説明

液体噴射装置、液体容器、および、複数の液体容器の制御方法

【課題】液体容器に設けられたデバイスが発生するノイズを抑制する。
【解決手段】液体噴射装置は、第1の電気デバイスを有する第1の液体容器を装着可能な容器装着部と、第1の液体容器が容器装着部に装着された状態において第1の電気デバイスに電気的に接続される第1の配線と、電位が変動する変動信号を、第1の配線を介して第1の電気デバイスとの間で送受信可能な制御回路と、変動信号の送受信を行っていないときに、第1の配線に所定の電位を供給するための第1のスイッチと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置および液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の印刷装置などの液体噴射装置には、噴射するための液体が収容された液体容器が装着される。このような液体容器には、液体の残量を検出するためのセンサが設けられているものが知られている(特許文献1〜3)。印刷装置に設けられた制御部は、液体容器のセンサと電気信号を遣り取りし、液体の残量を検出することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−146030号公報
【特許文献2】特開平6−226989号公報
【特許文献3】特開2003−112431号公報
【特許文献4】特開2002−370383号公報
【特許文献5】特開2004−299405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、センサが発生するノイズについては、考慮されていなかった。例えば、センサとして用いられる圧電素子の放電ノイズが、他の液体容器あるいは印刷装置に何らかの影響を与えてしまうおそれがあった。このような課題は、液体容器にセンサが設けられている場合に限らず、液体容器に何らかの電気デバイスが設けられている場合に共通する課題であった。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、液体容器に設けられた電気デバイスに関連して発生するノイズを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]液体噴射装置であって、
第1の電気デバイスを有する第1の液体容器を装着可能な容器装着部と、
前記第1の液体容器が前記容器装着部に装着された状態において前記第1の電気デバイスに電気的に接続される第1の配線と、
電位が変動する変動信号を、前記第1の配線を介して前記第1の電気デバイスとの間で送受信可能な制御回路と、
前記変動信号の送受信を行っていないときに、前記第1の配線に所定の電位を供給するための第1のスイッチと、
を備える、液体噴射装置。
こうすれば、デバイスとの信号に遣り取りに用いられていないときには、第1の配線を所定電位に保持できる。この結果、第1の配線を介してデバイスから放出されるノイズを抑制することができる。
【0008】
[適用例2]適用例1に記載の液体噴射装置において、
前記容器装着部は、さらに、第2の電気デバイスを有する第2の液体容器を装着可能であり、
前記液体噴射装置は、さらに、
前記第1の液体容器が前記容器装着部に装着された状態において前記第2の電気デバイスに電気的に接続される第2の配線を備え、
前記制御部は、さらに、前記第2の配線を介して前記第2の電気デバイスとの間で前記変動信号を送受信可能であり、
前記第1のスイッチは、前記第2の配線を介して前記第2の電気デバイスと前記変動信号を送受信する期間において、前記第1の配線に所定の電位を供給する、液体噴射装置。
こうすれば、第1の液体容器のデバイスから放出されるノイズを抑制して、第2の液体容器のデバイスと液体噴射装置との信号の遣り取りを安定化できる。
【0009】
[適用例3]適用例2に記載の液体噴射装置は、さらに、
前記第1の配線を介して前記第1の電気デバイスと前記変動信号を送受信する期間において、前記第2の配線に所定の電位を供給する第2のスイッチを備える、液体噴射装置。
こうすれば、第2の液体容器のデバイスから放出されるノイズを抑制して、第1の液体容器のデバイスと液体噴射装置との信号の遣り取りを安定化できる。
【0010】
[適用例4]適用例1ないし適用例3に記載の液体噴射装置において、
前記第1の電気デバイスは、発振装置を含む、液体噴射装置。
こうすれば、液体容器の発振装置が放出する発振ノイズを抑制することができる。
【0011】
[適用例5]適用例4に記載の液体噴射装置において、
前記発信装置は、圧電素子を含む、液体噴射装置。
こうすれば、液体容器の圧電素子が放出するノイズを抑制することができる。
【0012】
[適用例6]適用例4または適用例5に記載の液体噴射装置において、
前記第1のスイッチは、前記第1の配線を介して前記圧電素子と前記変動信号を送受信した後に、前記第1の配線を、前記所定の電位に接続する、液体噴射装置。
こうすれば、圧電素子と信号を遣り取りした後の残留ノイズの放出を抑制することができる。
【0013】
[適用例7]液体噴射装置であって、
電気デバイスをそれぞれ有する複数の液体容器を装着可能な容器装着部と、
前記複数の液体容器が前記容器装着部に装着された状態において前記複数の液体容器の各電気デバイスにそれぞれ電気的に接続される複数の配線と、
電位が変動する変動信号を、前記複数の電気デバイスのそれぞれと前記複数の配線のそれぞれを介して送受信可能な制御部と、
前記制御部が、前記複数の配線のうちの第1の配線を介して、前記複数の電気デバイスのうちの前記第1の配線と電気的に接続されている電気デバイスとの間で前記変動信号を送受信する期間において、前記複数の配線のうちの前記第1の配線を除く配線に所定の電位を供給するスイッチと、
を備える、液体噴射装置。
こうすれば、他のデバイスから放出されるノイズを抑制して、第1のデバイスと液体噴射装置との信号の遣り取りを安定化できる。
【0014】
[適用例8]液体噴射装置に装着される液体容器であって、
液体を収容する本体と、
電気デバイスと、
前記液体容器が前記液体噴射装置に装着された際に、前記電気デバイスを前記液体噴射装置に電気的に接続するための配線と、
前記液体噴射装置が前記配線を介して前記電気デバイスと変動信号を送受信可能な第1の状態と、前記配線を所定の電位に保持した第2の状態と、を切り換える切換部と、
を備える、液体容器。
こうすれば、第2の状態にすることにより、デバイスが放出するノイズを抑制することができる。
【0015】
[適用例9]適用例8に記載の液体容器において、
前記液体噴射装置は、複数の前記液体容器を装着可能であり、
前記液体噴射装置が一の前記液体容器の電気デバイスと前記変動信号を送受信している期間において、他の前記液体容器の前記切換部は、前記配線を所定の電位に保持する、液体容器。
こうすれば、他の液体容器のデバイスから放出されるノイズを抑制して、一のデバイスと液体噴射装置との信号の遣り取りを安定化できる。
【0016】
[適用例10]
適用例8または適用例9に記載の液体容器において、
