説明

液体噴射装置及び廃液回収体

【課題】廃液回収体が着脱可能とされた液体噴射装置から廃液回収体が取り外された際に、その事実を迅速且つ容易に把握して対処することができる液体噴射装置及び同装置に着脱される廃液回収体を提供する。
【解決手段】インクを噴射する記録ヘッド21と、記録ヘッドからインクを廃インクとして排出させる際に駆動される吸引ポンプ33と、吸引ポンプの駆動に伴い排出される廃インクを受容可能な廃インクタンク25が着脱自在に装着される装着位置27と、装着位置に装着される廃インクタンクに係合して吸引ポンプに対して動力伝達可能な位置に移動する一方、装着位置から廃インクタンクが取り外される際には廃インクタンクと非係合状態となって吸引ポンプに対して動力伝達不可能な位置に移動する可動部材43及び変位歯車46を有する動力伝達機構34とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置及び同装置に着脱可能に装着される廃液回収体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体噴射装置の一種として、液体噴射ヘッドに形成されたノズルから液体を用紙等のターゲットに噴射して記録を施すインクジェット式のプリンターが広く知られている。こうしたプリンターでは、通常、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)内から増粘等したインク(液体)を廃インク(廃液)として強制的に吸引して排出する、所謂クリーニングが記録ヘッドのメンテナンスのために行われる。そして、強制吸引された廃インクは廃液流路として機能する可撓性チューブ等を介してプリンター内の所定箇所に固定配置された廃インクタンク(廃液回収体)に排出される。
【0003】
ここで、廃インクタンクにおける廃インクの回収能力にはタンク容量等に起因した限界がある。そのため、近時は、例えば特許文献1に記載されるように、プリンター内の所定箇所に廃インクタンクが装着される装着部をプリンターの側壁に開口形成された挿抜口と連通するように形成し、かかる装着部に対して容量等に関する各種の情報を記憶した回路基板の接続端子を外側面上に取着した廃インクタンクが挿抜口を介して着脱可能とされている。
【0004】
この特許文献1に記載のプリンターでは、プリンター内の装着部に廃インクタンクが装着されると、廃インクタンク側の接続端子と装着部に設けられたプリンター側の接続端子とが接触して電気的に接続された状態になる。そして、プリンターが備える制御装置からの制御指令に基づき、その廃インクタンクにおける廃インクの回収余力を判断するための情報の授受が行われ、その判断結果に基づき廃インク排出用のポンプの駆動状態が制御される。
【0005】
すなわち、回収余力ありと判断された場合には、廃インクタンクへの廃インクの排出が許容され、駆動停止状態にあった廃インク排出用のポンプが駆動される。その一方、回収余力なしと判断された場合には、装着済みの回収余力がない廃インクタンクを回収余力がある別の廃インクタンクと交換するべく取り外す必要があるため、廃インク排出用のポンプは駆動停止状態が維持される。また、例えば廃インク排出用のポンプが駆動されている状態においてプリンターの装着部から廃インクタンクが使用者によって取り外された場合には、制御装置からの制御指令に基づき廃インク排出用のポンプの駆動が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−326732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のプリンターでは、装着部から廃インクタンクが取り外された場合に、その事実がプリンター側の接続端子と廃インクタンク側の接続端子との接続状態の検出結果に基づき判断される。すなわち、プリンターが備える制御装置が、両接続端子の接続状態を検出する検出手段から、両接続端子の接続状態が解消されたことを示す検出信号の入力を得た場合に、廃インクタンクが装着部から取り外されたと判断し、その判断結果に従って廃インク排出用のポンプの駆動を停止させていた。
【0008】
そのため、このようなプログラム制御に基づいて廃インク排出用のポンプの駆動を停止するのでは、複雑な制御プログラムの構築が必要であると共に、廃インクタンクを装着部から取り外す場合において、廃インクタンクが取り外し方向へ移動した時点から、その際の制御指令に従って実際にポンプが停止されるまでの間にタイムラグが生じてしまう。したがって、そのタイムラグの間のポンプの駆動により排出された廃液は、廃インクタンクに受容されず、廃インクタンクが取り外された装着部に排出された後、液体噴射装置外に漏れ出してしまう。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、廃液回収体が着脱可能とされた液体噴射装置から廃液回収体が取り外された際に、その事実を迅速且つ容易に把握して対処することができる液体噴射装置及び同装置に着脱される廃液回収体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから前記液体を廃液として排出させる際に駆動されるポンプと、前記ポンプの駆動に伴い排出される前記廃液を受容可能な廃液回収体が着脱自在に装着される装着部と、前記装着部に装着される前記廃液回収体に係合することにより前記ポンプに対して動力伝達可能な位置に移動する一方、前記装着部から前記廃液回収体が取り外される際には前記廃液回収体と非係合状態となって前記ポンプに対して動力伝達不可能な位置に移動する移動部を有する動力伝達機構とを備えた。
【0011】
この構成によれば、装着部に対する廃液回収体の着脱時に、動力伝達機構の移動部が、装着部に着脱される廃液回収体に係合したり非係合状態となったりして、ポンプに対する動力伝達可能な位置と動力伝達不可能な位置との間を移動することにより、ポンプが駆動状態及び駆動停止状態の何れかに切り替えられる。そのため、ポンプの駆動制御のための複雑な制御プログラムの構築を不要にできる。また、ポンプが駆動されている状態において、装着部から廃液回収体が取り外された際には、動力伝達機構の移動部が廃液回収体と非係合状態となってポンプに対する動力伝達不可能な位置に移動するので、タイムラグが生じるプログラム制御の場合と異なり、ポンプは駆動状態から駆動停止状態へと迅速に切り替えられる。したがって、廃液回収体が着脱可能とされた液体噴射装置から廃液回収体が取り外された際に、その事実を迅速且つ容易に把握して対処することができる。
【0012】
また、本発明の液体噴射装置において、前記動力伝達機構は、駆動源に駆動連結された駆動側歯車と、前記ポンプに駆動連結された状態で前記駆動側歯車から離れた位置に回動自在に配設されたポンプ側歯車と、前記移動部の位置に応じて、前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の双方と噛合する動力伝達位置と、前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の少なくとも一方と非噛合関係になる動力遮断位置とに変位する変位歯車とを備えた。
【0013】
この構成によれば、駆動側歯車及びポンプ側歯車の双方に対して噛合可能な変位歯車を装着部に対する廃液回収体の着脱時における動力伝達機構の移動部の位置に応じて動力伝達位置と動力遮断位置との間で変位させるという簡単な機構を設けるだけで、廃液回収体の着脱状態に応じてポンプを駆動状態及び駆動停止状態の何れかへ適正に切り替えできる。
【0014】
また、本発明の液体噴射装置において、前記移動部は、前記変位歯車を支持しつつ前記廃液回収体に係合する位置とその廃液回収体から離れて非係合状態となる位置との間を前記装着部に対する前記廃液回収体の着脱に伴い移動可能とされた可動部材を有する。
【0015】
この構成によれば、装着部に対する廃液回収体の着脱時に、動力伝達機構の移動部は、変位歯車を支持した可動部材が廃液回収体に係合する位置と非係合状態となる位置との間を移動する。そして、可動部材が廃液回収体に係合する位置では、変位歯車を駆動側歯車及びポンプ側歯車に噛合する動力伝達位置に変位させ、可動部材が廃液回収体と非係合状態となる位置では、変位歯車を駆動側歯車及びポンプ側歯車に非噛合関係となる動力遮断位置に変位させる。したがって、装着部に対する廃液回収体の着脱時には、動力伝達機構の移動部における可動部材を廃液回収体に係合する位置と非係合状態となる位置との間で移動させることにより、変位歯車を動力伝達位置と動力遮断位置との間でスムーズに変位させることができる。
【0016】
また、本発明の液体噴射装置は、前記装着部に装着された状態にある前記廃液回収体における前記装着部からの取り外し方向とは反対側の壁面の位置と前記ポンプの駆動に伴い前記廃液回収体内に向けて前記廃液を排出する排出口の位置との前記取り外し方向における距離が、前記装着部に装着された状態にある前記廃液回収体が前記動力伝達機構の前記移動部に対して当該移動部の移動を停止させつつ係合している状態を前記取り外し方向への移動に伴い解除するまでの移動距離よりも長い。
【0017】
