液体噴射ヘッド用のフィルタ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
【課題】容易、且つ確実に取り付けることができると共に、製造コストを低減できる液体噴射ヘッド用のフィルタを提供する。
【解決手段】第1金属プレート11、及び第2金属プレート12を積層してなり、供給されるインクを濾過するための液体噴射ヘッド用のフィルタ10であって、各金属プレート11,12に、それぞれ厚さ方向に貫通するフィルタ用貫通孔15a,15bを複数形成すると共に、これらフィルタ用貫通孔15a,15bを法線方向で重ならないように配置し、互いに重なり合う金属プレート11,12の合わせ面のうち、少なくとも一方の合わせ面に、各フィルタ用貫通孔15a,15bを連通させるための連通溝16が形成されている。
【解決手段】第1金属プレート11、及び第2金属プレート12を積層してなり、供給されるインクを濾過するための液体噴射ヘッド用のフィルタ10であって、各金属プレート11,12に、それぞれ厚さ方向に貫通するフィルタ用貫通孔15a,15bを複数形成すると共に、これらフィルタ用貫通孔15a,15bを法線方向で重ならないように配置し、互いに重なり合う金属プレート11,12の合わせ面のうち、少なくとも一方の合わせ面に、各フィルタ用貫通孔15a,15bを連通させるための連通溝16が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズル孔より液体を吐出して被記録媒体に画像や文字を記録する液体噴射ヘッド用のフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクタンクからインク(液体)が供給されるインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)はヘッドチップを有している。そして、このヘッドチップのノズル孔からインクを被記録媒体に吐出することで記録が行われるようになっている。
ここで、例えばノズル孔にインクが固化することにより形成される異物等が浸入し、ノズル孔の詰まりによるインクの吐出不良が生じる場合がある。このため、できる限りインクジェットヘッドのインク供給口の近傍に、フィルタを設けることが望ましい。フィルタは、金属糸を織り込むことにより形成されているものが多い。
【0003】
また、インク供給口を微細な複数の貫通孔からなるフィルタ構造とし、インクの吐出不良を防止する技術が開示されている。微細な複数の貫通孔は、異方性エッチング技術を利用することにより形成される。また、貫通孔の孔径を微細なものとするために、複数の貫通孔をそれぞれ屈曲形成させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−62302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、金属糸を織り込むことにより形成されるフィルタは平坦度が低いので、例えばフィルタを接着等により取り付ける場合、接着面に対してフィルタが浮いてしまう部分が生じ、フィルタの機能を十分に発揮できなくなってしまうという課題がある。
また、上述の特許文献1にあっては、インク供給口に微細な複数の貫通孔を形成するにあたって異方性エッチング技術を利用しているが、貫通孔の孔径を、異物が貫通孔を通過不可能な程度の大きさに設定するには、貫通孔を高精度に形成する必要がある。このため、製造コストが嵩むという課題がある。
【0006】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、容易、且つ確実に取り付けることができると共に、製造コストを低減できる液体噴射ヘッド用のフィルタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、複数のプレートを積層してなり、供給される液体を濾過するための液体噴射ヘッド用のフィルタであって、各プレートに、それぞれ厚さ方向に貫通する貫通孔を複数形成すると共に、これら貫通孔を法線方向で重ならないように配置し、互いに重なり合う前記プレートの合わせ面のうち、少なくとも一方の合わせ面に、各貫通孔を連通させるための凹部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このように、プレートを積層することによりフィルタを形成するので、平坦度を高めることができ、接着面に確実にフィルタを固着させることができる。
また、合わせ面に形成される凹部の深さを管理するだけで液体内に含まれる異物の通過を阻害することができるので、従来と比較して製造コストを低減することができる。
【0009】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、前記凹部は、面方向で隣接する前記貫通孔同士を連通するように形成された連通溝であって、この連通溝の法線方向に他の前記プレートの前記貫通孔が配置されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、フィルタを通過する液体の流路を十分確保することが可能になり、フィルタの濾過性能を高めることができる。
【0011】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、互いに重なり合う前記プレートの合わせ面のうち、一方の合わせ面にのみ前記凹部を形成したことを特徴とする。
【0012】
このように構成することで、凹部が形成されている部分のプレート間の隙間管理を容易に行うことが可能になる。このため、安価で濾過性能の高いフィルタを提供することができる。
【0013】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、互いに重なり合う前記プレートの両方の合わせ面に、それぞれ前記凹部を形成したことを特徴とする。
【0014】
このように構成することで、各プレートの形状を統一でき、製造コストを低減することが可能になる。
【0015】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、前記複数のプレートのうち、少なくとも1つのプレートに形成されている前記貫通孔は、前記液体の通流方向下流側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする。
【0016】
このように構成することで、フィルタを通過する液体の圧損を低減でき、液体の流速を十分確保することができる。
【0017】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、各プレートに形成された貫通孔は、前記液体の通流方向下流側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする。
このように構成することで、より確実に液体の流速を十分確保することができる。
【0018】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、2つの前記プレートを互いに重ね合せて構成し、これら2つの前記プレートのうち、少なくとも一方のプレートに形成された前記貫通孔は、各プレートの合わせ面側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、1つのプレートに形成される各貫通孔の面方向のピッチ間隔を狭めても、隣接する貫通孔間の距離を十分確保することができる。このため、高い濾過性能を確保しつつ、省スペースに多くの貫通孔を形成することにより、液体の圧損を低減することが可能になる。
【0020】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、各プレートに形成された前記貫通孔は、各プレートの合わせ面側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする。
このように構成することで、1つのプレートに形成される各貫通孔の面方向のピッチ間隔を狭めても、隣接する貫通孔間の距離をさらに確実に十分確保することができる。このため、液体の圧損をさらに低減することが可能になる。
【0021】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、請求項1に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタを備えていることを特徴とする。
このように構成することで、製造コストを低減できる液体噴射ヘッドを提供できる。
【0022】
本発明に係る液体噴射記録装置は、請求項9に記載の液体噴射ヘッドと、前記液体を収容する液体収容体と、前記液体噴射ヘッドと前記液体収容体との間に敷設され、前記液体を流通させる液体供給管とを備えたことを特徴とする。
このように構成することで、組立性を向上させ、製造コストを低減できる液体噴射記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、プレートを積層することによりフィルタを形成するので、平坦度を高めることができ、接着面に確実にフィルタを固着させることができる。
また、合わせ面に形成される凹部の深さを管理するだけで液体内に含まれる異物の通過を阻害することができるので、従来と比較して製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態における液体噴射記録装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における液体噴射ヘッドの一部破断斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態における液体噴射ヘッドチップの分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態における液体噴射ヘッドチップの一部を拡大した分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるフィルタの平面図である。
【図6】図5のA部拡大図である。
【図7】図6のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態におけるフィルタの作用説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態におけるフィルタの平面図である。
【図11】本発明の第3実施形態におけるフィルタの断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態におけるフィルタの断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態におけるフィルタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
(液体噴射記録装置)
次に、この発明の第1実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図1は、液体噴射記録装置1の斜視図である。