前記デバイスは、発振装置を含む、液体容器。
こうすれば、液体容器の発振装置が放出する発振ノイズを抑制することができる。
【0017】
[適用例11]
適用例10に記載の液体容器において、
前記発信装置は、圧電素子を含む、液体容器。
こうすれば、液体容器の圧電素子が放出するノイズを抑制することができる。
【0018】
[適用例12]
適用例10または適用例11に記載の液体容器において、
前記第1の状態において、前記配線を介して前記液体噴射装置と前記変動信号を送受信した後に、前記第2の状態に切り換えられる、液体噴射装置。
こうすれば、液体噴射装置と信号を遣り取りした後の圧電素子の残留ノイズの放出を抑制することができる。
【0019】
この発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、液体容器を制御する方法、液体容器のデバイスにアクセスする方法などの方法発明として実現することができる。また、本発明は、液体噴射装置と液体容器を含むシステム、液体噴射装置の制御プログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
A.第1実施例:
・印刷システムの構成:
図1は、本発明の一実施例としての印刷システムの概略構成を示す説明図である。印刷システムは、プリンタ20と、コンピュータ90と、を備えている。プリンタ20は、コネクタ80を介して、コンピュータ90と接続されている。
【0021】
プリンタ20は、副走査送り機構と、主走査送り機構と、ヘッド駆動機構と、各機構を制御するための主制御部40と、を備えている。副走査送り機構は、紙送りモータ22とプラテン26とを備えており、紙送りモータの回転をプラテンに伝達することによって用紙Pを副走査方向に搬送する。主走査送り機構は、キャリッジモータ32と、プーリ38と、キャリッジモータとプーリとの間に張設された駆動ベルト36と、プラテン26の軸と並行に設けられた摺動軸34と、を備えている。摺動軸34は、駆動ベルト36に固定されたキャリッジ30を摺動可能に保持している。キャリッジモータ32の回転は、駆動ベルト36を介してキャリッジ30に伝達され、キャリッジ30は、摺動軸34に沿ってプラテン26の軸方向(主走査方向)に往復動する。ヘッド駆動機構は、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット60を備えており、印刷ヘッドを駆動して用紙P上にインクを吐出させる。印刷ヘッドユニット60には、後述するように、複数のインクカートリッジを脱着自在に装着可能である。プリンタ20は、さらに、ユーザがプリンタの各種の設定を行ったり、プリンタのステータスを確認したりするための操作部70を備えている。
【0022】
図2は、第1実施例おけるインクカートリッジの構成を示す斜視図である。インクカートリッジ100は、インクを収容する筐体101と、筐体101の開口部を封止する蓋体102と、基板120と、センサ110と、を備えている。筐体101の底面には、印刷ヘッドユニット60に装着されたときに、印刷ヘッドユニット60に対してインクを供給するためのインク供給口104が形成されている。筐体101の前面FRの上端には、張り出し部103が形成されている。さらに、筐体101の前面FRの中央より下側(底面側)には、上下をリブ107および106により囲まれた凹部105が形成されている。凹部105には、上述した基板120が嵌め込まれている。センサ110は、筐体101の側壁SDに埋め込まれている。センサ110は、後述するように、圧電素子を含み、インク残量の検出に用いられる。
【0023】
図3は、第1実施例に係る基板の構成を示す図である。図3(A)は、基板120の表面の構成を示している。表面は、インクカートリッジ100に装着されたときに外側に露出している面である。図3(B)は、基板120を側面から見た図を示している。基板120の上端部には、ボス溝121が形成され、基板120の下端部には、ボス穴122が形成されている。図2に示すように、基板120が、筐体101の凹部105に装着される際、ボス溝121およびボス穴122には、凹部105の底面に形成されたボス108および109が嵌合する。ボス108および109の先端部は、潰されて、かしめられる。これにより基板120は、凹部105に固定される。
【0024】
図4は、印刷ヘッドユニット60の構成を説明する図である。印刷ヘッドユニット60は、ホルダ62と、ホルダカバー63と、接続機構66と、印刷ヘッド68と、キャリッジ回路50と、を備えている。ホルダ62は、複数のインクカートリッジ100を装着可能に構成され、印刷ヘッド68の上面に配置されている。ホルダカバー63は、装着されるインクカートリッジごとに、それぞれ開閉可能に、印刷ヘッド68の上部に取り付けられている。接続機構66は、後述するインクカートリッジ100の基板120に設けられた各端子と、キャリッジ回路50とを電気的に接続するための導電性の接続端子67が、基板120の端子ごとに設けられている。印刷ヘッド68の上面には、インクカートリッジ100から印刷ヘッド68にインクを供給するためのインク供給針64が配置されている。印刷ヘッド68は、複数のノズルと、複数の圧電素子(ピエゾ素子)と、を含み、各圧電素子に印加される電圧に応じて各ノズルからインク滴を吐出し、用紙P上にドットを形成する。キャリッジ回路50は、主制御部40と協働してインクカートリッジ100に関連する制御を行うための回路であり、以下ではサブ制御部ともいう。
【0025】
ホルダカバー63を開状態として、インクカートリッジ100をホルダ62に装着し、ホルダカバー63を閉めると、インクカートリッジ100は、ホルダ62に固定される。インクカートリッジ100がホルダ62に固定された状態では、インクカートリッジ100のインク供給口104に、インク供給針64が挿入され、インクカートリッジ100に収容されているインクは、インク供給針64を介して印刷ヘッド68に供給される。以上の説明から解るように、インクカートリッジ100は、図4におけるZ軸の正方向に挿入されることにより、ホルダ62に装着される。
【0026】
図3に戻って、基板120について、さらに説明する。図3(A)における矢印Rは、上述したインクカートリッジ100の挿入方向を示している。図3(B)に示すように、基板120は、裏面に記憶装置130を備え、表面に9つの端子からなる端子群を備えている。記憶装置130は、メモリセルアレイを含み、メモリセルアレイには、例えば、インクの残量やインクの色などのインクまたはインクカートリッジ100に関連する種々のデータが格納される。
【0027】
各端子は、略矩形状に形成され、挿入方向Rと略垂直な列を2列形成するように配置されている。2つの列のうち、挿入方向R側、すなわち、図3(A)における下側に位置する列を下側列と呼び、挿入方向Rの反対側、すなわち、図3(A)における上側に位置する列を上側列と呼ぶ。上側列を形成する端子と、下側列を形成する端子は、互いの端子中心が挿入方向Rに並ばないように、互い違いに配置され、いわゆる千鳥状の配置を構成している。
