説明

液体噴射装置

【課題】液体の増粘を防止して、安定した吐出特性の液滴を吐出することができる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル13、ノズル13に連通する圧力発生室12及び圧電素子を有する記録ヘッドと、インクのメニスカス30を加熱により固化させてノズル13に薄膜31を形成するプラテンヒーターと、印刷データに基づいて駆動信号を圧電素子に供給する制御手段とを備え、制御手段は、プラテンヒーターに、全てのノズル13に薄膜31を形成させ、印刷データに基づいて、インクを吐出する吐出ノズルと液体を吐出しない非吐出ノズルとを特定し、吐出ノズルに形成された薄膜31を除去する振動を吐出ノズル13に連通した圧力発生室12内に与える復帰用駆動信号を圧電素子に供給し、印刷データに基づいて、復帰用駆動信号による振動で薄膜31が除去された吐出ノズル13からインクを吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体をノズルから噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置には、例えば、液体としてのインクを噴射させて紙や記録シートなどの被記録媒体(被噴射媒体)に印刷を行うインクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)を備えたインクジェット式記録装置が知られている。インクジェット式記録装置は、圧電素子や発熱素子等の圧力発生手段によりインク滴吐出のための圧力を発生させる複数の圧力発生室と、インクカートリッジから各圧力発生室にインクを供給する液体流路と、各圧力発生室に連通するノズルとを備えている。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、インクの吐出が一定期間行われないと、圧力発生室に残留しているインクの揮発成分が蒸発してノズルから外部に放出され、インクが増粘する。このようなインクの増粘により、インクの吐出不良が生じたり、インク滴の濃度にばらつきが生じたりするという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、インクジェット式記録ヘッドのノズル側を加熱し、ノズルにメニスカスを形成したインクを固化させて薄膜とするものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなインクジェット式記録装置によれば、薄膜でインクの揮発成分の蒸発を防止することができるので、インクの増粘が防止され、吐出不良などが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−148941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係るインクジェット式記録装置では、全てのノズルに形成された薄膜を、印刷時には除去しているため、実際には吐出を行わないノズルについても薄膜が除去されることになる。このため、吐出を行わないノズルについては、インクの揮発成分が蒸発し、ノズルから圧力発生室に至るまで充填されたインクが増粘してしまう。
【0007】
例えば、白色インクと非白色インクとを吐出可能に構成されたインクジェット式記録ヘッドでは、白色インクで下地としてベタ塗りを行うが、ベタ塗り後にはあまり使用されない場合がある。このような場合、非白色インクの吐出時に、白色インクを吐出するノズルから白色インクの揮発成分が蒸発し、増粘してしまう。
【0008】
なお、このような問題は、インク以外の液体を噴射する液体噴射装置においても同様に存在する。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑み、液体の増粘を防止して、安定した吐出特性の液滴を吐出することができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の態様は、被噴射媒体に液体を吐出する複数のノズル、該ノズルに連通する圧力発生室及び該圧力発生室に圧力を与える圧力発生手段を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのノズルに形成された液体のメニスカスを形成する液体を固化させてノズルに膜を形成する造膜手段と、前記被噴射媒体に吐出される液体のパターンを定義した吐出データに基づいて駆動信号を前記圧力発生手段に供給する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記造膜手段に、前記液体噴射ヘッドに含まれる複数のノズルに前記膜を形成させ、液体の吐出前に、前記吐出データに基づいて液体を吐出する吐出ノズルと液体を吐出しない非吐出ノズルとを特定し、当該吐出ノズルについて液体を噴射可能なメニスカスの状態に復帰させる復帰用駆動信号を前記圧力発生手段に供給し、前記吐出データに基づいて、前記復帰用駆動信号により前記膜が除去された前記吐出ノズルから液体を吐出させることを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、造膜手段により複数のノズルにメニスカスを形成したインクを固化させて膜とする。そして、吐出データに基づいて、吐出ノズルの膜を選択的に元の液体に復帰させ、非吐出ノズルに膜を残した状態で液体の吐出を行う。これにより、吐出時においても、選択的に膜を残すことで、非吐出ノズルに連通する圧力発生室の液体の蒸発を防ぎ、液体の増粘を防止することができる。これにより、増粘による液体の吐出不良や濃度ムラが防止された高品質な印刷を行うことができる。
