説明

液体噴射ヘッドのメンテナンス装置、液体噴射装置およびプリンター

【課題】駆動源からの駆動力を適切に切り替えて吸引ポンプ、ワイパーを駆動可能な小型でコンパクトな切替機構を備えた液体噴射ヘッドのメンテナンス装置を提案すること。
【解決手段】メンテナンス装置40は、キャップ64(1)〜65(4)とワイパー75(1)〜75(4)と、キャップ64(1)〜65(4)から廃インクを吸引する吸引ポンプ94と、キャップ64(1)〜65(4)をキャップ移動方向Vに移動させるキャップ駆動伝達機構80と、ワイパーを移動させると共に吸引ポンプ94を駆動するワイパー・ポンプ駆動伝達機構90と、キャップの移動位置に応じて、吸引ポンプ94の駆動もしくはワイパーの移動にワイパー・ポンプ駆動伝達機構90の駆動を切り替える駆動切替機構100とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター等の液体噴射装置に搭載された液体噴射ヘッドのノズル詰まり防止、異物付着防止などのメンテナンスを行う液体噴射ヘッドのメンテナンス装置、および、当該メンテナンス装置を備えたプリンター等の液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液滴噴射ヘッドのノズルから液滴を噴射して、液体の分注、塗布、印刷等を行う。ノズルの目詰まり等を防止するために、液体噴射装置には、液滴噴射ヘッドのメンテナンス装置が備わっている。
【0003】
液体噴射装置として、インクジェットプリンターが知られている。インクジェットプリンターには、液体噴射ヘッドであるインクジェットヘッドのメンテナンス装置が備わっている。メンテナンス装置は、インクジェットヘッドのノズル面を常に良好な状態に維持するために、待機時および印刷実行中の合間に、インクジェットヘッドのメンテナンス動作を行う。メンテナンス装置のメンテナンス動作には、公知のように、ノズル面のキャッピング、キャップあるいはインクノズルからのインク吸引、ノズル面のワイピング等がある。
【0004】
キャッピングは、印刷待機状態のインクジェットヘッドのノズル面にキャップを被せて、当該ノズル面を封止する動作である。ノズル面に設けられているインクノズル(液体噴射ノズル)のインクが乾燥して、ノズル詰まり等が発生することを防止できる。インク吸引は、インクジェットヘッドのノズル面にキャップを被せた状態で吸引ポンプを駆動して、ノズル内のインクあるいはキャップ内のインクを吸引して排出する動作である。ワイピングは、インクジェットヘッドのノズル面に付着したインク(液体)、あるいは、紙粉、埃等の異物を、ワイパーによって払拭して除去する動作である。
【0005】
このようなメンテナンス装置は、特許文献1〜5に開示されている。特許文献3、4に開示のメンテナンス装置は、複数のノズル列に対して選択ワイピングおよび選択吸引動作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−276304号公報
【特許文献2】特開2011−104979号公報
【特許文献3】特開2001−30507号公報
【特許文献4】特開2009−45898号公報
【特許文献5】特許第3155871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、複数のヘッドユニットから構成される液体噴射ヘッドが知られている。例えば、複数のヘッドユニットからなるライン型のインクジェットヘッドが知られている。この構成のライン型のインクジェットヘッドでは、複数のヘッドユニットのノズル列によって、印刷媒体の印刷幅を包含する長さのノズル列が形成される。
【0008】
ライン型のインクジェットヘッドのメンテナンス装置は、インクジェットヘッドによる印刷位置から外れた位置に配置される場合がある。この場合には、インクジェットヘッドを印刷位置からメンテナンス装置に対峙する位置に移動し、この位置に停止させる。停止しているインクジェットヘッドに対して、メンテナンス装置の側の各部を動作させて、ノズルキャッピング、インク吸引、ワイピング等のメンテナンス動作を施す。
【0009】
メンテナンス装置は、停止状態にあるインクジェットヘッドに対して複数のメンテナンス動作を行う必要がある。メンテナンス動作を行わせるための駆動機構が複雑化し、装置寸法も増加しやすい。このため、メンテナンス装置の駆動機構の小型・コンパクト化に対する要望が強い。
【0010】
このためには、インク吸引ポンプの駆動、ワイパーの移動などを、少ない数のモーターによって行うように構成することが望ましい。例えば、円筒カム、間欠歯車などの動力伝達用の部品を用いて、一の動力源からの動力伝達経路を、円筒カムあるいは間欠歯車の回転角度位置に応じて切り替える。しかしながら、円筒カム、間欠歯車を用いた動力伝達機構は構成が複雑であり、動力の切り替えタイミングを変更する場合等において設定変更を簡単にできない。
【0011】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、停止状態にある印刷ヘッドに対する複数のメンテナンス動作を小型でコンパクトな機構によって実現できる、液体噴射ヘッドのメンテナンス装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置は、
液体噴射ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、
前記ノズル面をワイピングするワイパーと、
前記キャップからインクを吸引する吸引ポンプと、
前記キャップを前記ノズル面に対して移動させるキャップ駆動伝達機構と、
前記ワイパーを移動させると共に前記吸引ポンプを駆動するワイパー・ポンプ駆動伝達機構と、
前記キャップの移動位置に応じて、前記吸引ポンプの駆動もしくは前記ワイパーの移動に前記ワイパー・ポンプ駆動伝達機構の駆動を切り替える駆動切替機構と、
を有していることを特徴とする。
【0013】
インク吸引ポンプの駆動は、キャップをノズル面に被せた後に行えば良い。ワイパーの駆動は、キャップがノズル面から離れた後に行えば良い。したがって、キャップの移動位置に基づき、駆動切替機構は、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構の切り替えを適切に行うことができる。円筒カム、間欠歯車などを用いることなく、直線往復移動するキャップの移動位置に基づき、吸引ポンプおよびワイパーの一方を駆動可能状態に切り替えることができる。吸引動作およびワイピング動作の開始時点、終了時点等の管理、変更も簡単に行うことができる。
【0014】
ここで、前記駆動切替機構は、遊星歯車減速機を用いて次のように構成することができる。すなわち、前記駆動切替機構は、駆動軸を回転させる駆動モーターと、内歯車もしくは遊星キャリアを有し、前記駆動モーターの前記駆動軸の回転を減速して前記内歯車もしくは前記遊星キャリアを回転させる遊星歯車減速機と、前記キャップの移動位置に応じて、前記遊星歯車減速機の前記内歯車もしくは前記遊星キャリアの回転を停止するラッチ機構と、を備える。
【0015】
本発明のメンテナンス装置は、ワイパーのワイピング圧を一定に保持できるようにするために、次の構成のワイパーの支持構造を備えている。
【0016】
すなわち、メンテナンス装置は、
前記ワイパーを支持して移動するワイパーフレームと、
前記ワイパーフレームを支持する装置フレームと、
前記装置フレームに配設されて、前記ワイパーフレームを支持する弾性部材と、
前記キャップを支持し、前記キャップ駆動伝達機構で移動されるキャップ支持部材と、
前記ワイパーフレームに配設され、前記キャップ支持部材と係合して前記ワイパーフレームを前記キャップ支持部材と移動させる係合部と、
を有する。
【0017】
ワイパーフレームは、弾性部材によって移動可能な状態で装置フレームに支持されている。したがって、ワイパーフレームは、弾性部材の弾性力によってフローティング状態で装置フレームに取り付けられている。
【0018】
装置フレームに対してフローティング状態のワイパーフレームを、液体噴射ヘッドのノズル面、あるいは、液体噴射ヘッドが搭載されているキャリッジの面に押し付ける。液体噴射ヘッドのノズル面に対して、ワイパーフレームが傾いていた場合であっても、ワイパーフレームは、ノズル面に平行な姿勢に修正される。よって、ワイパーフレームは、ノズル面に平行な状態で当該ノズル面に押し付けられる。
【0019】
この結果、ワイパーフレームに搭載されているワイパーとノズル面の間が所定の間隔に保持される。ワイパーをノズル面に押し付けてワイピングを行う際に、ワイパーの先端縁部はノズル面に対して所定の力で押し付けられる。ワイパーのワイピング圧が安定し、ワイパー先端縁部の各部位でのワイピング状態の変動が少なくなり、ワイピング性能が高まる。
【0020】
ライン型の液体噴射ヘッドのように、液体噴射ヘッドが複数のヘッドユニットから構成されている場合がある。この場合には、複数のヘッドユニットのノズル面のそれぞれをワイピングする複数のワイパーがワイパーフレームに搭載される。ワイパーフレームは、ワイパー移動方向、すなわち、ノズル面のノズル列の方向に長い形状とされる。ワイパーフレームがワイパー移動方向に傾いていると、ワイピング時にワイパーとノズル面の距離が変化する。一定のワイピング圧力でノズル面をワイピングできない。このような場合に、装置フレームに対してフローティング状態のワイパーフレームを用いることが、有効である。
【0021】
本発明のメンテナンス装置は、キャップ、ワイパーの移動を利用して、ノズル面をワイピングする複数のワイパーを選択できるように次のように構成されている。
【0022】
本発明のメンテナンス装置は、
前記ワイパーが移動する方向の第1位置に配設され、前記ワイパーフレームが前記ノズル面から離れる方向に移動したときに前記ワイパーと係合して前記ワイパーを第1の状態から前記第1の状態と異なる第2の状態に切り替える第1ワイパー係合部材と、
前記ワイパーが移動する方向の前記第1位置とは異なる第2位置に配設され、前記ノズル面から離れる方向に移動したときに前記ワイパーと係合して前記ワイパーを第1の状態から前記第1の状態と異なる第2の状態に切り替える第2ワイパー係合部材と、
前記ワイパーが移動する方向の前記第1位置及び前記第2位置とは異なる第3位置に配設され、前記ワイパーが前記第3位置に移動したときに、前記ワイパーおよび第2ワイパーに係合して、これらを前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える第3ワイパー係合部材と、
を有する。
【0023】
ワイパーが第1位置の状態で、ワイパーフレームがノズル面から離れる方向に移動すると、ワイパーが第1ワイパー係合部材に係合して、第1の状態(例えば、倒れ状態)から第2の状態(例えば、起立状態)に切り替わる。ワイパーが第2位置の状態で、ワイパーフレームがノズル面から離れる方向に移動すると、第2ワイパーが第1の状態から第2の状態に切り替わる。したがって、双方のワイパーの状態を選択的に切り替えて、異なる位置のノズル面を選択的にワイピングすることができる。すなわち、ノズル面をワイピングするワイパーを選択できる。また、第2状態の第1、第2ワイパーを第3位置に移動させることで、これらを第1の状態(例えば、倒れ状態)に戻すことができる。
【0024】
次に、本発明のメンテナンス装置は、前記キャップでキャッピングする前記ノズル面と異なる位置の前記ノズル面をキャッピングする第2キャップを有し、前記キャップ支持部材は前記キャップおよび前記第2キャップを支持する。この場合には、前記キャップ支持部材は、前記キャップを前記ノズル面に押圧する第1キャップ押圧部材と、前記第2キャップを前記ノズル面に押圧する第2キャップ押圧部材と、を支持することが望ましい。この構成は、複数のキャップを狭い間隔で密に配置する場合に有利である。
【0025】
本発明のメンテナンス装置は、キャップ、ワイパーの移動を利用して、ノズル面をキャッピングする複数のキャップからのインクの吸引を選択して行うことができるように、次のように構成されている。
【0026】
本発明のメンテナンス装置は、
前記キャップで吸引されたインクを移動させる第1インク吸引経路と、
前記第2キャップで吸引されたインクを移動させる第2インク吸引経路と、
前記第1インク吸引経路を開閉する第1バルブと、
前記第1バルブと前記ワイパーの移動方向の異なる位置に配設されて前記第2インク吸引経路を開閉する第2バルブと、
前記ワイパーの移動方向に移動し、前記第1バルブと対向した位置もしくは前記第2バルブと対向した位置に移動して、前記第1バルブもしくは前記第2バルブを開閉するバルブセレクターと、
を有する。
【0027】
選択吸引動作を行うバルブの選択動作を、キャップの移動と、ワイパーの移動とによって実現している。したがって、円筒カム、間欠歯車あるいは揺動部材などの選択切替用の部品を用いることなく、小型でコンパクトな機構により、選択吸引動作を実現できる。
【0028】
次に、本発明のメンテナンス装置の前記ワイパーは凸曲面を有し、また、前記ワイパーの前記凸曲面と接触する凹曲面を有し、前記ワイパーの前記凸曲面をクリーニングするワイパークリーナーを備える。
【0029】
前記第2ワイパーを備えている場合には、当該第2ワイパーは凸曲面を有し、前記ワイパークリーナーは、前記第2ワイパーの前記凸曲面と接触する凹曲面を有している。
【0030】
また、本発明のメンテナンス装置は、前記ワイパーフレームに配設され、前記ワイパークリーナーを支持するワイパークリーナー弾性支持部材を有する。
【0031】
本発明のメンテナンス装置は、ワイピング終了時におけるワイパーからのインクの飛散を防止している。このために、本発明のメンテンナンス装置は、前記ワイパー・ポンプ駆動伝達機構を駆動させて前記ワイパーで前記ノズル面をワイピングさせた後、前記キャップ駆動伝達機構を駆動させて前記ワイパーを前記ノズル面から離間させる制御部を有する。
【0032】
ノズル面のワイピングにおいては、ワイパーがノズル面に押し付けられる。この状態のワイパーが、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構によって、ノズル面に平行に移動して、ノズル面のワイピングを行う。ワイパーはノズル面に押し付けられており、弾性変形した状態にある。キャップ駆動伝達機構によって、この状態のワイパーは、ワイピング終了後の時点でノズル面から離れる方向に移動する。ワイパーの移動速度を適切な速度にしておくことで、ノズル面に押し付けられて弾性変形していたワイパーの先端縁部分が勢いよく元の形状に弾性復帰することを回避できる。ワイパーの先端縁部分にはノズル面から拭き取ったインク等の異物が付着している。この部分を緩やかに元の形状に戻すので、拭き取ったインク等の異物が周囲に飛散することを防止できる。
【0033】
ワイパーをノズル面から離す場合には、ワイピング終了後のワイパーを、ノズル面から斜めの方向に離すことが望ましい。ワイパーがノズル面に押し付けられた状態におけるワイパーの先端縁部の撓み方向に応じて、ワイパーがノズル面から離れる方向を適切に設定する。これにより、ワイパーがノズル面から離れる際に、インク液等がなるべく飛散しないようにすることができる。
【0034】
ノズル面に押し付けられているワイパーの先端縁部は、ワイピング終了時点では、一般にワイピング方向とは逆の方向に撓んでいる。この場合、ワイパーをノズル面から離す方向を、ノズル面に対して垂直な方向に対してワイピング方向とは逆の側に傾斜した方向に設定する。ノズル面からワイパーを離す際に、ノズル面に対するワイパー先端縁部の当接位置が移動せずに、当該先端縁部が元の形状に弾性復帰する。よって、ノズル面に押し付けられているワイパーの先端縁部に溜まっているインク等の異物が、ワイパーをノズル面から離す際に飛散することを防止できる。
【0035】
次に、本発明の液体噴射装置は、
インクを吐出するノズルを配設するノズル面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ、及び前記ノズル面をワイピングするワイパーを有するメンテナンス部と、
前記キャップからインクを吸引する吸引ポンプと、
前記キャップを前記ノズル面に対して移動させるキャップ駆動伝達機構と、
前記ワイパーを移動させると共に前記吸引ポンプを駆動するワイパー・ポンプ駆動伝達機構と、
前記キャップの移動位置に応じて、前記吸引ポンプの駆動もしくは前記ワイパーの移動に前記ワイパー・ポンプ駆動伝達機構の駆動を切り替える駆動切替機構と、
を備える。
【0036】
また、本発明のプリンターは、
インクを吐出するノズルを配設するノズル面を有し、インクを記録媒体に吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ、及び前記ノズル面をワイピングするワイパーを有するメンテナンス部と、
前記キャップからインクを吸引する吸引ポンプと、
前記キャップを前記ノズル面に対して移動させるキャップ駆動伝達機構と、
前記ワイパーを移動させると共に前記吸引ポンプを駆動するワイパー・ポンプ駆動伝達機構と、
前記キャップの移動位置に応じて、前記吸引ポンプの駆動もしくは前記ワイパーの移動に前記ワイパー・ポンプ駆動伝達機構の駆動を切り替える駆動切替機構と、
前記記録媒体を搬送する搬送経路と、
前記記録媒体を前記搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
を備える。
【0037】
なお、本発明において「液体噴射装置」とは、印刷ヘッド等の液体噴射ヘッドから記録紙等の被噴射材にインクを噴射して記録紙等への記録を実行するインクジェット式のプリンター、複写機及びファクシミリ等に限らず、インク以外の他の液体を噴射乃至吐出する液体噴射装置も含み、微小量の液滴を噴射乃至吐出する各種の液体消費装置も含む意味で用いている。
【0038】
また、「液体」とは、液体噴射装置から噴射乃至吐出することができるような材料であれば良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような粒状体を含む。また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子等の固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたもの等も含まれる。液体の代表例としては、インクや液晶等が挙げられる。インクとは、一般的な水性インクや油性インクの他、ジェルインクやホットメルトインク等の各種液体組成物も包含するものとする。
【0039】
液体噴射装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられる試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であっても良い。さらに時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)等を形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板等をエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】プリンターの全体構成を示す縦断面図である。
【図2A】インクジェットヘッドおよびキャリッジの説明図である。
【図2B】インクジェットヘッドおよびキャリッジの説明図である。
【図3】キャリッジの移動経路を示す説明図である。
【図4】インクジェットヘッドのヘッドユニットの配列状態を示す説明図である。
【図5A】メンテナンス装置の斜視図である。
【図5B】メンテナンス装置の側面図である。
【図6】メンテナンス装置の主要部分の分解斜視図である。
【図7A】キャップ駆動伝達機構を示す分解斜視図である
【図7B】キャップ駆動伝達機構を示す斜視図である。
【図8A】ワイパー・ポンプ駆動伝達機構を示す斜視図である。
【図8B】ワイパー・ポンプ駆動伝達機構を示す斜視図である。
【図8C】ワイパー・ポンプ駆動伝達機構を示す斜視図である。
【図8D】ワイパー・ポンプ駆動伝達機構のスケルトン図である。
【図8E】駆動切替機構を示す説明図である。
