説明

液体塗布具

【課題】細かい部分に液体を塗布しやすい液体塗布具を提供すること。
【解決手段】液体塗布具2は支持軸22と塗布部と21を有する。塗布部21は、液体4の塗布操作時に該塗布部21に加わる外力によって弾性変形可能になっている。塗布部21は、その延びる方向に沿う軸線aが、支持軸22の軸線bと交差するように傾斜している。塗布部21は、略平面になっている第1の面21Aと、第2の面21Bとを有する。塗布部21は最狭幅部21Cを有し、該最狭幅部21Cから先端21Dに向けて漸次広幅になり、かつ更に先端21Dに向かうに連れて漸次狭幅になっている。塗布部21は最小厚み部21Fを有し、かつ最小厚み部21Fと先端21Dとの間において第2の面21Bが突出して形成された最大厚み部21Gを有する。更に塗布部21は、最大厚み部21Gから先端21Dに向かうに連れて厚みが漸減している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を対象物に塗布するために用いられる液体塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を対象物に塗布するために用いられる液体塗布具に関する従来の技術としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。同文献には、組成物を皮膚、唇又は爪のような表面に塗布するためのアプリケータが記載されている。このアプリケータは、その先端に位置するアプリケータ末端部に、塗布部として作用する本体を有している。この本体は、近位の第1の部分と、塗布面を含む遠位の第2の部分とを含んでいる。第1の部分と第2の部分との間には、これらの部分の間に蝶番を形成する薄い区域が設けられている。この薄い区域は、第2の部分に設けられた塗布面が、塗布対象面に押し付けられている間、第2の部分が第1の部分に対してピボット回転することを可能にするものである。第2の部分は、アプリケータの縦方向軸線Xに垂直なピボット回転軸の周りに、第1の部分に対してピボット回転することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−21230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアプリケータは、同文献の例えば図3に記載されているように、第2の部分がピボット回転した状態下に、該第2の部分に設けられている塗布面を用いて組成物を塗布することを意図している。したがってこのアプリケータは、唇や爪などに組成物を塗布することには適しているが、細かい部分へ線を描くような組成物の塗布、例えばまつ毛の根本へのまつ毛美容液の塗布に適したものとは言えない。
【0005】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る液体塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持軸と、該支持軸の先端に連結し、かつ該支持軸の延びる方向に向けて細長い形状をした塗布部とを有する液体塗布具であって、
塗布部は、液体の塗布操作時に該塗布部に加わる外力によって弾性変形可能になっており、
塗布部は、その延びる方向に沿う軸線が、支持軸の軸線と交差するように傾斜しており、
塗布部は、略平面又はやや凸面になっている第1の面と、第1の面の反対側に位置する第2の面とを有し、
塗布部を第1の面側からみたとき、該塗布部は最狭幅部を有し、該最狭幅部から先端に向けて漸次広幅になり、かつ更に先端に向かうに連れて漸次狭幅になっており、
支持軸の軸線と、塗布部の軸線とを通る平面に対して直交する方向から該塗布部をみたとき、該塗布部は最小厚み部を有し、かつ該最小厚み部と該塗布部の先端との間において第2の面が突出して形成された最大厚み部を有し、更に該塗布部は、該最大厚み部から該塗布部の先端に向かうに連れて厚みが漸減している、液体塗布具を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体塗布具によれば、細かい部分に液体を塗布しやすくなる。しかも液体のぼた落ちが起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の液体塗布具を備えた液体塗布装置の一実施形態を示す一部破断正面図である。
