説明

液体型光学装置、その制御方法及び電子装置

本発明は、容器を含む光学装置を開示し、容器は、絶縁性液体(A)と電気的影響を受けやすい液体(B)とを収容し、絶縁性液体(A)と電気的影響を受けやすい液体(B)は、不混和性があり、互いに界面(14)を介して接触し、前記2つの液体(A;B)の一方の液体が少なくとも該容器を通る光路上に少なくとも部分的に配置される。光学装置は、更に、加熱手段(2,12,20)を含み、加熱手段は、好ましくは、絶縁性液体(A)と電気的影響を受けやすい液体(B)に対する温度センサ(30)に反応する。これにより、光学装置の挙動に対する絶縁性液体(A)と電気的影響を受けやすい液体(B)の物理的特性の温度依存性が低減された光学装置が得られ、従って、低温で改善された光学的特性を備える光学装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに界面を介して接触する不混和性のある絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体とを収容する容器であって、液体が該容器を通る光路上に配置される、容器と、前記界面の位置を操作する手段とを含む光学装置に関する。
【0002】
本発明は、更に、かかる光学装置の制御方法に関する。
【0003】
本発明は、更に、かかる光学装置を含む電子装置に関する。
【背景技術】
【0004】
液体の操作(マニプレーション)に基づく光学装置は、急速に大きな商業的な関心を獲得している。これは、とりわけ、その機械的な可動部品の不要性及び装置の比較的簡易性に起因し、これにより、装置を安価で且つ耐久性の高いものとなる。
【0005】
例えば、特許文献1には、同一の屈折率であるが異なる透過率の2つの不混和性の液体を組み込み、当該2つの液体の一方が導電性のある光学装置が、開示される。これらの2つの液体間の界面を可変することにより、装置を通る光路における各液体の量が変化し、結果としてダイアフラムが得られる。
【0006】
特許文献2には、異なる屈折率を有する2つの流体であって、一方が導電性で他方が絶縁性を呈する2つの不混和性の流体を組み込む円筒形の可変焦点レンズが開示される。これらの流体は、好ましくは、レンズの向き(オリエンテーション)に対する液体の向きの重力の依存性を防止するため、同等の密度を有する。2つの流体の界面の形状は、レンズ両端に電圧を印加することにより操作され、これは、レンズの焦点に変化をもたらすために用いることができる。円筒体の壁及び円筒体の透明な蓋の一方は、疎水性のコーティングで被覆され、これにより、少なくともオフ状態において、大きな光学パワー領域を持つ可変焦点レンズが促進されるように、典型的には極性液体である伝導性流体と、前記壁との間の接触領域が最小化されることが保証される。
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/0017985号
【特許文献2】国際特許出願WO03/069380
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゼロ度未満での光学装置の良好な動作を可能とするために伝導性流体が典型的に比較的高い電解液を有する水を含むときのかかる装置の問題点は、伝導性流体に1g/cmより十分大きい密度が付与され、これにより、典型的には1g/cm未満の密度のオイルである適切な絶縁性流体の選択肢が極度に阻害されることである。また、比較的高い電解液濃度は、伝導性流体と接触する光学装置の金属部分の腐食を引き起こし、これにより、光学装置の性能が損なわれる。
【0008】
本発明は、低い電解液濃度を用いることができる光学装置の提供を目的とする。
【0009】
また、本発明は、かかる光学装置を制御する方法の提供を目的とする。
更に、本発明は、かかる光学装置を含む電子装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面によると、互いに界面を介して接触する不混和性のある絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体とを収容する容器であって、前記2つの液体の一方の液体が少なくとも該容器を通る光路上に少なくとも部分的に配置される、容器と、
前記界面の位置を操作する手段と、
前記絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体とを加熱する加熱手段とを含む、光学装置が提供される。
【0011】
ユーザにより制御される加熱手段若しくは本発明の光学装置の温度センサに反応する加熱手段の存在は、光学装置内の液体の温度の変動を低減できることを保証する。これにより、これらの液体の密度は、変動が同様に少なく、この結果、液体の向きの重力的な歪の削減に対して良好な制御を生む。この温度変動に対する良好な制御は、また、光学装置の動作範囲の下限での動作温度で非常に粘性が高くなるオイルベースの絶縁性液体に関連する問題を解決し、これにより、光学装置の切り替え速度に対して増加した粘性が与える有害な作用が低減される。
