説明

液体噴射装置

【課題】液体噴射ヘッドを支持した移動体の移動経路上に該移動体と係合可能な係合部材が配置された場合に、移動体と係合部材とが係合するときの衝撃を低減することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンターは、記録ヘッドを支持して移動可能なキャリッジ18と、用紙と記録ヘッドとの距離を調節するべくキャリッジ18の高さ位置を調節するカム部材と、記録ヘッドに当接可能なキャップ部材52と、印刷領域PAからヘッド対向位置x3までキャリッジ18が移動する場合に、キャリッジ18と係合可能な係合部材61とを備える。カム部材は、用紙と記録ヘッドとの距離が、キャリッジ18が係合部材61と係合しない第1距離と、係合部材61と係合する第2距離との間でキャリッジ18の高さ位置を調節する。キャリッジ18は、移動時に途中で減速され、その減速タイミングは、第1距離のときよりも第2距離のときの方が早い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ターゲットに液体を噴射する液体噴射装置としてインクジェット式プリンターが広く知られている。このインクジェット式プリンターでは、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)のノズルからインク(液体)を用紙(ターゲット)に向けて噴射することで印刷が行われる。
【0003】
こうしたプリンターでは、ノズル開口からノズル内のインクの水分が蒸発することにより該ノズル内のインクの粘度が上昇してノズルが目詰まりしやすくなる。このため、印刷中に定期的にノズル内のインクを強制的にキャップ部材内に排出するフラッシングを行ったり、印刷休止時や不使用時に記録ヘッドに対してノズルを囲うようにキャップ部材を当接させるキャッピングを行ったりすることで、ノズルの目詰まりを抑制するようにしている。
【0004】
そして、このようなキャップ部材を備えたプリンターとしては、従来、特許文献1に示すものが知られている。この特許文献1のプリンターは、印字領域と該印字領域の側方部位(待機位置)との間で移動可能に構成されたキャリッジ(移動体)を備えている。キャリッジは、下面にノズルヘッド(液体噴射ヘッド)を有するとともに、ガイドフレームに支持されたガイドシャフトによってスライド自在に且つ回動可能に支持されている。キャリッジは、ガイドフレームの上辺部の下面に転接するガイドコロを備えることで、前倒れが阻止されるようになっている。
【0005】
また、印字領域の側方部位におけるガイドフレームの上辺部の下面には、凹部が設けられている。さらに、印字領域の側方部位には、ノズルヘッドのキャッピングを行うことが可能なキャップ部材が配置されている。そして、キャリッジを印字領域の側方部位に移動させると、ガイドコロがガイドフレームの上辺部の凹部に入り込むことで、キャリッジが自重によってガイドシャフトを中心に回動して前傾する。このキャリッジの前傾により、ノズルヘッドがその直下に配置されたキャップ部材に密着してキャッピングが行われる。
【0006】
このとき、キャリッジの上面にガイドフレームの側端部に取り付けられた板バネのような弾性部材(係合部材)が当接することで、この弾性部材によってキャリッジがキャップ部材に向かって付勢されて、キャップ圧が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−90782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1のプリンターにおいて、印刷中にキャップ部材内にフラッシングを行うようにした場合には、フラッシング行うためにキャリッジを印字領域の側方部位に移動させる度にキャリッジが弾性部材に当接する。このため、キャリッジが弾性部材に当接するときの衝撃によって、ノズルヘッドのノズル内のインク抜けが生じたり該ノズル内のインクのメニスカスが破壊されたりするという問題がある。
【0009】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、液体噴射ヘッドを支持した移動体の移動経路上に該移動体と係合可能な係合部材が配置された場合に、移動体と係合部材とが係合するときの衝撃を低減することが可能な液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、ノズルからターゲットに対して液体を噴射可能な液体噴射ヘッドを支持するとともに、走査方向へ移動可能に構成された移動体と、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離を調節するべく前記移動体の位置を調節する位置調節機構と、前記ノズルを囲うように前記液体噴射ヘッドに対して当接可能なキャップ部材と、前記液体噴射ヘッドが前記ターゲットに対して前記液体を噴射可能な領域である液体噴射領域から前記キャップ部材と対向する位置であるヘッド対向位置まで前記移動体が移動する場合に、前記液体噴射領域よりも前記ヘッド対向位置側で前記移動体と係合可能な係合部材とを備え、前記位置調節機構は、前記液体噴射ヘッドが前記キャップ部材と対向する位置において、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が、前記移動体が移動時に前記係合部材と係合しない第1距離と、前記移動体が移動時に前記係合部材と係合するとともに前記第1距離よりも長い第2距離との間で変化するように、前記移動体の位置を調節する。
【0011】
この発明によれば、液体噴射ヘッドを支持した移動体の移動経路上に該移動体と係合可能な係合部材が配置された場合に、位置調節機構によってターゲットと液体噴射ヘッドとの距離を第1距離と第2距離との間で変化させることで、移動体が係合部材と係合したり係合しなかったりする。そして、移動体と係合部材とが係合しない場合よりも係合する場合の方が移動体を移動させる速度を遅くすることで、移動体と係合部材とが係合するときの衝撃を低減することが可能となる。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、前記位置調節機構が前記第1距離に前記移動体の位置を調節した場合に、前記移動体は、フラッシング位置において前記係合部材と係合せず、キャッピング位置において前記係合部材と係合する。
【0013】
この発明によれば、移動体は、ターゲットと液体噴射ヘッドとの距離が第1距離である場合に、液体噴射ヘッドがキャップ部材と対向するフラッシング位置で係合部材と係合しないため、フラッシング位置にてフラッシングを円滑に行うことが可能となる。一方、移動体は、ターゲットと液体噴射ヘッドとの距離が第1距離である場合に、キャッピング位置で係合部材と係合するため、キャッピング位置での姿勢を安定させることが可能となる。
【0014】
本発明の液体噴射装置において、前記移動体は、前記液体噴射領域から前記ヘッド対向位置まで移動する場合に、途中で減速され、前記移動体が減速されるタイミングは、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が前記第1距離である場合よりも前記第2距離である場合の方が早い。
【0015】
この発明によれば、液体噴射ヘッドを支持した移動体の移動経路上に該移動体と係合可能な係合部材が配置された場合に、移動体と係合部材とが係合しない場合よりも係合する場合の方が移動体を減速させるタイミングが早いので、移動体と係合部材とが係合するときの衝撃を低減することが可能となる。
【0016】