【図8F】駆動切替機構を示す説明図である。
【図9A】ワイパー・ポンプ駆動伝達機構を示す斜視図である。
【図9B】ワイパー・ポンプ駆動伝達機構を示す斜視図である。
【図9C】ワイパー・ポンプ駆動伝達機構を示す斜視図である。
【図10】ワイパー・ポンプ駆動伝達機構を示す斜視図である。
【図11A】ワイパーユニットを示す斜視図である。
【図11B】ワイパーユニットの部分拡大斜視図である。
【図11C】装置フレーム、キャップユニット、ワイパーフレームの説明図である。
【図12A】バルブ選択機構を示す説明図である。
【図12B】バルブ選択機構の説明図である。
【図12C】バルブ選択機構の説明図である。
【図12D】バルブ選択機構の説明図である。
【図13】ワイパーホルダーユニットを示す部分斜視図である。
【図14A】ワイパー選択機構の斜視図である。
【図14B】ワイパー選択機構の側面図である。
【図15A】ワイパー起こし部材の動作を示す説明図である。
【図15B】ワイパー起こし部材の動作を示す説明図である。
【図15C】ワイパー起こし部材の動作を示す説明図である。
【図16A】ワイパー倒し部材の動作を示す説明図である。
【図16B】ワイパー倒し部材の動作を示す説明図である。
【図16C】ワイパー倒し部材の動作を示す説明図である。
【図17】ワイパークリーナーユニットを示す部分斜視図である。
【図18A】キャップ斜め剥がし機構の説明図である。
【図18B】キャップ斜め剥がし機構の説明図である。
【図18C】キャップ斜め剥がし機構の説明図である。
【図19】キャップ斜め剥がし機構の説明図である。
【図20】キャップユニット、キャップを示す斜視図である。
【図21】移動部材のスライド機構の斜視図である。
【図22A】斜め剥がし機構の動作を示す説明図である。
【図22B】斜め剥がし機構の動作を示す説明図である。
【図22C】斜め剥がし機構の動作を示す説明図である。
【図22D】斜め剥がし機構の動作を示す説明図である。
【図22E】斜め剥がし機構の動作を示す説明図である。
【図23】プリンターの制御系の概略ブロック図である。
【図24】キャップ移動方向のキャップポジションの一覧を示す説明図である。
【図25A】ワイパー移動方向のワイパーポジションを示す説明図である。
【図25B】ワイパー移動方向のワイパーポジションを示す説明図である。
【図25C】ワイパー移動方向のワイパーポジションの一覧を示す説明図である。
【図26A】ワイパー起こし位置を示す説明図である。
【図26B】ワイパー起こし位置の一覧を示す説明図である。
【図27A】ワイピング開始位置を示す説明図である。
【図27B】ワイピング開始位置を示す説明図である。
【図27C】ワイピング開始位置の一覧を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0042】
[インクジェットプリンターの全体構成]
図1は本実施の形態に係るインクジェットプリンターの全体構成を示す縦断面図である。インクジェットプリンター1(以下、単に「プリンター1」という場合もある。)はロール紙装填部2を備えており、ロール紙装填部2には、長尺状の記録紙Pがロール状に巻き取られた構成のロール紙3が装填される。プリンター1の内部には、ロール紙装填部2からプリンター前面に形成した排紙口4に至る記録紙搬送経路5が形成されている。
【0043】
搬送経路5には、その記録紙搬送方向の上流側から下流側に向けて、繰り出しローラー6、用紙ガイド7、搬送ローラー対8、および、プラテン9が配置されている。また、ヘッドキャリッジ10に搭載されたインクジェットヘッド11が配置されている。ヘッドキャリッジ10は、インクジェットヘッド11のノズル面11aを、プラテン9に対峙した記録紙搬送経路5上の印刷位置、および、記録紙搬送経路5から外れたホームポジションに移動させる。ホームポジションには、後述のメンテナンス装置40が配置されている。
【0044】
搬送ローラー対8は、駆動ローラー8aと従動ローラー8bを備えている。駆動ローラー8aは紙送りモーター12によって正逆方向に回転駆動される。インクジェットヘッド11には、インクカートリッジ装着部13に装着されたインクカートリッジ14からインクが供給される。本例では、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクがインクジェットヘッド11に供給される。インクジェットヘッド11は、ライン型のインクジェットヘッドである。
【0045】
ロール紙装填部2に装填されたロール紙3から繰り出される記録紙Pは、記録紙搬送経路5に沿って搬送される。プラテン9上を搬送される記録紙Pに、インクジェットヘッド11によって印刷が施される。印刷後の記録紙Pは、プリンター前面の排紙口4から前方に排出される。
【0046】
図2Aはプリンター1を上方から見た場合のインクジェットヘッド11の印刷位置とホームポジションの位置関係を示す説明図であり、図2Bはプリンター1を前方から見た場合の印刷位置とホームポジションの位置関係を示す説明図である。
【0047】
図2A、図2Bも参照して説明すると、インクジェットヘッド11は、複数のインクジェットヘッドからなるライン型のインクジェットヘッドである。本例では、第1ヘッド11Aおよび第2ヘッド11Bを備えている。第1および第2ヘッド11A、11Bのそれぞれのインクノズル列は、記録紙Pの印刷領域の幅方向(記録紙Pの搬送方向に直交する方向の幅)をカバーできる長さとなっている。
【0048】
ライン型の第1および第2ヘッド11A、11Bは、それらのノズル面11aを下向きにして、キャリッジ10に搭載されている。キャリッジ10を水平にすると、ノズル面11aは下向きで水平になる。各ヘッド11A、11Bのノズル面11aとプラテン9の表面との間には、予め設定した寸法のプラテンギャップGが形成される。
【0049】
プラテン9の側方には、メンテナンス装置40が配置されている。キャリッジ10は、インクジェットヘッド11を、プラテン9に対峙する印刷位置Aおよび、記録紙搬送経路5から完全に外れたホームポジションB(図2A、図2Bにおいて1点鎖線で示す位置)に移動させる。ホームポジションBでは、インクジェットヘッド11のノズル面11aはメンテナンス装置40に対峙する。インクジェットヘッド11は、印刷位置Aでは、その長手方向を記録紙Pの搬送方向と直交する方向に向けた横向きの姿勢になっている。この状態では、第1および第2ヘッド11A、11Bに設けられた各色のインクノズル列が、記録紙Pの印刷領域の幅方向をカバーしている。ホームポジションBでは、インクジェットヘッド11が印刷位置Aでの姿勢から90度回転した方向を向いた姿勢になる。すなわち、インクジェットヘッド11は、その長手方向を搬送方向と一致させた縦向きの姿勢になる。
【0050】
図3はインクジェットヘッド11が搭載されているキャリッジ10の移動軌跡を示す説明図である。プリンター1は、インクジェットヘッド11を印刷位置Aに位置決めして停止させ、この状態で記録紙Pを所定ピッチずつ搬送する毎にインクの吐出動作を行うことにより、記録紙Pへの印刷を行う。プリンター1は、印刷が終了すると、インクジェットヘッド11をプラテン9の上から外れたホームポジションBに退避させ、ホームポジションBで待機させる。
【0051】
インクジェットヘッド11の待機中において、メンテナンス装置40は、インクジェットヘッド11のインクノズルの目詰まりを防止あるいは解消するためのメンテナンス動作を行う。メンテナンス装置40は、その上端に設けられているキャップを上昇させて、ノズル面11aをキャッピングする。必要に応じて、インクジェットヘッド11の各インクノズルからメンテナンス装置40のキャップ内に、インクの吐出動作(フラッシング)が行われる。また、メンテナンス装置40は、キャップからインクを吸引する動作を行う。メンテナンス装置40には、ノズル面11aをワイピングするためのワイパーが備わっている。印刷を再開するときには、キャップやワイパーが下側に退避した後に、インクジェットヘッド11は印刷位置Aに移動する。
【0052】
図4はインクジェットヘッド11のノズル面11aを示す説明図である。この図は、プリンター1の上方からノズル面11aを透視して見た場合のノズル配列状態を示すものである。第1ヘッド11Aには、ブラックおよびシアンのインクノズル列を備えた4個のヘッドユニット1−1〜1−4が含まれている。4個のヘッドユニット1−1〜1−4は、インクノズル列の方向に沿って、2個ずつ2列に配置されている。各列の間では、ヘッドユニット1−1〜1−4は千鳥状に配置されている。
【0053】
同様に、第2ヘッド11Bには、イエローおよびマゼンタのインクノズル列を備えた4個のヘッドユニット2−1〜2−4が含まれている。4個のヘッドユニット2−1〜2−4は、インクノズル列の方向に沿って、2個ずつ2列に配置されている。各列の間では、ヘッドユニット2−1〜2−4は千鳥状に配置されている。これら8個のヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4の配列状態に対応するように、後述のメンテナンス装置40のキャップ配列状態が設定されている。
【0054】
ここで、ヘッドユニット1−1〜1−4のノズル面1−1a〜1−4a、および、ヘッドユニット2−1〜2−4のノズル面2−1a〜2−4aは、それぞれ、ヘッドカバー面10bで囲まれている。ヘッドカバー面10bは、キャリッジ10の下面部分10aで囲まれている。インクジェットヘッド11のノズル面11aは、これらのノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aの総称である。
【0055】
[メンテナンス装置の全体構成]
図5Aはメンテナンス装置40を取り出して示す斜視図であり、図5Bはその側面図である。図6はメンテナンス装置40の主要部分を示す分解斜視図である。これらの図を参照してメンテナンス装置40の全体構成を説明する。以下の説明においては、ノズル面1−1a〜1−4aをキャッピングするキャップの移動方向をキャップ移動方向Vと呼び、キャップ移動方向Vにおいて、キャップがノズル面に接近する方向をキャッピング方向V1、逆にキャップがノズル面から離れる方向をキャッピング解除方向V2とそれぞれ呼ぶ。また、ノズル面1−a〜1−4aをワイピングするワイパーの移動方向をワイパー移動方向Hと呼び、ワイパー移動方向Hにおいて、ワイパーがノズル面をワイピングする際の移動方向をワイピング方向H2(ワイパー後退方向H2)、このワイピング方向とは逆の方向をH1(ワイパー前進方向H1)と呼ぶ。
【0056】
メンテナンス装置40は全体として直方体形状をしており、装置フレーム50と、キャップユニット60と、ワイパーユニット70と、インク吸引ポンプ94と、キャップ駆動伝達機構80と、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90を備えている。装置フレーム50に、キャップユニット60、インク吸引ポンプ94、キャップ駆動伝達機構80およびワイパー・ポンプ駆動伝達機構90が組み付けられている。
【0057】
装置フレーム50は、矩形の底板51と、この底板51の両側の長辺縁および両側の短辺縁からそれぞれ起立している側板52、53および端板54、55を備えている。装置フレーム50の底板51には、2本のガイドポスト56a、56bが垂直に取り付けられている。キャップユニット60はガイドポスト56a、56bに沿って移動可能である。キャップ駆動伝達機構80は、キャップユニット60をガイドポスト56a、56bに沿った方向、すなわち、キャップ移動方向V(キャッピング方向V1およびキャッピング解除方向V2)に移動させる。
【0058】
キャップユニット60には、ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4に対応する個数(8個)のキャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)が搭載されている。キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)によって、ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4a(図4参照)がキャッピングされる。
【0059】
インク吸引ポンプ94は、各キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)からインクを吸引する。したがって、キャッピング状態のヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のインクノズルからインクが吸引される。吸引されたインクは、例えば、インクカートリッジ14に設けられている廃インクタンク(図示せず)に回収される。
【0060】
ワイパーユニット70には、ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aをワイピングする4枚のワイパー75(1)〜75(4)が搭載されている。ワイパー75(1)は、ヘッドユニット1−1、1−3のノズル面1−1a、1−3aをワイピングし、ワイパー75(2)はヘッドユニット1−2、1−4のノズル面1−2a、1−4aをワイピングし、ワイパー75(3)はヘッドユニット2−1、2−3のノズル面2−1a、2−3aをワイピングし、ワイパー75(4)はヘッドユニット2−2、2−4のノズル面2−2a、2−4aをワイピングする。これらのワイパー75(1)〜75(4)は、メンテナンス装置40の長辺方向に沿った方向であるワイパー移動方向Hに往復移動する。ワイパー移動方向Hは、ホームポジションBに位置するインクジェットヘッド11のインクノズル列に平行な方向である。
【0061】
ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90は、ワイパーユニット70およびインク吸引ポンプ94を駆動するための駆動モーター91を備えている。ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90には駆動切替機構100(図8A参照)が備わっている。駆動切替機構100は、キャップユニット60の移動位置、したがって、キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)の移動位置に応じて、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90を、ワイパーを移動可能な状態および吸引ポンプを駆動可能な状態のいずれか一方に切り替える。
【0062】
[メンテナンス装置の各部の構成]
次に、メンテナンス装置40の各部の構成を具体的に説明する。
【0063】
(キャップユニット60)
図5A、図5Bおよび図6を参照して説明すると、キャップユニット60は、キャップフレーム61と、キャップフレーム61に固定した第1、第2キャップベース62、63(キャップ支持部材)を備えている。第1キャップベース62には4個のキャップ64(1)〜64(4)が搭載されており、第2キャップベース63には4個のキャップ65(1)〜65(4)が搭載されている。必要に応じて、キャップ64(1)〜64(4)を「キャップ64」といい、キャップ65(1)〜65(4)を「キャップ65」という。
【0064】
キャップ64(1)〜64(4)は同一形状であり、各ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aを覆い隠すことのできる細長い長方形輪郭のリップ(キャップ開口縁)を備えている。キャップ64(1)、64(3)は、それらの長さ方向に沿って、一定の間隔で配列されている。キャップ64(2)、64(4)も、それらの長さ方向に沿って、一定の間隔で配列されている。一方のキャップ列を構成しているキャップ64(1)、64(3)と、他方のキャップ列を構成しているキャップ64(2)、64(4)とは、相互に、千鳥状に配置されている。キャップ64(1)〜64(4)のそれぞれは、一対のバネ部材62a(キャップ押圧部材)、例えば一対の圧縮コイルバネを介して、第1キャップベース62に支持されている(後述の図18A、図22A参照)。一対のバネ部材62aは、各キャップ64(1)〜64(4)における長さ方向の両側の端部と、第1キャップベース62の底板部分との間に配置されている。
【0065】
第2キャップベース63に搭載されているキャップ65(1)〜65(4)は、キャップ64(1)〜64(4)と同一の形状であり、これらと同一の配置形態で配置されている。キャップ65(1)〜65(4)のそれぞれは、一対のバネ部材63a(キャップ押圧部材)、例えば一対の圧縮コイルバネを介して、第2キャップベース63に支持されている。一対のバネ部材63aは、各キャップ65(1)〜65(4)における長さ方向の両側の端部に配置されている。
【0066】
キャップ64(1)〜64(4)は、図4に示すインクジェットヘッド11の第1ヘッド11Aのヘッドユニット1−1〜1−4のそれぞれをキャッピングする。キャップ65(1)〜65(4)は、図4に示す第2ヘッド11Bのヘッドユニット2−1〜2−4のそれぞれをキャッピングする。
【0067】
キャップユニット60には、後述のように、キャップ斜め剥がし機構160が付設されている(図18A〜図18C等参照)。キャップ斜め剥がし機構160は、各キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)をヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aのそれぞれにキャッピングする動作においては、そのリップ面(キャップ開口縁の端面)をノズル面と平行な姿勢に維持する。キャッピング状態を解除する動作においては、そのリップ面をノズル面に対して傾斜させる。
【0068】
(ワイパーユニット70)
図5A、図5B、図6を参照して説明すると、ワイパーユニット70は、矩形枠状のワイパーフレーム71を備えている。ワイパーフレーム71の短辺方向の両端には、一対のガイド軸72が、当該ワイパーフレーム71の長辺方向に平行に架け渡されている。一対のガイド軸72に沿ってスライド可能な状態で、ワイパーホルダーユニット73が配置されている。
【0069】
ワイパーユニット70における長辺方向の一方の端が、ワイパーホルダーユニット73のホームポジション73Aである。ワイパーホルダーユニット73は、ガイド軸72に沿って、ホームポジション73Aからワイパーユニット70の反対側の端までの間をスライド可能である。ワイパー移動方向Hは、ガイド軸72によって規定されるワイパーホルダーユニット73の移動方向である。
【0070】
ワイパーホルダーユニット73には、4個のワイパーホルダー74(1)〜74(4)が搭載されている。各ワイパーホルダー74(1)〜74(4)には、それぞれ1つずつワイパー75(1)〜75(4)が搭載されている。必要に応じて、ワイパーホルダー74(1)〜74(4)を「ワイパーホルダー74」といい、ワイパー75(1)〜75(4)を「ワイパー75」という。
【0071】
ワイパー75(1)は、図4に示す第1ヘッド11Aの外側の列の2個のヘッドユニット1−1、1−3のノズル面をワイピングする。ワイパー75(2)は残りの2個のヘッドユニット1−2、1−4のノズル面をワイピングする。同様に、ワイパー75(3)は図4に示す第2ヘッド11Bの内側の列の2個のヘッドユニット2−1、2−3をワイピングする。ワイパー75(4)は残りの2個のヘッドユニット2−2、2−4をワイピングする。
【0072】
(キャップ駆動伝達機構)
図7Aおよび図7Bは、キャップユニット60を移動させるためのキャップ駆動伝達機構80を示す図である。図7Aは装置フレーム50の側板52、53を省略した状態での分解斜視図であり、図7Bは装置フレーム50にキャップユニット60を組み付けた状態を示す斜視図である。
【0073】
キャップ駆動伝達機構80は装置フレーム50に取り付けた一対のスパイラルカム81a、81bを備えている。スパイラルカム81a、81bは、各ガイドポスト56a、56bの隣接位置に配置されている。また、スパイラルカム81a、81bは、底板51に垂直な中心軸線回りに回転自在の状態で、当該底板51に支持されている。スパイラルカム81a、81bの外周面には、その中心軸線の方向に沿って、スパイラル状の溝が形成されている。スパイラル状の溝における上向きの側面が、スパイラル状に所定のピッチで上下方向に延びるカム面82a、82bである。