【0028】
上側列を形成するように配列されている端子は、図3(A)中左側から、第1の短絡検出端子210、接地端子220、電源端子230、第2の短絡検出端子240である。下側列を形成するように配列されている端子は、図3(A)中左側から、第1のセンサ駆動用端子250、リセット端子260、クロック端子270、データ端子280、第2のセンサ駆動用端子290である。左右方向の中央付近の5つの端子、すなわち、接地端子220、電源端子230、リセット端子260、クロック端子270、データ端子280は、それぞれ、記憶装置130に接続されている。下側列の両端に位置する2つの端子、すなわち、第1のセンサ駆動用端子250および第2のセンサ駆動用端子290は、センサ110に含まれる圧電素子の一方の電極および他方の電極にそれぞれ接続されている。第1の短絡検出端子210は、接地端子220に短絡されている。第2の短絡検出端子240は、どこにも接続されていない。
【0029】
基板120の各端子は、インクカートリッジ100がホルダ62に固定されると、ホルダ62に備えられた接続機構66の接続端子67を介して、サブ制御部(キャリッジ回路)50と電気的に接続される。
【0030】
・印刷装置の電気的構成:
図5は、プリンタの電気的な構成を示す第1の説明図である。図5は、主制御部40とサブ制御部50とインクカートリッジ100との全体に注目して描かれている。各インクカートリッジ100の記憶装置130とには、互いに異なる3ビットのID番号(識別番号)が割り当てられている。搭載されるインクカートリッジ100の数が6個である場合、例えば、6つの記憶装置130には、それぞれIDとして”001”〜”110”が割り当てられている。
【0031】
サブ制御部50と各インクカートリッジ100との間は、複数の配線で接続されている。複数の配線は、第1のリセット信号線LR1、第1のデータ信号線LD1、第1のクロック信号線LC1、第1の接地線LCS、第1の短絡検出線LCOA、第2の短絡検出線LCOB、第1のセンサ信号線LDSN、第2のセンサ信号線LDSPを含む。
【0032】
第1のリセット信号線LR1は、第1のリセット信号CRSTを伝送する導電線であり、基板120のリセット端子260を介して記憶装置130に電気的に接続される。第1のデータ信号線LD1は、第1のデータ信号CSDAを伝送する導電線であり、基板120のデータ端子280を介して記憶装置130に電気的に接続される。第1のクロック信号線LC1は、第1のクロック信号CSCKを伝送する導電線であり、基板120のクロック端子270を介して記憶装置130に電気的に接続される。これらの3本の配線LR1、LD1、LC1は、それぞれ、一つのサブ制御部50側の端部と、インクカートリッジ100の数に分岐したインクカートリッジ100側の端部を有する配線である。これらの3本の配線LR1、LD1、LC1を用いて、サブ制御部50は、各インクカートリッジ100の記憶装置130にアクセスすることができる。
【0033】
第1の接地線LCSは、記憶装置130に接地電位CVSSを供給する導電線であり、基板120の接地端子220を介して記憶装置130に電気的に接続される。第1の接地線LCSは、一つのサブ制御部50側の端部と、インクカートリッジ100の数に分岐したインクカートリッジ100側の端部を有する配線である。接地電位CVSSは、主制御部40からサブ制御部50に供給される接地電位VSS(後述)と接続されており、GNDレベルに設定される。
【0034】
第1の短絡検出線LCOAおよび第2の短絡検出線LCOBは、後述する短絡検出に用いられる導電線である。第1の短絡検出線LCOAおよび第2の短絡検出線LCOBは、それぞれインクカートリッジ100ごとに独立した複数の配線であり、一端がサブ制御部50に電気的に接続され、他端が基板120の第1の短絡検出端子210および第2の短絡検出端子240にそれぞれ電気的に接続される。
【0035】
第1のセンサ信号線LDSNおよび第2のセンサ信号線LDSPは、センサ110の圧電素子に駆動電圧を印加すると共に、圧電素子の圧電効果により発生する電圧をサブ制御部50に伝送するための導電線である。第1のセンサ信号線LDSNおよび第2のセンサ信号線LDSPは、それぞれインクカートリッジ100ごとに独立した複数の配線であり、一端がサブ制御部50に電気的に接続され、他端が基板120の第1のセンサ駆動用端子250および第2のセンサ駆動用端子290にそれぞれ電気的に接続される。第1のセンサ信号線LDSNは、第1のセンサ駆動用端子250を介して、センサ110の圧電素子の一方の電極に電気的に接続され、第2のセンサ信号線LDSPは、第2のセンサ駆動用端子290を介して、センサ110の圧電素子の他方の電極に電気的に接続される。
【0036】
主制御部40と各インクカートリッジ100との間は、第1の電源線LCVで接続されている。第1の電源線LCVは、記憶装置130に電源電位CVDDを供給する導電線であり、基板120の電源端子230を介して記憶装置130に接続されている。第1の電源線LCVは、一つのサブ制御部50側の端部と、インクカートリッジ100の数に分岐したインクカートリッジ100側の端部を有する配線である。記憶装置130の駆動に用いられるハイレベルの電源電位CVDDは、ローレベルの接地電位CVSS(GNDレベル)に対して、3.3V程度の電位が用いられる。電源電位CVDDの電位レベルは、記憶装置130のプロセス世代などに応じて、異なる電位であって良く、例えば、1.5Vや2.0Vなどが用いられ得る。
【0037】
主制御部40とサブ制御部50との間は、複数の配線で電気的に接続されている。複数の配線は、第2のリセット信号線LR2と、第2のデータ信号線LD2と、第2のクロック信号線LC2と、イネーブル信号線LEと、第2の電源線LVと、第2の接地線LSと、第3のセンサ駆動信号線LDSを含む。
【0038】
第2のリセット信号線LR2および第2のクロック信号線LC2は、主制御部40からサブ制御部50に対して、それぞれ第2のリセット信号RSTおよび第2のクロック信号SCKを伝送するための導電線である。第2のデータ信号線LD2は、主制御部40とサブ制御部50との間で第2のデータ信号SDAを遣り取りするための導電線である。これらの信号線LR2、LC2、LD2を用いて、主制御部40はサブ制御部50と、データ通信を行うことができる。
【0039】
イネーブル信号線LEは、主制御部40からサブ制御部50に対して、イネーブル信号ENを伝送するための導電線である。第2の電源線LVおよび第2の接地線LSは、主制御部40からサブ制御部50に対して、それぞれ、電源電位VDDおよび接地電位VSSを供給する導電線である。電源電位VDDは、上述した記憶装置130に供給される電源電位CVDDと同レベル、例えば、接地電位VSSおよびCVSS(GNDレベル)に対して、3.3V程度の電位が用いられる。電源電位VDDの電位レベルは、サブ制御部50のロジック部分のプロセス世代などに応じて、異なる電位であって良く、例えば、1.5Vや2.0Vなどが用いられ得る。
【0040】