本発明の液体噴射装置において、前記移動体は、移動速度が0まで減速され、前記移動体の移動速度が0となる位置は、前記第1距離である場合よりも前記第2距離である場合の方が前記液体噴射領域側にある。
【0017】
この発明によれば、移動体と係合部材とが係合しない場合よりも係合する場合の方が移動体を減速させるタイミングが確実に早くなるようにすることが可能となる。
本発明の液体噴射装置において、前記移動体が前記液体噴射領域から前記ヘッド対向位置まで移動する場合に、前記移動体の前記係合部材と対向する位置での移動速度は、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が前記第1距離であるときよりも前記第2距離であるときの方が遅い。
【0018】
この発明によれば、移動体の係合部材と対向する位置での移動速度が、移動体と係合部材とが係合しない場合よりも係合する場合の方が遅いので、移動体と係合部材とが係合するときの衝撃を低減することが可能となる。
【0019】
本発明の液体噴射装置において、前記移動体は、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が前記第2距離である状態で減速される場合に、移動速度が第1速度から0まで減速されてから前記第1速度よりも遅い第2速度まで加速される。
【0020】
この発明によれば、移動体を減速する際の制御を容易に行うことが可能となる。
本発明の液体噴射装置において、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が前記第2距離である場合において、前記移動体の移動速度を前記第1速度から0まで減速する際の領域である減速領域の一部は、前記液体噴射領域に含まれる。
【0021】
この発明によれば、移動体の移動速度の減速領域の一部が液体噴射領域に含まれるため、減速領域の全てを液体噴射領域に含ませない場合に比べて、減速領域を確保するために必要なスペースを低減することができる。したがって、装置の小型化に寄与することが可能となる。
【0022】
本発明の液体噴射装置において、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が前記第1距離である場合には、前記移動体は減速されることなく前記液体噴射領域から前記ヘッド対向位置へ移動される。
【0023】
この発明によれば、移動体を液体噴射領域から前記ヘッド対向位置へ迅速に移動させることが可能となる。
本発明の液体噴射装置において、前記移動体が前記フラッシング位置から前記キャッピング位置へ移動するときの移動速度は、前記第1距離である場合の方が前記第2距離である場合よりも速い。
【0024】
この発明によれば、液体噴射装置のスループットの向上に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンターの斜視図。
【図2】図1の背面を示す模式断面図。
【図3】同プリンターのキャリッジの側面模式図。
【図4】同キャリッジの要部拡大模式図。
【図5】同プリンターのメンテナンスユニットの斜視図。
【図6】同キャリッジがヘッド対向位置にあるときの状態を示す正面模式図。
【図7】同キャリッジがキャッピング位置にあるときの状態を示す正面模式図。
【図8】(a)は、用紙と記録ヘッドとの距離が第1距離である場合において、キャリッジがそれぞれヘッド対向位置及びキャッピング位置にあるときの、キャリッジと、係合部材及びキャップ部材とのそれぞれの位置関係を示す模式図、(b)は、用紙と記録ヘッドとの距離が第2距離である場合において、キャリッジがそれぞれヘッド対向位置及びキャッピング位置にあるときの、キャリッジと、係合部材及びキャップ部材とのそれぞれの位置関係を示す模式図。
【図9】同キャリッジがキャッピング位置に移動したときにキャリッジに働く力を示す正面模式図。
【図10】同プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図11】用紙と記録ヘッドとの距離が第1距離である場合におけるキャリッジの速度と位置との関係を説明する模式図。
【図12】用紙と記録ヘッドとの距離が第1距離である場合におけるキャリッジの速度と位置との関係を示すグラフ。
【図13】用紙と記録ヘッドとの距離が第2距離である場合におけるキャリッジの速度と位置との関係を説明する模式図。
【図14】用紙と記録ヘッドとの距離が第2距離である場合におけるキャリッジの速度と位置との関係を示すグラフ。
【図15】(a)〜(d)は、用紙と記録ヘッドとの距離が第2距離である場合においてキャリッジと係合部材とが係合するときの作用を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態について、図面に従って説明する。また、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は各図中に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。なお、図面中の上方向、右方向及び前方向を示す矢印において、「○」の中に「・」が記載されたもの(矢の先端を前から見た図)は紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたもの(矢の羽根を後ろから見た図)は紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0027】
図1及び図2に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター11は、略矩形箱状をなす本体フレーム12を備えている。本体フレーム12内には、支持台13が走査方向となる左右方向に沿って延びるように設けられている。本体フレーム12内における支持台13の下方には、ターゲットとしての用紙Pが積層状態で収容された用紙カセット14が、本体フレーム12の前面中央部に設けられた開口部15から着脱自在に装着されている。用紙カセット14内の用紙Pは、図示しない紙送り機構により、一枚ずつ反転されながら支持台13上へ後側から給送される。
【0028】
本体フレーム12内における支持台13の上方には、左右方向に延びる主ガイド部材16が架設されている。主ガイド部材16は、水平面と平行に延びる帯状の主ガイド部16aと、主ガイド部16aの前端縁部を上方に向かって直角に屈曲してなる補助ガイド部16bとを備えている。
【0029】
本体フレーム12における主ガイド部材16の上方には、左右方向に延びる断面視L字状の副ガイド部材17が設けられている。副ガイド部材17は、水平な帯状の水平部17aと、水平部17aの前側半分を下方に向かって直角に屈曲してなる副ガイド部17bとを備えている。そして、主ガイド部材16及び副ガイド部材17には、移動体としてのキャリッジ18が左右方向に移動可能に後端部側で片持ち支持されている。
【0030】
図1〜図3に示すように、キャリッジ18は、複数のノズル24から液体としてのインクを噴射可能な液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19を支持する略矩形箱状をなす支持部20と、該支持部20の後側に一体形成されるとともに主ガイド部材16及び副ガイド部材17によって支持される被支持部21とを備えている。被支持部21の下面における前端部には、補助ガイド部16bが挿通される凹溝22が形成されている。したがって、補助ガイド部16bは、キャリッジ18の前後方向の移動を規制するとともに、キャリッジ18の左右方向及び上下方向の移動を許容する。
【0031】