【図2】図2(a)は、液体塗布具における塗布部をその第1の面側からみた斜視図であり、図2(b)は、塗布部をその第2の面側からみた斜視図である。
【図3】図3(a)は、液体塗布具における塗布部の正面図であり、図3(b)は、塗布部の側面図であり、図3(c)は、図3(b)におけるc−c線断面図であり、図3(d)は、図3(b)におけるd−d線断面図であり、図3(e)は、図3(b)におけるe−e線断面図である。
【図4】図4は、液体塗布具における塗布部の正面図(図3(a)相当図)である。
【図5】図5は液体塗布具における塗布部の側面図(図3(b)相当図)である。
【図6】図6(a)及び(b)は、液体塗布装置における塗布具を、容器内から引き抜くときの様子を順次示す説明図である。
【図7】図7は、本発明の液体塗布具を備えた液体塗布装置の使用状態の一例を示す説明図である。
【図8】図8は、液体塗布具における塗布部の最狭幅部をピボット回転軸として該塗布部がピボット回転する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の液体塗布具を備えた液体塗布装置の一実施形態の正面図が、一部破断した状態で示されている。同図に示す液体塗布装置1は、液体4を塗布するための塗布具2と、液体4を収容するための容器3とを備えている。以下、塗布具2及び容器3についてそれぞれ説明する。
【0010】
まず、容器3について説明すると、容器3は有底の細長い円筒状のものである。容器3はその内部に液体4を収容できるようになっている。容器3は、その底部と対向して口部33を有する。口部33は上方に向けて開口している。口部33の外周面にはネジ部32が設けられている。このネジ部32は、後述する塗布具2の蓋体23の内周面に設けられたネジ部(図示せず)と螺合可能になっている。
【0011】
容器3における口部33はその近傍にしごき弁31を有している。しごき弁31は、容器3の口部33から底部に向けて縮径した漏斗状の形状をしており、その下端の位置にしごき孔31Aを有している。しごき孔31Aは、後述する塗布具2における塗布部21及び支持軸22の通過が自在になっている。しごき孔31Aは、容器3の横断面視において、しごき弁31の略中央部に形成されている。またしごき孔31Aは円孔となっている。しかし、しごき孔31Aの形状はこれに限られない。しごき孔31Aは、塗布具2の先端に位置する塗布部21を容器3内に挿入し、また容器3内から抜き出すことが可能な大きさを有している。しごき弁31は、塗布具2の塗布部21や支持軸22に付着した過剰量の液体4を適度にしごき取るために用いられる。この目的のために、しごき弁31はゴム等の弾性変形可能な材料から構成されている。なお図1においては、しごき弁31は、口部33から若干離れた下方寄りに位置しているが、これに代えて、口部33の位置にしごき弁31を配置してもよい。容器本体3の口部33の近傍部分には、口部33から若干離れた箇所から口部33までの部分が含まれる。
【0012】
容器3と組み合わせて用いられる塗布具2は、塗布部21と支持軸22とを有している。これらの部材は、容器3の口部33から該容器3内に出入自在となっている。塗布部21は液体4を塗布対象部位に塗布するために用いられる。支持軸22は、その先端において塗布部21と連結している。塗布部21と支持軸22とは同一材料から一体的に構成されていてもよく、あるいは予め製造された2つの部材を所定の手段によって結合させて構成されていてもよい。いずれの場合であっても、塗布部21は、液体4の塗布操作時に該塗布部21に加わる外力によって弾性変形可能になっている。この目的のために、塗布部21の材料として、例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂及びポリウレタンなどの各種エラストマーを用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを使用すると、射出成形によって塗布部21を製造することができるので好ましい。
