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液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置
説明

液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置

【課題】圧電体に発生するクラックが少なく、電極間の短絡や圧電素子の駆動不良の少ない安定した液体の噴射を行なう液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置を得ること。
【解決手段】流路形成基板10の壁15に形成された突出部16の厚みは、流路形成基板10の厚みより薄いので、突出部16は流路形成基板10と比較して変形し易い。また、振動板56は対向面101と対向面101に連続した突出部16の支持面160によって支えられているので、圧電体能動部320および振動板56は連続して緩やかに変形することができる。したがって、圧電体能動部320の端321の圧電体層70に応力が加わりにくく、圧電体層70のクラックの発生を抑えることができ、下電極60と上電極80との間の短絡や圧電素子300の駆動不良の少ない、安定したインクの吐出を行なうインクジェット式記録ヘッド1を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を備えた液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等に代表される結晶を含む圧電体は、自発分極、高誘電率、電気光学効果、圧電効果、焦電効果等を有しているため、圧電素子等の広範なデバイスに応用されている。圧電効果を利用する圧電アクチュエーターの場合、例えば、振動板に、圧電体に一対の電極が形成された圧電素子を設け、電極間に電圧を印加することにより、電圧に応じて圧電体を変形させる。
液体を噴射するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させ、圧力発生室の液体を加圧してノズル開口から液体を吐出させる液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置が知られている。
【0003】
例えば、圧力発生室は、液体の流路を形成する流路形成基板に形成される。圧力発生室は隔壁によって区画され、ノズル開口の配列方向に並設されている。圧電アクチュエーターは、圧力発生室毎に設けられる(例えば、特許文献1参照)。
圧電素子の電極に挟まれた部分は変形し、圧電体能動部として機能する。圧電体能動部は、圧力発生室の一部を構成する振動板上と流路形成基板上とにまたがって形成されたり、圧力発生室の一部を構成する振動板上のみに形成されたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−281032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミックである圧電体は、変形に伴う応力に対してクラックが生じやすい。応力の集中する圧力発生室と流路形成基板との境界の圧電体、あるいは圧電体能動部の端の圧電体でクラックが発生する。圧電体に発生したクラックは、電極間の短絡や圧電素子の駆動不良を引き起こし、安定した液体の噴射を行なう液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置を得るのが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
液体を噴射するノズル開口が形成されたノズルプレートと、圧電体が一対の電極によって挟まれた圧電体能動部を有する圧電素子が形成された振動板と、前記ノズルプレートと前記振動板とに挟まれた流路形成基板と、前記ノズルプレートと前記振動板と前記流路形成基板に形成された壁とで区画され、前記ノズル開口と連通する圧力発生室とを備えた液体噴射ヘッドであって、前記壁の前記振動板側には、前記振動板に対向する前記流路形成基板の対向面に連続した支持面を備え、前記支持面で前記振動板を支える突出部が形成され、前記突出部の厚みは、前記流路形成基板の厚みより薄く、前記圧電体能動部の端が前記流路形成基板上または前記突出部上に位置していることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【0008】
この適用例によれば、流路形成基板の壁に形成された突出部の厚みは、流路形成基板の厚みより薄いので、突出部は流路形成基板と比較して変形し易い。また、振動板は対向面と対向面に連続した突出部の支持面によって支えられているので、圧電体能動部および振動板は連続して緩やかに変形する。したがって、圧力発生室と流路形成基板との境界の圧電体、あるいは圧電体能動部の端の圧電体に応力が加わりにくく、圧電体のクラックの発生が抑えられ、電極間の短絡や圧電素子の駆動不良の少ない、安定した液体の噴射を行なう液体噴射ヘッドが得られる。
【0009】
[適用例2]
上記液体噴射ヘッドにおいて、前記圧力発生室は長手方向を有する形状で、前記突出部は、前記圧力発生室の長手方向の前記壁に形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
この適用例では、圧電体能動部および振動板は、圧力発生室の長手方向において変形が大きい。突出部は、長手方向の壁に形成されているので、圧力発生室と流路形成基板との境界の圧電体、あるいは圧電体能動部の端の圧電体に応力がより加わりにくく、圧電体のクラックの発生がより抑えられ、電極間の短絡や圧電素子の駆動不良のより少ない、より安定した液体の噴射を行なう液体噴射ヘッドが得られる。
【0010】
[適用例3]
上記液体噴射ヘッドにおいて、前記突出部は、前記突出部が形成された前記壁の両端で連続する壁のうち、どちらか一方の壁から他方の壁に至る途中まで形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