一方、被支持部21の上端部における前面には、副ガイド部17bの後面にキャリッジ18の自重によって摺接する補助摺接部23が形成されている。したがって、副ガイド部17bは、キャリッジ18の前方への移動を規制するとともに、キャリッジ18の左右方向及び上下方向の移動を許容する。よって、キャリッジ18は、主ガイド部材16及び副ガイド部材17によってガイドされながら左右方向へ往復移動可能になっている。
【0032】
キャリッジ18は、その一部が本体フレーム12の後壁内面における左右両端部にそれぞれ設けられた駆動プーリー25及び従動プーリー26間に掛装された無端状のタイミングベルト27に連結されている。駆動プーリー25には、本体フレーム12に設けられたキャリッジモーター28の出力軸が連結されている。したがって、キャリッジ18は、キャリッジモーター28の駆動により、主ガイド部材16及び副ガイド部材17に沿って左右方向に往復移動されるようになっている。
【0033】
図1及び図2に示すように、キャリッジ18における支持台13と対向する下面側には、記録ヘッド19の下端部が露出している。一方、キャリッジ18上には、一時貯留したインクを記録ヘッド19に供給する複数(本実施形態では4つ)のバルブユニット30が搭載されている。
【0034】
記録ヘッド19の下面には、複数(本実施形態では4つ)のノズル列をそれぞれ構成する複数のノズル24が開口している。そして、各ノズル列を構成する各ノズル24の開口から支持台13上に給送された用紙Pに対してそれぞれインクが噴射されることで印刷が行われる。なお、記録ヘッド19により支持台13上の最大幅の用紙Pに対して印刷が可能な領域は、液体噴射領域としての印刷領域PAとされている。
【0035】
本体フレーム12内の左端部には、カートリッジホルダー31が設けられている。カートリッジホルダー31には、互いに色が異なるインクを収容した複数(本実施形態では4つ)のインクカートリッジ32がそれぞれ着脱自在に装着されている。カートリッジホルダー31は、キャリッジ18上の各バルブユニット30とそれぞれインク供給チューブ33を介して接続されている。
【0036】
そして、カートリッジホルダー31に各インクカートリッジ32を装着した状態では、各インクカートリッジ32が各インク供給チューブ33を介して各バルブユニット30とそれぞれ連通するようになっている。
【0037】
図2〜図4に示すように、キャリッジ18の被支持部21は、主ガイド部材16の主ガイド部16a上に、キャリッジ18を円滑にスライド移動するべく左右方向に延びるスライド部材34を介して摺動可能に支持されている。したがって、主ガイド部16aの上面は摺動面35とされている。スライド部材34は、下方に突出するとともに摺動面35に対して摺接する左右一対の摺接部36を備えている。すなわち、各摺接部36は、左右方向に沿って互いに間隔を置いて並列している。
【0038】
各摺接部36の上面には、上方に向かって突出する凸部37がそれぞれ立設されている。各凸部37上には、該各凸部37間を橋架するように、左右方向に延びる位置調節機構としてのカム部材38が載置されている。カム部材38の上面38aは水平面である一方、カム部材38の下面には左右一対のカム部39が形成されている。各カム部39には、各凸部37がそれぞれ摺接している。
【0039】
各カム部39は、左側から右側に向かって段階的に摺動面35からの高さが低くなるように並列した4つの水平なカム面39a〜39dをそれぞれ備えている。各カム面39a〜39dは、左側から右側に向かって順に、第1カム面39a、第2カム面39b、第3カム面39c、第4カム面39dとされている。第1カム面39aと第2カム面39b、第2カム面39bと第3カム面39c、第3カム面39cと第4カム面39dは、それぞれなだらかな斜面を介して繋がっている。
【0040】
カム部材38の上面38aにおけるカム部材38を挟んで各凸部37と対向する位置には、キャリッジ18の被支持部21の下面に突設された左右一対の脚部40がそれぞれ当接している。カム部材38は、各凸部37及び各脚部40に対して左右方向にスライド移動可能になっている。そして、カム部材38は、左右方向へスライド移動して各凸部37の各カム部39に対する当接位置を変更することで、キャリッジ18の高さ位置を調節する。
【0041】
カム部材38の後面における左端部には、後方に向かって突出する係合ピン41が設けられている。本体フレーム12内の左端部における主ガイド部材16の後側の位置には、キャリッジ18が左右方向に移動する際に係合ピン41と左右方向において係合可能なカム移動板42が設けられている。カム移動板42は、キャリッジ18が左右方向に移動する際に係合ピン41と係合する係合位置と、係合しない非係合位置との間で、回動機構43によって回動されるように構成されている。
【0042】
そして、カム移動板42を係合位置に回動させた状態で、キャリッジ18を左方向へ移動させて、カム移動板42に対して係合ピン41を右側から係合させることで、カム部材38がキャリッジ18の移動力によって右方向へスライド移動する。一方、カム移動板42を係合位置に回動させた状態で、キャリッジ18を右方向へ移動させて、カム移動板42に対して係合ピン41を左側から係合させることで、カム部材38がキャリッジ18の移動力によって左方向へスライド移動する。
【0043】
ここで、例えば、図4に実線で示すように、スライド部材34の各凸部37がカム部材38のカム面39a〜39dのうちで最も高い位置に位置する各第1カム面39aにそれぞれ当接している場合には、キャリッジ18の位置が最も低い位置にある状態となる。この状態から、例えば、図4に二点鎖線で示すように、カム部材38を左方向へ移動させて、スライド部材34の各凸部37がカム部材38のカム面39a〜39dのうちで最も低い位置に位置する各第4カム面39dにそれぞれ当接する状態にすると、キャリッジ18の位置が最も高い位置にある状態となる。
【0044】
つまり、キャリッジ18は、カム部材38の左右方向への移動に伴う該カム部材38の上下方向の移動に追従して上下方向に移動することで、その高さ位置が調節される。この場合、キャリッジ18には記録ヘッド19が支持されているため、キャリッジ18の高さ位置の調節により、記録ヘッド19と支持台13との距離、すなわち記録ヘッド19と支持台13上の用紙Pとの距離が調節される。
【0045】
スライド部材34の各凸部37がカム部材38の各第1カム面39aにそれぞれ当接しているとき、及びスライド部材34の各凸部37がカム部材38の各第2カム面39bにそれぞれ当接しているときの記録ヘッド19と用紙Pとの距離は、第1距離とされている。
【0046】
一方、スライド部材34の各凸部37がカム部材38の各第3カム面39cにそれぞれ当接しているとき、及びスライド部材34の各凸部37がカム部材38の各第4カム面39dにそれぞれ当接しているときの記録ヘッド19と用紙Pとの距離は、第1距離よりも長い第2距離とされている。なお、記録ヘッド19と用紙Pとの距離は、第2距離に設定される頻度よりも第1距離に設定される頻度の方が高い。
【0047】
図2及び図5に示すように、本体フレーム12内の右端部に位置するメンテナンス領域MAには、記録ヘッド19のクリーニングやフラッシング等のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット50が配置されている。
【0048】
メンテナンスユニット50は、有底四角箱状のケース51と、該ケース51内のほぼ中央部に配置されるとともにキャリッジ18のメンテナンス領域MAへの移動に伴って上昇するキャップ部材52とを備えている。キャップ部材52は、メンテナンス領域MAにおいて各ノズル24を囲うように記録ヘッド19に対して走査方向(左右方向)と直交する鉛直方向(上下方向)の下側から付勢力を伴って当接する有底四角箱状のキャップ57と、該キャップ57を図示しない弾性部材を介して保持する略箱型形状のキャップ保持部材55とを備えている。
