説明

液体圧スプリング及びその製造方法

【課題】シリンダの内部に圧縮性液体を所望の圧力で封入し得、常時及び衝撃時ともにシリンダの内部から外部への加圧された液体の漏洩を防止することができる液体圧スプリング及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】液体圧スプリング1は、一端2にねじ部3を有した円筒状のシリンダ4と、シリンダ4の一端2のねじ部3に螺合すると共にシリンダ4の一端2を閉塞する閉塞手段5と、シリンダ4の他端6に設けられていると共にシリンダ4の他端6を閉塞する閉塞手段7と、シリンダ4の内部8に封入されていると共に所定の圧力に加圧された可圧縮性の液体9と、閉塞手段5を軸方向Aに移動自在に貫通すると共にシリンダ4の内部8への進入によりシリンダ4の内部8の液体9に圧力上昇を生じさせるロッド10と、シリンダ4の内部8に配されていると共にロッド10の一端に取付けられたピストン11とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダの内部に可圧縮性の液体を封入した液体圧スプリング及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可圧縮性の液体を用いたショックアブソーバ、ダンパ等の液体圧スプリングは、たとえば鉄道車両、防舷装置、生産機械等の分野において、大きな衝撃エネルギを減衰吸収することが求められるところに使用されている。
【0003】
液体圧スプリングでは、その初期状態で可圧縮性の液体に与える内圧によりその性能は大きく異なる。
【0004】
特許文献1に示すような液体圧スプリングとしての弾性流体圧縮型ショックアブソーバは、衝撃によりピストンロッドがシリンダ内部へ侵入すると、シリンダ内部の弾性流体収容用の容積が初期時に比べ小さくなり、シリンダ内部に密封された弾性流体が圧縮されその圧力が高まり、この高まった圧力が反力となりスプリング作用(復元作用)が生じ衝撃物を押し返すと共に、弾性流体が圧縮される過程でエネルギを吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−2284号公報
【特許文献2】特開平10−47310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
斯かるスプリングにおいて、シリンダ内部の弾性流体の圧力を外圧に比較してあまり高く設定しなかった場合は、衝撃吸収時に初期の抵抗力が小さく比較的大きなピストンロッドの移動が生じるものの、小さな衝撃時に効果的にエネルギ吸収ができる反面、シリンダ内部の弾性流体の圧力を外圧に比較して高く設定した場合は、衝撃吸収時に一種のトリガー作用(反力)が働くため、小さな衝撃ではピストンロッドの移動を生じなく、大きな衝撃で初めてピストンロッドの移動を生じことになる。
【0007】
上記のいずれの内圧条件を採用する場合においても、製造時にシリンダ内部に封入する弾性流体に対し外圧以上の圧力を加える手段が必要であり、この手段として、特許文献2に記載されているように、シリンダの内部に外側からは流体を注入でき、シリンダの内部側からは流体が流出しないような一般的に良く知られているいわゆる逆止弁を利用するものが多い。
【0008】
可圧縮性流体を用いたスプリングでは、シリンダ内部へ流体を所定の圧力で加圧して封入しなければ所望の反力を得ることができなく、高い反力を必要とする場合はおのずと高い圧力で流体を封入する必要があり、さらに衝撃吸収時にはピストンロッドがシリンダの内部に侵入しシリンダの内部の弾性流体収容用の容積が減少するため、大きな圧力がシリンダ内部に生じ、少しでも隙間があれば加圧された流体がシリンダ外に吹き出したり又は漏洩し、可圧縮性流体の圧力低下を惹き起して性能低下を招来する虞があり、このようにシリンダ内部に高圧の流体を長期に渡って安定的に保持し、衝撃吸収時にはさらに高圧の流体を保持するためシール性が重要な課題となる。
【0009】
