説明

液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置

【課題】ヘッドの小型化とコストの削減が可能な液体噴射ヘッド、および、これを備えた液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ケース15は、ノズル形成面が第1の面側となる姿勢でヘッドユニット16が固定されると共に、当該ヘッド固定部の前記第1の面とは反対側の第2の面側に配線基板30が配置され、ケース15内の供給流路14は、共通液室33の第1方向における端部で当該共通液室と連通し、フレキシブルケーブル40は、ケース15内において供給流路に対して第1方向の内側に配設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置に関するものであり、特に、ノズルから液体を噴射するヘッドユニットと、圧力発生手段に電気的に接続される配線部材と、当該配線部材を通じて圧力発生手段に駆動信号を供給する配線基板と、を保持部材に備えた液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は液体噴射ヘッドを備え、この噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
このような液体噴射ヘッドには種々の形式があるが、広く普及している所謂オン・デマンド方式のものは、共通液室(リザーバーあるいはマニホールドとも言う)から圧力室を経てノズルに至る一連の液体流路をノズルに対応して複数備え、例えば、圧電素子や発熱素子等の圧力発生手段の駆動によって圧力室内の液体に生じた圧力変動を利用してノズルから液滴を噴射させるように構成されている。
【0004】
上記共通液室には、インクカートリッジ等の液体供給源側からの液体が供給される供給流路が連通している。この供給流路は共通液室の長手方向中央部に位置し、当該供給流路と共通液室の連通箇所(導入口)から、当該共通液室に連通する各圧力室のうち導入口から最も遠い位置にある圧力室までの距離がなるべく短くなるように(すなわち、当該距離が共通液室の長手方向の寸法の約半分となるように)構成されていた(例えば、特許文献1参照)。これにより、同一共通液室に連通する各圧力室へのインクの供給圧力が偏ることが防止されている。
【0005】
ところで、この種の液体噴射ヘッドでは、装置本体側からの駆動信号を受けてこれを圧力発生手段に供給するための配線基板(プリント基板)をケース部材(保持部材)に備え、COF(チップ・オン・フィルム)、TCP(テープ・キャリア・パッケージ)等の可撓性を有する配線部材(以下、フレキシブルケーブルと称する)を通じて配線基板から各圧力発生手段に駆動信号が供給されるものがある。このフレキシブルケーブルは、例えば、ポリイミド等のベースフィルムの表面に銅箔等で導体パターンを形成し、この導体パターンをレジストで被覆した構成とされる。そして、このフレキシブルケーブルの一端側の端子部は圧力発生手段の端子部に接続され、他端側の端子部は配線基板上の基板端子部に接続される。
【0006】
【特許文献1】特開2010−023437号公報(図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記フレキシブルケーブルは、記録ヘッド内(ケース部材内)において限られたスペース内で配線されている。特に、共通液室の中央部に供給流路が接続された構成では、当該供給流路を避けてフレキシブルケーブルを配線するか、若しくは、フレキシブルケーブルの供給流路を通す逃げ穴を開設する必要があった。前者の場合において、導体パターンのレイアウト等の関係でフレキシブルケーブルの長さが一定に決まっている構成では、供給流路との干渉を避けるためフレキシブルケーブルをケース部材の高さ方向に沿って配線することになり、当該フレキシブルケーブルの長さに応じてその分ケース部材の高さを要する。このため、記録ヘッドの大型化を招くという問題があった。また、後者の場合、フレキシブルケーブに上記のような逃げ穴を開設すると、このフレキシブルケーブを避けてフレキシブルケーブル上の導体パターンを形成する必要があるため、その分、フレキシブルケーブルが大型化してコストも上昇してしまうという問題があった。