説明

液体噴射装置

【課題】液体噴射ヘッドのノズルから液体が染み出すことを抑制しつつ、液体収容体から流出される液体を撹拌することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンターは、インクカートリッジ22から流出されるインクを再びインクカートリッジ22へ流入させるための循環流路20と、インクを循環流路20に沿って流動させる循環ポンプ23と、循環流路20の一部に設けられたベンチュリ部24と、ベンチュリ部24から分岐された分岐流路26と、分岐流路26に接続されるとともに、該分岐流路26を介して供給されるインクをノズル16から噴射する記録ヘッドユニット13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体噴射ヘッドから液体を噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」ともいう。)が広く知られている(例えば、特許文献1)。このプリンターは、インク(液体)を収容するインクカートリッジ(液体収容体)から記録ヘッド(液体噴射ヘッド)にインクを供給し、そのインクを記録ヘッドのノズルから記録用紙に噴射することにより印刷を行うようになっている。
【0003】
こうしたプリンターには、溶剤に溶けない色成分あるいは溶剤に溶けにくい色成分を用いたインクを使用したものがある。例えば、顔料系インクは、水や石油系溶剤などの溶剤中に色成分である顔料の微細粒子が分散した状態になっているものであるため、顔料が沈降し易い。このようにインクの色成分が沈降すると、インクに濃淡の偏りが生じてしまって均一濃度のインクを記録ヘッドに供給することができなくなるため、インクの濃い部分が記録ヘッドのノズルに詰まって該ノズルからインクが噴射されにくくなったり、印刷物に色むらが生じたりするおそれがある。
【0004】
また、上述したプリンターの中には、インクタンク(液体収容体)と記録ヘッド(液体噴射ヘッド)との間でインクを循環させることが可能なものもある(例えば、特許文献2)。すなわち、この特許文献2のプリンターは、記録ヘッドとインクタンクとが各管路によって接続された構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−142405号公報
【特許文献2】特開平6−183029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載のプリンターにおいて、インクタンク内、記録ヘッド内、カートリッジ内や各管路内のインクの色成分の沈降を解消すべく、インクタンクと記録ヘッドとの間でインクを循環させることで該インクを撹拌する場合には、記録ヘッドにとってはインクの流量が多くなりすぎて該記録ヘッド内が加圧状態になってしまう。この結果、記録ヘッドの各ノズルからインクが染み出すおそれがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、液体噴射ヘッドのノズルから液体が染み出すことを抑制しつつ、液体収容体から流出される液体を撹拌することが可能な液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体を収容する液体収容体から流出される前記液体を再び前記液体収容体へ流入させるための循環流路と、前記液体を前記循環流路に沿って流動させる液体流動手段と、前記循環流路の一部に設けられたベンチュリ部と、前記ベンチュリ部から分岐された分岐流路と、前記分岐流路に接続されるとともに、該分岐流路を介して供給される前記液体をノズルから噴射する液体噴射ヘッドとを備えた。
【0009】
この発明によれば、液体流動手段によって液体収容体から流出される液体を循環流路に沿って流動(循環)させることで、該液体が撹拌される。このとき、ベンチュリ部では、流路断面積が循環流路における他の部位よりも小さくなっているため、液体の流れが循環流路における他の部位よりも速くなる。このため、ベルヌーイの定理によりベンチュリ部の圧力が循環流路における他の部位よりも低くなるので、分岐流路から液体噴射ヘッドまでの部分には効率的に負圧が発生する。この結果、液体噴射ヘッドのノズルから液体が染み出すことが抑制される。よって、液体噴射ヘッドのノズルから液体が染み出すことを抑制しつつ、液体収容体から流出される液体を撹拌することが可能となる。
【0010】
本発明の液体噴射装置において、前記循環流路における前記液体収容体よりも上流側であって前記ベンチュリ部よりも下流側の位置には、該循環流路を開閉可能な循環開閉弁が設けられている。
【0011】
この発明によれば、循環開閉弁を閉弁することで、液体噴射ヘッドに対して液体が加圧供給されるので、ノズルから液体を強制的に排出するクリーニングを好適に行うことが可能となる。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、前記分岐流路における前記液体噴射ヘッドよりも上流側の位置には、該分岐流路を開閉可能な分岐上流側開閉弁が設けられている。
この発明によれば、分岐上流側開閉弁を閉弁することで、液体が液体噴射ヘッド側へ流れることなく循環流路に沿って流動されるので、該液体の撹拌を効果的に行うことが可能となる。