この構成によれば、廃液回収体が装着部から取り外される際の移動過程において、その廃液回収体に動力伝達機構の移動部が係合している限りは、ポンプが駆動することにより廃液の排出口から廃液が排出されると共に、その排出された廃液は廃液回収体により確実に受容されるので、液体噴射装置の内部を廃液により汚してしまうことを抑制できる。
【0018】
さらに、上記目的を達成するために、本発明の廃液回収体は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから前記液体を廃液として排出させる際に駆動されるポンプとを備える液体噴射装置に着脱可能であり、前記液体噴射ヘッドから前記ポンプの駆動に伴い排出される前記廃液を受容可能な廃液回収体であって、前記液体噴射装置に装着された際には当該液体噴射装置が備える移動部と係合することにより前記移動部を前記ポンプに対して動力伝達可能な位置に移動させる一方、前記液体噴射装置から取り外される際には前記移動部を前記動力伝達可能な位置に停止させている係合状態を解除して当該移動部を前記ポンプに対して動力伝達不可能な位置に移動可能とする係合部を備えた。
【0019】
この構成によれば、装着部に対して廃液回収体が装着されると、動力伝達機構の移動部が係合部との係合を通じてポンプに対する動力伝達可能な位置に移動する。その一方、装着部から廃液回収体が取り外される際には、動力伝達機構の移動部をポンプに対する動力伝達可能な位置に停止させている係合状態が解除されて移動部は動力伝達不可能な位置に移動する。したがって、装着部に対する廃液回収体の着脱に伴い、動力伝達機構の移動部をポンプに対する動力伝達可能な位置と動力伝達不可能な位置との間で移動させることにより、ポンプを駆動状態と駆動停止状態との間で迅速に切り替えることができる。
【0020】
また、本発明の廃液回収体は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから前記液体を廃液として排出させる際に駆動されるポンプと、駆動源に駆動連結された駆動側歯車と、前記ポンプに駆動連結された状態で前記駆動側歯車から離れた位置に回動自在に配設されたポンプ側歯車とを備えた液体噴射装置における前記ポンプの駆動に伴い排出される前記廃液を受容可能な位置に設けられた装着部に着脱自在とされる廃液回収体であって、前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の双方に対して噛合可能な変位歯車が回動自在に支持されると共に、前記装着部に装着される際の動きによって前記変位歯車が前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の双方と噛合する動力伝達位置に変位する一方、前記装着部から取り外される際の動きによって前記変位歯車が前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の少なくとも一方と非噛合関係になる動力遮断位置に変位する。
【0021】
この構成によれば、装着部に対する廃液回収体の着脱時の動きに応じて、廃液回収体に支持された変位歯車が、駆動側歯車とポンプ側歯車とを駆動連結する動力伝達位置と駆動連結しない動力遮断位置との間で変位するので、装着部に対する廃液回収体の着脱状態に応じてポンプを駆動状態及び駆動停止状態の何れかへ適正に切り替えることができる。
【0022】
また、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから前記液体を廃液として排出させる際に駆動されるポンプと、前記ポンプの駆動に伴い排出される前記廃液を受容可能な廃液回収体が着脱自在に装着される装着部と、前記装着部に対する前記廃液回収体の着脱時の位置に応じて変位可能であり、前記装着部に前記廃液回収体が装着される際には前記ポンプに対する駆動輪列を形成する位置に変位する一方、前記装着部から前記廃液回収体が取り外される際には前記駆動輪列を形成しない位置に変位する変位歯車を有する動力伝達機構とを備えた。
【0023】
この構成によれば、装着部に対する廃液回収体の着脱時の位置に応じて動力伝達機構の変位歯車がポンプに対する駆動輪列を形成する位置と駆動輪列を形成しない位置との間で変位するので、ポンプを駆動状態及び駆動停止状態の何れかに迅速に切り替えることができる。また、ポンプが駆動されている状態において、装着部から廃液回収体が取り外された際には、動力伝達機構の変位歯車がポンプに対する駆動輪列を形成しない位置に変位するので、タイムラグが生じるプログラム制御の場合と異なり、ポンプを駆動状態から駆動停止状態へと迅速に切り替えることができる。
【0024】
また、本発明の液体噴射装置において、前記変位歯車は、その軸方向が前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の各軸方向に沿うように配設されると共に、その軸方向と直交する方向において、前記動力伝達位置と前記動力遮断位置との間を変位する。
【0025】
この構成によれば、変位歯車をその軸方向に変位させて駆動側歯車及びポンプ側歯車に噛合させる構成の場合に比して、その軸方向と直交する方向に変位させる構成としたため、変位歯車を駆動側歯車及びポンプ側歯車に噛合する動力伝達位置と非噛合関係となる動力遮断位置との間でスムーズに変位させることができる。
【0026】
また、本発明の液体噴射装置は、前記変位歯車を前記動力遮断位置に向けて変位するように付勢する付勢力を有した付勢部材を更に備え、前記変位歯車は、前記廃液回収体が前記付勢部材の前記付勢力よりも大きな力を移動力として前記装着部に対して装着される際の前記移動力が変位力に変換されることにより、前記動力遮断位置から前記動力伝達位置へと変位する。
【0027】
この構成によれば、ポンプが駆動されている状態において廃液回収体が装着部から取り外された場合には、付勢部材の付勢力でもって変位歯車を動力遮断位置に変位させることにより、ポンプを迅速に駆動停止状態に切り替えることができる。その一方、廃液回収体を装着部に装着する場合において付勢部材の付勢力よりも大きな力でもって廃液回収体を装着部へ向けて移動させれば、その際の移動力を変位力にして変位歯車が動力伝達位置へ変位することにより、ポンプを駆動停止状態から確実に駆動状態に切り替えることができる。
【0028】
また、本発明の液体噴射装置は、前記駆動源を駆動させた場合の負荷変動に基づき前記装着部に対する前記廃液回収体の装着の有無を判別すると共に、その判別結果の出力を制御する制御手段を更に備えた。
【0029】
この構成によれば、例えば変位歯車が動力遮断位置にある場合には、変位歯車が動力伝達位置にある場合よりも、駆動源の駆動負荷は相対的に小さなものになるので、こうした駆動源における負荷変動の判別結果に従い、装着部に対する廃液回収体の装着の有無を報知態様で出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第1実施形態のプリンターの斜視図。
【図2】同プリンターにおけるハウジング部の概略断面図。
【図3】同プリンターから廃インクタンクが取り外される状態を示す概略断面図。
【図4】第2実施形態のプリンターにおけるハウジング部の概略断面図。
【図5】同プリンターから廃インクタンクが取り外される状態を示す概略断面図。
【図6】第3実施形態のプリンターにおけるハウジング部の概略断面図。
【図7】同プリンターから廃インクタンクが取り外される状態を示す概略断面図。
【図8】第4実施形態のプリンターにおけるハウジング部の概略断面図。
【図9】同プリンターから廃インクタンクが取り外される状態を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式のプリンター及び同プリンターに対して着脱可能とされた廃液回収体の一種である廃インクタンクに具体化した第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態のプリンター11は、平面視矩形状をなすフレーム12を備え、そのフレーム12内にはプラテン13がフレーム12の長手方向となる左右方向に延設されている。そして、プラテン13よりも後方側に配設された紙送りモーター14を有する紙送り機構が駆動することにより、プラテン13上には記録用紙Pが後方側から前方側に向かって給送される。また、フレーム12内におけるプラテン13の上方には、プラテン13の長手方向(左右方向)と平行に延びるガイド軸15が架設されている。
【0033】
ガイド軸15には、キャリッジ16が、ガイド軸15の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能に支持されている。また、フレーム12内の後面においてガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリー17及び従動プーリー18が回転自在に支持されている。駆動プーリー17にはキャリッジ16を往復移動させる際に駆動されるキャリッジモーター19が連結され、これら一対のプーリー17,18間には、長さ方向の一部をキャリッジ16に止着させた無端状のタイミングベルト20が掛装されている。従って、キャリッジ16は、キャリッジモーター19が駆動することによりガイド軸15にガイドされながらタイミングベルト20を介して左右方向に移動する。