同様に、後者の構成では、配線基板にも供給流路を通す逃げ穴を開設する必要があり、この面でも配線基板のサイズの拡大に伴ってコストが上昇してしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッドの小型化とコストの削減が可能な液体噴射ヘッド、および、これを備えた液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、ノズル(28)が第1方向に並設されたノズル形成面(ノズルプレート23)、前記ノズルに連通する圧力室(32)に圧力変動を生じさせる圧力発生手段(圧電素子36)、および、前記第1方向に沿って形成され、複数の圧力室に共通な液体が導入される共通液室(33)、を有し、当該圧力発生手段の駆動により前記ノズルから液体を噴射するヘッドユニット(16)と、
一端部が前記圧力発生手段に電気的に接続される配線部材(フレキシブルケーブル40)と、
当該配線部材の他端部と電気的に接続され、当該配線部材を通じて前記圧力発生手段に駆動信号を供給する配線基板(30)と、
液体供給源からの液体を前記共通液室に供給する供給流路(14)と、
を保持部材(ケース15)に備えた液体噴射ヘッドであって、
前記保持部材は、前記ノズル形成面が第1の面側となる姿勢でヘッドユニットが固定されると共に、当該ヘッド固定部の前記第1の面とは反対側の第2の面側に配線基板が配置され、
前記供給流路は、前記共通液室の第1方向における端部で当該共通液室と連通し、
前記配線部材は、前記保持部材内において前記供給流路に対して第1方向の内側に配設されたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、供給流路が共通液室の第1方向における端部で当該共通液室と連通し、配線部材が保持部材内において供給流路に対して第1方向の内側に配設されるので、配線部材を、圧力発生手段と配線基板との間において供給流路に干渉することなく、或いは、配線部材に当該供給流路を通す逃げ穴等を設けることなく、必要に応じて折り曲げて配線することができる。このため、配線部材の全長が一定に決められている場合においても、配線部材を折り曲げて配線したり、或いは、ノズル形成面に対して斜めに配線したりすることで、保持部材の高さ方向の配線スペースを低く抑えることが可能となる。その結果、液体噴射ヘッドの小型化に寄与することができる。また、配線部材に当該供給流路を通す逃げ穴等を設けなくても良いので、その分、配線部材のサイズを縮小化することができ、液体噴射ヘッドの小型化に寄与することが可能となる。
【0011】
また、上記構成において、前記供給流路の入口側開口部は、前記第2の面側において前記配線基板に対し第1方向外側に形成された構成を採用することが望ましい。
【0012】
この構成によれば、配線基板に供給流路を通す逃げ穴を設けなくても良いので、その分、配線基板のサイズを縮小化することができ、液体噴射ヘッドの小型化に寄与することができる。
【0013】
さらに、上記構成において、前記配線基板は、前記第2の面への配置状態における前記第1の面側に基板端子部を有し、当該基板端子部と前記配線部材の他端側端子部とが電気的に接続された構成を採用することが望ましい。
【0014】
上記構成によれば、配線基板は、第2の面への配置状態における第1の面側に基板端子部を有し、当該基板端子部と配線部材の他端側端子部とが電気的に接続される構成であるため、配線基板に配線部材を挿通させるための貫通孔を設ける必要がなく、その分、配線基板のサイズを縮小化することができる。これにより、液体噴射ヘッドの一層の小型化に寄与することができる。
【0015】
また、本発明の液体噴射装置は、上記何れかの構成の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プリンターの構成を説明する斜視図である。
【図2】記録ヘッドのノズル列に直交する方向(第2の方向)における断面図である。
【図3】記録ヘッドのノズル列方向(第1の方向)における断面図である。
【図4】記録ヘッドの底面図である。
【図5】記録ヘッドの上面図である。
【図6】フレキシブルケーブルである。
【図7】ヘッドユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明では、本発明の液体噴射装置として、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を備えたインクジェット式プリンター(本発明の液体噴射装置の一種)を例に挙げる。
