説明

液体噴射装置

【課題】増設カセットを装着することによって多数枚の用紙に記録を行う際の、ユーザーの利便性を向上させる。
【解決手段】インクジェットプリンター1は、装置本体2a側に設けられた廃液タンク13に加え、増設被噴射媒体収容部或いは増設ユニットとしての用紙カセット5B側に、増設廃液貯留部としての廃液タンク15が設けられ、装置本体2a側から用紙カセット5B側へと廃インクを案内可能に構成されている。従って廃インクを貯留可能な容量が増加し、多数枚の用紙に印刷を行う場合においてもユーザーに短期間の頻繁な作業(廃液タンクの交換作業)を強いることがなく、ユーザーの利便性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被噴射媒体に対して液体噴射を行う液体噴射装置に関し、特に液体噴射実行部(装置本体)に対し、被噴射媒体を収容する被噴射媒体収容部が着脱可能に構成された液体噴射装置に関する。また本発明は、液体噴射装置に対して着脱可能に構成された、被噴射媒体を収容する増設ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例として記録装置があり、更に記録装置の一例としてインクジェットプリンターがある。インクジェットプリンターにおいては、インクジェット記録ヘッドから吐出されたインクは、全て被噴射媒体の一例としての記録用紙に着弾するとは限らず、意図的に所定の場所に打ち捨てられる場合がある。
【0003】
例えば、記録用紙に余白無く記録を行う、所謂縁無し記録を実行可能なインクジェットプリンターにおいては、インクジェット記録ヘッドと対向配置された支持部材(プラテン)の上面に溝が形成されており、この溝に、記録用紙の縁から外れた領域に吐出されるインクが打ち捨てられるようになっている。溝の底部にはインク排出穴が設けられており、溝に打ち捨てられたインクはこのインク排出穴から下方に排出され、廃液を貯留する廃液貯留部(以下「廃液タンク」と言う)へと導かれる。
【0004】
また、縁無し記録の如何に拘わらず、インクジェットプリンターにおいてはインクジェット記録ヘッドをメンテナンスするメンテナンス手段が設けられている。メンテナンス手段は、インクジェット記録ヘッドをキャップするキャッピングユニットと、キャップ内に負圧を発生させるポンプユニットと、を備えて構成されており、インクジェット記録ヘッドのインク吐出孔からインクを吸引し、そして吸引したインクを廃液タンクに向けて排出する様に構成されている。
【0005】
ここで、上述の様な廃タンクの排出が繰り返されていくと、やがて廃液タンクが廃液で満杯となる。そして廃液タンクが満杯になると、それ以降の記録動作が実行できなくなる。特に、ビジネス用途のインクジェットプリンターは長寿命化が求められるので、廃液タンクにおける廃インク貯留量の管理は重要となる。
【0006】
そこで、廃液タンクをプリンター本体に対し着脱可能に設けるとともに、廃液タンクが廃液で満杯になった際に、ユーザーが廃液タンクを交換できる様にしたインクジェット記録装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−234209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、記録装置においては「増設カセット」などと呼ばれる、多数枚の用紙に記録を行う為の用紙収容手段がオプションで用意される場合がある。この様な増設カセットを利用することにより、ユーザーは頻繁に用紙補充作業を行うことなく、多数枚の用紙に記録を行うことができる。
【0009】
しかしながらこの様な増設カセットを用いて多数枚の用紙に印刷を行う場合、廃液タンクも短期間で満杯になることから、ユーザーは廃液タンクの交換作業を短期間に行う必要が生じることとなり、好ましくない。また、廃液タンクのみならず、噴射すべきインクを貯留するインクカートリッジも短期間での交換作業が必要となり、同様に好ましくない。
【0010】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、増設カセットを装着することによって多数枚の用紙に記録を行う際の、ユーザーの利便性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る液体噴射装置は、被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッド及び前記液体噴射ヘッドから打ち捨てられた廃液を貯留可能な本体側廃液貯留部、並びに液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する本体側被噴射媒体収容部を備えた液体噴射実行部と、前記液体噴射実行部に対して着脱可能に構成されるとともに、前記液体噴射実行部に装着された状態において前記液体噴射実行部へ被噴射媒体を給送可能な、液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する増設被噴射媒体収容部と、を備え、前記増設