液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送機構2、3と、被記録媒体Sにインク滴を噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4にインクを供給する液体供給手段5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている。
以下、副走査方向をX方向、主走査方向をY方向、そしてX方向およびY方向にともに直交する方向をZ方向として説明する。
【0026】
一対の搬送機構2、3は、それぞれ副走査方向に延びて設けられたグリッドローラ20,30と、グリッドローラ20,30のそれぞれに平行に延びるピンチローラ21,31と、詳細は図示しないがグリッドローラ20,30を軸回りに回転動作させるモータ等の駆動機構とを備えている。
【0027】
液体供給手段5は、インクが収容された液体収容体50と、液体収容体50と液体噴射ヘッド4とを接続する液体供給管51とを備えている。液体収容体50は、複数設けられており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク50Y,50M,50C,50Bが並べて設けられている。インクタンク50Y,50M,50C,50BのそれぞれにはポンプモータMが設けられており、インクを液体供給管51を通じて液体噴射ヘッド4へ押圧移動できる。液体供給管51は、液体噴射ヘッド4(キャリッジユニット62)の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
尚、液体収容体50は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク50Y,50M,50C,50Bに限られるものではなく、さらに多色のインクを収容したインクタンクを備えていてもよい。
【0028】
走査手段6は、副走査方向に延びて設けられた一対のガイドレール60,61と、一対のガイドレール60,61に沿って摺動可能なキャリッジユニット62と、キャリッジユニット62を副走査方向に移動させる駆動機構63とを備えている。駆動機構63は、一対のガイドレール60,61の間に配設された一対のプーリ64,65と、一対のプーリ64,65間に巻回された無端ベルト66と、一方のプーリ64を回転駆動させる駆動モータ67とを備えている。
【0029】
一対のプーリ64,65は、一対のガイドレール60,61の両端部間にそれぞれ配設されており、副走査方向に間隔をあけて配置されている。無端ベルト66は、一対のガイドレール60,61間に配設されており、この無端ベルト66に、キャリッジユニット62が連結されている。キャリッジユニット62の基端部62aには、複数の液体噴射ヘッド4が搭載されている。具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクに個別に対応する液体噴射ヘッド4Y,4M,4C,4Bが副走査方向に並んで搭載されている。
【0030】
(液体噴射ヘッド)
図2は、液体噴射ヘッド4の一部破断斜視図である。
同図に示すように、液体噴射ヘッド4は、被記録媒体S(図1参照)に対してインク滴を噴射する噴射部70と、噴射部70と電気的に接続された制御回路基板80と、噴射部70と液体供給管51との間に、それぞれ接続部93,94を介して介在された圧力緩衝器90とをベース41,42上に備えている。圧力緩衝器90は、液体供給管51から噴射部70へインクの圧力変動を緩衝しながら通流させるためのものである。尚、ベース41,42は一体成形とされていても構わない。
【0031】
噴射部70は、圧力緩衝器90に接続部72を介して接続された流路基板71と、電圧が印加されることにより、インクを液滴として被記録媒体Sへと噴射させる液体噴射ヘッドチップ73と、液体噴射ヘッドチップ73と制御回路基板80とに電気的に接続され液体噴射ヘッドチップ73に駆動信号を伝送するためのフレキシブル配線74とを備えている。
制御回路基板80は、液体噴射記録装置1の本体制御部(不図示)からのピクセルデータ等の信号に基づいて液体噴射ヘッドチップ73の駆動パルスを生成する制御手段80aを備えている。
【0032】
図3は、液体噴射ヘッドチップ73の分解斜視図、図4は、液体噴射ヘッドチップ73の一部を拡大した分解斜視図である。
図3、図4に示すように、液体噴射ヘッドチップ73は、略長方形状の圧電アクチュエータ75を備えている。圧電アクチュエータ75は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなるものである。圧電アクチュエータ75は、この上面に短手方向に延びる長溝76を有している。長溝76は、横断面が矩形状に形成されており、圧電アクチュエータ75の長手方向の全長に亘って複数並設されている。すなわち、長溝76は、側壁77によってそれぞれ区分けされている。
【0033】
長溝76の底面は、圧電アクチュエータ75の前方側から短手方向の略中央部まで延びる前方平坦面75aと、この前方平坦面75aの後部から後方側に向かって深さが漸次浅くなるような傾斜面75bと、この傾斜面75bの後部から後方側に向かって延びる後方平坦面75cとで構成されている。なお、長溝76の後端部は、不図示の封止部により封止されている。
【0034】
長溝76内には、板状に延びる駆動電極部78が設けられている。すなわち、側壁77の両主面の上端部寄りにそれぞれ駆動電極部78が蒸着により設けられている。この駆動電極部78が、フレキシブル配線74を介して制御回路基板80に電気的に接続されることにより、制御回路基板80から液体噴射ヘッドチップ73に駆動信号が入力される。
また、圧電アクチュエータ75の前端面75dには、ポリイミドなどからなるノズルプレート81が設けられている。ノズルプレート81の一方の主面は、圧電アクチュエータ75への接合面とされ、他方の主面には、インクの付着等を防止するための撥水性や親水性を有する撥水膜が塗布されている。
【0035】
また、ノズルプレート81には、その長手方向に所定の間隔(長溝76のピッチと同等の間隔)を空けて複数のノズル開口部81aが形成されている。ノズル開口部81aは、ポリイミドフィルムなどのノズルプレート81に、例えば、エキシマレーザ装置を用いて形成される。これらノズル開口部81aは、それぞれ長溝76に一致して配置されている。
さらに、圧電アクチュエータ75の上面には、長方形状のカバープレート82が設けられている。カバープレート82の短手方向の長さ寸法は、圧電アクチュエータ75の短手方向の長さ寸法よりも短く設定されている。そして、カバープレート82の前端面82aと、圧電アクチュエータ75の前端面75dとは面一になっている。
【0036】
カバープレート82には、その長手方向に延びる矩形状の開口部83が形成されている。この開口部83は、圧電アクチュエータ75の長手方向の全体の長溝76に亘って延ばされている。すなわち、全ての長溝76が開口部83を介して外方に開放され、開口部83によって各長溝76がそれぞれ連通した状態になっている。また、圧電アクチュエータ75とカバープレート82を接合したものに、ノズルプレート81が接合される。さらにノズルプレート81を支持するノズル支持プレート84が接合され、液体噴射ヘッドチップ73を構成している。
【0037】
このような構成のもと、圧力緩衝器90内の貯留室から、接続部72,94を介して所定量のインクが流路基板71に供給される。また、流路基板71は、液体噴射ヘッドチップ73の開口部83と連通しており、接続部72,94から開口部83へとインクを行き渡らせることができる構造になっている。これにより、開口部83を介して長溝76内にインクが送り込まれる。すなわち、長溝76はインクが充填されるインク室として機能する一方、流路基板71は、各長溝76をそれぞれ連通させる共通インク室として機能する。
そして、駆動電極部78に駆動電圧を印加すると圧電厚み滑り効果により長溝76の側壁77が変形する。これにより、長溝76の容積が減少して長溝76内の圧力が増加するので、ノズルプレート81のノズル開口部81aからインク滴が吐出される。
【0038】
ここで、カバープレート82の開口部83には、この開口部83の中央に向かって突出するように段差部83aが全周に亘って形成されている。そして、カバープレート82には、開口部83を閉塞するようにフィルタ10が設けられている。フィルタ10は、この外周縁が開口部83の段差部83aに接着固定されており、長溝76にインク内に含まれる異物が浸入してしまうのを防止できるようになっている。
【0039】
(フィルタ)
図5は、フィルタ10の平面図、図6は、図5のA部拡大図、図7は、図6のB−B線に沿う断面図、図8は、図6のC−C線に沿う断面図である。
図5〜図8に示すように、フィルタ10は、例えばステンレス等により形成された第1金属プレート11、及び第2金属プレート12の2枚の金属プレート11,12を積層してなる。
【0040】
各金属プレート11,12は、カバープレート82の開口部83の形状に対応するように、カバープレート82の長手方向に長い矩形状に形成されたものであって、長手方向に沿って延在するフィルタ本体部13と、このフィルタ本体部13の外周縁に設けられた接着部14とが一体成形されている。各金属プレート11,12の肉厚tは、例えば、約30μm程度に設定されている。しかしながら、肉厚tは、約30μm程度に設定される場合に限られるものではない。
【0041】
各金属プレート11,12のフィルタ本体部13には、それぞれ厚さ方向に貫通するフィルタ用貫通孔15a,15bが複数形成されている。各フィルタ用貫通孔15a,15bは、それぞれ金属プレート11,12に、その長手方向に対して交差する直線L1を、互いに平行となるように複数並列させるように引いたとき、これら直線L1に沿うように配置されている。
また、第1金属プレート11に形成されているフィルタ用貫通孔15aと、第2金属プレート12に形成されているフィルタ用貫通孔15bは、互いに法線方向で重ならないように配置されている。つまり、フィルタ10を正面からみたとき、同一の直線L1上においては、フィルタ用貫通孔15aとフィルタ用貫通孔15bは、それぞれ交互に配置され、且つ互いに重ならないように配置された状態になっている。
【0042】
また、各フィルタ用貫通孔15a,15bの孔径φ1は、例えば、約46μm程度に設定されている。しかしながら、孔径φ1は、約46μm程度に設定される場合に限られるものではない。
さらに、第1金属プレート11に形成されているフィルタ用貫通孔15aは、それぞれのピッチ間隔P1が、例えば、約132μm程度に設定されている。同様に、第2金属プレート12に形成されているフィルタ用貫通孔15bは、それぞれのピッチ間隔P2が、例えば、約132μm程度に設定されている。そして、第1金属プレート11に形成されているフィルタ用貫通孔15aと、第2金属プレート12に形成されているフィルタ用貫通孔15bとのピッチ間隔P3は、例えば、約66μm程度に設定されている。すなわち、フィルタ10を正面からみたとき、各フィルタ用貫通孔15a,15bは、それぞれ等間隔に配置された状態になっている。
尚、ピッチ間隔P1、ピッチ間隔P2、及びピッチ間隔P3は、上述の値に限られるものではなく、任意に設定することが可能である。
【0043】