【0013】
塗布部21と支持軸22を別々に製造して結合させる場合、両者を嵌合させて結合することが好ましい。結合の方法としては、ポンチ打ちなどで塗布部21又は支持軸22を塑性変形させて固定する方法が挙げられる。また、接着剤による接着など公知の技術を適宜採用してもよい。
【0014】
塗布具2は、更に蓋体23を有している。蓋体23は、支持軸22の後端と連結している。蓋体23は、上述のとおり、その内周面にネジ部(図示せず)を有している。このネジ部は、上述した容器3のネジ部32と螺合可能になっている。蓋体23が容器3のネジ部32と螺合した状態においては、塗布装置1は略円柱状の形状となる。この状態においては、塗布部21は容器3の底部よりも若干上方に位置している。
【0015】
図2(a)及び(b)には塗布部21の拡大図が示されている。なお、図1と図2では、塗布部21の上下関係が逆転している。図2(a)は、塗布部21をその第1の面21Aの側からみた斜視図であり、図2(b)は、塗布部21をその第2の面21Bの側からみた斜視図である。塗布部21は、支持軸22の延びる方向に向けて細長い形状をしている。詳細には、塗布部21は、支持軸22の延びる方向に長手方向Xを有し、長手方向Xと直交する方向に幅方向Yを有する縦長の形状である。
【0016】
塗布部21は、第1の面21Aと、これと反対側に位置する第2の面21Bとを有する。第1の面21Aは略平面又はやや凸面になっている。ここでいう凸面とは、塗布部21の長手方向Xに沿って凸面であること、及び/又は、塗布部21の幅方向Yに沿って凸面であることをいう。一方、第2の面21Bは凹凸を有する起伏した面になっている。
【0017】
塗布部21は、支持軸22に対して所定の角度をもって傾斜している。詳細には、図2(a)に示すように、塗布部21はその延びる方向に沿う軸線aが、支持軸22の延びる方向に沿う軸線bと交差するように傾斜している。そして、塗布具2が容器3内に挿入された状態においては、図1に示すように、塗布部21は、塗布部21の第1の面21Aが容器3の底部方向を向くように、支持軸22の軸線に対して傾斜している。塗布部21と支持軸22とがこのような傾斜関係で結合していることによって、塗布具2を用いた液体4の塗布を容易に行うことができる。
【0018】
塗布部21は、その表面に植毛処理が施されている。植毛処理に用いられる繊維は、長さが0.1〜3mmで、太さが0.5〜5デシテックスのものが好ましい。長さ及び太さがこの範囲のなかで、異なる2種以上の繊維を組み合わせて用いることも可能である。繊維の材質は、液体4の種類や塗布対象部位の種類に応じ、適切なものが選択される。人体の体表、例えば皮膚や爪などを塗布対象部位とする場合には、ポリアミド樹脂を用いることで、好ましいソフトな感触を得ることができる。塗布部21の表面に植毛処理を施すためには、静電植毛法等の公知の技術を適宜採用すればよい。
【0019】
図3(a)ないし(e)には、図2(a)及び(b)に示す塗布部21の正面図、側面図及び横断面図が示されている。先に述べたとおり塗布部21の表面には植毛処理が施されているが、液体4の種類や塗布対象部位の種類によっては植毛処理を施さなくてもよい場合がある。植毛処理の有無にかかわらず塗布部21は、植毛処理される前の状態での露出面の全域が曲面のみで形成されていることが好ましい。換言すれば、植毛処理される前の状態での塗布部21は、角部を全く有していない滑らかなものであることが好ましい。
【0020】
更に塗布部21は、植毛処理される前の状態での露出面が平滑になっていてもよい。換言すれば、植毛処理される前の状態での塗布部21は、皺状、シボ状、梨地状等を始めとする各種の微細な凹凸を、その露出面において有していなくてもよい。このような表面状態を採用することに代えて、露出面が皺状、シボ状、梨地状等を始めとする各種の微細な凹凸を有していてもよく、あるいは露出面が多孔性になっていてもよい。露出面の表面状態としてどのような状態を選択するかは、液体4の種類や塗布対象部位の種類に応じて決定すればよい。例えば皮膚や爪などの人体の体表を塗布対象部位とする場合には、植毛処理される前の状態での塗布部21は「滑らか」で「つるつる」した平滑であることが、良好な使用感等の点から好ましい。