ところで、シリンダ、ピストン及びピストンロッドからなると共に加圧された可圧縮性流体を用いたスプリングでは、ピストンロッド周りのシール部材と流体注入用の逆止弁とを介する可圧縮性流体のシリンダ外部への流出が生じやすく、ピストンロッド周りのシール部材を介する可圧縮性流体の流出防止については、例えばV型パッキン、U型パッキンのようにシール形状を工夫した技術が採用されている。
【0010】
本発明は、上記諸点に鑑み、内圧低下を生じさせる要因である逆止弁を用いないでも、シリンダの内部に圧縮性液体を所望の圧力で封入し得、常時及び衝撃時ともにシリンダの内部から外部への加圧された液体の漏洩を防止することができる液体圧スプリング及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による液体圧スプリングは、少なくとも一端にねじ部を有した円筒状のシリンダと、このシリンダの一端のねじ部に螺合すると共にシリンダの一端を閉塞する一方の閉塞手段と、シリンダの他端に設けられていると共にシリンダの他端を閉塞する他方の閉塞手段と、シリンダの内部に封入されていると共に所定の圧力に加圧された可圧縮性の液体と、一方又は他方の閉塞手段を軸方向に移動自在に貫通すると共にシリンダの内部への進入によりシリンダの内部の液体に圧力上昇を生じさせるロッドとを具備しており、ここで、シリンダの内部に封入された液体は、一方の閉塞手段のシリンダのねじ部への螺入により所定に加圧されている。
【0012】
本発明の液体圧スプリングよれば、ロッドが軸方向に衝撃を受けた際に、ロッドがシリンダの内部へ進入してシリンダの内部の容積を減少させるために、シリンダの内部に封入された可圧縮性の液体の圧力が高まり、ロッドの進入具合の増加につれてロッドの進入に対する抵抗力が上昇して、好適な復元力特性を与えるようになっており、そして、シリンダの内部に封入された液体が一方の閉塞手段のシリンダのねじ部への螺入により所定に加圧されているために、逆支弁を介して可圧縮性の液体をシリンダ内部に注入する必要がなく、而して、逆支弁を介するシリンダの内部から外部への液体の漏洩を考慮する必要がなく、逆支弁を設けたものと比較して常時及び衝撃時ともにシリンダの内部から外部への液体の漏洩を防止することができ、シリンダの内部に圧縮性の液体を長期に渡って所望の圧力をもって維持し得る。
【0013】
可圧縮性の液体としては、特開2004−44732、特開2005−121092及び特開2005−121091等に記載の多数の細孔を有した多孔質体が混在した水等の液体又は流動性を有するオルガノポリシロキサンからなる液体を一例として挙げることができ、流動性を有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば、シリコーン生ゴム、シリコーン生ゴムにシリカ等の充填材を配合したもの、液状シリコーンゴムの架橋度を抑え流動性を持たせたシリコーンゲル等を挙げることができるが、非ニュートン流体、その中でもビンガム特性を得ることができる塑性流体が好ましく、塑性流体(ビンガム流体)としては、粘土泥しょう(粒子径が20〜30μm以下の懸濁液)、アスファルト、ペイント、グリースや、顔料、たんぱく質水溶液、クリーム類等を例示し得る。
【0014】
シリンダのねじ部は、シリンダの一端の内周面に形成された雌ねじからなっていても、シリンダの一端の外周面に形成された雄ねじからなっていてもよく、前者の場合には、一方の閉塞手段は、シリンダの一端の内周面に形成された雌ねじに螺合した雄ねじを外周面に有した閉塞部材を具備し、後者の場合には、一方の閉塞手段は、シリンダの一端の外周面に形成された雄ねじに螺合した雌ねじを内周面に有した閉塞部材と、この閉塞部材により軸方向にかつシリンダの他端に向かって押圧されてシリンダの一端の内周面に嵌装された栓部材とを具備しているとよい。
【0015】
