説明

液体因子VII組成物のウイルス濾過

本発明は、液体因子VII組成物、特に活性因子VIIポリペプチド(因子VIIaポリペプチド)を含む組成物のウイルス安全性を向上させる新しい方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体因子VII組成物、特に活性因子VIIポリペプチド(因子VIIaポリペプチド)を含む組成物のウイルス安全性を向上させる新しい方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
因子VII(FVII)、血漿糖タンパク質を含む、凝血プロセスに含まれる種々の因子が特定されてきた。止血プロセスは、血管壁の傷害によって血流にさらされる組織因子(TF)と、因子VIIタンパク質総量の約1%に相当する量で血流中に存在する因子VIIaとの間の複合体の形成によって開始される。因子VIIは、単鎖酵素前駆体として主として血漿中に存在する。因子VIIは、FXaによって二本鎖に切断され、活性化された形態、因子VIIaになる。組み換え型の活性化因子VIIa (rFVIIa)は、促進性止血剤として開発されてきた。rFVIIaの投与は、抗体形成が原因で他の凝固因子産物での治療ができない、出血を伴う血友病患者において急速かつ非常に効果的な促進性止血反応を与える。また、因子VIIの欠乏を伴う患者の出血や正常な凝固系をもっているが過剰な出血を伴う患者は、因子VIIaでうまく治療することができる。
【0003】
因子VIIの精製および取り扱いは、分子の分解の可能性があるので慎重に行わなければならない。因子VIIおよび因子VIIaは大きな分子であり(分子量およそ50 kD)、精製および濾過中のせん断力による機械的分解を受けやすい。さらに、因子VIIaは、因子VIIaを含む他のタンパク質を分解する活性タンパク質分解酵素である。因子VIIaの分解は、因子VIIaの重鎖における切断、特に分子内の第290および315番目のアミノ酸での切断を主として伴う。最後に、因子VIIおよび因子VIIaのメチオニン残基が酸化される。
【0004】
本発明の目的は、液体因子VII組成物からウイルスを除去またはウイルスを不活性化する方法を提供することである。当該方法によって因子VII構造の完全性が実質的に保持される。
【0005】
WO 96/00237には、タンパク質のような巨大分子、例えば血漿タンパク質因子IXを含む溶液のウイルス濾過の方法が開示されている。
【0006】
WO 98/37086には、15 nmの平均細孔サイズを有する膜を使用したナノ濾過による、血漿由来のタンパク質溶液からのウイルスの除去が開示されている。
【0007】
Tomokiyo et al., Vox Sanguinis, 2003, 84, 54-64には、ヒト血漿由来の活性化因子VII濃縮物の大規模生産が開示されている。生産の方法には、不活性因子VIIを含む溶液のウイルス濾過の工程が含まれる。
【発明の簡単な説明】
【0008】
大きな側面において、本発明は、因子VII組成物からウイルスを除去および/またはウイルスを不活性化する方法に関する。用語「ウイルス」は、本明細書中で使用されるとき、宿主細胞内でのみ自己を複製できる全ての超顕微鏡的な感染性物質、または前記感染性物質から誘導された非感染性粒子を意味する。一つの実施態様において、ウイルスは感染性である。一つの実施態様において、ウイルスは、非感染性ウイルス粒子である。
【0009】
本発明の第一の側面は、液体因子VII組成物からウイルスを除去する方法に関する。前記方法は、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行うことを含む。
【0010】
本発明の第二の側面は、液体因子VII組成物からウイルスを取り除く方法に関する。前記組成物は一以上の因子VIIポリペプチドを含み、少なくとも5%の前記一以上の因子VIIポリペプチドが活性化された形態であり、前記方法が、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行うことを含む。
【0011】
本発明の第三の側面は、液体因子VII組成物からウイルスを取り除く方法に関する。前記組成物は一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記液体組成物は実質的に血清を含まず、前記方法が、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行うことを含む。
【0012】
本発明のさらなる側面は、液体因子VII組成物からウイルスを取り除く方法に関する。前記組成物は、一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記方法が、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行うことを含む。ここで、前記ナノフィルターは、銅アンモニア溶液で再生されたセルロース、親水性ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、合成PVDF、表面修飾PVDF、およびポリエーテルスルホンから選択された一以上の材料から作製された膜を有する。
【0013】
本発明のさらなる側面は、液体因子VII組成物中のウイルスを不活性化する方法に関する。前記組成物は、一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記方法が、前記組成物と界面活性剤(detergent)を組み合わせる工程を含む。
【0014】
本発明のさらなる側面は、液体因子VII組成物中に存在する活性ウイルスを高レベルで除去する方法に関する。前記方法は、(i)ウイルスを不活性化する工程と、(ii)ウイルスを除去する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【0015】
本発明は、エンベロープのないウイルスを含むウイルスを液体因子VII組成物から除去または不活性化させる方法を提供する。前記液体因子VII組成物は、典型的には活性化された、タンパク質分解活性因子VIIポリペプチドを有意な割合で含む。前記方法は、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記液体因子VII組成物に対して行う工程を含む。
【0016】
前記方法は、エンベロープのあるウイルスとエンベロープのないウイルスの除去に特に有用である。例えば、Murine Leukemiaウイルス(エンベロープあり)は、約50 nmの細孔サイズを有するフィルターによって除去され得、Porcine Parvoウイルス(エンベロープなし)は、約20 nmの細孔サイズを有するフィルターによって除去され得る。
【0017】
液体因子VII組成物、例えば有意な割合の活性化因子VIIポリペプチドを含む前記組成物は、原理的には乾燥因子VII成分から調製され得るが、より典型的には大規模生産プロセス、例えば組換え技術を含むプロセスから得られる。このようなプロセスにおいて、典型的には、細胞培養上清が回収され、続いて、キャリアに固定されない細胞を取り除くための遠心分離または濾過; アフィニィティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー; イオン交換クロマトグラフィー; サイズ排除クロマトグラフィー; 電気泳動手順 (例えば、予備的等電点電気泳動(IEF))、溶解度別分画(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、または抽出またはこれらに類する手段を含む(但しこれらに限定されない)、所望のタンパク質を得るための一以上の処理工程が行われる。一般的には、Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, New York, 1982; and Protein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989.を参照されたい。また、因子VIIポリペプチドの精製には、例えば、抗因子VII抗体カラム上でのアフィニィティークロマトグラフィー(例えば、Wakabayashi et al., J. Biol. Chem. 261:11097, 1986; and Thim et al., Biochem. 27:7785, 1988を参照)、および因子XIIaまたはトリプシン様の特異性を有する他のプロテアーゼ(例えば、因子IXa、カリクレイン、因子Xa、およびトロンビン)を使用したタンパク質分解的切断による活性化が含まれてもよい。例えばOsterud et al., Biochem. 11:2853 (1972); Thomas, U.S. Patent No. 4,456,591; およびHedner et al., J. Clin. Invest. 71:1836 (1983)を参照されたい。代わりに、因子VIIポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィーカラム、例えばMono Q(登録商標)(Pharmacia)またはこれに類するカラムを通過させることによって活性化され得る。
【0018】
本発明の方法は、特に大規模生産プロセスにとって特に有用である。用語「大規模」は、典型的には液体因子VIIポリペプチド組成物の容積が少なくとも100 L、例えば少なくとも500 L、例えば少なくとも1000 L、または少なくとも5000 Lである方法を意味する。これは、本発明が100 L未満の液体因子VIIポリペプチド組成物を取り扱うことを何ら制限するものではない。
【0019】
ナノ濾過は、大量の因子VIIポリペプチドが部分的または完全に活性化された後であっても適用され得ることが認められている。
【0020】
従って、本発明の方法は、因子VIIポリペプチドについての全精製プロセスの工程のうちの一つとして適用可能である。
【0021】
より具体的には、発酵ブロス(またはヒト(もしくは哺乳類)の血漿)から収集された物質から始まる典型的な精製プロセスは、以下のような流れをとり得る。
【表1】

【0022】
活性化形態の因子VIIポリペプチドの含量は、初めは(すなわち、収集工程)典型的には約2%であり、ポリペプチドが薬物質として得られる前に、精製プロセスの過程の中で90%以上まで増加する。
【0023】
ナノ濾過を行った液体因子VII組成物には、適切な溶媒の中に一以上の因子VIIポリペプチドが含まれる。該溶媒は、典型的には水または水性混合液/溶液、例えば純水、水性バッファー、水/エタノール混合液、水/DMSO混合液、または水性塩溶液、例えば生理食塩水、尿素溶液またはグアニジン溶液である。また、適切な水性液体には、界面活性剤(表面活性物質)が含まれてもよい。
【0024】
興味ある実施態様において、液体因子VII組成物は、細胞培養上清、例えばWO 02/29084に開示されたように得られた細胞培養上清から得られ、または生じる。一つの実施態様において、液体因子VII組成物は、血清フリー、すなわち動物誘導型の成分を含まない。従って、細胞培養は、動物誘導型の成分を欠く培地中で行われ得る。
【0025】
その魅力的な種々の実施態様として、因子VIIポリペプチドは、動物起源の全ての成分を含まない培地、または動物誘導型の成分を欠く培地、およびタンパク質を欠く培地(タンパク質フリー)におけるCHO細胞の細胞培養によって生成される。
【0026】
CHO細胞のための培地は、任意の商業的に利用可能な動物誘導型の成分を欠くタンパク質フリーのCHO培地である。medium lacking animal-derived componentsまたはan in-house produced medium for CHO細胞.