この適用例では、突出部の自由端が、突出方向とは別の方向にも存在するので、突出部がより変形し易い。したがって、圧力発生室と流路形成基板との境界の圧電体、あるいは圧電体能動部の端の圧電体に応力が加わりにくく、圧電体のクラックの発生が抑えられ、電極間の短絡や圧電素子の駆動不良の少ない、安定した液体の噴射を行なう液体噴射ヘッドが得られる。
【0011】
[適用例4]
上記に記載の液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【0012】
この適用例によれば、液体噴射装置は、安定した液体の噴射を行なう液体噴射ヘッドを備えている。したがって、安定した液体の噴射を行なう液体噴射装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態におけるインクジェット式記録装置の一例を示す概略斜視図。
【図2】インクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解部分斜視図。
【図3】(a)はインクジェット式記録ヘッドの部分平面図、(b)は(a)におけるA−A概略断面図。
【図4】圧電体層にクラックが発生する限界変形量を示す図。
【図5】第2実施形態における(a)はインクジェット式記録ヘッドの部分平面図、(b)は(a)におけるB−B概略断面図。
【図6】変形例における(a)はインクジェット式記録ヘッドの部分平面図、(b)は(a)におけるC−C概略断面図。
【図7】変形例におけるエージング後の破壊率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
(第1実施形態)
図1は、液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置1000の一例を示す概略斜視図である。インクジェット式記録装置1000は、液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド1を備えている。
図1において、インクジェット式記録装置1000は、記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを備えている。記録ヘッドユニット1Aおよび1Bには、インク供給手段を構成するカートリッジ2Aおよび2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。
【0015】
記録ヘッドユニット1Aおよび1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物およびカラーインク組成物を吐出する。そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動する。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0016】
記録ヘッドユニット1Aおよび1Bは、インクジェット式記録ヘッド1を記録シートSに対向する位置に備えている。図では、インクジェット式記録ヘッド1は、記録ヘッドユニット1Aおよび1Bの記録シートS側に位置しており、直接図示されていない。
【0017】
図2に、本実施形態にかかるインクジェット式記録ヘッド1を示す分解部分斜視図を示した。インクジェット式記録ヘッド1の形状は略直方体であり、図2は、インクジェット式記録ヘッド1の長手方向(図中の白抜き矢印方向)に直交する面で切断した分解部分斜視図である。
また、図3(a)には、インクジェット式記録ヘッド1の部分平面図を、(b)には、(a)におけるA−A部分断面図を示した。
【0018】
図2および図3において、インクジェット式記録ヘッド1は、流路形成基板10とノズルプレート20と保護基板30とコンプライアンス基板40と振動板56と駆動回路200とを備えている。
流路形成基板10とノズルプレート20と振動板56とは、流路形成基板10をノズルプレート20と振動板56とで挟むように積み重ねられ、振動板56上には保護基板30が配置され、保護基板30上には、コンプライアンス基板40が形成されている。
【0019】
流路形成基板10は、面方位(110)のシリコン単結晶板からなる。流路形成基板10には、異方性エッチングによって、複数の圧力発生室12が列をなすように、隔壁11によって区画されて形成されている。
より詳しくは、圧力発生室12は、ノズルプレート20と振動板56と流路形成基板10に形成された隔壁11を含む壁とで区画されている。
圧力発生室12のインクジェット式記録ヘッド1の長手方向と直交する幅方向の断面形状は台形状で、圧力発生室12は、インクジェット式記録ヘッド1の幅方向に長く形成されている。この方向を圧力発生室12の長手方向とする。図2および図3中に、圧力発生室12の長手方向を破線白抜き矢印で示した。
【0020】
また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、さらに、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12に設けられた液体供給路としてのインク供給路14を介して連通されている。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
【0021】
圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の長手方向の壁15には、突出部16が形成されている。
より詳しくは、壁15および隔壁11の振動板56側には、振動板56に対向する流路形成基板10の対向面101に連続した支持面160を備え、支持面160で振動板56を支える突出部16が形成され、突出部16の厚みは、流路形成基板10の厚みより薄く形成されている。突出部16は、ハーフエッチングによって形成できる。
また、突出部16は、圧力発生室12の長手方向の壁15の両端で連続する壁である隔壁11にも形成されている。
【0022】
ノズルプレート20には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に、外部と連通するノズル開口21が穿設されている。
なお、ノズルプレート20は、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板または不錆鋼などからなる。