【0049】
また、メンテナンスユニット50は、キャップ57内を図示しない可撓性のチューブを介して吸引するためのチューブポンプ53と、該チューブポンプ53の駆動源となるポンプモーター54とを備えている。
【0050】
ケース51の前壁51aには左右方向において間隔を置いて2つの貫通溝56が形成されている。2つの貫通溝56のうち、左側のものは右側のものよりも低い位置に配置されている。また、ケース51の後壁51bにも、前壁51aに形成された2つの貫通溝56と前後方向に対応する位置に2つの貫通溝56がそれぞれ形成されている。したがって、ケース51には、合計4つの貫通溝56が形成されている。
【0051】
各貫通溝56は、左から右へ向かって真っ直ぐ水平に延びる下側平坦部56aと、該下側平坦部56aの右端から右斜め上方に向かって真っ直ぐに延びる斜面部56bと、該斜面部56bの右端から右へ向かって真っ直ぐ水平に延びる上側平坦部56cとを備えている。そして、各貫通溝56において、下側平坦部56a、斜面部56b、及び上側平坦部56cは互いに連通している。
【0052】
キャップ保持部材55には、それぞれの貫通溝56に挿通するように、前後方向に延びる支持棒58が、それぞれの貫通溝56に対応して合計4つ設けられている。そして、貫通溝56内に挿通されたそれぞれの支持棒58は、該貫通溝56内において摺動可能になっている。また、キャップ保持部材55の右端部には、キャリッジ18が印刷領域PAからメンテナンス領域MAに向かって左から右方向に移動した際に該キャリッジ18の右面と係合する略矩形状の係合板55aが立設されている。
【0053】
また、キャップ保持部材55は、引っ張りコイルばね59(図6参照)によって常に左側へ向かって付勢されるとともに、キャリッジ18がメンテナンス領域MAに位置しない印刷状態では、引っ張りコイルばね59の付勢力により各支持棒58が各貫通溝56内における最も左側の下側平坦部56aにそれぞれ位置するようになっている。すなわち、キャリッジ18が印刷領域PAに位置する場合には、キャップ保持部材55(キャップ部材52)は降下した状態になっている。
【0054】
そして、キャリッジ18が印刷領域PAからメンテナンス領域MAに向かって左から右方向に移動すると、キャリッジ18の右面がキャップ保持部材55の係合板55aと係合することで、この係合以降キャップ保持部材55はキャリッジ18と一緒に右方に移動される。
【0055】
すなわち、キャップ保持部材55(キャップ部材52)は、キャリッジ18の右面と当接して引っ張りコイルばね59の付勢力に抗して左から右に移動されることにより、各支持棒58が各貫通溝56内を左から右に向かってそれぞれ摺動して下側平坦部56aから斜面部56bを通過して上側平坦部56cに移動することで、上昇する。つまり、キャップ保持部材55(キャップ部材52)は、メンテナンス領域MAにおいてキャリッジ18が係合板55aを左から右へ向かって押圧しながら移動することで、キャリッジ18の移動力を利用して上昇される。
【0056】
このとき、キャップ保持部材55の上昇に伴ってキャップ57が記録ヘッド19に向かって近接するように徐々に上昇する。そして、各支持棒58が各貫通溝56の上側平坦部56cに達した段階でキャップ57が記録ヘッド19に対して各ノズル24を囲うように当接する。すなわち、記録ヘッド19がキャップ57でキャッピングされる。
【0057】
なお、キャリッジ18は、キャップ保持部材55の係合板55aと係合してからは、右側へ移動するほど引っ張りコイルばね59から受ける付勢力が大きくなるため、右側へ移動するほど移動に要する負荷が大きくなる。
【0058】
また、キャップ57を記録ヘッド19に対して各ノズル24を囲うように当接させた状態(図7に示す状態)でチューブポンプ53を駆動すると、図示しない可撓性のチューブを介してキャップ57と記録ヘッド19とで囲まれた空間が吸引されて、該空間に負圧が発生する。この負圧により、各ノズル24から記録ヘッド19内の増粘したインクが気泡等とともにキャップ57内及び図示しない可撓性のチューブを介して図示しない廃液タンク内へ排出される、いわゆるクリーニングが行われる。
【0059】
また、キャップ部材52が降下した状態(各支持棒58が各貫通溝56内の下側平坦部56aにそれぞれ位置する状態)で、記録ヘッド19がキャップ57と上下方向において対向するときのキャリッジ18の位置は、ヘッド対向位置(フラッシング位置)とされている。そして、キャリッジ18は、印刷中に定期的に記録ヘッド19からキャップ57内にインクを強制的に吐出するフラッシングを行うときに、印刷領域PAからヘッド対向位置へ移動される。
【0060】
すなわち、印刷中のフラッシングは、キャリッジ18をヘッド対向位置へ移動させた状態(図6に示す状態)で行われる。一方、キャップ部材52が上昇したとき(各支持棒58が各貫通溝56内の上側平坦部56cにそれぞれ位置するとき)のキャリッジ18の位置、すなわち記録ヘッド19がキャップ57でキャッピングされたときのキャリッジ18の位置は、キャッピング位置とされている。
【0061】
図1及び図2に示すように、副ガイド部材17の右端部には、メンテナンス領域MAに移動したときのキャリッジ18を挟んでキャップ部材52と対向する位置には、キャリッジ18と係合可能な係合部材61が略L字板状の取付金具62を介して取着されている。すなわち、取付金具62は副ガイド部材17に固定されるとともに、係合部材61は取付金具62に対して上下方向にスライド移動可能に取着されている。
【0062】
この場合、係合部材61は、キャリッジ18が印刷領域PAからヘッド対向位置まで移動する場合に、印刷領域PAとヘッド対向位置との間にてキャリッジ18と係合可能な位置に配置されている。すなわち、係合部材61は、キャリッジ18の移動経路上に配置されている。
【0063】
図3及び図7に示すように、キャリッジ18がキャッピング位置にある場合に、キャリッジ18の被支持部21における係合部材61に対して鉛直方向の下側から当接する位置には、ブロック状の当接部67が設けられている。当接部67の左右方向の幅は、係合部材61の左右方向の幅とほぼ同じ程度に設定されている。当接部67の上面は、左右方向に長い矩形状をなすとともに、水平面に対して平行で平坦な当接面67aとされている。当接部67の上端部における左右のコーナー部には、当接面67aに連続するように隣接する円弧面67bが形成されている。
【0064】
係合部材61の下端における左右方向の中央部には、水平面に対して平行で平坦な押圧面63が形成されている。係合部材61の下端における押圧面63の左右両側には、左右方向において押圧面63から離れるほど上昇するように傾斜した案内面64が形成されている。各案内面64は、押圧面63と連続するように隣接するとともに、水平面に対して約30度の角度で傾斜している。
【0065】
係合部材61と取付金具62との間には、係合部材61を鉛直方向の下側に向かって付勢する左右一対の圧縮コイルばね65が介装されている。係合部材61には、該係合部材61が圧縮コイルばね65の付勢力によって所定位置よりも下側へ移動しないように、取付金具62に対して係止される係止部61aが設けられている。したがって、係合部材61は、キャリッジ18が印刷領域PAにある場合に、圧縮コイルばね65の付勢力を受けながら常に所定位置で静止している。
【0066】