また、第1金属プレート11の第2金属プレート12との合わせ面11aには、面方向で隣接するフィルタ用貫通孔15a同士を連通する連通溝16が格子状に形成されている。したがって、連通溝16の法線方向に第2金属プレート12に形成されているフィルタ用貫通孔15bが配置された状態になっている。
【0044】
連通溝16の溝深さhは、例えば、約8μm程度に設定されている。しかしながら、溝深さhは、約8μm程度に設定される場合に限られるものではない。
そして、連通溝16が格子状に形成されることにより、第1金属プレート11には、隣接するフィルタ用貫通孔15aの間に断面略菱形状の支持柱17が形成される。この支持柱17により、第1金属プレート11の連通溝16が形成されている箇所が撓むことなく、第1金属プレート11と第2金属プレート12との間の連通溝16の溝深さhが適正に維持される。
【0045】
一方、金属プレート11,12の接着部14には、それぞれ厚さ方向に貫通する接着用貫通孔18a,18bが複数形成されている。各接着用貫通孔18a,18bは、それぞれ金属プレート11,12の長手方向、及び短手方向に沿うように等間隔に配置されている。また、各接着用貫通孔18a,18bは同軸上に配置されており、接着用貫通孔18a,18b同士が軸方向に連通した状態になっている。
また、各接着用貫通孔18a,18bの孔径φ2は、例えば、約60μm程度に設定されている。さらに、各接着用貫通孔18a,18bのピッチ間隔P4は、例えば、約90μm程度に設定されている。しかしながら、孔径φ2は、約60μm程度に設定される場合に限られるものではなく、また、ピッチ間隔P4は、約90μm程度に設定される場合に限られるものではない。
【0046】
(フィルタの製造方法)
続いて、フィルタの製造方法について説明する。
まず、第1金属プレート11に、エッチング等によりフィルタ用貫通孔15a、及び接着用貫通孔18aを形成し、その後、連通溝16を形成する。また、第2金属プレート12に、エッチング等によりフィルタ用貫通孔15b、及び接着用貫通孔18bを形成する。この後、第1金属プレート11の合わせ面11aと、第2金属プレート12の合わせ面12aとを重ね合わせるように積層し、これら金属プレート11,12同士を熱拡散接合により接合する。
尚、熱拡散接合とは、金属部材同士を接触させ荷重をかけた状態で、各部材に熱(例えば、約900度程度)を加えることにより接合する接合方法である。これは、金属同士の界面において、互いの分子同士が接合して部材同士が接合されるため、板状の部材同士を、密閉性を維持しながら接合する場合に適している。
【0047】
(フィルタの作用)
次に、図3、図6、図8、図9に基づいて、フィルタ10の作用について説明する。
図9は、フィルタ10の作用説明図であって、図7に対応している。
まず、図3、図8に示すように、液体噴射ヘッドチップ73の開口部83にフィルタ10を取り付ける。このとき、開口部83の段差部83aに接着剤を塗布し、この上からフィルタ10の接着部14を載置する。フィルタ10は、2枚の金属プレート11,12を積層したものなので平坦度が高く、段差部83aに接着部14全体を密接させることができる。
【0048】
また、接着部14には、複数の接着用貫通孔18a,18bが形成されているので、これら接着用貫通孔18a,18bに接着剤が入り込み、後に硬化することで、接着部14と段差部83aとの接着性を高めている。また、接着用貫通孔18a,18bが接着剤により満たされ、金属プレート11の図面平面視上面に溢れ出すように、段差部83aに接着剤を塗布して、さらに接着性を高めることも可能である。このため、接着部14全体が接着剤で充たされ、液体噴射ヘッドチップ73に対するフィルタ10の固着力が高まる。
【0049】
また、接着用貫通孔18a,18b,18cから接着剤が溢れ出すことにより、接着部14と段差部83aとの間の隙間が埋まっているか否かが確認できる。ここで、接着部14と段差部83aとの間に隙間が生じている場合、この隙間から塵埃が浸入してしまう虞があるが、接着部14と段差部83aとの間の隙間が埋まることによって、塵埃の浸入を防止できる。
【0050】
尚、上述の第1実施形態では、カバープレート82をセラミックなどの材質で構成するように検討したため、接着剤を使用してフィルタ10を接合することとしたが、本来その接合方法は接着剤の使用に限定されるものではない。例えば、フィルタ10が接合される対象が溶融性の高いプラスチックのような樹脂材料で形成される場合は、当該対象を溶融しフィルタ10と接合することも可能である。本実施形態で示した流路基板71などは、樹脂材料で形成されることが多いため、流路基板71を溶融してフィルタ10を取り付けることが可能である。もちろん、より強固な接合を目的として、溶融接合した後に、接着剤でさらに接着することも可能である。
【0051】
ここで、フィルタ10は、特に表裏面を問わないが、以下の説明においては、圧電アクチュエータ75側に第2金属プレート12を向けた状態でフィルタ10を接着固定した場合について説明する。
図9に示すように、上述のように取り付けられたフィルタ10を介し、液体噴射ヘッドチップ73の長溝76にインクが充填されるとき、インクは、フィルタ10のフィルタ用貫通孔15aに導かれ(矢印Y1参照)、連通溝16を通る(矢印Y2参照)。その後、フィルタ用貫通孔15bを介して圧電アクチュエータ75の長溝76にインクが充填される(矢印Y3参照)。
【0052】
このとき、連通溝16の溝深さhよりも大きい異物は連通溝16を通過することができず、フィルタ用貫通孔15aに留まる。この第1実施形態では、連通溝16の溝深さhは、例えば、約8μm程度に設定されているので、これよりも大きい異物はフィルタ10を通過することができず、インクが濾過される。
【0053】
(効果)
したがって、上述の第1実施形態によれば、フィルタ10は、2枚の金属プレート11,12を積層したものなので平坦度が高く、段差部83aに接着部14全体を密接させることができる。このため、液体噴射ヘッドチップ73に確実にフィルタ10を接着固定させることができる。
また、第1金属プレート11に形成される連通溝16の溝深さhを管理するだけでインク内に含まれる異物通過を阻害することができるので、従来と比較してフィルタ10の製造コストを低減することができる。
【0054】
さらに、第1金属プレート11にのみ連通溝16を形成しているので、連通溝16が形成されている部分の金属プレート11,12間の隙間管理を容易に行うことが可能になる。このため、安価で濾過性能の高いフィルタ10を提供することができる。
そして、図6に示すように、連通溝16は格子状に形成されているので、1つのフィルタ用貫通孔15aに導かれたインクが連通溝16に通流されるとき、四方全体に亘って通流される。このため、インクの圧損が小さく、十分な流速を確保することができる。
【0055】
また、各フィルタ用貫通孔15a,15bは、それぞれ金属プレート11,12に、その長手方向に対して交差する直線L1を、互いに平行となるように複数並列させるように引いたとき、これら直線L1に沿うように配置されていると共に、フィルタ10を正面からみたとき、同一の直線L1上においては、フィルタ用貫通孔15aとフィルタ用貫通孔15bは、それぞれ交互に配置され、且つ互いに重ならないように配置されている。このため、第1金属プレート11のフィルタ用貫通孔15aと、第2金属プレート12のフィルタ用貫通孔15bとのピッチ間隔P3(図7参照)を大きく確保することができる。よって、フィルタ10を通るインクの通流経路が長く設定され、フィルタ10の濾過性能を高めることができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を図1〜図3を援用し、図10に基づいて説明する。
図10は、第2実施形態におけるフィルタ210の平面図である。尚、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態についても同様)。
この第2実施形態において、液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送機構2、3と、被記録媒体Sにインク滴を噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4にインクを供給する液体供給手段5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている点、液体噴射ヘッド4は、被記録媒体S(図1参照)に対してインク滴を噴射する噴射部70と、噴射部70と電気的に接続された制御回路基板80と、噴射部70と液体供給管51との間に、それぞれ接続部93,94を介して介在された圧力緩衝器90とをベース41,42上に備えている点、噴射部70は、圧力緩衝器90に接続部72を介して接続された流路基板71と、電圧が印加されることにより、インクを液滴として被記録媒体Sへと噴射させる液体噴射ヘッドチップ73と、液体噴射ヘッドチップ73と制御回路基板80とに電気的に接続され液体噴射ヘッドチップ73に駆動信号を伝送するためのフレキシブル配線74とを備えている点、液体噴射ヘッドチップ73を構成するカバープレート82の開口部83には、この開口部83の中央に向かって突出するように段差部83aが全周に亘って形成されており、ここに開口部83を閉塞するようにフィルタ210が設けられている点、フィルタ210は、2枚の金属プレート211,212を積層してなり、長手方向に沿って延在するフィルタ本体部13と、このフィルタ本体部13の外周縁に設けられた接着部14とが一体成形されている点、圧電アクチュエータ75側に第2金属プレート212を向けた状態でフィルタ210を取り付けている点等の基本的構成は、前述した第1実施形態と同様である(以下の実施形態についても同様)。
【0057】
ここで、第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態のフィルタ10のフィルタ用貫通孔15a,15bの配列と、第2実施形態のフィルタ210のフィルタ用貫通孔215a,215bの配列とが異なる点にある。
より詳しくは、図10に示すように、第1金属プレート211に形成されているフィルタ用貫通孔215aと、第2金属プレート212に形成されているフィルタ用貫通孔215bは、それぞれ各金属プレート211,212の長手方向、及び短手方向に沿うように、等間隔で配置されている。
【0058】
また、第1金属プレート211に形成されているフィルタ用貫通孔215aと、第2金属プレート212に形成されているフィルタ用貫通孔215bは、互いに法線方向で重ならないように配置されている。さらに、第1金属プレート211には、隣接する面方向でフィルタ用貫通孔215a同士を連通する連通溝216が格子状に形成されている。これにより、第2金属プレート212に形成されているフィルタ用貫通孔215bは、連通溝216の法線方向に配置された状態になる。
【0059】
また、連通溝216が格子状に形成されることにより、第1金属プレート211には、隣接するフィルタ用貫通孔215aの間に断面矩形状の支持柱217が形成される。この支持柱217により、第1金属プレート211の連通溝216が形成されている箇所が撓むことなく、第1金属プレート211と第2金属プレート212との間の連通溝216の溝深さが適正に維持される。
このように、フィルタ210を形成した場合であっても前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0060】
