説明

液体噴射装置

【課題】比較的簡易な構造でラインヘッドのインクの増粘を抑制した、液体噴射装置を提供する。
【解決手段】複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズルから記録媒体に対して液体を噴射可能なラインヘッド13を備えた液体噴射装置である。記録媒体11を搬送する搬送部と、記録媒体11の搬送方向と交差する幅方向へ移動可能に設けられ、記録媒体11の幅方向への移動を規制する規制面を有する規制部材50と、幅方向において規制部材50よりも外側に設けられ、規制部材50の移動に伴って伸縮する保湿シート52と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク滴をインクジェットヘッドのノズルから記録紙(媒体)に対して噴射する液体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」と記す。)が広く知られている。また、このようなプリンターとしては、記録紙の搬送方向と交差する幅方向全域に渡って記録ヘッドが複数個配列された構成のものや、幅方向全域に渡って長く延びた長尺状の記録ヘッド(ラインヘッド)を備えるラインヘッドプリンターが知られている。
【0003】
さらに、このようなラインヘッドプリンターでは、記録紙のサイズ(幅)に応じて移動可能に構成された可動ガイド部を備え、これによって記録紙のサイズが変わっても、そのサイズに対応して記録紙の位置決めを行うことができるようにした構成のものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、例えば前記のラインヘッド(長尺状の記録ヘッド)を備えるラインヘッドプリンターでは、通常はラインヘッドが固定式である。したがって、最大サイズの記録紙に印刷する場合には、整列配置されたノズルの全てを使用する印刷が可能であるものの、最大サイズよりも幅の狭い記録紙に印刷する場合には、紙幅によって決まる最大印刷可能範囲よりも外側に位置するノズルからは、インクが全く噴射されなくなる。例えば、記録紙がラベルである場合には、ラインヘッドより狭い幅のラベルに対して長時間印刷を行うため、ラインヘッドの一方又は両方の側端部に位置するノズルからは、長時間インクの吐出(噴射)がなされないことになる。
【0005】
すると、長時間インクの吐出(噴射)がなされないノズルでは、ノズル内のインクの溶剤が蒸発することで増粘し、さらにこのような増粘が進むことで目詰まりを起こしてしまう。このように目詰まりが起こると、その後、幅の広い記録紙に対してインクを吐出した際、吐出不良を引き起こしてしまう。そこで、従来では例えばラインヘッドに微振動を与え、インクの増粘による目詰まりを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−6545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記した長時間インクを吐出(噴射)しないノズルでは、微振動を与えただけではノズルの目詰まりが十分に抑制されず、したがって全ノズルから強制的にインクを吐出させるフラッシングを行い、増粘インクを定期的に噴射(排出)している。
しかし、このようなフラッシング動作はこの動作を行うフラッシング機構が必要となるため、装置構成が複雑になる。また、フラッシングを行う間は記録紙への印刷が停止するため、印刷効率も低下してしまう。
なお、ラインプリンター内に加湿する機構を設け、プリンター内全体を加湿することでノズル内のインクの増粘を抑制することも考えられるが、その場合にはプリンター内全体を加湿する必要上、使用する水の量が多くなり、その補給のための作業に手間がかかってしまう。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、比較的簡易な構造でラインヘッドのインクの増粘を抑制した、液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体噴射装置は、複数のノズルからなるノズル列を有し、前記ノズルから記録媒体に対して液体を噴射可能なラインヘッドを備えた液体噴射装置であって、
前記記録媒体を搬送する搬送部と、
前記記録媒体の搬送方向と交差する幅方向へ移動可能に設けられ、前記記録媒体の前記幅方向への移動を規制する規制面を有する規制部材と、
前記幅方向において前記規制部材よりも外側に設けられ、前記規制部材の移動に伴って伸縮する保湿シートと、を備えることを特徴とする。
【0010】
この液体噴射装置によれば、規制部材に、その移動に伴って伸縮する保湿シートを設けたので、例えばラインヘッドの幅より狭い幅の記録媒体に対して液体の噴射を行う場合に、規制部材を記録媒体の幅に合わせて移動させた後、この規制部材の移動に追従して移動した保湿シートに給水することで、ラインヘッドの近傍を加湿することができる。特に、ラインヘッドより狭い幅の記録媒体に対して液体噴射を行う場合にも、規制部材の移動に伴って記録媒体の外側に位置するノズルの近傍に保湿シートが移動しているので、液体の吐出を行わないノズルに対して効率的に加湿し、ノズル内の液体の増粘を抑制することができる。