【0034】
図1に示すように、キャリッジ16の下面には液体噴射ヘッドの一例である記録ヘッド21が設けられている。一方、キャリッジ16上には記録ヘッド21に対して液体としてのインクを供給するための複数(本実施形態では5つ)のインクカートリッジ22が着脱可能に搭載されている。これら各インクカートリッジ22は記録ヘッド21の下面にて構成されるノズル形成面21a(図2等参照)に形成された複数のノズル開口列(図示略)と個別に対応するものであり、記録ヘッド21内に形成されたインク流路(図示略)を介して対応するノズル列にインクを個別供給する。
【0035】
さらに、フレーム12内の長手方向の一端部(図1では右端部)、すなわち、記録用紙Pが至らない非印刷領域には、プリンター11の電源オフ時や記録ヘッド21をメンテナンスする場合にキャリッジ16を位置させるためのメンテナンス位置となるホームポジションHPが設けられている。そして、このホームポジションHPの下方となる位置には、記録ヘッド21からの記録用紙Pに対するインクの噴射が良好に維持されるように各種のメンテナンス動作を行うメンテナンスユニット23が設けられている。
【0036】
また、図1及び図2に示すように、フレーム12においてホームポジションHPの下方であってメンテナンスユニット23の前方側となる位置には、前後方向に沿った直方体状をなすハウジング部24が形成されている。ハウジング部24内には前後方向に長い箱体形状の廃インクタンク25を収容可能な収容室26が形成され、その収容室26内の下壁部24b上で前後方向における所定位置が廃インクタンク25を着脱自在に装着する装着部としての装着位置27に設定されている。なお、廃インクタンク25は、上面側に開口(図示略)が形成された所定容量の箱体であり、その内部にはインクを吸収して保持可能なインク吸収材(図示略)が収容されている。また、廃インクタンク25において装着方向への移動時に前側となる壁面25sの上端部(図2及び図3では後側の壁面の上端部)には、装着方向に向けて前下がり勾配となる斜面部(係合部)25aが、廃インクタンク25の上面と後側の壁面25sとが交差する隅角部を面取りするように形成されている。
【0037】
ハウジング部24の前面側には、廃インクタンク25を収容室26内の装着位置27に対して着脱する際に通過させる矩形状の挿抜口28が形成されている。挿抜口28には、挿抜口28の上縁部両側に設けられた左右で一対の軸部29に上端部を回動自在に支持された開閉扉30が設けられている。そして、開閉扉30は、その外面となる前面に形成した摘み部30aが把持されて軸部29を中心に開閉操作されることにより、図2に実線で示した閉鎖位置と二点鎖線で示す開放位置との間で開閉動作する。
【0038】
次に、メンテナンスユニット23について説明する。
図1及び図2に示すように、メンテナンスユニット23は、記録ヘッド21のノズル形成面21aと対応した略矩形状で上側を開口させた有底箱状に形成されたキャップ31を備えている。また、メンテナンスユニット23には、キャップ31を昇降させる昇降装置(図示略)が設けられている。そのため、キャップ31は、昇降装置が駆動すると、記録ヘッド21のノズル形成面21aに当接する上昇位置と、ノズル形成面21aから下方へ離れた下降位置との間を昇降移動する。そして、キャリッジ16をホームポジションHPに移動させた状態において、昇降装置の駆動によりキャップ31を上昇させた場合には、キャップ31が記録ヘッド21のノズル形成面21aに対してノズル開口列を囲うようにして当接し、キャップ31内にはノズル形成面21aとの間に密閉空間が形成される。
【0039】
図2に示すように、キャップ31の下面側には、シリコンゴムなどの可撓性材料で形成された排出チューブ32の一端部(上流側の端部)がキャップ31内と連通するように接続され、その排出チューブ32を介したキャップ31内からの廃インクの排出を可能としている。また、排出チューブ32は、その長さ方向の中間部が、キャップ31の下降位置よりも下方で廃インクタンク25の装着位置27よりも後方側に設置された吸引ポンプ33の円筒状のケーシング33aの周壁内面に支持されると共に、その他端部(下流側の端部)が、装着位置27に装着された廃インクタンク25の上方となる位置まで延設されている。そして、この排出チューブ32の他端部には吸引ポンプ33の駆動に伴い廃インクを排出する排出口32aが形成されている。
【0040】
なお、本実施形態では、図2に示すように、装着位置27に装着された状態の廃インクタンク25における装着位置27からの取り外し方向とは反対側の壁面25sの位置と排出チューブ32の他端部に形成された排出口32aの位置との取り外し方向における距離を距離Yとして示す。また、図2に示すように、装着位置27に装着された状態にある廃インクタンク25が装着位置27から取り外し方向となる前方側へ移動した場合に、動力伝達機構34の可動部材43における摺接部43cが廃インクタンク25の上面に対する係合状態を解除されることになる距離を距離Xとして示す。そして、本実施形態では、これら2つの距離X,Yについて、距離Yの方が距離Xよりも大きくなるように設定されている。
【0041】
また、吸引ポンプ33は、ケーシング33aの周壁内面にて支持した排出チューブ32の長さ方向の中間部をポンプ駆動に伴いキャップ31側となる上流側から廃インクタンク25側となる下流側に向けて周壁内面との間で押し潰しながら移動する押圧部材(図示略)を備えた周知の所謂チューブポンプである。そして、この吸引ポンプ33には、複数(本実施形態では5つ)の歯車にて構成された動力伝達機構34が形成する動力伝達経路(駆動輪列)を介して駆動力が伝達される。以下、この動力伝達機構34について説明する。
【0042】
図2に示すように、吸引ポンプ33の円筒状をなすケーシング33aにおける軸方向と直交する左右両壁面のうち一方(図2では手前側となる右側)の面からは、ポンプ駆動時に上記押圧部材をケーシング33aの周壁内面に沿って移動させるために回動するポンプ軸35の一端(この場合は右端)が水平方向へ突出している。そして、このポンプ軸35の突出端には、ピッチ径が吸引ポンプ33のケーシング33aの外径よりも小さなポンプ歯車36がポンプ軸35と一体回転するように固着されている。
【0043】
また、フレーム12内におけるポンプ軸35と同じ高さ位置であってポンプ軸35よりも前側(すなわち、ハウジング部24の挿抜口28側)に一定距離だけ離れた位置には、駆動源の一例としての駆動モーターMの出力軸(図示略)に駆動連結された駆動軸37が軸方向をポンプ軸35の軸方向に沿わせるようにして架設されている。そして、この駆動軸37には、ポンプ歯車36よりもピッチ径が小さく形成された駆動歯車38が駆動軸37と一体回転するように固着されている。
【0044】
また、ポンプ軸35と駆動軸37との間であってポンプ軸35及び駆動軸37と同じ高さ位置には、軸方向をポンプ軸35及び駆動軸37の各軸方向に沿わせた複数(図2では2つ)の支軸39,40が、互いに水平方向(この場合は前後方向)において離れて位置するように架設されている。2つの支軸39,40のうち、ポンプ軸35に近い側の支軸39にはポンプ歯車36と噛合する中継歯車41が回動自在に支持される一方、駆動軸37に近い側の支軸40には駆動歯車38と噛合する中継歯車42が回動自在に支持されている。
【0045】
なお、図2に示すように、2つの中継歯車41,42は、それらのピッチ径が駆動歯車38と略同一に形成されると共に、両中継歯車41,42同士を互いに非噛合関係とするように、水平方向(前後方向)において所定距離(例えば、各中継歯車41,42のピッチ径よりも少し短い距離)だけ離れるように配置される。そして、本実施形態では、ポンプ歯車36及びこれに噛合する中継歯車41によりポンプ側歯車が構成される一方、駆動歯車38及びこれに噛合する中継歯車42により駆動側歯車が構成されている。
【0046】
さらに、図2に示すように、廃インクタンク25の着脱時の移動方向となる前後方向において、ポンプ側歯車の中継歯車41と駆動側歯車の中継歯車42との間には、動力伝達機構34において移動部を構成する可動部材43が、ハウジング部24の上壁部24aに付勢部材の一種であるコイルスプリング44を介して支持されている。そして、このコイルスプリング44が伸縮することにより可動部材43は図示しないガイド部材によって変位方向を鉛直方向に規制されつつ変位可能とされている。
【0047】
また、図2に示すように、可動部材43は、廃インクタンク25の着脱方向に沿う側面に沿って鉛直方向に長く延びる平板状の鉛直板部43aと、この鉛直板部43aの上端部から水平方向に屈曲して廃インクタンク25の上面よりも上方域に向けて延びる水平板部43bとを有している。そして、この水平板部43bの下面側には、廃インクタンク25の上面に対しては水平方向に沿う摺接態様で係合可能であると共に、廃インクタンク25の後部上端に面取り形成された斜面部25aに対しては斜め方向に沿う摺接態様で係合可能な断面台形状をなす摺接部43cが形成されている。なお、図2は、可動部材43が摺接部43cを廃インクタンク25の上面に上側から当接させた上昇位置にある状態を示しており、この状態ではコイルスプリング44が収縮した蓄力状態にある。