【0011】
ここで、前記液体噴射ヘッドのノズル側を封止するキャップ部材を備え、前記制御手段は、前記造膜手段に前記ノズルに前記膜を形成させたのち、前記液体噴射ヘッドのノズル側を前記キャップ部材で封止することが好ましい。膜が過剰に厚くなることを防止できる。
【0012】
また、前記液体は、0.1%以上10%以下の樹脂又は糖類を含むことが好ましい。これによれば、当該液体は、ノズルにメニスカスを形成し、造膜手段により固化して膜となる。
【0013】
また、前記膜は、前記ノズルの直径よりも薄い厚さであることが好ましい。これによれば、復帰用駆動信号で、より確実に膜を破壊することができる。
【0014】
また、前記被噴射媒体を前記液体噴射ヘッドのノズルに対向するように支持するプラテンを備え、前記造膜手段は、前記プラテンを加熱するプラテンヒーターであることが好ましい。これによれば、プラテンヒーターを造膜手段として兼用できるので、別途に加熱手段を設けた場合に掛かるコストを削減することができる。
【0015】
また、前記液体は、紫外線硬化性樹脂を含み、前記造膜手段は、前記液体噴射ヘッドのノズル側に紫外線を照射する紫外線照射装置であることが好ましい。これによれば、紫外線硬化性樹脂を含む液体を用いることができる。
【0016】
また、前記液体噴射ヘッドは、前記液体として第1液体及び第2液体を吐出可能に構成され、前記制御手段は、前記被噴射媒体に前記第2液体を吐出させる前記吐出データが与えられたときには、前記第1液体が供給されるノズルを非吐出ノズルとすることが好ましい。これによれば、酸化チタンなどを含んだ高価な白色インクの使用量を抑え、ランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【図3】一実施形態に係る記録装置のブロック図である。
【図4】一実施形態に係る制御部の動作のフローを示す図である。
【図5】一実施形態に係る記録ヘッドの要部断面図である。
【図6】一実施形態に係る記録ヘッドの要部平面図である。
【図7】一実施形態に係る駆動波形を示す図である。
【図8】一実施形態に係る記録ヘッドの要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〈実施形態1〉
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。以下、インクジェット式記録ヘッドは液体噴射ヘッドの一例であり、単に記録ヘッドとも言う。また、インクジェット式記録装置は液体噴射装置の一例である。
【0019】
図1は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略構成を示す斜視図である。インクジェット式記録装置Iは、記録ヘッド1を具備する。記録ヘッド1は、キャリッジ3に搭載され、キャリッジ3は装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に沿って移動可能に設けられている。
【0020】
駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0021】
プラテン8には、特に図示しないが、プラテン8を加熱するプラテンヒーターが設けられている。プラテンヒーターにより加熱されたプラテン8は、搬送された記録シートSを加熱する。記録シートSが加熱されることにより、記録シートS上のインクが強制的に乾燥される。
【0022】
また、このプラテンヒーターは、本発明に係る造膜手段としても機能する。プラテンヒーターは、プラテン8を加熱し、このプラテン8に加えられた熱で記録ヘッド1のノズル13(図2参照)側を加熱することができる。詳細は後述するが、造膜手段として機能するプラテンヒーターにより、ノズルにメニスカスを形成するインクは固化して膜となる。
【0023】
また、記録ヘッド1には、装置本体4に固定されてインクを貯留する液体貯留部100がフレキシブルチューブ等の供給管101を介して接続されている。また、供給管101の途中には、供給ポンプ102が取り付けられており、液体貯留部100からのインクは、供給ポンプ102の圧力によって各記録ヘッド1に供給される。なお、液体貯留部100は、記録ヘッド1よりも鉛直方向下に配置されており、水頭差によって液体貯留部100から記録ヘッド1にインクを供給することができない。このため、供給ポンプ102によって液体貯留部100のインクを記録ヘッド1に供給している。
【0024】
キャリッジ3がキャリッジ軸5に沿う方向(主走査方向)に移動して、記録ヘッド1にインクを吐出させて、記録シートSにインクの印刷(液体の塗布)を行う領域を印刷領域(塗布領域)とし、記録ヘッド1にインクを吐出させずに、インクの印刷を行わない領域を非印刷領域(非塗布領域)とする。
【0025】
インクジェット式記録装置Iの非印刷領域には、記録ヘッド1のノズル13から流路内のインクや気泡等を吸引する吸引手段110が設けられている。
【0026】
吸引手段110は、記録ヘッド1のノズル13を覆うキャップ部材114と、キャップ部材114にチューブ112を介して接続された例えば真空ポンプ等の吸引装置113とを具備する。
【0027】
このような構成の吸引手段110は、キャップ部材114を記録ヘッド1の吐出面に当接させて、吸引装置113に吸引動作を行わせることでキャップ部材114の内部を負圧として、ノズル13から流路内のインクを、流路内に滞留した気泡と共に吸引してクリーニングを行う。また、印刷休止中には、キャップ部材114によってノズル13を封止することによりノズル13の乾燥を抑制するようにしてもよい。