【0013】
本発明の液体噴射装置において、前記循環開閉弁及び前記分岐上流側開閉弁の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記循環開閉弁を開弁動作させるとともに、前記分岐上流側開閉弁を閉弁動作させる。
【0014】
この発明によれば、液体が液体噴射ヘッド側へ流れることなく循環流路に沿って流動されるので、該液体の撹拌を効果的に行うことが可能となる。
本発明の液体噴射装置において、前記循環開閉弁及び前記分岐上流側開閉弁の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記循環開閉弁を開弁動作させるとともに、前記分岐上流側開閉弁を開弁動作させる。
【0015】
この発明によれば、液体流動手段によって液体収容体から流出される液体が循環流路に沿って流動(循環)されることで、該液体が撹拌される。このとき、ベンチュリ部を流れる液体の流速が循環流路における他の部位を流れる液体の流速よりも速くなる。このため、ベルヌーイの定理によりベンチュリ部の圧力が循環流路における他の部位よりも低くなり、分岐流路から液体噴射ヘッドまでの部分には効率的に負圧が発生する。この結果、液体噴射ヘッドのノズルから液体が染み出すことが抑制される。よって、液体噴射ヘッドのノズルから液体が染み出すことを抑制しつつ、液体収容体から流出される液体を撹拌することが可能となる。
【0016】
本発明の液体噴射装置において、前記循環開閉弁及び前記分岐上流側開閉弁の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記循環開閉弁を閉弁動作させるとともに、前記分岐上流側開閉弁を開弁動作させる。
【0017】
この発明によれば、液体噴射ヘッドに対して液体が加圧供給されるので、ノズルから液体を強制的に排出するクリーニングを好適に行うことが可能となる。
本発明の液体噴射装置において、前記分岐流路の下流端は前記循環流路に接続されている。
【0018】
この発明によれば、循環流路から分岐流路へ流れ込んだ液体が液体噴射ヘッド内を流れた後に再び循環流路に流れ込むため、液体噴射ヘッド内の液体の撹拌を行うことが可能となる。
【0019】
本発明の液体噴射装置において、前記分岐流路における前記液体噴射ヘッドよりも下流側の位置には、該分岐流路を開閉可能な分岐下流側開閉弁が設けられている。
この発明によれば、分岐下流側開閉弁を閉弁することで、循環流路から分岐流路を介して液体噴射ヘッドへ流れ込んだ液体が再び循環流路に流れ込まないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態のインクジェット式プリンターの構成を示す平面模式図。
【図2】第2実施形態のインクジェット式プリンターの構成を示す平面模式図。
【図3】第3実施形態のインクジェット式プリンターの構成を示す平面模式図。
【図4】変更例のインクジェット式プリンターの構成を示す平面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター11は上流側(図1では上側)から下流側(図1では下側)に向かって記録用紙12を搬送するための搬送機構(図示略)を備えている。記録用紙12の搬送経路の真上には、該搬送経路に沿って搬送される記録用紙12に液体としてのインクを噴射するための液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドユニット13が固定状態で配置されている。
【0023】
記録ヘッドユニット13は、水平方向において記録用紙12の搬送経路と直交する方向に延びる矩形板状の支持部材14と、該支持部材14に支持された複数(本実施形態では5個)の単位記録ヘッド15とを備えている。すなわち、支持部材14には各単位記録ヘッド15が該支持部材14の長手方向に沿って千鳥状に配置された状態で支持されている。これら各単位記録ヘッド15は記録用紙12の搬送方向において隣り合う単位記録ヘッド15と部分的に重なるように配置されている。なお、各単位記録ヘッド15の下面には複数のノズル16が開口しており、該各ノズル16は記録ヘッドユニット13の長手方向に沿って配列されている。
【0024】
また、インクジェット式プリンター11は環状の循環流路20を形成する循環流路形成部材21を備えており、該循環流路形成部材21にはインクが収容された液体収容体としてのインクカートリッジ22が着脱可能に装着されるようになっている。循環流路20の途中位置には液体流動手段としての循環ポンプ23が設けられており、該循環ポンプ23を駆動することで、インクカートリッジ22内のインクが、循環流路20に流出され、該循環流路20を巡った後、再びインクカートリッジ22内に流入されるようになっている。
【0025】
すなわち、図1において、インクカートリッジ22から流出したインクは、循環流路20を時計方向に流れて再びインクカートリッジ22内に流入される。したがって、循環流路20において、循環ポンプ23はインクカートリッジ22の下流側に位置している。なお、循環ポンプ23には、例えば、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、あるいはギアポンプなどを採用することができる。