幾つかの実施態様において、本発明を実施するのに使用される細胞は、動物誘導型の成分を含まない培地における浮遊培養での増殖に適応する。このような適応手順は、例えばScharfenberg, et al., Animal Cell Technology Developments towards the 21st Century, E. C. Beuvery et al. (Eds.), Kluwer Academic Publishers, pp. 619-623, 1995 (BHKおよびCHO細胞); Cruz, Biotechnol. Tech. 11:117-120, 1997 (昆虫細胞); Keen, Cytotechnol. 17:203-211, 1995 (ミエローマ細胞); Berg et al., Biotechniques 14:972-978, 1993 (ヒト腎臓293細胞)に記載されている。特定の実施態様において、宿主細胞は、ヒト因子VIIまたは因子VIIポリペプチドを発現するように加工され、かつ血清または動物誘導型の成分の欠乏中において成長するように適応したBHK21またはCHO細胞である。
【0027】
代替の実施態様において、因子VIIポリペプチドは、ウシまたはウシ胎仔血清の存在中において細胞培養によって生成される。
【0028】
本発明の一側面によれば、一以上の因子VIIポリペプチドのうちの有意な割合、すなわち、少なくとも5%、例えば少なくとも7%、または少なくとも10%が、活性化された形態にある(すなわち、因子VIIポリペプチドの生物学的に活性な切断された形態(すなわち、因子VIIaポリペプチド))。さらなる実施態様において、因子VIIaポリペプチドは、一以上の因子VIIポリペプチドの質量のうち、5〜70%、例えば7〜40%、または10〜30%を占める。他の実施態様において、因子VIIaポリペプチドは、一以上の因子VIIポリペプチドの質量のうち、50〜100%、例えば70〜100%、または80〜100%を占める。さらに他の実施態様において、因子VIIaポリペプチドは、一以上の因子VIIポリペプチドの質量のうち、20〜80%、例えば30〜70%、または30〜60%を占める。
【0029】
大部分の実施態様において、不活性化された形態の因子VIIポリペプチドと、一以上の因子VIIポリペプチドの質量のうち、100%未満を占める生理活性因子VIIaポリペプチドが含まれる。最も典型的な実施態様において、組成物には、(不活性な)因子VIIポリペプチドに対応する(活性化された)因子VIIaポリペプチドが含まれる。すなわち、この因子VIIaポリペプチドは、活性化された形態の因子VIIポリペプチドである。一方、他の実施態様では、因子VIIaポリペプチドは、不活性因子VIIポリペプチドの活性化された形態とは幾分異なる。特定の実施態様における組成物には、一以上の因子VIIポリペプチドと一以上の因子VIIaポリペプチドとが含まれ得ることを当然理解すべきである。
【0030】
用語「一以上の因子VIIポリペプチド」には、野生型の因子VII(すなわち、米国特許第4,784,950号に開示されたアミノ酸配列をもつポリペプチド)と、野生型の因子VIIと比較して実質的に同一または向上した生理活性を示す因子VIIの変異体とが含まれる。用語「因子VII」は、その未切断の(酵素前駆体)形態の因子VIIポリペプチド、およびタンパク質分解的に処理されて因子VIIaとして特定され得る生物活性形態が得られる因子VIIポリペプチドを含むことを意図する。典型的には、因子VIIは残基152と153との間で切断され、因子VIIaを得る。用語「因子VIIa」は、より詳しくは活性化された(すなわち、生理活性のある切断された)因子VIIポリペプチドを意味する。従って、「因子VIIa」は、「因子VII」に関連したサブグループである。用語「不活性因子VII」は、より詳しくは因子VIIaでない因子VIIを意味する。
【0031】
用語「因子VIIポリペプチド」にはまた、因子VIIaの生物学的活性が野生型因子VIIaと比較して実質的に修飾されているか幾分減少している変異体、ならびに因子VII誘導体および因子VII結合体を含むポリペプチドが包含される。これらのポリペプチドには、ポリペプチドの生物学的活性を修飾または乱す特定のアミノ酸配列の変更が導入された因子VIIまたは因子VIIaが含まれるがこれらに限定されない。用語「因子VII誘導体」は、本明細書中で使用されるとき、野生型の因子VII、野生型の因子VIIと比較して実質的に同等または向上した生物学的活性を示す因子VIIの変異体、および親ペプチドの一以上のアミノ酸が化学的および/または酵素学的に修飾(例えばアルキル化、グリコシル化、PEG化、アシル化、エステル形態またはアミド形態またはこれらに類するもの)された因子VII関連ポリペプチドを示すことを意図する。ここには、PEG化されたヒト因子VIIa、システイン-PEG化されたヒト因子VIIaおよびその変異体が含まれるがこれらに限定されない。因子VII誘導体の制限のない例には、WO 03/31464 および米国特許出願 US 20040043446, US 20040063911, US 20040142856, US 20040137557, およびUS 20040132640 (Neose Technologies, Inc.)に開示された糖PEG化されたFVII誘導体; WO 01/04287, 米国特許出願20030165996, WO 01/58935, WO 03/93465 (Maxygen ApS)およびWO 02/02764, 米国特許出願20030211094 (ミネソタ大学)に開示されたFVII結合体が含まれる。
【0032】
用語「PEG化されたヒト因子VIIa」はまた、PEG分子がヒト因子VIIaポリペプチドに結合したヒト因子VIIaを意味する。PEG分子は、因子VIIaポリペプチドの任意のアミノ酸残基または炭水化物基を含む因子VIIaポリペプチドの任意の部分と結合し得るものと理解されるべきである。用語「システイン-PEG化されたヒト因子VIIa」は、PEG分子がヒト因子VIIaに導入されたシステインのスルフヒドリル基に結合した因子VIIaを意味する。
【0033】
血液凝固における因子VIIaの生物学的活性は、(i)組織因子(TF)に結合する能力および(ii)因子IXまたは因子Xのタンパク質分解性の切断を触媒し、活性化されたに因子IXまたはX (各々、因子IXaまたはXa)を生成する能力に由来する。
【0034】
本発明の目的のために、因子VIIポリペプチドの生物学的活性(因子VII生物学的活性)は、例えば米国特許第5,997,864号またはWO 92/15686に記載されたように、因子VII欠損血漿およびトロンボプラスチンを使用して血液凝固を促進する製剤の能力を測定することによって定量化され得る。この試験において、生物学的活性は、対照サンプルと比較した凝血時間の短縮として表わされ、1単位/mL因子VII活性を含む貯蔵されたヒト血清標準体との比較によって「因子VII単位」に転換される。代わりに、因子VIIaの生物学的活性は、(i)脂質膜内に埋め込まれたTFと因子Xを含む系において活性化された因子X(因子Xa)を生成する、因子VIIa (または因子VIIポリペプチド)の能力を測定することによって(Persson et al., J. Biol. Chem. 272:19919-19924, 1997); (ii)水性系における因子Xの加水分解を測定することによって(以下の「インビトロタンパク質分解アッセイ」を参照); (iii)表面プラズモン共鳴に基づいた装置を使用して因子VIIa (または因子VIIポリペプチド)のTFへの物理的結合を測定することによって(Persson, FEBS Letts. 413:359-363, 1997); (iv) 因子VIIa(または因子VIIポリペプチド)による合成基質の加水分解を測定することによって(以下の「インビトロ加水分解アッセイ」を参照); または(v) TF非依存性インビトロ系におけるトロンビンの生成を測定することによって定量化され得る。
【0035】
野生型因子VIIaと比較して実質的に同等または向上した生物学的活性を有する因子VII変異体には、上述したような一以上の凝血アッセイ、タンパク質分解アッセイ、またはTF結合アッセイで試験されたときに、同じ細胞タイプで生成された因子VIIaの特異的活性の少なくとも約25%、例えば少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%を示すものも含まれる。一つの実施態様において、生物学的活性は、組換え体野生型ヒト因子VIIaの生物学的活性の80%を超える。他の実施態様において、生物学的活性は、組換え体野生型ヒト因子VIIaの生物学的活性の90%を超える。さらなる実施態様において、生物学的活性は、組換え体野生型ヒト因子VIIaの生物学的活性の90%を超える。さらなる実施態様において、生物学的活性は、組換え体野生型ヒト因子VIIaの生物学的活性の120%を超える。さらなる実施態様において、生物学的活性は、組換え体野生型ヒト因子VIIaの生物学的活性の200%を超える。さらなる実施態様において、生物学的活性は、組換え体野生型ヒト因子VIIaの生物学的活性の400%を超える。
【0036】
野生型因子VIIaと比較して実質的に減少した生物学的活性を有する因子VII変異体とは、上述したような一以上の凝血アッセイ、タンパク質分解アッセイ、またはTF結合アッセイで試験されたときに、同じ細胞タイプで生成された野生型因子VIIaの特異的活性の約25%未満、例えば約10%未満、約5%未満、または約1%未満を示すものをいう。野生型因子VIIと比較して実質的に修飾された生物学的活性を有する因子VII変異体には、TF非依存性因子Xタンパク質分解活性を示す因子VII変異体、およびTFと結合するが因子Xを切断しない因子VII変異体が含まれるがこれらに限定されない。