尚、上述の第1実施形態、及び第2実施形態では、面方向で隣接するフィルタ用貫通孔15a,215a同士を連通するように、連通溝16,216を格子状に形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、連通溝16,216は、第1金属プレート11,211と第2金属プレート12,212とを積層させた状態で、第1金属プレート11,211に形成されているフィルタ用貫通孔15a,215aと、第2金属プレート12,212に形成されているフィルタ用貫通孔15b,215bとを連通するように凹状に形成されていればよい。
【0061】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を図11に基づいて説明する。
図11は、第3実施形態におけるフィルタ310の断面図である。
ここで、同図に示すように、第1実施形態と第3実施形態との相違点は、第1実施形態では、第1金属プレート11にのみ連通溝16が形成されているのに対し、第3実施形態では、第1金属プレート311の合わせ面311aと、第2金属プレート312の合わせ面312aとの両者311a,312aに格子状の連通溝316が形成されている点にある。
そして、第1金属プレート311には、隣接するフィルタ用貫通孔315aの間に支持柱317が形成されると共に、第2金属プレート312には、隣接するフィルタ用貫通孔315bの間に支持柱317が形成される。
【0062】
したがって、上述の第3実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、各金属プレート311,312の形状を統一でき、製造コストを低減することが可能になる。
尚、上述の第3実施形態も、前述の第1実施形態、及び第2実施形態と同様に、連通溝316を格子状に形成する場合に限られるものではなく、第1金属プレート311と第2金属プレート312とを積層させた状態で、第1金属プレート311に形成されているフィルタ用貫通孔315aと、第2金属プレート312に形成されているフィルタ用貫通孔315bとが連通するように凹状に形成されていればよい。
【0063】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を図12に基づいて説明する。
図12は、第4実施形態におけるフィルタ410の断面図である。
ここで、同図に示すように、第1実施形態と第4実施形態との相違点は、第1実施形態の各金属プレート11,12のフィルタ本体部13に形成されているフィルタ用貫通孔15a,15bの形状と、第4実施形態の各金属プレート411,412のフィルタ本体部413に形成されているフィルタ用貫通孔415a,415bの形状が異なる点にある。
【0064】
より詳しくは、図12に示すように、各金属プレート411,412のフィルタ本体部413に形成されているフィルタ用貫通孔415a,415bは、それぞれインクの通流方向(以下、単に通流方向という)下流側(図12における上側)に向かうに従って漸次縮径するようにテーパ状に形成されている。
各フィルタ用貫通孔415a,415bの通流方向上流側の直径φ3、つまり、各フィルタ用貫通孔415aの大孔の直径φ3は、例えば、約46μm程度に設定されている。一方、各フィルタ用貫通孔415a,415bの通流方向下流側の直径φ4、つまり、各フィルタ用貫通孔415aの小孔の直径φ4は、例えば、約30μm〜約40μm程度に設定されている。尚、直径φ3は、約46μm程度に設定される場合に限られるものではなく、また、直径φ4は、約30μm〜約40μm程度に設定される場合に限られるものではない。
【0065】
このように構成することにより、各フィルタ用貫通孔415a,415bのインクを受け入れる側の直径φ3が大きく設定されたことになる。
したがって、上述の第4実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、フィルタ410を通過するインクの圧損を低減でき、インクの流速を十分確保することができる。
【0066】
尚、上述の第4実施形態では、各金属プレート411,412の各フィルタ用貫通孔415a,415bの両方がテーパ形状を有するように記載したが、各フィルタ用貫通孔415a,415bのうち、少なくとも一方がテーパ形状を有するように形成すれば、本実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合、例えば、金属プレート411のフィルタ用貫通孔415aはテーパ形状を有しており、金属プレート412のフィルタ用貫通孔415bは図7,9および11に示すようにプレートの深さ方向にストレート形状の貫通孔とすることが可能であり、もちろんテーパ形状とストレート形状の貫通孔を各フィルタ用貫通孔415a,415bで入れ換えることも可能である。
【0067】
(第5実施形態)
次に、この発明の第5実施形態を図13に基づいて説明する。
図13は、第5実施形態におけるフィルタ510の断面図である。
ここで、同図に示すように、第4実施形態と第5実施形態との相違点は、第4実施形態の第2金属プレート412に形成されているテーパ状のフィルタ用貫通孔415bと、第5実施形態の第2金属プレート512に形成されているテーパ状のフィルタ用貫通孔515bの向きが異なる点にある。
【0068】
つまり、第5実施形態の第2金属プレート512に形成されているフィルタ用貫通孔515bは、第2金属プレート512の第1金属プレート511との合わせ面512a側に向かうに従って漸次縮径するようにテーパ状に形成されている。
このため、各金属プレート511,512に形成されているテーパ状のフィルタ用貫通孔515a,515bは、それぞれ対応する合わせ面511a,512a側に向かうに従って漸次縮径するように形成されているといえる。
【0069】
このように構成することにより、第1金属プレート511のフィルタ用貫通孔515aと、第2金属プレート512のフィルタ用貫通孔515bとのピッチ間隔P3’を小さくしつつ、連通溝16における第1金属プレート511のフィルタ用貫通孔515aと、第2金属プレート512のフィルタ用貫通孔515bとの間の距離L1を大きく設定することができる。
【0070】
したがって、上述の第5実施形態によれば、ピッチ間隔P3’を小さくできる分、より多くのフィルタ用貫通孔515a,515bを形成することができるので、高い濾過性能を確保しつつ、インクの圧損を低減することが可能になる。
尚、上述の第5実施形態では、各金属プレート511,512の各フィルタ用貫通孔515a,515bの両方がテーパ形状を有するように記載したが、各金属プレート512(下流側)のフィルタ用貫通孔515bがテーパ形状を有するように形成すれば、本実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合、例えば、金属プレート511のフィルタ用貫通孔515aは図7,9および11に示すようにプレートの深さ方向にストレート形状の貫通孔とすることが可能である。
【0071】
尚、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、液体噴射ヘッドチップ73を構成するカバープレート82の開口部83にフィルタ10,210,310,410,510を取り付けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、液体噴射ヘッドチップ73に供給されるインクを濾過可能な位置であればよい。例えば、液体噴射ヘッド4の流路基板71内にフィルタ10,210,310,410,510を設けてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、フィルタ10,210,310,410,510を、それぞれ2枚の金属プレート11〜512を積層して形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、3枚以上の複数の金属プレートを重ね合せて形成してもよい。この場合、各金属プレートの合わせ面に連通溝16,216,316を形成すればよい。
さらに、上述の実施形態では、フィルタ10,210,310,410,510は、例えばステンレス等により形成されたものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、フィルタ10,210,310,410,510の材質は、熱拡散接合を利用した接合方法が可能な材質であればよい。
【符号の説明】
【0073】
1 液体噴射記録装置
4 液体噴射ヘッド
10,210,310,410,510 フィルタ(液体噴射ヘッド用のフィルタ)
11,211,311,411,511 第1金属プレート(プレート)
11a,21a,311a,312a,511a,512a 合わせ面
12,212,312,412,512 第2金属プレート(プレート)
15a,15b,215a,215b,415a,415b,515a,515b フィルタ用貫通孔(貫通孔)
16,216,316 連通溝
50 液体収容体
51 液体供給管
M ポンプモータ
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズル孔より液体を吐出して被記録媒体に画像や文字を記録する液体噴射ヘッド用のフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクタンクからインク(液体)が供給されるインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)はヘッドチップを有している。そして、このヘッドチップのノズル孔からインクを被記録媒体に吐出することで記録が行われるようになっている。
ここで、例えばノズル孔にインクが固化することにより形成される異物等が浸入し、ノズル孔の詰まりによるインクの吐出不良が生じる場合がある。このため、できる限りインクジェットヘッドのインク供給口の近傍に、フィルタを設けることが望ましい。フィルタは、金属糸を織り込むことにより形成されているものが多い。
【0003】
また、インク供給口を微細な複数の貫通孔からなるフィルタ構造とし、インクの吐出不良を防止する技術が開示されている。微細な複数の貫通孔は、異方性エッチング技術を利用することにより形成される。また、貫通孔の孔径を微細なものとするために、複数の貫通孔をそれぞれ屈曲形成させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−62302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、金属糸を織り込むことにより形成されるフィルタは平坦度が低いので、例えばフィルタを接着等により取り付ける場合、接着面に対してフィルタが浮いてしまう部分が生じ、フィルタの機能を十分に発揮できなくなってしまうという課題がある。
また、上述の特許文献1にあっては、インク供給口に微細な複数の貫通孔を形成するにあたって異方性エッチング技術を利用しているが、貫通孔の孔径を、異物が貫通孔を通過不可能な程度の大きさに設定するには、貫通孔を高精度に形成する必要がある。このため、製造コストが嵩むという課題がある。