他の閉塞手段は、シリンダの他端に一体に形成された閉塞部又はシリンダの他端に螺合された他の閉塞部材を具備していてもよく、斯かる閉塞部を具備する場合には、シリンダは、好ましい一つの例ではいわゆる有底のシリンダとなり、可圧縮性の液体に対する密封性を更に向上でき、他の閉塞部材を具備する場合には、円筒状のシリンダの他端の内周面又は外周面にも雌ねじ又は雄ねじを形成する一方、他の閉塞部材の外周面又は内周面に雄ねじ又は雌ねじを形成し、シリンダの一端を閉塞する閉塞部材と同様に、他の閉塞部材の外周面又は内周面の雄ねじ又は雌ねじをシリンダの他端の内周面又は外周面の雌ねじ又は雄ねじに螺合させて、シリンダの他端を閉塞するようにしてもよい。
【0016】
本発明では、シリンダの内部に配されたロッドの一端に取付けられたピストンを更に具備していてもよく、この場合、ピストンは、シリンダの内周面との間に可圧縮性の液体が流動できる隙間を形成する外周面を有していてもよく、ロッドのシリンダの内部への進入において隙間を介して可圧縮性の液体に流動を生じさせて、可圧縮性の液体の粘性せん断抵抗力でもって衝撃エネルギを効果的に減衰するようにしてもよく、また、斯かる隙間の大きさを調整設定することで、所望の衝撃エネルギ吸収効果を得ることが可能となる。
【0017】
本発明による液体圧スプリングの製造方法の一つの態様は、開口された一端の内周面に雌ねじを有すると共に他端に一体に形成された閉塞部により当該他端が閉塞された円筒状のシリンダ及びロッドが軸方向に移動自在に貫通すると共に外周面に雄ねじを有した閉塞部材を夫々準備する段階と、シリンダの一端の開口から当該シリンダの内部に可圧縮性の液体を注入する段階と、シリンダの一端の内周面の雌ねじに閉塞部材の雄ねじを螺入してシリンダの内部に注入された液体を加圧すると共にシリンダの一端を閉塞する段階とを具備している。
【0018】
本発明による液体圧スプリングの製造方法の他の一つの態様は、開口された一端の内周面に雌ねじを有すると共に貫通孔が設けられた閉塞部を他端に一体的に有する円筒状のシリンダ及び外周面に雄ねじを有した閉塞部材を夫々準備する段階と、閉塞部の貫通孔にロッドを挿通してロッドと閉塞部とでシリンダの他端を閉塞する段階と、シリンダの一端の開口から当該シリンダの内部に可圧縮性の液体を注入する段階と、シリンダの一端の内周面の雌ねじに閉塞部材の雄ねじを螺入してシリンダの内部に注入された液体を加圧すると共にシリンダの一端を閉塞する段階とを具備している。
【0019】
本発明による液体圧スプリングの製造方法の他の一つの態様は、開口された一端の外周面に雄ねじを有すると共に貫通孔が設けられた閉塞部を他端に一体的に有する円筒状のシリンダ及び内周面に雌ねじを有した閉塞部材を準備する段階と、閉塞部の貫通孔にロッドを挿通してロッドと閉塞部とでシリンダの他端を閉塞する段階と、シリンダの一端の開口から当該シリンダの内部に可圧縮性の液体を注入する段階と、シリンダの開口された一端の内周面に栓部材を部分的に嵌入する段階と、シリンダの一端の外周面の雄ねじに閉塞部材の雌ねじを螺入してシリンダの内部に注入された液体を栓部材を介して加圧すると共にシリンダの一端を閉塞する段階とを具備している。
【0020】
斯かる製造方法によれば、シリンダの一端の内周面の雌ねじに閉塞部材の雄ねじを螺入してシリンダの内部に注入された液体を加圧する段階又はシリンダの一端の外周面の雄ねじに閉塞部材の雌ねじを螺入してシリンダの内部に注入された液体を栓部材を介して加圧する段階を具備しているために、逆止弁を用いないでもシリンダの内部に可圧縮性の液体を注入できて、しかも、可圧縮性の液体に所望の初期圧力を付与できるために、常時及び衝撃時ともにシリンダの内部から外部への高圧液体の漏洩を防止することができて、長期に渡って略初期の特性を維持できる液体圧スプリングを提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、内圧低下を生じさせる要因である逆止弁を用いないでも、シリンダの内部に圧縮性液体を所望の圧力で封入し得、常時及び衝撃時ともにシリンダの内部から外部への加圧液体の漏洩を防止することができる液体圧スプリング及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の好ましい例の断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例の動作説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例の製造方法の説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例の製造方法の説明図である。