【0037】
野生型因子VIIと比較して同等かより優れた生物活性を実質的に示すか、または代わりに野生型因子VIIと比較して実質的に修飾されたかまたは減少した生物活性を示す因子VIIの変異体には、一以上のアミノ酸の挿入、欠失、または置換によって野生型因子VIIの配列とは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれるがこれらに限定されない。
【0038】
野生型因子VIIと実質的に同一の生物学的活性を有する因子VII変異体の制限のない例には、S52A-FVIIa、S60A-FVIIa (Lino et al., Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998); 米国特許第5,580,560号に開示されたような増加したタンパク質分解の安定性を示す因子VIIa変異体; 残基290と291の間または残基315と316の間でタンパク質分解的に切断された因子VIIa(Mollerup et al., Biotechnol. Bioeng. 48:501-505, 1995); 因子VIIaの酸化された形態(Kornfelt et al., Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54, 1999); PCT/DK02/00189に開示されたような因子VII変異体; およびWO 02/38162(Scripps Research Institute)に開示されたような増加したタンパク質分解の安定性を示す因子VII変異体; 修飾されたGla-ドメインを有し、かつWO 99/20767、米国特許US 6017882およびUS 6747003、米国特許出願US 20030100506 (ミネソタ大学)およびWO 00/66753、米国特許出願US 20010018414、US 2004220106、およびUS 200131005、米国特許US 6762286およびUS 6693075 (ミネソタ大学)に開示されたような増加した膜結合を示す因子VII変異体; およびWO 01/58935、米国特許US 6806063、米国特許出願US 20030096338 (Maxygen ApS)、WO 03/93465 (Maxygen ApS)およびWO 04/029091 (Maxygen ApS)に開示されたような因子VII変異体が含まれる。
【0039】
野生型因子VIIaと比較して増加した生物学的活性を有する因子VII変異体の制限のない例には、WO 01/83725、WO 02/22776、WO 02/077218、WO 03/27147、WO 03/37932; WO 02/38162 (Scripps Research Institute); およびJP 2001061479 (Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)に開示されたような増強された活性を示す因子VIIa変異体が含まれる。
【0040】
野生型因子VIIと比較して実質的に減少または修飾された生物学的活性を有する因子VII変異体の制限のない例には、R152E-FVIIa (Wildgoose et al., Biochem 29:3413-3420, 1990)、S344A-FVIIa (Kazama et al., J. Biol. Chem. 270:66-72, 1995), FFR-FVIIa (Holst et al., Eur. J. Vasc. Endovasc. Surg. 15:515-520, 1998)、およびGlaドメインを欠く因子VIIa(Nicolaisen et al., FEBS Letts. 317:245-249, 1993)が含まれる。
【0041】
因子VIIポリペプチドの明示的例には、限定的に解釈されないものの、野生型因子VII, L305V-FVII, L305V/M306D/D309S-FVII, L305I-FVII, L305T-FVII, F374P-FVII, V158T/M298Q-FVII, V158D/E296V/M298Q-FVII, K337A-FVII, M298Q-FVII, V158D/M298Q-FVII, L305V/K337A-FVII, V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII, V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII, K157A-FVII, E296V-FVII, E296V/M298Q-FVII, V158D/E296V-FVII, V158D/M298K-FVII, and S336G-FVII, L305V/K337A-FVII, L305V/V158D-FVII, L305V/E296V-FVII, L305V/M298Q-FVII, L305V/V158T-FVII, L305V/K337A/V158T-FVII, L305V/K337A/M298Q-FVII, L305V/K337A/E296V-FVII, L305V/K337A/V158D-FVII, L305V/V158D/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V-FVII, L305V/V158T/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V-FVII, L305V/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, S314E/K316H-FVII, S314E/K316Q-FVII, S314E/L305V-FVII, S314E/K337A-FVII, S314E/V158D-FVII, S314E/E296V-FVII, S314E/M298Q-FVII, S314E/V158T-FVII, K316H/L305V-FVII, K316H/K337A-FVII, K316H/V158D-FVII, K316H/E296V-FVII, K316H/M298Q-FVII, K316H/V158T-FVII, K316Q/L305V-FVII, K316Q/K337A-FVII, K316Q/V158D-FVII, K316Q/E296V-FVII, K316Q/M298Q-FVII, K316Q/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D-FVII, S314E/L305V/E296V-FVII, S314E/L305V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/K337A/E296V-FVII, S314E/L305V/K337A/V158D-FVII, S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V-FVII, S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V-FVII, S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316H/L305V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D-FVII, K316H/L305V/E296V-FVII, K316H/L305V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T-FVII, K316H/L305V/K337A/V158T-FVII, K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/K337A/E296V-FVII, K316H/L305V/K337A/V158D-FVII, K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V-FVII, K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V-FVII, K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316Q/L305V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D-FVII, K316Q/L305V/E296V-FVII, K316Q/L305V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T-FVII, K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII, K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII, K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII, K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII, K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII, K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/K337A-FVII, F374Y/V158