【0011】
また、前記液体噴射装置において、前記保湿シートは、蛇腹状に折り畳まれたことで伸縮可能に構成されているのが好ましい。
このようにすれば、保湿シートの構成を簡易にすることができる。
【0012】
また、前記液体噴射装置において、前記規制部材および前記保湿シートは、前記搬送路の、前記ラインヘッドに対して上流側と下流側との両方に設けられているのが好ましい。
このようにすれば、保湿シートによってラインヘッドのノズルをより良好に加湿し、ノズル内の液体の増粘をより効率良く抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るプリンターの構成を示す図である。
【図2】ヘッドの内部構成を示す断面図である
【図3】(a)、(b)はガイド機構を説明するための要部斜視図である。
【図4】ガイド機構を説明するための要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせている。
【0015】
図1は本発明の液体噴射装置の一実施形態の概略構成を示す図であり、図1中符号1は液体噴射装置としてのインクジェット方式のプリンターである。このプリンター1は、幅の狭い各種ラベルや、幅が広いポスター、サインなどのディスプレイ用途などに用いられる記録紙など、種々の幅の記録媒体に対応して出力が可能であり、例えば紙、プラスチックシートなどのシート状またはラベル状の記録媒体を搬送しつつ、印刷処理を行う装置である。
【0016】
このプリンター1は、ロール状に巻回された記録紙(記録媒体)11と、一対の搬送ローラー(搬送手段)12と、ラインヘッド13と、ガイド機構17と、カッターユニット14と、バスケット15とを備えている。
記録紙11は、例えばその幅がラインヘッド13の幅より十分に狭いラベル状のもので、送出ローラー16に対してロール状に巻回された長尺状のものである。
【0017】
搬送ローラー12は、少なくとも一方がモーター(図示略)などの駆動手段に連結されており、その駆動によって送出ローラー16に巻回された記録紙11を巻き出し、ラインヘッド13に向けて搬送する。
ラインヘッド13は、一対の搬送ローラー12間に配置されたプラテン3の上方に配置されており、図2(a)の底面図に示すように多数のノズル47を一列に整列配置して、ノズル列48を形成している。
【0018】
このラインヘッド13は、図2(b)に示すようにヘッドケース18、流路ユニット19及びアクチュエータユニット20を備えている。
ヘッドケース18は、中空部を有するように箱型に形成されている。ヘッドケース18の下端面には、流路ユニット19が接合されている。ヘッドケース18の内部に形成された中空部37内には、アクチュエータユニット20が収容されている。ヘッドケース18の内部には、高さ方向を貫通してケース流路25が設けられている。
【0019】
ケース流路25の上端は、インクカートリッジ(図示せず)に接続されている。ケース流路25の下端は、流路ユニット19内の共通液体室44に連通されている。このような構成によってインクカートリッジからのインクは、ケース流路25を通って共通液体室44側に供給される。
【0020】
アクチュエータユニット20は、櫛歯状に配置された複数の圧電振動子38と、該圧電振動子38を保持する固定板39と、圧電振動子38に対して制御装置106からの駆動信号を供給するフレキシブルケーブル40とを有している。圧電振動子38は、図2(b)中において下側端部が固定板39の下端面から突出するように固定されている。固定板39のうち圧電振動子38の固定された面とは異なる面が中空部37を区画するケース内壁面に接着されている。
【0021】
流路ユニット19は、振動板41、流路基板42及びノズルプレート43を有している。振動板41、流路基板42及びノズルプレート43は、積層された状態で接着されている。流路ユニット19は、共通液体室44から液体供給口45、圧力室46を通り、ノズルプレート43に形成されたノズル47に至るまでの一連の液体流路を構成している。圧力室46は、ノズル47の配列方向(ノズル列方向)に対して直交する方向が長手方向となるように形成されている。
【0022】
ノズルプレート43は、ヘッド13の噴射面(底面)13aを形成するもので、図2(a)に示したように多数のノズル47が整列配置されてなるノズル列48を有している。ノズル列48は、記録紙11の搬送方向と直交(交差)する方向、すなわち記録紙11の幅方向に沿って配置されたもので、プリンター1が印刷可能とするサイズの記録紙11の幅全域に、インクが吐出(噴射)可能となるように、ノズル47を配列している。なお、このようなノズル列48については、例えば千鳥状に二列形成配置してもよい。
【0023】