【0028】
また、詳細は後述するが、インクジェット式記録装置Iには、インクの吐出や記録シートSの搬送などの動作を制御するプリンターコントローラー111が設けられている。
【0029】
図2は、本実施形態に係る記録ヘッドを示す断面図である。記録ヘッド1は、縦振動型の圧電素子が圧力発生手段として設けられたものであり、流路基板11には、複数の圧力発生室12が並設され、流路基板11の両側は、各圧力発生室12に対応してノズル13を有するノズルプレート14と、振動板15とにより封止されている。また、流路基板11には、各圧力発生室12にそれぞれインク供給口16を介して連通されて複数の圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド17が形成されており、マニホールド17には、液体貯留部100(図1参照)からのインクが供給される。
【0030】
振動板15の圧力発生室12とは反対側には、各圧力発生室12に対応する領域にそれぞれ圧電素子18の先端が当接されて設けられている。これらの圧電素子18は、圧電材料19と、電極形成材料20及び21とを縦に交互にサンドイッチ状に挟んで積層され、振動に寄与しない不活性領域が固定基板22に固着されている。なお、固定基板22と、振動板15、流路基板11及びノズルプレート14とは、ヘッドケース23を介して一体的に固定されている。
【0031】
ヘッドケース23には、液体貯留部100に接続された供給管101が接続される液体供給路24が設けられている。液体供給路24は、マニホールド17に連通している。液体貯留部100からのインクは、液体供給路24を介してマニホールド17に供給され、インク供給口16を介して各圧力発生室12に分配される。詳細には、電圧の印加により圧電素子18が収縮することで、インクが各圧力発生室12に供給される。すなわち、振動板15が圧電素子18と共に変形されて(図中上方向に引き上げられて)圧力発生室12の容積が広げられ、圧力発生室12内にインクが引き込まれる。そして、ノズル13に至るまで内部をインクで満たした後、記録ヘッド駆動回路からの記録信号に従い、圧電素子18の電極形成材料20及び21に印加していた電圧を解除すると、圧電素子18が伸張されて元の状態に戻る。これにより、振動板15も変位して元の状態に戻るため圧力発生室12が収縮され、内部圧力が高まりノズル13からインク滴が吐出される。すなわち、本実施形態では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として縦振動型の圧電素子18が設けられている。
【0032】
図3は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置Iの機能ブロック図である。同図に示すようにインクジェット式記録装置Iは、プリンターコントローラー111と、プリントエンジン112とから概略構成されている。
【0033】
プリンターコントローラー111は、外部インターフェース126(以下、外部I/F126という)と、各種データを一時的に記憶するRAM127と、制御プログラム等を記憶したROM115と、CPU等を含んで構成した制御部116と、クロック信号を発生する発振回路117と、記録ヘッド1に供給される駆動信号を発生する駆動信号発生回路119と、印刷データに基づいて展開されたドットパターンデータ(ビットマップデータ)等をプリントエンジン112に送信する内部インターフェース120(以下、内部I/F120という)とを備えている。このドットパターンデータは、請求項に記載の吐出データに相当する。
【0034】
プリントエンジン112は、記録ヘッド1と、紙送り機構124と、キャリッジ機構125とを含んで構成してある。紙送り機構124は、給紙ローラー及び給紙ローラーを回転させる紙送りモーターとプラテン8等から構成してあり、記録紙等の印刷記憶媒体を記録ヘッド1の記録動作に連動させて順次送り出す。即ち、この紙送り機構124は、印刷記憶媒体を副走査方向に相対移動させる。
【0035】
キャリッジ機構125は、記録ヘッド1を搭載可能なキャリッジ3と、このキャリッジ3を主走査方向に沿って走行させるキャリッジ駆動部とから構成してあり、キャリッジ3を走行させることにより記録ヘッド1を主走査方向に移動させる。なお、キャリッジ駆動部は、上述したように駆動モーター6及びタイミングベルト7等で構成されている。
【0036】
このようなプリンターコントローラー111は、印刷データに基づいて、プリントエンジン112を介して記録ヘッド1の位置などを制御するとともに、圧電素子18に駆動信号を供給して記録ヘッド1にインクを吐出させる制御を行う。
【0037】
ここで、印刷データとは、記録シートSに印刷されるインクのパターンを定義したものである。例えば、印刷データは、キャラクターコード、グラフィック関数、イメージデータ等によって構成されている。
【0038】
外部I/F126は、図示しないホストコンピューター等と制御信号や各種情報などを送受信する接続部である(例えば、USBなど)。具体的には、ホストコンピューター等から、印刷データが外部I/F126を介してプリンターコントローラー111に送信される。また、外部I/F126を通じてビジー信号(BUSY)やアクノレッジ信号(ACK)が、ホストコンピューター等に対して出力される。
【0039】
RAM127は、受信バッファー121、中間バッファー122、出力バッファー123、及び、図示しないワークメモリーとして機能する。これらのバッファーは後述する各種データの一時的な記憶に用いられる。
【0040】