D-FVII, F374Y/E296V-FVII, F374Y/M298Q-FVII, F374Y/V158T-FVII, F374Y/S314E-FVII, F374Y/L305V-FVII, F374Y/L305V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D-FVII, F374Y/L305V/E296V-FVII, F374Y/L305V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158T-FVII, F374Y/L305V/S314E-FVII, F374Y/K337A/S314E-FVII, F374Y/K337A/V158T-FVII, F374Y/K337A/M298Q-FVII, F374Y/K337A/E296V-FVII, F374Y/K337A/V158D-FVII, F374Y/V158D/S314E-FVII, F374Y/V158D/M298Q-FVII, F374Y/V158D/E296V-FVII, F374Y/V158T/S314E-FVII, F374Y/V158T/M298Q-FVII, F374Y/V158T/E296V-FVII, F374Y/E296V/S314E-FVII, F374Y/S314E/M298Q-FVII, F374Y/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/K337A/V158D-FVII, F374Y/L305V/K337A/E296V-FVII, F374Y/L305V/K337A/M298Q-FVII, F374Y/L305V/K337A/V158T-FVII, F374Y/L305V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158D/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/E296V/V158T-FVII, F374Y/L305V/E296V/S314E-FVII, F374Y/L305V/M298Q/V158T-FVII, F374Y/L305V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/S314E-FVII, F374Y/K337A/S314E/V158T-FVII, F374Y/K337A/S314E/M298Q-FVII, F374Y/K337A/S314E/E296V-FVII, F374Y/K337A/S314E/V158D-FVII, F374Y/K337A/V158T/M298Q-FVII, F374Y/K337A/V158T/E296V-FVII, F374Y/K337A/M298Q/E296V-FVII, F374Y/K337A/M298Q/V158D-FVII, F374Y/K337A/E296V/V158D-FVII, F374Y/V158D/S314E/M298Q-FVII, F374Y/V158D/S314E/E296V-FVII, F374Y/V158D/M298Q/E296V-FVII, F374Y/V158T/S314E/E296V-FVII, F374Y/V158T/S314E/M298Q-FVII, F374Y/V158T/M298Q/E296V-FVII, F374Y/E296V/S314E/M298Q-FVII, F374Y/L305V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/S314E-FVII, F374Y/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/V158T/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158T/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158T/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158T/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158T/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/S314E-FVII, F374Y/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T-FVII, F374Y/L305V/E296V/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, S52A-因子VII, S60A-因子VII; R152E-因子VII, S344A-因子VII, Glaドメインを欠く因子VIIa; およびP11Q/K33E-FVII, T106N-FVII, K143N/N145T-FVII, V253N-FVII, R290N/A292T-FVII, G291N-FVII, R315N/V317T-FVII, K143N/N145T/R315N/V317T-FVII; および233Thr〜240Asnのアミノ酸配列の置換、付加または欠失を含む因子VII、304Arg〜329Cysのアミノ酸配列の置換、付加または欠失を含む因子VIIが含まれる。
【0042】
幾つかの実施態様において、因子VIIaポリペプチドは、ヒト因子VIIa (hFVIIa)、例えば組み換え的に作製されたヒト因子VIIa (rhFVIIa)である。他の実施態様において、一以上の因子VIIポリペプチドは、因子VII配列変異体を含む。幾つかの実施態様において、一以上の因子VIIポリペプチドは、因子VIIの配列変異体を含む。幾つかの実施態様において、一以上の因子VIIポリペプチドは、野生型因子VIIと異なるグリコシル化を有する。
【0043】
ナノ濾過
液体因子VII組成物に対して、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用してナノ濾過を行う。ナノフィルターの細孔サイズは、好ましくは最大50 nm、より好ましくは最大30 nm、例えば範囲10〜30 nmの範囲である。
【0044】
用語「細孔サイズ」は、典型的にはフィルターによって除去される最も小さなウイルスのサイズを意味する。
【0045】
商業的に利用可能な適切なナノフィルターの例には、Asahi Planove 15 N, Asahi Planove 20 N, Asahi Planova 35 N, およびAsahi Planova 75 N, その他朝日化学社(東京都)製のもの全て; Millipore NFR, Millipore NFP, Millipore Viresolve 70, およびMillipore Viresolve 180, その他ミリポア社製のもの全て; およびPall DV20, Pall DV 50, Pall Omega VR 100 K; およびBemberg Microporous Membrane-15 nm (BMM-15)がある。
【0046】
ナノフィルターの膜は、may, e.g., be manufactured from 一以上のmaterials selected from 銅アンモニア溶液で再生されたセルロース、親水性ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、合成PVDF、表面修飾PVDF、ポリエーテルスルホンおよび類似材料から選択される一以上の材料から製造され得る。一つの実施態様において、材料は、ポリビニリデンフッ化物に基づいた材料およびポリエーテルスルホンに基づいた材料から選択される。
【0047】
ナノ濾過は、当業者に理解されているであろうタンジェンシャル濾過モードまたはデッドエンド濾過モードによって行われ得る。一つの実施態様において、ナノ濾過は、デッドエンド濾過モードで行われる。
【0048】
ナノ濾過上での液体因子VII組成物のpH値は、特に重要であるとは考えられない。従って、pH値は、通常はナノ濾過工程の直前に先行する処理工程において適用した条件を考慮して与えられる。幾つかの実施態様において、pH値は、液体組成物が5.5〜10の範囲のpH、例えば7.0〜9.5の範囲、7.6〜9.4の範囲、7.7〜9.3の範囲、8.0〜9.0の範囲または8.3〜8.7の範囲のpHを示すように調節される。一つの実施態様において、pH値は、5〜7の範囲にある。一つの実施態様において、pHは、9.5よりも高く、例えば9.5〜10の範囲にある。
【0049】
さらに、液体組成物中の因子VIIポリペプチドの濃度は、典型的には先行する処理工程によって与えられるが、通常は0.01〜5 mg/mLの範囲、例えば0.05〜2.0 mg/mLの範囲にある。
【0050】
ナノ濾過プロセスは、図1に図示したような濾過システムを使用して行われ得る。
【0051】
該プロセスは、以下の例証的な例のように行われ得る:圧力タンク(1)を注入用の水(WFI)で充填し、タンクの圧力をウイルスフィルター(3)の前で3.5バールまで上昇させ、フィルターを10分間にわたってフラッシングした。圧力を2バールまで減圧し、ウイルスフィルター(3)をさらに10分間にわたってフラッシングした。圧力タンク(1)からWFIを取り除き、液体因子VII組成物を圧力タンク(1)に充填する前に、任意的に上記プロセスをバッファーで繰り返した。圧力を2バールまで上昇させ、濾過の間に実質的に一定に保った。続いてウイルスフィルター(3)を標準的手順によって完全性について試験した。
【0052】