被噴射媒体収容部には、前記液体噴射ヘッドから打ち捨てられた廃液を貯留可能な増設廃液貯留部が設けられ、前記液体噴射実行部側から前記増設廃液貯留部へと廃液を案内可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、増設被噴射媒体収容部には、液体噴射ヘッドから打ち捨てられた廃液を貯留可能な増設廃液貯留部が設けられ、液体噴射実行部側から増設廃液貯留部へと廃液を案内可能に構成されており、即ち本体側廃液貯留部に加えて増設廃液貯留部を備えていることから廃液を貯留可能な容量が増加し、多数枚の被噴射媒体に液体噴射を行う場合においてもユーザーに短期間の作業(例えば、廃液貯留部の交換作業)を強いることがなく、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記廃液の排出先を前記本体側廃液貯留部及び前記増設廃液貯留部のいずれかに選択可能に構成されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記廃液の排出先を前記本体側廃液貯留部及び前記増設廃液貯留部のいずれかに選択可能に構成されているので、例えば仮に前記本体側廃液貯留部が一杯になった場合には前記廃液の排出先を前記増設廃液貯留部へ切り換えることで、ユーザーが何らかの作業を行うことなく、継続して液体噴射を実行することができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記増設廃液貯留部及び前記本体側廃液貯留部は着脱可能に構成されるとともに、互換性を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記増設廃液貯留部及び前記本体側廃液貯留部は着脱可能に構成されるとともに互換性を備えるので、交換用部材としてユーザーは前記増設廃液貯留部及び前記本体側廃液貯留部のそれぞれについて専用のものを用意する必要が無く、ユーザーの利便性がより一層向上する。
【0015】
本発明の第4の態様は、第2のまたは第3の態様において、前記廃液の排出に際し、前記本体側廃液貯留部と前記増設廃液貯留部とを交互に利用することを特徴とする。
廃液貯留部には、廃液を内部に保持する為の吸収材が設けられる場合があるが、単位時間当たりの廃液の排出量が吸収材の吸収能力を超えると、廃液がオーバーフローする虞がある。
【0016】
しかしながら本態様によれば、液体噴射装置は廃液の排出に際して前記本体側廃液貯留部と前記増設廃液貯留部とを交互に利用するので、一方が廃液を吸収している際に他方へ廃液を排出することで、上述の様なオーバーフローの発生を効果的に防止することができる。
【0017】
本発明の第5の態様に係る液体噴射装置は、被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッド及び前記液体噴射ヘッドから噴射する液体を貯留する本体側液体貯留部、並びに液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する本体側被噴射媒体収容部を備えた液体噴射実行部と、前記液体噴射実行部に対して着脱可能に構成されるとともに、前記液体噴射実行部に装着された状態において前記液体噴射実行部へ被噴射媒体を給送可能な、液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する増設被噴射媒体収容部と、を備え、前記増設被噴射媒体収容部には、前記液体噴射ヘッドから噴射する液体を貯留する増設液体貯留部が設けられ、前記増設被噴射媒体収容部側から前記液体噴射ヘッドへと液体を供給可能に構成されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、増設被噴射媒体収容部には、液体噴射ヘッドから噴射する液体を貯留する増設液体貯留部が設けられ、当該増設液体貯留部から前記液体噴射ヘッドへと液体を供給可能に構成されているので、装置全体として液体噴射ヘッドから噴射する液体の貯留容量が増加し、多数枚の被噴射媒体に液体噴射を行う場合においてもユーザーに短期間の作業(例えば、液体貯留部の交換作業)を強いることがなく、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記液体噴射ヘッドへ液体を供給する際の液体の供給元を前記本体側液体貯留部及び前記増設液体貯留部のいずれかに選択可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、液体の供給元を前記本体側液体貯留部及び前記増設液体貯留部のいずれかに選択可能に構成されているので、例えば仮に前記本体側液体貯留部が空になった場合には液体の供給元を前記増設液体貯留部へ切り換えることで、ユーザーが何らかの作業を行うことなく、継続して液体噴射を実行することができる。
【0021】