【0026】
循環流路20における循環ポンプ23の下流側であってインクカートリッジ22の上流側の位置には、該循環流路20における他の部位よりも流路径を小さくしたベンチュリ部24が形成されている。循環流路20において、ベンチュリ部24の上流側及び下流側には該ベンチュリ部24に向かって流路径を徐々に小さくなるようにしたテーパー部25がそれぞれ形成されている。
【0027】
ベンチュリ部24には該ベンチュリ部24から分岐するように分岐流路26を形成する分岐流路形成部材27の一端側が接続されており、該分岐流路形成部材27の他端側は記録ヘッドユニット13に接続されている。分岐流路26は記録ヘッドユニット13内にまで達しており、各単位記録ヘッド15は分岐流路26によって直列に連通状態で接続されている。なお、分岐流路26の流路径は、ベンチュリ部24の流路径よりも小さくなるように設定されている。
【0028】
また、各単位記録ヘッド15内には、各ノズル16からインクを噴射させるための圧電素子(図示略)が設けられている。そして、この圧電素子の駆動により、循環流路20を流れるインクカートリッジ22内のインクが、ベンチュリ部24から分岐流路26を介して各単位記録ヘッド15へと供給され、該各単位記録ヘッド15の各ノズル16から搬送経路に沿って搬送される記録用紙12に噴射されて印刷が行われるようになっている。
【0029】
また、インクジェット式プリンター11は、該インクジェット式プリンター11の稼働状態を制御する制御手段としての制御部28を備えている。制御部28は、循環ポンプ23、圧電素子(図示略)、及び搬送機構(図示略)とそれぞれ電気的に接続されており、これらの駆動を制御するようになっている。
【0030】
次に、インクジェット式プリンター11の作用について説明する。
さて、記録用紙12の印刷を行う場合には、搬送機構(図示略)を駆動して該記録用紙12を搬送経路に沿って搬送しながら圧電素子(図示略)を駆動する。すると、インクが各単位記録ヘッド15の各ノズル16から記録用紙12に噴射されて印刷が行われる。このとき、循環ポンプ23を駆動すると、インクが循環流路20に沿って流動することで、インクカートリッジ22内及び循環流路20のインクが撹拌されて該インク中の色成分の沈降が解消される。
【0031】
さらにこのとき、ベンチュリ部24では、流路径が循環流路20における他の部位よりも小さくなっているため、インクの流れが循環流路20における他の部位よりも速くなる。このため、ベルヌーイの定理によりベンチュリ部24の圧力が循環流路20における他の部位よりも低くなるので、分岐流路26及び各単位記録ヘッド15内には負圧が発生する。この場合、ベンチュリ部24の形状(流路径など)や循環ポンプ23の駆動速度は、分岐流路26及び各単位記録ヘッド15内に発生する負圧が圧電素子(図示略)の駆動による各単位記録ヘッド15の各ノズル16からのインクの噴射を妨げない程度の大きさとなるように、予め設定される。
【0032】
そして、特に各単位記録ヘッド15内に発生する負圧により、各単位記録ヘッド15の各ノズル16内のインクメニスカスが安定するので、該各ノズル16からのインクの噴射状態が安定して記録用紙12の印刷品質が維持され、印刷休止時にインクを循環流路20に沿って循環させても、各ノズル16からインクが染み出すことが抑制される。
【0033】
以上、詳述した第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)循環ポンプ23を駆動してインクカートリッジ22から流出されるインクを循環流路20に沿って循環させることで、該インクを撹拌することができるので、該インクの色成分の沈降を解消することができる。また、インクの循環時において、ベンチュリ部24では、流路径が循環流路20における他の部位よりも小さくなっているため、インクの流れが循環流路20における他の部位よりも速くなる。このため、ベルヌーイの定理によりベンチュリ部24の圧力が循環流路20における他の部位よりも低くなるので、分岐流路26及び各単位記録ヘッド15内に負圧を効率的に発生させることができる。そして、この負圧により、各単位記録ヘッド15の各ノズル16内のインクメニスカスを安定させることができ、各単位記録ヘッド15の各ノズル16からインクが染み出すことを抑制することができる。したがって、各単位記録ヘッド15の各ノズル16からインクが染み出すことを抑制しつつ、インクカートリッジ22から流出されるインクを撹拌して該インクの色成分の沈降を解消することができる。
【0034】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第2実施形態は、図2に示すように、上記第1実施形態において、循環流路20におけるインクカートリッジ22よりも上流側であってベンチュリ部24よりも下流側の位置に該循環流路20を開閉可能な循環開閉弁29を設けるとともに、分岐流路26における記録ヘッドユニット13よりも上流側の位置に該分岐流路26を開閉可能な分岐上流側開閉弁30を設けたものである。そして、制御部28は、循環開閉弁29及び分岐上流側開閉弁30とそれぞれ電気的に接続されており、これらの開閉動作をそれぞれ制御するようになっている。