流路形成基板10とノズルプレート20とは、マスク膜51を介して、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。マスク膜51は、窒化シリコン(SiN)等からなり、マスク膜51を介して流路形成基板10を異方性エッチングすることにより、流路形成基板10に圧力発生室12、連通部13、インク供給路14、突出部16等を形成する。
【0023】
流路形成基板10のノズルプレート20が固着された面と対向する面には、振動板56の一部を構成する弾性膜50が形成されている。弾性膜50は、熱酸化により形成された酸化膜からなる。
流路形成基板10の弾性膜50上には、酸化ジルコニウム膜からなる絶縁体膜55が形成されている。絶縁体膜55は、例えば、以下のようにして形成する。
まず、ジルコニウム膜を形成する。ジルコニウム膜は、スパッタリング法等により形成できる。ジルコニウム膜を500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。
本実施形態では、弾性膜50と絶縁体膜55とで、振動板56が構成されている。振動板56は、流路形成基板10の対向面101から連続して突出部16の支持面160上にも形成されている。
【0024】
また、絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.01〜0.10μmの下電極60と、厚さが例えば、約0.5〜5μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.03〜0.08μmの上電極80とからなる圧電素子300が形成されている。
下電極60は、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の金属や、ニッケル酸ランタン(LNO)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)等の金属酸化物からなる下電極膜を絶縁体膜55の表面に形成後、所定形状にパターニングすることにより得られる。下電極60の厚みは、電極材料の抵抗値によって異なる。
【0025】
次に、下電極60および絶縁体膜55上に、圧電材料からなる圧電体としての圧電体層70を形成する。圧電材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層膜を用いることができる。
圧電体層70の製造方法としては、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層膜を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いることができる。
なお、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal−Organic Decomposition)法等を用いてもよい。さらに、これらの液相法による圧電体層膜の製造方法に限定されず、スパッタリングなどの蒸着法を用いた圧電体層膜の製造方法であってもよい。
【0026】
ゾル−ゲル法を詳しく説明すると、まず金属有機化合物を含むゾル(溶液)を塗布する。次いで、塗布により得られる圧電体前駆体膜を、所定温度に加熱して一定時間乾燥させ、ゾルの溶媒を蒸発させることで圧電体前駆体膜を乾燥させる。さらに、大気雰囲気下において一定の温度で一定時間、圧電体前駆体膜を脱脂する。
なお、ここで言う脱脂とは、ゾル膜の有機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることである。
【0027】
このような塗布・乾燥・脱脂の工程を、所定回数、例えば、2回繰り返すことで、圧電体前駆体膜を所定厚に形成し、この圧電体前駆体膜を拡散炉等で加熱処理することによって結晶化させて圧電体膜を形成する。すなわち、圧電体前駆体膜を焼成することで結晶が成長して圧電体膜が形成される。
焼成温度は、650〜850℃程度であることが好ましく、例えば、約700℃で30分間、圧電体前駆体膜を焼成して圧電体膜を形成する。このような条件で形成した圧電体膜の結晶は(100)面に優先配向する。
上述した塗布・乾燥・脱脂・焼成の工程を、複数回繰り返すことにより、多層の圧電体膜からなる所定厚さの圧電体層膜を形成する。
【0028】
圧電体層膜の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛等の強誘電性圧電材料に、ニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマスまたはイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等を用いてもよい。また、鉛を圧電材料に含まない、いわゆる非鉛の圧電材料を用いてもよい。
【0029】
圧電体層膜を形成した後は、例えば、イリジウムからなる上電極膜を圧電体層膜の全面に形成する。上電極膜は、スパッタリング法、例えば、DCまたはRFスパッタリング法によって形成できる。
【0030】
圧電体層膜および上電極膜を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして、下電極60、圧電体層70および上電極80を備えた圧電素子300を形成する。
【0031】
一般的には、圧電素子300のいずれか一方の電極を共通電極とし、他方の電極および圧電体層70を圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、下電極60を圧電素子300の共通電極とし、上電極80を圧電素子300の個別電極としている。
そして、ここではパターニングされたいずれか一方の電極および圧電体層70から構成され、下電極60と上電極80とによって挟まれ、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320という。ここで、圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の圧電体能動部320の端321は、突出部16上に位置している。
【0032】