本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記増設液体貯留部及び前記本体側液体貯留部は着脱可能に構成されるとともに、互換性を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記増設液体貯留部及び前記本体側液体貯留部は着脱可能に構成されるとともに、互換性を備えるので、交換用部材としてユーザーは前記増設液体貯留部及び前記本体側液体貯留部のそれぞれについて専用のものを用意する必要が無く、ユーザーの利便性がより一層向上する。
【0022】
本発明の第8の態様は、被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する被噴射媒体収容部を備えた液体噴射装置に対して着脱可能に構成された、液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する増設ユニットであって、前記液体噴射ヘッドから打ち捨てられた廃液を貯留可能な増設廃液貯留部を備えていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、増設ユニットを液体噴射装置に装着することで廃液を貯留可能な容量が増加し、多数枚の被噴射媒体に液体噴射を行う場合においてもユーザーに短期間の作業(例えば、廃液貯留部の交換作業)を強いることがなく、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0024】
本発明の第9の態様は、被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する被噴射媒体収容部を備えた液体噴射装置に対して着脱可能に構成された、液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する増設ユニットであって、前記液体噴射ヘッドから噴射する液体を貯留する増設液体貯留部を備えていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、増設ユニットを液体噴射装置に装着することで液体噴射ヘッドから噴射する液体の容量が増加し、多数枚の被噴射媒体に液体噴射を行う場合においてもユーザーに短期間の作業(例えば、液体貯留部の交換作業)を強いることがなく、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターを装置前方側から見た斜視図。
【図2】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面概略図。
【図3】本発明に係るインクジェットプリンターのインク供給系統及びインク排出系統を示す図。
【図4】インク排出時の制御を示すフローチャート。
【図5】インク供給時の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0028】
図1は、本発明に係る液体噴射装置の一例としての、被記録媒体に記録を行う記録装置、そして更にその一例としてのインクジェットプリンター1を、装置前方側から見た斜視図である。また図2はインクジェットプリンター1の側断面概略図、図3はインク供給系統及びインク排出系統を示す図、図4はインク排出時の制御を示すフローチャート、図5はインク供給時の制御を示すフローチャートである。
【0029】
以下では先ず、インクジェットプリンター1の全体構成を概説する。図1及び図2において符号2は記録用紙にインクジェット記録を行う、液体噴射実行部としての記録部を、符号3は記録部2の上部に設けられるスキャナ部を、符号4はスキャナ部3の上部に設けられる自動原稿搬送部を、それぞれ示しており、即ちインクジェットプリンター1はインクジェット記録機能に加えてスキャナ機能を備える複合機として構成されている。
【0030】
装置前面において符号5A、5Bは被噴射媒体の一例としての記録用紙を収容する、「被噴射媒体収容部」としての着脱可能な用紙カセットであり、符号6は記録が行われた用紙が排出される用紙排出口であり、符号7は排出された記録用紙を受ける排紙受けトレイである。
【0031】
符号8は、紙ジャム発生時に用紙搬送路を露呈させる為の前面カバーであり、符号9は電源ボタンや各種印刷設定・記録実行を行う操作ボタン、印刷設定内容や印刷画像のプレビュー表示などを行う表示部、等を備えて成る操作パネルである。更に、装置上部のスキャナ装置において符号10は原稿セット用トレイを示しており、符号11は排出された原稿を受ける原稿受けトレイを示している。
【0032】
続いて図2を参照しながら記録部2における用紙搬送経路について概説する。尚、図2は記録部2の構成を模式的に示したものであり、全ての構成を示すものではなく、説明に不要な構成要素は図示を省略している。
【0033】
記録部2を構成する装置本体2aは、3つの用紙給送手段を備えており、1つは装置下部に設けられた「本体側被噴射媒体収容部」としての用紙カセット5Aからの用紙給送経路(第2用紙給送部34)であり、もう1つは装置底部に装着された「増設被噴射媒体収容部」としての用紙カセット5Bからの用紙給送経路(第3用紙給送部38)である。更にもう1つは装置背面側(図2において右側)に設けられた支持部材30からの用紙給送経路である(第1用紙給送部29)。