【0074】
キャップユニット60のキャップフレーム61には、一対のカムフォロワー用のローラー66(図においては一方のローラー66のみを示してある。)が回転自在の状態で取り付けられている。ローラー66は、カム面82a、82bにそれぞれ転動自在の状態で載っている。キャップフレーム61におけるローラー66の隣接位置には、ガイド穴85(図においては一方のガイド穴85のみを示してある。)が形成されている。ガイド穴85には、ガイドポスト56a、56bがスライド自在の状態で通されている。底板51における長辺方向の一方の端部には、モーター83が配置されている。モーター83の代わりに、インクジェットプリンター1の本体側に配置されているモーターを駆動源として利用することもできる。モーター83の回転力は、ベルト・プーリー式の動力伝達機構84を介して、各スパイラルカム81a、81bに伝達される。各スパイラルカム81a、81bは、それらの中心軸線回りに、同期して回転する。
【0075】
モーター83を回転すると、一対のスパイラルカム81a、81bが回転する。スパイラル状のカム面82a、82bに載っているキャップユニット60側のローラー66は、カム面82a、82bに沿って転動する。これにより、キャップユニット60が一対のガイドポスト56a、56bにガイドされて、キャップ移動方向V、本例ではプリンター上下方向に移動する。キャップユニット60が上方に移動すると、すなわち、ホームポジションBに待機しているインクジェットヘッド11のノズル面11aに向かうキャッピング方向V1に移動すると、各キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)がインクジェットヘッド11の各ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面に下側からキャッピングされる。
【0076】
キャップユニット60のキャップ移動方向Vの位置は、位置検出器86の出力に基づき制御される。位置検出器86は、例えばホトインタラプターであり、モーター83の隣接位置に配置されている。キャップユニット60のキャップフレーム61には、検出片86aが設けられている。キャップユニット60がキャップ移動方向Vに沿ってキャッピング解除方向V2に移動すると、位置検出器86の出力が切り替わる。この出力に基づき、キャップユニット60が待機位置に至ったことが分かる。例えば、この位置検出器86の出力と、モーター83に内蔵のロータリーエンコーダー(図示せず)のエンコーダーパルス数とに基づき、キャップユニット60の位置を制御できる。すなわち、キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)のキャップ移動方向Vにおける位置を知ることができる。
【0077】
(ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90)
図8Aは、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90およびキャップユニット60を、装置フレーム50に組み付けた状態を示す斜視図であり、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90の一部および装置フレーム50の側板52、53を省略して示してある。図8Bおよび図8Cは、それぞれ、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90を取り出して示す斜視図である。図8Dは、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90の主要部分のスケルトン図であり、図8Eおよび図8Fは、駆動切替機構100の動作を示す説明図である。
【0078】
図9Aは装置フレーム50にワイパー・ポンプ駆動伝達機構90およびキャップユニット60を組み付けた状態を示す斜視図であり、装置フレーム50の側板52、53を省略して示してある。図9Bおよび図9Cはワイパー側への動力伝達経路を示す説明図である。
【0079】
図10は、装置フレーム50にワイパー・ポンプ駆動伝達機構90およびキャップユニット60を組み付けた状態を示す斜視図である。この図では、装置フレーム50の側板52、53を省略し、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90にワイパーユニット70のワイパーホルダーユニット73を取り付けた状態を示してある。
【0080】
ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90は、図8A〜図8Dに示すように、底板51に取り付けた駆動モーター91を備えている。インクジェットプリンター1の本体側に搭載されているモーターを駆動源として用いることもできる。駆動モーター91の回転は、伝達歯車列92を介して、遊星歯車減速機93の入力軸93aに伝達される。遊星歯車減速機93は、入力軸93aに同軸状態に連結あるいは一体形成されている太陽歯車93d(図8D参照)と、太陽歯車93dにかみ合っている遊星歯車93e(図8D参照)と、遊星歯車93eにかみ合っている内歯車93bと、遊星歯車93eを回転自在の状態で支持している遊星キャリア93cとを備えている。
【0081】
遊星歯車減速機93の後側には、同軸状態で、インク吸引ポンプ94が配置されている。インク吸引ポンプ94の回転軸(図示せず)は遊星歯車減速機93の内歯車93bに同軸に連結されている。内歯車93bから取り出される減速回転によってインク吸引ポンプ94は回転駆動して、インク吸引動作を行う。
【0082】
これに対して、図8D、図9に示すように、遊星キャリア93cには駆動側外歯車93fが同軸に一体形成されている。駆動側外歯車93fは、伝達外歯車95aおよび従動側外歯車95bを介して、ベルト駆動用の駆動側スプロケット96に連結されている。遊星キャリア93cから取り出される減速回転によって、駆動側スプロケット96が回転駆動される。
【0083】
ワイパーユニット70のワイパーフレーム71における長さ方向の一方の端は、ワイパーホルダーユニット73のホームポジション73Aである。図6に示すように、ワイパーフレーム71のホームポジション73Aの側の端部には、従動側スプロケット97が回転自在の状態で取り付けられている。駆動側スプロケット96と従動側スプロケット97の間には駆動ベルト98が架け渡されている。駆動ベルト98にはスライダー99が固定されている。
【0084】
ワイパーホルダーユニット73には、図10に示すように、スライダー99に形成した突起99aに係合している係合穴73aが形成されている。駆動側スプロケット96が回転すると、駆動ベルト98が移動し、駆動ベルト98に固定したスライダー99がワイパー移動方向Hに移動する。スライダー99に係合しているワイパーホルダーユニット73がワイパー移動方向Hに移動する。ワイパーホルダーユニット73に搭載されている4枚のワイパー75(1)〜75(4)によって、ヘッドユニット1−1、1−3、ヘッドユニット1−2、1−4、ヘッドユニット2−1、2−3、およびヘッドユニット2−2、2−4のノズル面を、それぞれワイピングすることができる。
【0085】
図9A、図9B、図9Cを参照して、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90におけるワイパー駆動伝達機構部を、更に詳しく説明する。ワイパー駆動伝達機構部は、装置フレーム50に搭載されている駆動側外歯車93fおよび伝達用外歯車95aと、ワイパーフレーム71に搭載されている従動側外歯車95bとを有している。伝達用外歯車95aは、駆動側外歯車93fおよび従動側外歯車95bの双方にかみ合っている。
【0086】
伝達用外歯車95aは、旋回枠201の先端部に回転自在の状態で支持されている。旋回枠201の基端部は、駆動側外歯車93fの中心軸線を中心として旋回可能な状態で、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90のカバー90Aによって支持されている。したがって、伝達用外歯車95aは、駆動側外歯車93fとのかみ合い状態を維持したまま、当該駆動側外歯車93fの中心軸線回りに公転可能である。
【0087】
伝達用外歯車95aの軸部と従動側外歯車95bの軸部の間には、連結板202が架け渡されている。したがって、伝達用外歯車95aと従動側外歯車95bは常にかみ合い状態に保持される。
【0088】
後述のように、ワイパーユニット70は、装置フレーム50によって、キャップ移動方向Vに移動可能な状態で支持されている。また、引張コイルバネ108bによってキャッピング方向V1に付勢されて、装置フレーム50から浮き上がった状態(フローティング状態)となっている。
【0089】
ワイパーフレーム71がキャップ移動方向Vに移動すると、これに伴って、ワイパーフレーム71の側の従動側外歯車95bも同一方向に移動する。図9B、図9Cに示すように、従動側外歯車95bにかみ合っている伝達用外歯車95aは、従動側外歯車95bの移動に伴って、当該従動側外歯車95bとのかみ合いを維持しながら、駆動側外歯車93fの中心軸線回りに公転する。ワイパーフレーム71の移動に拘わりなく、装置フレーム50の側からワイパーフレーム71の側にワイパー移動用の動力を伝達可能である。この構成によれば、移動側のワイパーフレーム71に、ワイパー駆動伝達機構部を構成する部品を全て搭載しておく必要がなく、ワイパーユニット70の軽量化に有利である。
【0090】
ワイパーフレーム71がノズル面11aから離れる方向(キャッピング解除方向V2)に移動する際には、ワイパー駆動伝達機構部の駆動側外歯車93fは停止している。駆動側外歯車93fにかみ合っている伝達用歯車95aは、自転しながら、駆動側外歯車93fの中心軸線回りに公転する。したがって、伝達用歯車95aにかみ合っている従動側外歯車95bも回転する。従動側歯車95bが回転すると、駆動ベルト98に搭載されているワイパーホルダーユニット73がワイパー移動方向Hに僅かに移動する。本例では、矢印H2で示す方向がワイピング方向であるが、これとは逆の方向H1に僅かに移動する。
【0091】
よって、ワイパーユニット70がキャッピング解除方向V2に移動させると、ワイパーホルダーユニット73が僅かにワイピング方向H2とは逆方向に移動する。すなわち、ワイパー75(1)〜75(4)は、ワイピング方向H2とは逆の方向H1に僅かに移動する。この結果、ノズル面11aのワイピングを終えた後のワイパー75(1)〜75(4)を、ノズル面11aに垂直なキャッピング解除方向V2に退避させる際に、各ワイパー75(1)〜75(4)は、ノズル面に垂直な方向に対して、ワイピング方向H2とは逆の方向H1に僅かに傾斜した方向に移動する。このようなワイパーの動きによって、後述のように、ワイパーからのインク等の異物が周囲に飛散することを防止できる。
【0092】
(駆動切替機構100)
ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90には駆動切替機構100が付設されており、ワイパー駆動可能状態とポンプ駆動可能状態に切替可能となっている。駆動切替機構100は、キャップユニット60の移動位置に応じて切り替え動作を行う。したがってキャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)の移動位置に応じて切替動作を行う。
【0093】
キャップユニット60が、待機位置からキャッピング方向V1に所定量だけ移動すると、遊星歯車減速機93は、内歯歯車93bが回転自在で、遊星キャリア93cが回転不可の状態になる。この状態では、内歯歯車93bから減速回転が出力される。よって、内歯歯車93bに連結されている吸引ポンプ94が駆動され、各キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)からのインク吸引動作が可能になる。
【0094】
逆に、キャップユニット60が、キャッピング状態からキャッピング解除方向V2に所定だけ移動すると(ノズル面から離れる方向に所定量移動すると)、遊星歯車減速機93は、内歯歯車93bが回転不可になり、遊星キャリア93cが回転自在になる。この状態では、遊星キャリア93cから減速回転が出力される。これにより、遊星キャリア93cに連結されているワイパーホルダーユニット73に搭載されているワイパー75(1)〜75(4)を移動させることができる。よって、ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面のワイピング動作が可能になる。
【0095】
図8A〜図8Fを参照して説明すると、駆動切替機構100は、第1引張コイルバネ101のバネ力によって内歯歯車93bを回転不可の状態にラッチしている第1ラッチ機構102と、第2引張コイルバネ103のバネ力によって遊星キャリア93cを回転不可の状態にラッチしている第2ラッチ機構104とを備えている。第1ラッチ機構102は第1ラッチレバー102aを備えており、第2ラッチ機構104は第1ラッチレバー102aよりも図において上側の位置(キャッピング方向V1の側の位置)に配置された第2ラッチレバー104aを備えている。
【0096】
キャップユニット60のキャップフレーム61には、第1ラッチレバー102aに対峙する部位に、当該キャップユニット60の移動によって当該第1ラッチレバー102aをバネ力に逆らって押し込み可能な第1カム面105が形成されている。また、キャップフレーム61には、第2ラッチレバー104aに対峙する部位に、当該キャップユニット60の移動によって当該第2ラッチレバー104aをバネ力に逆らって押し込み可能な第2カム面106が形成されている。
【0097】
第1、第2カム面105、106は、キャップ移動方向Vにおける異なる位置に形成されている。第1ラッチレバー102aがバネ力に逆らって押し込まれると、第1ラッチ機構102によるラッチが解除されて、内歯車93bが回転自在の状態に切り替わる。逆に、第2ラッチレバー104aがバネ力に逆らって押し込まれると、第2ラッチ機構104によるラッチが解除されて、遊星キャリア93cが回転自在の状態に切り替わる。
【0098】
ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90は、駆動切替機構100によって、キャップユニット60のキャップ移動方向Vへの移動位置に応じて、ポンプ駆動可能状態およびワイパー駆動可能状態に切り替わる。駆動切替機構100では、ラッチレバーとカム面の係合位置をキャップ移動方向Vに変更することにより、切替タイミングなどを簡単に調整あるいは変更できる。したがって、円筒カム、間欠歯車などの部材を用いて、動力伝達方向を切り替える機構に比べて、小型・コンパクトで簡単な切替機構を実現できる。
【0099】
(ワイパーユニット70の支持構造)
一般に、ライン型のインクジェットヘッドのように、ノズル列方向にノズル面が長い場合には、一定のワイピング圧でノズル面をワイピングできないことがある。インクジェットヘッドのノズル面に対して、ノズル列方向(ワイパー移動方向)において、メンテナンス装置が相対的に傾いていることがある。この場合には、ワイピング中に、ノズル面に対するワイパーの押し付け力が変動し、各ヘッドユニットのノズル面を、一定のワイピング圧力で、ワイピングすることができない。
【0100】
この弊害を解消するには、ノズル面に平行となるようにワイパーを移動させることのできる機構をメンテナンス装置に設けておくことが望ましい。また、このような機構を少ない部品点数で簡単な構成によって実現することが、メンテナンス装置の小型・コンパクト化の観点から望ましい。このために、本例のワイパーユニット70は次のように装置フレーム50によって支持されている。
【0101】
図11Aはキャップユニット60にワイパーユニット70を組み付けた状態を示す斜視図である。図11Bはその側面の一部を示す部分拡大斜視図である。図11Cは装置フレーム50、キャップユニット60およびワイパーフレーム71の関係を示す説明図である。
【0102】
ワイパーユニット70は、キャッピング方向にバネ力によって引き上げられた(付勢された)状態で、装置フレーム50によって支持されている。図6、図11Cに示すように、装置フレーム50の四隅には、キャッピング方向V1に突出したガイド部107aが形成されている。ワイパーユニット70のワイパーフレーム71の四隅は、ガイド部107aの内側面に沿ってキャップ移動方向Vにガイドされるガイド部107bとなっている。また、装置フレーム50のガイド部107aの上端縁には、それぞれ、バネ掛け108aが形成されている。各バネ掛け108aには、引張コイルバネ108bの一端が掛けられている。ワイパーフレーム71の四隅のそれぞれの内側の部位には、バネ掛け108cが形成されている。バネ掛け108cには、各引張コイルバネ108bの下端が掛けられている。
【0103】
このように、ワイパーユニット70は、装置フレーム50に対してキャップ移動方向Vに移動可能な状態で保持されている。また、4本の引張コイルバネ108bによって、フローティング状態で、装置フレーム50に取り付けられている。すなわち、ワイパーユニット70は引張コイルバネ108bによって常に上方(キャッピング方向)に付勢されており、引張コイルバネ108bのバネ力に逆らって、ワイパーユニット70を下方(キャッピング解除方向)に押し込むことが可能である。
【0104】
装置フレーム50とワイパーユニット70のワイパーフレーム71の間には、ワイパーユニット70の上方の位置(キャッピング方向V1の位置)を規制する規制部が設けられている。図5Aから分かるように、装置フレーム50の端板54には、一対の係合突起109aが形成されている。ワイパーフレーム71には、各係合突起109aが差し通された一対の係合枠109bが形成されている。また、図6から分かるように、装置フレーム50の他方の端板55にも係合突起109cが形成されている。ワイパーフレーム71には、係合突起109cが差し通された係合枠109dが形成されている。
【0105】
次に、装置フレーム50にフローティング状態で支持されているワイパーユニット70は、キャップ移動方向Vにおける所定の範囲においては、キャップユニット60と共に移動する。図11A〜図11Cを参照して説明すると、ワイパーユニット70のワイパーフレーム71の両側の側板部分71bには、内側にセットバックした状態の矩形枠部分71cが形成されている。キャップユニット60のキャップフレーム61の両側には側方に張り出した一対ずつの係合突起61aが形成されている。
【0106】
キャップユニット60がキャッピング位置からキャッピング解除方向V2に向けて移動する際には、引張コイルバネ108bによって引き上げられているワイパーユニット70は移動しない。キャップユニット60が所定量だけキャッピング位置からキャッピング解除方向V2に移動すると、係合突起61aが矩形枠部分71cに係合する。この後は、ワイパーユニット70は、キャップユニット60と一体となってキャッピング解除方向V2に強制的に移動させられる。
【0107】
キャップユニット60がノズル面の側から離れた待機位置にある状態からキャッピング方向V1に移動すると、ワイパーユニット70は、引張コイルバネ108bのバネ力によって、キャップユニット60と共にキャッピング方向に移動する。
【0108】
キャップユニット60がキャッピング方向V1に最も移動した状態では、キャップユニット60の係合突起61aは、図11Bに示すように、ワイパーフレーム71の矩形枠部分71cからキャッピング方向V1に離れる。したがって、ワイパーユニット70は、引張コイルバネ108bのバネ力によって、係合突起109a、109cと係合枠109b、109dの係合によって規定される位置に保持される。
【0109】