上電極80のインク供給路14側には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が設けられている。リード電極90は、一端部が上電極80に接続されている。一方、他端部は延設され、延設された先端部は、少なくともその先端部が、保護基板30に形成された貫通孔33の底部に露出している。リード電極90の他端部は、圧電素子300を駆動する駆動回路200と接続配線210を介して接続されている。
【0033】
圧電素子300が形成された振動板56上には、保護基板30が接着剤35によって接着されている。
保護基板30は、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態の圧電素子保持部32を有する。
なお、本実施形態では、各圧電素子保持部32は、各圧力発生室12の列に対応する領域に一体的に設けられているが、圧電素子300毎に独立して設けられていてもよい。
保護基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることがより好ましく、実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成する。
【0034】
また、保護基板30には、流路形成基板10の連通部13に対応する領域にリザーバー部31が設けられている。このリザーバー部31は、実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の列に沿って設けられており、流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。
【0035】
保護基板30上には、封止膜41および固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバー部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0036】
インクジェット式記録ヘッド1では、カートリッジ2Aおよび2Bからインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路200からの駆動信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極60と上電極80との間に電圧が印加される。電圧の印加によって、弾性膜50および圧電体層70がたわみ変形し、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0037】
駆動信号は、例えば、駆動電源信号等の駆動ICを駆動させるための駆動系信号のほか、シリアル信号(SI)等の各種制御系信号を含み、配線は、それぞれの信号が供給される複数の配線で構成される。
【0038】
図4は、圧電体層70にクラックが発生する限界変形量を示す図である。具体的には、上電極80の厚さを変えて圧電体層70に応力を加え、クラックの発生する限界変形量を調べた結果を表す図である。横軸が上電極の厚さ(nm)を示し、縦軸が限界変形量(nm)を示している。また、黒丸が第1実施形態の構造における結果を表し、白丸が従来の構造における結果を示している。
図4において、従来例では、上電極80の厚さを厚くして圧電体層70に応力を加えると、限界変形量も低下するが、第1実施形態の構造にすると、限界変形量が20%程度上昇することがわかった。
【0039】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)流路形成基板10の壁15に形成された突出部16の厚みは、流路形成基板10の厚みより薄いので、突出部16は流路形成基板10と比較して変形し易い。また、振動板56は対向面101と対向面101に連続した突出部16の支持面160によって支えられているので、圧電体能動部320および振動板56は連続して緩やかに変形することができる。したがって、圧電体能動部320の端321の圧電体層70に応力が加わりにくく、圧電体層70のクラックの発生を抑えることができ、下電極60と上電極80との間の短絡や圧電素子300の駆動不良の少ない、安定したインクの吐出を行なうインクジェット式記録ヘッド1を得ることができる。
【0040】
(2)圧電体能動部320および振動板56は、圧力発生室12の長手方向において変形が大きい。突出部16は、長手方向の壁15に形成されているので、圧電体能動部320の端321の圧電体層70に応力がより加わりにくく、圧電体層70のクラックの発生をより抑えることができ、下電極60と上電極80との間の短絡や圧電素子300の駆動不良のより少ない、より安定したインクの吐出を行なうインクジェット式記録ヘッド1を得ることができる。
【0041】
(3)インクジェット式記録装置1000は、安定したインクの吐出を行なうインクジェット式記録ヘッド1を備えている。したがって、安定したインクの吐出を行なうインクジェット式記録装置1000を得ることができる。
【0042】
(第2実施形態)
図5に、第2実施形態における(a)はインクジェット式記録ヘッド2の部分平面図、(b)は(a)におけるB−B概略断面図を示した。
第2実施形態では、下電極61を個別電極とし、上電極81を共通電極として圧電素子310を構成した。また、個別電極である下電極61は、圧力発生室12のインク供給路14とは反対側に引き出されている。
ここで、保護基板30の圧力発生室12のインク供給路14とは反対側は流路形成基板10と比較して短く、下電極61が流路形成基板10上に露出している。したがって、本実施形態では、保護基板30に貫通孔33は形成されていない。露出した下電極61は、圧電素子310を駆動する駆動回路200と接続配線210を介して接続されている。
また、圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の圧電体能動部330の端331は、流路形成基板10上に位置している。その他同一の部材等には、形状等が異なっていても同じ符号を付して説明も省略する。