濾液を貯留タンク内に集め、さらに処理を進めて因子VIIaポリペプチドを含む薬学的組成物を薬物質として得た。
【0053】
前記状況において、典型的には、より大きな粒子、凝集体などを取り除くために、ナノ濾過工程前に前濾過工程を適用するのが有利である。さもなければナノフィルターが目詰まりを起こしてしまうからである。このようなプレフィルターは、典型的には0.05〜0.5 μmの範囲の細孔サイズを有する。一つの実施態様において、プレフィルターは、Millipore NFR フィルターである。
【0054】
空気圧を使用する代わりに、圧力タンクの後ろに配置された液体ポンプが濾過のために必要な圧力を提供してもよい。
【0055】
ナノ濾過された液体因子VII組成物が不活性な因子VIIポリペプチドを含む場合、続いて該組成物に、Bjorn. S. & Thim, L. Res. Disclosures (1986) 269, 564-565, Pedersen, A.H. & al., Biochemistry (1989), 28, 9331-9336, およびTomokiyo, K. & al., Vox Sang. 84, 54-64 (2003)に記載されたような活性化工程を行う。
【0056】
薬学的製品としての該組成物および最終処方のさらなる処理は、Jurlander, B.& al., Seminars in Thrombosis and Hemostasis 27, 4, 373-383(2001)に開示されたように行われ得る。
【0057】
血清を含まない液体因子VIIポリペプチド組成物のナノ濾過
上記特徴の幾つかまたは全てを含み得る本発明の一つの別の側面は、液体因子VII組成物からウイルスを取り除く方法に関する。当該方法において、前記組成物は一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記液体組成物は実質的に血清を含まない。当該方法は、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行うことを含む。
【0058】
その魅力的な変形において、因子VIIポリペプチドは、動物起源の任意の成分を含まない培地におけるCHO細胞の細胞培養によって生成される。
【0059】
本発明のこの側面は、因子VIIポリペプチドのうち一定の割合が活性化された形態にある液体因子VII組成物に特に限定されるものではない。しかしながら、本発明の第一の側面についての上述した条件は、本発明の以下の第二の側面についても必要な変更を加えて適用する。
【0060】
特定のフィルターを介した液体因子VIIポリペプチド組成物のナノ濾過
上述した特長の幾つかまたは全てを含み得る本発明の他の別個の側面は、液体因子VII組成物からウイルスを取り除く方法に関する。前記組成物は、一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記方法は、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行う。前記ナノ濾過は、銅アンモニア溶液で再生されたセルロース、親水性ポリビニリデンフッ化物 (PVDF)、合成PVDF、表面修飾PVDF、およびポリエーテルスルホンから選択された一以上の材料から製造された膜を有する。
【0061】
一つの実施態様において、前記材料は、ポリビニリデンフッ化物に基づいた材料およびポリエーテルスルホンに基づいた材料から選択される。
【0062】
本発明のこの側面は、液体因子VII組成物に特に限定されない。因子VIIポリペプチドのうち一定の割合は活性化された形態で存在する。しかしながら、本発明の第一の側面についての上述した条件はまた、本発明の以下の第三の側面についても必要な変更を加えて適用する。
【0063】
界面活性剤の添加によるウイルスの不活性化
他の側面において、本発明はまた、液体因子VII組成物のウイルスを不活性化する方法に関する。前記組成物は一以上の因子VIIポリペプチドを含む。前記方法は前記組成物と界面活性剤とを組み合わせる工程を含む。
【0064】
幾つかの実施態様において、前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えばオクチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリソルベート、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレン/ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレンステアリン酸塩、およびポリオキシエチレンヒマシ油からなる群から選択される。この例証的な非イオン性界面活性剤の例には、Triton X-100、Tween(登録商標)、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、Brij-35 (ポリオキシエチレンドデシルエーテル)、ポロキサマー188、ポロキサマー407、PEG8000, Pluronic(登録商標)ポリオール、ポリオキシ-23-ラウリルエーテル、Myrj 49、およびCremophor Aがある。
【0065】
特定の有用な界面活性剤は、式p-((CH3)3CH2C(CH2)2)-C6H4-O-(CH2CH2O)n-H(式中、nは5〜15の範囲、特にnは9〜10である)のオクチルフェノキシポリエトキシエタノール、例えば界面活性剤Triton X-100である。
【0066】
一つの実施態様において、界面活性剤を液体因子VII組成物と組み合わせて、0.01〜0.5重量%の範囲、例えば0.05〜0.4重量%の範囲、0.05〜0.3重量%の範囲、0.05〜0.2重量%の範囲、または0.05〜0.1重量%の範囲の組成物中の界面活性剤の濃度を得る。
【0067】
さらなる実施態様において、界面活性剤は、2〜12°Cの範囲の温度、例えば2〜9°Cの範囲の温度で前記組成物と組み合わせる。
【0068】
最も大きな目的のために、トリアルキルリン酸塩界面活性剤を含むのは望ましくないことが解る。従って、界面活性剤は、トリアルキルリン酸塩溶媒、例えばトリ(n-ブチル)リン酸塩を実質的に含まない。
【0069】
一つの特定の実施態様において、本発明は、因子VIIポリペプチド組成物を0.05〜0.2重量%の濃度のTriton X-100と2〜9°Cの範囲の温度で組み合わせる工程を含む。但し、界面活性剤はトリアルキルリン酸塩溶媒、例えばトリ(n-ブチル)リン酸塩を実質的に含まない。
【0070】
本発明のこの側面は、液体因子VII組成物に特に限定されない。因子VIIポリペプチドの一定の割合が活性化された形態にある。しかしながら、本発明の第一の側面についての上述した条件は、本発明の以下の第四の側面についても必要な変更を加えて適用する。
【0071】
ウイルス不活性化工程の組み合わせ
また、さらなる側面において、本発明は、液体因子VII組成物中に存在する活性ウイルスを高レベルで除去する方法に関する。前記方法は、(i)「界面活性剤の添加によるウイルスの不活性化」の項目で定義された方法によってウイルスを不活性化する工程と、(ii)「ナノ濾過」の項目で定義された任意の方法によってウイルスを除去する工程とを任意の順序で含む。
【0072】
一つの実施形態において、ウイルスを不活性化させる工程は、ウイルスを除去する工程に先行する。
【0073】
各工程が活性ウイルスの存在を除去するために十分であると考えられても、前記二つの方法は、少なくとも部分的には「直交する」ものと考えられ得る。あるウイルスは、前記二つの方法のうちの一方によって除去するのが難しいが、もう一方の方法によって容易に除去され得る、またはその逆もあり得るからである。従って、二つの方法の組み合わせは、因子VIIポリペプチドが投与される患者に対する安全性、因子VIIポリペプチド薬物を処方する医師に対する安全性、および薬物を承認する行政当局に対する安全性のさらにより高いレベルを提供するであろう。従って、二つの方法の組み合わせは、商業的に高い価値を有する。
【0074】
上述したように、本発明は、ウイルス粒子の除去または不活性化に関する。特定の処理工程でのウイルス粒子の減少量は、通常log単位(log10対数、またはlog10)で表わされる。この減少ファクターは、処理工程前のウイルス粒子の量と比較した処理工程後のウイルス粒子の量として計算される。
【0075】
例えば、106のウイルス粒子が処理工程前に見出され、102のウイルス粒子が処理工程後に見出される場合、その減少ファクターは、104または4log10である。
【0076】
全プロセスからのウイルス粒子のトータルの減少量は、前記と同じ方法で表わされ、前記プロセスの各工程からのウイルスクリアランスを加えて計算してもよい。ここで、用語「クリアランス」とは、ウイルスの除去とウイルスの不活性化の両方を意味する。
【0077】
効果的である特定のウイルスクリアランス工程では、少なくとも4log10のウイルス減少を有するのが好ましい。
【0078】
本発明の一つの実施態様において、濾過工程は、ウイルス粒子の量を少なくとも約 4log10減少させる。本発明の一つの実施態様において、濾過工程は、ウイルス粒子の量を少なくとも約 5log10減少させる。
【0079】
本発明の一つの実施態様において、前記FVII組成物と界面活性剤とを組み合わせる工程は、少なくとも約 4log10のウイルスを不活性化させる。本発明の一つの実施態様において、前記FVII組成物と界面活性剤とを組み合わせる工程は、少なくとも約 5log10のウイルスを不活性化させる。
【0080】