【0006】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、容易、且つ確実に取り付けることができると共に、製造コストを低減できる液体噴射ヘッド用のフィルタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、複数のプレートを積層してなり、供給される液体を濾過するための液体噴射ヘッド用のフィルタであって、各プレートに、それぞれ厚さ方向に貫通する貫通孔を複数形成すると共に、これら貫通孔を法線方向で重ならないように配置し、互いに重なり合う前記プレートの合わせ面のうち、少なくとも一方の合わせ面に、各貫通孔を連通させるための凹部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このように、プレートを積層することによりフィルタを形成するので、平坦度を高めることができ、接着面に確実にフィルタを固着させることができる。
また、合わせ面に形成される凹部の深さを管理するだけで液体内に含まれる異物の通過を阻害することができるので、従来と比較して製造コストを低減することができる。
【0009】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、前記凹部は、面方向で隣接する前記貫通孔同士を連通するように形成された連通溝であって、この連通溝の法線方向に他の前記プレートの前記貫通孔が配置されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、フィルタを通過する液体の流路を十分確保することが可能になり、フィルタの濾過性能を高めることができる。
【0011】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、互いに重なり合う前記プレートの合わせ面のうち、一方の合わせ面にのみ前記凹部を形成したことを特徴とする。
【0012】
このように構成することで、凹部が形成されている部分のプレート間の隙間管理を容易に行うことが可能になる。このため、安価で濾過性能の高いフィルタを提供することができる。
【0013】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、互いに重なり合う前記プレートの両方の合わせ面に、それぞれ前記凹部を形成したことを特徴とする。
【0014】
このように構成することで、各プレートの形状を統一でき、製造コストを低減することが可能になる。
【0015】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、前記複数のプレートのうち、少なくとも1つのプレートに形成されている前記貫通孔は、前記液体の通流方向下流側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする。
【0016】
このように構成することで、フィルタを通過する液体の圧損を低減でき、液体の流速を十分確保することができる。
【0017】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、各プレートに形成された貫通孔は、前記液体の通流方向下流側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする。
このように構成することで、より確実に液体の流速を十分確保することができる。
【0018】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、2つの前記プレートを互いに重ね合せて構成し、これら2つの前記プレートのうち、少なくとも一方のプレートに形成された前記貫通孔は、各プレートの合わせ面側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、1つのプレートに形成される各貫通孔の面方向のピッチ間隔を狭めても、隣接する貫通孔間の距離を十分確保することができる。このため、高い濾過性能を確保しつつ、省スペースに多くの貫通孔を形成することにより、液体の圧損を低減することが可能になる。
【0020】
本発明に係る液体噴射ヘッド用のフィルタは、各プレートに形成された前記貫通孔は、各プレートの合わせ面側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする。
このように構成することで、1つのプレートに形成される各貫通孔の面方向のピッチ間隔を狭めても、隣接する貫通孔間の距離をさらに確実に十分確保することができる。このため、液体の圧損をさらに低減することが可能になる。
【0021】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、請求項1に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタを備えていることを特徴とする。
このように構成することで、製造コストを低減できる液体噴射ヘッドを提供できる。
【0022】
本発明に係る液体噴射記録装置は、請求項9に記載の液体噴射ヘッドと、前記液体を収容する液体収容体と、前記液体噴射ヘッドと前記液体収容体との間に敷設され、前記液体を流通させる液体供給管とを備えたことを特徴とする。
このように構成することで、組立性を向上させ、製造コストを低減できる液体噴射記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、プレートを積層することによりフィルタを形成するので、平坦度を高めることができ、接着面に確実にフィルタを固着させることができる。
また、合わせ面に形成される凹部の深さを管理するだけで液体内に含まれる異物の通過を阻害することができるので、従来と比較して製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態における液体噴射記録装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における液体噴射ヘッドの一部破断斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態における液体噴射ヘッドチップの分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態における液体噴射ヘッドチップの一部を拡大した分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるフィルタの平面図である。
【図6】図5のA部拡大図である。
【図7】図6のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態におけるフィルタの作用説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態におけるフィルタの平面図である。
【図11】本発明の第3実施形態におけるフィルタの断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態におけるフィルタの断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態におけるフィルタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
(液体噴射記録装置)
次に、この発明の第1実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図1は、液体噴射記録装置1の斜視図である。
液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送機構2、3と、被記録媒体Sにインク滴を噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4にインクを供給する液体供給手段5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている。
以下、副走査方向をX方向、主走査方向をY方向、そしてX方向およびY方向にともに直交する方向をZ方向として説明する。
【0026】
一対の搬送機構2、3は、それぞれ副走査方向に延びて設けられたグリッドローラ20,30と、グリッドローラ20,30のそれぞれに平行に延びるピンチローラ21,31と、詳細は図示しないがグリッドローラ20,30を軸回りに回転動作させるモータ等の駆動機構とを備えている。
【0027】
液体供給手段5は、インクが収容された液体収容体50と、液体収容体50と液体噴射ヘッド4とを接続する液体供給管51とを備えている。液体収容体50は、複数設けられており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク50Y,50M,50C,50Bが並べて設けられている。インクタンク50Y,50M,50C,50BのそれぞれにはポンプモータMが設けられており、インクを液体供給管51を通じて液体噴射ヘッド4へ押圧移動できる。液体供給管51は、液体噴射ヘッド4(キャリッジユニット62)の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
尚、液体収容体50は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク50Y,50M,50C,50Bに限られるものではなく、さらに多色のインクを収容したインクタンクを備えていてもよい。
【0028】
走査手段6は、副走査方向に延びて設けられた一対のガイドレール60,61と、一対のガイドレール60,61に沿って摺動可能なキャリッジユニット62と、キャリッジユニット62を副走査方向に移動させる駆動機構63とを備えている。駆動機構63は、一対のガイドレール60,61の間に配設された一対のプーリ64,65と、一対のプーリ64,65間に巻回された無端ベルト66と、一方のプーリ64を回転駆動させる駆動モータ67とを備えている。
【0029】
一対のプーリ64,65は、一対のガイドレール60,61の両端部間にそれぞれ配設されており、副走査方向に間隔をあけて配置されている。無端ベルト66は、一対のガイドレール60,61間に配設されており、この無端ベルト66に、キャリッジユニット62が連結されている。キャリッジユニット62の基端部62aには、複数の液体噴射ヘッド4が搭載されている。具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクに個別に対応する液体噴射ヘッド4Y,4M,4C,4Bが副走査方向に並んで搭載されている。
【0030】
(液体噴射ヘッド)
図2は、液体噴射ヘッド4の一部破断斜視図である。
同図に示すように、液体噴射ヘッド4は、被記録媒体S(図1参照)に対してインク滴を噴射する噴射部70と、噴射部70と電気的に接続された制御回路基板80と、噴射部70と液体供給管51との間に、それぞれ接続部93,94を介して介在された圧力緩衝器90とをベース41,42上に備えている。圧力緩衝器90は、液体供給管51から噴射部70へインクの圧力変動を緩衝しながら通流させるためのものである。尚、ベース41,42は一体成形とされていても構わない。
【0031】