【0048】
また、図2に示すように、可動部材43における鉛直板部43aの下端部には、軸方向をポンプ軸35及び駆動軸37の各軸方向に沿わせた支軸45が設けられ、この支軸45には可動部材43が上昇位置にある場合に2つの各中継歯車41,42に対して噛合可能な変位歯車46が回動自在に支持されている。なお、この変位歯車46は、図3に示すように、可動部材43の摺接部43cが廃インクタンク25の上面に上側から係合して停止した状態を解除されることによって可動部材43がコイルスプリング44の付勢力により上昇位置から鉛直下方の下降位置へ移動するのに連れて下方へ移動し、各中継歯車41,42とは非噛合関係となる。
【0049】
すなわち、変位歯車46は、図2に示すように、廃インクタンク25が装着位置27に装着された状態では、その支軸45の軸方向と直交する上下方向において、可動部材43が上昇位置に移動するのに連れて駆動側歯車の中継歯車42及びポンプ側歯車の中継歯車41の双方に対して噛合する動力伝達可能な動力伝達位置へと変位する。その一方、変位歯車46は、その支軸45の軸方向と直交する上下方向において、可動部材43が下降位置に移動するのに連れて駆動側歯車の中継歯車42及びポンプ側歯車の中継歯車41の双方と非噛合関係となる動力伝達不可能な動力遮断位置に変位する。そして、変位歯車46が動力伝達位置に変位することにより、5つの歯車36,38,41,42,46からなる動力伝達機構34が動力伝達経路(駆動輪列)を形成し、その動力伝達経路を介して伝達される駆動モーターMの駆動力に基づき吸引ポンプ33が駆動されることになる。また、変位歯車46が動力遮断位置(すなわち、動力伝達経路を形成しない位置)に変位することにより、駆動モーターMの駆動力は中継歯車42までしか伝達されず、吸引ポンプ33は駆動されない。
【0050】
なお、図2及び図3に示すように、駆動モーターMには、マイクロプロセッサを有する制御装置(制御手段)47と、駆動モーターMの駆動時における駆動負荷を電流値変動に基づき検出する電流センサ(検出手段)48が電気的に接続されている。また、制御装置47には、電流センサ48が駆動モーターMの駆動負荷についての検出信号を入力可能に接続されている。そして、この電流センサ48からの検出信号に基づき、制御装置47は収容室26内の装着位置27に廃インクタンク25が装着されているか否かを判定し、その判定結果を例えば図示しない報知ランプの点灯制御を通じて出力する。
【0051】
そこで次に、上記のように構成されたプリンター11の作用につき、特に動力伝達機構34の作用に着目して以下説明する。
さて、図2に示すように、収容室26内の装着位置27に廃インクタンク25が装着された状態においては、排出チューブ32の下流端に形成された排出口32aの直下位置に廃インクタンク25の上面側の開口が位置する。そして、この状態において、記録ヘッド21のクリーニングを実行する場合には、記録ヘッド21がホームポジションHPに位置させられると共に、図示略の昇降装置の駆動に基づきキャップ31が上昇させられて記録ヘッド21のノズル形成面21aに当接する。その結果、記録ヘッド21のノズル形成面21aとキャップ31との間には密閉空間が形成される。
【0052】
また、図2に示す状態においては、可動部材43がコイルスプリング44により付勢されて摺接部43cの下面を廃インクタンク25の上面に上側から係合させて停止した上昇位置にある。可動部材43は廃インクタンク25の上面に係合することで移動が停止するため、変位歯車46は、駆動側の中継歯車41とポンプ側の中継歯車42の双方に噛合する動力伝達位置に正確に位置することになる。そして、5つの歯車36,38,41,42,46からなる動力伝達機構34は、駆動モーターMに直結された駆動歯車38から吸引ポンプ33に直結されたポンプ歯車36に向けて動力を伝達する動力伝達経路(駆動輪列)を形成している。
【0053】
そのため、この状態において制御装置47からの制御指令に基づいて駆動モーターMが駆動されると、その駆動力が動力伝達機構34によって形成された動力伝達経路を介して吸引ポンプ33に伝達され、その駆動力に基づいて吸引ポンプ33が駆動される。なお、この場合、電流センサ48は駆動モーターMに通電される電流値を検出して制御装置47に入力する。すると、制御装置47は、その入力された検出電流値を予め設定された閾値電流値と比較する。そして、この場合には、吸引ポンプ33の駆動負荷により検出電流値の方が閾値電流値よりも大きくなる。そのため、制御装置47は、動力伝達機構34が変位歯車46を動力伝達位置に変位させて動力伝達経路を形成した状態、すなわち廃インクタンク25が可動部材43をコイルスプリング44の付勢力に抗して上昇位置に押し上げながら収容室26内の装着位置27に装着されていると判定する。
【0054】
そして、このような状態において吸引ポンプ33の駆動状態が継続すると、記録ヘッド21内から増粘等したインクが廃インクとして強制的にキャップ31内に吸引排出され、その後、その廃インクはキャップ31内から排出チューブ32を経由して廃インクタンク25内へと排出される。そして、以上のようなクリーニングが終了すると、昇降装置の駆動に基づいてキャップ31が記録ヘッド21のノズル形成面21aから下方へ離れた下降位置(図2に示す位置)へと移動し、その後、記録ヘッド21が印刷領域に移動されると、記録用紙Pに対する印刷が可能とされる。
【0055】
一方、図2に示す状態において、廃インクタンク25を新旧交換する場合には、以下のようにして、収容室26内の装着位置27から旧い廃インクタンク25が取り外される。まず、図2において二点鎖線で示すように、挿抜口28の開閉扉30が閉鎖位置から開放位置へと開放動作される。そして、図3に示すように、開放された挿抜口28を介して廃インクタンク25が装着位置27からの取り出し方向となる前方側に向けて移動される。すると、可動部材43は、装着位置27に装着された状態にあった廃インクタンク25が距離Xに相当する移動距離だけ前方に移動したときに、その摺接部43cが廃インクタンク25の上面に対する上側からの当接状態を解除され、廃インクタンク25の後部上端の斜面部25aに摺接して斜め下方へと移動する。そのため、可動部材43は、コイルスプリング44の伸張方向への付勢力により上昇位置から下降位置へと移動し、変位歯車46を駆動側及びポンプ側の両中継歯車41,42に対して非噛合関係となる下方の動力遮断位置へと変位させる。
【0056】
すなわち、5つの歯車36,38,41,42,46からなる動力伝達機構34は、廃インクタンク25が装着位置27から取り外されるときの取り外し方向への動きに対して機械的に連動することにより、駆動モーターMに直結された駆動歯車38から吸引ポンプ33に直結されたポンプ歯車36に向けて動力を伝達する動力伝達経路を遮断する。換言すると、動力伝達機構34の変位歯車46を支持した可動部材43は、装着位置27から廃インクタンク25が取り外される際に、その廃インクタンク25に対して非係合状態となることにより動力伝達が不可能な位置に移動する。その結果、吸引ポンプ33には駆動モーターMからの駆動力が伝達されなくなり、吸引ポンプ33が駆動停止される。したがって、この吸引ポンプ33の駆動停止に伴い排出チューブ32の下流端の排出口32aから廃インクが排出されることもなくなる。
【0057】
ちなみに、装着位置27に装着された状態にある廃インクタンク25の後側の壁面25sの位置と排出チューブ32の排出口32aの位置との取出し方向における距離Yの方が上記の移動距離Xよりも短い場合には、吸引ポンプ33の駆動停止前に排出口32aが移動過程にある廃インクタンク25の上部開口よりも後方側へ位置ずれしてしまう。ところが、本実施形態では、距離Yの方が移動距離Xよりも大きく設定されているため、そのような排出口32aの位置ずれが生じることもなく、廃インクタンク25外への廃インクの排出という事態が回避される。
【0058】
なお、動力伝達機構34により駆動モーターMから吸引ポンプ33への動力伝達経路が遮断された状態でも、電流センサ48は駆動モーターMに通電される電流値を検出し、その検出結果を制御装置47に入力する。すると、この場合も、制御装置47は、入力された検出電流値を予め設定された閾値電流値と比較する。そして、この場合には、吸引ポンプ33の駆動負荷がないため検出電流値の方が閾値電流値よりも小さくなる。そのため、制御装置47は、動力伝達機構34が変位歯車46を動力遮断位置に変位させて動力伝達経路を遮断した状態、すなわち廃インクタンク25が可動部材43をコイルスプリング44の付勢力によって下降位置に移動させ得るように収容室26内の装着位置27から取り外されていると判定する。
【0059】