図6は、プリンタの電気的な構成を示す第2の説明図である。図6は、インク残量の判断に必要な部分に注目して描かれている。主制御部40は、駆動信号生成回路42と、CPUおよびメモリを含む第1の制御回路48と、を備えている。
【0041】
駆動信号生成回路42は、駆動信号データメモリ44を備えている。駆動信号データメモリ44には、センサを駆動するためのセンサ駆動信号DSを示すデータが格納されている。駆動信号生成回路42は、第1の制御回路48からの指示に従って、駆動信号データメモリ44から該データを読み出して、任意の波形を有するセンサ駆動信号DSを生成する。
【0042】
なお、本実施例では、駆動信号生成回路42は、さらに、印刷ヘッド68に供給されるヘッド駆動信号を生成することができる。すなわち、本実施例では、第1の制御回路48は、インク残量の判断を実行する際には、駆動信号生成回路42にセンサ駆動信号を生成させ、印刷を実行する際には、駆動信号生成回路42にヘッド駆動信号を生成させる。以下では、センサ駆動信号を単に「駆動信号」とも呼ぶ。
【0043】
サブ制御部50は、4種類のスイッチSW1〜SW4と、第2の制御回路55とを備えている。スイッチSW1〜SW3は、それぞれ1つずつであるが、スイッチSW4は、装着可能なインクカートリッジの数と同数だけ、すなわち、本実施例では6個備えられている。第2の制御回路55は、比較器52と、カウンタ54と、ロジック部58と、を備えている。ロジック部58は、スイッチSW1〜SW3とカウンタ54との動作を制御する。なお、本実施例では、ロジック部58は、1つのチップ(ASIC)で構成されている。
【0044】
第1のスイッチSW1は、1チャネルのアナログスイッチである。第1のスイッチSW1の一方の端子は、主制御部40の駆動信号生成回路42に第3のセンサ駆動信号線LDSを介して接続されており、他方の端子は、第2および第3のスイッチSW2,SW3と接続されている。第1のスイッチSW1は、センサ110に駆動信号DSを供給する際にオン状態に設定され、センサ110からの応答信号RSを検出する際にオフ状態に設定される。
【0045】
第2のスイッチSW2は、6チャネルのアナログスイッチである。第2のスイッチSW2の一方の側の1つの端子は、第1および第3のスイッチSW1,SW3に接続されており、他方の側の6つの端子のそれぞれは、6つの第4のスイッチSW4のそれぞれの一方の側の端子に接続されていると共に、6つのインクカートリッジ100のそれぞれのセンサ110の一方の電極に接続されている。
【0046】
第3のスイッチSW3は、1チャネルのアナログスイッチである。第3のスイッチSW3の一方の端子は、第1および第2のスイッチSW1、SW2と接続されており、他方の端子は、第2の制御回路55の比較器52と接続されている。第3のスイッチSW3は、センサ110に駆動信号DSを供給する際にオフ状態に設定され、センサ110からの応答信号RSを検出する際にオン状態に設定される。
【0047】
第4のスイッチSW4は、1チャネルのアナログスイッチである。6つの第4のスイッチSW4のそれぞれの一方の側の端子は、上述のように、第2のスイッチSW2の他方の側の6つの端子のそれぞれと接続されていると共に、6つのインクカートリッジ100のそれぞれのセンサ110の一方の電極に接続されている。6つの第4のスイッチSW4のそれぞれの他方の端子は、接地されている。なお、各センサ110の他方の電極は、接地されている。
【0048】
比較器52は、オペアンプを含んでおり、第3のスイッチSW3を介して供給される応答信号RSと基準電圧Vref とを比較して、比較結果を示す信号QCを出力する。具体的には、比較器52は、応答信号RSの電圧が基準電圧Vref以上である場合には出力信号QCをHレベルとし、応答信号RSの電圧が基準電圧Vref未満である場合には出力信号QCをLレベルとする。
【0049】
カウンタ54は、比較器52からの出力信号QCに含まれるパルスの数をカウントして、カウント値をロジック部58に与える。なお、カウンタ54は、ロジック部58によってイネーブル状態に設定される期間に、カウント動作を実行する。
【0050】
ロジック部58は、第2のスイッチSW2を制御して、1つのセンサ110を選択する。ロジック部58は、選択された1つのセンサ110に接続された第4のスイッチSW4をオフ状態にし、それ以外の5つのセンサ110に接続されて第4のスイッチSW4をオン状態とする。そして、ロジック部58は、センサ110に駆動信号DSを供給する際に、第1のスイッチSW1をオン状態に設定し、第3のスイッチSW3をオフ状態に設定する。また、ロジック部58は、センサ110からの応答信号RSを検出する際に、第1のスイッチSW1をオフ状態に設定し、第3のスイッチSW3をオン状態に設定する。
【0051】
また、ロジック部58は、センサ110からの応答信号RSを検出すべき期間に、カウンタ54をイネーブル状態に設定する。そして、ロジック部58は、カウンタ54のカウント値を利用して、比較器52からの出力信号QCに含まれるパルスが所定数発生するまでに要する時間(測定期間)を測定する。具体的には、サブ制御部50の内部には、発振器(図示せず)が設けられており、発振器から出力されるクロック信号を利用して、測定期間を測定する。そして、ロジック部58は、カウンタによってカウントされた出力信号QCのパルス数と、測定期間と、に基づいて、応答信号RSの周波数Hcを算出する。なお、応答信号の周波数Hcは、センサ110の圧電素子が振動する周波数と等しい。算出された周波数Hcは、主制御部40の第1の制御回路48に供給される。
【0052】
主制御部40の第1の制御回路48は、算出された周波数Hcに基づいて、選択されたインクカートリッジ100内のインク残量が所定量以上であるか否かを判断する。具体的には、算出された周波数Hcが、第1の振動数H1とほぼ等しい場合には、インク残量が所定量以上であると判断され、第2の振動数H2とほぼ等しい場合には、インク残量が所定量未満であると判断される。これらの振動数H1、H2は、それぞれのインク残量に対応する固有振動数として予め実験的に決定しておくことができる。
【0053】
以上のようにして、主制御部40とサブ制御部50とは、協働して、各インクカートリッジのインク残量を判断する。なお、主制御部40の第1の制御回路48は、判断結果をコンピュータ90に供給する。この結果、コンピュータは、インク残量の判断結果をユーザに通知することができる。
【0054】
図7は、第1実施例においてセンサを利用して応答信号RSの周波数を測定する場合のタイミングチャートである。図7では、クロック信号ICKと、駆動信号DSと、応答信号RSと、比較器の出力信号QCと、が示されている。クロック信号ICKは、サブ制御部50内部の図示しない発振器の出力である。駆動信号DSと応答信号RSとは、図4の点Pmにおいて測定される信号である。
【0055】