【図5】図5は、本発明の好ましい他の例の断面説明図である。
【図6】図6は、図5に示す例の製造方法の説明図である。
【図7】図7は、図5に示す例の製造方法の説明図である。
【図8】図8は、本発明の好ましい更に他の例の断面説明図である。
【図9】図9は、図8に示す例の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0024】
図1において、本例の液体圧スプリング1は、一端2にねじ部3を有した円筒状のシリンダ4と、シリンダ4の一端2のねじ部3に螺合すると共にシリンダ4の一端2を閉塞する閉塞手段5と、シリンダ4の他端6に設けられていると共にシリンダ4の他端6を閉塞する閉塞手段7と、シリンダ4の内部8に封入されていると共に所定の圧力に加圧された可圧縮性の液体9と、閉塞手段5を軸方向Aに移動自在に貫通すると共にシリンダ4の内部8への進入によりシリンダ4の内部8の液体9に圧力上昇を生じさせるロッド10と、シリンダ4の内部8に配されていると共にロッド10の一端に取付けられたピストン11とを具備している。
【0025】
シリンダ4のねじ部3は、シリンダ4の一端2の内周面21に形成された雌ねじ22からなり、閉塞手段5は、雌ねじ22に螺合した雄ねじ23を外周面24に有すると共に貫通孔25を有した円筒状の閉塞部材26と、閉塞部材26の貫通孔25を規定する内周面27に固着された円筒状のシール部材28とを具備しており、シール部材28を軸方向Aに摺動自在に貫通したロッド10と協同してシリンダ4の一端2の開口を閉塞している。
【0026】
閉塞手段7は、シリンダ4の他端6に一体に形成された閉塞部31を具備しており、閉塞部31は、シリンダ4の他端6の開口をそれ自体で閉塞しており、閉塞部31を有したシリンダ4は、いわゆる有底シリンダとなる。
【0027】
シリンダ4の内部8に隙間なしに封入された可圧縮性の液体9は、非ニュートン流体である塑性液体からなり、シリンダ4のねじ部3の雌ねじ22への閉塞手段5における閉塞部材26の雄ねじ23の螺入により所定に加圧されている。
【0028】
ロッド10は、その外周面32でシール部材28の内周面33に軸方向Aに摺動自在に接触してシール部材28を貫通しており、こうして、閉塞手段5を軸方向Aに移動自在に貫通している。
【0029】
ピストン11は、シリンダ4の内周面21との間に可圧縮性の液体9が流動できる環状の隙間35を形成する外周面36を有しており、シリンダ4の軸方向Aの移動による同方向の移動で隙間35を介する液体9の流動を生じさせるようになっている。
【0030】
以上の液体圧スプリング1では、加圧された液体9によりロッド10には軸方向Aにおける一方の方向であるB方向に常時力が加えられている結果、鉄道車両、防舷装置、生産機械等の衝撃エネルギを減衰吸収するものに液体圧スプリング1が設置されない場合には、図1に示すように、ロッド10は、シリンダ4外にもっとも大きく突出した状態になる。そして、例えば、ロッド10の他端37が可動物に、シリンダ4自体又は閉塞部31が固定物に連結され取付けられて使用される場合に、衝撃による可動物の軸方向Aにおける一方の移動、即ち、図2に示すようなC方向の移動において、ロッド10がシリンダ4の内部8に進入されると、シリンダ4の内部8におけるロッド10の体積増加で液体9が更に加圧されると共に隙間35を介する液体9の流動が生じ、液体9の加圧と流動とで可動物の衝撃エネルギが減衰吸収される一方、C方向の衝撃力の解消でロッド10は、シリンダ4の内部8の加圧された液体9によりB方向に移動されて図1に示す元の位置に復帰される。
【0031】