【0018】
プリンター1の構成について、図1を参照して説明する。プリンター1は、記録紙等の記録媒体2(着弾対象の一種)の表面に対して液体状のインクを噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、インクを噴射する記録ヘッド3、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4、キャリッジ4を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構5、記録媒体2を副走査方向に移送するプラテンローラー6等を備えている。ここで、上記のインクは、本発明の液体の一種であり、液体供給源としてのインクカートリッジ7に貯留されている。このインクカートリッジ7は、記録ヘッド3に対して着脱可能に装着される。なお、インクカートリッジ7がプリンター1の本体側に配置され、当該インクカートリッジ7からインク供給チューブを通じて記録ヘッド3に供給される構成を採用することもできる。
【0019】
上記のキャリッジ移動機構5はタイミングベルト8を備えている。そして、このタイミングベルト8はDCモーター等のパルスモーター9により駆動される。従ってパルスモーター9が作動すると、キャリッジ4は、プリンター1に架設されたガイドロッド10に案内されつつ主走査方向(記録媒体2の幅方向)に往復移動する。
【0020】
図2は、上記記録ヘッド3のノズル列に直交する方向(第2の方向)における断面図であり、図3は、記録ヘッド3のノズル列方向(第1の方向)における断面図である。また、図4は、記録ヘッド3の底面図であり、図5は、記録ヘッド3の上面図(針ホルダー18を取り付けていない状態)である。本実施形態における記録ヘッド3は、ケース15(本発明における保持部材に相当)と、ヘッドユニット16と、ユニット固定板17と、針ホルダー18と、を備えている。
【0021】
針ホルダー18は、上面側にインク導入針20が複数立設された部材であり、例えば、合成樹脂により作製されている。本実施形態においては各色のインクカートリッジ7のインクに対応させて合計4本のインク導入針20が針ホルダー18の上面に横並びに配設されている。このインク導入針20は、インクカートリッジ7内に挿入される中空針状の部材であり、先端部に開設された導入孔(図示せず)からインクカートリッジ7内に貯留されたインクをケース15内の供給流路14を通じてヘッドユニット16側に導入する。図3に示すように、針ホルダー18の内部には、インク導入針20の内部流路と連通する平面流路13が形成されている。この平面流路13は、インク導入針20の下方でノズル列方向である第1の方向において左右に分岐し、同方向の両端側に向けてそれぞれ延在している。そして、平面流路13は、ノズル列方向の両端部で、ゴムやエラストマー等の弾性体から成るパッキン29を介して、ケース15の供給流路14にそれぞれ液密に連通している。また、針ホルダー18の下面側には、ケース15の上面である基板載置面46(本発明における第2の面に相当)に配置された配線基板30が収容される基板収容部21(図2参照)が形成されている。この針ホルダー18は、基板収容部21に配線基板30を収容した状態でケース15の基板載置面46側に固定される。
【0022】
ケース15は、例えば、合成樹脂から成る中空箱体状の部材である。このケース15は、ヘッドユニット16が固定されるヘッド固定部15aと、配線基板30が保持されると共に針ホルダー18が固定される基板保持部15bと、から構成される。ヘッド固定部15aの内部における底面(本発明における第1の面)側には、ヘッドユニット16が収容されるヘッドユニット収容空部19が形成されている。本実施形態におけるヘッドユニット収容空部19の内部には、合計2つのヘッドユニット16が、ノズル列方向に直交する第2の方向(図2における左右方向)に横並びで収容される。ヘッドユニット収容空部19内の各ヘッドユニット16は、当該ヘッドユニット16毎に対応して形成された2つの開口部17′を有する金属製のユニット固定板17に固定される。
【0023】