そして、係合部材61は、キャリッジ18がキャッピング位置に移動してキャップ部材52によって押し上げられて当接部67が係合部材61に当接した場合に、各圧縮コイルばね65の付勢力に基づき押圧面63で当接面67aをキャップ部材52側である下側に向かって押圧する。
【0067】
すなわち、係合部材61は、押圧面63と当接面67aとが面接触した状態で、各圧縮コイルばね65の付勢力に基づいて当接部67を下側に向かって押圧する。この点で、係合部材61は、押圧部材として機能する。この場合、係合部材61は、摺動面35におけるスライド部材34の摺動領域に対して鉛直方向に重なる位置で当接部67を下側に向かって押圧する。
【0068】
さらにこの場合、当接部67における係合部材61による押圧力の作用点は、左右一対の摺接部36間の領域に対して鉛直方向に重なる位置にある。すなわち、係合部材61は、左右一対の摺接部36間の領域に対して鉛直方向に重なる位置において各圧縮コイルばね65の付勢力を当接部67に伝達している。なお、左右方向における押圧面63の幅は、左右方向における当接面67aの幅よりも狭くなっている。
【0069】
図8(a)に示すように、キャリッジ18は、記録ヘッド19と用紙Pとの距離が第1距離である場合には、フラッシング時の位置であるヘッド対向位置へ移動させても係合部材61と係合しない。そして、キャリッジ18は、ヘッド対向位置からキャッピング時(クリーニング時)の位置であるキャッピング位置へ移動された場合には、キャップ部材52によって持ち上げられて係合部材61と係合する。このとき、キャリッジ18は、圧縮コイルばね65(図7参照)の付勢力に基づき係合部材61により上側から押さえられる。
【0070】
一方、図8(b)に示すように、キャリッジ18は、記録ヘッド19と用紙Pとの距離が第2距離である場合には、フラッシング時の位置であるヘッド対向位置へ移動させた場合に係合部材61と係合する。そして、キャリッジ18は、ヘッド対向位置からキャッピング時(クリーニング時)の位置であるキャッピング位置へ移動された場合には、キャップ部材52によって持ち上げられて係合部材61と係合する。このとき、キャリッジ18は、圧縮コイルばね65(図7参照)の付勢力に基づき係合部材61により上側から押さえられる。
【0071】
また、キャリッジ18のキャッピング位置への移動に伴ってキャップ部材52が上昇する際の該キャップ部材52の上限位置は、記録ヘッド19と用紙Pとの距離が第1距離であっても第2距離であっても変わらず常に一定になっている。このため、キャリッジ18がキャッピング位置にて係合部材61から付与される押圧力も常に一定になる。
【0072】
次に、キャリッジ18がキャッピング位置にて係合部材61から付与される押圧力(圧縮コイルばね65の付勢力)の大きさについて説明する。
図9に示すように、キャリッジ18がキャッピング位置へ移動したときには、キャリッジ18に対して、スライド部材34の2つの摺接部36のうちの右側の摺接部36の下面における右端を回転中心Uとして前側から見て時計方向に回転させようとする力(回転モーメント)が働く。すなわち、キャリッジ18には、回転中心Uよりも下側で引っ張りコイルばね59の付勢力Cxが係合板55aを介して左へ向かって働く一方、回転中心Uよりも上側でキャリッジモーター28(図2参照)の駆動力に基づくタイミングベルト27による搬送力Hが右へ向かって働く。このため、キャリッジ18がキャッピング位置へ移動したときには、キャリッジ18が右側に傾いた姿勢(状態)となる。
【0073】
この右側に傾いたキャリッジ18の姿勢を水平に矯正するには、キャッピング位置でキャリッジ18を係合部材61が押圧する押圧力Fzの値が、以下の式1及び式2を満足させる必要がある。すなわち、押圧力Fzの値は、上下方向における力の釣り合いから式1を満足させるとともに、回転モーメントの釣り合いから式2を満足させる必要がある。
【0074】
Fz≧Cz−Mg・・・・・(式1)
Fz=Cz−Mg+H×Z1/D1+Cx×Z2/D1・・・・・(式2)
この場合、Czはキャップ部材52の記録ヘッド19に対する鉛直方向の下側からの当接に伴ってキャリッジ18に対して鉛直方向の上側に向かって作用する付勢力であり、Mgはキャリッジ18の自重である。また、Hはタイミングベルト27による搬送力であり、Cxは引っ張りコイルばね59の付勢力であり、D1は回転中心UからCz作用点、Mg作用点、及びFz作用点までの左右方向の距離である。さらに、Z1は回転中心UからH作用点までの上下方向の距離であり、Z2は回転中心UからCx作用点までの上下方向の距離である。
【0075】
上記式1から、キャリッジ18の自重Mgとキャッピング位置でキャリッジ18を係合部材61が押圧する押圧力Fzとの和は、キャップ部材52の記録ヘッド19に対する鉛直方向の下側からの当接に伴ってキャリッジ18に対して鉛直方向の上側に向かって作用する付勢力Cz以上であることが言える。
【0076】
そして、押圧力Fzが上記式1及び式2を満足する値であれば、キャップ部材52によって記録ヘッド19のキャッピングを行った場合に、押圧力Fzがキャリッジ18に作用することで、キャップ部材52が記録ヘッド19に対して十分に密着される。この場合、押圧力Fzにより、キャリッジ18の姿勢も水平に矯正されるため、キャップ部材52による記録ヘッド19のキャッピング不良も抑制される。
【0077】
なお、押圧力Fzは、キャリッジモーター28(図2参照)にかかる負荷を考慮すると、上記式1及び式2を満足させるうちで、できるだけ小さい値に設定することが好ましい。
【0078】
次に、インクジェット式プリンター11の電気的構成について説明する。
図10に示すように、インクジェット式プリンター11は、該インクジェット式プリンター11の稼働状態を統括的に制御する制御部70と、画像データが記憶されたメモリーカード(図示略)が接続されるメモリーカードインターフェース71と、用紙Pの種類、用紙Pに印刷する画像の解像度、印刷枚数などの各種の入力操作が可能な操作部72とを備えている。操作部72は、ユーザーが各種の入力操作を行う際に入力事項を確認するための表示画面を有している。
【0079】
制御部70は、メモリーカードインターフェース71、操作部72、キャリッジ18の移動量を検出するリニアエンコーダー73、記録ヘッド19、及び回動機構43とそれぞれ電気的に接続されている。また、制御部70は、モータードライバー74を介してキャリッジモーター28及びポンプモーター54とそれぞれ電気的に接続されている。
【0080】
そして、制御部70は、操作部72、及びリニアエンコーダー73からそれぞれ送信される信号に基づき、記録ヘッド19及び回動機構43の駆動をそれぞれ制御するとともに、モータードライバー74を介して各モーター28,54の駆動をそれぞれ制御する。また、制御部70は、キャリッジ18の移動に伴うリニアエンコーダー73からのパルス信号をカウントしてキャリッジ18の移動量を演算することで、キャリッジ18の位置を把握する。
【0081】
また、制御部70は、ROM、RAM、不揮発性メモリーなどから構成された記憶部75を有している。記憶部75には、操作部72から入力される印刷枚数などの各種の情報や、メモリーカード(図示略)から読み込まれる画像データ、各種の制御プログラムなどがそれぞれ記憶される。
【0082】
次に、インクジェット式プリンター11の作用について説明する。
(用紙Pと記録ヘッド19との距離が第1距離の場合)
図11及び図12に示すように、用紙Pと記録ヘッド19との距離が第1距離で印刷を行う場合、印刷領域PA(位置x1から位置x2までの領域)ではキャリッジ18が最高速度の第1速度V1で左右に往復移動しながら記録ヘッド19の各ノズル24から用紙Pにインクをそれぞれ噴射することで、用紙Pの印刷がなされる。そして、キャリッジ18は、印刷中にフラッシングを行うために、定期的にヘッド対向位置x3まで移動する。