ROM115には、各種データ処理を行わせるための制御プログラム(制御ルーチン)の他に、フォントデータ、グラフィック関数等を記憶させてある。
【0041】
制御部116は、外部I/F126を介して受信した印刷データを受信バッファー121に記憶させる。次に、受信バッファー121内の印刷データを読み出すと共に、この印刷データを変換して得た中間コードデータを中間バッファー122に記憶させる。次に、中間バッファー122から読み出した中間コードデータを解析し、ROM115に記憶させているフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して、中間コードデータをドットパターンデータに展開する。そして、制御部116は、必要な装飾処理を施した後に、この展開したドットパターンデータを出力バッファー123に記憶させる。ドットパターンデータとは、記録ヘッド1にインクを吐出させるタイミングを表す情報や、圧電素子18に送信する駆動信号及び印字データとから構成されている。
【0042】
そして、制御部116は、記録ヘッド1の1行分に相当するドットパターンデータが得られたならば、この1行分のドットパターンデータを、内部I/F120を通じて記録ヘッド1に出力する。また、出力バッファー123から1行分のドットパターンデータが出力されると、展開済みの中間コードデータは中間バッファー122から消去され、次の中間コードデータについての展開処理が行われる。
【0043】
一方、記録ヘッド1には、受信したドットパターンを処理する駆動回路135を備えている。駆動回路135には、駆動信号発生回路119から出力された所定の波形を有する駆動信号を選択的に圧電素子18に入力するラッチ132、レベルシフター133、スイッチ134及びシフトレジスター(SR)131等を有する。この駆動回路135は、図示しない外部配線を介して内部I/F120と接続されており、ドットパターンが送信される。また、駆動回路135は、図示しない外部配線を介して圧電素子に駆動信号を送信可能に接続されている。
【0044】
これらのシフトレジスター(SR)131、ラッチ132、レベルシフター133、スイッチ134及び圧電素子18は、それぞれ、記録ヘッド1のノズル13毎に設けられており、これらのシフトレジスター131、ラッチ132、レベルシフター133及びスイッチ134は、駆動信号発生回路119が発生した駆動信号から駆動パルスを生成する。ここで、駆動パルスとは実際に圧電素子18に印加される印加パルスのことである。
【0045】
なお、このように構成されるプリンターコントローラー111と、駆動回路135とが圧電素子18に所定の駆動信号を印加する制御手段となる。
【0046】
このような構成のプリンターコントローラー111では、制御部116は、ドットパターンデータによって規定されるタイミングで、駆動信号及び印字データを駆動回路135に送信し、記録ヘッド1の各ノズル13からインク滴を吐出させる。具体的には次のようにドットパターンによりインクが吐出される。
【0047】
最初に発振回路117からのクロック信号(CK)に同期して、ドットパターンデータを構成する印字データ(SI)が出力バッファー123からシフトレジスター131へシリアル伝送され、順次セットされる。この場合、まず、全ノズル13の印字データにおける最上位ビットのデータがシリアル伝送され、この最上位ビットのデータシリアル伝送が終了したならば、上位から2番目のビットのデータがシリアル伝送される。以下同様に、下位ビットのデータが順次シリアル伝送される。
【0048】
そして、当該ビットの印字データが全ノズル分の各シフトレジスター131にセットされたならば、制御部116は、所定のタイミングでラッチ132へラッチ信号(LAT)を出力させる。このラッチ信号により、ラッチ132は、シフトレジスター131にセットされた印字データをラッチする。このラッチ132がラッチした印字データは、電圧増幅器であるレベルシフター133に印加される。このレベルシフター133は、印字データが例えば「1」の場合に、スイッチ134が駆動可能な電圧値、例えば、数十ボルトまでこの印字データを昇圧する。そして、この昇圧された印字データは各スイッチ134に印加され、各スイッチ134は、当該印字データにより接続状態になる。
【0049】
そして、各スイッチ134には、駆動信号発生回路119が発生した駆動信号(COM)も印加されており、スイッチ134が選択的に接続状態になると、このスイッチ134に接続された圧電素子18に選択的に駆動信号が印加される。
【0050】
このように例示した記録ヘッド1では、印字データによって圧電素子18に駆動信号を印加するか否かが制御される。例えば、印字データが「1」の期間においてはラッチ信号(LAT)によりスイッチ134が接続状態となるので、駆動信号(COM)が圧電素子18に供給され、この駆動信号(COM)により圧電素子18が変位(変形)する。また、印字データが「0」の期間においてはスイッチ134が非接続状態となるので、圧電素子18への駆動信号の供給は遮断される。
【0051】
縦振動型の圧電素子18では、充電により圧電素子18が縦方向に縮んで圧力発生室12を膨張させ、放電により圧電素子18が縦方向に伸長して圧力発生室12を収縮させる。このような記録ヘッド1では、圧電素子18に対する充放電に伴って対応する圧力発生室12の容積が変化するので、圧力発生室12の圧力変動を利用してノズル13からインク滴が吐出される。
【0052】