そして、その判定結果に基づき、制御装置47は、例えばフレーム12の上部前面側に設けられた図示しない報知ランプを点灯させることにより、収容室26内の装着位置27から廃インクタンク25が取り外されていることをプリンター11の使用者に報知する。なお、制御装置47は、報知ランプの点灯制御以外に、操作パネルの表示画面の表示状態を制御して報知メッセージを表示させる等、他の報知制御によって廃インクタンク25が取り外されていることを報知するようにしてもよい。
【0060】
さらに、図3に示す状態から廃インクタンク25を収容室26内の装着位置27に装着する場合には、以下のようにして、廃インクタンク25が装着される際の動きに動力伝達機構34が機械的に連動して駆動モーターMから吸引ポンプ33への動力伝達経路を形成する。まず、図3に示す状態から、廃インクタンク25が装着位置27に対する装着方向となる後方側に向けて移動される。すると、可動部材43は、廃インクタンク25の上面と後側の壁面25sとが交差する隅角部に面取り形成された斜面部25aに摺接部43cが係合して摺接する。そして、この場合に廃インクタンク25がコイルスプリング44の付勢力よりも大きな移動力でもって装着方向に移動される場合には、その移動力が変位歯車46の変位力に変換される。そのため、可動部材43は、その変位力を利用してコイルスプリング44を収縮させつつ下降位置から上昇位置へと移動し、変位歯車46を駆動側及びポンプ側の両中継歯車41,42に噛合する上方の動力伝達位置へと変位させる。
【0061】
その結果、5つの歯車36,38,41,42,46からなる動力伝達機構34は、廃インクタンク25が装着位置27に装着されるときに可動部材43の摺接部43cが係合し、その装着方向への動きに対して機械的に連動することにより、移動部を構成する可動部材43が駆動歯車38からポンプ歯車36に向けて動力を伝達可能な位置に移動する。したがって、吸引ポンプ33に駆動モーターMからの駆動力が伝達されるようになり、吸引ポンプ33が駆動されるため、この吸引ポンプ33の駆動再開に伴い排出チューブ32の下流端から廃インクが装着位置27に装着されている廃インクタンク25内に向けて排出される。
【0062】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)装着位置27に対する廃インクタンク25の着脱時に、動力伝達機構34の可動部材43が、装着位置27に着脱される廃インクタンク25に係合したり非係合状態となったりする。そして、吸引ポンプ33に対する動力伝達可能な位置と動力伝達不可能な位置との間を移動することにより、吸引ポンプ33が駆動状態及び駆動停止状態の何れかに切り替えられるので、吸引ポンプ33の駆動制御のための複雑な制御プログラムの構築を不要にできる。また、吸引ポンプ33が駆動されている状態において、装着位置27から廃インクタンク25が取り外された際には、動力伝達機構34の可動部材43が廃インクタンク25と非係合状態となって吸引ポンプ33に対する動力伝達不可能な位置に移動する。そのため、タイムラグが生じるプログラム制御の場合と異なり、吸引ポンプ33は駆動状態から駆動停止状態へと迅速に切り替えられる。したがって、廃インクタンク25が着脱可能とされたプリンター11から廃インクタンク25が取り外された際に、その事実を迅速且つ容易に把握して対処することができる。
【0063】
(2)駆動側歯車(中継歯車42)及びポンプ側歯車(中継歯車41)の双方に対して噛合可能な変位歯車46を装着位置27に対する廃インクタンク25の着脱時における可動部材43の位置に応じて動力伝達位置と動力遮断位置との間で変位させることにより、吸引ポンプ33の駆動状態が切り替えられる。すなわち、廃インクタンク25の着脱時における可動部材43の位置に応じて変位歯車を動力伝達位置と動力遮断位置との間で変位させるという簡単な機構を設けるだけで、廃インクタンク25の着脱状態に応じて吸引ポンプ33を駆動状態及び駆動停止状態の何れかへ適正に切り替えることができる。
【0064】
(3)装着位置27に対する廃インクタンク25の着脱時に、動力伝達機構34の移動部は、変位歯車46を支持した可動部材43が廃インクタンク25に係合する位置と非係合状態となる位置との間を移動する。そして、可動部材43が廃インクタンク25に係合する位置では、変位歯車46を駆動歯車38及びポンプ歯車36に噛合する動力伝達位置に変位させ、可動部材43が廃インクタンク25と非係合状態となる位置では、変位歯車46を駆動歯車38及びポンプ歯車36に非噛合関係となる動力遮断位置に変位させる。したがって、装着位置27に対する廃インクタンク25の着脱時には、動力伝達機構34の移動部における可動部材43を廃インクタンク25に係合する位置と非係合状態となる位置との間で移動させることにより、変位歯車46を動力伝達位置と動力遮断位置との間でスムーズに変位させることができる。
【0065】
(4)廃インクタンク25が装着位置27から取り外される際の移動過程において、その廃インクタンク25に動力伝達機構34の移動部を構成する可動部材43が係合している限りは、吸引ポンプ33が駆動することにより排出口32aから廃インクが排出されると共に、その排出された廃インクは廃インクタンク25により確実に受容される。したがって、プリンター11の内部を廃インクタンクふえ外に排出された廃インクにより汚してしまうことを抑制できる。
【0066】
(5)装着位置27に対して廃インクタンク25が装着されると、動力伝達機構34の移動部を構成する可動部材43が廃インクタンク25の斜面部25aから上面側への係合を通じて吸引ポンプ33に対する動力伝達可能な位置に移動する。その一方、装着位置27から廃インクタンク25が取り外される際には、動力伝達機構34の可動部材43を吸引ポンプ33に対する動力伝達可能な位置に停止させている係合状態が解除されて可動部材43は動力伝達不可能な位置に移動する。したがって、装着位置27に対する廃インクタンク25の着脱に伴い、動力伝達機構34の可動部材43を吸引ポンプ33に対する動力伝達可能な位置と動力伝達不可能な位置との間で移動させることにより、吸引ポンプ33を駆動状態と駆動停止状態との間で迅速に切り替えることができる。
【0067】
(6)変位歯車46をその軸方向に変位させて駆動側歯車(中継歯車42)及びポンプ側歯車(中継歯車41)に噛合させる構成の場合に比して、その軸方向と直交する方向に変位させる構成とした。そのため、変位歯車46を駆動側歯車(中継歯車42)及びポンプ側歯車(中継歯車41)に噛合する動力伝達位置と非噛合関係となる動力遮断位置との間でスムーズに変位させることができる。
【0068】
(7)吸引ポンプ33が駆動されている状態において廃インクタンク25が装着位置27から取り外された場合には、付勢部材(コイルスプリング44)の付勢力でもって変位歯車46を動力遮断位置に変位させることにより、吸引ポンプ33を迅速に駆動停止状態に切り替えることができる。その一方、廃インクタンク25を装着位置27に装着する場合において、付勢部材(コイルスプリング44)の付勢力よりも大きな力でもって廃インクタンク25を装着位置27へ向けて移動させれば、その際の移動力を変位力に変換して変位歯車46が動力伝達位置に変位する。そのため、吸引ポンプ33を駆動停止状態から確実に駆動状態に切り替えることができる。
【0069】
(8)例えば変位歯車46が動力遮断位置にある場合には、変位歯車46が動力伝達位置にある場合よりも、駆動モーターMの駆動負荷は相対的に小さなものになるので、こうした駆動モーターMにおける負荷変動の判別結果に従い、装着位置27に対する廃インクタンク25の装着の有無を報知ランプの点灯制御などを通じて出力することができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4及び図5に基づいて説明する。なお、この第2実施形態は、第1実施形態との対比において廃インクタンク25の一部構成と動力伝達機構34の一部構成のみが相違しており、その他の点は同一構成である。そのため、以下では、第1実施形態と相違する構成部分について主に説明することにし、他の同一構成については同一符号を付すことにして重複説明は省略する。
【0071】
図3及び図4に示すように、第2実施形態の廃インクタンク25には、装着位置27に対する着脱方向となる前後方向に沿う側壁の上端縁から長手方向全体に亘って水平方向にリブ状部25bが突設されている。そして、廃インクタンク25の上面と後側の壁面25sとが交差する隅角部に斜面部25aが面取り形成される代わりに、その上端縁に沿って延びるリブ状部25bにおける装着方向への移動時に前側となる端部(図4及び図5では後側の端部)に、装着方向に向けて前上がり勾配となる斜面部(係合部)25cが形成されている。
【0072】
また、動力伝達機構34については、第1実施形態における中継歯車42及び変位歯車46が、駆動歯車38を太陽歯車とした遊星歯車として機能する変位歯車52に置換されることにより、第1実施形態よりも1つ少ない4つの歯車36,38,41,52にて、動力伝達経路を形成可能な動力伝達機構34が構成されている。具体的には、第1実施形態の場合よりも、駆動歯車38とポンプ歯車36との距離が狭まり、そのポンプ歯車36に噛合する中継歯車41と駆動歯車38との距離は両歯車41,38に噛合する変位歯車52のピッチ径よりも少し短く設定されている。
【0073】
