説明

液体噴出器

【課題】高圧噴射の機能を確保しつつ、噴射パターンの切り換えが可能な液体噴出器を提供する。
【解決手段】本発明は、容器20の内容物を吸引、加圧及び圧送するポンプ2を有し容器口部21に装着されるボディ1と、ポンプに通じる開孔A1を有しボディ1の先端に固定される連結部材4と、連結部材4からの内容物を調圧する調圧弁5と、調圧弁5からの内容物を噴出させる開孔6aを有し連結部材4に保持されるノズル6とを備え、ノズル6と連結部材4との間に、調圧弁5の収納空間Sを形成し連結部材4に固定される中間部材7を設け、中間部材7に、ノズル6の背面に設けた凹部6nに嵌合保持される凸部7pを設けると共に、凸部7pの外周面に、周方向に間隔を空けて、空間Sに通じる断面積の異なる複数の凹溝7g1,7g2を形成し、ノズル6の凹部6nに、開孔6aに繋がる複数の凹溝6g1を形成すると共に、当該凹溝6g1が凹溝7g1(7g2)に連通するように、当該ノズル6を連結部材4の周りに回転可能に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧噴射を目的に調圧弁を内蔵した液体噴出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体噴出器としては、容器の内容物をポンプによって吸引、加圧及び圧送するに際し、外界に噴射するまでに生じる圧力損失を考慮し、調圧弁を内蔵したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−347193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の液体噴出器は、噴射パターン(細かい霧や粗い霧、噴霧角度)を切り換えることができないため、使用者は、噴射パターンに応じた液体噴出器を使い分ける必要がある。即ち、従来の液体噴出器には、噴射パターンに応じた切り換えを可能とする点において改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、高圧噴射の機能を確保しつつ、霧の状態や噴霧角度等の噴射パターンの切り換えが可能な液体噴出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体噴出器は、容器の内容物を吸引、加圧及び圧送するポンプを有し容器の口部に装着されるボディと、ポンプに通じる開孔を有しボディの先端に固定される連結部材と、この連結部材からの内容物を調圧する調圧弁と、この調圧弁からの内容物を噴出させる開孔を有し連結部材に保持されるノズルとを備え、
当該ノズルと連結部材との間に、調圧弁の収納空間を形成し当該連結部材に固定される中間部材を設け、
当該中間部材に、ノズルの背面に設けた凹部に嵌合保持される凸部を設けると共に、当該凸部の外周面に、周方向に間隔を空けて、収納空間に通じる断面積の異なる複数の凹溝を形成し、
当該ノズルの凹部に、当該ノズルの開孔に繋がる複数の凹溝を形成すると共に、当該凹溝が、中間部材の凸部に形成した凹溝に連通するように、当該ノズルを、連結部材の周りに回転可能に保持したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明に従えば、断面積の異なる複数の凹溝のうち、2つの凹溝を一対に構成し、当該凹溝を、開孔を挟んで対向する位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノズルを連結部材の周りに回転させて、断面積の異なる凹溝をノズルの開孔に通じさせることで、例えば、断面積の小さい凹溝の場合は細かい霧で噴霧角度を大きくすることができ、また、断面積の大きな凹溝の場合は粗い霧で噴霧角度を小さくすることができる等、内容物の噴射圧を変更することができる。従って、本発明によれば、ノズルを連結部材の周りに回転させるだけで、高圧噴射の機能を確保しつつ、霧の状態や噴霧角度等の噴射パターンを切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一の形態である、トリガー式液体噴出器を側面から示す断面図である。
【図2】同形態に係る、ノズル付近を示す要部断面図である。