【0083】
このとき、キャリッジ18は、ヘッド対向位置x3において係合部材61と係合(衝突)しないため、第1速度V1のままヘッド対向位置x3まで移動して停止する(移動速度Vが0になる)。すなわち、キャリッジ18が少なくとも印刷領域PAよりもヘッド対向位置x3側に移動するまでは、キャリッジ18が減速されずに、キャリッジ18の移動速度Vが第1速度V1に維持される。この場合、キャリッジ18は、ヘッド対向位置x3で停止できる程度に、ヘッド対向位置x3の手前で減速が開始される。
【0084】
このように、キャリッジ18が印刷時と同じ第1速度V1でフラッシングを行うためのヘッド対向位置x3まで移動されるので、印刷中の定期フラッシングによる印刷のスループットの低下が抑制される。
【0085】
また、クリーニングを行う場合、キャリッジ18は、ヘッド対向位置x3からキャッピング位置x4まで移動される。このとき、キャリッジ18のヘッド対向位置x3からキャッピング位置x4までの移動には、キャリッジ18に対してキャップ部材52による負荷がかかる。このため、キャリッジ18は、第1速度V1よりも遅い第2速度V2(本実施形態では第1速度V1の約8分の1程度の速度)でヘッド対向位置x3からキャッピング位置x4まで移動される。
【0086】
すると、上述したように、キャリッジ18には、回転中心Uよりも下側で引っ張りコイルばね59の付勢力Cxが係合板55aを介して左へ向かって働く一方、回転中心Uよりも上側でキャリッジモーター28の駆動力に基づくタイミングベルト27による搬送力Hが右へ向かって働く。このため、キャリッジ18は、右側に傾いた姿勢を取ろうとする。
【0087】
しかしながら、このとき、キャップ部材52によって記録ヘッド19のキャッピングが行われるため、キャリッジ18は、キャップ部材52によって下側から押し上げられるとともに、係合部材61によって上側から下側に向かって押圧される。このため、キャリッジ18の姿勢が水平状態に矯正される。
【0088】
これにより、記録ヘッド19に対してキャップ部材52が真っ直ぐに当接するとともに、係合部材61によって記録ヘッド19がキャリッジ18を介してキャップ部材52に押し付けられるので、キャップ部材52と記録ヘッド19とが十分に密着される。この場合、キャリッジ18の傾きに起因するキャップ部材52による記録ヘッド19のキャッピング不良も抑制される。その後、チューブポンプ53を駆動することで、記録ヘッド19のクリーニングが行われる。
【0089】
なお、キャリッジ18を印刷領域PAからキャッピング位置x4へ移動させる場合であっても、ヘッド対向位置x3及びキャッピング位置x4間ではキャリッジ18に対してキャップ部材52による負荷がかかるため、キャリッジ18はヘッド対向位置x3で一旦停止されてから第2速度V2でキャッピング位置x4まで移動される。
【0090】
(用紙Pと記録ヘッド19との距離が第2距離の場合)
図13及び図14に示すように、用紙Pと記録ヘッド19との距離が第2距離で印刷を行う場合、印刷領域PA(位置x1から位置x2までの領域)ではキャリッジ18が最高速度の第1速度V1で左右に往復移動しながら記録ヘッド19の各ノズル24から用紙Pにインクをそれぞれ噴射することで、用紙Pの印刷がなされる。そして、キャリッジ18は、印刷中にフラッシングを行うために、定期的にヘッド対向位置x3まで移動する。
【0091】
このとき、キャリッジ18は、ヘッド対向位置x3に到達する前に係合部材61と位置x7で係合(衝突)するため、係合部材61と係合する前(位置x5と位置x7との間)で第1速度V1から第2速度に減速されてから、第2速度V2でヘッド対向位置x3まで移動する。すなわち、キャリッジ18は、係合部材61と係合する直前(位置x6)で第1速度V1から0(停止状態)まで減速した後、0から第2速度V2まで加速してから、この第2速度V2でヘッド対向位置x3まで移動する。
【0092】
この場合、キャリッジ18の移動速度Vを第1速度V1から0まで減速する際の領域である減速領域GA(位置x5から位置x6までの領域)の一部(位置x5から位置x2までの領域)は、印刷領域PA(位置x1から位置x2までの領域)に含まれている。さらに、この場合、キャリッジ18は、ヘッド対向位置x3で停止できる程度に、ヘッド対向位置x3の手前で減速が開始される。
【0093】
したがって、キャリッジ18が印刷領域PAからヘッド対向位置x3に移動する場合において、キャリッジ18が減速されるタイミングは、上述の用紙Pと記録ヘッド19との距離が第1距離の場合に比べて早くなっている。
【0094】
この場合、キャリッジ18の当接部67と係合部材61とが係合(接触した状態で上下に対向)する位置x7でのキャリッジ18の移動速度Vは、上述の用紙Pと記録ヘッド19との距離が第1距離の場合においてキャリッジ18の当接部67と係合部材61との少なくとも一部が上下に対向する位置x7に相当する位置での移動速度Vよりも遅くなっている。
【0095】
このように、キャリッジ18が印刷時の第1速度V1よりも遅い第2速度V2でフラッシングを行うためのヘッド対向位置x3まで移動されるので、キャリッジ18と係合部材61とが係合(衝突)するときの衝撃が、キャリッジ18を第1速度V1でヘッド対向位置x3まで移動させる場合に比べて低減される。このため、キャリッジ18と係合部材61との係合(衝突)による衝撃によって各ノズル24内のインクが抜け出ることが抑制されるので、ドット抜けなどのインクの噴射不良が低減される。
【0096】
因みに、定期フラッシングを行うべくキャリッジ18を第1速度V1のままヘッド対向位置x3まで移動させると、キャリッジ18と係合部材61との係合(衝突)による衝撃によって各ノズル24内のインクが抜け出てしまい、ドット抜けなどのインクの噴射不良を招くこととなる。
【0097】
また、クリーニングを行う場合、キャリッジ18は、ヘッド対向位置x3からキャッピング位置x4まで移動される。このとき、キャリッジ18のヘッド対向位置x3からキャッピング位置x4までの移動には、キャリッジ18に対して、係合部材61による負荷に加えてキャップ部材52による負荷がかかる。このため、キャリッジ18は、第2速度V2のままでヘッド対向位置x3からキャッピング位置x4まで移動される。
【0098】
すると、上述したように、キャリッジ18には、回転中心Uよりも下側で引っ張りコイルばね59の付勢力Cxが係合板55aを介して左へ向かって働く一方、回転中心Uよりも上側でキャリッジモーター28の駆動力に基づくタイミングベルト27による搬送力Hが右へ向かって働く。このため、キャリッジ18は、右側に傾いた姿勢を取ろうとする。
【0099】
しかしながら、このとき、キャップ部材52によって記録ヘッド19のキャッピングが行われるため、キャリッジ18は、キャップ部材52によって下側から押し上げられるとともに、係合部材61によって上側から下側に向かって押圧される。このため、キャリッジ18の姿勢が水平状態に矯正される。
【0100】
これにより、記録ヘッド19に対してキャップ部材52が真っ直ぐに当接するとともに、係合部材61によって記録ヘッド19がキャリッジ18を介してキャップ部材52に押し付けられるので、キャップ部材52と記録ヘッド19とが十分に密着される。この場合、キャリッジ18の傾きに起因するキャップ部材52による記録ヘッド19のキャッピング不良も抑制される。その後、チューブポンプ53を駆動することで、記録ヘッド19のクリーニングが行われる。
【0101】