【0034】
尚、用紙カセット5Bは、装置本体2aに対して着脱可能であり、装置本体2aに装着することにより用紙カセット5Bからも用紙が給送可能となる。尚、破線P2は用紙カセット5Aから送り出される用紙の通過軌跡を示し、符号P3は用紙カセット5Bから送り出される用紙の通過軌跡を示し、破線P1は支持部材30から送り出される用紙の通過軌跡を示している。
【0035】
尚、より具体的には、用紙カセット5Bは装置本体2aに対して着脱可能な増設ユニットとしてのユニット本体41に対して着脱可能に設けられており、このユニット本体41を介して、装置本体2aに対して着脱可能となっている。但しこれは一例であり、用紙カセット5Bが直接装置本体2aに対して着脱可能に設けられていても良い。
【0036】
続いて、第2用紙給送部34において、用紙カセット5Aと対向する位置に設けられた符号36で示すローラーは給送ローラーであり、この給送ローラー36は揺動軸35aを中心に揺動可能な揺動部材35に設けられ、揺動部材35の揺動を介して用紙カセット5Aに対し進退可能となっている。そして給送ローラー36が用紙カセット5Aに収容された用紙の最上位のものと接して回転することで、当該最上位の用紙を下流側に送り出す。
【0037】
増設カセットである用紙カセット5Bを備える第3用紙給送部38も同様に、給送ローラー40を備えており、この給送ローラー40は揺動軸39aを中心に揺動可能な揺動部材39に設けられ、揺動部材39の揺動を介して給送ローラー40が用紙カセット5Bに対し進退可能となっている。そして給送ローラー40は用紙カセット5Bに収容された用紙の最上位のものと接して回転することで、当該最上位の用紙を下流側に送り出す。
【0038】
用紙カセット5A、5Bから送り出された用紙は、大径の反転ローラー43によって湾曲反転させられた後、搬送駆動ローラー46及び搬送従動ローラー47に到達する。尚、符号44は反転ローラー43との間で用紙をニップすることにより用紙の分離を行う分離ローラーを示している。
【0039】
一方、第1用紙給送部29において、支持部材30は用紙を傾斜姿勢に支持するとともに、上部の図示しない揺動軸を中心に揺動することで、支持している用紙の最上位のものを給送ローラー31に圧接させる。給送ローラー31は、回転することにより、圧接している用紙を下流側へ送り出す。尚、符号32は給送ローラー31との間で用紙をニップすることにより用紙の分離を行う分離ローラーを示している。
【0040】
搬送駆動ローラー46及び搬送従動ローラー47は、下流側へと用紙を精密送りするローラー対であり、このローラー対の下流側にはインクジェット式の記録ヘッド49と、用紙を支持する支持部材50とが対向配置されている。
【0041】
液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド49は、主走査方向(図2の紙面表裏方向)に往復動可能なキャリッジ48の底部に設けられ、主走査方向に移動しながら用紙に対してインクを吐出(噴射)することにより記録が行われる。
【0042】
尚、キャリッジ48のホーム位置(不図示)には、図示を省略するメンテナンスユニットが設けられている。このメンテナンスユニットは、記録ヘッド49をキャップするキャップユニット12(図3)と、このキャップユニット12に負圧を発生させるポンプユニット(不図示)と、を備えており、キャップユニット12が記録ヘッド49をキャップした状態で当該キャップユニット12内に負圧を生じさせることにより、インク吐出ノズル(不図示)からインクを吸引する様になっている。そして吸引されたインクは、廃液として、後述する廃液貯留部としての廃液タンク(14、16)へと排出される様になっている。
【0043】
尚、本実施形態ではキャリッジ48にインクカートリッジを搭載しない所謂オフキャリッジタイプであり、固定的に設けられたインクカートリッジ(後述)と記録ヘッド49との間が可撓性を有するインクチューブで接続される構成であるが、キャリッジ48にインクカートリッジを搭載する、所謂オンキャリッジタイプであっても本発明の範囲に含まれることは言うまでも無い。
【0044】
次に、記録ヘッド49の下流側において、符号52は用紙の浮きを防止する従動ローラーであり、符号53は回転することにより用紙を排出する排出駆動ローラーであり、符号54は排出駆動ローラー53との間で用紙をニップする排出従動ローラーである。これらローラー対により、記録の行われた用紙は、排紙受けトレイ7に向けて排出される。
【0045】
以上がインクジェットプリンター1の大略構成であり、以下、廃液の排出系統及びインクの供給系統について説明する。
図3において、符号13は「本体側液体貯留部」としてのインクカートリッジを、符号15は「増設側液体貯留部」としてのインクカートリッジを、それぞれ示している。インクカートリッジ13は装置本体2aに対して着脱可能であり、インクカートリッジ15は用紙カセット5B(ユニット本体41)に対して着脱可能となっている。尚、インクカートリッジ13、15は例えばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)、の色毎に独立しており、色毎に着脱(交換)可能となっている。