噴射部70は、圧力緩衝器90に接続部72を介して接続された流路基板71と、電圧が印加されることにより、インクを液滴として被記録媒体Sへと噴射させる液体噴射ヘッドチップ73と、液体噴射ヘッドチップ73と制御回路基板80とに電気的に接続され液体噴射ヘッドチップ73に駆動信号を伝送するためのフレキシブル配線74とを備えている。
制御回路基板80は、液体噴射記録装置1の本体制御部(不図示)からのピクセルデータ等の信号に基づいて液体噴射ヘッドチップ73の駆動パルスを生成する制御手段80aを備えている。
【0032】
図3は、液体噴射ヘッドチップ73の分解斜視図、図4は、液体噴射ヘッドチップ73の一部を拡大した分解斜視図である。
図3、図4に示すように、液体噴射ヘッドチップ73は、略長方形状の圧電アクチュエータ75を備えている。圧電アクチュエータ75は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなるものである。圧電アクチュエータ75は、この上面に短手方向に延びる長溝76を有している。長溝76は、横断面が矩形状に形成されており、圧電アクチュエータ75の長手方向の全長に亘って複数並設されている。すなわち、長溝76は、側壁77によってそれぞれ区分けされている。
【0033】
長溝76の底面は、圧電アクチュエータ75の前方側から短手方向の略中央部まで延びる前方平坦面75aと、この前方平坦面75aの後部から後方側に向かって深さが漸次浅くなるような傾斜面75bと、この傾斜面75bの後部から後方側に向かって延びる後方平坦面75cとで構成されている。なお、長溝76の後端部は、不図示の封止部により封止されている。
【0034】
長溝76内には、板状に延びる駆動電極部78が設けられている。すなわち、側壁77の両主面の上端部寄りにそれぞれ駆動電極部78が蒸着により設けられている。この駆動電極部78が、フレキシブル配線74を介して制御回路基板80に電気的に接続されることにより、制御回路基板80から液体噴射ヘッドチップ73に駆動信号が入力される。
また、圧電アクチュエータ75の前端面75dには、ポリイミドなどからなるノズルプレート81が設けられている。ノズルプレート81の一方の主面は、圧電アクチュエータ75への接合面とされ、他方の主面には、インクの付着等を防止するための撥水性や親水性を有する撥水膜が塗布されている。
【0035】
また、ノズルプレート81には、その長手方向に所定の間隔(長溝76のピッチと同等の間隔)を空けて複数のノズル開口部81aが形成されている。ノズル開口部81aは、ポリイミドフィルムなどのノズルプレート81に、例えば、エキシマレーザ装置を用いて形成される。これらノズル開口部81aは、それぞれ長溝76に一致して配置されている。
さらに、圧電アクチュエータ75の上面には、長方形状のカバープレート82が設けられている。カバープレート82の短手方向の長さ寸法は、圧電アクチュエータ75の短手方向の長さ寸法よりも短く設定されている。そして、カバープレート82の前端面82aと、圧電アクチュエータ75の前端面75dとは面一になっている。
【0036】
カバープレート82には、その長手方向に延びる矩形状の開口部83が形成されている。この開口部83は、圧電アクチュエータ75の長手方向の全体の長溝76に亘って延ばされている。すなわち、全ての長溝76が開口部83を介して外方に開放され、開口部83によって各長溝76がそれぞれ連通した状態になっている。また、圧電アクチュエータ75とカバープレート82を接合したものに、ノズルプレート81が接合される。さらにノズルプレート81を支持するノズル支持プレート84が接合され、液体噴射ヘッドチップ73を構成している。
【0037】
このような構成のもと、圧力緩衝器90内の貯留室から、接続部72,94を介して所定量のインクが流路基板71に供給される。また、流路基板71は、液体噴射ヘッドチップ73の開口部83と連通しており、接続部72,94から開口部83へとインクを行き渡らせることができる構造になっている。これにより、開口部83を介して長溝76内にインクが送り込まれる。すなわち、長溝76はインクが充填されるインク室として機能する一方、流路基板71は、各長溝76をそれぞれ連通させる共通インク室として機能する。
そして、駆動電極部78に駆動電圧を印加すると圧電厚み滑り効果により長溝76の側壁77が変形する。これにより、長溝76の容積が減少して長溝76内の圧力が増加するので、ノズルプレート81のノズル開口部81aからインク滴が吐出される。
【0038】
ここで、カバープレート82の開口部83には、この開口部83の中央に向かって突出するように段差部83aが全周に亘って形成されている。そして、カバープレート82には、開口部83を閉塞するようにフィルタ10が設けられている。フィルタ10は、この外周縁が開口部83の段差部83aに接着固定されており、長溝76にインク内に含まれる異物が浸入してしまうのを防止できるようになっている。
【0039】
(フィルタ)
図5は、フィルタ10の平面図、図6は、図5のA部拡大図、図7は、図6のB−B線に沿う断面図、図8は、図6のC−C線に沿う断面図である。
図5〜図8に示すように、フィルタ10は、例えばステンレス等により形成された第1金属プレート11、及び第2金属プレート12の2枚の金属プレート11,12を積層してなる。
【0040】
各金属プレート11,12は、カバープレート82の開口部83の形状に対応するように、カバープレート82の長手方向に長い矩形状に形成されたものであって、長手方向に沿って延在するフィルタ本体部13と、このフィルタ本体部13の外周縁に設けられた接着部14とが一体成形されている。各金属プレート11,12の肉厚tは、例えば、約30μm程度に設定されている。しかしながら、肉厚tは、約30μm程度に設定される場合に限られるものではない。
【0041】
各金属プレート11,12のフィルタ本体部13には、それぞれ厚さ方向に貫通するフィルタ用貫通孔15a,15bが複数形成されている。各フィルタ用貫通孔15a,15bは、それぞれ金属プレート11,12に、その長手方向に対して交差する直線L1を、互いに平行となるように複数並列させるように引いたとき、これら直線L1に沿うように配置されている。
また、第1金属プレート11に形成されているフィルタ用貫通孔15aと、第2金属プレート12に形成されているフィルタ用貫通孔15bは、互いに法線方向で重ならないように配置されている。つまり、フィルタ10を正面からみたとき、同一の直線L1上においては、フィルタ用貫通孔15aとフィルタ用貫通孔15bは、それぞれ交互に配置され、且つ互いに重ならないように配置された状態になっている。
【0042】
また、各フィルタ用貫通孔15a,15bの孔径φ1は、例えば、約46μm程度に設定されている。しかしながら、孔径φ1は、約46μm程度に設定される場合に限られるものではない。
さらに、第1金属プレート11に形成されているフィルタ用貫通孔15aは、それぞれのピッチ間隔P1が、例えば、約132μm程度に設定されている。同様に、第2金属プレート12に形成されているフィルタ用貫通孔15bは、それぞれのピッチ間隔P2が、例えば、約132μm程度に設定されている。そして、第1金属プレート11に形成されているフィルタ用貫通孔15aと、第2金属プレート12に形成されているフィルタ用貫通孔15bとのピッチ間隔P3は、例えば、約66μm程度に設定されている。すなわち、フィルタ10を正面からみたとき、各フィルタ用貫通孔15a,15bは、それぞれ等間隔に配置された状態になっている。
尚、ピッチ間隔P1、ピッチ間隔P2、及びピッチ間隔P3は、上述の値に限られるものではなく、任意に設定することが可能である。
【0043】
また、第1金属プレート11の第2金属プレート12との合わせ面11aには、面方向で隣接するフィルタ用貫通孔15a同士を連通する連通溝16が格子状に形成されている。したがって、連通溝16の法線方向に第2金属プレート12に形成されているフィルタ用貫通孔15bが配置された状態になっている。
【0044】
連通溝16の溝深さhは、例えば、約8μm程度に設定されている。しかしながら、溝深さhは、約8μm程度に設定される場合に限られるものではない。
そして、連通溝16が格子状に形成されることにより、第1金属プレート11には、隣接するフィルタ用貫通孔15aの間に断面略菱形状の支持柱17が形成される。この支持柱17により、第1金属プレート11の連通溝16が形成されている箇所が撓むことなく、第1金属プレート11と第2金属プレート12との間の連通溝16の溝深さhが適正に維持される。
【0045】
一方、金属プレート11,12の接着部14には、それぞれ厚さ方向に貫通する接着用貫通孔18a,18bが複数形成されている。各接着用貫通孔18a,18bは、それぞれ金属プレート11,12の長手方向、及び短手方向に沿うように等間隔に配置されている。また、各接着用貫通孔18a,18bは同軸上に配置されており、接着用貫通孔18a,18b同士が軸方向に連通した状態になっている。
また、各接着用貫通孔18a,18bの孔径φ2は、例えば、約60μm程度に設定されている。さらに、各接着用貫通孔18a,18bのピッチ間隔P4は、例えば、約90μm程度に設定されている。しかしながら、孔径φ2は、約60μm程度に設定される場合に限られるものではなく、また、ピッチ間隔P4は、約90μm程度に設定される場合に限られるものではない。
【0046】
(フィルタの製造方法)
続いて、フィルタの製造方法について説明する。
まず、第1金属プレート11に、エッチング等によりフィルタ用貫通孔15a、及び接着用貫通孔18aを形成し、その後、連通溝16を形成する。また、第2金属プレート12に、エッチング等によりフィルタ用貫通孔15b、及び接着用貫通孔18bを形成する。この後、第1金属プレート11の合わせ面11aと、第2金属プレート12の合わせ面12aとを重ね合わせるように積層し、これら金属プレート11,12同士を熱拡散接合により接合する。
尚、熱拡散接合とは、金属部材同士を接触させ荷重をかけた状態で、各部材に熱(例えば、約900度程度)を加えることにより接合する接合方法である。これは、金属同士の界面において、互いの分子同士が接合して部材同士が接合されるため、板状の部材同士を、密閉性を維持しながら接合する場合に適している。
【0047】
(フィルタの作用)
次に、図3、図6、図8、図9に基づいて、フィルタ10の作用について説明する。
図9は、フィルタ10の作用説明図であって、図7に対応している。
まず、図3、図8に示すように、液体噴射ヘッドチップ73の開口部83にフィルタ10を取り付ける。このとき、開口部83の段差部83aに接着剤を塗布し、この上からフィルタ10の接着部14を載置する。フィルタ10は、2枚の金属プレート11,12を積層したものなので平坦度が高く、段差部83aに接着部14全体を密接させることができる。
【0048】
また、接着部14には、複数の接着用貫通孔18a,18bが形成されているので、これら接着用貫通孔18a,18bに接着剤が入り込み、後に硬化することで、接着部14と段差部83aとの接着性を高めている。また、接着用貫通孔18a,18bが接着剤により満たされ、金属プレート11の図面平面視上面に溢れ出すように、段差部83aに接着剤を塗布して、さらに接着性を高めることも可能である。このため、接着部14全体が接着剤で充たされ、液体噴射ヘッドチップ73に対するフィルタ10の固着力が高まる。
【0049】