【0021】
図2及び図3に示すように、塗布部21は、これを第1の面21A側からみたときに、最狭幅部21Cを有している。ここで言う幅とは、図3(a)中、Y方向の長さのことである。最狭幅部21Cは、塗布部21を長手方向に二分する位置よりも先端寄りに位置している。また最狭幅部21Cは、塗布部21の先端21Dから離れた位置にある。図示されている最狭幅部21Cは1箇所のみであるが、2箇所以上存在していてもよいし、或る程度の長さにわたって存在してもよい。塗布部21は、最狭幅部21Cから塗布部21の先端21Dに向けて漸次広幅になっている。そして広幅部21Eを経て、更に先端21Dに向かうに連れて漸次狭幅になっている。また塗布部21は、これを第1の面21A側からみたときに、最狭幅部21Cから塗布部21の後端に向かうに連れて漸次広幅になっている。そして塗布部21は、該塗布部21と支持軸22との連結部24において幅が略一致している。最狭幅部21Cから連結部24までの間には、塗布部21の幅が狭くなった括れた部位は存在していない。なお、図2(a)に示す塗布部21には左右対称に描かれているが、塗布部21を必ずしも左右対称にする必要はない。
【0022】
図3(d)に示すように、最狭幅部21Cにおいては、該最狭幅部21Cの幅Wcは、該最狭幅部21Cの厚みTcよりも小さくなっている。このことと、塗布部21が弾性変形可能になっていることによって、塗布部21は、最狭幅部21Cにおいて、第1の面21Aと直交する方向よりも、第1の面内方向(図3(d)中、符号D1で示す方向)へ撓みやすくなっている。
【0023】
図4に示すように、塗布部21をその第1の面21A側からみたときに、該塗布部21が最狭幅部21Cから広幅部21Eに向けて漸次広幅になっていく程度は、直線c1と塗布部21の軸線aとのなす角α1の範囲が、5°<α1<60°、特に10°<α1<45°となる程度が好ましい。角α1をこの範囲に設定することで、塗布具2を容器3から引き抜くときに、塗布部21がしごき弁31に引っ掛かりにくくなるので、容器3から塗布具2を引き抜き易くなる。更に、最狭幅部21C付近が効果的にしごかれ、塗布部21に余分な液が残留しにくくなる。同様の理由から、図4に示すように、直線c2と塗布部21の軸線aとのなす角α2の範囲は5°<α2<60°、特に10°<α2<45°が好ましい。角α1と角α2とは同じ値でもよく、あるいは異なっていてもよい。また、図4に示すように、直線c1と直線c2とのなす角α3は、60°<α3<150°となる程度が好ましい。角α3をこの範囲に設定することで、最狭幅部21C付近が効果的にしごかれる。また最狭幅部21Cに液が残留しづらくなる。更に、塗布部21が最狭幅部21Cをピボット回転軸として、同図中左右に撓みやすくなる。直線c1は、塗布部21の第1の塗布面21Aに平行な平面に、該塗布部21を投影したときの輪郭線において、最狭幅部21Cと広幅部21Eとの間の輪郭線R1における中間位置での接線である。直線c2は、前記の輪郭線において、最狭幅部21Cと、該最狭幅部21Cから連結部24寄りの位置にある最も幅の広い部位との間の輪郭線R2における中間位置での接線である。輪郭線R1やR2が滑らかでない(凸凹や不連続な線)など、接線を引く位置によって接線の傾きが大きく変化する場合は、輪郭線R1やR2の全道のりの中間付近5割程度の曲線プロファイルを用い、最小二乗法などで直線に近似した直線を直線c1及びc2とすればよい。具体的には、全道のりを100とすると、およそ25から75の区間の曲線の関数や点群座標データなどを用いて、最小二乗法などで近似直線を求める。輪郭線R1及びR2が、全道のりの中央付近で変曲点を持つ場合は、その変曲点を通る接線を直線c1及びc2としてもよい。なお図4においては直線c1と直線c2とは軸線a上で交差しているが、直線c1と直線c2との交差位置はこれに限られない。
【0024】