また、ヘッド固定部15aの内部における基板保持部15b側(基板載置面46側)には、下端がヘッドユニット収容空部19に連通すると共に、上端が基板載置面46に開口した配線空部22が形成されている。本実施形態においては、2つのヘッドユニット16に対応して合計2つの配線空部22が、隔壁22′によって隔てられてヘッド固定部15a内に設けられている。この配線空部22の内壁の一部、具体的には、第2の方向における外側の内壁面の略上半分は、基板載置面46側に向けて上り傾斜している。この面は、後述するように、フレキシブルケーブル40を基板載置面46の配線領域49側に案内するガイド面39として機能する。
【0024】
基板保持部15bは、ヘッド固定部15aの上面側に一体的に形成された部材である。この基板保持部15bの上面は、配線基板30およびフレキシブルケーブル40の他端部が配置される基板載置面46である。平面視において、基板載置面46の面積は、ヘッド固定部15aの面積よりも広くなっている。そして、基板保持部15bにおいてヘッド固定部15aよりも側方に突出した部分がフランジ部47となっている。基板載置面46の中央部には、ヘッド固定部15aの配線空部22がそれぞれ開口している。図5に示すように、基板載置面46において各配線空部22の開口よりも第2の方向の外側に、当該配線空部22から引き出されたフレキシブルケーブル40の他端部が配置される配線領域49がそれぞれ区画されている。この配線領域49における第1の方向の両端部には、位置決めピン51がそれぞれ突設されている。本実施形態においては、配線領域49が2つ区画されているので、基板載置面46上には、合計4つの位置決めピン51が設けられている。当該位置決めピン51は、基板載置面46上におけるフレキシブルケーブル40と配線基板30との相対位置を規定するためのものである。
【0025】
基板載置面46において、各配線空部22の開口(又は、配線領域49)の第1の方向の両端部には、供給流路14の上流端がそれぞれ開口している。図3に示すように、各供給流路14は、ケース15の内部において基板載置面46側からヘッドユニット16側に向けて、ケース15の高さ方向に沿って延設された縦長な流路である。供給流路14の下端は、ヘッドユニット16のインク導入路43を介して共通液室33と連通する。そして、この本実施形態においては、1つの共通液室33に対して供給流路14が2本ずつ設けられている。同一の共通液室33に連通する一対の供給流路14は、ケース15の内部において配線空部22を間に挟んで第1方向の両側に形成されている。このため、各供給流路14は、共通液室33の第1方向における端部で当該共通液室33とそれぞれ連通する。
【0026】
図4に示すように、上記基板保持部15bのフランジ部47には、細長い矩形状の開口を有する配線用開口部50が、基板保持部15bの板厚方向を貫通した状態で開設されている。この配線用開口部50は、基板載置面46上に位置決めされた状態で配置された配線基板30の基板端子部53とフレキシブルケーブル40の他端側端子部54との重畳位置である接合部60に対応する位置に形成されている。また、配線用開口部50の寸法は、他端側端子部54および基板端子部53よりも一回り大きく設定されている。これにより、フレキシブルケーブル40の他端部と配線基板30とが位置決めピン51によって位置決めされた状態で基板載置面46上に配置されると、接合部60が配線用開口部50内に臨む。
【0027】
フレキシブルケーブル40は、例えば、ポリイミド等のベースフィルムの表面に圧電素子36への駆動電圧の印加を制御する駆動IC58が実装されると共に、この駆動IC58に接続される導体パターンが銅箔等で形成され、この導体パターンと駆動IC58とがレジストで被覆されて構成されている。そして、このフレキシブルケーブル40の一端部には、圧電素子36に導通される一端側端子部(図示せず)が形成される一方、他端部には、配線基板30の基板端子部53に導通される他端側端子部54(配線端子部)が形成されている。このフレキシブルケーブル40の他端部において、基板載置面46の位置決めピン51に対応する位置には、この位置決めピン51が挿通されるケーブル貫通穴59が2箇所開設されている(図5参照)。
【0028】
