説明

液体噴射装置

【課題】液体を高精度で噴出する液体噴出装置を提供すること。
【解決手段】液体の流路を形成する管体と、流路の開閉を制御する開閉弁と、開閉弁を制御する開閉弁制御装置と、開閉弁の前段に配置され、管体内の液体に圧力を付与する圧力付与装置と、開閉弁の後段に配置され、液体を噴射する噴出口と、を備え、開閉弁制御装置の制御により噴出口から液体を一線状に噴射する、液体噴射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を高精度で噴射する液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を気体中に噴射する場合、隣接した小さなノズルから液体と気体を混合する形で噴出し、液体を小さい液滴にして、霧吹きの原理で噴霧している。そのため、液体の噴霧量の調節には液体の噴出流量を可変バルブで調整している。しかし、この方法では、流量の調整は、難しく、高精度な制御は困難であった。特に、プラズマ発生装置のネブライザや、エンジンのシリンダ内への液体の噴出において、高精度な液体の噴出制御が困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(1)本発明は、液体を高精度で噴出する液体噴出装置を提供することにある。
(2)また、本発明は、プラズマ中に液体を高精度で噴出する液体噴出装置を提供することにある。
(3)また、本発明は、燃焼室内に液体を高精度で噴出する液体噴出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)本発明は、液体の流路を形成する管体と、流路の開閉を制御する開閉弁と、開閉弁を制御する開閉弁制御装置と、開閉弁の前段に配置され、管体内の液体に圧力を付与する圧力付与装置と、開閉弁の後段に配置され、液体を噴射する噴出口と、を備え、開閉弁制御装置の制御により噴出口から液体を一線状に噴射する、液体噴射装置にある。
(2)また、本発明は、液体の流路を形成する管体と、流路の開閉を制御する開閉弁と、開閉弁を制御する開閉弁制御装置と、開閉弁の前段に配置され、管体内の液体に圧力を付与する圧力付与装置と、開閉弁の後段に配置され、液体を噴射する噴出口と、液体の噴出口付近に気体を噴出する気体噴出装置と、を備え、開閉弁制御装置と気体噴出装置により噴出口から液体を噴霧状態にする、液体噴霧装置にある。
(3)また、本発明は、液体の流路を形成する管体と、流路の開閉を制御する開閉弁と、開閉弁を制御する開閉弁制御装置と、開閉弁の前段に配置され、管体内の液体に圧力を付与する圧力付与装置と、開閉弁の後段に配置され、液体を噴射する噴出口と、プラズマを内部に発生するプラズマ発生室と、を備え、開閉弁制御装置の制御により噴出口から液体を一線状にプラズマ中に噴射する、プラズマ発生装置にある。
(4)また、本発明は、液体の流路を形成する管体と、流路の開閉を制御する開閉弁と、開閉弁を制御する開閉弁制御装置と、開閉弁の前段に配置され、管体内の液体に圧力を付与する圧力付与装置と、開閉弁の後段に配置され、液体を噴射する噴出口と、燃焼室と、を備え、開閉弁制御装置の制御により噴出口から液体を一線状に燃焼室内に噴射する、内燃機関にある。
【発明の効果】
【0005】
(1)本発明は、液体を高精度で噴出する液体噴出装置を提供することができる。
(2)また、本発明は、プラズマ中に液体を高精度で噴出する液体噴出装置を提供することができる。
(3)また、本発明は、燃焼室内に液体を高精度で噴出する液体噴出装置を提供することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(液体噴射装置)
液体噴射装置は、液体に圧力を付与し、開閉弁の制御により線状に液体を噴出するものである。液体噴射装置は、液体を噴出口から一線状に噴出する。液体噴射装置は、例えば、管体内の液体に圧力を付与し、管体に開閉弁を設け、開閉弁を開閉制御若しくは変調して、液体を噴出するもので、その噴出する液体の量を精密に制御することができる。なお、一線状に噴出するとは、液体が一本の線状になるように連続して噴出し、又は、液体が一本の点線状や破線状になるように間欠的に液滴として噴出する。また、このような噴出口が複数ある場合、噴出口毎に液体を一線状に噴出することができる。
【0007】