また、プラテンヒーター103は、内部I/F120を介して制御部116と電気的に接続されている。制御部116は、内部I/F120を介して制御信号をプラテンヒーター103に送信し、プラテンヒーター103の温度を所定温度に設定する。プラテンヒーター103の温度を設定することで、プラテン8を加熱する。例えば、制御部116は、記録シートSを搬送し、記録ヘッド1にインクを吐出させているときは、プラテン8の熱で記録シートS上に着弾したインクが強制的に乾燥される程度にプラテンヒーター103を加熱する。
【0053】
さらに、詳細は後述するが、制御部116は、プラテンヒーター103を所定温度に設定することで、プラテン8に対向した記録ヘッド1のノズルプレート14側を加熱する。これにより、ノズル13にメニスカスを形成したインクが薄膜化される。
【0054】
ここで、図4〜図6を用いて、プリンターコントローラー111の動作及び記録ヘッドの圧力発生室12内のインクの状態について説明する。図4は、プリンターコントローラーの動作のフローを示す図であり、図5は、ノズル近傍を拡大した記録ヘッドの要部断面図であり、図6は、ノズルプレートの要部平面図である。
【0055】
制御部116は、例えば、印刷データに基づいて一連のインクの吐出が終了した後、プリントエンジン112を介して、プラテン8上に記録ヘッド1を配置する(図4ステップS1)。
【0056】
このとき、図5(a)に示すように、ノズル13から圧力発生室12にはインクが充填されており、ノズル13にはメニスカス30が形成されている。
【0057】
次に、制御部116は、図示しないプラテンヒーター103を加熱してプラテン8を所定温度にし、インクを薄膜化する(図4ステップS2)。図5(b)に示すように、ノズル13には、インクが薄膜化した薄膜31(請求項に記載の膜に相当する。)が形成される。図6(a)に示すように、プラテン8の熱は記録ヘッド10のノズルプレート14の全体に伝わるため、全てのノズル13に薄膜31が形成される。
【0058】
ここで、薄膜31は、インクの成分が造膜手段(本実施形態ではプラテンヒーター103)により固化したものである。膜厚は、ノズル13の開口が固化した薄膜31で閉塞される程度とすればよく、圧力発生室12内部までインクを固化させる必要はない。また、膜の粘度は、圧力発生室12のインクの粘度よりも10倍以上であることが好ましい。
【0059】
このように、ノズル13でインクが薄膜31となることで、ノズル13が薄膜31で封止される。この薄膜31によって、圧力発生室12のインクの溶媒が蒸発することが防止される。
【0060】
なお、ノズル13にメニスカスが形成された状態で、放置した場合(例えば、常温で放置した場合)、インクが乾燥して粘度が高くなり、インクが膜状になる。しかしながら、インクの乾燥は、そのまま継続し、ノズル13から圧力発生室12に至るまでインクが乾燥、固化してしまう。一方、本発明のように、造膜手段により薄膜31を形成した場合、インクの乾燥は収まり、薄膜31がそれ以上に厚くなることが抑制される。
【0061】
次に、制御部116は、印刷データが与えられて印刷を行う際には、インクを吐出する吐出ノズルと、インクを吐出しない非吐出ノズルとを特定する(図4ステップS3)。
【0062】
上述したように、記録ヘッド10では、印刷データから作製された印字データによって圧電素子18に駆動信号を印加するか否かが制御される。したがって、印刷データからは、駆動信号が印加される、又は印加されない圧電素子18を特定することができる。そして、各圧電素子18には、圧力発生室12及びノズル13がそれぞれ対応して設けられているので、全てのノズル13のうち、インクを吐出するノズル13(以下、吐出ノズル13a)と、インクを吐出しないノズル13(以下、非吐出ノズル13b)とを特定することができる。例えば、図6(a)に示すように、左から1番目と3番目とが非吐出ノズル13b、残りが吐出ノズル13aとして特定されたとする。
【0063】
次に、制御部116は、復帰用駆動信号を圧電素子18に供給する(図4ステップS4)。復帰用駆動信号とは、圧電素子18に与えられる駆動信号であって、薄膜31が破られる強さの振動を圧力発生室12内のインクに与えるものである。復帰用駆動信号が圧電素子18に与えられることにより、ノズル13のインクが露出した状態のメニスカスに戻る。
【0064】
図6(b)に示すように、制御部116が復帰用駆動信号を選択的に吐出ノズル13aに対応する圧電素子18に供給すると、圧力発生室12は収縮・膨張し、この収縮・膨張によるインクの圧力で薄膜31が除去される。すなわち、吐出ノズル13aでは、メニスカス30が形成された元の状態に戻る。
【0065】
一方、非吐出ノズル13bに対応する圧電素子18には、復帰用駆動信号が供給されないので、非吐出ノズル13bは、薄膜31で封止された状態が維持される。
【0066】
以降、制御部116は、非吐出ノズル13bには薄膜31が封止された状態で、印刷データに基づいて吐出ノズル13aからインクを吐出させて、印刷する(図4ステップS5)。
【0067】
図7を用いて各種の駆動信号を説明する。圧電素子18に入力される駆動波形は、共通電極を基準電位(本実施形態では0V)として、個別電極に印加されるものである。
【0068】
通常の印刷時に圧電素子18を駆動する駆動信号の駆動波形140は、図7(a)に示すように、中間電位Vmを維持した状態から電位Vまで上昇させる膨張要素P01と、電位Vを一定時間維持するホールド要素P02と、電位Vから中間電位Vmまで降下させる収縮要素P03と、を具備する。
【0069】