さらに、図7では、第1のスイッチSW1と、第3のスイッチSW3と、第4のスイッチSW4の動作のタイミングチャートが示されている。第4のスイッチSW4の動作は、検査対象スイッチSWtestと、非対象スイッチSWnonとに分けて、示されている。検査対象スイッチSWtestは、6つの第4のスイッチSW4のうち、第2のスイッチSW2によって選択された1つのセンサ110と接続されている1つのスイッチである。非対象スイッチSWnonは、6つの第4のスイッチSW4のうち、第2のスイッチSW2によって選択されていない5つのセンサ110とそれぞれ接続されている5つのスイッチである。
【0056】
主制御部40から上述した信号線LR2、LC2、LD2を介して送信される指示に従い、サブ制御部50はインクカートリッジ100のインク残量の判断を行う。まず、時刻t0では、第1のスイッチSW1がオフ状態からオン状態に切り換えられると共に、第2のスイッチSW2によっていずれかのセンサ110が選択される。そして、第4のスイッチSW4のうちの検査対象スイッチSWtestは、オン状態からオフ状態に切り換えられる。この結果、選択されたセンサ110とサブ制御部50とを接続する第1のセンサ信号線LDSNは、接地端と接続された状態から解放される。したがって、選択されたセンサ110とサブ制御部50は、第1のセンサ信号線LDSNを介して信号の遣り取りが可能になる。すなわち、サブ制御部50からセンサ110に対して駆動信号DSを印加し、センサ110からの応答信号RSを第2の制御回路55において受信することが可能となる。一方、第4のスイッチSW4のうちの非対象スイッチSWnonは、オン状態のままで維持される。この結果、非選択のセンサ110とサブ制御部50とを接続する第1のセンサ信号線LDSNは、接地端と接続された状態のまま維持される。この結果、非選択のセンサ110とサブ制御部50とを接続する第1のセンサ信号線LDSNの電位は、GNDレベルに保持される。
【0057】
時刻t1〜t2(印加期間Dv)では、駆動信号DSがセンサに供給され、圧電素子に電圧が印加される。なお、印加期間Dvでは、第3のスイッチSW3は、オフ状態に設定されている。
【0058】
図示するように、駆動信号DSは、2つのパルス信号S1,S2を含んでいる。2つのパルス信号S1,S2は、同じ周期Tに設定されている。なお、周期Tは、インクカートリッジ内のインク残量が所定量以上の場合における圧電素子の固有振動数H1に対応する周期(=1/H1)(例えば約33μs)に設定されている。
【0059】
時刻t2では、第1のスイッチSW1がオフ状態に切り替えられ、センサ110への駆動信号DSの供給が終了する。そして、時刻t2以降では、センサ110(圧電素子)はインク残量に応じて振動し、センサから応答信号RSが出力される。
【0060】
時刻t2から僅かな時間を置いた後の時刻t3では、第3のスイッチSW3がオン状態に切り替えられる。このとき、センサ110からの応答信号RSが比較器52に供給される。比較器52は、応答信号RSと基準電圧Vref とを比較して、HレベルまたはLレベルの信号QCを出力する。
【0061】
また、時刻t3から始まる期間Dm(測定期間Dm)では、サブ制御部50のロジック部58は、カウンタ54をイネーブル状態に設定し、比較器52から5個のパルスが出力されるのに要する時間(測定期間Dm)を測定する。具体的には、ロジック部58は、カウンタ54によって5個のパルスがカウントされる期間に、すなわち1番目のパルスの立ち上がりエッジがカウントされてから6番目のパルスの立ち上がりエッジがカウントされるまでの期間に発生するクロック信号のパルス数をカウントして、測定期間Dmを測定する。なお、ロジック部58は、カウンタ54が6番目のパルスの立ち上がりエッジをカウントすると、カウンタ54をディスエーブル状態に設定する。そして、ロジック部58は、カウンタ54によってカウントされた出力信号QCのパルス数(5個)と測定された測定期間Dmとに基づいて、応答信号RSに含まれる第1の信号成分の周波数Hc(=5/Dm)を算出する。前述したように、算出された周波数Hcは、圧電素子の振動の周波数を示している。
【0062】
この後、主制御部40の制御回路48は、測定された第1の信号成分の周波数Hcを受け取り、該周波数Hcに基づいて、インク残量が所定量以上であるか否かを判断する。なお、測定期間Dmが終了した後の時刻t4において、第3のスイッチSW3がオン状態からオフ状態に戻されると共に、検査対象スイッチSWtestがオフ状態からオン状態に戻される。
【0063】
以上説明した第1実施例によれば、インク残量の判断の対象であるインクカートリッジ100のセンサ110とサブ制御部50とが信号の遣り取りをしている期間において、非対象であるインクカートリッジ100のセンサ110の第1のセンサ信号線LDSNは第4のスイッチSW4によって接地される。この結果、非対象であるインクカートリッジ100のセンサ110が放出するノイズを抑制し、インク残量の判断対象のセンサ110とサブ制御部50との信号の遣り取りを安定化することができる。
【0064】
B.第2実施例:
上記第1実施例では、印加期間Dvにおいて、接地電位GNDに接続される配線は第2のセンサ信号線LDSPに固定され、駆動信号DSに接続される配線は第1のセンサ信号線LDSNに固定されているが、接地電位GNDに接続される配線と駆動信号DSに接続される配線は、選択的に切り換え可能に構成しても良い。また、上記第1実施例では、駆動信号DSが伝送される配線と、応答信号RSが伝送される配線は、同じ配線(第1のセンサ信号線LDSN)であるが、異なる配線であっても良い。この具体例を以下に第2実施例として説明する。
【0065】
図8は、第2実施例におけるプリンタの電気的な構成を示す説明図である。図8は、インク残量の判断に必要な部分に注目して描かれている。図8において、主制御部40の構成および第2の制御回路55の構成は、図6を参照して説明した第1実施例における同一符号の構成と同じである。
【0066】
第2実施例におけるサブ制御部50aは、スイッチSWa1〜SWa8を備えている。これらのスイッチSWa1〜SWa8は、サブ制御部50aのロジック部により制御される。第1のスイッチSWa1は、1チャネルのアナログスイッチである。第1のスイッチSWa1の一方の端子は、主制御部40の駆動信号生成回路42に接続されており、他方の端子は、第2のスイッチSWa2と接続されている。第1のスイッチSWa1は、駆動信号生成回路42からセンサ駆動信号DSをセンサ110に供給する際にオン状態に設定される。なお、第2実施例では、センサ駆動信号DSは、第1および第2のセンサ信号線LDSN、LDSPのいずれかを介してセンサ110に入力可能である。また、第1のスイッチSWa1は、センサ110からの応答信号RSが、第1および第2のセンサ信号線LDSN、LDSPのうちの駆動信号DSが入力された信号線を介して、第2の制御回路55に入力される際にオフ状態に設定される。第1のスイッチSWa1は、第1および第2のセンサ信号線LDSN、LDSPのうちの駆動信号DSが入力された信号線とは異なる信号線を介して第2の制御回路55に入力される際にオン状態に設定される。
【0067】