液体噴射装置は、液体を飛ばす方向と液量と噴出タイミングを正確に決定できるので、様々な分野に適用できる。例えば、液体噴射装置は、プラズマ発生装置に使用して、液体をプラズマ中の所定の位置に所定の液量で所定のタイミングで輸送し、その微量元素分析、PCB、フロンなどの物質の分解処理、CVDなどのプラズマプロセッシング処理などに使用することができる。また、液体噴射装置は、ガソリンエンジンやジーゼルエンジンなど内燃機関の燃焼室内の所定の位置に、所定の液体を所定量、所定の時間に供給できるので、内燃機関の燃焼効率を高め、又は、排ガス処理を効率よく行うことができる。
【0008】
液体噴射装置10は、従来よりも流路(噴出部分の口径)を遥かに細くして(例えば1mmであったものを10μmとして)、その分、液体に高圧をかけて高速で噴出するようにし、それを開閉弁で超高速に制御している。従来装置のままで流路を開閉しても液体は噴出せずに、流れ出すだけであり、又は、太いままで高圧をかければ、液体が大量に排出してしまうことになる。
【0009】
図1(A)は、液体噴射装置10の例を示しており、液体の流路を形成する管体14と、流路の開閉を制御する開閉弁16と、開閉弁16を制御する開閉弁制御装置18と、開閉弁16の前段に配置され、管体14内の液体に圧力を付与するポンプなどの圧力付与装置12と、開閉弁16の後段に配置され、液体を噴射するノズルヘッド22、ノズル24、噴出口26などを備えている。管体14は、内部の液体に圧力をかけられ、内部に液体の流路を有し、液体を通過できる管である。開閉弁16は、管体14の液体の流路を開閉する弁であり、特に、応答性のよい電磁バルブ、ピエゾバルブなどを利用できる。開閉弁16は、デジタル的に又はアナログ的に変調により開閉制御される。
【0010】
液体噴射装置10は、開閉弁16の前段の管体14内の液体に圧力を付与し、開閉弁16を開閉制御することにより、ノズル24の噴出口26から液滴28を一滴づつ間欠的に、又は、液体をライン上に連続的に放出することができる。液体の圧力を高めて放出する場合、液滴28は、ほぼ一直線上に載り、又は、線状の液体がほぼ一直線となる。液体噴射装置10は、ノズル24の向きにより、液体を飛ばす方向を正確に特定でき、更に、開閉弁16の開閉を精密に行うと、放出する液量を正確に決めることができる。
【0011】
図1(B)は、液体噴射装置10を液体噴霧装置として使用する例を示している。その場合、図1(A)のノズル24の噴出口26の横もしくは周囲に気体吐出口34を有する気体噴出装置32を配置し、気体吐出口34からガスを噴出し、ガスを線状の液体30又は液滴28に衝突させる。このような構成を取ることにより、従来の霧吹き器のように、液体を霧状に噴霧することもできる。液体噴射装置10は、噴射される液体量、液体の変化量、液体量の時間経過のパターン、液体の噴射タイミングなどを高精度で制御できるので、噴射される霧の量や変化量を高精度に制御することも可能となる。さらに、気体噴出装置32によりガスの流量も制御することで、一線上への液体の噴出と拡散した液体の噴霧を切り替えて使用することも可能である。また、気体噴出装置32によりガスの流速を制御することにより、液体の噴霧状態を変化させることも可能である。
【0012】
(噴射液体のモジュレーション)
液体噴射装置10は、開閉弁16を高速で開閉することで、液体の高精度噴出を実現することができる。開閉弁16の開閉を電気的なパルスで制御できるため、開閉の基本周波数を例えば10kHzにすれば、100us単位での噴出量制御が可能となる。一回の開タイミングで噴出される液体の量は、開時間、ノズル径と液体へ印加する圧力で制御できる。このため、液体噴射装置10は、液体の噴出量を電気的、デジタル的に高精度に制御できる。要するに、超高速でチョッピングすれば、見た目には高精度の制御になるイメージである。多くの液体を噴出したい場合には、高速で開閉する開閉弁16を開いているタイミングを多くすればよい。
【0013】
図2には、開閉弁制御装置18の制御信号の例を示している。開閉弁16の連続的に開いている開時間を、基準の信号(図2(A))より長くしてもよいし(図2(B))、時間あたりの開タイミングの数を増やしてもよい(図2(C))。噴出量を小さくしたい場合には、開時間を短くしても良いし、時間あたりの開の数を減らしてもよい。また、開タイミングの密度を変化させる事で、噴出量のFM変調が可能となる(図2(D))。また、開閉弁16の開度を調節する機構を付加する、もしくは、液体に印加する圧力を制御する、もしくはノズルの径を可変にできれば、噴出量のAM変調が可能となる(図2(E))。さらに、これらを組み合わせれば、任意のタイミングで任意の量の液体を高精度で噴出させる事が可能となる(図2(F))。図2(F)は、アナログ信号を示しているが、サンプリングされたデジタル信号でもよい。