【図3】同形態に係る、ノズルと中間部材との組み付け部分を模式的に示す分解斜視図である。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ、高圧噴射時、噴射停止状態及び低圧噴射状態における流路状態を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明の第二の形態に係る、ノズル付近を示す要部断面図である。
【図6】従来技術に係る、ノズル付近を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の様々な形態を詳細に説明する。
【0011】
図1〜4にはそれぞれ、本発明の第1の形態を示す。図中、1は、容器20の内容物を吸引、加圧及び圧送するポンプ2を有し容器20の口部21に装着されるボディである。ボディ1の内部には、インテークIが嵌合保持され、このインテークIとの間に、逆止弁Bが配置されている。また、インテークIには、チューブCが接続され、容器の内容物を吸入することができる。
【0012】
ポンプ2は、トリガー3の牽曳によってポンプ動作が生起される既存のものである。ポンプ2は、逆止弁Bを介して吸引された内容物を加圧すると共に、当該内容物をボディ1内に形成された内部通路Pに圧送する。
【0013】
4は、ボディ1の先端に固定される連結部材である。連結部材4は、内部通路Pに通じる開孔A1を有し、この開孔A1は、内部通路Pよりも小さな内径を有し、オリフィスとして機能する。また、連結部材4は、開孔A1を取り囲む内筒部4a及び外筒部4bを有し、これらが先端に向かって突出する。加えて、連結部材4は、内筒部4aの内側に突出部4pが一体に設けられている。なお、突出部4pは、後述の弾性部材5sの案内として機能する。
【0014】
5は、連結部材4からの内容物を調圧する調圧弁である。調圧弁5は、弾性部材(例えば、リターンスプリング)5sを介して保持される弁体5aと共に、連結部材4の内筒部4aに摺動可能に保持される第1の摺動部5p1と、後述する中間部材7に摺動可能に保持される第2の摺動部5p2とを有する。
【0015】
第1の摺動部5p1は、筒状をなし、図2に示すように、連結部材4の内筒部4aの内周面に対して液密状態に保持され、第2の摺動部5p2も同様に、筒状をなし、後述する中間部材7の周壁7bの内周面に対して液密状態に保持されている。第1の摺動部5p1の外径は、同図に示すように、第2の摺動部5p2の外径よりも小径をなし、これにより、調圧弁5は、摺動部5p1及び5p2の受圧面積差に応じて、弾性部材5sの付勢力(弾性力)に抗した摺動動作を可能にする。
【0016】
6は、調圧弁5からの内容物を噴出させる開孔6aを有し、連結部材4に保持されるノズルである。ノズル6の背面には、図3に示すように、凹部6nが形成されている。凹部6nは、開孔6aを含む底面6n1を有し、この底面6n1の外縁から筒状に延在する内周面6n2で形作られている。
【0017】
更に詳細には、凹部6nの底面(以下、「凹部底面」)6n1には、図3に示すように、開孔6aに繋がる2つの凹溝6g1が形成されている。これら凹溝6g1は、内容物を噴霧させるためのスピン溝を構成し、開孔6aを挟んで対向する位置に配置されている。また、凹溝(以下、「スピン溝」)6g1の合流部6cは、同図に示すように、開孔6aに通じる凹部を形成する。
【0018】
7は、連結部材4とノズル6との間に配置される中間部材である。中間部材7は、連結部材4の外筒部4bの内側に形成された開口を仕切る仕切壁7aを有し、仕切壁7aの外縁から周壁7bが一体に延在する。
【0019】
また、中間部材7には、図3に示すように、その周壁7bの外周面に、周方向に間隔を空けて複数の突条7cが一体に形成されているのに対し、連結部材4には、図2に示すように、その外筒部4bの先端に、周方向に間隔を空けて複数の切り欠き4cが形成されている。これにより、中間部材7は、その突条7cが連結部材4の切り欠き4cに嵌合することで、外筒部4bに回転不納に固定されると共に、連結部材4と中間部材7との間には、調圧弁5の収納空間Sが形成される。
【0020】
また、中間部材7には、図3に示すように、その仕切壁7aに、ノズル6の背面に設けた凹部6nに嵌合保持される凸部7pが設けられている。凸部7pは、図2に示すように、ノズル6の凹部底面6n1に突き当たる先端面7p1を有し、この先端面7p1の外縁から円柱状に延在する外周面7p2で形作られている。