液体圧スプリング1よれば、ロッド10がC方向に外部からの衝撃を受けた際に、ロッド10がシリンダ4の内部8へ進入してシリンダ4の内部8の容積を減少させるために、シリンダ4の内部8に封入された可圧縮性の液体9の圧力が高まり、ロッド10の進入具合の増加につれてロッド10の進入に対する抵抗力が上昇して、好適な復元力特性を与えるようになっており、そして、シリンダ4の内部8に封入された液体9が閉塞部材26のシリンダ4のねじ部3への螺入により所定に加圧されているために、逆支弁を介して可圧縮性の液体9をシリンダ4の内部8に注入する必要がなく、而して、逆支弁を介するシリンダの内部から外部への液体の漏洩を考慮する必要がなく、逆支弁を設けたものと比較して常時及び衝撃時ともにシリンダ4の内部8から外部への液体9の漏洩を防止することができ、シリンダ4の内部8に圧縮性の液体9を長期に渡って所望の圧力をもって維持し得る。
【0032】
液体圧スプリング1は、次のようにして製造し得る。図3に示すように、開口された一端2の内周面21に雌ねじ22を有すると共に他端6に一体に形成された閉塞部31により当該他端6の開口が閉塞された円筒状のシリンダ4とピストン11付のロッド10がシール部材28を介して軸方向Aに移動自在に貫通すると共に外周面24に雄ねじ23を有した閉塞部材26とを夫々準備し、シリンダ4の一端2の開口から当該シリンダ4の内部8に可圧縮性の液体9を注入し、次に、図4に示すように、シリンダ4の一端2の内周面21の雌ねじ22に閉塞部材26の雄ねじ23を螺入してシリンダ4の内部8に注入された液体9を加圧すると共にシリンダ4の一端2の開口をロッド10、閉塞部材26及びシール部材28でもって閉塞し、雌ねじ22への雄ねじ23による螺入でもって液体9を所定に加圧させた後、必要により、閉塞部材26をシリンダ4の一端2に溶接等により固定して液体圧スプリング1を得る。
【0033】
上記の液体圧スプリング1では、閉塞手段7は、シリンダ4の他端6に一体に形成された閉塞部31を具備しているが、これに代えて、閉塞手段7は、シリンダ4の他端6を閉塞すべく、シリンダ4の他端6に閉塞部材26と同様に螺合されていると共にシリンダ4とは別体の閉塞部材を具備していてもよい。
【0034】
また、上記の液体圧スプリング1では、閉塞手段5は、円筒状の閉塞部材26と、閉塞部材26の内周面27に固着された円筒状のシール部材28とを具備しているが、これに代えて、閉塞手段5は、図5に示すように、外周面39に雄ねじ40を有した円柱状の閉塞部材41を具備していてもよく、斯かる閉塞部材41は、それ自体でシリンダ4の一端2の開口を閉塞しており、この場合、閉塞手段7を、シリンダ4の他端6に一体に形成されていると共に貫通孔42を有した環状の閉塞部43と、閉塞部43の貫通孔42を規定する内周面44に固着された円筒状のシール部材45とでもって構成し、ピストン11付のロッド10をその外周面32でシール部材45の内周面46に軸方向Aに摺動自在に接触させて、シール部材45を貫通してロッド10を配置してもよく、斯かる閉塞部43とシール部材45とを具備した閉塞手段7は、ロッド10と協同してシリンダ4の他端6の開口を閉塞しており、一端2にねじ部3として雌ねじ22を有した円筒状のシリンダ4と、シリンダ4の一端2のねじ部3の雌ねじ22に螺合すると共にシリンダ4の一端2を閉塞する閉塞手段5の閉塞部材41と、シリンダ4の他端6に設けられていると共にシリンダ4の他端6を閉塞する閉塞手段7の閉塞部43及びシール部材45と、シリンダ4の内部8に封入されていると共に所定の圧力に加圧された可圧縮性の液体9と、閉塞手段7のシール部材45を軸方向Aに移動自在に貫通すると共にシリンダ4の内部8への進入によりシリンダ4の内部8の液体9に圧力上昇を生じさせるロッド10と、シリンダ4の内部8に配されていると共にロッド10の一端に取付けられたピストン11とを具備している図5に示す液体圧スプリング1においても、シリンダ4の内部8に隙間なしに封入された可圧縮性の液体9は、塑性流体のビンガム流体からなり、シリンダ4のねじ部3の雌ねじ22への閉塞手段5における閉塞部材41の雄ねじ40の螺入により所定に加圧されている。