【0046】
符号17Aは、インクカートリッジ13が接続されるバルブを示しており、また符号17Bはインクカートリッジ15が接続されるバルブを示しており、これらバルブの開閉制御によって、インクカートリッジ13、15のいずれをインク供給元とするかを選択できる様になっている。
【0047】
尚、バルブ17A、17Bは、インクチューブを介して記録ヘッド49と接続される。また、符号19は流路接続部を示しており、用紙カセット5Bが装置本体2aに装着された際にインクカートリッジ15と記録ヘッド49との間のインク流路を接続するものである。
【0048】
これらインクカートリッジ13、15は、装置前方側に設けられ、装置前方側から着脱作業を行う様に構成されている。一方で装置本体2aの後部には「本体側廃液貯留部」としての廃液タンク14が、装置本体2aに対して着脱可能に設けられている。また、用紙カセット5B(ユニット本体41)の後部には、「増設側廃液貯留部」としての廃液タンク16が、用紙カセット5B(ユニット本体41)に対して着脱可能に設けられている。
【0049】
符号18Aは、廃液タンク14が接続されるバルブを示しており、また符号18Bは廃液タンク16が接続されるバルブを示しており、これらバルブの開閉制御によって、廃液タンク14、16のいずれをキャップユニット12からの廃インク排出先とするかを選択できる様になっている。
【0050】
尚、バルブ18A、18Bは、インクチューブを介して一方側流路がキャップユニット12に、他方側流路が廃液タンク14、16にそれぞれ接続される。また、符号20は流路接続部を示しており、用紙カセット5Bが装置本体2aに装着された際に廃液タンク16とバルブ18Bとの間の廃液流路を接続するものである。バルブ18Bを閉じた状態とすることで、用紙カセット5Bを装置本体2aから取り外しても、廃液が漏出することを防止することができる。
【0051】
また、符号23は制御部を示しており、バルブ17A、17B、18A、18B、のこれらが制御部23によって開閉制御される様になっている。尚、符号22は接続センサーであり、制御部23は、用紙カセット5B(ユニット本体41)が装置本体2aに装着されたことを接続センサー23からの検出信号によって把握できる様になっている。
【0052】
この制御部23は、プリンタドライバにより生成された印刷データをもとにしてインク吐出量を算出し、それをもとにしてインクカートリッジ13、15の残量(色毎の残量)を算出するインク残量算出部24を備えている。また制御部23は、インクを空吐出(フラッシング)する際やキャップユニット12を介した記録ヘッド49からのインク吸引時のインク排出容量をもとにして、廃液タンク14、16の残容量を算出する算出部25を備えている。
【0053】
尚、各インクカートリッジの残容量(或いは総インク使用量)や各廃液タンクの残容量(或いは総インク排出量)は、適宜、不揮発性メモリ(不図示)などの記憶手段に書き込まれ、保持される様になっている。
【0054】
以上の構成を備えたインクジェットプリンター1において、廃インクが発生する場合の制御は図4に示す通りである。即ち制御部23が、インク排出量を算出し(ステップS101)、次いでインク排出先を選択する(ステップS102)。
【0055】
このインク排出先の選択は、廃液タンク14、16の残容量に基づき、排出可能な(満状態でない)いずれかの廃液タンクを選択する。この廃液タンクの選択は、例えば残容量の多い(より多くの廃液を貯留可能な)廃液タンクを選択することができる。或いは、前回排出先とは異なる方の廃液タンクを選択しても良い。尚、前回排出先の廃液タンク情報は、例えば揮発性メモリ(不図示)或いは不揮発性メモリ(不図示)に格納されており、制御部23はその情報を参照する。
【0056】
次いで、選択した廃液タンクへ廃インクが排出される様にバルブ切り換えを行い(ステップS103)、選択した廃液タンクに対する総インク排出量(残容量)に関するデータを更新する(ステップS104)。
【0057】
尚、廃液タンクの選択は、例えば多数枚の用紙に連続して印刷する場合には、所定枚数毎に、或いは所定時間毎に、或いは所定のインク排出量毎に、廃液タンク14、16を交互に選択する(切り換える)様にしても良い。
【0058】
即ち、各廃液タンク14、16には、廃インクを内部に保持する為のインク吸収材が設けられているが(不図示)、単位時間当たりの廃インクの排出量がインク吸収材の吸収能力を超えると、廃インクが各廃液タンクからオーバーフローする虞がある。
【0059】
しかしながら上述の様に廃インクの排出に際して廃液タンク14、16を交互に利用し、一方が廃インクを吸収している際に他方へ廃インクを排出することで、上述の様なオーバーフローの発生を効果的に防止することができる。
【0060】