第2のスイッチSWa2と第3のスイッチSWa3は、2チャネルのアナログスイッチである。第2のスイッチSWa2の一方の側の1つの端子は、第1のスイッチSWa1と接続されている。第2のスイッチSWa2の他方の側の2つの端子のうち、1つは、第5のスイッチSWa5と接続されており、もう一つは、第6のスイッチSWa6と接続されている。第3のスイッチSWa3の一方の側の1つの端子は、と第4のスイッチSWa4と接続されている。第3のスイッチSWa3の他方の側の2つの端子のうち、1つは、第5のスイッチSWa5と接続されており、もう一つは、第6のスイッチSWa6と接続されている。第2のスイッチSWa2は、第1および第2のセンサ信号線LDSN、LDSPのうち、駆動信号DSをセンサ110に入力する信号線を選択するスイッチである。図8の状態では、第1のセンサ信号線LDSNが選択されている。第3のスイッチSWa3は、第1および第2のセンサ信号線LDSN、LDSPのうち、センサ110からの応答信号RSが入力される信号線を選択するスイッチである。図8の状態では、第2のセンサ信号線LDSPが選択されている。
【0068】
第4のスイッチSWa4は、1チャネルのアナログスイッチである。第4のスイッチSWa4の一方の端子は、第2の制御回路55の比較器52(図6)に接続されている。SWa4の他方の端子は、第3のスイッチSWa3に接続されている。第4のスイッチSWa4は、応答信号RSの周波数の測定期間Dmにおいてオン状態にされ、それ以外の期間にはオフ状態にされる。
【0069】
第5および第6のスイッチSWa5、SWa6は、6チャネルのアナログスイッチである。第5のスイッチSWa5の一方の側の1つの端子は、第2のスイッチSWa2に接続されている。第5のスイッチSWa5の他方の側の6つの端子のそれぞれは、6つの第7のスイッチSWa7のそれぞれの一方の側の端子に接続されていると共に、6つのインクカートリッジ100のそれぞれのセンサ110の一方の電極に第1のセンサ信号線LDSNを介して接続されている。第6のスイッチSWa6の一方の側の1つの端子は、第3のスイッチSWa3に接続されている。第6のスイッチSWa6の他方の側の6つの端子のそれぞれは、6つの第8のスイッチSWa8のそれぞれの一方の側の端子に接続されていると共に、6つのインクカートリッジ100のそれぞれのセンサ110の他方の電極に第2のセンサ信号線LDSPを介して接続されている。第5および第6のスイッチSWa5、SWa6は、6つのインクカートリッジ100のそれぞれのセンサ110の中から、制御対象のセンサ110(対象センサ)を選択するためのスイッチである。図8の状態では、一番上に図示されたインクカートリッジ100のセンサ110が選択されている。
【0070】
第7および第8のスイッチSWa7、SWa8は、1チャネルのアナログスイッチである。6つの第7のスイッチSWa7のそれぞれの一方の側の端子は、第5のスイッチSWa5の他方の側の6つの端子のそれぞれと接続されていると共に、6つのインクカートリッジ100のそれぞれのセンサ110の一方の電極に第1のセンサ信号線LDSNを介して接続されている。6つの第7のスイッチSWa7のそれぞれの他方の端子は、接地されている。6つの第8のスイッチSWa8のそれぞれの一方の側の端子は、第6のスイッチSWa6の他方の側の6つの端子のそれぞれと接続されていると共に、6つのインクカートリッジ100のそれぞれのセンサ110の他方の電極に第2のセンサ信号線LDSPを介して接続されている。6つの第8のスイッチSWa8のそれぞれの他方の端子は、接地されている。
【0071】
6つの第7のスイッチSWa7のうち、対象センサと接続されている1つのスイッチは、第1のセンサ信号線LDSNを介してサブ制御部50と対象センサが駆動信号DSまたは応答信号RSを遣り取りするときにオフ状態に設定される。一方で、6つの第7のスイッチSWa7のうち、非対象センサと接続されている5つのスイッチは、常にオン状態に設定され、第1のセンサ信号線LDSNは接地される。すなわち、非対象センサとサブ制御部50を接続している第1のセンサ信号線LDSNの電位は、常にGNDレベルに保持される。
【0072】
同様にして、6つの第8のスイッチSWa8のうち、対象センサと接続されている1つのスイッチは、第2のセンサ信号線LDSPを介してサブ制御部50と対象センサが駆動信号DSまたは応答信号RSを遣り取りするときにオフ状態に設定される。一方で、6つの第8のスイッチSWa8のうち、非対象センサと接続されている5つのスイッチは、常にオン状態に設定され、第2のセンサ信号線LDSPは接地される。すなわち、非対象センサとサブ制御部50を接続している第2のセンサ信号線LDSPの電位は、常にGNDレベルに保持される。
【0073】
以上説明した第2実施例によれば、インク残量の判断の対象であるインクカートリッジ100のセンサ110とサブ制御部50とが信号の遣り取りをしている期間において、非対象であるインクカートリッジ100のセンサ110の第1および第2のセンサ信号線LDSN、LDSPは、それぞれ第7および第8のスイッチSWa7、SWa8によって接地される。この結果、非対象であるインクカートリッジ100のセンサ110が放出するノイズを抑制し、インク残量の判断対象のセンサ110とサブ制御部50との信号の遣り取りを安定化することができる。
【0074】
C.第3実施例:
上記第1実施例では、プリンタ20のサブ制御部50に第4のスイッチSW4を設けて、非対象センサの第1のセンサ信号線LDSNをGNDレベルに保持しているが、これに代えて、インクカートリッジ100にスイッチを設けても良い。この具体例を第3実施例として以下に説明する。
【0075】
図9は、第3実施例におけるプリンタの電気的な構成を示す説明図である。図9は、インク残量の判断に必要な部分に注目して描かれている。図9において、主制御部40の構成は、図6を参照して説明した実施例における構成と同じである。また、図9において、サブ制御部50bの構成は、第4のスイッチSW4が設けられていないことを除いて、図6を参照して説明した実施例における構成と同じである。このため、同一の構成については、図9において図6と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
第3実施例のインクカートリッジ100cは、センサ110の一方の電極と他方の電極との間に、アナログスイッチSWcを備えている。インクカートリッジ100cが印刷装置に装着されているときにアナログスイッチSWcがオン状態にされると、第1のセンサ信号線LDSNは、アナログスイッチSWcと第2のセンサ信号線LDSPを介して接地され、GNDレベルに保持される。一方、インクカートリッジ100cが印刷装置に装着されているときにアナログスイッチSWcがオフ状態にされると、サブ制御部50bは第1のセンサ信号線LDSNを介してセンサ110と信号の遣り取りが可能となる。
【0077】