【0035】
図5に示す液体圧スプリング1は、次のようにして製造し得る。開口された一端2の内周面21に雌ねじ22を有すると共に貫通孔42が設けられて、当該貫通孔42を規定する内周面44にシール部材45が固着された閉塞部43を他端6に一体的に有する円筒状のシリンダ4及び外周面39に雄ねじ40を有した閉塞部材41並びにピストン11が一端に固着されたロッド10を夫々準備し、図6に示すように、シリンダ4の一端2の開口からシリンダ4の内部8にピストン11付のロッド10の他端37を挿入して、図7に示すように、閉塞部43にピストン11が接触するまで閉塞部43の貫通孔42にロッド10を挿通してロッド10と閉塞部43及びシール部材45とでシリンダ4の他端6の開口を閉塞し、挿通後、シリンダ4の一端2の開口から当該シリンダ4の内部8に可圧縮性の液体9を注入し、注入後、シリンダ4の一端2の内周面21の雌ねじ22に閉塞部材41の雄ねじ40を螺入してシリンダ4の内部8に注入された液体9を加圧すると共にシリンダ4の一端2の開口を閉塞し、雌ねじ22への雄ねじ40の螺入により液体9を所定に加圧した後、閉塞部材41をシリンダ4の一端2に溶接等により固定して図5に示す液体圧スプリング1を得る。
【0036】
図5に示す液体圧スプリング1でも、加圧された液体9によりロッド10にはC方向に常時力が加えられている結果、鉄道車両、防舷装置、生産機械等の衝撃エネルギを減衰吸収するものに液体圧スプリング1が設置されない場合には、図5に示すように、ロッド10は、シリンダ4外にもっとも大きく突出した状態になる。そして、例えば、ロッド10の他端37が可動物に、シリンダ4自体又は閉塞部材41が固定物に連結され取付けられて使用される場合に、衝撃による可動物のB方向の移動において、ロッド10がシリンダ4の内部8に進入されると、シリンダ4の内部8におけるロッド10の体積増加で液体9が更に加圧されると共に隙間35を介する液体9の流動が生じ、液体9の加圧と流動とで可動物の衝撃エネルギが減衰吸収される一方、B方向の衝撃力の解消でロッド10は、シリンダ4の内部8の加圧された液体9によりC方向に移動されて図5に示す元の位置に復帰される。
【0037】
図5に示す液体圧スプリング1でも、ロッド10が軸方向AにおいてB方向に外部からの衝撃を受けた際に、ロッド10がシリンダ4の内部8へ進入してシリンダ4の内部8の容積を減少させるために、シリンダ4の内部8に封入された可圧縮性の液体9の圧力が高まり、ロッド10の進入具合の増加につれてロッド10の進入に対する抵抗力が上昇して、好適な復元力特性を与えるようになっており、そして、シリンダ4の内部8に封入された液体9が閉塞部材41のシリンダ4のねじ部3への螺入により所定に加圧されているために、逆支弁を介して可圧縮性の液体9をシリンダ4の内部8に注入する必要がなく、而して、逆支弁を介するシリンダの内部から外部への液体の漏洩を考慮する必要がなく、逆支弁を設けたものと比較して常時及び衝撃時ともにシリンダ4の内部8から外部への液体9の漏洩を防止することができ、シリンダ4の内部8に圧縮性の液体9を長期に渡って所望の圧力をもって維持し得る。
【0038】
上記の液体圧スプリング1のいずれも、シリンダ4の一端2の内周面21に雌ねじ22を形成し、閉塞部材26又は41の外周面24又は39に雄ねじ23又は40を形成し、これら雌ねじ22と雄ねじ23又は40とを螺合させた例であるが、これに代えて、図8に示すように、シリンダ4の一端2の外周面51に雄ねじ52を形成し、閉塞部材53の内周面54に雌ねじ55を形成し、シリンダ4の一端2の外周面51に形成された雄ねじ52に螺合した雌ねじ55を内周面54に有した閉塞部材53と、閉塞部材53により軸方向Aにかつシリンダ4の他端6に向かって押圧されてシリンダ4の一端2の内周面21に嵌装された栓部材56とを具備して閉塞手段5を構成してもよく、斯かる閉塞部材53と栓部材56とを具備した閉塞手段5は、シリンダ4の一端2の開口を閉塞している。
【0039】
