説明

液体塗布具

【課題】取り扱いが容易で、かつ使用後も分別廃棄のない液体塗布具を提供することにある。
【解決手段】筒状に形成された本体部と、該本体部の一方の端部に装着された薬液を含浸する多孔質体と、他方の端部に嵌合されたスリットを有するキャップと、からなる外容器と、摘み部を有する蓋材にてシールされ前記薬液が封入された内容器と、
からなる液体塗布具であって、
前記内容器が、前記本体部に収納され、前記摘み部が前記キャップの方向に折り返され、前記スリットを通して前記外容器の外側に飛び出していることを特徴とする液体塗布具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の塗布に用いる器具に関するものである。特に薬液、消毒液を塗布するための液体塗布具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、手術前の患者に対して、手術箇所の廻りを消毒して手術が行われている。消毒する方法として、消毒液を含浸させた綿球をピンセットで摘まんで塗布するのが主流である。また筒状のプラスチック容器の先端にスポンジのような多孔質物を備えたヘッド部と、液状の消毒液を封入したボトルを取り外し可能なスペーサ―を介して塗布する容器がある。
【0003】
この容器は、使用時に樹脂で成型されたスペーサ―を引き抜いて取り外し、ボトルを押込んで消毒液の封止状態を解除するという手間が掛かる問題がある。また取り外されたスぺーサーは廃棄されるものであるが、手術廻りに残る場合があり、手術環境を悪くするといった問題がある。
【0004】
また、消毒液を封入した一本のガラスアンプルを本体に保持し、アンプルが破砕されるとアンプルに曝されているスポンジに消毒液が分配される薬液用アプリケータがある。アンプルを破砕は、手指による圧搾力によって行われる。
【0005】
この薬液用アプリケータの効率、性能を改善するために、複数のガラスアンプルを収納し、本体の外側にレバーを備え、そのレバーを本体方向に倒し、圧迫するとガラスアンプルが破砕され、消毒液がスポンジに分配する提案がある(特許文献1)。
【0006】
しかし、破砕したガラスが本体中に留まり、廃棄時に分別することは危険であるとともに、難しい作業となる。ガラスが封入された産業廃棄物として処理されるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006−512975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような背景技術を鑑みて、取り扱いが容易で、かつ使用後も分別廃棄のない液体塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、発明者らは鋭意検討を行い、本発明を完成した。
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、筒状に形成された本体部と、
該本体部の一方の端部に装着された薬液を含浸する多孔質体と、
他方の端部に嵌合されたスリットを有するキャップと、
からなる外容器と、
摘み部を有する蓋材にてシールされ前記薬液が封入された内容器と、
からなる液体塗布具であって、
前記内容器が、前記本体部に収納され、
前記摘み部が前記キャップの方向に折り返され、前記スリットを通して前記外容器の外側に飛び出していることを特徴とする液体塗布具である。
【0011】
本発明の請求項2に係る発明は、前記本体部の外面に、前記摘み部を着脱可能な保持部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布具である。
【0012】
本発明の請求項3に係る発明は、前記内容器が、トレー容器であることを特徴とする請求項1または2記載の液体塗布具である。
【0013】
本発明の請求項4に係る発明は、前記折り返し直近のシール形状が、前記摘み部の方向に山形であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液体塗布具である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液体塗布具は、外容器の外側に飛び出し配置された摘み部を引っ張ることにより、内容器を開封し、薬液を多孔質体に含浸させ塗布することができる。取り扱いが容易で、使用後も分別廃棄のない液体塗布具である。
【0015】
本発明の請求項1によれば、筒状に形成された本体部と、
該本体部の一方の端部に装着された薬液を含浸する多孔質体と、