第3実施例のインクカートリッジ100cは、記憶装置130cを備えている。記憶装置130cは、メモリセルアレイ131とメモリ制御部132とを含んでいる。メモリ制御部132は、信号線LR2、LD2、LC2を介して、サブ制御部50bの第2の制御回路55と信号の遣り取りを行うと共に、メモリセルアレイ131に対する制御を行う。例えば、メモリ制御部132は、第2の制御回路55から信号として受け取ったデータを、メモリセルアレイ131に書き込む。また、メモリ制御部132は、メモリセルアレイ131から読み出したデータを信号としてメモリ制御部132に送信する。
【0078】
本実施例において、メモリ制御部132は、さらに、アナログスイッチSWcの制御を行う。メモリ制御部132は、インクカートリッジ100cがプリンタ20に装着されているとき、アナログスイッチSWcをオン状態とする。メモリ制御部132は、自身が搭載されているインクカートリッジ100cがインク残量の判断対象とされているときに、アナログスイッチSWcをオフ状態とする。
【0079】
図10は、第3実施例においてセンサを利用して応答信号RSの周波数を測定する場合のタイミングチャートである。図10において、クロック信号ICKと、駆動信号DSと、応答信号RSと、比較器の出力信号QCとのタイミングチャートの内容は、図7における同信号のタイミングチャートと同一である。図10において、第1のスイッチSW1と、第3のスイッチSW3の動作のタイミングチャートは、図7における同スイッチのタイミングチャートと同一である。
【0080】
図10において、アナログスイッチSWcの動作が、対象容器のアナログスイッチSWcの動作と、非対象容器のアナログスイッチSWcの動作とに分けて示されている。対象容器は、プリンタ20に装着された6つのインクカートリッジ100cのうち、第2のスイッチSW2によって選択されたインクカートリッジである。非対象容器は、6つのインクカートリッジ100cのうち、第2のスイッチSW2によって選択されていない5つのインクカートリッジである。
【0081】
非対象容器のアナログスイッチSWcは、第1実施例における非対象スイッチと同様に(図7)、インク残量の判断が行われている間において、オン状態に保持されている。一方、対象容器のアナログスイッチSWcは、第1実施例における対象スイッチと同様に(図7)、インク残量の判断が行われている間、すなわち、時刻t0〜時刻t4の間において、オフ状態に切り換えられる。メモリ制御部132は、信号線LR2、LD2、LC2を用いた通信により、第2の制御回路55から、自身が搭載されたインクカートリッジ100cを対象容器としてインク残量の判断が行われることを通知される。メモリ制御部132は、この通知により適切な時刻t0およびt4において、アナログスイッチSWcの切換制御を行うことができる。
【0082】
以上説明した第3実施例によれば、インク残量の判断の対象であるインクカートリッジ100c(対象容器)のセンサ110とサブ制御部50とが信号の遣り取りをしている期間において、非対象であるインクカートリッジ100c(非対象容器)のセンサ110の第1のセンサ信号線LDSNはアナログスイッチSWcによって接地される。この結果、非対象容器のセンサ110が放出するノイズを抑制し、対象容器のセンサ110とサブ制御部50との信号の遣り取りを安定化することができる。
【0083】
D.変形例:
・第1変形例:
上記実施例では、圧電素子を用いたインク残量センサが用いられているが、これに代えて、例えば、インクの種類(例えば、色)などに応じた周波数の応答信号を返す発振回路などの発振装置を用いても良く、サブ制御部50と何らかの遣り取りを行うCPUやASICなどのプロセッサや、より簡易なICを用いても良い。一般的には、プリンタと配線を介して信号を遣り取りする電気デバイスが用いられ得る。
【0084】
・第2変形例:
上記実施例では、一のセンサ110とサブ制御部50とが信号の遣り取りをしている間において、他のセンサ110とサブ制御部50とを接続する配線をGNDレベルに保持しているが、別の期間に、当該配線をGNDレベルに保持しても良い。例えば、一のセンサ110とサブ制御部50との信号の遣り取りが終わった直後に、当該一のセンサ110とサブ制御部50とを接続する配線をGNDレベルに保持しても良い。センサ110と信号の遣り取りがなされた直後は、センサ110に残留電荷が残っている可能性が高く、センサ110からノイズが放出されやすい。このように、ノイズが放出されやすい期間において、センサ110とサブ制御部50とを接続する配線をGNDレベルに保持することによって、センサ110から放出されるノイズによる悪影響を抑制することができる。一般的に言えば、当該配線を用いてセンサ110と信号を遣り取りする期間以外の任意の期間において、当該配線をGNDレベルに保持しても良い。こうすれば、配線をGNDレベルに保持している期間において、センサ110から放出されるノイズを抑制することができる。
【0085】
・第3変形例:
上記実施例において、センサ110から放出されるノイズを抑制するために、センサ110とサブ制御部50とを接続する配線をGNDレベルに保持しているが、これに代えて、電源電位VDDレベル(例えば、3.3V)に保持しても良い。一般的には、所定の一定電位に保持して、配線にノイズが乗ることを抑制すれば良い。
【0086】
・第4変形例:
上記第1実施例では、サブ制御部50のロジック部58が1つのASICで構成されており、センサ110とサブ制御部50とを接続する配線は、ASICの外に設けられたアナログスイッチで接地されているが、例えば、サブ制御部50全体を1つのASICで構成してASIC内に配置されたトランジスタを用いて構成されたスイッチにより当該配線を接地しても良い。
【0087】
・第5変形例:
上記実施例では、1つのインクタンクを1つのインクカートリッジとして構成しているが、複数のインクタンクを1つのインクカートリッジとして構成しても良い。
【0088】
・第6変形例:
上記実施例は、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を主要した液体容器を採用しても良い。ここでいう液体は、溶媒に機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェル状のような流状体を含む。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【0089】
・第7変形例:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしても良い。
【0090】
以上、本発明の実施例および変形例について説明したが、本発明はこれらの実施例および変形例になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様での実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施例としての印刷システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】第1実施例おけるインクカートリッジの構成を示す斜視図である。
【図3】第1実施例に係る基板の構成を示す図である。
【図4】印刷ヘッドユニットの構成を説明する図である。