そして、このような駆動波形140が圧電素子18に供給されると、膨張要素P01によって、圧電素子18が圧力発生室12の容積を膨張させる方向に変形して、ノズル13内のメニスカスが圧力発生室12側に引き込まれると共に、圧力発生室12にはマニホールド17側からインクが供給される。そして、圧力発生室12の膨張状態は、ホールド要素P02で維持される。次に、収縮要素P03が供給されて圧電素子18が伸長する。これにより、圧力発生室12は膨張容積から中間電位Vmに対応する容積まで急激に収縮され、圧力発生室12内のインクが加圧されてノズル13からインク滴が吐出される。なお、このような膨張要素P01、ホールド要素P02及び収縮要素P03からなる駆動波形140が、一定周期tで繰り返し発生され、所定のタイミングで圧電素子18に選択的に印加される。
【0070】
復帰用駆動信号の駆動波形141は、図7(b)に示すように、中間電位Vmを維持した状態から電位Vまで上昇させる膨張要素P11と、電位Vを一定時間維持するホールド要素P12と、電位Vから中間電位Vmまで降下させる収縮要素P13と、を具備する。
【0071】
電位Vは、駆動信号の駆動波形140の電位Vと同じかそれよりも高く設定されている。このように復帰用駆動信号の駆動波形141を設定することで、吐出ノズル13aから確実に薄膜31を除去し、元のメニスカス30が露出した状態に戻すことができる。
【0072】
以上に説明したように、本実施形態に係るインクジェット式記録装置Iは、造膜手段であるプラテンヒーター103により複数の(本実施形態では全ての)ノズル13にメニスカス30を形成したインクを固化させて薄膜31とする。そして、印刷データに基づいて、吐出ノズル13aの薄膜31を選択的に元のインクに復帰させ、非吐出ノズル13bに薄膜31を残した状態で印刷を行う。
【0073】
非吐出ノズル13bに形成された薄膜31により、圧力発生室12のインクの溶媒が蒸発することが防止されるので、当該圧力発生室12のインクが増粘することが防止される。したがって、同一のノズル13が、或る印刷データでは非吐出ノズル13bとされ、それ以後の印刷データでは吐出ノズル13aとされるとき、当該ノズル13から増粘していないインクを吐出することができる。
【0074】
このように、印刷データに応じて、吐出ノズル13aからインクを吐出させる一方で、非吐出ノズル13bには薄膜31を残したままとする。すなわち、印刷時においても、選択的に薄膜31を残すことで、非吐出ノズル13bに連通する圧力発生室12のインクの蒸発を防ぎ、インクの増粘を防止することができる。これにより、増粘によるインクの吐出不良や濃度ムラが防止された高品質な印刷を行うことができる。
【0075】
また、従来では、通常よりも強い圧力で、増粘したインクをノズルから排出させることで、インクの増粘による問題を解決していたが、インクを無駄に排出してしまうので、インクの使用量の観点では好ましいとは言えなかった。本発明では、このような増粘したインクの排出を伴わないので、インクの使用量を節約することができる。
【0076】
また、特に図示しないが、制御部116は、造膜手段で記録ヘッド10の全てのノズル13に薄膜31を形成したのち、記録ヘッド1を非塗布領域に移動させ、ノズルプレート14をキャップ部材114で封止してもよい。これにより、薄膜31がそれ以上に乾燥することを防止できる。これにより、薄膜31の膜厚が過剰に厚くなることを防止できる。
【0077】
本発明に係るインク(液体)は、ノズル13にメニスカスを形成し、造膜手段により固化して薄膜31を形成する組成からなる。このようなインクは、常温環境下で粘度が増加し、水よりも比重が大きい性質を有し、また、加熱により固化する固形成分が含まれ、又は重合成分が含まれる。
【0078】
具体的には、0.1%以上10%以下の樹脂又は糖類(糖分又は糖アルコール)を含むインク(液体)であれば、本発明の作用効果を奏する。樹脂としては、樹脂エマルジョン、顔料、高分子ゲルを挙げることができる。また、樹脂、糖分又は糖アルコールは、単独でもよいし、これらを混合したものでもよい。なお、樹脂と糖類とを混合した場合は、この混合物が0.1%以上10%以下であることが好ましい。
【0079】
樹脂エマルジョンとしては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。これらの樹脂はホモポリマーとして使用されても良く、またコポリマーして使用されてもよく、単相構造及び複相構造(コアシェル型)の何れのものも使用できる。
【0080】
顔料としては、カーボンブラック、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等の有機顔料、チタン白、亜鉛華、鉛白、カーボンブラック系、ベンガラ、朱、カドミウム赤、黄鉛、群青、コバルト青、コバルト紫、ジンクロメート等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能なら、何れも使用できる。これらのうち、特にアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ジオキサジン顔料、及びアントラキノン顔料系を用いることが好ましい。尚、「顔料」とは、水や溶剤、油等に通常不溶の粒子状の固体をいう。
【0081】
高分子ゲルとは、高分子が架橋されることで三次元的な網目構造を形成し、その内部に溶媒を吸収し膨潤したゲルである。公知の高分子ゲルを本発明に適用することができる。
【0082】
また、糖分としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等が挙げられる。
【0083】