なお、キャリッジ18を印刷領域PAからキャッピング位置x4へ移動させる場合には、位置x6及びキャッピング位置x4間でキャリッジ18に対して、係合部材61及びキャップ部材52のうちの少なくとも一方による負荷がかかるため、キャリッジ18は第2速度V2で位置x6からキャッピング位置x4まで移動される。
【0102】
ここで、キャリッジ18のキャッピング位置x4への移動に伴ってキャリッジ18の当接部67と係合部材61とが係合するときの作用について説明する。
さて、用紙Pと記録ヘッド19との距離が第2距離の場合、図15(a)に示すように、キャリッジ18の当接部67の円弧面67bと係合部材61の案内面64とは、左右方向において対向している。そして、キャリッジ18を右方向へ移動させると、図15(b)に示すように、当接部67の円弧面67bが係合部材61の案内面64に当接する。引き続き、キャリッジ18を右方向へ移動させると、当接部67の円弧面67bが係合部材61の案内面64を押圧面63に向かって摺動し、この摺動に伴って係合部材61が圧縮コイルばね65(図7参照)の付勢力に抗して上昇される。
【0103】
そして、キャリッジ18がヘッド対向位置x3に到達すると、図15(c)に示すように、当接部67の当接面67aの右端部と係合部材61の押圧面63の左端部とが面接触した状態になる。すなわち、キャリッジ18の当接部67が係合部材61の案内面64によって係合部材61の押圧面63に導かれる。このとき、係合部材61の押圧面63は、圧縮コイルばね65(図7参照)の付勢力に基づいて、当接部67の当接面67aを下方に向かって押圧している。
【0104】
そして、キャリッジ18がキャッピング位置x4に到達すると、図15(d)に示すように、係合部材61の押圧面63全体が当接部67の当接面67aに面接触した状態となる。この面接触により、キャリッジ18が係合部材61によって安定して下方に押圧される。
【0105】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)キャリッジ18をキャッピング位置へ移動させた場合、キャリッジ18の自重Mgとキャリッジ18を係合部材61が鉛直方向の下側へ押圧する押圧力Fzとの和は、キャップ部材52の記録ヘッド19に対する鉛直方向の下側からの当接に伴ってキャリッジ18に対して鉛直方向の上側に向かって作用する付勢力Cz以上に設定されている。このため、キャッピング位置でキャップ部材52によって記録ヘッド19のキャッピングが行われた際に、キャリッジ18がキャップ部材52によって下側から押し上げられる付勢力Czに抗して、該キャリッジ18を係合部材61によって上側から下側に向かって十分な押圧力Fzで押し下げられる。これにより、記録ヘッド19とキャップ部材52とが互いに押し付け合うようになるので、記録ヘッド19とキャップ部材52との密着力を高めることができる。したがって、記録ヘッド19を支持したキャリッジ18の高さ位置が調節可能であっても、キャップ部材52を記録ヘッド19に対して十分に密着させることができる。
【0106】
因みに、キャリッジ18の自重Mgと係合部材61の押圧力Fzとの和がキャップ部材52の付勢力Czよりも小さい場合には、キャップ部材52によって記録ヘッド19のキャッピングが行われた際に、キャリッジ18がキャップ部材52の付勢力Czによって下側から押し上げられるだけになってしまう。すなわち、キャリッジ18がキャップ部材52によって一方的に押し上げられるだけになってしまう。このため、記録ヘッド19にキャップ部材52を押し付ける力が不足するので、キャップ部材52を記録ヘッド19に対して十分に密着させることができなくなってしまう。
【0107】
(2)係合部材61は、摺動面35におけるスライド部材34の摺動領域に対して鉛直方向に重なる位置でキャリッジ18を押圧するため、係合部材61によりキャリッジ18に対して効果的に押圧力を付与することができる。
【0108】
(3)キャリッジ18の当接部67における係合部材61による押圧力の作用点は、左右一対の摺接部36間の領域に対して鉛直方向に重なる位置にあるため、係合部材61によってキャリッジ18の当接部67に付与される押圧力を、スライド部材34の各摺接部36でバランスよく受けることができる。したがって、キャリッジ18をスライド部材34によって安定して支持することができる。
【0109】
(4)係合部材61は、キャリッジ18の当接部67に水平で平坦な押圧面63を面接触させた状態で該当接部67を押圧するため、係合部材61によりキャリッジ18を安定して押圧することができる。
【0110】
(5)係合部材61は、左右方向(走査方向)においてキャリッジ18の当接部67と係合した際に、該当接部67を押圧面63に導く案内面64を有しているため、該案内面64により当接部67を押圧面63に円滑に導くことができる。この場合、係合部材61の案内面64は傾斜しているため、該案内面64にキャリッジ18の当接部67が係合(衝突)するときの衝撃を緩和することができる。
【0111】
(6)キャリッジ18が印刷領域PAからヘッド対向位置x3まで移動する場合に、キャリッジ18が減速されるタイミングは、用紙Pと記録ヘッド19との距離が第1距離である場合よりも第2距離である場合の方が早くなっている。このため、キャリッジ18と係合部材61とが係合しない場合よりも係合する場合の方がキャリッジ18を減速させるタイミングが早いので、キャリッジ18と係合部材61とが係合するときの衝撃を低減することができる。
【0112】
(7)キャリッジ18が印刷領域PAからヘッド対向位置x3まで移動する場合に、キャリッジ18の係合部材61と対向する位置での移動速度は、用紙Pと記録ヘッド19との距離が第1距離であるときよりも第2距離であるときの方が遅くなっているため、キャリッジ18と係合部材61とが係合するときの衝撃を効果的に低減することができる。
【0113】
(8)キャリッジ18は、用紙Pと記録ヘッド19との距離が第2距離である状態で減速される場合に、移動速度が第1速度V1から0まで減速されてから第1速度V1よりも遅い第2速度V2まで加速されるため、キャリッジ18を減速する際の制御を制御部70によって容易に行うことができる。
【0114】
(9)用紙Pと記録ヘッド19との距離が第2距離である場合において、キャリッジ18の移動速度を第1速度V1から0まで減速する際の領域である減速領域GAの一部は、印刷領域PAに含まれている。このため、減速領域GAの全てを印刷領域PAに含ませない場合に比べて、減速領域GAを確保するために必要なスペースを低減することができ、ひいてはインクジェット式プリンター11の小型化に寄与することができる。
【0115】
(10)用紙Pと記録ヘッド19との距離が第1距離である場合にはヘッド対向位置x3においてキャリッジ18と係合部材61とが係合しない。このため、用紙Pと記録ヘッド19との距離が第1距離である場合、キャリッジ18は、印刷中にフラッシングを行うべく印刷領域PAからヘッド対向位置x3へ移動される際に、減速されることなく印刷中と同じ第1速度V1でヘッド対向位置x3まで移動される。したがって、キャリッジ18を印刷領域PAからヘッド対向位置x3へ迅速に移動させることができるので、印刷中に行う定期フラッシングによる印刷のスループットの低下を抑制することができる。
【0116】
(11)キャッピング位置でキャップ部材52によって記録ヘッド19のキャッピングが行われる際に、キャリッジ18が係合部材61によってキャップ部材52側へ押圧されるので、用紙Pと記録ヘッド19との距離に関係なく、キャップ部材52によって記録ヘッド19のキャッピングを行うことができる。
【0117】