ウイルス粒子の量の決定は当業者に知られており、標準的なTCID50アッセイ(Tissue culture infectious dose 50 % endpoint per mL)、プラークアッセイまたはPCRアッセイにおいて測定され得る。TCID50およびプラークアッセイは、感染性粒子の濃度を測定するのに使用され得、一方、PCRアッセイは、感染性および非感染性の不活性化されたウイルス粒子を測定するのに使用され得る。
【0081】
本発明の実施態様
1.液体因子VII組成物からウイルスを除去するための方法であって、前記組成物が一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記一以上の因子VIIポリペプチドのうち少なくとも5%が活性化された形態であり、前記方法が、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行う方法。
【0082】
2.一以上の因子VIIポリペプチドのうち、少なくとも7%、例えば少なくとも10%が、活性化された形態で存在する実施態様1に記載の方法。
【0083】
3.前記因子VIIポリペプチドの活性化された形態が、一以上の因子VIIポリペプチドの質量のうち、5〜70%、例えば7〜40%、または10〜30%を占める実施態様1に記載の方法。
【0084】
4.前記因子VIIポリペプチドの活性化された形態が、一以上の因子VIIポリペプチドの質量のうち、50〜100%、例えば70〜100%、または80〜100%を占める実施態様1に記載の方法。
【0085】
5.前記因子VIIポリペプチドの活性化された形態が、一以上の因子VIIポリペプチドの質量のうち、20〜80%、例えば30〜70%、または30〜60%を占める実施態様1に記載の方法。
【0086】
6.前記液体組成物が、7.0〜9.5の範囲のpH、例えば7.6〜9.4の範囲、7.7〜9.3の範囲、8.0〜9.0の範囲、または8.3〜8.7の範囲のpHを有する先の実施態様のいずれかに記載の方法。
【0087】
7.前記液体組成物中の因子VIIポリペプチドの濃度は、0.01〜5 mg/mLの範囲、例えば0.05〜2.0 mg/mLの範囲である先の実施態様のいずれかに記載の方法。
【0088】
8.前記ナノフィルターの細孔サイズが、最大で50 nm、例えば30 nm、または範囲10〜30 nmの範囲にある先の実施態様のいずれかに記載の方法。
【0089】
9.前記ナノフィルターの膜が、銅アンモニア溶液で再生されたセルロース、親水性ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、合成PVDF、表面修飾PVDF、およびポリエーテルスルホンから選択された一以上の材料から製造される先の実施態様のいずれかに記載の方法。
【0090】
10.前記液体因子VII組成物が、細胞培養上清から得られ、または起源である先の実施態様のいずれかに記載の方法。
【0091】
11.前記液体組成物が、実質的に血清フリーである先の実施態様のいずれかに記載の方法。
【0092】
12.前記因子VIIポリペプチドが、ウシまたはウシ胎仔血清の存在中における細胞培養によって生成される実施態様1〜10のいずれかに記載の方法。
【0093】
13.前記因子VIIポリペプチドが、CHO細胞の細胞培養によって生成される先の実施態様のいずれかに記載の方法。
【0094】
14.前記因子VIIポリペプチドが、動物起源の全ての成分を含まない培地における、CHO細胞の細胞培養によって生成される実施態様13に記載の方法。
【0095】
15.液体因子VII組成物からウイルスを除去するための方法であって、前記組成物が一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記液体組成物が実質的に血清フリーであり、前記方法が、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行うことを含む方法。
【0096】
16.前記液体因子VII組成物が、細胞培養上清から得られ、または起源である実施態様15に記載の方法。
【0097】
17.前記因子VIIポリペプチドが、CHO細胞の細胞培養によって生成される実施態様15〜16のいずれかに記載の方法。
【0098】
18.前記因子VIIポリペプチドが、動物起源の全ての成分を含まない培地における、CHO細胞の細胞培養によって生成される実施態様17に記載の方法。
【0099】
19.前記一以上の因子VIIポリペプチドのうち少なくとも5%が、活性化された形態である実施態様15〜18のいずれかに記載の方法。
【0100】
20.前記液体組成物が、7.0〜9.5の範囲のpH、例えば7.6〜9.4の範囲、7.7〜9.3の範囲、8.0〜9.0の範囲、または8.3〜8.7の範囲のpHを有する実施態様15〜19のいずれかに記載の方法。
【0101】
21.前記液体組成物中の因子VIIポリペプチドの濃度が、0.01〜5 mg/mLの範囲、例えば0.05〜2.0 mg/mLの範囲である実施態様15〜20のいずれかに記載の方法。
【0102】
22.前記ナノフィルターの細孔サイズが、最大50 nm、例えば30 nm、または10〜30 nmの範囲である実施態様15〜21のいずれかに記載の方法。
【0103】
23.前記ナノフィルターの膜が、銅アンモニア溶液で再生されたセルロース、親水性ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、合成PVDF、表面修飾PVDF、およびポリエーテルスルホンから選択された一以上の材料から製造される実施態様15〜22のいずれかに記載の方法。
【0104】
24.液体因子VII組成物からウイルスを取り除く方法であって、前記組成物が、一以上因子VIIポリペプチドを含み、前記方法が、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行うことを含み、前記ナノフィルターが、銅アンモニア溶液で再生されたセルロース、親水性ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、合成PVDF、表面修飾PVDF、およびポリエーテルスルホンから選択された一以上の材料から製造された膜を有する方法。
【0105】
25.前記材料が、ポリビニリデンフッ化物に基づいた材料およびポリエーテルスルホンに基づいた材料から選択される実施態様24に記載の方法。
【0106】
26.前記一以上の因子VIIポリペプチドのうち少なくとも5%が活性化された形態である実施態様24〜25のいずれかに記載の方法。
【0107】
27.前記液体組成物が、7.0〜9.5の範囲のpH、例えば7.6〜9.4の範囲、7.7〜9.3の範囲、8.0〜9.0の範囲、または8.3〜8.7の範囲のpHを有する実施態様24〜26のいずれかに記載の方法。
【0108】
28.前記液体組成物中の因子VIIポリペプチドの濃度が、0.01〜5 mg/mLの範囲、0.05〜2.0 mg/mLの範囲である実施態様24〜27のいずれかに記載の方法。
【0109】
29.前記ナノフィルターの細孔サイズが、最大50 nm、例えば30 nm、または10〜30 nmの範囲である実施態様24〜28のいずれかに記載の方法。
【0110】
30.前記液体因子VII組成物が、細胞培養上清から得られ、または起源である実施態様24〜29のいずれかに記載の方法。
【0111】
31.前記液体組成物が、実質的に血清フリーである実施態様24〜30のいずれかに記載の方法。
【0112】
32.前記因子VIIポリペプチドが、ウシまたはウシ胎仔血清の存在中における細胞培養によって生成される実施態様24〜31のいずれかに記載の方法。
【0113】
33.前記因子VIIポリペプチドが、CHO細胞の細胞培養によって生成される実施態様24〜32のいずれかに記載の方法。
【0114】
34.前記因子VIIポリペプチドが、動物起源の全ての成分を含まない培地における、CHO細胞の細胞培養によって生成される実施態様33に記載の方法。
【0115】
35.液体因子VII組成物中のウイルスを不活性化させるための方法であって、前記組成物が一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記方法が前記組成物と界面活性剤とを組み合わせる工程を含む方法。
【0116】
36.前記界面活性剤が、式p-((CH3)3CH2C(CH2)2)-C6H4-O-(CH2CH2O)n-H(式中、nは5〜15の範囲内にある)のオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである実施態様35に記載の方法。
【0117】
37.前記界面活性剤が、nが9〜10のもの、例えばTriton X-100である実施態様36に記載の方法。
【0118】
38.前記界面活性剤が、Tween(登録商標)、ポリソルベート20、ポリソルベート60、およびポリソルベート80からなる群から選択される実施態様35に記載の方法。
【0119】
39.前記界面活性剤が、0.01〜0.3重量%の範囲、例えば0.05〜0.2重量%の範囲の組成物中の界面活性剤の濃度を与えるように、液体因子VII組成物と組み合わされる実施態様35〜38のいずれかに記載の方法。
【0120】
40.前記界面活性剤が、2〜12℃の範囲、例えば2〜9℃の範囲の温度で前記組成物と組み合わされる実施態様35〜39のいずれかに記載の方法。
【0121】
41.前記界面活性剤が、トリアルキルリン酸塩溶媒、例えばトリ(n-ブチル)リン酸塩を実質的に含まない実施態様35〜40のいずれかに記載の方法。
【0122】
42.液体因子VII組成物中の活性ウイルスの存在を高レベルで取り除くための方法であって、前記方法が、(i) 実施態様35〜41のいずれかに定義された方法によってウイルスを不活性化する工程と、(ii) 実施態様1〜35のいずれかに定義された任意の方法によってウイルスを除去する工程とを任意の順序で含む方法。