また、図1に示した一対の搬送ローラー12間は、記録紙11の搬送路を形成しており、したがってプラテン3も搬送路の一部を形成している。そして、このような搬送路には、ガイド機構17が設けられている。ガイド機構17は、本実施形態では前記搬送路において、ラインヘッド13の上流側と下流側との両方に設けられている。これらガイド機構17は、図3(a)に示すようにプラテン3上に配置されたラインヘッド13の上流側近傍と、下流側近傍とにそれぞれ配置されたもので、規制部材50と、保持部材51と、保湿シート52と、給水装置53とを備えて構成されている。すなわち、これらガイド機構17は、ラインヘッド13に干渉しない位置でよりラインヘッド13に近い位置、例えばラインヘッド13から1cm〜3cm程度離れた位置に配置されている。
【0024】
規制部材50は、本実施形態では記録紙11の幅方向、すなわち搬送方向と交差(直交)する方向の両端縁の位置を、それぞれ規制する一対の規制板50a、50aによって形成されている。規制板50aは、矩形板状のもので、その長辺方向が記録紙11の搬送方向に沿って配置され、短辺方向が上下方向となるように立てられて配置されている。このような構成のもとに規制板50aは、その内側の面(規制面)が記録紙11の端縁に当接することにより、この端縁を規制(位置決め)し、記録紙11を搬送路に沿って案内(ガイド)している。また、これら規制板50aには、その底面に後述する保持部材51のスライド溝51aに係合する係合片(図示せず)が設けられている。
【0025】
保持部材51は、ラインヘッド13の長さ、すなわちそのノズル列48の列方向の長さより長く形成された矩形板状のもので、その上面にスライド溝51aを形成し、該スライド溝51aに前記規制板50aの係合片を移動可能に係合させている。スライド溝51aは、記録紙11の搬送方向と直交(交差)する方向に延びて形成されたもので、本実施形態では互いに平行に2条形成されている。なお、スライド溝51aは、溝状でなく、スリット状であってもよい。
【0026】
このような構成によって規制板50aは、保持部材51のスライド溝51aの長さ方向に沿って、移動可能になっている。すなわち、記録紙11の幅に合わせて手動で規制板50aを移動させることにより、これら規制板50aの内面で、記録紙11の両端縁をそれぞれ規制し、その位置決めを行うことができる。なお、これら規制板50aについては、図示しないものの、一方の規制板50aを移動させることにより、他方の規制板50aもこれに連動するように構成するのが好ましい。
【0027】
例えば、ラックピニオン機構などを用いることで、一方の規制板50aを移動させると他方の規制板50aが異なる方向(反対方向)に同じ距離移動するように、構成するのが好ましい。これにより、規制板50a、50a間の中心線が常に同じ位置となり、記録紙11が異なる幅のものに変わっても、記録紙11の中心線を搬送路の中心線に一致させることができる。すなわち、搬送路の中心線を搬送路の基準線とした場合に、この基準線に記録紙11の中心線を合わせることができる。
ただし、搬送路の基準線については、記録紙11の一方の側端縁としてもよい。その場合には、規制板50a、50aをそれぞれ独立して移動させるように構成する。また、規制板50aを一対設けることなく、基準側となる端縁側のみに設けるようにしてもよい。
【0028】
さらに、規制板50aについては、その底部から対向する規制板50a側に延びる薄板(図示せず)を設け、これを保持部材51上に配置しておき、記録紙11を搬送するための搬送路を構成するプラテンとして機能させてもよい。この薄板を、ラインヘッド13の直下のプラテン13と同じ高さになるように配設しておくことにより、上流側のガイド機構17から前記プラテン13に円滑に記録紙11を搬送することができ、さらに該プラテン13から下流側のガイド機構17に円滑に記録紙11を搬送することができる。なお、薄板を設けない場合には、前記保持部材51の上面をプラテン13と同じ高さになるように構成しておくことにより、記録紙11を円滑に搬送することができる。
【0029】
また、規制板50aの外側、すなわち記録紙11を規制する側と反対の側の面には、保湿シート52が接続されている。保湿シート52は、不織布等の吸水性のシートからなるもので、その先端部が規制板50aの外面に貼設されて保持部材51上に配置されている。また、この保湿シート52は、規制板50aの移動方向に折り畳まれて蛇腹状に形成されており、これによって規制板50aの移動方向に伸縮可能になっている。すなわち、保湿シート52は、その後端部が保持部材51の外側に設けられた固定部(図示せず)に着脱可能に固定されており、これによって固定された後端部を基準位置にして、先端部側が規制板50aの移動に伴って伸縮できるようになっている。規制板50aを搬送路の中心線側(記録紙11の中心線側)に前進させることにより、図3(a)に示したように折り畳み部が開くことで伸び、規制板50aを搬送路の中心線側から後退させることにより、図3(b)に示すように折り畳み部が閉じることで縮むようになっている。
【0030】