図2及び図3に戻ると、これらの図に示すように、塗布部21は、支持軸22の軸線bと、塗布部21の軸線aとを通る平面、具体的には図3(b)における紙面と平行な面に対して直交する方向(つまり図3(b)における紙面と垂直な方向)から該塗布部21をみたときに、該塗布部21は最小厚み部21Fを有している。ここで言う厚みとは、支持軸22の軸線bと、塗布部21の軸線aとを通る平面に対して直交する方向から該塗布部21をみたとき、塗布部21の軸線aと直交する直線が、該塗布部21を横切る長さのことである。
【0025】
塗布部21は、最小厚み部21Fと塗布部21の先端21Dとの間において第2の面21Bが突出して、略錐形の突出部を形成している。そして、この略錐形の突出部の頂点の位置に、塗布部21の最大厚み部21Gが存在している。図示されている最大厚み部21Gは1箇所のみであるが、2箇所以上存在していてもよいし、或る程度の長さにわたって存在してもよい。塗布部21は、最大厚み部21Gの位置から先端21Dに向かうに連れて、その厚みが漸減している。一方、最小厚み部21Fの位置から最大厚み部21Gの位置に向かうに連れて、塗布部21はその厚みが漸増している。更に、最小厚み部21Fの位置から塗布部21の後端に向かうに連れて、該塗布部21の厚みは漸増している。そして塗布部21は、該塗布部21と支持軸22との連結部24においてその輪郭が、支持軸22の輪郭と略一致している。
【0026】
図3(e)に示すように、最小厚み部21Fにおいては、該最小厚み部21Fの幅Wfは、該最小厚み部21Fの厚みTfよりも大きくなっている。このことと、塗布部21が弾性変形可能になっていることによって、塗布部21は、最小厚み部21Fにおいて、第1の面内方向よりも、第1の面21Aと直交する方向(図3(e)中、符号D2で示す方向)へ撓みやすくなっている。
【0027】
図2及び図3に示すように、塗布部21においては、最狭幅部21Cが最小厚み部21Fよりも該塗布部21の先端21D寄りに位置している。しかし、最狭幅部21Cと最小厚み部21Fとの位置関係はこれに限られず、最狭幅部21Cが最小厚み部21Fよりも該塗布部21の後端寄りに位置していてもよく、あるいは最狭幅部21Cと最小厚み部21Fとが略同位置でもよい。
【0028】
一方、最狭幅部21Cと最大厚み部21Gとの位置関係については、図2及び図3に示す実施形態では、最狭幅部21Cと最大厚み部21Gとが略同位置にある。しかし両者の位置関係はこれに限られず、最狭幅部21Cが最大厚み部21Gよりも該塗布部21の先端21D寄りに位置していてもよく、逆に最狭幅部21Cが最大厚み部21Gよりも該塗布部21の後端寄りに位置していてもよい。
【0029】
図3(a)に示すように、塗布部21は、これを第1の面21A側からみたとき、該塗布部21の先端21Dが先細でかつ丸みを帯びている。更に、図3(b)に示すように、塗布部21を、支持軸22の軸線bと、塗布部21の軸線aとを通る平面に対して直交する方向からみたとき、該塗布部21の先端21Dは、先細でかつ丸みを帯びている。このように塗布部21の先端21Dは、いずれの方向からみても丸みを帯びている。換言すれば、先端21Dは先細の形状になっているものの、いずれの方向からみても尖鋭になっていない。
【0030】
図5に示すように、支持軸22の軸線bと塗布部21の軸線aとを通る平面に対して直交する方向から該塗布部21をみたときに、該塗布部21が最小厚み部21Fから最大厚み部21Gに向けて漸次広幅になっていく程度は、直線d1と塗布部21の軸線aとのなす角β1の範囲が、5°<β1<60°、特に10°<β1<45°となる程度であることが好ましい。β1をこの範囲とすることで、塗布具2を容器3から引き抜くときに、塗布部21がしごき弁31に引っ掛かりにくくなるので、容器3から塗布具2を引き抜き易くなる。更に、最小厚み部21F付近が効果的にしごかれ、塗布部21に余分な液が残留しにくくなる。同様の理由から、図5に示すように、直線d2と支持軸22の軸線bとのなす角β2の範囲は0°<β2<60°、特に5°<β2<45°であることが好ましく、直線d1と直線d2とのなす角β3は、60°<β3<150°であることが好ましい。角β1と角β2とは同じ値でもよく、あるいは異なっていてもよい。