また、接着用貫通孔18a,18b,18cから接着剤が溢れ出すことにより、接着部14と段差部83aとの間の隙間が埋まっているか否かが確認できる。ここで、接着部14と段差部83aとの間に隙間が生じている場合、この隙間から塵埃が浸入してしまう虞があるが、接着部14と段差部83aとの間の隙間が埋まることによって、塵埃の浸入を防止できる。
【0050】
尚、上述の第1実施形態では、カバープレート82をセラミックなどの材質で構成するように検討したため、接着剤を使用してフィルタ10を接合することとしたが、本来その接合方法は接着剤の使用に限定されるものではない。例えば、フィルタ10が接合される対象が溶融性の高いプラスチックのような樹脂材料で形成される場合は、当該対象を溶融しフィルタ10と接合することも可能である。本実施形態で示した流路基板71などは、樹脂材料で形成されることが多いため、流路基板71を溶融してフィルタ10を取り付けることが可能である。もちろん、より強固な接合を目的として、溶融接合した後に、接着剤でさらに接着することも可能である。
【0051】
ここで、フィルタ10は、特に表裏面を問わないが、以下の説明においては、圧電アクチュエータ75側に第2金属プレート12を向けた状態でフィルタ10を接着固定した場合について説明する。
図9に示すように、上述のように取り付けられたフィルタ10を介し、液体噴射ヘッドチップ73の長溝76にインクが充填されるとき、インクは、フィルタ10のフィルタ用貫通孔15aに導かれ(矢印Y1参照)、連通溝16を通る(矢印Y2参照)。その後、フィルタ用貫通孔15bを介して圧電アクチュエータ75の長溝76にインクが充填される(矢印Y3参照)。
【0052】
このとき、連通溝16の溝深さhよりも大きい異物は連通溝16を通過することができず、フィルタ用貫通孔15aに留まる。この第1実施形態では、連通溝16の溝深さhは、例えば、約8μm程度に設定されているので、これよりも大きい異物はフィルタ10を通過することができず、インクが濾過される。
【0053】
(効果)
したがって、上述の第1実施形態によれば、フィルタ10は、2枚の金属プレート11,12を積層したものなので平坦度が高く、段差部83aに接着部14全体を密接させることができる。このため、液体噴射ヘッドチップ73に確実にフィルタ10を接着固定させることができる。
また、第1金属プレート11に形成される連通溝16の溝深さhを管理するだけでインク内に含まれる異物通過を阻害することができるので、従来と比較してフィルタ10の製造コストを低減することができる。
【0054】
さらに、第1金属プレート11にのみ連通溝16を形成しているので、連通溝16が形成されている部分の金属プレート11,12間の隙間管理を容易に行うことが可能になる。このため、安価で濾過性能の高いフィルタ10を提供することができる。
そして、図6に示すように、連通溝16は格子状に形成されているので、1つのフィルタ用貫通孔15aに導かれたインクが連通溝16に通流されるとき、四方全体に亘って通流される。このため、インクの圧損が小さく、十分な流速を確保することができる。
【0055】
また、各フィルタ用貫通孔15a,15bは、それぞれ金属プレート11,12に、その長手方向に対して交差する直線L1を、互いに平行となるように複数並列させるように引いたとき、これら直線L1に沿うように配置されていると共に、フィルタ10を正面からみたとき、同一の直線L1上においては、フィルタ用貫通孔15aとフィルタ用貫通孔15bは、それぞれ交互に配置され、且つ互いに重ならないように配置されている。このため、第1金属プレート11のフィルタ用貫通孔15aと、第2金属プレート12のフィルタ用貫通孔15bとのピッチ間隔P3(図7参照)を大きく確保することができる。よって、フィルタ10を通るインクの通流経路が長く設定され、フィルタ10の濾過性能を高めることができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を図1〜図3を援用し、図10に基づいて説明する。
図10は、第2実施形態におけるフィルタ210の平面図である。尚、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態についても同様)。
この第2実施形態において、液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送機構2、3と、被記録媒体Sにインク滴を噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4にインクを供給する液体供給手段5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている点、液体噴射ヘッド4は、被記録媒体S(図1参照)に対してインク滴を噴射する噴射部70と、噴射部70と電気的に接続された制御回路基板80と、噴射部70と液体供給管51との間に、それぞれ接続部93,94を介して介在された圧力緩衝器90とをベース41,42上に備えている点、噴射部70は、圧力緩衝器90に接続部72を介して接続された流路基板71と、電圧が印加されることにより、インクを液滴として被記録媒体Sへと噴射させる液体噴射ヘッドチップ73と、液体噴射ヘッドチップ73と制御回路基板80とに電気的に接続され液体噴射ヘッドチップ73に駆動信号を伝送するためのフレキシブル配線74とを備えている点、液体噴射ヘッドチップ73を構成するカバープレート82の開口部83には、この開口部83の中央に向かって突出するように段差部83aが全周に亘って形成されており、ここに開口部83を閉塞するようにフィルタ210が設けられている点、フィルタ210は、2枚の金属プレート211,212を積層してなり、長手方向に沿って延在するフィルタ本体部13と、このフィルタ本体部13の外周縁に設けられた接着部14とが一体成形されている点、圧電アクチュエータ75側に第2金属プレート212を向けた状態でフィルタ210を取り付けている点等の基本的構成は、前述した第1実施形態と同様である(以下の実施形態についても同様)。
【0057】
ここで、第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態のフィルタ10のフィルタ用貫通孔15a,15bの配列と、第2実施形態のフィルタ210のフィルタ用貫通孔215a,215bの配列とが異なる点にある。
より詳しくは、図10に示すように、第1金属プレート211に形成されているフィルタ用貫通孔215aと、第2金属プレート212に形成されているフィルタ用貫通孔215bは、それぞれ各金属プレート211,212の長手方向、及び短手方向に沿うように、等間隔で配置されている。
【0058】
また、第1金属プレート211に形成されているフィルタ用貫通孔215aと、第2金属プレート212に形成されているフィルタ用貫通孔215bは、互いに法線方向で重ならないように配置されている。さらに、第1金属プレート211には、隣接する面方向でフィルタ用貫通孔215a同士を連通する連通溝216が格子状に形成されている。これにより、第2金属プレート212に形成されているフィルタ用貫通孔215bは、連通溝216の法線方向に配置された状態になる。
【0059】
また、連通溝216が格子状に形成されることにより、第1金属プレート211には、隣接するフィルタ用貫通孔215aの間に断面矩形状の支持柱217が形成される。この支持柱217により、第1金属プレート211の連通溝216が形成されている箇所が撓むことなく、第1金属プレート211と第2金属プレート212との間の連通溝216の溝深さが適正に維持される。
このように、フィルタ210を形成した場合であっても前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0060】
尚、上述の第1実施形態、及び第2実施形態では、面方向で隣接するフィルタ用貫通孔15a,215a同士を連通するように、連通溝16,216を格子状に形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、連通溝16,216は、第1金属プレート11,211と第2金属プレート12,212とを積層させた状態で、第1金属プレート11,211に形成されているフィルタ用貫通孔15a,215aと、第2金属プレート12,212に形成されているフィルタ用貫通孔15b,215bとを連通するように凹状に形成されていればよい。
【0061】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を図11に基づいて説明する。
図11は、第3実施形態におけるフィルタ310の断面図である。
ここで、同図に示すように、第1実施形態と第3実施形態との相違点は、第1実施形態では、第1金属プレート11にのみ連通溝16が形成されているのに対し、第3実施形態では、第1金属プレート311の合わせ面311aと、第2金属プレート312の合わせ面312aとの両者311a,312aに格子状の連通溝316が形成されている点にある。
そして、第1金属プレート311には、隣接するフィルタ用貫通孔315aの間に支持柱317が形成されると共に、第2金属プレート312には、隣接するフィルタ用貫通孔315bの間に支持柱317が形成される。
【0062】
したがって、上述の第3実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、各金属プレート311,312の形状を統一でき、製造コストを低減することが可能になる。
尚、上述の第3実施形態も、前述の第1実施形態、及び第2実施形態と同様に、連通溝316を格子状に形成する場合に限られるものではなく、第1金属プレート311と第2金属プレート312とを積層させた状態で、第1金属プレート311に形成されているフィルタ用貫通孔315aと、第2金属プレート312に形成されているフィルタ用貫通孔315bとが連通するように凹状に形成されていればよい。
【0063】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を図12に基づいて説明する。
図12は、第4実施形態におけるフィルタ410の断面図である。
ここで、同図に示すように、第1実施形態と第4実施形態との相違点は、第1実施形態の各金属プレート11,12のフィルタ本体部13に形成されているフィルタ用貫通孔15a,15bの形状と、第4実施形態の各金属プレート411,412のフィルタ本体部413に形成されているフィルタ用貫通孔415a,415bの形状が異なる点にある。
【0064】
より詳しくは、図12に示すように、各金属プレート411,412のフィルタ本体部413に形成されているフィルタ用貫通孔415a,415bは、それぞれインクの通流方向(以下、単に通流方向という)下流側(図12における上側)に向かうに従って漸次縮径するようにテーパ状に形成されている。
各フィルタ用貫通孔415a,415bの通流方向上流側の直径φ3、つまり、各フィルタ用貫通孔415aの大孔の直径φ3は、例えば、約46μm程度に設定されている。一方、各フィルタ用貫通孔415a,415bの通流方向下流側の直径φ4、つまり、各フィルタ用貫通孔415aの小孔の直径φ4は、例えば、約30μm〜約40μm程度に設定されている。尚、直径φ3は、約46μm程度に設定される場合に限られるものではなく、また、直径φ4は、約30μm〜約40μm程度に設定される場合に限られるものではない。