【0012】
同様に、液体の屈折率は温度に依存するので、温度の大きな変化は、光学装置の所期の光学的挙動からの逸脱をもたらす。
【0013】
更に、液体の冷却は、液体の体積の減少をもたらし、従って、圧力の減少を引き起こす。その結果、蒸気の泡若しくは溶解したガスの泡が液体内に生まれ、これにより、光学装置の光学的性能が損なわれる。本発明により提供される光学装置内部の液体の温度の制御は、改善された光学装置の光学的特性の安定性を保証する。
【0014】
更に、本発明の光学装置は、電気的影響を受けやすい液体が、温度センサに結合される加熱手段の存在により凍結することから保護されるので、電解質ベースの伝導性液体である電気的影響を受けやすい液体における低い電解質濃度を可能とする。これにより、電解質が誘起する、電気的影響を受けやすい液体に接触する光学装置の金属部品の腐食性の劣化が低減される。更に、電解質ベースの液体の密度は、電界質濃度の増加と共に増加するので、本発明の光学装置は、当該液体の低い密度を可能とし、これにより、対応する密度を有する絶縁性液体の選択が容易となる。
【0015】
加熱手段は、手動で動作されてもよいが、好ましくは、光学装置は、更に、温度センサを含み、加熱手段が、当該温度センサに反応する。これは、装置のユーザが光学装置が晒される温度に注意を払うことを要せずに、光学装置の安定した保護を保証する。
【0016】
一実施例では、加熱手段は、前記界面の位置を操作する手段の少なくとも一部に電流を供給する駆動回路を含む。電流は、光学装置のアイドル状態中に電極に供給される一定電流であってよいが、界面の位置を操作する手段を担持する光学装置の容器の壁の抵抗加熱を生ずる。これは、光学装置の温度が、界面の位置を操作する既に利用可能な手段を用いて制御できるという、効果を奏する。
【0017】
その他の実施例では、加熱手段は、容器の少なくとも一部を覆う伝導性材料の層を含む。加熱目的に特化した伝導性材料の使用は、界面の位置を操作する手段がそれに係合されているとき、光学装置の動作中に使用できるという効果を奏する。
【0018】
本発明のその他の局面によると、互いに界面を介して接触する不混和性のある絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体とを収容する容器であって、前記2つの液体の一方の液体が該容器を通る光路上に部分的に配置される、容器と、前記界面の位置を操作する手段と、を含む光学装置を制御する方法であって、
前記絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体の温度を算出するステップと、
所定の温度の閾値と、前記算出した温度とを比較するステップと、
前記算出した温度が前記閾値を下回る場合に前記絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体を加熱するステップとを含む、方法が提供される。
【0019】
本方法によれば、光学装置の内部の温度が所定の温度未満まで降下しないことが保証され、当該所定の温度は、典型的には、それより小さい温度になると、液体の特性、例えば密度、粘性及び屈折率が所期の特性から大きく逸脱する温度であり、これにより、光学装置の性能に対する上述の有害な作用が防止される。
【0020】
一実施例では、前記温度を算出するステップは、前記界面を第1の位置から第2の位置まで切り替え、前記界面の反応時間を測定することを含む。この実施例は、界面の位置の変化に対する光学装置の反応時間が温度に依存するという知見に基づく。これにより、この反応時間の算出は、暗黙的な温度の測定であり、これは、専用の温度センサが必要とされないという効果を奏する。この測定は、例えば、光学装置がレンズ機能を実現する場合には画像センサにより、若しくは、光学装置がダイアフラム機能を実現する光学装置の場合には光センサや画像センサにより実現されることができる。次いで、絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体を加熱するステップは、前記界面の位置を操作する手段の少なくとも一部に電流を供給することを含んでよく、これは、光学装置に追加の要素を必要とすることなく、加熱ステップを実行できるという効果を奏する。
【0021】
本発明の更なるその他の局面によると、冒頭の段落の記載の光学装置を含む電子装置であって、更に、前記界面の位置を操作する手段に結合される駆動回路と、前記駆動回路に結合される温度センサとを含む、電子装置が提供される。駆動回路及び温度センサは、光学装置に内蔵される必要はないが、本発明の電子装置に存在してもよい。これは、かかる要素が既に電子装置に存在する場合に、それらの機能が光学装置の所望の温度制御を実現するために拡張されることができるという、効果を奏する。例えば、電子装置が液晶ディスプレイである場合、このディスプレイに対する駆動回路は、温度センサを既に含んでいる場合があり、当該温度センサは、光学装置に対しても使用することができる。
【0022】