直線d1は、支持軸22の軸線bと塗布部21の軸線aとを通る平面に対して直交する方向から該塗布部21をみたときに、該平面と平行な平面に、該塗布部21を投影したときの輪郭線において、最小厚み部21Fと最大厚み部21Gとの間の輪郭線R3における中間位置での接線である。直線d2は、前記の輪郭線において、最小厚み部21Fと、該最小厚み部21Fから連結部24寄りの位置にある最も厚みの大きい部位との間の輪郭線R4における中間位置での接線である。輪郭線R3やR4が滑らかでない(凸凹や不連続な線)など、接線を引く位置によって接線の傾きが大きく変化する場合は、輪郭線R3やR4の全道のりの中間付近5割程度の曲線プロファイルを用い、最小二乗法などで直線に近似した直線を直線d1及びd2とすればよい。具体的には、全道のりを100とすると、およそ25から75の区間の曲線の関数や点群座標データなどを用いて、最小二乗法などで近似直線を求める。輪郭線R3及びR4が、全道のりの中央付近で変曲点を持つ場合は、その変曲点を通る接線を直線d1及びd2としてもよい。
【0031】
図6(a)及び(b)には、以上の構造を有する液体塗布装置1における塗布具2を、容器3内から引き抜くときの様子が示されている。使用前の状態においては、図1に示すように、塗布具2の塗布部21は、容器3の底部よりも若干上方に位置している。この状態から塗布具2を引き上げると、塗布部21が傾斜していることに起因して、図6(a)に示すように、塗布部21における第2の面21B側がしごき弁31の下端と接触し、第2の面21Bの側に存在する過剰の液体がしごき弁31によってしごき落とされる。更に引き抜きを進行させると、図6(b)に示すように、塗布部21におけるこぶ状に突出した最大厚み部21Fが、しごき弁31の下端に接近するので、引き抜きが行いづらくなる。ところで、先に述べたとおり、最小厚み部21Fは、塗布部21における第1の面内方向よりも、第1の面21Aと直交する方向(図6(b)中、符号D2で示す方向)へ撓みやすくなっている。したがって、図6(b)に示す状態から更に引き抜きを行おうとすると、最大厚み部21Fの位置がピボット回転軸になり、塗布部21が矢印で示す方向に撓み(すなわちピボット回転し)、塗布部21としごき弁31との当接が緩和される。その結果、過度の力を要することなく塗布部21を引き抜くことができる。これとともに、塗布部21におけるこぶ状に突出した最大厚み部21F及びその近傍の部位がしごき弁31によって効果的にしごかれるので、該塗布部21に付着している過剰の液体を首尾よくしごき落とすことができる。その結果、液体の塗布操作中に、塗布部21から液体がぼた落ちすることが効果的に防止される。
【0032】
図7には、以上の構造を有する本実施形態の液体塗布装置1の使用状態の一例が示されている。同図は、塗布対象部位として、非常に細かい部位であるまつ毛の根本にまつ毛美容液を塗布する状態を示すものである。まつ毛美容液をまつ毛の根本に塗布するには、まず先に述べた図6(a)及び(b)に示す操作を行い塗布部21に付着している過剰のまつ毛美容液を除去し、塗布操作中における該美容液のぼた落ちが生じないようにする。次に図7に示すように、塗布部21の先端をまつ毛の根本に当接させて、美容液をまつ毛の根本に付与する。先に述べたとおり、塗布具2の塗布部21の先端21Dは先細の形状の形状になっているので、塗布対象部位が細かくても美容液を首尾よく塗ることができる。しかも、塗布部21の先端21Dは尖鋭ではなく丸みを帯びているので、該先端21Dを目に近づけたときに使用者に安心感を与える。
【0033】
先に述べたとおり、塗布部21は、その延びる方向に沿う軸線aが、支持軸22の軸線bと交差するように傾斜している。このような傾斜状態になっている塗布部21を、その第1の面21Aが上方を向き、かつ第2の面21Bが下方を向くようにして美容液の塗布を行うと、塗布操作中における使用者の視界が確保されるという利点がある。また、まつ毛に妨げられることなく瞼の縁に塗布を行うことができるという利点もある。塗布部21が上述した傾斜状態になっていると、使用者は図7のように塗布具21をまつ毛に当てることができるので、その結果、塗布部21を動かす方向(瞼の縁に沿った方向)と、塗布部21の撓み方向(左右方向)とを自然に一致させることができる。これらの観点から、塗布部21の延びる方向に沿う軸線aと支持軸22の軸線bとのなす角θ(図5参照)を、80度以下、特に5〜45度に設定することが好ましい。