糖アルコールとしては、例えば、トレイトール、エリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、リキシトール、ソルビトール(グルシトール)、マンニトール、イジトール、グリトール、タリトール、ガラクチトール、アリトール、アルトリトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、ツラニトール等が好適である。
【0084】
上述したノズル13に形成された薄膜31の膜厚は、ノズル13の直径よりも薄い厚さであることが好ましい。ノズル13の直径よりも薄い厚さの膜厚であれば、復帰用駆動信号で、より確実に薄膜31を除去することができるからである。
【0085】
本実施形態では、造膜手段として、プラテンヒーター103を用いた。このように、記録シートSに印刷されたインクを乾燥させるためのプラテンヒーター103を、造膜手段として兼用できるので、別途に加熱手段を設けた場合に掛かるコストを削減することができる。
【0086】
さらに、造膜手段としては、インク(液体)に紫外線硬化性樹脂が含まれる場合、紫外線照射装置を用いることができる。特に図示しないが、紫外線照射装置を記録ヘッド10のノズル13側に紫外線を照射するようにインクジェット式記録装置Iに配置する。制御部116が、紫外線照射装置に紫外線を照射させることで、ノズル13にメニスカスを形成したインクが固化し、薄膜31が形成される。
【0087】
造膜手段による薄膜31の形成のタイミングには、特に限定はない。印刷データに基づいて印刷を行い、次の印刷データが連続しないときなど、次の印刷まで時間が空く場合、印刷が終わった直後に、造膜手段を用いてノズル13に薄膜31を形成することが好ましい。これにより、常温環境に放置することでノズル13にメニスカスを形成したインクが増粘することを極力抑えることができる。
【0088】
また、復帰用駆動信号による薄膜31の除去のタイミングには、特に限定はないが、印刷直前にうち捨て領域で行うことが好ましい。これにより、印刷直前まで薄膜31によりインクの蒸発を防止し、増粘を防止することができる。
【0089】
加熱手段としてはプラテンヒーターに限らず、例えば、非印刷領域に記録ヘッド1のノズル13側を加熱するヒーター等を別途設けてもよい。また、記録ヘッド1のノズルプレート14がキャップ部材114に封止された状態で、ノズル13側を加熱する加熱手段を吸引手段110に別途設けてもよい。制御部116は、加熱手段の配置等に応じて、記録ヘッド1を移動させ、適宜加熱するタイミングを定めればよい。
【0090】
〈実施形態2〉
吐出ノズル13aと非吐出ノズル13bとは、インクの色に応じて使い分けられてもよい。図8は、実施形態2に係るノズルプレートの平面図である。
【0091】
図8(a)に示すように、記録ヘッド10には、ノズル13が一方向に並設されたノズル列を2列有している。一方をノズル列A、他方をノズル列Bとする。ノズル列Aに連通するマニホールド17、圧力発生室12には、第1液体の一例として白色インクが供給され、ノズル列Aの各ノズル13から白色インクが吐出される。ノズル列Bに連通するマニホールド17、圧力発生室12には、第2液体の一例として非白色インクが供給され、ノズル列Bの各ノズル13から非白色インクが吐出される。
【0092】
このような記録ヘッド10に、白色インクで下地となる背景画像を印刷し、その下地上に非白色インクで、画像を形成する印刷データが与えられると、制御部116は、ノズル列Aから白色インクを吐出させて下地を形成し、ノズル列Bから非白色インクを吐出させる。なお、下地に白の下地を印刷することで、非白色インクの色再現性が向上する。
【0093】
このような印刷データに基づく印刷では、本実施形態に係るインクジェット式記録装置Iは次のように制御を行う。
【0094】
まず、図8(b)に示すように、制御部116は、下地の印刷後、プラテンヒーターなど造膜手段を用いて、全てのノズル13に薄膜31を形成する。そして、制御部116は、印刷データに基づいて、ノズル列Aのノズル13は非吐出ノズル13bであり、ノズル列Bのノズル13は吐出ノズル13aであることを特定する。
【0095】
したがって、図8(c)に示すように、制御部116は、ノズル列Bのノズル13に対応する各圧電素子18に復帰用駆動信号を供給する。これにより、薄膜31が除去され、ノズル列Bのノズル13はメニスカスが露出した状態に戻る。
【0096】
そして、制御部116は、ノズル列Bから非白色インクを吐出させ、画像を形成させる。
【0097】
このようにして、下地の作成後、しばらく用いられないノズル列Aのノズル13には、薄膜31が形成されるので、ノズル列Aに連通する圧力発生室12のインクが増粘することを防止することができる。
【0098】
特に、酸化チタンなどを含んだ白色インクは高価である。本発明は、従来のように強制的に増粘した白色インクを排出することがないので、このような白色インクの使用量を抑え、ランニングコストを低減することができる。なお、第1液体としては、酸化チタンなどを含んだ白色インクに限らず、例えば、金属を含有したインクやクリアインクなどを挙げることができる。これらのインクは、あまり頻繁に使用されない。したがって、当該インクは、上述したノズル列Aから吐出させることが好ましい。
【0099】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0100】
例えば、一つの記録ヘッド10に設けられた全てのノズル13から、吐出ノズル13aと非吐出ノズル13bとを特定したが、このような態様に限定されない。例えば、複数の記録ヘッド10を有する場合、一の記録ヘッド10では、全てのノズル13が吐出ノズル13aとなり、他の記録ヘッド10では、全てのノズル13が非吐出ノズル13bとなってもよい。