ここで、ワイパーユニット70のワイパーフレーム71の上面には、その両側の長辺縁に沿って、一段高い位置に、当接面71aが形成されている。当接面71aは、キャップユニット60がキャッピング方向V1に移動した場合に、キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)のリップ面(キャップ開口縁の端面)よりも先に、インクジェットヘッド11の側の部位、本例では、インクジェットヘッド11が搭載されているキャリッジ10の下面部分(図4における第1、第2ヘッド11A、11Bを取り囲んでいる矩形枠状の下面部分10a)に当接する。
【0110】
このように、ワイパー75(1)〜75(4)が搭載されているワイパーユニット70が、所謂フローティング状態で装置フレーム50に搭載されている。キャップユニット60をノズル面に接近するキャッピング方向V1に移動すると、ワイパーユニット70はキャップユニット60との係合が解除され、引張コイルバネ108bのバネ力によってキャッピング方向V1に付勢された状態になる。キャップユニット60のキャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)がインクジェットヘッド11のノズル面11aに当接する前に、ワイパーユニット70のワイパーフレーム71の当接面71aが、インクジェットヘッド11の側のキャリッジ10の下面に当接する。
【0111】
これにより、ワイパーユニット70がインクジェットヘッド11のノズル面11aに対して位置決めされる。インクジェットヘッド11がメンテナンス装置40に対して相対的に傾斜していたとしても、ワイパーユニット70がインクジェットヘッド11の傾斜姿勢に追従した姿勢になる。ワイパーユニット70に搭載されている複数のワイパー75(1)〜75(4)のそれぞれが、対応するインクジェットヘッド11の各ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面に対して一定の間隔で位置決めされる。
【0112】
よって、各ワイパー75(1)〜75(4)を各ノズル面に対して一定のワイピング圧力で押し付けることができ、ノズル面のワイピングを適切な押圧状態で確実に行うことができる。すなわち、ワイパーフレーム71の当接面71aがキャリッジ10の下面に当接した状態において、後述のように、各ワイパー75(1)〜75(4)を起立位置に起こす。この状態で、ワイパー75(1)〜75(4)をワイピング方向H2に移動させると、それらの先端縁部を一定の圧力で、インクジェットヘッド11を構成している各ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面1−1a〜1−2a、2−1a〜2−4aに押し付け可能になる。
【0113】
(選択吸引機構)
一般に、複数のヘッドユニットから構成されているインクジェットヘッドの場合には、メンテナンスが必要なヘッドユニットに対してのみ、インク吸引を行うことが望ましい。このような選択吸引を、小型でコンパクトな機構によって実現できれば、メンテナンス装置の小型化、低コスト化に有利である。
【0114】
本例のメンテナンス装置40には、吸引ポンプ94を用いて複数のキャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)のそれぞれを個別に選択吸引するための選択吸引機構が備わっている。換言すると、複数のキャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)のそれぞれがキャッピングされたヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4からインクを選択吸引するための選択吸引機構が備わっている。
【0115】
図12A〜図12Dは選択吸引機構を示す説明図である。装置フレーム50の一方の側板52の側に、キャップ65(1)〜65(4)を選択する選択吸引機構が配置されている。他方の側板53の側には、キャップ64(1)〜64(4)を選択する選択吸引機構が配置されている。双方の選択吸引機構は基本的に同一構成であるので、キャップ64(1)〜64(4)を選択するための選択吸引機構を説明する。
【0116】
キャップ64(1)〜64(4)のそれぞれと吸引ポンプ94の吸引口の間は、当該吸引口から4つに分岐した吸引チューブ110(図11A参照)と、装置フレーム50における側板53の側に配置された4個のバルブ112A〜115Aとを介して連通している。バルブ112A〜115Aは、例えば、内蔵のダイヤフラム(図示せず)によって常に閉じ状態に保持されている常閉弁である。
【0117】
バルブ112A〜115Aに配置されている開閉レバー112a〜115aを押し込むと、ダイヤフラムが変位して開状態に切り替わる。開閉レバー112a〜115aの押し込みを解除すると、ダイヤフラムの弾性復帰力によって、再び閉状態に戻る。これらのバルブ112A〜115Aはワイパー移動方向Hに沿って配列されている。バルブ112A〜115Aを開くとキャップ64(1)〜64(4)からインクを吸引するためのインク吸引通路が開き、インク吸引ポンプ94によるインク吸引が可能になる。
【0118】
バルブ112A〜115Aの開閉レバー102a〜105aに対峙している側板53には、ワイパー移動方向Hに長い長方形の窓が空いている。この窓の上側縁に沿って、ワイパー移動方向Hに延びるガイド軸116aが配置されている。このガイド軸116aと、窓の下側縁によって規定されるガイドレール116bに沿って、スライド可能な状態で、バルブセレクター117Aが配置されている。
【0119】
バルブセレクター117Aは、ガイド軸116aに沿って、バルブ112A〜115Aの開閉レバー112a〜115aに対峙する位置に移動可能である。バルブセレクター117Aは、側板53の外側表面に沿ってキャッピング方向に突出している係合突起117aと、側板53の内側に突出しているレバー押し込み突起117bとを備えている。バルブセレクター117Aを各バルブ112A〜115Aの開閉レバー112a〜115aに対峙する位置に移動させると、そのレバー押し込み突起117bによって開閉レバー112a〜115aが押し込まれた状態になり、バルブ112A〜115Aが開状態に切り替わる。
【0120】
一方、図11Aに示すように、ワイパー移動方向Hに移動するワイパーホルダーユニット73の側面には、キャッピング解除方向V2に突出しているセレクターフック118Aが取り付けられている。セレクターフック118Aには、係合突起117aと相補的な形状をしている係合凹部118aが形成されている。この係合凹部118aにはキャッピング方向にバルブセレクター117Aの係合突起117aを挿入可能である。係合突起117aが係合凹部118aに係合すると、ワイパーホルダーユニット73によって、バルブセレクター117Aを、ガイド軸116aに沿って、ワイパー移動方向Hに移動させることが可能である。
【0121】
したがって、ワイパーホルダーユニット73をワイパー移動方向Hに移動させると、セレクターフック118Aがバルブセレクター117Aに位置決めされる。この状態で、キャップユニット60をキャッピング解除方向V2に所定量だけ移動させる。これにより、ワイパーユニット70も同一方向に移動して、ワイパーユニット70のセレクターフック118Aがバルブセレクター117Aに係合する。この後は、ワイパーホルダーユニット73をワイパー移動方向Hに移動させることにより、バルブセレクター117Aが、バルブ112A〜115Aの一つに対して、ワイパー移動方向Hにおいて位置決めされる。
【0122】
バルブセレクター117Aが位置決めされたバルブ112A〜115Aの開閉レバー112a〜115aは、バルブセレクター117Aのレバー押し込み突起117bによって開状態の位置に保持される。よって、開状態に保持されているバルブ112A〜115Aを介して、対応するキャップ65(1)〜65(4)から吸引ポンプ94によってインク吸引動作を行うことができる。
【0123】
選択吸引動作を行うためのバルブ112A〜115Aの選択動作を、キャップユニット60(キャップ)のキャップ移動方向Vへの移動と、ワイパーホルダーユニット73(ワイパー)のワイパー移動方向Hへの移動とによって実現できる。したがって、円筒カム、間欠歯車あるいは揺動部材などの選択切替用の部品を用いることなく、小型でコンパクトな構成で選択吸引動作を実現できる。
【0124】
装置フレーム50には、バルブ全開レバー119Aが取り付けられている。バルブ全開レバー119Aはバルブ112A〜115Aの開閉レバー112a〜115aを同時に押し込み可能である。バルブセレクター117Aをワイパー移動方向Hにおいて、開閉レバー112aの隣接位置に位置決めする。この位置では、バルブセレクター117Aのレバー押し込み突起117bによって、バルブ全開レバー119Aが押し込まれた状態になる。
【0125】
バルブ全開レバー119Aが押し込まれると、当該バルブ全開レバー119Aによってバルブ112A〜115Aの開閉レバー112a〜115aが同時に押し込まれる。これにより、全てのバルブ112A〜115Aが開状態に切り替わる。バルブ全開レバー119Aを配置するという簡単な構成によって、全てのキャップ64(1)〜64(4)からのインク吸引動作、すなわち、これらによってキャッピングされたヘッドユニット1−1〜1−4からのインク吸引を同時に行うことができる。
【0126】
バルブセレクター117Aを、バルブ112A〜115Aおよびバルブ全開レバー119Aから外れた位置に位置決めすると、バルブ112A〜115Aが全閉状態に保持される。
【0127】
次に、バルブセレクター117Aをガイド軸116aに沿って移動させる際には、そのレバー押し込み突起117bが、各バルブ112A〜115Aの開閉レバー112a、115aに干渉する。この干渉を回避して、バルブセレクター117Aの移動を円滑に行うために、キャップユニット60にはレバー押し込み突部が形成されている。
【0128】
図6から分かるように、キャップユニット60のキャップフレーム61の側板部分61bには、内側に突出したレバー押し込み突部61cが形成されている。このレバー押し込み突部61cの位置は、キャップ移動方向Vにおいて、次のように設定されている。バルブセレクター117Aが各バルブ112A〜115Aの開閉レバー112a〜115aを押し込み可能なキャップ移動方向Vの位置に至った状態において、レバー押し込み突起61cは、バルブ全開レバー119Aを押し込み可能な位置に至る。
【0129】
バルブセレクター117Aをガイドレール116に沿ってスライドさせる状態では、バルブ全開レバー119Aによって各バルブ112A〜115Aの開閉レバー112a〜115aが押し込まれ、バルブセレクター117Aを、各開閉レバー112a〜117aに干渉させることなくスライドさせることができる。
【0130】
他方のキャップ65(1)〜65(4)を選択吸引するための機構も上記と同様に構成されている。しかしながら、キャップ64(1)〜64(4)および65(1)〜65(4)のそれぞれを個別に選択吸引できるようにするために、両側のバルブセレクターの形状が僅かに相違している。
【0131】
以下の説明においては、キャップ65(1)〜65(4)を選択するために側板52の側に配置されているバルブ、バルブセレクター、セレクターフック、バルブ全開レバーを、それぞれ、バルブ112B〜115B、バルブセレクター117B、セレクターフック118B、バルブ全開レバー119Bとする。
【0132】
キャップユニット60がキャップ移動方向Vに沿ってキャッピング解除方向V2に移動すると、最初に一方の側のセレクターフックとバルブセレクターの係合状態が形成され、しかる後に、他方の側のセレクターフックとバルブセレクターの係合状態が形成される。
【0133】
例えば、図12Dに示すように、一方のバルブセレクター117Aの係合突起117aに比べて、他方のバルブセレクター117Bの係合突起117aを短くしてある。バルブセレクター117A、117Bがキャッピング解除方向V2に移動すると、それぞれセレクターフック118A、118Bに係合する(図12DのST1)。この状態で、ワイパーホルダーユニット73をワイパー移動方向Hに移動させ、例えば、短い係合突起117aを備えたバルブセレクター117Bを、ワイパー移動方向Hにおける目標とするバルブ位置に移動させる。他方のバルブセレクター117Aも一緒に同一位置に移動する。
【0134】
この状態から、双方のバルブセレクター117A、117Bがキャッピング方向V1に移動すると、最初に短い係合突起117aを備えたバルブセレクター117Bがセレクターフック118Bから外れる。このとき、他方の長い係合突起117aを備えたバルブセレクター117Aはセレクターフック118Aと係合状態にある(図12DのST2)。この状態で、ワイパーホルダーユニット73をワイパー移動方向Hに移動させると、係合状態にあるバルブセレクター117Aのみが移動する。よって、バルブセレクター117Aを目標とするバルブ位置に移動させことができる。
【0135】
双方のバルブセレクター117A、117Bによって目標とするバルブ位置が選択された後は、キャップユニット60をキャッピング方向に移動させる。これにより、双方のバルブセレクター117A、117Bがセレクターフック118A、118Bから外れる(図12DのST3)。
【0136】
このようにして、インク吸引対象のキャップを、一方の側のキャップ64(1)〜64(4)から自由に選択できる。また、キャップ64(1)〜64(4)の選択動作に影響されることなく、他方の側のキャップ65(1)〜65(4)から、インク吸引対象のキャップを自由に選択できる。
【0137】
(ワイパーユニット70のワイパー選択機構)
一般に、複数のヘッドユニットから構成されているインクジェットヘッドの場合には、メンテナンスが必要なヘッドユニットに対してのみ、ワイピングを行うことが望ましい。このような選択ワイピングを、小型でコンパクトな機構によって実現できれば、メンテナンス装置の小型化、低コスト化に有利である。
【0138】
本例のメンテナンス装置40には、先に述べたように、インクジェットヘッド11の各ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aをワイピングするために4枚のワイパー75(1)〜75(4)が備わっている。これら4枚のワイパー75(1)〜75(4)は倒れ位置の状態に保持されている。ワイパーユニット70にはワイパー選択機構が備わっており、倒れ位置にあるワイパー75(1)〜75(4)を個別に起立位置に起こすことができる。ワイパー75(1)〜75(4)を起立位置に起こすと、ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のワイピングが可能になる。
【0139】
図13は、ワイパーユニット70のワイパーホルダーユニット73を示す部分斜視図であり、図14Aおよび図14Bは、ワイパー選択機構を取り出して示す斜視図および側面図である。図15A〜図15Cは、ワイパー起こし部材によるワイパー起こし動作を示す説明図である。図16A〜図16Cは、ワイパー倒し部材によるワイパー倒し動作を示す説明図である。
【0140】
図13、図14Aに示すように、ワイパーホルダーユニット73は、両側のガイド軸72に沿ってワイパー移動方向Hにスライド可能なスライド枠76を備えている。スライド枠76には、ワイパー移動方向Hに直交する方向に、旋回中心軸121が架け渡されている。旋回中心軸121には、その軸線方向に4つのワイパーホルダー74(1)〜74(4)が取り付けられている。ワイパーホルダー74(1)〜74(4)には、それぞれ、ワイパー75(1)〜75(4)が取り付けられている。
【0141】
ワイパーホルダー74(1)〜74(4)は、旋回中心軸121を中心として、第1の状態および第2の状態に切り替え可能である。本例では、図15Aに示す第1の状態である倒れ位置74Aの状態から図15Cに示す第2の状態である起立位置74Bの状態までの間を旋回可能である。倒れ位置74Aにおいては、ワイパー75(1)〜75(4)はワイパー移動方向Hに沿った方向に倒れた姿勢となり、その先端縁がワイパーホルダーユニット73のホームポジション73Aを向く。
【0142】
起立位置74Bにおいては、ワイパー75(1)〜75(4)はキャップ移動方向Vに沿って、キャッピング方向V1を向く起立した姿勢となる。起立した姿勢では、ワイパー75(1)〜75(4)は、スライド枠76からキャッピング方向V1に突出した状態になる。
【0143】
各ワイパーホルダー74(1)〜74(4)には、位置保持腕77(1)〜77(4)が付設されている。位置保持腕77(1)〜77(4)は、ワイパーホルダー74(1)〜74(4)を、倒れ位置74Aおよび起立位置74Bの二つの位置に安定的に保持する。図14Aから分かるように、両側のワイパーホルダー74(1)、74(4)の位置保持腕77(1)、77(4)は、それらの外側に配置されており、内側のワイパーホルダー74(2)、74(3)の位置保持腕77(2)、77(3)は、それらの内側に配置されている。
【0144】
図15Aを参照して位置保持腕77(1)〜77(4)の構造を説明する。位置保持腕77(1)〜77(4)は同一構造であるので、位置保持腕77(4)を例に挙げて、その構造を説明する。
【0145】
まず、スライド枠76には、旋回中心軸121と平行に支軸125が架け渡されている。支軸125は旋回中心軸121に対してワイパーホルダーユニット73のホームポジション73Aの側に配置されている。位置保持腕76(4)は、圧縮コイルバネ126、リンク127、およびリンク128を備えている。リンク127はワイパーホルダー74(4)に一体形成、あるいは固定されており、ワイパーホルダー74(4)と一体となって旋回中心軸121を中心として旋回する。
【0146】
リンク128は、支軸125を中心として旋回可能な状態で、当該支軸125によって支持されている。リンク127の先端部とリンク128の先端部は、連結ピン129によって、回転可能な状態で、相互に連結されている。
【0147】
リンク128には、支軸125が差し通された細長い軸穴128aが形成されている。圧縮コイルバネ126は、支軸125に対して、リンク128を連結ピン129の側に向けて常に付勢している。図15A〜図15Cに示すように、ワイパーホルダー74(4)を倒れ位置74Aから起立位置74Bに旋回させるためには、圧縮コイルバネ126を圧縮させる必要がある。逆に、起立位置74Bから倒れ位置74Aにワイパーホルダー74(4)を戻す場合にも、圧縮コイルバネ126を圧縮させる必要がある。図15Bに示すように、旋回中心軸121と支持軸125の中心を結ぶ直線上に連結ピン129が位置する状態が、最も圧縮コイルバネ126が圧縮される。よって、位置保持腕76(4)は、この位置を境に、倒れ位置74Aおよび起立位置74Bの何れかの位置に向けて、圧縮コイルバネ126のバネ力によって付勢される。
【0148】
したがって、これらのいずれかの位置に、安定的にワイパーホルダー74(4)が保持される。すなわち、ワイピング中においてワイパー75(1)〜75(4)が確実に起立位置に保持され、ワイピングを確実に行うことができる。また、倒れ位置にあるワイパー75(1)〜75(4)が、不必要に起立してしまうこともない。
【0149】
次に、ワイパーホルダー74(1)〜74(4)を、個別に、倒し位置74Aおよび起立位置74Bに切り替えるワイパー選択機構を説明する。
【0150】
ワイパーユニット70において、ワイパーホルダーユニット73におけるホームポジション73Aとは反対側の端には、ワイパーの状態を第1の状態から第2の状態に切り替えるワイパー係合部材として機能する複数本のワイパー起こし部材が配置されている。本例では、図10に示すように、ワイパーホルダー74(1)〜74(4)のそれぞれを倒れ位置74Aから起立位置74Bに起こすために用いる4本のワイパー起こし部材122(1)〜122(4)が配置されている。ワイパー起こし部材122(1)、122(2)は基板122Aの上面から垂直に突出しており、ワイパー起こし部材122(3)、122(4)は、基板122Bの上面から垂直に突出している。これらの基板122A、122Bは、装置フレーム50の底板51に取り付けた所定高さのワイパー・ポンプ駆動伝達機構90のカバー90Aの上面に固定されている。
