各チャンバーとポンプ機構を連通し、ポンプを駆動して各チャンバーから液体を吸引する手順。
【請求項27】
請求項23記載の液体吸引方法であって、
チャンバーの容量が、吸引する液体体積の10倍以上である方法。
【請求項28】
請求項23記載の液体吸引方法であって、
吸引する液体が、全血,尿、又は/及び血清を含む試料である方法。
【請求項29】
請求項26記載の液体吸引方法であって、
前記複数の液体吸引部に核酸を補足できる固相を備えた核酸補足容器を連通し、各液体吸引部から液体を吸引して該固相に核酸を補足する方法。

【国際公開番号】WO2004/027390
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【発行日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537505(P2004−537505)
【国際出願番号】PCT/JP2002/009555
【国際出願日】平成14年9月18日(2002.9.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】