【0014】
(液滴の噴出例)
図3は、液滴(ドロプレット)28がノズル24から放出された写真を示している。図3(A)は、液滴28が飛んでいる状態を示している。液滴の噴出条件は、噴出口26の内径(直径)が250μmであり、噴出圧力が0.15MPaであり、噴出時間が0.15msである。液滴28は、噴出口26から一直線上、10mm強の位置にある。図3(B)は、図3(A)の状態をスローシャッタースピードで撮った写真である。液滴28が、一直線上を飛んだ軌跡を示している。
【0015】
図4は、複数のノズル24a、24b、24cを備えた液体噴射装置10を示している。各ノズル24は、各々開閉弁16で開閉制御される。開閉弁16は、開閉弁制御装置18により制御線20a、20b、20cで別々に制御される。ノズル24aからは、液滴28が一点線状に放出されている。ノズル24bからは、液滴28が一点破線状に放出されている。ノズル24cからは、液体が一実線状に放出されている。複数のノズル24の位置や向きを設定することにより、必要な個所に液体を供給することができる。また、複数のノズル24の開閉弁16を別々に制御することにより、必要量の液体を必要な個所に供給することができる。また、複数のノズル24に供給する液体の種類を変えることにより、必要な個所に必要な液体を必要量、必要なタイミングで供給することができる。
【0016】
図5は、液体に印加する圧力(Back pressure)と噴射した液滴28の体積(Droplet volume)の関係を示している。図5(A)は、内径(直径)が100μmφのノズルを使用し、開閉弁16の開時間(開いている時間)が0.5ms(小さな正方形で示す曲線)、1.0ms(大きな正方形で示す曲線)、1.5ms(三角形で示す曲線)の3種類をパラメータとしたグラフである。図5(B)は、内径(直径)が250μmφのノズルを使用し、開閉弁16の開時間が0.5ms(小さな正方形で示す曲線)、1.0ms(大きな正方形で示す曲線)、1.5ms(三角形で示す曲線)の3種類をパラメータとしたグラフである。なお、図5の横軸の液圧は、大気圧に更に加わる圧力を示している。
【0017】
図5(A)の場合、いずれのパラメータの開時間でも、圧力が0.02MPa付近で、数10mLの体積の液滴28が得られる。圧力が増すに従って、液滴の体積が大きくなり、0.15MPa付近では、約80nL(0.5ms開時間)、約120nL(1.0ms開時間)、約140nL(1.5ms開時間)となる。最小の液滴の体積は、ほぼ19nLである。このように、液滴の体積は、液体に印加する圧力、開閉弁16の開時間、及びノズル24の内径で制御することができる。図5(B)の場合、ノズルの内径が大きく、液滴28が発生する液圧が高く、液滴28は0.05MPa〜0.10MPaの間で発生する。初期の液滴の体積は、図5(A)の場合に比して大きい。0.15MPa付近では、約80nL(0.5ms開時間)、約140nL(1.0ms開時間)、約200nL(1.5ms開時間)となる。
【0018】
図6は、液体に加える圧力(Back pressure)と、液滴28の速度(Droplet velocity)の関係を示すグラフである。このグラフは、開閉弁16の開いている時間が0.5ms(小さな正方形で示す曲線)、1.0ms(大きな正方形で示す曲線)、1.5ms(三角形で示す曲線)の3種類をパラメータで示されている。図6の液体噴射装置10は、内径が250μmφのノズル24を使用している。液体の圧力が0.05MPa〜0.10MPaまでは、液滴28が放出されないが、それを超えると液滴28の速度が上昇し、0.15MPaでは、1.5m/s(開時間0.5ms)、2.0m/s(開時間1.0ms)、3.0m/s(開時間1.5ms)となる。開閉弁16の開時間が長いと、液滴28の速度も大きくなり、液滴28の速度を色々と制御できることが知られる。
【0019】
(プラズマ発生装置)
図7は、液体噴射装置10を用いたプラズマ発生装置40を示している。プラズマ発生装置40は、プラズマ44を発生するプラズマ発生室42を備えている。プラズマ発生室42の周囲に配置されたコイル52により、プラズマガス46をプラズマ状態に形成する。プラズマ発生室42は、冷却ガス48により冷却される。プラズマ発生室42には、配管を介して、プラズマガス46、又は、サポートガス50が導入される。液体噴射装置10はネブライザとして作用し、プラズマ中に液体の試料が導入される。液体噴射装置10は、微量な試料を噴射することができ、また、プラズマの所定の個所に噴出できるので、僅かな試料でも、分析や検査を行うことができる。