【0034】
図7に示す塗布操作を行う場合には、塗布部21を瞼の縁に沿って左右に移動させる。ところで、先に述べたとおり、塗布部21は、最狭幅部21Cにおいて、第1の面21Aと直交する方向よりも、第1の面内方向へ撓みやすくなっている。したがって、塗布部21を、その第1の面21Aが上方を向き、かつ第2の面21Bが下方を向く状態下に、該塗布部21を瞼の縁に沿って左右に移動させると、図8に示すように、最狭幅部21Cの位置がピボット回転軸になり、塗布部21が符号D1で示す方向に撓む(すなわちピボット回転する)。この撓みによって、瞼の縁という狭い部位であっても美容液の塗布が一層行いやすくなる。また、この撓みによって、塗布部21が対象部位へ接触するときの力が緩和されるので、塗布部21が瞼の縁ような敏感な部位に接触するときも、瞼に与える物理的な刺激が少なく、使用者は安心して簡単にまつ毛美容液を塗布することができる。これらの観点から、塗布部21は、該塗布部21を瞼の縁に押し当てて、例えば90°程度の角度で撓ませたときでも、使用者が痛みを感じない程度の軟らかさで撓むことが良い。また、塗布部21は、該塗布部21を瞼から離した後、初期の形状に戻る程度の復元性を持つことが、次に塗布操作を行うときの塗布位置の狙いを定め易いので好ましい。更に、初期の形状に復元するまでの時間(復元の速度)は、あまり長過ぎない(遅すぎない)方が、塗布部21が瞼に触れているときの感触を認知し易さ、及び押し当て力の調整のし易さなどの点から、使用者が塗布具2を使う上で都合が良い。撓みの軟らかさと復元性は、最狭幅部1Cの幅や厚み、塗布部21を構成する素材の種類やゴム硬度などを適宜選んで決定すれば良い。
【0035】
最狭幅部21Cをピボット回転軸とする撓みを一層効果的に生じさせるために、塗布部21を最狭幅部21Cにおいて第1の面内方向への撓ませる力の方が、塗布部21を最小厚み部21Fにおいて第1の面と直交する方向への撓ませる力よりも小さいことが好ましい。同様の理由によって、最狭幅部21Cにおけるピボット回転軸と、最小厚み部21Fにおけるピボット回転軸とは互いにねじれの位置にあることが好ましく、特に両回転軸は、塗布部21の軸線aの方向からみたときに、90度で交差するようになっていることが好ましい。このようにすることで、塗布部21を瞼の縁に沿って左右に動かしてまつ毛美容液を塗布するときに、塗布部21はその進行方向に沿った向き(左右方向)にのみ撓み、上下方向には一層撓みにくくなる。したがって、まつ毛美容液をまつ毛に塗布している間、予期せずに塗布具21が瞼の縁を外れ、塗布対象部位をはみ出して、まつ毛美容液が瞼や眼球に付着することがないので、安心して簡単に細かい部位に塗布することができる。
【0036】
図7に示す液体塗布装置1の使用状態の説明は、液体としてまつ毛美容液を用いた場合についてのものであったが、液体塗布装置を用いた塗布の対象となる液体はまつ毛美容液に限られない。また塗布の対象部位は瞼の縁に限られない。液体塗布装置1による塗布の対象となる液体とは、狭義の液体に限られず、使用環境下において流動性を有し、かつ対象部位に塗布することの可能な性質を有する物質を広く包含する。そのような物質としては、例えば狭義の液体の他に、クリーム、ペースト、粘稠体などと呼ばれる流動体が含まれる。具体的には、先に述べたマスカラ美容液の他に、例えばマスカラ、マニキュア、コンシーラ、液状口紅、リップグロスやリップカラー等と称される仕上げ用の艶出し化粧料などの各種の化粧品、自動車のボディやバンパーの塗装補修に用いられるタッチアップペイント等の塗料、接着剤、誤字を消すために使う修正液などが挙げられる。これらの液体が塗布される部位としては、人体の体表、自動車のボディやバンパー、接着や修正液を必要とする各種固体や半固体(各種金属やプラスチックやゴム、ガラス、陶磁器、コンクリート・石、木材、皮革、繊維・布、紙など)などが挙げられる。液体塗布装置1は細かい部位に液体を塗布するのに好適なものなので、塗布対象部位は、線幅が0.3〜5mm程度の線状のものであるか、又は面状である場合には0.1〜25mm2程度の面積を有するものであることが好ましい。