或いは、電子装置は、更に、光センサを含み、温度センサが光センサにて実現される。本発明の方法で説明したように、光センサは、液体の温度と相関が取れる光学装置の反応時間を測定するために使用できる。これは、専用の温度センサが必要とされないという効果を奏する。
【0023】
前記駆動回路は、更に、前記温度センサに反応して、前記界面の位置を操作する手段の少なくとも一部に電流を供給するように構成されてよく、これは、追加の駆動回路が加熱手段に対する制御部として必要とされないという効果を奏する。
【0024】
更なる実施例では、前記光学装置が、前記容器の少なくとも一部を覆う伝導性材料の層を含み、該伝導性の層が、前記駆動回路に結合され、前記駆動回路が、更に、前記温度センサに反応して、前記伝導性材料の層に電流を供給するように構成されている。これは、光学装置の加熱手段として機能する伝導性材料が、界面の位置を操作する手段としても同時に使用することができ、これにより、動作中の光学装置の加熱が可能となるという、効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明は、添付図面を参照して非限定的な例により詳細に説明される。
【0026】
尚、理解されるべきこととして、図面は、単に概略的なものであり、実寸ではない。また、理解されるべきこととして、同一の参照符号が、同一ないし類似の部品を示すために全図を通して用いられている。
【0027】
図1には、上記の特許文献2に開示される可変焦点レンズが示されている。可変焦点レンズは、円筒形のチャンバに収容される第1の絶縁性流体Aと第2の伝導性流体Bを含む。これらの流体は、不混和性であり、異なる屈折率を有し、好ましくは、流体間の界面14を含む流体の向き(オリエンテーション)に対する向きに依存する重力の影響を防ぐため、同一の密度を有する。円筒形チャンバは、更に、第1の端部4及び第2の端部6を含み、第1の端部4は、円筒形チャンバの内壁と同様、パリレンの積層(スタック)と結合されてもよい、DuPont社からのAF1600TMのような疎水性のあるコーティング材により、被覆され、印加される電圧が無い状況下で絶縁性流体Aにより伝導性流体Bを閉じ込める。界面14の形状は、チャンバの壁に埋設される円筒形の電極2と、好ましくは透明な、第2の流体Bに伝導的に接触する第2の蓋6上の管状の電極12との間の電圧を値V1からV2に変化させることによって、連続的な態様で、向き(a)で示す凸形状から向き(b)で示す凹形状に切り替えられることができる。その結果、円筒体を通る光路Lの合焦点が変化される。
【0028】
透明な端部4は、ガラス又はポリマーの蓋若しくはその他の適切な透明な材料であってよく、レンズ形状であってよい。
【0029】
典型的には、絶縁性流体Aの物理的特性の温度依存性は、伝導性流体Bの物理的特性の温度依存性とは異なることになる。それ故に、流体A,Bは、選択された温度、例えば室温にて、良好に整合された物理特性を有してよいが、レンズの動作温度が当該選択された温度から顕著に逸脱する場合、当該異なる温度依存性の挙動は、物理的特性の所期の整合からの逸脱を生む。
【0030】
例えば、絶縁性流体A及び伝導性流体Bは、流体の向きに対する重力の影響を避けるため、T=20℃周辺で同様の密度を有してよい。しかし、T=−20℃で動作するとき、密度は、重力により流体の向きが影響を受けるほど十分に異なりうり、これは、レンズの性能が、レンズが配置された向きに依存することを意味し、非常に望ましくない。
【0031】
また、絶縁性流体Aと伝導性流体Bの間の屈折率の慎重に選択した差は、温度の大きな変化により変化されることができ、この変化が、レンズの所望の光学的挙動からの逸脱を引き起こす。更に、絶縁性流体Aは、オイルベースであってよい。低温では、オイルベースの流体は、非常に粘性が高くなり、可変焦点レンズの切り替え速度に有害な影響をもたらす。
【0032】
強調すべきこととして、これらの望ましくない作用は、例として上記の特許文献2からの先行技術のレンズを用いて説明されているが、上記の特許文献1に開示されるダイアフラムのような、他の液体ベースの光学装置もこれらの問題点の少なくともいくつかに同様に悩まされる。
【0033】
図2及び後続の図面には、図1の可変焦点レンズが、本発明の光学装置の一実施例として示される。しかし、強調すべきこととして、本発明の教示は、他の液体ベースの光学装置にも適用できる。図2では、可変焦点レンズは、駆動回路20により拡張され、駆動回路20は、壁の電極2と底部プレートの電極12を含む電極構成に電圧を印加し、電気的影響を受けやすい液体Bと絶縁性流体Aの間の界面14の形状を制御するように構成される。駆動回路20は、更に、温度センサ30に対応して、電極構成の電極2,12の少なくとも一方に電流を供給するように構成される。壁の電極2及び/又は底部プレートの電極12を介した電流の印加は、可変焦点レンズの容器の壁の抵抗加熱を引き起こし、これにより、電気的影響を受けやすい液体Bと絶縁性流体Aの加熱が引き起こされる。
【0034】