(12)キャッピング位置でキャップ部材52によって記録ヘッド19のキャッピングが行われる際に、キャリッジ18が係合部材61によってキャップ部材52側へ押圧されることで、キャリッジ18の姿勢を安定させることができる。このため、キャリッジ18との係合によって各種部材の切換動作を行うための切換トリガーをメンテナンス領域MAに配置することができる。この結果、本体フレーム12内の省スペース化を図ることができ、ひいてはインクジェット式プリンター11の小型化に寄与することができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0118】
・用紙Pと記録ヘッド19との距離が第1距離である場合には、キャリッジ18を必ずしも減速させることなく印刷領域PAからヘッド対向位置x3へ移動させる必要はない。すなわち、キャリッジ18を印刷領域PAからヘッド対向位置x3までの途中で減速させてもよい。
【0119】
・用紙Pと記録ヘッド19との距離が第2距離である場合においてキャリッジ18の移動速度Vを第1速度V1から0まで減速する際の領域である減速領域GAの一部は、必ずしも印刷領域PAに含ませる必要はない。
【0120】
・キャリッジ18は、用紙Pと記録ヘッド19との距離が第2距離である状態で減速させる場合に、移動速度Vを第1速度V1から直接第2速度V2まで減速させるようにしてもよい。
【0121】
・キャリッジ18がヘッド対向位置(フラッシング位置)からキャッピング位置へ移動するときの移動速度Vは、用紙Pと記録ヘッド19との距離が第1距離である場合の方が第2距離である場合よりも速くなるようにしてもよい。このようにすれば、インクジェット式プリンター11のスループットを向上することができる。
【0122】
・キャリッジ18との係合によって各種部材の切換動作を行うための切換トリガーを係合部材としてもよいし、キャリッジ18と係合するキャップ部材52(係合板55a)を係合部材としてもよい。
【0123】
・キャップ部材52は、キャリッジ18がキャッピング位置にある場合に、別途駆動源によって、記録ヘッド19に対して当接する当接位置と記録ヘッド19から離間する非当接位置との間で昇降可能に構成してもよい。
【0124】
・キャリッジ18は、カム部材38により高さ位置が2段階、3段階、あるいは5段階以上で調節可能に構成してもよい。
・用紙Pの代わりに、プラスチックフィルムや布、あるいは金属箔などをターゲットとして用いてもよい。
【0125】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0126】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター、18…移動体としてのキャリッジ、19…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、24…ノズル、38…位置調節機構としてのカム部材、52…キャップ部材、61…係合部材、x3…ヘッド対向位置(フラッシング位置)、x4…キャッピング位置、PA…液体噴射領域としての印刷領域、GA…減速領域、V…移動速度、V1…第1速度、V2…第2速度、P…ターゲットとしての用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからターゲットに対して液体を噴射可能な液体噴射ヘッドを支持するとともに、走査方向へ移動可能に構成された移動体と、
前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離を調節するべく前記移動体の位置を調節する位置調節機構と、
前記ノズルを囲うように前記液体噴射ヘッドに対して当接可能なキャップ部材と、
前記液体噴射ヘッドが前記ターゲットに対して前記液体を噴射可能な領域である液体噴射領域から前記キャップ部材と対向する位置であるヘッド対向位置まで前記移動体が移動する場合に、前記液体噴射領域よりも前記ヘッド対向位置側で前記移動体と係合可能な係合部材と
を備え、
前記位置調節機構は、前記液体噴射ヘッドが前記キャップ部材と対向する位置において、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が、前記移動体が移動時に前記係合部材と係合しない第1距離と、前記移動体が移動時に前記係合部材と係合するとともに前記第1距離よりも長い第2距離との間で変化するように、前記移動体の位置を調節することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記位置調節機構が前記第1距離に前記移動体の位置を調節した場合に、前記移動体は、フラッシング位置において前記係合部材と係合せず、キャッピング位置において前記係合部材と係合することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記移動体は、前記液体噴射領域から前記ヘッド対向位置まで移動する場合に、途中で減速され、
前記移動体が減速されるタイミングは、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が前記第1距離である場合よりも前記第2距離である場合の方が早いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記移動体は、移動速度が0まで減速され、
前記移動体の移動速度が0となる位置は、前記第1距離である場合よりも前記第2距離である場合の方が前記液体噴射領域側にあることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記移動体が前記液体噴射領域から前記ヘッド対向位置まで移動する場合に、前記移動体の前記係合部材と対向する位置での移動速度は、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が前記第1距離であるときよりも前記第2距離であるときの方が遅いことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記移動体は、前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が前記第2距離である状態で減速される場合に、移動速度が第1速度から0まで減速されてから前記第1速度よりも遅い第2速度まで加速されることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が前記第2距離である場合において、前記移動体の移動速度を前記第1速度から0まで減速する際の領域である減速領域の一部は、前記液体噴射領域に含まれることを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記ターゲットと前記液体噴射ヘッドとの距離が前記第1距離である場合には、前記移動体は減速されることなく前記液体噴射領域から前記ヘッド対向位置へ移動されることを特徴とする請求項3〜請求項7のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記移動体が前記フラッシング位置から前記キャッピング位置へ移動するときの移動速度は、前記第1距離である場合の方が前記第2距離である場合よりも速いことを特徴とする請求項2〜請求項8のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−49202(P2013−49202A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188624(P2011−188624)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】