【0101】
例えば、上述した各実施形態では、流路(圧力発生室)に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、圧電材料19と電極形成材料20,21とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子18を例示したが、圧力発生手段は、特にこれに限定されるものではなく、圧電材料19と電極形成材料20,21とを交互に積層させて積層方向の一端部を振動板15に当接させる横振動型の圧電素子を用いるようにしてもよい。
【0102】
また、圧力発生手段としては、例えば、下電極、圧電材料からなる圧電体層及び上電極を成膜及びリソグラフィー法によって形成した薄膜型の圧電素子を用いてもよく、また、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子を使用することもできる。また、圧力発生手段として、シェアモード(圧電素子の分極方向に垂直に電界を印加した場合に発生する変形モードである。)の変形を発生させ、圧電素子の剪断変形により圧力発生室を変形させてインクを吐出させるものや、他の撓みモードの圧電素子や、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるものなども使用することができる。
【0103】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0104】
なお、上記各実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0105】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 12 圧力発生室、 13 ノズル、 13a 吐出ノズル、 13b 非吐出ノズル、 14 ノズルプレート、 15 振動板、 18 圧電素子、 30 メニスカス、 31 薄膜、 103 プラテンヒーター、 111 プリンターコントローラー、 112 プリントエンジン、 114 キャップ部材、 116 制御部、 135 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被噴射媒体に液体を吐出する複数のノズル、該ノズルに連通する圧力発生室及び該圧力発生室に圧力を与える圧力発生手段を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのノズルに形成された液体のメニスカスを形成する液体を固化させてノズルに膜を形成する造膜手段と、
前記被噴射媒体に吐出される液体のパターンを定義した吐出データに基づいて駆動信号を前記圧力発生手段に供給する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記造膜手段に、前記液体噴射ヘッドに含まれる複数のノズルに前記膜を形成させ、
液体の吐出前に、前記吐出データに基づいて液体を吐出する吐出ノズルと液体を吐出しない非吐出ノズルとを特定し、当該吐出ノズルについて液体を噴射可能なメニスカスの状態に復帰させる復帰用駆動信号を前記圧力発生手段に供給し、
前記吐出データに基づいて、前記復帰用駆動信号により前記膜が除去された前記吐出ノズルから液体を吐出させる
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射装置において、
前記液体噴射ヘッドのノズル側を封止するキャップ部材を備え、
前記制御手段は、前記造膜手段に前記ノズルに前記膜を形成させたのち、前記液体噴射ヘッドのノズル側を前記キャップ部材で封止する
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射装置において、
前記液体は、0.1%以上10%以下の樹脂又は糖類を含む
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する液体噴射装置において、
前記膜は、前記ノズルの直径よりも薄い厚さである
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する液体噴射装置において、
前記被噴射媒体を前記液体噴射ヘッドのノズルに対向するように支持するプラテンを備え、
前記造膜手段は、前記プラテンを加熱するプラテンヒーターである
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する液体噴射装置において、
前記液体は、紫外線硬化性樹脂を含み、
前記造膜手段は、前記液体噴射ヘッドのノズル側に紫外線を照射する紫外線照射装置である
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載する液体噴射装置において、
前記液体噴射ヘッドは、前記液体として第1液体及び第2液体を吐出可能に構成され、
前記制御手段は、前記被噴射媒体に前記第2液体を吐出させる前記吐出データが与えられたときには、前記第1液体が供給されるノズルを非吐出ノズルとする
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−250402(P2012−250402A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123839(P2011−123839)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】