また、廃液タンクの選択は、例えば各廃液タンク14、16が同時期に満状態となり、即ち交換時期が同時期に訪れる様に制御することもできる。この様に制御することで、例えば一方の廃液タンクを交換した後、間もなく他方の廃液タンクを交換する必要が生じることを防止でき、即ちユーザーが2つの廃液タンクを一度に交換でき、ユーザーの利便性が向上する。
【0061】
一方、インクカートリッジ13、15についても同様に、図5に示す様に制御部23が、インク使用量を算出し(ステップS201)、次いでインク供給元を選択する(ステップS202)。このインク供給元の選択は、インクカートリッジ13、15の残量に基づき、供給可能な(残量がゼロでない)いずれかのインクカートリッジを選択する。
【0062】
このインクカートリッジの選択は、例えば残量の多いインクカートリッジを選択することができる。或いは、前回供給元とは異なる方のインクカートリッジを選択しても良い。尚、前回供給元のインクカートリッジ情報は、例えば揮発性メモリ(不図示)或いは不揮発性メモリ(不図示)に格納されており、制御部23はその情報を参照する。
【0063】
次いで、選択したインクカートリッジからインクが供給される様にバルブ切り換えを行い(ステップS203)、選択したインクカートリッジについてのインク残量に関するデータを更新する(ステップS204)。
【0064】
尚、インクカートリッジの選択は、例えば各インクカートリッジ13、15が同時期に残量ゼロとなり、即ち交換時期が同時期に訪れる様に制御することもできる。この様に制御することで、例えば一方のインクカートリッジを交換した後、間もなく他方のインクカートリッジを交換する必要が生じることを防止でき、即ちユーザーが2つのインクカートリッジを一度に交換でき、ユーザーの利便性が向上する。
【0065】
以上説明したように、インクジェットプリンター1は、増設被噴射媒体収容部或いは増設ユニットとしての用紙カセット5B側に、増設廃液貯留部としての廃液タンク15が設けられ、装置本体2a側から用紙カセット5B側へと廃インクを案内可能に構成されているので、廃インクを貯留可能な容量が増加し、多数枚の用紙に印刷を行う場合においてもユーザーに短期間の頻繁な作業(廃液タンクの交換作業)を強いることがなく、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0066】
また、使用する廃液タンクを切り換えることで、一方が満杯になっても他方を利用することができ、ユーザーが廃液タンクの交換作業を行うことなく、多数枚の用紙に対して継続して印刷を行うことができる。
【0067】
尚、廃液タンク13、15は、同一規格により構成し、互換性を持たせることも好適である。この様にすることで、ユーザーは交換用部材としての廃液タンクを、装置本体2aに用いるものと用紙カセット5Bに用いるものとのそれぞれについて専用のものを用意する必要が無く、ユーザーの利便性がより一層向上する。
【0068】
インクカートリッジについても同様に、増設被噴射媒体収容部或いは増設ユニットとしての用紙カセット5B側に、増設液体貯留部としてのインクカートリッジ16が設けられ、用紙カセット5B側から装置本体2a側へとインクを供給可能に構成されているので、装置全体としてインク容量が増加し、多数枚の用紙に印刷を行う場合においてもユーザーに短期間の頻繁な作業(インクカートリッジの交換作業)を強いることがなく、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0069】
また、使用するインクカートリッジを切り換えることで、一方が空になっても他方を利用することができ、ユーザーがインクカートリッジの交換作業を行うことなく、多数枚の用紙に対して継続して印刷を行うことができる。
【0070】
更に、インクカートリッジ14、16を、同一規格により構成し、互換性を持たせる様にすれば、ユーザーは交換用部材としてのインクカートリッジを、装置本体2aに用いるものと用紙カセット5Bに用いるものとのそれぞれについて専用のものを用意する必要が無く、ユーザーの利便性がより一層向上する。
【0071】
以上説明した実施形態では、廃インクはキャップユニット12から排出されるが、用紙の四辺に余白無く記録を行う記録装置においては、記録ヘッド49と対向配置された支持部材50にインク打ち捨て様の溝穴が形成される。従って用紙の四辺に余白無く記録を行う記録装置においては、支持部材50もインク排出元となる。
【0072】
尚、以上の通り本実施形態では本発明を液体噴射装置の一例としての記録装置、そして更にその一例としてのインクジェットプリンターに適用したが、その他液体噴射装置一般に適用することも可能である。
【0073】
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンター、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含むものである。
【0074】
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0075】