【0123】
43.実施態様42に記載の方法であって、ウイルスを不活性化させる工程が、ウイルスを除去する工程に先行する方法。
【0124】

例1:因子VIIの血清フリーな生成
試験的な大規模培養において因子VIIを生成するために、以下の実験を行った。
【0125】
因子VIIをコードするプラスミドで形質転換されたCHO K1細胞株を、動物誘導型の成分を含まない培地における浮遊培養での増殖に適応させた。適応した細胞の保存バンクを凍結した。保存バンクの細胞を、動物誘導型の成分を含まない培地における浮遊培養においてスピナーボトル内で増殖させた。細胞数が増加したとき、新しい培地の追加によってその容積を除々に増加させた。該容積が4Lに達したとき、細胞数は約0.8×106/mlに達し、スピナーボトルの内容物を50L攪拌タンク反応器(シードリアクター)に移した。細胞数が50L反応器内で増加するにつれて、新しい培地の追加によって容積を徐々に増加させた。容積が50Lに達したとき、細胞数は約1×106/mlに達し、50L反応器の内容物を500L攪拌タンク反応器(プロダクションリアクター)に移した。500L反応器は、播種後24時間以内に細胞を固定化するマクロポーラスなCytopore 1担体(Amersham Biosciences)を含む。細胞数が増加するにつれて、500L反応器内の容積を、新しい培地の添加によって徐々に増加させた。容積が450Lに達し、細胞数が約2×106/mlに達したとき、生産フェーズを開始し、培地交換を24時間毎に行った: 攪拌を停止し、細胞含有キャリアを沈降させ、細胞上清の80%を回収して新しい培地と交換した。回収された培養上清を濾過し、トラップされなかった細胞および細胞片を取り除き、その後さらなる処理に移行した。50Lおよび500Lバイオリアクターは、温度、溶存酸素(マイクロ噴霧器を通した酸素の噴霧)、攪拌速度、頭隙通気速度およびpH(ヘッドスペースへのCO2ガスの添加による下方制御)の制御のための機器を備えている。さらに、500Lバイオリアクターは、溶存CO2の制御のための機器を備えている。オンラインCO2測定が、YSI 8500 CO2-機器によって行われた。CO2レベルを、CO2シグナルに基づいて大気空気をチューブを通して該液体に送り込むことによって制御した。CO2濃度が設定値と同じか下回っているとき、供給速度を1Lの培養液体当たり0 L/分に設定し、CO2濃度が設定値を上回っているとき、供給速度を1Lの培養液体当たり0.01〜0.05 L/分に設定した。溶存CO2の設定値は160mmHgとした。上述したように、塩基をバイオリアクターに添加せずにpH値を上方に制御した。生産フェーズの間、細胞密度が1〜2×107細胞/mlに達し、一日当たりの因子VIIの回収濃度が10〜20 mg/Lに達した。pCO2は150〜170 mmHgの範囲内に維持された。塩基を添加せずにpH値を6.70を上回る値に維持した。
【0126】
例2:捕獲工程からの溶出液の濾過
濾過されるタンパク質溶液:以下の特徴を有する捕獲工程からの25LのFVII溶液
FVII / FVIIaの濃度:630 mg/L
FVIIの1,7%の酸化形態
活性化の程度(すなわち、FVIIaのパーセンテージ): 分析せず
分解:<2,2%
濾過は、図1を参照しながら本明細書に記載されたとおりに実質的に行われた。
【0127】
フィルター:Millipore NFR, 0,08 m2
圧力: 2バール
濾過の特性:
FVII/FVIIaの濃度:610 mg/L : FVIIの収量 : 96,8 %
FVIIの1,5%の酸化された形態
活性化の程度(すなわち、FVIIaのパーセンテージ): 分析せず
分解:<2.2%
【0128】
例3:捕獲工程からの溶出液の濾過
濾過されるタンパク質溶液:以下の特徴を有する捕獲工程からの185mlのFVII溶液
FVII / FVIIaの濃度:82 mg/L
FVIIの3,4%の酸化形態
活性化の程度(すなわち、FVIIaのパーセンテージ): 19%
分解:<3%
濾過は、図1を参照しながら本明細書に記載されたとおりに実質的に行われた。
【0129】
フィルター:Pall DV50, 0,0017 m2
圧力: 2バール
濾過の特性:
FVII/FVIIaの濃度:77.1 mg/L : FVIIの収量 : 94 %
FVIIの4.1%の酸化された形態
活性化の程度(すなわち、FVIIaのパーセンテージ): 20%
分解:<3%
【0130】
例4:捕獲工程からの溶出液の濾過
濾過されるタンパク質溶液:以下の特徴を有する108mlの工程1溶出液:
FVII / FVIIaの濃度:320 mg/L
FVIIの3,7%の酸化形態
活性化の程度(すなわち、FVIIaのパーセンテージ) 3.3%
分解:<0.5 %
濾過は、図1を参照しながら本明細書に記載されたとおりに実質的に行われた。
【0131】
フィルター:Asahi Planova 20 N, 0.001 m2
圧力: 0.8バール
濾過の特性:
FVII/FVIIaの濃度:310 mg/L : FVIIの収量 : 100 %
FVIIの3.7%の酸化された形態
活性化の程度(すなわち、FVIIaのパーセンテージ): 分析せず
分解:<0.5%
【0132】
例5:FVIIバルク薬物質の濾過
濾過されるタンパク質溶液:以下の特徴を有する98mlのFVIIaバルク物質
FVII / FVIIaの濃度:1460 mg/L
FVIIの2,1%の酸化形態
活性化の程度(すなわち、FVIIaのパーセンテージ): >90%
分解: 11.9%
濾過は、図1を参照しながら本明細書に記載されたとおりに実質的に行われた。
【0133】
フィルター:Millipore NFP, 0,0017 m2
圧力:2バール
濾過の特性:
FVII/FVIIaの濃度:1320 mg/L : FVIIの収量 : 90.4 %
FVIIの2.3%の酸化された形態
活性化の程度(すなわち、FVIIaのパーセンテージ): 濾過される溶液の活性化の程度が98%であるので分析せず
分解:12.3%
【0134】
例6:ウイルス除去
Murine Leukemiaウイルス, 力価YYプラーク形成単位(pfu)を含む、捕獲工程からの50mlの因子VIIポリペプチド溶液(例1を参照)。
【0135】
濾過は、図1を参照しながら本明細書に記載されたとおりに実質的に行われる。
【0136】
フィルター:Millipore NFR, yy cm2
圧力:YYバール
濾液のウイルス力価:yy cm2
算出されたクリアランス因子:xx
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、本発明の方法に適したシステムの模式図である。該システムは、圧縮した空気を供給する圧力タンク(1)、ウイルスフィルターを目詰まりさせる粒子を除去するプレフィルター(2)、圧力ゲージ(P)、ウイルスフィルター(3)、および貯留タンク(4)を備える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体因子VII組成物からウイルスを除去するための方法であって、前記組成物が一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記一以上の因子VIIポリペプチドのうち少なくとも5%が活性化された形態であり、前記方法が、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行う方法。
【請求項2】
前記一以上の因子VIIポリペプチドのうち少なくとも7%、例えば少なくとも10%が、活性化された形態である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記因子VIIポリペプチドの活性化された形態が、前記一以上の因子VIIポリペプチドの質量のうち、5〜70%、例えば7〜40%、または10〜30%を占める請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記因子VIIポリペプチドの活性化された形態が、前記一以上の因子VIIポリペプチドの質量のうち、50〜100%、例えば70〜100%、または80〜100%を占める請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記因子VIIポリペプチドの活性化された形態が、前記一以上の因子VIIポリペプチドの質量のうち、20〜80%、例えば30〜70%、または30〜60%を占める請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体組成物が、7.0〜9.5の範囲のpH、例えば7.6〜9.4の範囲、7.7〜9.3の範囲、8.0〜9.0の範囲、または8.3〜8.7の範囲のpHを有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体組成物中の因子VIIポリペプチドの濃度が、0.01〜5 mg/mLの範囲、例えば0.05〜2.0 mg/mLの範囲にある請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノフィルターの細孔サイズが、最大で50 nm、例えば30 nm、または10〜30 nmの範囲にある請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノフィルターの膜が、銅アンモニア溶液で再生されたセルロース、親水性ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、合成PVDF、表面修飾PVDF、およびポリエーテルスルホンから選択された一以上の材料から製造される請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記液体因子VII組成物が、細胞培養上清から得られ、または細胞培養上清から生ずる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記液体組成物が、実質的に血清を含まない請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記因子VIIポリペプチドが、ウシまたはウシ胎仔血清の存在中における細胞培養によって生成される請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記因子VIIポリペプチドが、CHO細胞の細胞培養によって生成される請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記因子VIIポリペプチドが、動物起源の全ての成分を含まない培地における、CHO細胞の細胞培養によって生成される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