一実施例では、供給される電流は、直流電流であり、例えば壁の電極2の、抵抗加熱を引き起こす。その他の実施例では、駆動回路20は、伝導性流体B、チャンバの内壁上の絶縁層、例えばパリレンの積層、及び壁の電極2により形成されるキャパシタでの電荷分布を反転させるために交流電流を供給するように構成され、これにより、絶縁層の加熱が引き起こされる。効果的には、交流電流の交流周波数は高く、好ましくは、電圧の変化に対する界面14の反応時間よりも実質的に高く、例えば、5−50kHzの範囲内である。これは、電圧変化が界面14が反応できないほど速いので、アクティブモード中の光学装置の加熱を容易化する。
【0035】
温度センサ30は、任意の知られた温度センサであってよく、必ずしも必要でないが、好ましくは、可変焦点レンズの容器に密に接触するように配置される。温度センサ30は、省略され、電流を供給するための駆動回路20のユーザによる制御された起動に置換されてよい。
【0036】
図3は、本発明の光学装置のその他の実施例を示す。図2に示す可変焦点レンズは、可変焦点レンズの容器の端部4上の透明な伝導層100により拡張される。透明な伝導層100は、酸化インジウムすず(ITO)層であってよく、若しくは、その他の適切な透明の伝導性材料であってよい。図3では、駆動回路20は、透明の伝導層100に電流を供給するため透明の伝導層100に伝導的に結合される。これは、透明の伝導層100における抵抗加熱を引き起こし、これにより、電気的影響を受けやすい液体Bと絶縁性流体Aの加熱が引き起こされる。光学装置の加熱専用の伝導層100の存在は、壁の電極2及び底部プレートの電極12が2つの機能、即ち、界面10の形状を制御することと、電気的影響を受けやすい液体Bと絶縁性流体Aを加熱することを、実現する必要がなくなることから、装置が動作中に加熱されることもできるという効果を奏する。
【0037】
強調すべきこととして、伝導層100は、必ずしも端部4上に配置される必要はない。容器の他の部分上の位置は等しく可能である。また、伝導層100は、容器を通る光路外に配置されるときは透明である必要はない。更に、駆動回路20は、界面14の形状を制御するため電極構成に結合される専用の駆動回路、及び、伝導層100に電流を供給するその他の専用の駆動回路を含んでもよい。
【0038】
この点、強調すべきこととして、本発明の内容において、用語‘電気的影響を受けやすい液体’とは、伝導性液体、極性のある流体及び分極可能な流体を含む意図である。
【0039】
更に、強調すべきこととして、この出願では、界面14の位置を制御する手段は、電圧により界面14の形状を制御する電極構成として示されているが、優先日が2003年5月14日の未公開の欧州特許出願03101335.2に開示されるような、界面14の位置を制御するその他の手段も同等に適用可能である。この出願では、可変焦点レンズが、異なる反射率を備える2つの不混和性の液体を含むことが開示されている。レンズは、2つの液体に対して分配される2つのチャンバ、即ち、界面が位置し光路が通過する第1のチャンバ、及び、第1のチャンバに2つの接続部を有する第2のチャンバを有する。第2のチャンバは、両チャンバにおけるそれぞれの液体の容積を変化させるために用いられるポンプを含む。結果として、レンズの焦点は、界面の形状、即ち界面の曲率を変化させること以外に、第1のチャンバの内壁に対する2つの液体間の界面の位置の平行移動により変化される。
【0040】
図2及び図3に示すような光学装置は、互いに界面14を介して接触する不混和性のある絶縁性液体Aと電気的影響を受けやすい液体Bとを収容する容器であって、前記2つの液体A;Bの一方の液体が少なくとも該容器を通る光路上に少なくとも部分的に配置される、容器と、前記界面14の位置を操作する手段と、を含む光学装置を制御する本発明による方法400により動作されて良い。本方法400は、図4に示すように、多数のステップを含む。
【0041】
第1のステップ410では、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bの温度が算出される。これは、温度センサ30のような、専用の温度センサを用いて実行されてもよい。温度は、温度センサ30を絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bの近傍に配置することにより、若しくは、光学装置の外側の温度を測定し、この温度から、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bに対する温度を導出することにより、算出されてもよい。
【0042】
或いは、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bの温度は、光学装置の光学的挙動から導出される。説明したように、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bの物理的特性は、光学装置の光学的挙動に緊密にリンクされる。これらの特性は温度依存性があるので、光学装置の光学的挙動の変化は、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bの温度の指標である。
【0043】