【0065】
このように構成することにより、各フィルタ用貫通孔415a,415bのインクを受け入れる側の直径φ3が大きく設定されたことになる。
したがって、上述の第4実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、フィルタ410を通過するインクの圧損を低減でき、インクの流速を十分確保することができる。
【0066】
尚、上述の第4実施形態では、各金属プレート411,412の各フィルタ用貫通孔415a,415bの両方がテーパ形状を有するように記載したが、各フィルタ用貫通孔415a,415bのうち、少なくとも一方がテーパ形状を有するように形成すれば、本実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合、例えば、金属プレート411のフィルタ用貫通孔415aはテーパ形状を有しており、金属プレート412のフィルタ用貫通孔415bは図7,9および11に示すようにプレートの深さ方向にストレート形状の貫通孔とすることが可能であり、もちろんテーパ形状とストレート形状の貫通孔を各フィルタ用貫通孔415a,415bで入れ換えることも可能である。
【0067】
(第5実施形態)
次に、この発明の第5実施形態を図13に基づいて説明する。
図13は、第5実施形態におけるフィルタ510の断面図である。
ここで、同図に示すように、第4実施形態と第5実施形態との相違点は、第4実施形態の第2金属プレート412に形成されているテーパ状のフィルタ用貫通孔415bと、第5実施形態の第2金属プレート512に形成されているテーパ状のフィルタ用貫通孔515bの向きが異なる点にある。
【0068】
つまり、第5実施形態の第2金属プレート512に形成されているフィルタ用貫通孔515bは、第2金属プレート512の第1金属プレート511との合わせ面512a側に向かうに従って漸次縮径するようにテーパ状に形成されている。
このため、各金属プレート511,512に形成されているテーパ状のフィルタ用貫通孔515a,515bは、それぞれ対応する合わせ面511a,512a側に向かうに従って漸次縮径するように形成されているといえる。
【0069】
このように構成することにより、第1金属プレート511のフィルタ用貫通孔515aと、第2金属プレート512のフィルタ用貫通孔515bとのピッチ間隔P3’を小さくしつつ、連通溝16における第1金属プレート511のフィルタ用貫通孔515aと、第2金属プレート512のフィルタ用貫通孔515bとの間の距離L1を大きく設定することができる。
【0070】
したがって、上述の第5実施形態によれば、ピッチ間隔P3’を小さくできる分、より多くのフィルタ用貫通孔515a,515bを形成することができるので、高い濾過性能を確保しつつ、インクの圧損を低減することが可能になる。
尚、上述の第5実施形態では、各金属プレート511,512の各フィルタ用貫通孔515a,515bの両方がテーパ形状を有するように記載したが、各金属プレート512(下流側)のフィルタ用貫通孔515bがテーパ形状を有するように形成すれば、本実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合、例えば、金属プレート511のフィルタ用貫通孔515aは図7,9および11に示すようにプレートの深さ方向にストレート形状の貫通孔とすることが可能である。
【0071】
尚、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、液体噴射ヘッドチップ73を構成するカバープレート82の開口部83にフィルタ10,210,310,410,510を取り付けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、液体噴射ヘッドチップ73に供給されるインクを濾過可能な位置であればよい。例えば、液体噴射ヘッド4の流路基板71内にフィルタ10,210,310,410,510を設けてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、フィルタ10,210,310,410,510を、それぞれ2枚の金属プレート11〜512を積層して形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、3枚以上の複数の金属プレートを重ね合せて形成してもよい。この場合、各金属プレートの合わせ面に連通溝16,216,316を形成すればよい。
さらに、上述の実施形態では、フィルタ10,210,310,410,510は、例えばステンレス等により形成されたものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、フィルタ10,210,310,410,510の材質は、熱拡散接合を利用した接合方法が可能な材質であればよい。
【符号の説明】
【0073】
1 液体噴射記録装置
4 液体噴射ヘッド
10,210,310,410,510 フィルタ(液体噴射ヘッド用のフィルタ)
11,211,311,411,511 第1金属プレート(プレート)
11a,21a,311a,312a,511a,512a 合わせ面
12,212,312,412,512 第2金属プレート(プレート)
15a,15b,215a,215b,415a,415b,515a,515b フィルタ用貫通孔(貫通孔)
16,216,316 連通溝
50 液体収容体
51 液体供給管
M ポンプモータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレートを積層してなり、供給される液体を濾過するための液体噴射ヘッド用のフィルタであって、
各プレートに、それぞれ厚さ方向に貫通する貫通孔を複数形成すると共に、これら貫通孔を法線方向で重ならないように配置し、
互いに重なり合う前記プレートの合わせ面のうち、少なくとも一方の合わせ面に、各貫通孔を連通させるための凹部が形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項2】
前記凹部は、面方向で隣接する前記貫通孔同士を連通するように形成された連通溝であって、この連通溝の法線方向に他の前記プレートの前記貫通孔が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項3】
互いに重なり合う前記プレートの合わせ面のうち、一方の合わせ面にのみ前記凹部を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項4】
互いに重なり合う前記プレートの両方の合わせ面に、それぞれ前記凹部を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項5】
前記複数のプレートのうち、少なくとも1つのプレートに形成されている前記貫通孔は、前記液体の通流方向下流側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項6】
各プレートに形成された貫通孔は、前記液体の通流方向下流側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項7】
2つの前記プレートを互いに重ね合せて構成し、
これら2つの前記プレートのうち、少なくとも一方のプレートに形成された前記貫通孔は、各プレートの合わせ面側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項8】
各プレートに形成された前記貫通孔は、各プレートの合わせ面側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項9】
請求項1に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタを備えていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する液体収容体と、
前記液体噴射ヘッドと前記液体収容体との間に敷設され、前記液体を流通させる液体供給管とを備えたことを特徴とする液体噴射記録装置。
【請求項1】
複数のプレートを積層してなり、供給される液体を濾過するための液体噴射ヘッド用のフィルタであって、
各プレートに、それぞれ厚さ方向に貫通する貫通孔を複数形成すると共に、これら貫通孔を法線方向で重ならないように配置し、
互いに重なり合う前記プレートの合わせ面のうち、少なくとも一方の合わせ面に、各貫通孔を連通させるための凹部が形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項2】
前記凹部は、面方向で隣接する前記貫通孔同士を連通するように形成された連通溝であって、この連通溝の法線方向に他の前記プレートの前記貫通孔が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項3】
互いに重なり合う前記プレートの合わせ面のうち、一方の合わせ面にのみ前記凹部を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項4】
互いに重なり合う前記プレートの両方の合わせ面に、それぞれ前記凹部を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項5】
前記複数のプレートのうち、少なくとも1つのプレートに形成されている前記貫通孔は、前記液体の通流方向下流側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項6】
各プレートに形成された貫通孔は、前記液体の通流方向下流側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項7】
2つの前記プレートを互いに重ね合せて構成し、
これら2つの前記プレートのうち、少なくとも一方のプレートに形成された前記貫通孔は、各プレートの合わせ面側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項8】
各プレートに形成された前記貫通孔は、各プレートの合わせ面側に向かうに従って漸次縮径するように形成されていることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタ。
【請求項9】
請求項1に記載の液体噴射ヘッド用のフィルタを備えていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する液体収容体と、
前記液体噴射ヘッドと前記液体収容体との間に敷設され、前記液体を流通させる液体供給管とを備えたことを特徴とする液体噴射記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−91295(P2013−91295A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235920(P2011−235920)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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