液体因子VII組成物からウイルスを除去するための方法であって、前記組成物が一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記液体組成物が実質的に血清を含まず、前記方法が、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行うことを含む方法。
【請求項16】
前記液体因子VII組成物が、細胞培養上清から得られ、または細胞培養上清から生ずる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記因子VIIポリペプチドが、CHO細胞の細胞培養によって生成される請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記因子VIIポリペプチドが、動物起源の全ての成分を含まない培地における、CHO細胞の細胞培養によって生成される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記一以上の因子VIIポリペプチドのうち少なくとも5%が、活性化された形態である請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記液体組成物が、7.0〜9.5の範囲のpH、例えば7.6〜9.4の範囲、7.7〜9.3の範囲、8.0〜9.0の範囲、または8.3〜8.7の範囲のpHを有する請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記液体組成物中の因子VIIポリペプチドの濃度が、0.01〜5 mg/mLの範囲、例えば0.05〜2.0 mg/mLの範囲にある請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノフィルターの細孔サイズが、最大50 nm、例えば30 nm、または10〜30 nmの範囲にある請求項15〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノフィルターの膜が、銅アンモニア溶液で再生されたセルロース、親水性ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、合成PVDF、表面修飾PVDF、およびポリエーテルスルホンから選択された一以上の材料から製造される請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
液体因子VII組成物からウイルスを除去するための方法であって、前記組成物が、一以上因子VIIポリペプチドを含み、前記方法が、最大80 nmの細孔サイズを有するナノフィルターを使用するナノ濾過を前記溶液に対して行うことを含み、前記ナノフィルターが、銅アンモニア溶液で再生されたセルロース、親水性ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、合成PVDF、表面修飾PVDF、およびポリエーテルスルホンから選択された一以上の材料から製造された膜を有する方法。
【請求項25】
前記材料が、ポリビニリデンフッ化物に基づいた材料およびポリエーテルスルホンに基づいた材料から選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記一以上の因子VIIポリペプチドのうち少なくとも5%が、活性化された形態である請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記液体組成物が、7.0〜9.5の範囲のpH、例えば7.6〜9.4の範囲、7.7〜9.3の範囲、8.0〜9.0の範囲、または8.3〜8.7の範囲のpHを有する請求項24〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記液体組成物中の因子VIIポリペプチドの濃度が、0.01〜5 mg/mLの範囲、0.05〜2.0 mg/mLの範囲にある請求項24〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノフィルターの細孔サイズが、最大50 nm、例えば30 nm、または10〜30 nmの範囲にある請求項24〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記液体因子VII組成物が、細胞培養上清から得られ、または細胞培養上清から生ずる請求項24〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記液体組成物が、実質的に血清を含まない請求項24〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記因子VIIポリペプチドが、ウシまたはウシ胎仔血清の存在中における細胞培養によって生成される請求項24〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記因子VIIポリペプチドが、CHO細胞の細胞培養によって生成される請求項24〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記因子VIIポリペプチドが、動物起源の全ての成分を含まない培地における、CHO細胞の細胞培養によって生成される請求項33に記載の方法。
【請求項35】
液体因子VII組成物中のウイルスを不活性化させるための方法であって、前記組成物が一以上の因子VIIポリペプチドを含み、前記方法が前記組成物と界面活性剤とを組み合わせる工程を含む方法。
【請求項36】
前記界面活性剤が、式p-((CH3)3CH2C(CH2)2)-C6H4-O-(CH2CH2O)n-H(式中、nは5〜15の範囲内にある)のオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記界面活性剤が、nが9〜10のもの、例えばTriton X-100である請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記界面活性剤が、Tween(登録商標)、ポリソルベート20、ポリソルベート60、およびポリソルベート80からなる群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記界面活性剤が、0.01〜0.3重量%の範囲、例えば0.05〜0.2重量%の範囲の組成物中の界面活性剤の濃度を与えるように、液体因子VII組成物と組み合わされる請求項35〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記界面活性剤が、2〜12℃の範囲、例えば2〜9℃の範囲の温度で前記組成物と組み合わされる請求項35〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記界面活性剤が、トリアルキルリン酸塩溶媒、例えばトリ(n-ブチル)リン酸塩を実質的に含まない請求項35〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
液体因子VII組成物中の活性ウイルスの存在を高レベルで除去するための方法であって、前記方法が、(i) 請求項35〜41のいずれか一項に定義された方法によってウイルスを不活性化する工程と、(ii) 請求項1〜35のいずれか一項に定義された任意の方法によってウイルスを除去する工程とを任意の順序で含む方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、ウイルスを不活性化させる工程が、ウイルスを除去する工程に先行する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−537994(P2007−537994A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541943(P2006−541943)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053206
【国際公開番号】WO2005/054275
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(501497563)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】