【0035】
次に、インクジェット式プリンター11の作用について説明する。
さて、循環開閉弁29を開弁するとともに分岐上流側開閉弁30を閉弁した状態で循環ポンプ23を駆動すると、インクカートリッジ22内のインクは、記録ヘッドユニット13へは流れずに、循環流路20に沿って循環し続ける。これにより、インクカートリッジ22内及び循環流路20のインクは、効果的に撹拌され、色成分の沈降が解消される。
【0036】
また、循環開閉弁29を閉弁するとともに分岐上流側開閉弁30を開弁した状態で循環ポンプ23を駆動すると、インクカートリッジ22内のインクが各単位記録ヘッド15へそれぞれ加圧状態で送られる。これにより、各単位記録ヘッド15の各ノズル16から増粘したインクや気泡等が強制的に排出されるクリーニングを行うことができる。この場合、各単位記録ヘッド15の各ノズル16から排出される増粘したインクや気泡等は、キャップ(図示略)により受容される。
【0037】
なお、循環開閉弁29及び分岐上流側開閉弁30の双方を開弁した状態で循環ポンプ23を駆動した場合の作用効果は、上記第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
以上、詳述した第2実施形態によれば、上記(1)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0038】
(2)循環開閉弁29を閉弁するとともに分岐上流側開閉弁30を開弁した状態で循環ポンプ23を駆動することで、インクカートリッジ22内のインクを各単位記録ヘッド15に対してそれぞれ加圧供給することができる。このため、各単位記録ヘッド15の各ノズル16から増粘したインクや気泡等を強制的に排出するクリーニングを好適に行うことができる。
【0039】
(3)循環開閉弁29を開弁するとともに分岐上流側開閉弁30を閉弁した状態で循環ポンプ23を駆動することで、インクカートリッジ22内のインクを、記録ヘッドユニット13へ流すことなく循環流路20に沿って循環し続けさせることができる。このため、インクカートリッジ22内及び循環流路20のインクを効果的に撹拌することができ、該インクの色成分の沈降を解消することができる。
【0040】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態を上記第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第3実施形態は、図3に示すように、上記第2実施形態において、記録ヘッドユニット13における分岐流路26を下流側に延長し、該分岐流路26の下流端を循環流路20におけるインクカートリッジ22よりも上流側であって循環開閉弁29よりも下流側に位置する合流点Gで該循環流路20に合流させたものである。すなわち、この第3実施形態は、上記第2実施形態において、記録ヘッドユニット13における分岐流路26の下流端と合流点Gとを分岐流路形成部材27を介して連通するように接続したものである。
【0041】
次に、インクジェット式プリンター11の作用について説明する。
さて、循環開閉弁29を閉弁するとともに分岐上流側開閉弁30を開弁した状態で循環ポンプ23を駆動すると、循環流路20のベンチュリ部24から分岐流路26へ流れたインクは、各単位記録ヘッド15内を順次流れた後、合流点Gに流れ込む。すなわち、インクカートリッジ22から循環流路20に流出したインクは、ベンチュリ部24、各単位記録ヘッド15、合流点Gを順に流れて再びインクカートリッジ22へと流入する。したがって、各単位記録ヘッド15内のインクが循環されるので、該各単位記録ヘッド15内のインクの色成分の沈降が解消される。
【0042】
また、循環開閉弁29及び分岐上流側開閉弁30の双方を開弁した状態で循環ポンプ23を駆動すると、ベンチュリ部24から循環流路20を経由して合流点Gに到達するインクの流れと、ベンチュリ部24から分岐流路26を経由して合流点Gに到達するインクの流れとの2つの流れを作ることができる。このため、インクカートリッジ22内、循環流路20、分岐流路26、及び各単位記録ヘッド15内のインクが撹拌されるので、インク全体の色成分の沈降が解消される。
【0043】
なお、循環開閉弁29を開弁するとともに分岐上流側開閉弁30を閉弁した状態で循環ポンプ23を駆動した場合の作用効果は、上記第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
以上、詳述した第3実施形態によれば、上記(1)〜(3)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(4)循環開閉弁29を閉弁するとともに分岐上流側開閉弁30を開弁した状態で循環ポンプ23を駆動することで、インクカートリッジ22から循環流路20に流出したインクを、ベンチュリ部24、各単位記録ヘッド15、合流点Gを順に経由して再びインクカートリッジ22に流入させることができる。このため、各単位記録ヘッド15内のインクを循環させることができるので、該各単位記録ヘッド15内のインクの色成分の沈降を解消することができる。