図8に示す液体圧スプリング1もまた、一端2にねじ部3として雄ねじ52を有した円筒状のシリンダ4と、シリンダ4の一端2のねじ部3の雄ねじ52に螺合すると共にシリンダ4の一端2を閉塞する閉塞手段5の閉塞部材53及び栓部材56と、シリンダ4の他端6に設けられていると共にシリンダ4の他端6をロッド10と協同して閉塞する閉塞手段7の閉塞部43及びシール部材45と、シリンダ4の内部8に封入されていると共に所定の圧力に加圧された可圧縮性の液体9と、閉塞手段7のシール部材45を軸方向Aに移動自在に貫通すると共にシリンダ4の内部8への進入によりシリンダ4の内部8の液体9に圧力上昇を生じさせるロッド10と、シリンダ4の内部8に配されていると共にロッド10の一端に取付けられたピストン11とを具備しており、シリンダ4の内部8に隙間なしに封入された可圧縮性の液体9は、塑性流体のビンガム流体からなり、シリンダ4のねじ部3の雄ねじ52への閉塞手段5における閉塞部材53の雌ねじ55の螺入により栓部材56を介して所定に加圧されている。
【0040】
閉塞部材53は、円筒状の内周面54に雌ねじ55が形成された円筒部61と、円筒部61に一体的に形成されている円盤状蓋部62と具備しており、円柱状の栓部材56は、シリンダ4の内周面21と同径の外周面63を有して、外周面63でシリンダ4の内周面21にぴったりと嵌合されるようになっている。
【0041】
図8に示す液体圧スプリング1は、次のようにして製造し得る。開口された一端2の外周面51に雄ねじ52を有すると共に貫通孔42が設けられて、当該貫通孔42を規定する内周面44にシール部材45が固着された閉塞部43を他端6に一体的に有する円筒状のシリンダ4及び内周面54に雌ねじ55を有した閉塞部材53及び内周面21と同径の外周面63を有した栓部材56並びにピストン11が一端に固着されたロッド10を夫々準備し、前記と同様に、シリンダ4の一端2の開口からシリンダ4の内部8にピストン11付のロッド10の他端37を挿入して、図9に示すように、閉塞部43にピストン11が接触するまで閉塞部43の貫通孔42にシール部材45を介してロッド10を挿通してロッド10と閉塞部43及びシール部材45とでシリンダ4の他端6の開口を閉塞し、挿通後、シリンダ4の一端2の開口から当該シリンダ4の内部8に可圧縮性の液体9を注入し、注入後、シリンダ4の一端2の開口からシリンダ4の一端2の内周面21に外周面63で嵌合するように栓部材56を部分的に嵌合し、嵌合後、シリンダ4の一端2の外周面51の雄ねじ52に閉塞部材53の雌ねじ55を螺入して栓部材56をC方向に押圧してシリンダ4の内部8に注入された液体9を栓部材56を介して加圧すると共にシリンダ4の一端2の開口を閉塞部材53及び栓部材56でもって閉塞し、雄ねじ52の雌ねじ55への螺入により栓部材56を介して液体9を所定に加圧した後、閉塞部材53をシリンダ4の一端2に溶接等により固定して図8に示す液体圧スプリング1を得る。
【0042】
本製造方法において、可圧縮性の液体9のシリンダ4の内部8への注入は、栓部材56のシリンダ4の一端2への嵌合において栓部材56が前もって注入された液体9に接触した際に、栓部材56が部分的にシリンダ4の一端2の開口から外部に突出するように、予め決められた量をもって行われ、シリンダ4の一端2の外周面51の雄ねじ52への閉塞部材53の雌ねじ55の螺入は、シリンダ4の一端2の開口から外部に部分的に突出した栓部材56をシリンダ4の他端6に向かって押圧するようにしてなされ、これによりシリンダ4の内部8に注入された液体9は加圧されることになる。
【0043】
図8に示す液体圧スプリング1は、図5に示す液体圧スプリング1と同様にして用いられ、同様に動作するようになっている。
【符号の説明】
【0044】
1 液体圧スプリング
2 一端
3 ねじ部
4 シリンダ
5 閉塞手段
6 他端
7 閉塞手段
8 内部
9 液体
10 ロッド