【0021】
凸部7pの外周面には、図3に示すように、周方向に間隔を空けて、収納空間Sに通じる4つの開口部A2が形成されている。4つの開口部A2はそれぞれ、図2に示すように、調圧弁5の弁体5aによって封止されており、調圧弁5が収納空間Sの内圧上昇に伴い弾性部材5sの付勢力(弾性力)に抗して連結部材4側に後退することで開放される。
【0022】
加えて、凸部7pの外周面には、図3に示すように、当該開口部A2と周方向に互い違いに配置された4つの凹溝7g1,7g2が形成されている。凹溝7g1,7g2はそれぞれ、軸線Oに沿って延在する、断面積の小さな条溝と、断面積の大きな条との異なる断面積からなる。更に詳細には、本形態では、深さが浅く断面積の小さな凹溝(以下、「第1条溝」)7g1と、深さが深く断面積の大きな凹溝(以下、「第2条溝」)7g2をそれぞれ、2つずつの組とし、開孔6a(軸線O)を挟んだ一対の構成としている。
【0023】
なお、これらの対は、図4(b)に示すように、軸線O周りに角度Dだけずらして配置されているが、角度Dは、使用者の要求や用途に併せ、適宜、変更することができる。
【0024】
これに対し、ノズル6に設けた凹部6nには、図3に示すように、その内周面(以下、「凹部内周面」)6n2に、スピン溝6g1と軸線O周りに整列するように、軸線Oに沿って延在する2つの凹溝(以下、「条溝」)6g2が形成されている。
【0025】
加えて、ノズル6には、連結部材4の外筒部4bを取り囲む筒体部6bが設けられている。この筒体部6bの内周面には、図2に示すように、全周に沿って環状の溝部6dが形成されている。この溝部6dには、中間部材4の外筒部4bに設けた環状のリブ4rが嵌合保持されている。これにより、ノズル6は、連結部材4の外筒部4b周りに回転可能に保持される。
【0026】
ノズル6を連結部材4の周りに回転させて、図4(a)に示す位置に位置決めすれば、同図に示すように、凹部6nのスピン溝6g1と条溝6g2との間が、凸部7pの外周面によって遮断されるため、収納空間Sから条溝6g2に圧送された内容物は、開孔6aから噴射されることがない。従って、使用者は、図4(a)に示すように、ノズル6を位置決めすれば、誤ってトリガー3を牽曳しても、内容物は噴射されることがなく、持ち運び等の携帯性に優れる。
【0027】
これに対し、ノズル6を連結部材4の周りに回転させて、図4(b)に示す位置に位置決めすれば、同図に示すように、凹部6nのスピン溝6g1と条溝6g2との間が、凸部7pの外周面に形成された第1条溝7g1を通して連通される。
【0028】
即ち、収納空間Sから条溝6g2に圧送された内容物は、深さが浅く断面積の小さい第1条溝7g1からスピン溝6g1に導入された後、合流部6cを通して開孔6aから噴射される。このように、断面積の小さい凹溝7g1を通して導入される場合は、噴霧角度αが大きく(α=α1)、細かな霧を噴射させることができる。従って、使用者は、例えば、通常の霧(細かな霧で噴霧角度αが大きい)を噴射させたいときには、図4(b)に示すように、ノズル6を位置決めすれば、内容物は通常の霧として噴射させることができる。
【0029】
他方、ノズル6を連結部材4の周りに回転させて、図4(c)に示す位置に位置決めすれば、同図に示すように、凹部6nのスピン溝6g1と条溝6g2との間が、凸部7pの外周面に形成された第2条溝7g2を通して連通される。
【0030】
即ち、収納空間Sから条溝6g2に圧送された内容物は、深さが深く断面積の大きな凹溝7g2からスピン溝6g1に導入された後、合流部6cを通して開孔6aから噴射される。このように、断面積の大きな凹溝7g2を通して導入される場合は、噴霧角度αが小さく(α=α2)、粗い霧を噴射させることができる。従って、使用者は、例えば、粒子が粗く噴射角度αが小さい霧を噴射させたいときには、図4(c)に示すように、ノズル6を位置決めすれば、内容物は、粒子の粗い霧として噴射させることができる。
【0031】
図6には、従来の液体噴出器を例示する。従来のトリガー式液体噴出器は、連結部材4との間に、調圧弁5を配置するため、当該連結部材4の外筒部4bに直接ノズル60をスプライン嵌合させている。このため、ノズル60は連結部材4周りに回転させることができない。
【0032】