上記フレキシブルケーブル40は、一端部が圧電素子36の素子端子部に接続された状態で配線空部22内に収容される。すなわち、図2に示すように、フレキシブルケーブル40は、ヘッドユニット16からノズル形成面(ノズルプレート23)に対して略垂直な姿勢で配線空部22内に引き出される。上述したように、配線空部22はケース15内において第1方向の両側の供給流路14の間に形成されているので、フレキシブルケーブル40は、これらの供給流路14の間に、当該各供給流路14に干渉することなく配設される。換言すると、配線空部22の第1方向の両側に供給流路14が形成されていることで、配線空部22内に供給流路14が通らないので、配線空部22をフレキシブルケーブル40の配線に有効に使うことが出来る。配線空部22内に引き出されたフレキシブルケーブル40は、当該配線空部22内において途中(一端部と他端部との間)で折り曲げられる。そして、この屈曲部分から先(他端部側)は、配線空部22のガイド面39に沿うようにノズル形成面に対して傾斜した姿勢とされる。このようにフレキシブルケーブル40を屈曲して配線することで、ケース15の高さを低く抑えることができる。これにより、記録ヘッド3全体の小型化に寄与することができる。そして、配線フレキシブルケーブル40の他端部は、配線空部22側からガイド面39に沿って基板載置面46側に引き出されて、各ケーブル貫通穴59に位置決めピン51がそれぞれ挿通されて当該基板載置面46の配線領域49上に配置される。
【0029】
図6は、配線基板30の構成を説明する平面図であり、基板載置面46側となる面を示している。この配線基板30は、プリンター本体側からの駆動信号を受け、この駆動信号を、フレキシブルケーブル40を通じて圧電素子36へ供給するための配線パターン等が形成された基板である。この配線基板30は、フレキシブルケーブル40の他端側端子部54と導通される基板端子部53が形成されると共に、プリンター本体側との接続のためのコネクター55やその他の電子部品等を実装している。本実施形態における配線基板30には、基板載置面46上に配置される2枚のフレキシブルケーブル40の他端側端子部54に対応して、基板端子部53が2つ形成されている。また、コネクター55にはFFC(フレキシブルフラットケーブル)等の配線部材が接続され、配線基板30は、このFFCを介してプリンター本体側から駆動信号を受けるようになっている。
【0030】
この配線基板30において、基板載置面46の位置決めピン51に対応する位置には、この位置決めピン51が挿通される基板貫通孔56が合計4箇所開設されている。そして、この配線基板30は、基板端子部形成面をケース15の基板載置面46側に向け、各基板貫通孔56に位置決めピン51がそれぞれ挿通され、フレキシブルケーブル40の他端部9bを間に介在させた状態で、基板載置面46上における第1方向両側に開設された供給流路14の開口部の間に配置される。これにより、基板端子部53とフレキシブルケーブル40の他端側端子部54との平面上の位置が合致する。これらの端子部の重畳箇所が接合部60である。
【0031】
図7は、ヘッドユニット16の内部構成を示す断面図である。本実施形態におけるヘッドユニット16は、ノズルプレート23、流路基板24、共通液室基板25、及び、コンプライアンス基板26から概略構成され、これらの部材を積層した状態でユニットケース27に取り付けられている。ノズルプレート23(ノズル形成部材の一種)は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル28を列状に開設した板状の部材である。本実施形態では、360dpiのピッチで360個のノズル28を列設することでノズル列が構成されている。
【0032】
流路基板24は、その上面(共通液室基板25側の面)に二酸化シリコンからなる薄手の弾性膜31が熱酸化によって形成されている。この流路基板24には、異方性エッチング処理によって複数の隔壁で区画された圧力室32が各ノズル28に対応して複数形成されている。この流路基板24における圧力室32の列の外側には、各圧力室32の共通のインクが導入される室としての共通液室33の一部を区画する連通空部34が形成されている。この連通空部34は、インク導入路43を介して各圧力室32と連通している。
【0033】