【0151】
ワイパー起こし部材122(1)〜122(4)は、図10、図14Aに示すように、ワイパー移動方向Hに沿って異なる位置に配置されている。また、ワイパー移動方向Hに直交するワイパーユニット70の幅方向においては、ワイパー起こし部材122(1)〜122(4)は、ワイパーホルダー74(1)〜74(4)の位置保持腕77(1)〜77(4)に対応する位置に配置されている。各位置保持腕77(1)〜77(4)のリンク128には、図14A、図14Bに示すように、キャッピング解除方向V2に突出している係合突起128bが形成されている。
【0152】
ワイパーホルダーユニット73を、ワイパー起こし部材122(1)〜122(4)が配置されている位置まで、ワイパー移動方向Hに移動させる。これにより、4つのワイパーホルダー74(1)〜74(4)の一つの位置保持腕76(1)〜76(4)の係合突起128bを、キャップ移動方向Vにおいて、対応するワイパー起こし部材122(1)〜122(4)のいずれかに対峙させることができる。この状態で、キャップユニット60をキャッピング解除方向V2に移動させる。これにより、ワイパーユニット70もキャッピング解除方向に移動し、係合突起128bが対応するワイパー起こし部材122(1)〜122(4)のうちの一つに当る。
【0153】
図15Aはこの状態を示している。キャップユニット60がキャッピング解除方向V2に更に移動すると、ワイパー起こし部材122(1)〜122(4)によって、係合突起128bがキャッピング方向V1に相対的に押し上げられる。これにより、図15B、図15Cに示すように、位置保持腕77(1)〜77(4)は圧縮コイルバネ126のバネ力に逆らって、ワイパーホルダー74(1)〜74(4)を倒れ位置74から起立位置74Bに起こす。
【0154】
この後は、ワイパーホルダーユニット73をワイパー移動方向Hに移動させ、ワイピング対象のヘッドユニット21〜24、31〜34の手前の位置に位置決めする。この状態で、キャップユニット60をキャッピング方向V1に移動させて、起立したワイパー75(1)〜75(4)を、ヘッドユニット21〜24、31〜34のノズル面21a〜24a、31a〜34aをワイピング可能な位置にセットする。しかる後に、ワイパーホルダーユニット73をワイパー移動方向Hに沿って移動すると、そこに搭載されているワイパー75(1)〜75(4)によって、対応するヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aのワイピングが行われる。
【0155】
次に、図16を参照して説明すると、ワイパーユニット70のワイパーフレーム71において、ワイパーホルダーユニット73のホームポジション73Aの側の内側端面には、ワイパーを第2の状態から第1の状態に切り替えるワイパー係合部材として機能する複数本のワイパー倒し部材が配置されている。本例では、ワイパー移動方向Hに沿って延びる2本のワイパー倒し部材123(1)、123(2)が設けられている。ワイパー倒し部材123(1)は、ワイパーホルダー74(1)および74(2)を起立位置74Bから倒れ位置74Aに倒す部材であり、ワイパー倒し部材123(2)はワイパーホルダー74(3)、74(4)を起立位置74Bから倒れ位置74Aに倒すための部材である。勿論、各ワイパーホルダー74(1)〜74(4)に対応させて、4本のワイパー倒し部材を設けることも可能である。
【0156】
ワイパーホルダー74(1)〜74(4)には、それらが起立位置74Aの状態において、キャッピング解除方向に延びる係合突起74aがそれぞれ形成されている。本例では、ワイパーホルダー74(1)、74(2)のそれぞれの係合突起74aが隣接位置に形成されている。これらの係合突起74aは、ワイパー移動方向Hに沿って、ワイパーホルダーユニット73のホームポジション73Aの側に移動すると、1本のワイパー倒し部材123(1)に同時に当接可能である。同様に、ワイパーホルダー74(3)、74(4)のそれぞれの係合突起74aが隣接位置に形成されており、1本のワイパー倒し部材123(2)に同時に当接可能である。
【0157】
したがって、ワイパーホルダー74(1)〜74(4)のそれぞれを、ワイパー移動方向Hに沿ってホームポジション73Aに向けて移動すると、図16Aに示すように、起立状態のワイパーホルダー74(1)〜74(4)の係合突起74aは、ワイパー倒し部材123(1)、123(2)のいずれかに当接する。この後は、図16B、16Cに示すように、ワイパー倒し部材123(1)、123(2)によって、ワイパーホルダー74(1)〜74(4)が押される。これにより、ワイパーホルダー74(1)〜74(4)は、起立位置74Bから倒れ位置74Aに戻される。
【0158】
ワイパー選択動作(換言すると、ワイピング対象のヘッドユニットの選択動作)においても、キャップユニット60(キャップ)のキャップ移動方向Vへの移動と、ワイパーホルダーユニット73(ワイパー)のワイパー移動方向Hへの移動とによって、複数のワイパー75(1)〜75(4)の一つを選択できる。これにより、ヘッドユニット21〜24、31〜34を選択的にワイピングすることができる。
【0159】
ワイパー起こし部材122(1)〜122(4)が形成されている基板122A、122Bには、3本の規制部材130(1)〜130(3)が形成されている。規制部材130(1)は、ワイパーホルダー74(1)が隣接のワイパーホルダー74(2)と一緒に起立位置に旋回することを防止し、規制部材130(3)は、ワイパーホルダー74(3)が隣接のワイパーホルダー74(4)と一緒に起立位置に旋回することを防止する。また、規制部材130(4)は、ワイパーホルダー74(4)が隣接のワイパーホルダー74(3)と一緒に起立位置に旋回することを防止する。なお、ワイパーホルダー74(1)が隣接のワイパーホルダー74(2)と一緒に起立位置に旋回することを防止する規制部材は図示を省略してある。
【0160】
これらの規制部材130(1)〜130(3)は、基板122A、122Bの上面からキャッピング方向V1に垂直に突出しており、キャップ移動方向Vに延びる係合端面130aが形成されている。各ワイパーホルダー74(1)〜74(4)におけるリンク127には、倒れ位置74Aの状態において、キャップ移動方向Vに延びる係合端面127aが形成されている。
【0161】
図15Aに示すように、ワイパーホルダー74(3)を起立させる場合、隣接のワイパーホルダー74(3)のリンク127の係合端面127aが、規制部材130(2)の係合端面130aに対して、ワイパー移動方向Hから僅かの隙間で対峙する。ワイパーホルダー74(3)が起立位置74Bに向けて旋回しようとすると、係合端面127aが規制部材130(2)の係合端面130aに当る。よって、ワイパーホルダー74(3)がワイパーホルダー74(4)と一緒に起立位置74Bに向けて旋回してしまうことがない。
【0162】
隣接するワイパーホルダー74(3)、74(4)の隙間にインクなどが付着すると、これらのワイパーホルダー74(3)、74(4)が相互に貼り付いた状態になる。この状態では、一方のワイパーホルダー74(1)を起立させると、それに伴って他方のワイパーホルダー74(3)も一緒に起立する可能性がある。規制部材130(2)によって、選択していないワイパーホルダーが起立してしまうことを確実に防止できる。
【0163】
(ワイパーおよびワイパークリーナーユニット)
一般に、メンテナンス装置のワイパーには、ノズル面から拭き取ったインク等の異物が付着する。インク等の異物が残ったままの状態のワイパーは拭き取り性能が低下する。ワイパーに付着しているインク等の異物がノズル面に付着し、当該ノズル面を汚すおそれがある。ワイパークリーナーを配置して、ノズル面を拭き取った後のワイパーに付着しているインク等の異物を除去することが望ましい。
【0164】
ここで、平板状のワイパーを用いてイクジェットヘッドのノズル面の拭き取りを行う場合には、ノズル面に押し付けられているワイパー先端縁部の両端部分が大きく変形しやすい。ワイパー先端縁部の両側の部分に当っているノズル面の部位から、インク等の異物を確実に拭き取ることが出来ないことがある。平板状のワイパーを円弧状に撓めて、剛性を高くすると、ワイパー先端縁部の両側においても確実にノズル面に付着しているインク等の異物を拭き取ることができる。
【0165】
しかしながら、従来においては、円弧状に撓めた形状のワイパーをクリーニングするために適したワイパークリーナーについては着目されていない。また、そのようなワイパークリーナーは提案されていない。平板状のワイパーのためのワイパークリーナーは、円弧状に撓めた形状のワイパーの拭き取りには適していない。円弧状のワイパーをワイパークリーナーに押し付けながら移動させると、ワイパーの中心部分が大きく撓みやすい。このため、ワイパー中心部分からインク等の異物を確実に拭き取ることができない場合がある。本例のメンテナンス装置40では、このような点に鑑みて、以下に述べる構成のワイパーおよびワイパークリーナーユニットが備わっている。
【0166】
図17はワイパーユニット70のホームポジション側の端部を示す説明図である。ワイパーホルダーユニット73がホームポジション73Aにある状態では、ワイパー倒し部材123(1)、123(2)によって4枚のワイパー75(1)〜75(4)は倒されて、倒れ位置の状態になっている。図17においては、ワイパー形状を分かり易く示すために、ワイパー75(4)を起立位置にある状態で示し、ワイパー75(2)を倒れ位置から起立位置に旋回する途中の位置にある状態で示してある。
【0167】
この図に示すように、ワイパー75(1)は、矩形輪郭の平板状のラバーを円弧状に曲げた状態でワイパーホルダー74(1)に取り付けたものである。起立位置の状態では、ワイパー75(1)は、ワイピング方向H2に向くワイピング面75aが、凸状曲面75aとなっている。したがって、ワイピング対象のヘッドユニット1−1、1−3のノズル面1−1a、1−3aを摺動するワイパー75(1)の先端縁部75bも同様に、ワイピング方向H2に凸状に曲げられた形状をしている。
【0168】
ワイピング方向H2が凸曲面となるように円弧状に曲げた形状のワイパー75(1)は、平板状のワイパーに比べて、ワイピング時の剛性が高い。また、ノズル面1−1a、1−3aに押し付けられた状態で摺動する際に、平板状のワイパーでは、その先端縁部の両端側が大きく変形して、ノズル面1−1a、1−3aを適切にワイピングできないことがある。ワイパー75(1)の湾曲した先端縁部75bは、その各部分が均一にノズル面1−1a、1−3aに当接した状態で、当該ノズル面1−1a、1−3aに沿って摺動する。よって、平板状のワイパーに比べて適切なワイピングを行うことができる。
【0169】
なお、他のワイパー75(2)〜75(4)もワイパー75(1)と同一形状であるので、それらの説明は省略する。
【0170】
次に、ワイパーユニット70には、ワイパークリーナーユニット150が付設されている。図5、図6および図17を参照して説明すると、ワイパークリーナーユニット150は板状のワイパークリーナー151を備えている。ワイパークリーナー151はワイパーフレーム71の上面において、当該ワイパーフレーム71の短辺方向に架け渡されている。ワイパークリーナー151の配置位置は、ホームポジション73Aに位置するワイパーホルダーユニット73と、キャップユニット60の間の位置である。
【0171】
ワイパークリーナー151の両端部には、ワイピング方向H2とは逆の方向H1(ワイパー前進方向)に向けて延びているクリーナー支持板152、153が一体形成されている。クリーナー支持板152、153の先端部は、それぞれ支軸154(図において一方の支軸154のみを示す。)を中心として、ワイパーフレーム71の上面に対して接近および離間する方向に移動可能な状態で、ワイパーフレーム71に取り付けられている。
【0172】
また、クリーナー支持板152、153は、ワイパーフレーム71の側に支持されている棒状のバネ部材155によって、ワイパーフレーム71の上面から浮き上がる方向に常に付勢されている。これにより、ワイパークリーナー151は、ワイパーフレーム71の当接面71aとほぼ同一の高さ位置に浮き上がった状態となっている。
【0173】
ワイパークリーナー151におけるワイパー前進方向(H1)の側の縁には、4か所に、ワイパークリーニング用の凹状端面151(1)〜151(4)(ワイパークリーニング面)が形成されている。凹状端面151(1)〜151(4)は、ワイパー75(1)〜75(4)の先端縁部75bの湾曲形状に対応した形状をしている。また、凹状端面151(1)〜151(4)は、起立位置にある状態のワイパー75(1)〜75(4)の先端縁部75bの移動軌跡上に位置している。
【0174】
ワイパー75(1)〜75(4)は、ヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aのワイピングを終了した後は、ワイピング終了位置からホームポジション73Aに戻される。この後退時に、ワイパー75(1)〜75(4)は、ワイパークリーナー151を通過する。各ワイパー75(1)〜75(4)の先端縁部75bは、ワイパークリーナー151を通過する際に、各凹状端面151(1)〜151(4)を摺動する。これにより、ワイパー75(1)〜75(4)の先端縁部75bに付着しているインク等が、各凹状端面151(1)〜151(4)によって拭き取られる。
【0175】
湾曲しているワイパー75(1)〜75(4)を、対応する形状をした凹状端面151(1)〜151(4)によって拭き取ることにより、ワイパー75(1)〜75(4)の先端縁部75aの各部から確実にインク等の異物を拭き取ることができる。
【0176】
ワイパークリーナーユニット150は、ワイパークリーナー151で拭き取られたインク等を回収するための一対のインク回収部156、157を備えている。図6を参照して説明すると、インク回収部156、157は、キャップユニット60における第1、第2キャップベース62、63の一方の端に取り付けられている。インク回収部156、157は、板状のインク吸収材156a、157aと、これらが装着されている装着部156b、157bとを備えている。
【0177】
キャップユニット60をキャッピング方向に移動させると、ワイパーユニット70における両側の当接面71aがインクジェットヘッド11のノズル面11aを取り囲んでいるヘッドキャリッジ10の下面部分10a(図4参照)に当る。ワイパークリーナー151は、ヘッドキャリッジ10に隣接した位置に配置されており、ワイパークリーナー151もヘッドキャリッジ10の下面部分10aに当る。この結果、ワイパークリーナー151はワイパーフレーム71の側に押し込まれる。
【0178】
ワイパークリーナー151が押し込まれると、その凹状端面151(1)〜151(4)を含む部分が、インク回収部156、157のインク吸収材156a、157aに押し付けられた状態になる。これにより、ワイパークリーナー151の各凹状端面151(1)〜151(4)に付着しているインク等の異物が、インク吸収材156a、157aの側に吸収されて回収される。
【0179】
キャップユニット60をキャッピング状態から待機位置に向けて戻すと、ワイパークリーナー151はヘッドキャリッジ10の下面部分10aから離れる。これにより、再び、ワイパーフレーム71の上面から浮き上がった状態に戻る。すなわち、起立位置の状態で移動するワイパー75(1)〜75(4)の先端縁部75aに、凹状端面151(1)〜151(4)が当接可能なワイパークリーニング位置に戻る。
【0180】
このように、各ワイパー75(1)〜75(4)に付着したインク等の異物は、ワイピング動作毎に、ワイパークリーナー151によって拭き取られる。よって、ワイパー75(1)〜75(4)のワイピング性能を良好な状態に維持できる。また、ワイパークリーナー151に付着したインク等の異物は、キャッピング動作毎に、インク回収部156、157のインク吸収材156a、157aに吸収されて除去される。よって、ワイパークリーナー151のワイパークリーニング性能も常に良好な状態に維持できる。
【0181】
(キャップ斜め剥がし機構)
一般に、メンテナンス装置において、キャップによるノズル面のキャッピング状態では、キャップのリップ(開口縁端)の残留付着インク等によって、ノズル面とリップの間にインク膜面が形成されている場合がある。ノズル面に対して平行な状態で接しているキャップを、ノズル面に平行のままノズル面から剥がすと、ノズル面とリップの間に形成されているインク膜面に破裂が起こる。インク膜面が破裂すると、インク膜面を形成していたインクがノズル面の側に飛散してノズル面に付着することがある。ノズル面にインクが付着すると、インクノズルから適切にインク液滴を吐出できないおそれがある。
【0182】
したがって、キャップをインクジェットヘッドのノズル面から離す際には、キャップのリップの全体をノズル面から同時に離すのではなく、最初にリップの一部をノズル面から離し、この部位に連続するリップの部分を徐々にノズル面から離すことが望ましい。このためには、ノズル面に対して平行な状態でキャッピングされているキャップを、その一方の端が先にノズル面から離れるように、ノズル面に対して徐々に傾けながら当該ノズル面から剥がせばよい。本明細書においては、このように、ノズル面に対してキャップを徐々に斜めに傾けながら剥がす動作を、「キャップの斜め剥がし」と呼び、そのための機構を「キャップ斜め剥がし機構」と呼ぶ。したがって、キャップがノズル面に対して斜めであるとは、ノズル面に接するキャップのリップ面がノズル面に対して傾斜していることを意味する。このようなキャップの斜め剥がし機構を、少ない部品点数で簡単な構成で実現することが、メンテナンス装置の小型・コンパクト化の観点から望ましい。
【0183】
特に、複数のヘッドユニットからなる液体噴射ヘッド、例えば、ライン型のインクジェットヘッドでは、多数のヘッドユニットがノズル列方向に配列されている。各ヘッドユニットのノズル面を個別にキャッピングするために、ヘッドユニットに対応した個数のキャップを用いることがある。この場合には、複数のキャップのそれぞれに斜め剥がし動作を実現するための機構を組み込む必要があり、コストが掛かる。したがって、キャップ斜め剥がし機構を小型でコンパクトな構成にすることが、メンテナンス装置のメンテナンス装置の小型化、低コスト化に極めて有利である。
【0184】
このために、本例のキャップユニット60には、キャップ斜め剥がし機構160が付設されている。キャップ斜め剥がし機構160は、各キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)をヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4のノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aのそれぞれにキャッピングする動作においては、そのリップ面(キャップ開口縁の端面)をノズル面11aと平行な姿勢に維持する。また、キャッピング状態を解除する動作においては、そのリップ面をノズル面11aに対して徐々に傾斜させる。
【0185】
図18A〜図21を参照してキャップ斜め剥がし機構160の構成を説明する。図18A〜図18Cは、キャップ斜め剥がし機構160の構成および動作を模式的に示す説明図である。図19は、キャップユニット60および装置フレーム50の両側の側板52、53を示す斜視図であり、キャップ64(1)〜64(4)を取り外した状態を示す。図20はキャップユニット60およびキャップ64(2)を示す斜視図であり、キャップベース63、キャップ64(1)、64(3)、64(4)、65(1)〜65(4)を取り外した状態を示す。図21は、キャプユニット60に組み込まれているキャップの斜め剥がし動作を実現するために用いる移動部材のスライド機構を示す斜視図である。
【0186】
キャップの斜め剥がしのために、各キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)に配置されている構成部位は同一であるので、キャップベース63に搭載されているキャップ65(3)を例に挙げて説明する。