11 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端にねじ部を有した円筒状のシリンダと、このシリンダの一端のねじ部に螺合すると共にシリンダの一端を閉塞する一方の閉塞手段と、シリンダの他端に設けられていると共にシリンダの他端を閉塞する他方の閉塞手段と、シリンダの内部に封入されていると共に所定の圧力に加圧された可圧縮性の液体と、一方又は他方の閉塞手段を軸方向に移動自在に貫通すると共にシリンダの内部への進入によりシリンダの内部の液体に圧力上昇を生じさせるロッドとを具備しており、シリンダの内部に封入された液体は、一方の閉塞手段のシリンダのねじ部への螺入により所定に加圧されている液体圧スプリング。
【請求項2】
シリンダのねじ部は、シリンダの一端の内周面に形成された雌ねじからなり、一方の閉塞手段は、シリンダの一端の内周面に形成された雌ねじに螺合した雄ねじを外周面に有した閉塞部材を具備している請求項1に記載の液体圧スプリング。
【請求項3】
シリンダのねじ部は、シリンダの一端の外周面に形成された雄ねじからなり、一方の閉塞手段は、シリンダの一端の外周面に形成された雄ねじに螺合した雌ねじを内周面に有した閉塞部材と、この閉塞部材により軸方向にかつシリンダの他端に向かって押圧されてシリンダの一端の内周面に嵌装された栓部材とを具備している請求項1に記載の液体圧スプリング。
【請求項4】
他方の閉塞手段は、シリンダの他端に一体に形成された閉塞部又はシリンダの他端に螺合された閉塞部材を具備している請求項1から3のいずれか一項に記載の液体圧スプリング。
【請求項5】
シリンダの内部に配されていると共にロッドの一端に取付けられたピストンを更に具備しており、ピストンは、シリンダの内周面との間に可圧縮性の液体が流動できる隙間を形成する外周面を有している請求項1から4のいずれか一項に記載の液体圧スプリング。
【請求項6】
開口された一端の内周面に雌ねじを有すると共に他端に一体に形成された閉塞部により当該他端が閉塞された円筒状のシリンダ及びロッドが軸方向に移動自在に貫通すると共に外周面に雄ねじを有した閉塞部材を夫々準備する段階と、シリンダの一端の開口から当該シリンダの内部に可圧縮性の液体を注入する段階と、シリンダの一端の内周面の雌ねじに閉塞部材の雄ねじを螺入してシリンダの内部に注入された液体を加圧すると共にシリンダの一端を閉塞する段階とを具備した液体圧スプリングの製造方法。
【請求項7】
開口された一端の内周面に雌ねじを有すると共に貫通孔が設けられた閉塞部を他端に一体的に有する円筒状のシリンダ及び外周面に雄ねじを有した閉塞部材を夫々準備する段階と、閉塞部の貫通孔にロッドを挿通してロッドと閉塞部とでシリンダの他端を閉塞する段階と、シリンダの一端の開口から当該シリンダの内部に可圧縮性の液体を注入する段階と、シリンダの一端の内周面の雌ねじに閉塞部材の雄ねじを螺入してシリンダの内部に注入された液体を加圧すると共にシリンダの一端を閉塞する段階とを具備した液体圧スプリングの製造方法。
【請求項8】
開口された一端の外周面に雄ねじを有すると共に貫通孔が設けられた閉塞部を他端に一体的に有する円筒状のシリンダ及び内周面に雌ねじを有した閉塞部材を準備する段階と、閉塞部の貫通孔にロッドを挿通してロッドと閉塞部とでシリンダの他端を閉塞する段階と、シリンダの一端の開口から当該シリンダの内部に可圧縮性の液体を注入する段階と、シリンダの開口された一端の内周面に栓部材を部分的に嵌入する段階と、シリンダの一端の外周面の雄ねじに閉塞部材の雌ねじを螺入してシリンダの内部に注入された液体を栓部材を介して加圧すると共にシリンダの一端を閉塞する段階とを具備した液体圧スプリングの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−7491(P2013−7491A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223234(P2012−223234)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2007−8223(P2007−8223)の分割
【原出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】