【0020】
(内燃機関)
図8は、液体噴射装置10を用いた内燃機関60を示している。内燃機関60は、例えば、シリンダなどの燃焼室62、ピストン64、吸気弁66、排気弁68、点火プラグ70などを備えている。燃焼室62には、ノズル24から液体を供給できる。液体は、ガソリンや重油などの液体燃料、燃焼効率を高める液体、有害なガスの発生を抑える液体などがある。液体噴射装置10は、燃焼室62の内部の必要な個所に必要な量の液体を必要なタイミングで導入できるので、内燃機関60の効率や排気ガス処理などを効率よく行うことができる。
【0021】
以上のように、本発明は、微量な液体でも、所定位置に所定量を所定のタイミングで送ることができるので、上記実施の形態以外にも、様々な分野に応用することができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】液体噴射装置の説明図
【図2】開閉弁制御装置の制御信号の図
【図3】ノズルから噴出した液滴の写真の図
【図4】複数のノズルを備えた液体噴射装置の説明図
【図5】開閉弁の開時間をパラメータとした、液圧と液滴の体積の関係図
【図6】開閉弁の開時間をパラメータとした、液圧と液滴の速度の関係図
【図7】液体噴射装置を備えたプラズマ発生装置の説明図
【図8】液体噴射装置を備えた内燃機関の説明図
【符号の説明】
【0023】
10・・・液体噴射装置
12・・・圧力付与装置
14・・・管体
16・・・開閉弁
18・・・開閉弁制御装置
20・・・制御線
22・・・ノズルヘッド
24・・・ノズル
26・・・噴出口
28・・・液滴
30・・・線状の液体
32・・・気体噴出装置
34・・・気体吐出口
40・・・プラズマ発生装置
42・・・プラズマ発生室
44・・・プラズマ
46・・・プラズマガス
48・・・冷却ガス
50・・・サポートガス
52・・・コイル
60・・・内燃機関
62・・・燃焼室
64・・・ピストン
66・・・吸気弁
68・・・排気弁
70・・・点火プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流路を形成する管体と、
流路の開閉を制御する開閉弁と、
開閉弁を制御する開閉弁制御装置と、
開閉弁の前段に配置され、管体内の液体に圧力を付与する圧力付与装置と、
開閉弁の後段に配置され、液体を噴射する噴出口と、を備え、
開閉弁制御装置の制御により噴出口から液体を一線状に噴射する、液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
開閉弁制御装置の制御により噴出口から液体を一線状に連続的に又は間欠的に噴射する、液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
噴出口は、複数設けられ、
各噴出口は、液体を一線状に噴射する、液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
液体の噴出口付近に気体を噴出する気体噴出装置を備え、
液体を噴霧状態にする、液体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射装置において、
気体噴出装置は、気体の噴出量を制御することにより、液体の一線状の噴射又は液体の噴霧状の噴射を切り替える、液体噴射装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
プラズマを内部に発生するプラズマ発生室を備え、
開閉弁制御装置の制御により噴出口から液体を一線状にプラズマ中に噴射する、液体噴射装置。
【請求項7】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
燃焼室を備え、
開閉弁制御装置の制御により噴出口から液体を一線状に燃焼室内に噴射する、液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−135242(P2008−135242A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319477(P2006−319477)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】