【図5】プリンタの電気的な構成を示す第1の説明図である。
【図6】プリンタの電気的な構成を示す第2の説明図である。
【図7】第1実施例においてセンサを利用して応答信号の周波数を測定する場合のタイミングチャートである。
【図8】第2実施例におけるプリンタの電気的な構成を示す説明図である。
【図9】第3実施例におけるプリンタの電気的な構成を示す説明図である。
【図10】第3実施例においてセンサを利用して応答信号の周波数を測定する場合のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0092】
20…プリンタ
22…モータ
26…プラテン
30…キャリッジ
32…キャリッジモータ
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
40…主制御部
42…駆動信号生成回路
44…駆動信号データメモリ
48…第1の制御回路
50…キャリッジ回路
50、50a、50b…サブ制御部
52…比較器
54…カウンタ
55…第2の制御回路
58…ロジック部
60…印刷ヘッドユニット
62…ホルダ
63…ホルダカバー
64…インク供給針
66…接続機構
67…接続端子
68…印刷ヘッド
70…操作部
80…コネクタ
90…コンピュータ
100、100c…インクカートリッジ
101…筐体
102…蓋体
103…部
104…インク供給口
105…凹部
107…リブ
108…ボス
110…センサ
120…基板
121…ボス溝
122…ボス穴
130、130c…記憶装置
131…メモリセルアレイ
132…メモリ制御部
210…第1の短絡検出端子
220…接地端子
230…電源端子
240…第2の短絡検出端子
250…第1のセンサ駆動用端子
260…リセット端子
270…クロック端子
280…データ端子
290…第2のセンサ駆動用端子
SW1〜SW4、SWa1〜SWa8、SWc…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置であって、
第1の電気デバイスを有する第1の液体容器を装着可能な容器装着部と、
前記第1の液体容器が前記容器装着部に装着された状態において前記第1の電気デバイスに電気的に接続される第1の配線と、
電位が変動する変動信号を、前記第1の配線を介して前記第1の電気デバイスとの間で送受信可能な制御回路と、
前記変動信号の送受信を行っていないときに、前記第1の配線に所定の電位を供給するための第1のスイッチと、
を備える、液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記容器装着部は、さらに、第2の電気デバイスを有する第2の液体容器を装着可能であり、
前記液体噴射装置は、さらに、
前記第1の液体容器が前記容器装着部に装着された状態において前記第2の電気デバイスに電気的に接続される第2の配線を備え、
前記制御部は、さらに、前記第2の配線を介して前記第2の電気デバイスとの間で前記変動信号を送受信可能であり、
前記第1のスイッチは、前記第2の配線を介して前記第2の電気デバイスと前記変動信号を送受信する期間において、前記第1の配線に所定の電位を供給する、液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置は、さらに、
前記第1の配線を介して前記第1の電気デバイスと前記変動信号を送受信する期間において、前記第2の配線に所定の電位を供給する第2のスイッチを備える、液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の液体噴射装置において、
前記第1の電気デバイスは、発振装置を含む、液体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射装置において、
前記発信装置は、圧電素子を含む、液体噴射装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の液体噴射装置において、
前記第1のスイッチは、前記第1の配線を介して前記圧電素子と前記変動信号を送受信した後に、前記第1の配線を、前記所定の電位に接続する、液体噴射装置。
【請求項7】
液体噴射装置であって、
電気デバイスをそれぞれ有する複数の液体容器を装着可能な容器装着部と、
前記複数の液体容器が前記容器装着部に装着された状態において前記複数の液体容器の各電気デバイスにそれぞれ電気的に接続される複数の配線と、
電位が変動する変動信号を、前記複数の電気デバイスのそれぞれと前記複数の配線のそれぞれを介して送受信可能な制御部と、
前記制御部が、前記複数の配線のうちの第1の配線を介して、前記複数の電気デバイスのうちの前記第1の配線と電気的に接続されている電気デバイスとの間で前記変動信号を送受信する期間において、前記複数の配線のうちの前記第1の配線を除く配線に所定の電位を供給するスイッチと、
を備える、液体噴射装置。
【請求項8】
液体噴射装置に装着される液体容器であって、
液体を収容する本体と、
電気デバイスと、
前記液体容器が前記液体噴射装置に装着された際に、前記電気デバイスを前記液体噴射装置に電気的に接続するための配線と、
前記液体噴射装置が前記配線を介して前記電気デバイスと変動信号を送受信可能な第1の状態と、前記配線を所定の電位に保持した第2の状態と、を切り換える切換部と、
を備える、液体容器。
【請求項9】
請求項8に記載の液体容器において、
前記液体噴射装置は、複数の前記液体容器を装着可能であり、
前記液体噴射装置が一の前記液体容器の電気デバイスと前記変動信号を送受信している期間において、他の前記液体容器の前記切換部は、前記配線を所定の電位に保持する、液体容器。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の液体容器において、
前記デバイスは、発振装置を含む、液体容器。
【請求項11】
請求項10に記載の液体容器において、
前記発信装置は、圧電素子を含む、液体容器。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の液体容器において、
前記第1の状態において、前記配線を介して前記液体噴射装置と前記変動信号を送受信した後に、前記第2の状態に切り換えられる、液体噴射装置。
【請求項13】
液体噴射装置が、電気デバイスをそれぞれ有する複数の液体容器を制御する方法であって、
前記複数の液体容器の中から、制御対象とする第1の液体容器を選択し、
第1の配線を介して、前記第1の液体容器の前記電気デバイスと変動信号を送受信し、
前記第1の液体容器の前記電気デバイスと変動信号を送受信している期間において、前記複数の液体容器のうちの前記第1の液体容器以外の液体容器の電気デバイスと電気的に接続されている配線を所定の電位に保持する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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