【0187】
まず、キャップ65(3)は、図20から分かるように、細長い直方体形状のキャップ本体部64aと、キャップ本体部64aの上面に開口している長方形あるいは長円形の輪郭のリップ部64bとを備えている。キャップ本体部64aの上面における長辺方向の両端部には上方に突出した位置決め用の突起64cが形成されている。これらの突起64cの間に位置するリップ部64bは、キャップ本体部64aの上面から上方に突出している。キャップ本体部64aは例えば硬質プラスチック素材から形成されている。リップ部64bは軟質プラスチック素材あるいはゴム素材から形成されている。
【0188】
キャップベース63は、図19、図20に示すように、全体として細長い直方体形状をしており、その天板部分161には、4個のキャップ65(1)〜65(4)を装着するための4つの長方形の開口部162(1)〜162(4)(以下、これらを開口部162と総称する。)が形成されている。開口部162に装着されているキャップ65(3)は、一対の圧縮コイルバネ63aによって支持されている。一対の圧縮コイルバネ63aは、図18に示すように、キャップ65(3)のキャップ本体部64aと、キャップベース62の底板部分163との間に配置されている。一対の圧縮コイルバネ63aは、キャップ本体部64aにおける長辺方向の両端部を支持しており、キャップ65(3)を、キャップベース63に対して、キャッピング方向V1(図における上方)に付勢している。
【0189】
キャップ本体部64aにおける一方の側面部分64dおよび反対側の側面部分64eのそれぞれには、図18、図20に示すように、一対のキャップ側係合突部164、165が形成されている(側面部分64dの側の係合突部は図示を省略してある。)。係合突部164、165は、これらの側面部分64d、64eから垂直に突出しており、キャップ本体部64aの長辺方向の両端側の部位に位置している。各キャップ側係合突部164、165の上面は、リップ部64bのリップ面64fに平行なキャップ側係合面164a、165aとなっている。これらキャップ側係合面164a、165aは同一平面上に位置している。
【0190】
キャップベース62の天板部分161において、その開口部162の長辺側の双方の開口縁端部には、それぞれ、キャップ側係合突部164、165に係合可能な一対のベース側係合部166、167が形成されている。これらのベース側係合部166、167の裏面は、同一平面上に位置しているベース側係合面166a、167aとなっている。
【0191】
キャップ65(3)は、圧縮コイルバネ63aによってキャッピング方向に付勢されている。キャップ65(3)のキャップ側係合面164a、165aは、ベース側係合面166a、167aにキャッピング解除方向V2の側から(図における下側から)押し付けられている。これによって、キャップ65(3)は、ノズル面2−3aと平行な姿勢に保持されている。すなわち、そのリップ面64fがノズル面2−3aと平行に保持されている。
【0192】
一方のベース側係合部166のベース側係合面166aには、キャッピング方向V1に、所定の段差分だけ後退したベース側係合面166bが形成されている。本例では、ベース側係合面166bは、ベース側係合面166aにおけるベース側係合面167aの側に隣接した位置に形成されている。
【0193】
キャップベース62には、その長辺方向にスライド可能な状態で、一定厚さの移動部材168が搭載されている。移動部材168の厚さは、ベース側係合面166aとベース側係合面166bの段差よりも大きな寸法に設定されている。
【0194】
移動部材168は、図18A、18Cに示す進出位置168Aから、図18Bに示す退避位置168Bまでの間を、スライド可能である。進出位置168Aにおいては、移動部材168は、ベース側係合面167bとキャップ側係合面164aの間に位置する。退避位置168Bでは、移動部材168は、これらの間から外れた退避位置に位置する。
【0195】
キャップ65(3)をノズル面2−3aにキャッピングしたキャッピング状態では、キャップ65(3)はノズル面2−3aによってキャッピング解除方向V2に押し込まれる。これにより、図18Aに示すように、ベース側係合面166bとキャップ側係合面164aの間には、移動部材168を進出させることのできる隙間が形成されるようになっている。
【0196】
キャップ側係合面164a、165aが、ベース側係合面166a、167aに押し付けられている状態では、図18Bに示すように、キャップ65(3)はノズル面2−3aに平行な姿勢に維持される。これに対して、キャップ側係合面164aが、移動部材168を挟み、ベース側係合面166bに押し付けられると、図18Cに示すように、キャップ65(3)は、ノズル面2−3aに対して移動部材168の厚さの分だけ斜めに傾く。すなわち、キャップ65(3)における長辺方向の一方の端は、キャップ側係合面164aが移動部材168を挟み、ベース側係合面166bに押し付けられ、キャップ65(3)の長辺方向の反対側の端では、キャップ側係合面165aがベース側係合面167aに押し付けられるので、ノズル面2−3aに対して、キャップ65(3)は、その長辺方向に沿って移動部材168の厚さの分だけ斜めにことになる。
【0197】
移動部材168を進出位置168Aおよび退避位置168Bにスライドさせるスライド機構を説明する。スライド機構は、キャップ駆動伝達機構80によるキャップユニット60のキャッピング方向V1への移動を、移動部材168の退避位置168Bから進出位置168Aへの移動に変換する。また、キャップユニット60のキャッピング解除方向V2への移動を、移動部材168の進出位置168Aから退避位置168Bへの移動に変換する。
【0198】
キャップ駆動伝達機構80によるキャップユニット60の移動を利用して、移動部材168を移動させることにより、移動部材168を移動させるための独自の駆動源が不要となる。また、キャップ65(3)の移動位置に応じて、移動部材168を適切に移動させることができ、その移動制御も簡単かつ正確に行うことができる。
【0199】
図18〜図20を参照して、本例のスライド機構の具体的な構成を説明する。スライド機構170は、キャップユニット60に配置した旋回可能な一対のレバー171、172を備えている。レバー171、172は支軸173の両端部に取り付けられており、当該支軸173を中心として旋回可能である。支軸173は、キャップフレーム61によって支持されており、その短辺方向に架け渡されている。
【0200】
図19から分かるように、装置フレーム50の側板部分52、53には、各レバー171、172に係合可能な一対の第1係合片174、175および一対の第2係合片176、177が形成されている。第1係合片174、175は、キャッピング方向V1に移動するレバー171、72に係合して、当該レバーを図18A、18Bに示す第1位置に旋回させる。本例では、キャップ64がキャッピング状態になる直前に、レバー171、172が第1係合片174、175に当り、第1位置に旋回する。
【0201】
第2係合片176、177は、キャッピング解除方向V2に移動するレバー171、172に係合して、当該レバーを第1位置から図18Cに示す第2位置に旋回させる。本例では、キャップ65がキャッピング解除方向に移動して、その退避位置に至る直前に、レバー171、172は、第2係合片176、177に当り、第2位置に旋回する。
【0202】
レバー171、172は、連結部178を介して、スライドユニット181、182に連結されている。スライドユニット181は、キャップベース62によって、その長辺方向にスライド可能な状態で支持されている。スライドユニット182は、キャップベース63によって、その長辺方向にスライド可能な状態で支持されている。スライドユニット181には4か所に移動部材168が形成されている。移動部材168は、それぞれ、キャップ64(1)〜64(4)のベース側係合面166bに対応する部位に位置している。同様に、スライドユニット182には4か所に移動部材168が形成されている。移動部材168は、それぞれ、キャップ65(1)〜65(4)のキャップ側係合面166bに対応する部位に位置している。
【0203】
連結部178は、レバー171、712とスライドユニット181、182の間を、レバー171、172の旋回運動をスライドユニット181、182のスライド運動に変換する。すなわち、連結部178は、図18Aに示すように、レバー171、172に形成したスライド溝171a、172aと、スライドユニット181、182に架け渡されている連結軸179とを備えている。連結軸179は、スライド溝171a、172aに沿ってスライド可能な状態で、これらのスライド溝171a、172aを貫通して延びている。
【0204】
レバー171、172が第1位置にある状態では、スライドユニット181、182は第1位置にあり、それらに形成した移動部材168が前進位置168Aに位置している。レバー171、172が第2位置に旋回すると、スライドユニット181、182は第2位置にスライドし、それらに形成した移動部材168が退避位置168Bに退避する。
【0205】
次に、図22A〜図22Eは、キャップ64の移動に伴う斜め剥がし機構の動作を示す説明図である。これらの図を主に参照して、斜め剥がし機構の動作を以下に纏めて説明する。
【0206】
まず、キャップ65(3)がノズル面2−3aをキャッピングした状態では、図22A(図18A)に示すように、ノズル面2−3aによって、キャップ65(3)は、圧縮コイルバネ63aのバネ力に逆らって、キャップベース63の側に押し込まれる。これにより、キャップ側係合面164aとベース側係合面166bの間に、移動部材168を進出させることのできる隙間ができる。したがって、キャッピング状態が形成される時点、あるいはその直前の時点において、移動部材168を進出させて、当該移動部材168を、キャップ側係合面164aとベース側係合面166bの間に位置決めする。
【0207】
移動部材168を進出させた状態で、キャップ駆動伝達機構80によってキャップユニット60をキャッピング解除方向V2に移動させると、キャップ65(3)をノズル面2−3aから剥がすことができる。キャップ65(3)は、ノズル面2−3aによる押し込みが徐々に解除され、キャップベース63に対して相対的にキャッピング方向V1に押し出される。この結果、キャップ側係合面164aが、進出位置168Aにある移動部材168を挟み、ベース側係合面166bの側に押し付けられる。
【0208】
次に、キャップユニット60のキャッピング解除方向V2への移動に伴って、キャップ65(3)はノズル面2−3aに対して徐々に斜めになる。すなわち、キャップ65(3)のリップ面64fは、その長辺方向の一方の端から他方の端に向かって、徐々に、ノズル面2−3aから剥がれる。キャップ64(3)のリップ全体がノズル面2−3aから離れた時点では、キャップ65(3)は、ノズル面2−3aに対して、移動部材168の厚さ分だけ斜めになる。
【0209】
この後は、図22B(図18C)に示すように、キャップベース63と一緒に、キャップ65(3)はキャッピング解除方向V2に移動し、ノズル面2−3aに対して斜めの姿勢のまま、当該ノズル面2−3aから離れる。
【0210】
キャップ65(3)がノズル面2−3aから離れた後に、移動部材168が退避位置168Bに移動する。すなわち、キャップユニット60がキャッピング解除方向V2に移動して待機位置に至る直前に、移動部材168が退避位置168Bに戻される。この結果、図22Cに示すように、キャップ側係合面164aが直接にベース側係合面166aに押し付けられた状態に戻る。これにより、キャップ65(3)はノズル面2−3aに平行な姿勢に戻る。
【0211】
キャップユニット60が退避位置からキャッピング方向V1に移動する場合には、キャップ65(3)のキャップ側係合面164a、165aがベース側係合面166a、167aに押し付けられている。したがって、図22D(図18C)に示すように、キャップ65(3)はノズル面2−3aに平行な姿勢となっている。
【0212】
キャップ駆動伝達機構80によってキャップユニット60をキャッピング方向V1に移動すると、キャップ65(3)はノズル面2−3aに平行な姿勢でノズル面2−3aに当る。さらに、キャップユニット60をキャッピング方向V1に移動させると、圧縮コイルバネ63aによって支持されているキャップ65(3)は、ノズル面2−3aによって、相対的にキャッピング解除方向V2に押し込まれる。この結果、キャップユニット60のキャッピング方向V1への移動が終了する直前の時点においては、図22Eに示すように、キャップ側係合面164aとベース側係合面166bの間に、移動部材168を進出させることのできる隙間ができる。そして、最初に述べた図22Aに示すキャッピング状態が形成される。
【0213】
以上説明したように、移動部材168を移動させることで、ノズル面2−3aからキャップ65(3)を斜めに剥がすことができる。キャッピング状態において、ノズル面2−3aとキャップ65(3)のリップ面64dの間にインク膜面が形成されている場合に、キャップ65(3)を斜めに剥がすことにより、インク膜面の破裂を防止できる。よって、インク膜面の破裂によるノズル面2−3aへのインク付着を防止できる。
【0214】
また、キャップ65(3)をノズル面2−3aから剥がした後に、移動部材168を退避させることで、キャップ65(3)をノズル面2−3aに平行な姿勢に戻すことができる。例えば、キャップ内電極とノズル面の側の電極との間の静電容量の変化を利用して、ヘッドユニット22の各ノズルからのインク液滴の吐出状態を検出する検出機構が備わっている場合がある。この場合には、ノズル面2−3aとキャップ65(3)が平行でないと、精度良く各ノズルの状態を検出ができないことがある。本例によれば、このような弊害を回避できる。また、キャップ65(3)が斜めの状態のまま、ノズル面2−3aをキャッピングすると、キャップ65(3)がノズル面2−3aに対して位置がずれて、ノズル面2−3aを確実にキャッピングできないおそれがある。また、キャップ65(3)が片当り状態になり、キャップ65(3)のリップ面64dとノズル面2−3aとの密着状態を形成できないことがある。このような弊害も解消できる。
【0215】
さらに、スライドユニット181、182をスライドさせることで、複数個の移動部材168を同時に移動させることができる。また、スライドユニット181、182をスライドさせるための機構を、キャップ駆動伝達機構80の移動を利用して行うようにしているので、駆動源を別途配置する必要がない。よって、複数のヘッドユニットをキャッピングするための複数のキャップを斜めに剥がす機構を、小型で簡単な構成にすることができる。
【0216】
[プリンターの制御系]
図23は、プリンター1の制御系を示す概略ブロック図である。プリンター1の制御系はコンピューターを中心に構成した制御部210を備えている。制御部210には、入出力部211を介して、例えば、上位のホストコンユーター220から、印刷データを含む印刷指令が供給される。制御部210は、紙送りモーター12、繰り出し用のローラー6のモーター等を含む記録紙搬送機構212を駆動制御して記録紙Pの搬送を行う。また、キャリッジ駆動機構213を駆動制御してキャリッジ10を移動させる。さらに、ヘッドドライバー214を駆動制御して、インクジェットヘッド11による印刷動作を行わせる。
【0217】
制御部210は、電源オフ時、印刷待機時等においては、キャリッジ駆動機構213を駆動制御して、キャリッジ10をホームポジションBに戻す。ホームポジションBにおいて、メンテナンス装置40の各部を駆動制御して、インクジェットヘッド11に対する所定のメンテナンス動作を実行する。
【0218】
制御部210は、メンテナンス動作においては、キャップ駆動伝達機構80を駆動制御してキャッピング動作を行わせる。キャップ64、65の移動位置は、位置検出器86によって検出されるキャップ待機位置(原点)と、モーター83に取り付けられているロータリーエンコーダー215の出力に基づき制御される。また、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90を駆動制御して、ノズル面11aのワイピング動作を実行する。
【0219】
ワイパー75の移動位置は、位置検出器216によって検出されるワイパーホルダーユニット73のホームポジション73A(原点)と、モーター91に取り付けられているロータリーエンコーダー217の出力に基づき制御される。位置検出器216は、ワイパーフレーム71とワイパーホルダーユニット73の間に組み付けられている。位置検出器216は、ワイパーフレーム71に取り付けたホトカプラと、ワイパーホルダーユニット73に取り付けた遮光用の検出片とによって構成できる。なお、プリンター1の動作状態等は、操作・表示部218に表示される。
【0220】
[メンテナンス装置40の各部の移動位置]
図24〜図27Cには、プリンター1のメンテナンス装置40の各部の移動位置を纏めて示してある。なお、図24〜図27Cにおいて、「ヘッド1」はヘッドユニット1−1〜1−4を意味し、「ヘッド2」は、ヘッドユニット2−1〜2−4を意味する。
【0221】
(キャップユニット60の移動位置)
図24は、キャップポジションを示す一覧表である。キャプポジション番号1〜12は、キャップユニット60のキャップ移動方向Vの各位置である。キャップポジション番号9の「キャップホーム検出位置」がキャップユニット60の通常の待機位置である。キャップユニット60は、電源オフ時、印刷待機時、印刷中において、待機位置に位置している。この位置は、位置検出器86によって検出される位置である。
【0222】
選択吸引のためのバルブ選択動作においては、キャップユニット60は、「キャップホーム検出位置」(待機位置)よりもキャッピング解除方向V2に移動した「バルブ選択ポジション(ヘッド2)」(番号10)およびバルブ選択ポジション(ヘッド1)」(番号12)に移動する。
【0223】
「バルブ選択ポジション(ヘッド1)」は、ヘッドユニット1−1〜1−4(キャップ64(1)〜64(4))を吸引するためのバルブ112A〜115Aを選択する場合のキャップユニット60の位置である。「バルブ選択ポジション(ヘッド2)」は、それよりもキャッピング解除方向V2に移動した位置であり、ヘッドユニット2−1〜2−4(キャップ65(1)〜65(4))を吸引するためのバルブ112B〜115Bを選択する場合のキャップユニット60の位置である。これらの間の「ワイパー起こしポジション」(番号11)は、ノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aをワイピングできるように、ワイパー75を起こす場合のキャップヘッド60の位置である。
【0224】
(バルブ選択時のワイパーホルダーユニット73の移動位置)
図25A、図25Bおよび図25Cは、バルブ選択時におけるワイパーホルダーユニット73の位置(ワイパーポジション)を示す説明図である。図25A、図25Cに示すように、ホジション番号1〜6は、バルブ112A〜115A(ヘッドユニット1−1〜1−4)を選択吸引する場合におけるバルブセレクター117Aのワイパー移動方向Hの位置を示す。これらの位置は、ワイパーホルダーユニット73のホームポジション73A(ワイパーホーム検出位置)からの移動距離によって管理される。
【0225】
図25B、図25Cに示すように、ポジション番号7〜11は、バルブ112B〜115B(ヘッドユニット2−1〜2−4)を選択吸引する場合におけるバルブセレクター117Bのワイパー移動方向Hの位置を示す。ポジション番号7〜11は、それぞれ、ワイパーホジション番号1〜6のそれぞれと同一位置である。
【0226】
(ワイパー選択時のワイパーホルダーユニット73の移動位置)