保湿シート52の後端部側には、該保湿シート52に対して給水を行う給水装置(給水手段)53が設けられている。給水装置53は、例えば水を貯留する容器と53aと、容器53aに設けられて容器53a内の水を滴下するノズル53bとを有したもので、ノズル53bから一定の速度で保湿シート52の後端部に水を滴下するように構成されている。給水の速度としては、環境の湿度や保湿シート52の大きさによっても異なるものの、毎分1ccから10cc程度、保湿シート52に給水するようになっている。なお、給水量については、水道の蛇口のようにノズル53bの孔径を変化させることにより、調整可能になっている。
【0031】
図1に示すようにカッターユニット14は、搬送ローラー12によって搬送されてきた記録紙11を、カッター刃14aによって所定の間隔で幅方向に切断する。これにより、ラインヘッド13で印刷された連続した記録紙11を、予め設定された印刷単位毎に分離する。
バスケット15は、カッターユニット14で切断され、さらに搬送ローラー12で送り出された印刷単位の記録紙11を受け、収容するようになっている。
【0032】
このような構成のプリンター100によって記録紙11に印刷を行う際には、まず、記録紙11の幅に合わせてガイド機構17を調整する。すなわち、記録紙11を送出ローラー16に巻回させ、その先端側を搬送ローラー12、12によって形成される搬送路上にセットする。そして、図3(a)に示すように記録紙11の幅に合わせて規制板50a、50aを移動させ、その内面を記録紙11の両端面に当接させる。これにより、記録紙11の両端縁を位置決めすることができ、記録紙11を搬送路上に正しくセットすることができる。
【0033】
このようにして規制板50a、50aを移動させると、これに伴って保湿シート52が規制板50aに追従して移動する。すると、ラインヘッド13の幅より狭い幅の記録紙11に対して、その両端縁の位置に規制板50aを移動させるため、保湿シート52はその先端部側が、ラインヘッド13における、記録紙11の外側に位置するノズル47の近傍に位置するようになる。すなわち、記録紙11の外側に位置することで、インクの吐出がなされないノズル47の近傍に、保湿シート52が配置される。
【0034】
この保湿シート52には、予め給水装置53によって連続的に、または断続的に給水がなされている。したがって、この保湿シート52の後端部に供給された水は、例えば毛細管現象によって全体に拡がり、先端部側にも浸透する。よって、保湿シート52全体から水分を蒸発することで、その近傍部を加湿する。特に、先端部から蒸発した水分は、記録紙11の外側に位置することでインクを吐出しないノズル47内をも加湿するため、その増粘を効果的に抑制するようになる。なお、保湿シート52はラインヘッド13の近傍部のみを加湿するため、保湿シート52への給水量は比較的少なくてよい。したがって、稼働時間中に給水装置53に対して頻繁に水の補給を行う必要がなく、最小限の手間で加湿を行うことができる。
【0035】
また、このような幅の狭い記録紙11に対して印刷を行った後、記録紙11の種類を変え、幅が広く、例えばラインヘッド13の幅に近い記録紙11に対して印刷を行う場合には、まず、前記の例と同様にして幅の広い記録紙11をセットし、さらに図3(b)に示すように記録紙11の幅に合わせて規制板50a、50aを移動させ、その内面を記録紙11の両端面に当接させる。
【0036】
このようにセットした後、ラインヘッド13の各ノズル47からインクの吐出を行うと、先の幅の狭い記録紙11に対する印刷の際には吐出を行っていなかったラインヘッド13の端部側のノズル47からも、インクを吐出するようになる。しかし、前述したようにインクを長時間吐出しなかったノズル47も、保湿シート52による加湿によって増粘が抑制され、目詰まりが抑制されているため、先の印刷の際には吐出を行っていたノズル47と同様に、良好な吐出性が発揮される。
【0037】
このように、本実施形態のプリンター1にあっては、ラインヘッド13の近傍部に設けられたガイド機構17の規制板50a(規制部材50)に、その移動に伴って伸縮する保湿シート52を設け、該保湿シート52に給水装置53を設けたので、インクの吐出を行わないノズル47に対しても効率的に加湿し、ノズル47内のインクの増粘を抑制することができる。よって、比較的簡易な構造でインクの増粘を抑制して目詰まりを抑制し、インクの良好な吐出性を確保することができる。また、従来のフラッシング動作を不要にし、または最小限のフラッシング動作で良好な吐出性を確保することができ、これによって印刷効率を高めることができる。
【0038】
また、保湿シート52を、蛇腹状に折り畳んだことで伸縮可能に構成しているので、保湿シート52を含むガイド機構17の構成を簡易にすることができる。
また、ガイド機構17を、ラインヘッド13に対して上流側と下流側との両方に設けているので、ガイド機構17の保湿シート52によってラインヘッド13のノズル47をより良好に加湿し、ノズル47内のインクの増粘をより効率良く抑制することができる。
【0039】