例えば、界面14は、第1の位置から第2の位置に切り替えられてよい。界面14の反応時間、即ち界面14が安定位置に至るのに要する時間は、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bの温度の関数である。それ故に、この反応時間を測定することは、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bの温度を提供する。この反応時間は、界面14の形状を変化させたときの光学装置の出力が再び安定したときを解析することにより、画像センサのような光センサを用いて測定することができる。光学装置がダイアフラムである場合、これは、光センサを用いて実行されることができ、この場合、光学装置を通過して来る光の量の安定性は、安定状態に至る界面14の指標である。或いは、反応時間は、壁の電極2、壁の電極2を覆う絶縁層、及び、電場に反応する流体Bにより形成されるキャパシタのキャパシタンスを測定することにより、求めることができる。
【0044】
次のステップ420では、算出された温度が、所定の温度と比較される。所定の温度は、典型的には、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bの物理的特性が、要求される基準内に依然としてある下限温度である。算出された温度が所定温度より低くない場合、加熱ステップは必要でない。しかし、算出された温度が所定温度より低い場合、ステップ430が実行され、例えば光学装置の壁の電極2及び/又は底部プレートの電極12を介して電流を供給することにより、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bが加熱される。
【0045】
ステップ410から430は、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bの温度が所定の温度未満でなくなるまで繰り返し実行されてよい。或いは、一旦、ステップ410及び420が実行されると、ステップ430は、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bが十分に温かくなるまで、ステップ410及び420と並列的に実行されてもよい。
【0046】
図5は、本発明の電子装置1の一実施例を示す。電子装置は、図1に示し及びそれの詳細な説明で説明し示したような光学装置を含む。更に、電子装置1は、光学装置により捕捉される画像を記録するための光学装置を通る光路の出口側に配置される画像センサを含む。画像センサ40は、駆動回路20に結合され、光学装置により捕捉される画像が適切な特性を有すること、例えば光学装置が可変焦点レンズである場合に画像が合焦されることを保証するため、駆動回路20を制御する。電子装置は、温度センサ30を含んでよく、当該温度センサ30は、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(AMLCD、図示せず)に対する駆動回路(図示せず)の一部であってよい。この温度センサ30は、本発明の方法400のステップ410,420と同様に、測定した温度が所定温度未満まで落ちる場合に、制御信号を駆動回路20に提供するように用いることもできる。それに応じて、駆動回路20は電極2と12の少なくとも一つに電流を供給する。或いは、光学装置は、電流が印加される伝導層(図示せず)を含んでよい。
【0047】
温度センサ30は、画像センサ40が、上述の如く、絶縁性流体A及び電気的影響を受けやすい液体Bの温度を算出するのに用いられる場合には、省略されてもよい。画像センサ40により算出される温度は、上述のAMLCDのような、電子装置1の他の温度反応部品を制御するのに用いられてもよく、この場合、温度センサ30は、AMLCDの駆動回路から省略することができる。
【0048】
或いは、電子装置は、界面14の反応時間を算出するため、壁の電極2、壁の電極2を覆う絶縁層、及び、電場に反応する流体Bにより形成されるキャパシタのキャパシタンスを算出するように構成されて良く、これは、界面14を第1の位置から第2の位置に切り替えたときにキャパシタンスが安定した値に至るまでに要する時間が、界面の上述の反応時間に対応するからである。
【0049】
尚、上述の実施例は、本発明を例示するもので限定するものでなく、当業者であれば、添付の請求の範囲の観点から逸脱することなく多数の代替的な実施例を設計することができるだろう。原文の請求項において、カッコ内の参照符号は、請求項を限定するのに解釈されるべきでない。単語“comprising(含む)”は、請求項に列挙された要素やステップ以外の要素やステップの存在を除外するものでない。要素に付される単数表現は、かかる要素の複数の存在を除外するものでない。本発明は、幾つかの区別される要素を含むハードウェアにより実現されることができる。幾つかの手段を列挙する装置クレームでは、これらの手段のいくつかが、1つの同一のハードウェアのアイテムにより具現化されることができる。ある手段が、相互に異なる従属項の請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが効果的に使用できないことを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】先行技術の可変焦点レンズを概略的に示す図である。