この場合、遊星歯車として機能する変位歯車52は、駆動歯車38が固着された駆動軸37に基端部を回動自在に支持された略L字状をなすレバー部材(移動部を構成する可動部材)50をキャリアーとし、そのレバー部材50の屈曲部位から突出した支軸51に対して駆動歯車38との噛合関係を維持しつつ回動自在に支持されている。なお、レバー部材50の屈曲した先端は、その断面形状が円弧状の摺接部50aに形成され、廃インクタンク25が装着位置27に装着された状態においては、リブ状部25bの下面に対して摺接可能となる。
【0074】
そして、レバー部材50の摺接部50aが廃インクタンク25のリブ状部25bに下側から接触した状態では、図4に示すように、そのレバー部材50に支持された変位歯車52がポンプ側歯車の中継歯車41及び駆動側歯車の駆動歯車38の双方に噛合する動力伝達位置に位置している。そのため、4つの歯車36,38,41,52からなる動力伝達機構34は、駆動モーターMに直結された駆動歯車38から吸引ポンプ33に直結されたポンプ歯車36に向けて動力を伝達する動力伝達経路を形成する。したがって、この状態において制御装置47からの制御指令に基づいて駆動モーターMが駆動されると、その駆動力に基づいて吸引ポンプ33が駆動される。
【0075】
一方、図4に示す状態から、同図に二点鎖線で示すように、挿抜口28の開閉扉30が閉鎖位置から開放位置へと開放動作されると、廃インクタンク25の装着位置27からの取り外し動作が可能となる。そして、図5に示すように、開放された挿抜口28を介して廃インクタンク25が装着位置27からの取り出し方向となる前方側に向けて移動されると、レバー部材50は廃インクタンク25のリブ状部25bに対する摺接部50aの下側からの当接状態が解除される。
【0076】
そのため、このレバー部材50に支持された変位歯車52は、太陽歯車となる駆動歯車38の周りを遊星歯車のように周回移動する。すなわち、この場合は駆動歯車38が図5において時計方向に回転することにより、変位歯車52は、駆動歯車38の周りを反時計方向に変位し、その結果、ポンプ側歯車の中継歯車41及び駆動側歯車の駆動歯車38に対して非噛合関係となる上方の動力遮断位置へと変位する。
【0077】
すなわち、4つの歯車36,38,41,52からなる動力伝達機構34は、廃インクタンク25が装着位置27から取り外されるときの取り外し方向への動きに対して機械的に連動することにより、駆動モーターMに直結された駆動歯車38から吸引ポンプ33に直結されたポンプ歯車36に向けて動力を伝達する動力伝達経路を遮断する。換言すると、動力伝達機構34の変位歯車52を支持したレバー部材50は、装着位置27から廃インクタンク25が取り外される際に、その廃インクタンク25に対して非係合状態となることにより動力伝達が不可能な位置に移動する。その結果、吸引ポンプ33には駆動モーターMからの駆動力が伝達されなくなり、吸引ポンプ33が駆動停止される。したがって、この吸引ポンプ33の駆動停止に伴い排出チューブ32の下流端の排出口32aから廃インクが排出されることもなくなる。
【0078】
さらに、図5に示す状態から廃インクタンク25を収容室26内の装着位置27に装着する場合には、以下のようにして、廃インクタンク25が装着される際の動きに動力伝達機構34が機械的に連動して駆動モーターMから吸引ポンプ33への動力伝達経路を形成する。まず、図5に示す状態から、廃インクタンク25が装着位置27に対する装着方向となる後方側に向けて移動されると、レバー部材50は、廃インクタンク25のリブ状部25bにおいて装着方向の前側となる端部に形成された斜面部25cに摺接部50aが摺接して係合する。すると、レバー部材50は、その摺接部50aを斜面部25cからリブ状部25bの下側へと係合する箇所を移動させつつ、図5における時計方向に揺動し、変位歯車52をポンプ側歯車の中継歯車41及び駆動側歯車の駆動歯車38に噛合する下方の動力伝達位置へと変位させる。
【0079】
その結果、4つの歯車36,38,41,52からなる動力伝達機構34は、廃インクタンク25が装着位置27に装着されるときにレバー部材50が係合し、その装着方向への動きに対して機械的に連動することにより、移動部を構成するレバー部材50が駆動歯車38からポンプ歯車36に向けて動力を伝達可能な位置に移動する。したがって、吸引ポンプ33に駆動モーターMからの駆動力が伝達されるようになり、吸引ポンプ33が駆動されるため、この吸引ポンプ33の駆動再開に伴い排出チューブ32の下流端の排出口32aから廃インクが装着位置27に装着されている廃インクタンク25内に向けて排出される。
【0080】
上記構成の第2実施形態によれば、第1実施形態における(1)〜(5)及び(8)に示す効果を同様に奏し得る他、以下に示す効果を奏し得る。
(9)動力伝達機構34が第1実施形態の場合よりも少ない個数の歯車により構成されるため、部品点数を削減することができると共に、そのような少ない個数の歯車が軸方向と直交する方向に配設される領域があればよいので、装置全体の省スペース化に貢献することができる。
【0081】
(10)変位歯車52を付勢部材の付勢力を利用して動力伝達位置と動力遮断位置との間で変位させる構成ではなく、駆動歯車38を太陽歯車として変位歯車52が駆動歯車38の周りを遊星歯車となって周回して変位する構成としたので、付勢部材を利用した場合に懸念される付勢力の経年劣化に起因した動作不良の虞を回避できる。
【0082】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図6及び図7に基づいて説明する。なお、この第3実施形態は、第1実施形態との対比において廃インクタンク25の一部構成と動力伝達機構34の一部構成のみが相違しており、その他の点は同一構成である。そのため、以下では、第1実施形態と相違する構成部分について主に説明することにし、他の同一構成については同一符号を付すことにして重複説明は省略する。
【0083】
図6及び図7に示すように、第3実施形態の廃インクタンク25には、装着位置27に対する着脱方向となる前後方向に沿う側壁の上端縁において装着方向への移動時に前側となる端部(図6及び図7では後側の端部)から、先端を鉛直下方に向けた屈曲状のアーム部25dが水平方向に突設されている。なお、第1実施形態の場合とは異なり、廃インクタンク25の上面と後側の壁面とが交差する隅角部に斜面部25aは面取り形成されていない。
【0084】
また、動力伝達機構34については、第1実施形態における2つの中継歯車41,42が省略されると共に、駆動歯車38と変位歯車62が第1実施形態の場合とは異なる位置に配設されている。そして、第1実施形態よりも2つ少ない3つの歯車36,38,62にて、動力伝達経路を形成可能な動力伝達機構34が構成されている。具体的には、駆動歯車38がポンプ歯車36との距離を変位歯車62のピッチ径よりも短くする位置に配置され、変位歯車62は、そのポンプ歯車36及び駆動歯車38の双方に噛合する動力伝達位置と、それら両歯車36,38とは非噛合関係となる動力遮断位置との間を変位可能に配設されている。
【0085】
すなわち、駆動歯車38の配設位置よりも上方であってポンプ軸35の配設位置と略同じ高さとなる位置には、廃インクタンク25の着脱方向となる前後方向に長く延びる板状の支持部材60が図示しないブラケットを介してフレーム12に支持されている。支持部材60には長手方向に沿う長孔60aが形成され、その長孔60a内には、変位歯車62を回動自在に支持した支軸(移動部を構成する可動部材)61が長手方向(この場合、着脱方向となる前後方向)への摺動自在に支持されている。
【0086】
また、支持部材60における長孔60aの装着方向での前側となる縁付近にはピン63が固定され、そのピン63と支軸61との間には、長孔60aの装着方向での後側となる縁に向けて支軸61を押圧可能な付勢力を有したコイルスプリング(付勢部材)64が取り付けられている。そして、図6に示すように、支軸61には、装着位置27に装着された廃インクタンク25の屈曲状のアーム部25dが係合可能であり、その係合状態では、支軸61をコイルスプリング64の付勢力に抗して後側(装着方向での前側)へ押圧し、長孔60aの略中央まで移動させる。
【0087】
その結果、その支軸61に支持された変位歯車62がポンプ歯車36及び駆動歯車38の双方に噛合する動力伝達位置に変位するため、3つの歯車36,38,62からなる動力伝達機構34は、駆動モーターMに直結された駆動歯車38から吸引ポンプ33に直結されたポンプ歯車36に向けて動力を伝達する動力伝達経路を形成する。したがって、この状態において制御装置47からの制御指令に基づいて駆動モーターMが駆動されると、その駆動力に基づいて吸引ポンプ33が駆動される。
【0088】
一方、図6に示す状態から、同図に二点鎖線で示すように、挿抜口28の開閉扉30が閉鎖位置から開放位置へと開放動作されると、廃インクタンク25の装着位置27からの取り外し動作が可能となる。そして、図7に示すように、開放された挿抜口28を介して廃インクタンク25が装着位置27からの取り出し方向となる前方側に向けて移動されると、変位歯車62を支持した支軸61は廃インクタンク25のアーム部25dによる後方への押圧状態が解除される。