図26Aおよび図26Bは、ワイパー選択時におけるワイパーホルダーユニット73の位置を示す説明図である。ホジション番号13で示す位置は、ワイパー起こし部材122(1)によってヘッドユニット1−1、1−3をワイピングするワイパー75(1)を起立させる位置である。同様に、ホジション番号14で示す位置は、ワイパー起こし部材122(2)によってヘッドユニット1−2、1−4をワイピングするワイパー75(2)を起立させる位置である。ポジション番号15の位置は、ワイパー起こし部材122(3)によってヘッドユニット2−1、2−3をワイピングするワイパー75(3)を起立させる位置である。ポジション番号16の位置は、ワイパー起こし部材122(4)によってヘッドユニット2−2、2−4をワイピングするワイパー75(4)を起立させる位置である。
【0227】
(ワイピング開始位置)
図27A、図27Bおよび図27Cは、ワイピング開始時のワイパーホルダーユニット73の位置を示す説明図である。ホジション番号18は、ワイパー75(1)、ワイパー75(3)によるヘッドユニット1−1およびヘッドユニット2−1のワイピング開始位置である。ポジション番号19は、ワイパー75(2)、75(4)によるヘッドユニット1−2、2−2のワイピング開始位置である。ポジション番号20は、ワイパー75(1)、75(3)によるヘッドユニット1−3、2−3のワイピング開始位置である。ポジション番号21は、ワイパー75(2)、75(4)によるヘッドユニット1−4、2−4のワイピング開始位置である。
【0228】
ポジション番号22は、インク吸引時におけるワイパー75の待機ポジションである。ホジション番号23は、インク吸引の選択初期化時におけるワイパーホルダーユニット73の移動位置である。ポジション番号24は、ワイパークリーナー151によってワイパー75のクリーニングが行われる位置である。
【0229】
[メンテナンス装置40の動作例]
以下に、図24〜図27Cを主に参照して、メンテナンス装置40の状態および動作例を説明する。
【0230】
(電源オフ時、印刷待機時:キャッピング状態)
プリンター1の電源オフ時、印刷待機状態においては、インクジェットヘッド11はホームポジションBに待機している。
【0231】
キャップユニット60の位置は、最もノズル面11aに接近した「キャッピングホジション」(図24)である。キャップユニット60に搭載されているキャップ64(1)〜64(4)およびキャップ65(1)〜65(4)は、対応するヘッドユニット1−1〜1−4のノズル面1−1a〜1−4aおよび、ヘッドユニット2−1〜2−4のノズル面2−1a〜2−4aをキャッピングしたキャッピング状態にある。
【0232】
なお、キャップ駆動伝達機構80のスパイラルカム81a、81bのカム面82a、82bには、その先端に連続してノズル面20a、30aに平行な水平カム面82c、82dが形成されている(図7A等参照)。キャップユニット60がキャップ移動方向Vにおけるノズル面11aに最も接近した「キャッピングポジション」に移動すると、キャップユニット60の側のローラー(カムフォロワー)66が水平カム面82c、82dに乗り上げた状態になる。これにより、キャップユニット60は「キャッピングポジション」に安定した状態で保持される。メンテナンス装置40に振動が加わった場合に、キャップユニット60がノズル面11aから離れる方向に移動してしまうことがない。
【0233】
ワイパーユニット70はキャリッジ10に当接した当接位置に位置している。この当接位置では、ワイパーフレーム71の当接面71aが、インクジェットヘッド11のキャリッジ10の下面部分10aに、引張コイルバネ108bのバネ力によって、圧接された状態にある。ワイパーホルダーユニット73は、ワイパーユニット70の長辺方向の一方の端部のホームポジション73A(図25A〜25C:ワイパーホーム検出位置)に待機している。ワイパーホルダーユニット73に搭載されているワイパー75は倒れ位置の状態にある。
【0234】
ワイパーユニット70に搭載されているワイパークリーナー151は、キャリッジ10の下面部分10aによってワイパーフレーム71の側に押し付けられている。したがって、ワイパークリーナー151は、インク回収部156、157のインク吸収材156a、156bに押し付けられている。ワイパークリーナー151に付着しているインク等の異物がインク吸収材156a、156bの側に吸収される。
【0235】
ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90は、インク吸引ポンプ94を駆動可能な状態(インク吸引可能な状態)に切り替えられている。
【0236】
キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)とインクカートリッジ14のインク回収部の間に配置されているバルブ112A〜115A、112B〜115Bは、ノズルメニスカス保護のために、全開状態に保持されている。すなわち、バルブ全開レバー119A、119Bが、バルブセレクター117A、117Bによって押し込まれた状態にある(図25A〜図25C:バルブ全開ポジション)。これにより、各ノズルはバルブ112A〜115A、112B〜115Bを介して大気開放されている。
【0237】
移動部材168は、進出位置168Aに進出している。キャッピング状態では、移動部材168とキャップ側係合面164aの間、移動部材168とベース側係合面166bの間には、それぞれ隙間がある。したがって、各キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)は、対応するヘッドユニットのノズル面に平行な状態で、これらのノズル面に密着している。
【0238】
(印刷準備:キャッピング解除動作)
プリンター1の印刷開始時には、キャップユニット60をキャッピング解除方向V2に退避させる。これにより、ノズル面11aのキャッピングが解除され、キャリッジ10をホームポジションBから印刷位置Aに移動させることが可能になる。この後に、キャリッジ10を印刷位置Aに移動する。
【0239】
キャッピング解除動作においては、モーター83を駆動して、スパイラルカム81a、81bを回転させる。これにより、キャップユニット60は、キャップ移動方向Vに沿ってキャッピング解除方向V2(退避方向)に移動する。キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)は所定の押し込み量でノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aに押し付けられている。所定量だけキャップユニット60がキャッピング解除方向V2に移動するまでの間は、キャップ64(1)〜65(1)〜65(4)のリップ面64fは、バネ部材62a、63aのバネ力によって、ノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aに押し付けられている。
【0240】
移動部材168は進出位置168Aにある。キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)のそれぞれにおいては、一方のキャップ側係合面164aは、移動部材168を間に挟み、キャップベース62、63のベース側係合面166bに対峙している。他方のキャップ側係合面165aは、ベース側係合面167aに対峙している。
【0241】
キャップユニット60(キャップベース62、63)がキャッピング解除方向V2に移動して、一方のベース側係合面166bが移動部材168に当り、移動部材168をキャップ側係合面164aに押し付ける。
【0242】
この後は、キャップユニット60の移動に伴って、キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)における移動部材168の側の角から、キャッピング解除方向V2に押し込まれる。よって、キャップユニット60の移動に伴って、キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)はノズル面1−1a〜1−4a、2−1a〜2−4aに平行な姿勢から徐々に傾く。この結果、各キャップのリップ面64fは、最初に、移動部材168の側の角が各ノズル面から離れる。リップ面64fにおけるノズル面から離れる部位が徐々に、リップ面64fにおける他方の端の側に移動する。
【0243】
キャップユニット60(キャップベース62、63)がキャッピング解除方向V2に更に移動すると、キャップベース62、63における他方のベース側係合面167aが、直接、キャップ側係合面165aに当る(図18B、図22Bの状態)。この時点で、各キャップのリップ面64fが全体として各ノズル面から離れた状態になり、キャップの斜め剥がし動作が終了する。この時点におけるキャップユニット60の位置は、図24における「フラッシングポジション」と「ポンプ吸引ポジション」との間の位置である。この後は、各キャップは、斜めの姿勢のまま、キャップユニット60と共にキャッピング解除方向V2に移動する。
【0244】
キャップユニット60が更にキャッピング解除方向V2に移動すると、レバー171、172が装置フレーム50の側の第2係合片176、177に当る。この後は、キャップユニット60の移動に伴ってレバー171、172が旋回して、スライドユニット181、182がスライドする。スライドユニット81、182に形成されている各移動部材168が、ベース側係合面166bとキャップ側係合面164aの間から外れて退避位置に向けて移動する。この結果、各キャップは各ノズル面と平行な姿勢に戻る(図22C参照)。
【0245】
この後、キャップユニット60が更にキャッピング解除方向V2に移動すると、駆動切替機構100によるワイパー・ポンプ駆動ユニット90の駆動状態の切り替えが行われる。まず、キャップユニット60が「ポンプ吸引ポジション」(図24)に至ると、第1ラッチ機構102のラッチレバー102aが、装置フレーム50の側のカム面106から外れる。遊星歯車減速機93の内歯歯車93bが、第1ラッチ機構102によって、回転しないようにラッチされる(図8F参照)。
【0246】
キャップユニット60が「ワイパー移動ポジション」(図24)に至ると、第2ラッチ機構104のラッチレバー104aが、装置フレーム50の側のカム面105によって押される。第2ラッチ機構104によって、遊星キャリア93cのラッチが解除され、遊星キャリア93cが回転可能になる。この結果、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90によって、ワイパー75を移動させることが可能な状態に切り替わる。なお、この駆動状態切替動作中の不安定状態では、駆動モーター91を駆動しない。
【0247】
ここで、ワイパーユニット70は、引張コイルバネ108bを介して、装置フレーム50によってフローティング状態で支持されている。キャップユニット60の移動に追従せず、キャップ移動方向Vにおける同一位置に留まっている。すなわち、引張コイルバネ108bのバネ力によって、ワイパーフレーム71の当接面71aがキャリッジ10の下面部分10aに押し付けられおり、この状態の位置に保持されている。
【0248】
キャップユニット60は、キャッピング解除方向に更に移動して、「ワイピングポジション」(図24)に至る。この位置では、各キャップのリップ面64fが、ワイパーホルダーユニット73よりも、キャッピング解除方向V2に移動した位置に至る。この位置では、ワイパーホルダーユニット73を、キャップユニット60の上(キャッピング方向V1の側)を通して、ワイパー移動方向Hに移動させることが可能になる。
【0249】
更に、キャップユニット60はキャッピング解除方向V2に移動する。キャップユニット60が「ワイパーユニットの上下移動開始ポジション」(図24)に至ると、キャップフレーム61の係合突起61aがワイパーフレーム71の矩形枠部分71cに当る。この後は、キャップユニット60と共にワイパーユニット70が、ワイパーユニット当接位置70Aからキャッピング解除方向V2に移動する。ワイパーユニット70のワイパーフレーム71の当接面71aがキャリッジ10の下面部分10aから徐々に離れる。
【0250】
キャップユニット60が「キャリッジ移動ポジション」(図24)に至ると、キャリッジ10の移動が可能になる。ワイパーユニット70に搭載されているワイパークリーナー151は、キャリッジ10の下面部分10aによる押し付けが解除され、ワイパーフレーム71から浮き上がった位置に復帰する。
【0251】
この後は、ワイパーユニット70は待機位置である「キャップホーム検出位置」(図24)まで移動し、この位置で待機する。このようにして、キャッピング状態のメンテナンス装置40は待機状態になる。キャリッジ10を移動させて、インクジェットヘッド11を印刷位置Aに位置決めして、印刷可能な状態になる。
【0252】
(印刷時の動作:フラッシング、不良ノズル検査)
印刷状態においては、定期的に、キャリッジ10をホームポジションBに戻して、インクジェットヘッド11のフラッシング、不良ノズル検査を行う。フラッシングは、インクジェットヘッド11を構成しているヘッドユニット1−1〜1−4、2−1〜2−4の各ノズルから各キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)に向けてインク液滴を吐出する動作である。不使用ノズルに溜まっているインクを除去することで、ノズル詰まりを未然に防止できる。不良ノズル検査は、各ノズルからインク液滴を各キャップに向けて吐出させ、インク液滴が吐出したか否かを検出する。これに基づき、インク液滴が吐出しないノズル、適切な量のインク液滴が吐出されないノズル等の不良ノズルを判別する。
【0253】
フラッシングを行う場合には、待機位置(キャップホーム検出位置)にあるキャップユニット60は、キャッピング方向V1に移動して、「プラッシングポジション」(図24)に至り、この位置で止まる。この位置では、各キャップのリップ面64fが各ノズル面に接触せずに、当該ノズル面に近接した位置となる。また、不良ノズル検査を行う場合には、待機位置にあるキャップユニット60は、「不良ノズル検査ポジション」(図24)に至り、この位置で止まる。この位置は、「フラッシングポジション」よりも僅かにキャッピング方向V1に移動した位置である。
【0254】
待機位置にあるキャップユニット60では、各キャップは各ノズル面に平行な状態に保持されている。各キャップは平行な状態のまま、「フラッシングポジション」、「不良ノズル検査ポジション」に移動する。不良ノズル検査機構として、ヘッド側およびキャップ側に配置した電極間の静電容量の変化に基づきインク液滴の吐出状況を判別するものが知られている。このような場合には、双方の電極を平行状態に維持することで、検出精度が確保される。本例では、待機位置からキャッピング方向へ移動する場合には、各キャップは各ノズル面に平行な姿勢に保持され、この状態で不良ノズル検査が行われる。よって、静電容量の変化に基づき不良ノズルを判別する場合には、精度良く検査を行うことが可能になる。
【0255】
(選択吸引動作)
例えば、不良ノズルが検出された場合には、不良ノズルが見つかったヘッドユニットを選択し、当該ヘッドユニットのノズルからインクを吸引する選択吸引動作が行われる。以下に、一例として、ヘッドユニット1−1を選択吸引する場合を説明する。
【0256】
両側のバルブセレクター117A、117Bが「バルブ全開ポジション」(図25A〜図25C)にあるものとする。この場合には、キャップユニット60は「不良ノズル検査ポジション」あるいは「フラッシングポジション」(図24)からをキャッピング解除方向V2に移動して、待機位置である「キャップホーム検出位置」(図24)で止まる。
【0257】
ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90によって、ワイパーホルダーユニット73はホームポジション73Aである「ワイパーホーム検出位置」(図25A〜25C)からワイパー前進方向H1に移動して「バルブ全開ポジション」で止まる。これにより、ワイパーホルダーユニット73に搭載されている両側のセレクターフック118A、118Bは、ワイパー移動方向Hにおいて、それぞれバルブセレクター117A、117Bに位置決めされる。
【0258】
次に、キャップユニット60はキャッピング解除方向V2に最も移動した位置、「バルブ選択ポジション(ヘッド1)」(図24)で止まる。キャップユニット60と一緒にワイパーユニット70も移動し、セレクターフック118A、118Bがバルブセレクター117A、117Bにそれぞれ係合した状態になる(図12FのST1)。
【0259】
この状態で、ワイパーホルダーユニット73はワイパー前進方向H1に移動して、「バルブ1−1ポジション」(「バルブ2−1ポジション」)で止まる(図25A〜25C)。セレクターフック118A、118Bに係合しているバルブセレクター117A、117Bも一緒に移動して「バルブ1−1ポジション」(「バルブ2−1ポジション」)に位置決めされる。この結果、バルブ112A、112Bが開き、ヘッドユニット1−1、2−1をキャッピングするキャップ64(1)、65(1)からのインク吸引が可能になる。
【0260】
次に、キャップユニット60はキャッピング方向V1に移動して、「バルブ選択ポジション(ヘッド2)」(図24)に止まる。キャップユニット60と一緒にワイパーユニット70も同一方向に移動し、セレクターフック118Aがバルブセレクター117Aから外れる。他方のセレクターフック118Bはバルブセレクター117Bとの係合状態が維持される(図12FのST2)。
【0261】
この状態で、ワイパーホルダーユニット73はワイピング方向H2に移動して、バルブ全開ポジション1(バルブ全開ポジション7)で止まる。セレクターフック118Bに係合しているバルブセレクター117Bも一緒に同一方向に移動して、「バルブ全閉ポジション」(図25A〜25C)に位置決めされる。この結果、バルブ112B〜115Bの全てが閉じ状態に戻る。
【0262】
このようにして、バルブ112Aのみが開き状態に切り替わり、バルブ112Aが選択された状態になる。すなわち、インク吸引対象のヘッドユニット1−1に対応したバルブ112Aのみを開くことができる。
【0263】
この後は、キャップユニット60はキャッピング方向V1に移動して、待機位置(図24:キャップホーム検出位置)で止まる。次に、ワイパーホルダーユニット73はワイパー前進方向H1に移動して、「吸引時待機ポジション」(図27A〜図27C)に止まり、この位置で待機する。
【0264】
この後は、キャップユニット60はキャッピング方向V1に移動して、「キャッピングポジション」(図24)に止まる。キャップユニット60の移動途中の位置である「ポンプ吸引ポジション」(図24)において、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90が切り替わり、インク吸引ポンプ94を駆動可能になる。
【0265】
キャップ64、65によってヘッドユニット20、30がキャッピングされた状態になる。この状態で、インク吸引ポンプ94が駆動され、インク吸引動作が行われる。開いているバルブ112Aを介して、ヘッドユニット21のみのインク吸引動作が行われる。
【0266】
なお、停電などによってプリンター1が停止する場合がある。この場合には、バルブセレクター117A、117Bの位置が不明になる。この場合には、ワイパーホルダーユニット73を「吸引選択初期化ポジション」(図27A〜27C)まで一旦移動する。次に、キャップユニット60をキャッピング解除方向V2に移動させる。そして、ワイパーホルダーユニット73をワイピング方向H2に移動する。
【0267】
ワイパーホルダーユニット73に搭載されているセレクターフック118A、118Bは、バルブ112A〜115A、112B〜115Bに対して、ワイパー移動方向Hに外れた位置から移動する。したがって、移動の途中において、セレクターフック118A、118Bの端面が、各バルブセレクター117A、117Bの端面に当たる。したがって、各バルブセレクター117A、117Bを初期位置に戻すことができる。これにより、バルブ選択動作を適切に行うことができる。
【0268】
インク吸引動作が終了した後は、キャップユニット60はキャッピング解除方向V2に移動を開始する。キャップユニット60の移動に伴って、各キャップの斜め剥がし動作が行われる(図18A〜18C参照)。
【0269】
(選択ワイピング)