【0037】
また、液体塗布装置1は細かい部位に液体を塗布するのに好適なものであるが、例えば略平面又はやや凸面になっている第1の面21Aを利用することで、面状の広い部分への液体の塗布も可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 液体塗布装置
2 塗布具
21 塗布部
21A 第1の面
21B 第2の面
21C 最狭幅部
21D 先端
21E 広幅部
21F 最小厚み部
22 支持軸
23 蓋体
3 容器
31 しごき弁
31A しごき孔
33 口部
4 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸と、該支持軸の先端に連結し、かつ該支持軸の延びる方向に向けて細長い形状をした塗布部とを有する液体塗布具であって、
塗布部は、液体の塗布操作時に該塗布部に加わる外力によって弾性変形可能になっており、
塗布部は、その延びる方向に沿う軸線が、支持軸の軸線と交差するように傾斜しており、
塗布部は、略平面又はやや凸面になっている第1の面と、第1の面の反対側に位置する第2の面とを有し、
塗布部を第1の面側からみたとき、該塗布部は最狭幅部を有し、該最狭幅部から先端に向けて漸次広幅になり、かつ更に先端に向かうに連れて漸次狭幅になっており、
支持軸の軸線と、塗布部の軸線とを通る平面に対して直交する方向から該塗布部をみたとき、該塗布部は最小厚み部を有し、かつ該最小厚み部と該塗布部の先端との間において第2の面が突出して形成された最大厚み部を有し、更に該塗布部は、該最大厚み部から該塗布部の先端に向かうに連れて厚みが漸減している、液体塗布具。
【請求項2】
塗布部は、最狭幅部において、第1の面と直交する方向よりも、第1の面内方向へ撓みやすくなっている請求項1に記載の液体塗布具。
【請求項3】
塗布部は、最小厚み部において、第1の面内方向よりも、第1の面と直交する方向へ撓みやすくなっている請求項2に記載の液体塗布具。
【請求項4】
最狭幅部が最小厚み部よりも塗布部の先端寄りに位置している請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液体塗布具。
【請求項5】
塗布部は、最狭幅部から後端に向かうに連れて漸次広幅になっている請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液体塗布具。
【請求項6】
塗布部は、最大厚み部から最小厚み部に向かうに連れて厚みが漸減しており、かつ最小厚み部から後端に向かうに連れて厚みが漸増している請求項1ないし5のいずれか一項に記載の液体塗布具。
【請求項7】
塗布部を第1の面側からみたとき、該塗布部の先端は丸みを帯びており、かつ
支持軸の軸線と、塗布部の軸線とを通る平面に対して直交する方向から該塗布部をみたとき、該塗布部の先端は丸みを帯びている請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液体塗布具。
【請求項8】
塗布部は、その表面に植毛処理が施されている請求項1ないし7のいずれか一項に記載の液体塗布具。
【請求項9】
前記液体塗布具は、液体を収容するための容器とともに用いられ、かつ該容器の口部から該容器内に出入自在になっており、
該容器として、その口部又はその近傍に、しごき孔を有する可撓性しごき弁が設けられているものを用いる請求項1ないし8のいずれか一項に記載の液体塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−217697(P2012−217697A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87802(P2011−87802)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】