【0089】
そのため、この支軸61に支持された変位歯車62は、コイルスプリング64の付勢力により支軸61と共に取り外し方向となる前方に向けて変位し、ポンプ歯車36及び駆動歯車38に対して非噛合関係となる前方の動力遮断位置へと変位する。すなわち、3つの歯車36,38,62からなる動力伝達機構34は、廃インクタンク25が装着位置27から取り外されるときの取り外し方向への動きに対して機械的に連動することにより、駆動モーターMに直結された駆動歯車38から吸引ポンプ33に直結されたポンプ歯車36に向けて動力を伝達する動力伝達経路を遮断する。換言すると、動力伝達機構34の変位歯車62を支持した支軸61は、装着位置27から廃インクタンク25が取り外される際に、その廃インクタンク25に対して非係合状態となることにより動力伝達が不可能な位置に移動する。その結果、吸引ポンプ33には駆動モーターMからの駆動力が伝達されなくなり、吸引ポンプ33が駆動停止される。したがって、この吸引ポンプ33の駆動停止に伴い排出チューブ32の下流端から廃インクが排出されることもなくなる。
【0090】
さらに、図7に示す状態から廃インクタンク25を収容室26内の装着位置27に装着する場合には、以下のようにして、廃インクタンク25が装着される際の動きに動力伝達機構34が機械的に連動して駆動モーターMから吸引ポンプ33への動力伝達経路を形成する。まず、図7に示す状態から、廃インクタンク25が装着位置27に対する装着方向となる後方側に向けて移動されると、変位歯車62の支軸61は、廃インクタンク25の装着方向の前側寄り位置に形成されたアーム部25dに係合する。すると、支軸61は、コイルスプリング64の付勢力に抗して支持部材60の長孔60a内を後方側(装着方向の前側)へと移動し、変位歯車62をポンプ歯車36及び駆動歯車38に噛合する後方の動力伝達位置へと変位させる。
【0091】
その結果、3つの歯車36,38,62からなる動力伝達機構34は、廃インクタンク25が装着位置27に装着されるときの装着方向への動きに対して機械的に連動することにより、駆動モーターMに直結された駆動歯車38から吸引ポンプ33に直結されたポンプ歯車36に向けて動力を伝達する動力伝達経路を形成する。したがって、吸引ポンプ33に駆動モーターMからの駆動力が伝達されるようになり、吸引ポンプ33が駆動されるため、この吸引ポンプ33の駆動再開に伴い排出チューブ32の下流端から廃インクが装着位置27に装着されている廃インクタンク25内に向けて排出される。
【0092】
上記構成の第3実施形態によれば、第1実施形態における(1)〜(8)に示す効果、並びに第2実施形態における(9)に示す効果を同様に奏し得る。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図8及び図9に基づいて説明する。なお、この第4実施形態は、第1実施形態との対比において廃インクタンク25の一部構成と動力伝達機構34の一部構成のみが相違しており、その他の点は同一構成である。そのため、以下では、第1実施形態と相違する構成部分について主に説明することにし、他の同一構成については同一符号を付すことにして重複説明は省略する。
【0093】
図8及び図9に示すように、第4実施形態の廃インクタンク25には、装着位置27に対する着脱方向となる前後方向に沿う側壁の上部側において装着方向への移動時に前側となる端部(図8及び図9では後側の端部)から、先端を装着方向で前側となる後方に向けた屈曲状の支持アーム25eが水平方向に突設されている。そして、この支持アーム25eの先端には支軸70が固着され、その支軸70には変位歯車71が回動自在に支持されている。なお、第1実施形態の場合とは異なり、廃インクタンク25の上面と後側の壁面とが交差する隅角部に斜面部25aは面取り形成されていない。
【0094】
また、動力伝達機構34については、第1実施形態における2つの中継歯車41,42が省略されると共に、可動部材43に支持されていた変位歯車46が廃インクタンク25の支持アーム25eに支持された変位歯車71に置換され、さらに、駆動歯車38が第1実施形態の場合とは異なる位置に配設されている。そして、プリンター11側に設けられたポンプ歯車36と駆動歯車38及び廃インクタンク25側に設けられた変位歯車71の合計3つの歯車により、動力伝達経路を形成可能な動力伝達機構34が構成されている。具体的には、第3実施形態の場合と同様に、駆動歯車38がポンプ歯車36との距離を変位歯車71のピッチ径よりも短くする位置に配置されている。そして、変位歯車71は、そのポンプ歯車36及び駆動歯車38の双方に噛合する動力伝達位置と、それら両歯車36,38とは非噛合関係となる動力遮断位置との間を廃インクタンク25の着脱時に動きに連動して変位する構成とされている。
【0095】
すなわち、図8及び図9に示すように、廃インクタンク25において、変位歯車71の支軸70を支持する支持アーム25eはポンプ軸35の配設位置と略同じ高さとなる位置に設けられている。そのため、図8に示すように、廃インクタンク25が装着位置27に装着された状態では、支持アーム25eと共に変位歯車71も装着方向に移動し、廃インクタンク25における装着方向の前側となる後壁面よりも突出した変位歯車71の歯部がポンプ歯車36及び駆動歯車38の双方に噛合する動力伝達位置に変位する。
【0096】
したがって、3つの歯車36,38,71からなる動力伝達機構34は、駆動モーターMに直結された駆動歯車38から吸引ポンプ33に直結されたポンプ歯車36に向けて動力を伝達する動力伝達経路を形成する。そして、この状態において制御装置47からの制御指令に基づいて駆動モーターMが駆動されると、その駆動力に基づいて吸引ポンプ33が駆動される。
【0097】
一方、図8に示す状態から、同図に二点鎖線で示すように、挿抜口28の開閉扉30が閉鎖位置から開放位置へと開放動作されると、廃インクタンク25の装着位置27からの取り外し動作が可能となる。そして、図9に示すように、開放された挿抜口28を介して廃インクタンク25が装着位置27からの取り出し方向となる前方側に向けて移動されると、変位歯車71は廃インクタンク25と一体的に移動し、ポンプ歯車36及び駆動歯車38に対して非噛合関係となる前方の動力遮断位置へと変位する。すなわち、3つの歯車36,38,71からなる動力伝達機構34は、廃インクタンク25が装着位置27から取り外されるときの取り外し方向への動きに対して機械的に連動することにより、駆動モーターMに直結された駆動歯車38から吸引ポンプ33に直結されたポンプ歯車36に向けて動力を伝達する動力伝達経路を遮断する。換言すると、動力伝達機構34の変位歯車71を支持した支持アーム25eは、装着位置27から廃インクタンク25が取り外される際に、その廃インクタンク25と共に動力伝達が不可能な位置に移動する。その結果、吸引ポンプ33には駆動モーターMからの駆動力が伝達されなくなり、吸引ポンプ33が駆動停止される。したがって、この吸引ポンプ33の駆動停止に伴い排出チューブ32の下流端から廃インクが排出されることもなくなる。
【0098】
さらに、図9に示す状態から廃インクタンク25を収容室26内の装着位置27に装着する場合には、以下のようにして、廃インクタンク25が装着される際の動きに動力伝達機構34が機械的に連動して駆動モーターMから吸引ポンプ33への動力伝達経路を形成する。すなわち、図9に示す状態から、廃インクタンク25が装着位置27に対する装着方向となる後方側に向けて移動されると、変位歯車71は廃インクタンク25と一体的に移動し、ポンプ歯車36及び駆動歯車38に噛合する後方の動力伝達位置へと変位する。
【0099】
その結果、3つの歯車36,38,71からなる動力伝達機構34は、廃インクタンク25が装着位置27に装着されるときの装着方向への動きに対して機械的に連動することにより、駆動モーターMに直結された駆動歯車38から吸引ポンプ33に直結されたポンプ歯車36に向けて動力を伝達する動力伝達経路を形成する。したがって、吸引ポンプ33に駆動モーターMからの駆動力が伝達されるようになり、吸引ポンプ33が駆動されるため、この吸引ポンプ33の駆動再開に伴い排出チューブ32の下流端から廃インクが装着位置27に装着されている廃インクタンク25内に向けて排出される。
【0100】
上記構成の第4実施形態によれば、第1実施形態における(1)〜(6)及び(8)に示す効果、並びに第2実施形態における(9)に示す効果を同様に奏し得る他、以下に示す効果を奏し得る。
【0101】
(11)装着位置27に対する廃インクタンク25の着脱時の動きに応じて、廃インクタンク25に支持された変位歯車71が、駆動側歯車(駆動歯車38)とポンプ側歯車(ポンプ歯車36)とを駆動連結する動力伝達位置と駆動連結しない動力遮断位置との間で変位する。そのため、装着位置27に対する廃インクタンク25の着脱状態に応じて吸引ポンプ33を駆動状態及び駆動停止状態の何れかへ適正に切り替えることができる。