流路基板24の上面の弾性膜31上には、金属製の下電極膜と、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層と、金属からなる上電極膜とを順次積層することで形成された圧電素子36が圧力室32毎に形成されている。この圧電素子36は、所謂撓みモードの圧電素子であり、圧力室32の上部を覆うように形成されている。圧電素子36の各素子電極からはそれぞれ電極配線部48a,48bが弾性膜31上に延出されており、これらの電極配線部の電極端子に相当する部分に、フレキシブルケーブル40の一端部に設けられた配線端子(図示せず)が電気的に接続される。そして、各圧電素子36は、フレキシブルケーブル40を通じて上電極膜および下電極膜間に駆動電圧が印加されることにより変形する。
【0034】
上記圧電素子36が形成された流路基板24上には、厚さ方向に貫通した貫通空部37を有する共通液室基板25が配置される。この共通液室基板25は、流路基板24やノズルプレート23と同様にシリコン単結晶基板を用いて作製されている。また、この共通液室基板25における貫通空部37は、流路基板24の連通空部34と連通して共通液室33の一部を区画する。
【0035】
また、共通液室基板25の上面側には、コンプライアンス基板26が配置される。このコンプライアンス基板26における共通液室基板25の貫通空部37に対向する領域には、インク導入針20側からのインクを共通液室33に供給するインク導入口41が厚さ方向に貫通して形成されている。このインク導入口41は、1つの共通液室33に対して2つ設けられている。同一共通液室33に連通する一対のインク導入口41は、当該共通液室33の第1方向の両側に対応する位置に形成されている。また、コンプライアンス基板26の貫通空部37に対向する領域のインク導入口41以外の領域は、極薄く形成された可撓部42となっており、この可撓部42によって貫通空部37の上部開口が封止されることで共通液室33が区画形成される。この可撓部42は、共通液室33内のインクの圧力変動を吸収するコンプライアンス部として機能する。
【0036】
本実施形態における共通液室33は、ノズル列毎に当該ノズル列(第1方向)に沿って延在する空部であり、当該ノズル列に属する各圧力室32に共通なインクが導入される。上述したように、この共通液室33は、第1方向の両端部において、インク導入路43を介してケース15の供給流路14とそれぞれ連通している。したがって、インク導入路43側から共通液室33に導入されたインクは、第1方向の両端側から中央部に向けて流入する。図3に示すように、共通液室33の天井面は、第1方向の両端部からそれぞれ中央部に向けて次第に下方(ノズル形成面側)に傾斜するテーパー形状となっている。すなわち、供給液室33内の流路の高さが第1方向の両端側から中央側に向けて次第に狭くなっている。これにより、共通液室33に導入されたインクが、両端部から中央部に向けて円滑に流れるようになっている。このため、共通液室33に連通する各圧力室32へのインクの供給圧力を可及的に揃えることができる。
【0037】
ユニットケース27は、インク導入口41に連通してインク導入針20側から導入されたインクを共通液室33側に導入するインク導入路43が形成されると共に、可撓部42に対向する領域にこの可撓部42の膨張を許容する凹部44が形成された部材である。インク導入路43は、1つの共通液室33に対して2つずつ設けられており、ユニットケース27の高さ方向貫通した状態で形成されている。このインク導入路43の上流端は、ケース15の供給流路14と連通し、同下流端は、インク導入口41を介して共通液室33と連通する。同一共通液室33に連通する一対のインク導入路43は、当該共通液室33の第1方向の両側に対応する位置にそれぞれ形成されている。また、ユニットケース27の中心部(第1方向両側のインク導入路43の間の領域)には、厚さ方向に貫通した空部44が開設されており、この空部44内にフレキシブルケーブル40の一端側が挿通されて、圧電素子36の電極配線部48と電気的に接続される。
【0038】
そして、これらのノズルプレート23、流路基板24、共通液室基板25、コンプライアンス基板26、及び、ユニットケース27は、接着剤や熱溶着フィルム等を間に配置して積層した状態で加熱することで相互に接合される。
【0039】