1 インクジェットプリンター、2 記録部、2a 装置本体、3 スキャナ部、4 自動原稿搬送部、5A 用紙カセット(本体側)、5B 用紙カセット(増設側)、6 用紙排出口、7 排紙受けトレイ、8 前面カバー、9 操作パネル、10 トレイ、11 原稿受けトレイ、12 キャップユニット、13 インクカートリッジ(本体側)、14 廃液タンク(本体側)、15 インクカートリッジ(増設側)、16 廃液タンク(増設側)、17A、17B バルブ、18A、18B バルブ、19 流路接続部、20 流路接続部、22 接続センサー、23 制御部、24 インク残量算出部、25 廃液タンク残容量算出部、29 第1用紙給送部、30 用紙支持部材、31 給送ローラー、32 分離ローラー、34 第2用紙給送部、35 揺動部材、36 給送ローラー、38 第3用紙給送部、39 揺動部材、40 給送ローラー、41 ユニット本体、43 反転ローラー、44 分離ローラー、46 搬送駆動ローラー、47 搬送従動ローラー、48 キャリッジ、49 インクジェット記録ヘッド、50 支持部材、52 従動ローラー、53 排出駆動ローラー、54 排出従動ローラー、P1、P2、P3 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッド及び前記液体噴射ヘッドから打ち捨てられた廃液を貯留可能な本体側廃液貯留部、並びに液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する本体側被噴射媒体収容部を備えた液体噴射実行部と、
前記液体噴射実行部に対して着脱可能に構成されるとともに、前記液体噴射実行部に装着された状態において前記液体噴射実行部へ被噴射媒体を給送可能な、液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する増設被噴射媒体収容部と、を備え、
前記増設被噴射媒体収容部には、前記液体噴射ヘッドから打ち捨てられた廃液を貯留可能な増設廃液貯留部が設けられ、前記液体噴射実行部側から前記増設廃液貯留部へと廃液を案内可能に構成されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、前記廃液の排出先を前記本体側廃液貯留部及び前記増設廃液貯留部のいずれかに選択可能に構成されている、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置において、前記増設廃液貯留部及び前記本体側廃液貯留部は着脱可能に構成されるとともに、互換性を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の液体噴射装置において、前記廃液の排出に際し、前記本体側廃液貯留部と前記増設廃液貯留部とを交互に利用する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッド及び前記液体噴射ヘッドから噴射する液体を貯留する本体側液体貯留部、並びに液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する本体側被噴射媒体収容部を備えた液体噴射実行部と、
前記液体噴射実行部に対して着脱可能に構成されるとともに、前記液体噴射実行部に装着された状態において前記液体噴射実行部へ被噴射媒体を給送可能な、液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する増設被噴射媒体収容部と、を備え、
前記増設被噴射媒体収容部には、前記液体噴射ヘッドから噴射する液体を貯留する増設液体貯留部が設けられ、前記増設被噴射媒体収容部側から前記液体噴射ヘッドへと液体を供給可能に構成されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体噴射装置において、前記液体噴射ヘッドへ液体を供給する際の液体の供給元を前記本体側液体貯留部及び前記増設液体貯留部のいずれかに選択可能に構成されている、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液体噴射装置において、前記増設液体貯留部及び前記本体側液体貯留部は着脱可能に構成されるとともに、互換性を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する被噴射媒体収容部を備えた液体噴射装置に対して着脱可能に構成された、液体噴射実行前の被噴射媒体を収容する増設ユニットであって、
前記液体噴射ヘッドから打ち捨てられた廃液を貯留可能な増設廃液貯留部を備えている、
ことを特徴とする増設ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78872(P2013−78872A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218979(P2011−218979)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】