【0102】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 第1実施形態において、ポンプ軸35と駆動軸37及び2つの支軸39,40は、同じ高さ位置でなくてもよく、また、第2実施形態において、ポンプ軸35と駆動軸37及び1つの支軸39は、同じ高さ位置でなくてもよい。さらに上記各実施形態において、各歯車36,38,41,42,46,52,62,71には、平歯車以外の例えば複合歯車などの公知の歯車を用いてもよい。
【0103】
・ 第4実施形態において、支持アーム25eを弾性変形可能な材料で形成してもよい。このようにすれば、廃インクタンク25が装着位置27に移動して変位歯車71がポンプ歯車36及び駆動歯車38に噛合するときの衝撃を和らげることができる。
【0104】
・ 第4実施形態において、変位歯車71を回動自在に支持する支軸70は、廃インクタンク25の側壁から突設された構成であってもよい。すなわち、その支軸70に支持された状態で変位歯車71の歯部が廃インクタンク25における装着方向の前側となる後壁面よりも突出するならば、廃インクタンク25を装着位置27に装着したときに変位歯車71をポンプ歯車36及び駆動歯車38に噛合させることができる。
【0105】
・ 上記各実施形態において、電流センサ48を省略してもよい。すなわち、駆動モーターMの駆動負荷の変動の検出結果に基づいた廃インクタンク25の装着の有無に関する目報知制御を行わない構成であってもよい。
【0106】
・ 上記各実施形態において、電流センサ48をポンプ軸35の回転検出センサに置換し、その回転検出センサの検出結果に基づき制御装置47が装着位置27に対する廃インクタンク25の装着の有無を判定するようにしてもよい。
【0107】
・ 第1実施形態及び第3実施形態において、変位歯車46,62を動力遮断位置に向けて付勢する付勢部材はコイルスプリング44,64の代わりに板ばね等の他の付勢部材に置換してもよい。
【0108】
・ 上記各実施形態において、廃インクタンク25の着脱時の動きに連動した変位歯車46,52,62,71の変位方向は、軸方向と直交する方向でなく軸方向に沿う方向としてもよい。但し、この場合は、廃インクタンク25が装着位置27に装着されたときに変位歯車がポンプ側歯車及び駆動側歯車に対して良好に噛合するように回転調整する必要が生じることもある。
【0109】
・ 上記各実施形態において、動力伝達機構34を構成する歯車の個数は、中継歯車の個数を調整することにより任意の個数に変更してもよい。
・ 上記各実施形態において、動力伝達機構34を構成する歯車の大きさは、伝達する動力の減速比率などを調整するべく、各歯車のピッチ径を任意に変更してもよい。
【0110】
・ 上記各実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を噴射したり吐出したりする装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「液体」には、例えば無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む他、液状体、流状体などが含まれる。
【符号の説明】
【0111】
11…プリンター(液体噴射装置)、21…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、25…廃インクタンク(廃液回収体)、25a,25c…斜面部(係合部)、25d…アーム部(係合部)、25s…壁面、27…装着位置(装着部)、32a…排出口、33…吸引ポンプ(ポンプ)、34…動力伝達機構、36…ポンプ歯車(ポンプ側歯車)、38…駆動歯車(駆動側歯車)、41…中継歯車40(ポンプ側歯車)、42…中継歯車(駆動側歯車)、43…移動部を構成する可動部材、44,64…コイルスプリング(付勢部材)、46,52,62,71…変位歯車、47…制御装置(制御手段)、50…レバー部材(移動部を構成する可動部材)、61…支軸(移動部を構成する可動部材)、M…駆動モーター(駆動源)、X,Y…距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドから前記液体を廃液として排出させる際に駆動されるポンプと、
前記ポンプの駆動に伴い排出される前記廃液を受容可能な廃液回収体が着脱自在に装着される装着部と、
前記装着部に装着される前記廃液回収体に係合することにより前記ポンプに対して動力伝達可能な位置に移動する一方、前記装着部から前記廃液回収体が取り外される際には前記廃液回収体と非係合状態となって前記ポンプに対して動力伝達不可能な位置に移動する移動部を有する動力伝達機構と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記動力伝達機構は、
駆動源に駆動連結された駆動側歯車と、
前記ポンプに駆動連結された状態で前記駆動側歯車から離れた位置に回動自在に配設されたポンプ側歯車と、
前記移動部の位置に応じて、前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の双方と噛合する動力伝達位置と、前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の少なくとも一方と非噛合関係になる動力遮断位置とに変位する変位歯車と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置において、
前記移動部は、
前記変位歯車を支持しつつ前記廃液回収体に係合する位置とその廃液回収体から離れて非係合状態となる位置との間を前記装着部に対する前記廃液回収体の着脱に伴い移動可能とされた可動部材を有することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の液体噴射装置において、
前記装着部に装着された状態にある前記廃液回収体における前記装着部からの取り外し方向とは反対側の側面の位置と前記ポンプの駆動に伴い前記廃液回収体内に向けて前記廃液を排出する排出口の位置との前記取り外し方向における距離が、前記装着部に装着された状態にある前記廃液回収体が前記動力伝達機構の前記移動部に対して当該移動部の移動を停止させつつ係合している状態を前記取り外し方向への移動に伴い解除するまでの移動距離よりも長いことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから前記液体を廃液として排出させる際に駆動されるポンプとを備える液体噴射装置に着脱可能であり、前記液体噴射ヘッドから前記ポンプの駆動に伴い排出される前記廃液を受容可能な廃液回収体であって、
前記液体噴射装置に装着された際には当該液体噴射装置が備える移動部と係合することにより前記移動部を前記ポンプに対して動力伝達可能な位置に移動させる一方、前記液体噴射装置から取り外される際には前記移動部を前記動力伝達可能な位置に停止させている係合状態を解除して当該移動部を前記ポンプに対して動力伝達不可能な位置に移動可能とする係合部を備えたことを特徴とする廃液回収体。
【請求項6】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから前記液体を廃液として排出させる際に駆動されるポンプと、駆動源に駆動連結された駆動側歯車と、前記ポンプに駆動連結された状態で前記駆動側歯車から離れた位置に回動自在に配設されたポンプ側歯車とを備えた液体噴射装置における前記ポンプの駆動に伴い排出される前記廃液を受容可能な位置に設けられた装着部に着脱自在とされる廃液回収体であって、
前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の双方に対して噛合可能な変位歯車が回動自在に支持されると共に、前記装着部に装着される際の動きによって前記変位歯車が前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の双方と噛合する動力伝達位置に変位する一方、前記装着部から取り外される際の動きによって前記変位歯車が前記駆動側歯車及び前記ポンプ側歯車の少なくとも一方と非噛合関係になる動力遮断位置に変位することを特徴とする廃液回収体。
【請求項7】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドから前記液体を廃液として排出させる際に駆動されるポンプと、
前記ポンプの駆動に伴い排出される前記廃液を受容可能な廃液回収体が着脱自在に装着される装着部と、
前記装着部に対する前記廃液回収体の着脱時の位置に応じて変位可能であり、前記装着部に前記廃液回収体が装着される際には前記ポンプに対する駆動輪列を形成する位置に変位する一方、前記装着部から前記廃液回収体が取り外される際には前記駆動輪列を形成しない位置に変位する変位歯車を有する動力伝達機構と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−103463(P2013−103463A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250385(P2011−250385)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】