図4は、本発明のプリンター(液体噴射装置)の他の実施形態を説明するための要部斜視図である。図4に示したプリンターが図3(a)に示したプリンターと異なるところは、ガイド機構の構成にある。すなわち、図4に示すように本実施形態のガイド機構60は、保湿シート61がその後端側でロール62に巻回されている。したがって、先端側が規制板50aの移動に伴って移動することにより、保湿シート61はロール62から巻き出され、あるいは巻き取られるようになっており、これによって伸縮するようになっている。ロール62には例えば巻きバネ(図示せず)が設けられており、これによって保湿シート61は、常にロール62に巻き取られる方向に付勢されている。
【0040】
また、規制板50aには、保持部材51に対してその位置が固定できるように、公知のロック機構(図示せず)が設けられている。これにより、規制板50aを記録紙11の幅に合わせて移動させた後、ロック機構によってその位置を固定することで、保湿シート61をロール62側に付勢させることにより、該保湿シート61を撓ませることなく張った状態に配置することができる。
【0041】
また、本実施形態では、一枚の保湿シート61が、ラインヘッド13の上流側のガイド機構60における規制板50aと、下流側のガイド機構60における規制板50aとの両方に接続されている。例えば、上流側の規制板50aの外面底部から下流側の規制板50aの外面底部にかけてワイヤー(図示せず)が張設されており、このワイヤーに保湿シート61の先端部が固定されていることにより、保湿シート61は隣り合う一対の規制板50a、50aの底部に取り付けられている。これにより、本実施形態では、ラインヘッド13の直下、すなわちラインヘッド13とプラテン3との間にも、保湿シート61の先端側が移動できるようになっている。
【0042】
なお、給水装置53については、本実施形態では一枚の保湿シート61に対して一つのみ配置するようにしてもよく、図4に示したように先の実施形態と同様にラインヘッド13の上流側と下流側とにそれぞれ配置するようにしてもよい。
【0043】
このような構成のガイド機構60にあっては、ラインヘッド13の直下にも保湿シート61を配置できるため、特にインクの吐出を行わないノズル47に対して、より効率的に加湿し、ノズル47内のインクの増粘を抑制することができる。
また、記録紙11の幅の外側に位置し、したがってインクの吐出を行わないノズル47については、その直下に保湿シート61が配置されるため、必要に応じて、これら吐出を行わないノズル47から保湿シート61に向けてフラッシングさせることもできる。このようにフラッシングさせることにより、ノズル47内でのインクの増粘による目詰まりを抑制することができる。また、フラッシングのための構造を簡易にすることができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、図3に示した実施形態では、ラインヘッド13の上流側と下流側の両方にガイド機構17を設けたが、いずれか一方のみに設け、プリンターの小型化を図ってもよい。
また、図3に示した実施形態においても、ガイド機構17の規制板50a(規制部材50)に、これを記録紙11の幅に合わせて移動させた後、保持部材51に対してその規制位置に固定できるように、ロック機構を設けてもよい。
また、規制部材50は、ラインヘッド13に対して一方の側のみに規制板50aを配する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…プリンター(液体噴射装置)、11…記録紙(記録媒体)、13…ラインヘッド、17…ガイド機構、47…ノズル、48…ノズル列、50…規制部材、50a…規制板、51…保持部材、52…保湿シート、53…給水装置、60…ガイド機構、61…保湿シート、62…ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルからなるノズル列を有し、前記ノズルから記録媒体に対して液体を噴射可能なラインヘッドを備えた液体噴射装置であって、
前記記録媒体を搬送する搬送部と、
前記記録媒体の搬送方向と交差する幅方向へ移動可能に設けられ、前記記録媒体の前記幅方向への移動を規制する規制面を有する規制部材と、
前記幅方向において前記規制部材よりも外側に設けられ、前記規制部材の移動に伴って伸縮する保湿シートと、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記保湿シートは、蛇腹状に折り畳まれたことで伸縮可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記規制部材および前記保湿シートは、前記搬送路の、前記ラインヘッドに対して上流側と下流側との両方に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−196817(P2012−196817A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61364(P2011−61364)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】