従って、従来の液体噴出器は、調圧弁5から圧送された内容物をノズルチップ61に形成された開孔61aから噴射させるに過ぎず、ノズル60を回転させることで噴射パターンを切り換えることは困難である。
【0033】
これに対し、本形態によれば、上述のように、ノズル6を連結部材4の周りに回転させ、断面積の異なる第1条溝7g1及び第2条溝7g2を適宜選択することで、例えば、断面積の小さい凹溝7g1の場合は細かい霧で噴霧角度αを大きくすることができ、また、断面積の大きな凹溝7g2の場合は粗い霧で噴霧角度αを小さくすることができる等、内容物の噴射圧を変更することができる。従って、本形態によれば、ノズル6を連結部材4の周りに回転させるだけで、高圧噴射の機能を確保しつつ、霧の状態や噴霧角度α等の噴射パターンを切り換えることができる。
【0034】
なお、8は、ノズル6の先端に、ピン8aを介して揺動可能に保持されるノズルカバー、9は、ボディ1に固定されるボディカバーである。また、10は、ボディ1をポンプ2と共に容器20の口部21に装着するための装着筒である。なお、装着筒10は、螺合により装着されているが、この装着手段はねじに限定されるものではない。
【0035】
ところで、本発明に従えば、上述のとおり、ノズル6を接続部材4周りに回転させることによって、開孔6aを開閉させることができる。このため、本発明によれば、図5に示す第2の形態のように、ノズルカバー8を省略することができる。
【0036】
上述したところは、本発明の一形態を示したに過ぎず、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、上述の形態は、予め液体噴出器としてユニット化されているが、本発明に従えば、ユニットさせることなく、容器に対して個々のパーツを組み付けるものとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば、化粧水、整髪料等の化粧品、虫除け等の医薬品及び、美容・健康用品の分野に係る液体噴出器として採用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ボディ
2 ポンプ
3 トリガー
4 連結部材
4a 内筒部
4b 外筒部
4c 切り欠き
5 調圧弁
5a 弁体
5p1 第1の摺動部
5p2 第2の摺動部
5s 弾性部材(リターンスプリング)
6 ノズル
6a 開孔(噴出孔)
6b 筒体部
6c 合流部
6g1 凹溝(スピン溝)
6g2 凹溝(条溝)
6n 凹部
6n1 凹部底面
6n2 凹部内周面
7 中間部材
7a 仕切壁
7b 周壁
7c 突条
7g1 第1条溝
7g2 第2条溝
7p1 先端面
7p2 外周面
8 ノズルカバー
9 ボディカバー
1 開孔(オリフィス)
2 開口部
C チューブ
P 内部通路
S 収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内容物を吸引、加圧及び圧送するポンプを有し容器の口部に装着されるボディと、ポンプに通じる開孔を有しボディの先端に固定される連結部材と、この連結部材からの内容物を調圧する調圧弁と、この調圧弁からの内容物を噴出させる開孔を有し連結部材に保持されるノズルとを備え、
当該ノズルと連結部材との間に、調圧弁の収納空間を形成し当該連結部材に固定される中間部材を設け、
当該中間部材に、ノズルの背面に設けた凹部に嵌合保持される凸部を設けると共に、当該凸部の外周面に、周方向に間隔を空けて、収納空間に通じる断面積の異なる複数の凹溝を形成し、
当該ノズルの凹部に、当該ノズルの開孔に繋がる複数の凹溝を形成すると共に、当該凹溝が、中間部材の凸部に形成した凹溝に連通するように、当該ノズルを、連結部材の周りに回転可能に保持したことを特徴とする液体噴出器。
【請求項2】
請求項1において、断面積の異なる複数の凹溝のうち、2つの凹溝を一対に構成し、当該凹溝を、開孔を挟んで対向する位置に配置したことを特徴とする液体噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−177630(P2011−177630A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43179(P2010−43179)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】