【0045】
(5)循環開閉弁29及び分岐上流側開閉弁30の双方を開弁した状態で循環ポンプ23を駆動することで、ベンチュリ部24から循環流路20を経由して合流点Gに到達するインクの流れと、ベンチュリ部24から分岐流路26を経由して合流点Gに到達するインクの流れとの2つの流れを作ることができる。このため、インクカートリッジ22内、循環流路20、分岐流路26、及び各単位記録ヘッド15内の全てのインクを撹拌することができるので、インク全体の色成分の沈降を解消することができる。
(変更例)
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
【0046】
・図4に示すように、第3実施形態において、分岐流路26における記録ヘッドユニット13よりも下流側の位置に該分岐流路26を開閉可能な分岐下流側開閉弁31を設けてもよい。この場合、制御部28は、分岐下流側開閉弁31と電気的に接続され、該分岐下流側開閉弁31の開閉動作を制御する。このようにすれば、分岐下流側開閉弁31を閉弁することで第2実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、分岐下流側開閉弁31を開弁することで第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
・第2実施形態において、分岐上流側開閉弁30を省略してもよい。このようにすれば、上記(2)と同様の作用効果を得ることができる。
・各単位記録ヘッド15の数は5個以外の任意の数に変更してもよい。
【0048】
・記録ヘッドユニット13の数は2つ以上であってもよい。
・上記各実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター、13…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドユニット、16…ノズル、20…循環流路、22…液体収容体としてのインクカートリッジ、23…液体流動手段としての循環ポンプ、24…ベンチュリ部、26…分岐流路、28…制御手段としての制御部、29…循環開閉弁、30…分岐上流側開閉弁、31…分岐下流側開閉弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体収容体から流出される前記液体を再び前記液体収容体へ流入させるための循環流路と、
前記液体を前記循環流路に沿って流動させる液体流動手段と、
前記循環流路の一部に設けられたベンチュリ部と、
前記ベンチュリ部から分岐された分岐流路と、
前記分岐流路に接続されるとともに、該分岐流路を介して供給される前記液体をノズルから噴射する液体噴射ヘッドと
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記循環流路における前記液体収容体よりも上流側であって前記ベンチュリ部よりも下流側の位置には、該循環流路を開閉可能な循環開閉弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記分岐流路における前記液体噴射ヘッドよりも上流側の位置には、該分岐流路を開閉可能な分岐上流側開閉弁が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記循環開閉弁及び前記分岐上流側開閉弁の開閉動作を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記循環開閉弁を開弁動作させるとともに、前記分岐上流側開閉弁を閉弁動作させることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記循環開閉弁及び前記分岐上流側開閉弁の開閉動作を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記循環開閉弁を開弁動作させるとともに、前記分岐上流側開閉弁を開弁動作させることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記循環開閉弁及び前記分岐上流側開閉弁の開閉動作を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記循環開閉弁を閉弁動作させるとともに、前記分岐上流側開閉弁を開弁動作させることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記分岐流路の下流端は前記循環流路に接続されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記分岐流路における前記液体噴射ヘッドよりも下流側の位置には、該分岐流路を開閉可能な分岐下流側開閉弁が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−126219(P2011−126219A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288745(P2009−288745)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】