【図2】本発明による光学装置を概略的に示す図である。
【図3】本発明によるその他の光学装置を概略的に示す図である。
【図4】本発明による電子装置を概略的に示す図である。
【図5】本発明によるその他の電子装置を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに界面を介して接触する不混和性のある絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体とを収容する容器であって、前記2つの液体の一方の液体が少なくとも該容器を通る光路上に少なくとも部分的に配置される、容器と、
前記界面の位置を操作する手段と、
前記絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体とを加熱する加熱手段とを含む、光学装置。
【請求項2】
温度センサを更に含み、前記加熱手段が、前記温度センサに反応する、請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記加熱手段が、前記界面の位置を操作する手段の少なくとも一部に電流を供給する駆動回路を含む、請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記電流が交流電流である、請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記加熱手段が、前記容器の少なくとも一部を覆う伝導性材料の層を含む、請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項6】
互いに界面を介して接触する不混和性のある絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体とを収容する容器であって、前記2つの液体の一方の液体が少なくとも該容器を通る光路上に少なくとも部分的に配置される、容器と、前記界面の位置を操作する手段と、を含む光学装置を制御する方法であって、
前記絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体の温度を算出するステップと、
所定の温度の閾値と、前記算出した温度とを比較するステップと、
前記算出した温度が前記閾値を下回る場合に前記絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体を加熱する加熱ステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記温度を算出するステップが、前記界面を第1の位置から第2の位置まで切り替え、前記界面の反応時間を測定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱ステップが、前記界面の位置を操作する手段の少なくとも一部に電流を供給することを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
光学装置を含む電子装置であって、
前記光学装置が、
互いに界面を介して接触する不混和性のある絶縁性液体と電気的影響を受けやすい液体とを収容する容器であって、前記2つの液体の一方の液体が少なくとも該容器を通る光路上に少なくとも部分的に配置される、容器と、
前記界面の位置を操作する手段とを含み、
前記界面の位置を操作する手段に結合される駆動回路と、
前記駆動回路に結合される温度センサとを含む、電子装置。
【請求項10】
光センサを更に含み、前記温度センサが、前記光センサにて実現される、請求項9に記載の電子装置。
【請求項11】
前記駆動回路が、更に、前記温度センサに反応して、前記界面の位置を操作する手段の少なくとも一部に電流を供給するように構成されている、請求項9又は10に記載の電子装置。
【請求項12】
前記電流が交流電流である、請求項11に記載の電子装置。
【請求項13】
前記光学装置が、前記容器の少なくとも一部を覆う伝導性材料の層を含み、該伝導性の層が、前記駆動回路に結合され、前記駆動回路が、更に、前記温度センサに反応して、前記伝導性材料の層に電流を供給するように構成されている、請求項9又は10に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−534985(P2007−534985A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509052(P2007−509052)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051321
【国際公開番号】WO2005/103768
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)