【0043】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(4)流路形成基板10の壁15に形成された突出部16の厚みは、流路形成基板10の厚みより薄いので、突出部16は流路形成基板10と比較して変形し易い。また、振動板56は対向面101と対向面101に連続した突出部16の支持面160によって支えられているので、圧電体能動部330および振動板56は連続して緩やかに変形することができる。したがって、圧力発生室12と流路形成基板10との境界の圧電体層70に応力が加わりにくく、圧電体層70のクラックの発生を抑えることができ、下電極61と上電極81との間の短絡や圧電素子310の駆動不良の少ない、安定したインクの吐出を行なうインクジェット式記録ヘッド2を得ることができる。
【0044】
(変形例)
図6に、変形例における(a)はインクジェット式記録ヘッドの部分平面図、(b)は(a)におけるC−C概略断面図を示した。
変形例は、第1実施形態と突出部の形状が異なる。図6(a)の部分平面図において、変形例の突出部17は、突出部17が形成された壁15の両端で連続する隔壁11のうち、図では、紙面に対して上側の隔壁11から下側の隔壁11に至る途中までの約半分だけ形成されている。
第1および第2実施形態では、突出部16は、上側の隔壁11から下側の隔壁11に至るまで形成されている。
なお、突出部17は、紙面に対して下側の隔壁11から上側の隔壁11に至る途中までの約半分だけ形成されていてもよい。
【0045】
図7に、変形例における65Vで印加するエージング後の破壊率を示す図を示した。横軸は、圧力発生室12の幅L(図中白抜き矢印で示した方向の幅)に対する、突出部17と圧電体能動部320とが重なっていない領域の圧力発生室12の幅方向の長さL1の比率である。
図7において、突出部17と圧電体能動部320とが重なっていない領域の圧力発生室12の幅方向の長さが、65%程度を超えると破壊率が上昇し始める。横軸の100%は、突出部17が形成されていない構造を示している。
【0046】
このような変形例によれば、以下の効果がある。
(5)突出部17の自由端が、突出方向とは別の方向にも存在するので、突出部17がより変形し易い。したがって、圧電体能動部320の端321の圧電体層70に応力が加わりにくく、圧電体層70のクラックの発生を抑えることができ、下電極60と上電極80との間の短絡や圧電素子300の駆動不良の少ない、安定したインクの吐出を行なうインクジェット式記録ヘッド1を得ることができる。
【0047】
実施形態および変形例以外にも、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、各実施形態と変形例との組み合わせも可能である。第2実施形態の上電極81が共通電極で、下電極61が個別電極の構造のインクジェット式記録ヘッド2と変形例の突出部17を組み合わせて構成しても前述の効果がある。
【0048】
また、第1実施形態および変形例における圧電体能動部320の端321は、流路形成基板10上に位置していてもよいし、第2実施形態における圧電体能動部330の端331は、突出部16上に位置していてもよい。
【0049】
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用できる。
その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0050】
1,2…インクジェット式記録ヘッド、1A,1B…記録ヘッドユニット、2A,2B…カートリッジ、3…キャリッジ、4…装置本体、5…キャリッジ軸、6…駆動モーター、7…タイミングベルト、8…プラテン、10…流路形成基板、11…隔壁、12…圧力発生室、13…連通部、14…インク供給路、15…壁、16,17…突出部、20…ノズルプレート、21…ノズル開口、30…保護基板、31…リザーバー部、32…圧電素子保持部、33…貫通孔、35…接着剤、40…コンプライアンス基板、41…封止膜、42…固定板、43…開口部、50…弾性膜、51…マスク膜、55…絶縁体膜、56…振動板、60,61…下電極、70…圧電体層、80,81…上電極、90…リード電極、100…マニホールド、101…対向面、110,120…開口部、111,121…開口、112,122…側面、130…マニホールド、160…支持面、200…駆動回路、210…接続配線、300,310…圧電素子、320,330…圧電体能動部、321,331…端、1000…インクジェット式記録装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口が形成されたノズルプレートと、圧電体が一対の電極によって挟まれた圧電体能動部を有する圧電素子が形成された振動板と、前記ノズルプレートと前記振動板とに挟まれた流路形成基板と、前記ノズルプレートと前記振動板と前記流路形成基板に形成された壁とで区画され、前記ノズル開口と連通する圧力発生室とを備えた液体噴射ヘッドであって、前記壁の前記振動板側には、前記振動板に対向する前記流路形成基板の対向面に連続した支持面を備え、
前記支持面で前記振動板を支える突出部が形成され、前記突出部の厚みは、前記流路形成基板の厚みより薄く、前記圧電体能動部の端が前記流路形成基板上または前記突出部上に位置している
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記圧力発生室は長手方向を有する形状で、前記突出部は、前記圧力発生室の長手方向の前記壁に形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記突出部は、前記突出部が形成された前記壁の両端で連続する壁のうち、どちらか一方の壁から他方の壁に至る途中まで形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを備えた
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−206357(P2012−206357A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73552(P2011−73552)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】