以上のように構成されたヘッドユニット16を備える記録ヘッド3は、各ノズルプレート23がプラテンに対向した状態でノズル列方向(第1の方向)が副走査方向と一致するようにキャリッジ4に取り付けられる。そして、各ヘッドユニット16は、インクカートリッジ3からのインクを、インク導入針20、平面流路13、供給流路14、およびインク導入路43を通じてインク導入口41から共通液室33側に取り込み、共通液室33からノズル28に至るインク流路をインクで満たす。そして、フレキシブルケーブル40からの駆動電圧を圧電素子36に印加してこの圧電素子36を撓み変形させることによって、対応する圧力室32内のインクに圧力変動を生じさせ、このインクの圧力変動を利用してノズル28からインクを噴射させる。
【0040】
次に、上記記録ヘッド3の製造工程について説明する。
一端部がヘッドユニット16における圧電素子36の電極配線部48に接続されたフレキシブルケーブル40は、ヘッドユニット16からノズル形成面に対して略垂直な姿勢で配線空部22内に引き出され、当該配線空部22内において途中で折り曲げられ、当該屈曲部分より先の他端部は、配線空部22側からガイド面39に沿って基板載置面46側に引き出される。そして、各ケーブル貫通穴59に位置決めピン51がそれぞれ挿通されることで位置決めされた状態で基板載置面46の配線領域49上に配置される。この際、フレキシブルケーブル40の他端部における他端側端子部54が形成された面は、基板載置面46とは反対側(上方)に向いた状態となる。
【0041】
次に、基板載置面46におけるフレキシブルケーブル40の他端部の上に配線基板30が積層される。この際、配線基板30は、基板端子部53が形成された面を、基板載置面46側、即ち、基板載置面46上のフレキシブルケーブル40の他端部に向けた状態で基板貫通孔56に位置決めピン51を挿通し、フレキシブルケーブル40の他端部を間に介在させた状態で基板載置面46に取り付けられる。これにより、他端側端子部54の各端子と基板端子部53の各端子の相対的な位置が合致した状態で他端側端子部54と基板端子部53とが重なり合う。この状態では、他端側端子部54と基板端子部53とが重なった接合部60が、基板保持部15bに設けられた配線用開口部50内に臨む。なお、他端側端子部54と基板端子部53との少なくとも一方には、予めハンダメッキが施されている。そして、本実施形態においては、配線用開口部50を通して、ヒートツールなどによって接合部60を加熱することで、他端側端子部54と基板端子部53とが半田付けされ、電気的に接合される。
【0042】
以上のように、本発明に係る記録ヘッド3では、供給流路14が共通液室33の第1方向における端部で当該共通液室33と連通し、フレキシブルケーブル40が、ケース15内において供給流路14に対して第1方向の内側に配設されるので、フレキシブルケーブル40を、圧電素子36と配線基板30との間において供給流路14に干渉することなく、或いは、フレキシブルケーブル40に当該供給流路14を通す逃げ穴等を設けることなく、必要に応じて折り曲げて配線することができる。このため、フレキシブルケーブル40の全長が一定に決められている場合においても、フレキシブルケーブル40を折り曲げて配線したり、或いは、ノズル形成面に対して斜めに配線したりすることで、ケース15の高さ方向の配線スペースを低く抑えることが可能となる。その結果、記録ヘッド3の小型化に寄与することができる。
【0043】
また、上記のように、フレキシブルケーブル40に供給流路14を通す逃げ穴等を設けなくても良いので、その分、フレキシブルケーブル40のサイズを縮小化することができ、記録ヘッド3の小型化に寄与することが可能となる。同様に、配線基板30にも、供給流路14を通す逃げ穴等を設けなくても良いので、その分、配線基板30のサイズを縮小化することができる。
【0044】
さらに、本実施形態における記録ヘッド3では、配線基板30が基板載置面46への配置状態におけるノズル形成面側に基板端子部53を有し、当該基板端子部53とフレキシブルケーブル40の他端側端子部54とが電気的に接続される構成であるため、配線基板30にフレキシブルケーブル40を挿通させるための貫通孔を設ける必要がなく、その分、配線基板30のサイズを縮小化することができる。これにより、記録ヘッド3の一層の小型化に寄与することができる。
【0045】
そして、本実施形態における記録ヘッド3では、1つの共通液室33に対して第1方向の両端部で合計2つの供給流路14が並列に連通するので、1つの共通液室33に対して1つの供給流路14が連通する構成と比較して、供給流路14における圧力損失を低減することができる。加えて、共通液室33における供給流路14との連通部分(即ち、本実施形態においてはインク導入路43の開口部)から最も遠い位置にある圧力室32までの距離は、共通液室33の第1方向の長さの半分となる。このため、当該圧力室31へのインクの供給圧力の低下を抑制することができる。