各キャップ64(1)〜64(4)、65(1)〜65(4)を、斜め剥がし動作によって、ヘッドユニット1−1〜1−4のノズル面1−1a〜1−4a、および、ヘッドユニット2−1〜2−4のノズル面2−1a〜2−4aから離した後に、選択ワイピングを行う場合の動作を説明する。インク吸引が行われたヘッドユニット1−1のノズル面1−1aをワイピングする場合を説明する。
【0270】
キャップユニット60はキャッピング解除方向V2に移動して、「ワイピングポジション」(図24)に止まる。この「ワイピングポジション」に至る手前の位置である「ワイパー移動ポジション」(図24)において、ワイパー・ポンプ駆動伝達機構90はワイパー駆動側に切り替わる。
【0271】
「ワイピングポジション」において、「吸引時待機ポジション」(図27A〜27C)に待機していたワイパーホルダーユニット73は、ワイパー前進方向H1に移動して、ワイパー起こし部材122(1)に対応するワイパー起こし位置(図26A、図26B)に止まる。
【0272】
この位置において、キャップユニット60はキャッピング解除方向V2に移動して、「ワイパー移動ポジション」(図24)で止まる。ワイパーユニット70はキャップユニット60と一緒に移動する。この移動によって、ワイパーユニット70に搭載されているワイパーホルダーユニット73のワイパー75(1)が、ワイパー起こし部材122(1)によって押し上げられて、倒れ位置から起立位置の状態に切り替わる。他のワイパー75(2)〜75(4)は倒れ位置の状態のまま保持される。
【0273】
次に、キャップユニット60はキャッピング方向V1に移動して、「ワイパー回避ポジション」(図24)で止まる。この状態で、ワイパーホルダーユニット73はワイピング方向H2に移動して、ワイピング対象の印刷ノズル1−1のノズル面1−1aの手間の「ワイピング開始ポジション」(図27A〜図27C)に位置決めされる。
【0274】
この状態で、キャップユニット60はキャッピング方向V1に移動して、「ワイピングポジション」(図24)に止まる。この位置では、ワイパー75(1)の先端縁部75bがヘッドユニット1−1のノズル面1−1aよりも僅かにキャッピング方向V1に突出した状態になる。これによりワイピングの準備が整う。
【0275】
次に、ワイパーホルダーユニット73がワイピング方向H2に設定速度で移動する。ここに搭載されている起立状態のワイパー75(1)によって、ノズル面1−1aのワイピングが行われる。
【0276】
ワイパー75(1)がノズル面1−1aの外周を取り囲んでいるヘッドカバー面10b(図4、図27A参照)まで移動した時点で、ワイパー75(1)を止める(ワイパーホルダーユニット73を止める。)。
【0277】
この後は、キャップユニット60が移動して、「ワイパー回避ポジション」を経由して「ワイパー移動ポジション」で止まる(図24)。ワイパー75(1)がノズル面1−1aから外れた後に、勢いよく元の形状に弾性復帰すると、ワイパー75(1)の先端縁部75bに付着しているインク等の異物が周囲に飛散するおそれがある。飛散したインク等の異物は、周囲の部分に付着して、それらを汚してしまう。
【0278】
特に、複数のヘッドユニットを備えた液体噴射ヘッド、例えば、ライン型のインクジェットヘッドの場合には、複数のヘッドユニットが狭い間隔で密に配列されている。一つのヘッドユニットのノズル面をワイピングした後のワイパーからインク等の異物が飛散すると、飛散したインク等の異物が、隣接の別のヘッドユニットのノズル面に付着し、当該ノズル面を汚すおそれがある。したがって、ワイピング終了後に、ノズル面から外れたワイパーからインク等の異物が飛散することを確実に防止する必要がある。
【0279】
本例では、ノズル面1−1aをワイピングした後に、撓んだ状態にあるワイパー75(1)が、ノズル面1−1aの側から離れる方向(キャッピング解除方向V2)に僅かに移動する。移動速度を適切に設定しておくとで、ワイパー75(1)の先端縁部75bが徐々に弾性復帰する。よって、インク等の異物が周囲に飛散することがない。
【0280】
また、図9A〜図9Cを参照して説明したように、キャップユニット60と共にワイパーユニット70がキャッピング解除方向V2に移動する際には、僅かに、ワイパーホルダーユニット73がワイピング方向H2とは逆の方向に僅かに移動する。したがって、ワイパー75(1)は、ノズル面1−1aに対して、キャッピング解除方向に対して、その先端縁部75bが撓んでいる方向に向けて、僅かに傾斜した方向に移動する。この結果、ワイパー75(1)の先端縁部75bとノズル面1−11aの側の接触点が殆ど移動することなく、この先端縁部75bがノズル面1−1aの側から離れる。よって、先端縁部75bに付着しているインク等の異物が周囲に飛散することを確実に防止できる。
【0281】
特に、本例では、インクジェットヘッド11は、複数のヘッドユニット1−1〜1―4、2−1〜2−4が狭い間隔で配列された構成となっている。ヘッドユニット1−1のノズル面1−1aをワイピングした後のワイパー75(1)からインク等の異物が飛散すると、隣接しているヘッドユニット1−2のノズル面1−2a、ヘッドユニット1−3のノズル面1−3aに飛散したインク等の異物が付着して、ノズル不良が発生するおそれがある。したがって、ワイピングの終わった時点でワイパー75(1)をワイピング方向(ワイパー後退方向)とは異なる方向に移動させて、ワイパー先端縁部75bが勢いよく弾性復帰しないようにすることが極めて有効である。
【0282】
次に、キャップユニット60が「ワイパー移動ポジション」(図24)まで移動すると、ワイパーユニット70の当接面71aがキャリッジ10の下面部分10aから離れる。これにより、ワイパーユニット70のワイパークリーナー115が浮き上がり、ワイパー75の先端縁部75bをクリーニングが可能になる。
【0283】
この状態で、ワイパーホルダーユニット73がワイピング方向H2に移動して、ホームポジション73A(ワイパーホーム検出位置)まで戻る。この移動の途中において、起立状態のワイパー75(1)の先端縁部75bは、ワイパークリーナー151の凹状端面151(1)を摺動して通過する(図27A〜図27C:ワイパークリーニングポジション)。この際に、先端縁部75bに付着していたインク等の異物が、ワイパークリーナー151の側に掻き取られる。
【0284】
また、ワイパーホルダーユニット73がホームポジション73Aに戻る手前に位置において、起立状態のワイパー75(1)はワイパー倒し部材123(1)に押されて、倒れ位置に戻る。これにより、ヘッドユニット1−1のノズル面1−1aの選択ワイピングが終了する。
【符号の説明】
【0285】
1 インクジェットプリンター、2 ロール紙装填部、3 ロール紙、4 排紙口、5 記録紙搬送経路、6 繰り出しローラー、7 用紙ガイド、8 搬送ローラー対、9 プラテン、10 ヘッドキャリッジ、10a 下面部分、10b ヘッドカバー面、11 インクジェットヘッド、11a ノズル面、11A 第1ヘッド、11B 第2ヘッド、12 紙送りモーター、13 インクカートリッジ装着部、14 インクカートリッジ、1−1〜1−4 ヘッドユニット、1−1a〜1−4a ノズル面、2−1〜2−4 ヘッドユニット、2−1a〜2−4a ノズル面、
40 メンテナンス装置、50 装置フレーム、51 底板、52,53 側板、54,55 端板、56a,56b ガイドポスト、
60 キャップユニット、61 キャップフレーム、61a 係合突起、61b 側板部分、61c レバー押し込み突起、62 第1キャップベース、62a バネ部材、63 第2キャップベース、63a バネ部材、64(1)〜64(4) キャップ、64a キャップ本体部、64b リップ部、64c 突起、64d 側面部分、64e 側面部分、64f リップ面、65(1)〜65(4) キャップ、66 ローラー、
70 ワイパーユニット、71 ワイパーフレーム、71a 当接面、71b 側板部分、71c 矩形枠部分、72 ガイド軸、73 ワイパーホルダーユニット、73a 係合穴、73A ホームポジション、74(1)〜74(4) ワイパーホルダー、74a 係合突起、74A 倒れ位置、74B 起立位置、75(1)〜75(4) ワイパー、75a 凸状面、75b 先端縁部、76 スライド枠、77(1)〜77(4) 位置保持腕、
80 キャップ駆動伝達機構、81a、81b スパイラルカム、82a、82b カム面、83 モーター、84 動力伝達機構、85a、85b ガイド孔、86 位置検出器、
90 ワイパー・ポンプ駆動伝達機構、90A カバー、91 駆動モーター、92 伝達歯車列、93 遊星歯車減速機、93a 入力軸、93d 太陽歯車、93e 遊星歯車、93b 内歯歯車、93c 遊星キャリア、93f 駆動側外歯車、94 インク吸引ポンプ、95a 伝達用外歯車、95b 従動側外歯車、96 駆動側スプロケット、97 従動側スプロケット、98 駆動ベルト、99 スライダー、99a 突起、
100 駆動切替機構、101 第1引張コイルバネ、102 第1ラッチ機構、102a 第1ラッチレバー、103 第2引張コイルバネ、104 第2ラッチ機構、104a 第2ラッチレバー、105 第1カム面、106 第2カム面、107a ガイド部、107b ガイド部、108a バネ掛け、108b 引張コイルバネ、108c バネ掛け、109a 係合突起、109b 係合枠、109c 係合突起、109d 係合枠、
110 吸引チューブ、112〜115 バルブ、112a〜115a 開閉レバー、116a ガイド軸、116b ガイドレール、117A バルブセレクター、117B バルブセレクター、117a 係合突起、117b レバー押し込み突起、118A セレクターフック、118B セレクターフック、118a 係合凹部、119 バルブ全開レバー、
121 旋回中心軸、122A 基板、122B 基板、122(1)〜122(4) ワイパー起こし部材、123(1)、123(2) ワイパー倒し部材、125 支軸、126 圧縮コイルバネ、127 リンク、127a 係合端面、128 リンク、128a 軸孔、128b 係合突起、129 連結ピン、
130(1)〜130(3) 規制部材、130a 係合端面、
150 ワイパークリーナーユニット、151 ワイパークリーナー、151(1)〜151(4) 凹状端面、152、153 クリーナー支持板、154 支軸、155 バネ部材、156,157 インク回収部、156a,157a インク吸収材、156b、157b 装着部、
160 キャップ斜め剥がし機構、161 天板部分、162(1)〜162(4) 開口部、164、165 キャップ側係合突部、164a、165a キャップ側係合面、166、167 ベース側係合部、166a、167a ベース側係合面、166b ベース側係合面、168 移動部材、168A 進出位置、168B 退避位置
170 スライド機構、171、172 レバー、171a、172a スライド溝、173 支軸、174、175 第1係合片、176、177 第2係合片、178 連結部、179 連結軸、
181、182 スライドユニット、
201 旋回枠、202 連結板
210 制御部、211 入出力部、212 記録紙搬送機構、213 キャリッジ駆動機構、214 ヘッドドライバー、215 ロータリーエンコーダー、216 位置検出器、217 ロータリーエンコーダー、218 操作・表示部
220 ホストコンピューター
P 記録紙
A 印刷位置
B ホームポジション
V キャップ移動方向
V1 キャッピング方向
V2 キャップ解除方向
H ワイパー移動方向
H1 ワイパー前進方向
H2 ワイパー後退方向(ワイピング方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、
前記ノズル面をワイピングするワイパーと、
前記キャップからインクを吸引する吸引ポンプと、
前記キャップを前記ノズル面に対して移動させるキャップ駆動伝達機構と、
前記ワイパーを移動させると共に前記吸引ポンプを駆動するワイパー・ポンプ駆動伝達機構と、
前記キャップの移動位置に応じて、前記吸引ポンプの駆動もしくは前記ワイパーの移動に前記ワイパー・ポンプ駆動伝達機構の駆動を切り替える駆動切替機構と、
を有することを特徴とする液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項2】
前記駆動切替機構は、
駆動軸を回転させる駆動モーターと、
内歯車もしくは遊星キャリアを有し、前記駆動モーターの前記駆動軸の回転を減速して前記内歯車もしくは前記遊星キャリアを回転させる遊星歯車減速機と、
前記キャップの移動位置に応じて、前記遊星歯車減速機の前記内歯車もしくは前記遊星キャリアの回転を停止するラッチ機構と、
を備える請求項1に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項3】
前記ワイパーを支持して移動するワイパーフレームと、
前記ワイパーフレームを支持する装置フレームと、
前記装置フレームに配設されて、前記ワイパーフレームを支持する弾性部材と、
前記キャップを支持し、前記キャップ駆動伝達機構で移動されるキャップ支持部材と、
前記ワイパーフレームに配設され、前記キャップ支持部材と係合して前記ワイパーフレームを前記キャップ支持部材と移動させる係合部と、
を有する請求項1に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項4】
前記ワイパーでワイピングする前記ノズル面と異なる位置のノズル面をワイピングする第2ワイパーと、
前記ワイパーフレームに配設されて、前記ワイパー及び前記第2ワイパーを支持して移動するワイパーホルダーと、有し、
前記ワイパー・ポンプ駆動伝達機構は、前記ワイパーホルダーを移動させる請求項3に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項5】
前記ワイパーが移動する方向の第1位置に配設され、前記ワイパーフレームが前記ノズル面から離れる方向に移動したときに前記ワイパーと係合して前記ワイパーを第1の状態から前記第1の状態と異なる第2の状態に切り替える第1ワイパー係合部材と、
前記ワイパーが移動する方向の前記第1位置とは異なる第2位置に配設され、前記ノズル面から離れる方向に移動したときに前記ワイパーと係合して前記ワイパーを第1の状態から前記第1の状態と異なる第2の状態に切り替える第2ワイパー係合部材と、
前記ワイパーが移動する方向の前記第1位置及び前記第2位置とは異なる第3位置に配設され、前記ワイパーが前記第3位置に移動したときに、前記ワイパーおよび前記第2ワイパーに係合して、前記ワイパーおよび前記第2ワイパーを前記第2の状態から前記第1の状態に切り替える第3ワイパー係合部材と、
を有する請求項4に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項6】
前記キャップでキャッピングする前記ノズル面と異なる位置の前記ノズル面をキャッピングする第2キャップを有し、
前記キャップ支持部材は、前記キャップおよび前記第2キャップを支持する請求項3に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項7】
前記キャップ支持部材は、前記キャップを前記ノズル面に押圧する第1キャップ押圧部材と、前記第2キャップを前記ノズル面に押圧する第2キャップ押圧部材と、を支持する請求項6に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項8】
前記キャップで吸引されたインクを移動させる第1インク吸引経路と、
前記第2キャップで吸引されたインクを移動させる第2インク吸引経路と、
前記第1インク吸引経路を開閉する第1バルブと、
前記第1バルブと前記ワイパーの移動方向の異なる位置に配設されて前記第2インク吸引経路を開閉する第2バルブと、
前記ワイパーの移動方向に移動し、前記第1バルブと対向した位置もしくは前記第2バルブと対向した位置に移動して、前記第1バルブもしくは前記第2バルブを開閉するバルブセレクターと、
を有する請求項6に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項9】
前記ワイパーは、凸曲面を有し、
前記ワイパーの前記凸曲面と接触する凹曲面を有し、前記ワイパーの前記凸曲面をクリーニングするワイパークリーナーを備える
請求項4に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項10】
前記第2ワイパーは、凸曲面を有し、
前記ワイパークリーナーは、前記第2ワイパーの前記凸曲面と接触する凹曲面を有する
請求項9に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項11】
前記ワイパーフレームに配設され、前記ワイパークリーナーを支持するワイパークリーナー弾性支持部材を有する
請求項10に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項12】
前記ワイパー・ポンプ駆動伝達機構を駆動させて前記ワイパーで前記ノズル面をワイピングさせた後、前記キャップ駆動伝達機構を駆動させて前記ワイパーを前記ノズル面から離間させる制御部を有する請求項3に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項13】
前記ワイパー・ポンプ駆動伝達機構は、前記装置フレームに配設される駆動側外歯車、前記ワイパーフレームに配設される従動側外歯車、前記駆動側外歯車の軸線で旋回する旋回部材、前記旋回部材で支持されて前記駆動側外歯車との噛み合い状態を維持して当該駆動側外歯車の軸線回りに公転する伝達用外歯車、及び前記従動側外歯車と前記伝達用外歯車とに噛み合う連結部材を有するワイパー駆動伝達機構部を備える請求項12に記載の液体噴射ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項14】
インクを吐出するノズルを配設するノズル面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ、及び前記ノズル面をワイピングするワイパーを有するメンテナンス部と、
前記キャップからインクを吸引する吸引ポンプと、
前記キャップを前記ノズル面に対して移動させるキャップ駆動伝達機構と、
前記ワイパーを移動させると共に前記吸引ポンプを駆動するワイパー・ポンプ駆動伝達機構と、
前記キャップの移動位置に応じて、前記吸引ポンプの駆動もしくは前記ワイパーの移動に前記ワイパー・ポンプ駆動伝達機構の駆動を切り替える駆動切替機構と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項15】
インクを吐出するノズルを配設するノズル面を有し、インクを記録媒体に吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ、及び前記ノズル面をワイピングするワイパーを有するメンテナンス部と、
前記キャップからインクを吸引する吸引ポンプと、
前記キャップを前記ノズル面に対して移動させるキャップ駆動伝達機構と、
前記ワイパーを移動させると共に前記吸引ポンプを駆動するワイパー・ポンプ駆動伝達機構と、
前記キャップの移動位置に応じて、前記吸引ポンプの駆動もしくは前記ワイパーの移動に前記ワイパー・ポンプ駆動伝達機構の駆動を切り替える駆動切替機構と、
前記記録媒体を搬送する搬送経路と、
前記記録媒体を前記搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
を備えることを特徴とするプリンター。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図22E】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−78940(P2013−78940A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202259(P2012−202259)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】