【0046】
ところで、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、供給流路14、および、これに連通するインク導入路43等が、共通液室33の第1方向の両側に対応する位置にそれぞれ2箇所ずつ設けられた構成を例示したが、これには限られない。1つの共通液室33に対して供給流路14、および、これに連通するインク導入路43等が1つずつ設けられ、当該共通液室33における第1方向の一端部で供給流路14が連通する構成を採用することもできる。
【0048】
また、上記では、本発明における圧力発生手段として、所謂撓み振動型の圧電素子を例示したが、これには限られず、静電気力によって圧力室の一部を変位させる所謂静電方式のアクチュエーターや、加熱により生じる気泡により圧力室内に圧力変動を生じさせる発熱素子等の他の圧力発生手段を採用する構成においても本発明を適用することが可能である。
【0049】
そして、以上では、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド3を例に挙げて説明したが、本発明は、ノズルから液体を噴射するヘッドユニットと、圧力発生手段に電気的に接続される配線部材と、当該配線部材を通じて圧力発生手段に駆動信号を供給する配線基板と、を保持部材に備えた構成を採用する他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…プリンター,3…記録ヘッド,13…平面流路,14…供給流路,15…ケース,16…ヘッドユニット,19…ヘッドユニット収容空部,22…配線空部,23…ノズルプレート,28…ノズル,30…配線基板,32…圧力室,33…共通液室,36…圧電素子,40…フレキシブルケーブル,43…インク導入路,46…基板載置面,49…配線領域,50…配線用開口部,53…基板端子部,54…他端側端子部,58…駆動IC,59…ケーブル挿通穴,60…接合部,62…挿通開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが第1方向に並設されたノズル形成面、前記ノズルに連通する圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段、および、前記第1方向に沿って形成され、複数の圧力室に共通な液体が導入される共通液室、を有し、当該圧力発生手段の駆動により前記ノズルから液体を噴射するヘッドユニットと、
一端部が前記圧力発生手段に電気的に接続される配線部材と、
当該配線部材の他端部と電気的に接続され、当該配線部材を通じて前記圧力発生手段に駆動信号を供給する配線基板と、
液体供給源からの液体を前記共通液室に供給する供給流路と、
を保持部材に備えた液体噴射ヘッドであって、
前記保持部材は、前記ノズル形成面が第1の面側となる姿勢でヘッドユニットが固定されると共に、当該ヘッド固定部の前記第1の面とは反対側の第2の面側に配線基板が配置され、
前記供給流路は、前記共通液室の第1方向における端部で当該共通液室と連通し、
前記配線部材は、前記保持部材内において前記供給流路に対して第1方向の内側に配設されたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記供給流路の入口側開口部は、前記第2の面側において前記配線基板に対し第1方向外側に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記配線基板は、前記第2の面への配置状態における前記第1の面側に基板端子部を有し、当該基板端子部と前記配線部材の他端側端子部とが電気的に接続されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−99910(P2013−99910A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246065(P2011−246065)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】