他方の端部に嵌合されたスリットを有するキャップと、
からなる外容器と、
摘み部を有する蓋材にてシールされ前記薬液が封入された内容器と、
からなる液体塗布具であって、
前記内容器が、前記本体部に収納され、
前記摘み部が前記キャップの方向に折り返され、前記スリットを通して前記外容器の外側に飛び出していることを特徴とする。外容器は、筒状に形成された本体部と、その一方の端部に薬液を含浸する多孔質体と、他方の端部にスリットを有するキャップと、からなる。また内容器は、摘み部を有する蓋材にてシールされ薬液が封入されている。
【0016】
内容器は、本体部に収納される。内容器は、摘み部をキャップの方向に折り返され、キャップのスリットを通して外容器の外側に飛び出している。外側に飛び出した摘み部を上側に引っ張ることにより、シールされた蓋材を剥がし、薬液を流出させ、本体部の端部に装着している多孔質体に浸み込ませるのである。多孔質体が含浸された状態になる。含浸された多孔質体から薬液を塗布することができる。
【0017】
本発明の請求項2によれば、前記本体部の外面に、前記摘み部を着脱可能な保持部が形成されていることを特徴とする。摘み部を保持するために形成している。本体部の外側、即ち外容器の外側に着脱可能な保持部が形成されている。摘み部が、製品の流通中に引っ掛かったり、また作業者が誤って引っ張ったりしないように保持部で保持できるようにしている。着脱可能な保持部である。
【0018】
本発明の請求項3によれば、前記内容器が、トレー容器であることを特徴とする。薬液を封入するための容器をトレー容器とすることにより、本体部に収納し易くなる。また蓋材とのシールも、トレー容器のフランジに行うことで容易にできる。
【0019】
本発明の請求項4によれば、前記折り返し直近のシール形状が、前記摘み部の方向に山形であることを特徴とする。蓋材を剥がし易くしたものである。摘み部を引っ張って蓋材を剥がすときに、引っ張る力を山形の尖った部分に集中させ、蓋材を剥がしていく。安定して剥がすことができる。剥がす初期の力も大きくならず、労力が掛からず取り扱いが容易である。この場合、トレー容器の一方の端部のフランジを狭くし山形形状にする。フラ
ンジの山形部分のシール形状を、摘み部の方向に山形形状にする。
【0020】
本発明の液体塗布具は、プラスチック材料からなる部材から構成しているために、使用後に、分別廃棄することがなく廃棄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】外容器と内容器の一例を示す説明図である。
【図2】内容器の一例を示す説明図である。
【図3】液体塗布具の一例を示す断面図である。
【図4】液体塗布具の保持部の一例を示す説明図である。
【図5】液体塗布具の使用形態(摘み部を引っ張ている状態)の一例を示す説明図である。
【図6】液体塗布具の使用形態(塗布している状態)の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を実施するための形態につき説明する。
【0023】
図1は、外容器1と内容器10の一例を示す説明図である。筒状に形成された本体部2とその本体部の一方の端部に設けた本体フランジ3に多孔質体4が装着されている。本体部の他方の端部に開口部を有する中栓5と、スリット7を有するキャップ6が順次嵌合されている。また中栓とキャップがヒンジを介して一体化したヒンジキャップで嵌合することもできる。また本体部2は、内容器10を収納するために中空に形成されている。本体部2の一方の端部に多孔質体4、他方の端部に中栓5およびキャップ6からなる外容器1が形成されている。
【0024】
図1では、内容器10は、薬液を入れたトレ―容器11を蓋材12でシールした状態を示している。また摘み部20が、キャップ6の方向に折り返されている状態を示している。この内容器10を本体部2に収納する。
【0025】
図2は、内容器10の一例を説明図である。(図2−1)は、薬液をトレー容器11に入れ蓋材12にてシールして、摘み部20をキャップの方向に折り返したものである。(図2−2)は、トレ―容器11のフランジ18に蓋材をシールする部位の一例を示している。トレー容器11の一方の端部のフランジを狭くして山形形状15にしたものである。またフランジの山形形状15のシールも、同様に摘み部の方向に山形形状15にしたものである。折り返し17直近のシールを、摘み部の方向に山形形状15にするのである。このシール形状が、蓋材を剥がし易くする。摘み部を引っ張って蓋材を剥がすときに、引っ張る力を山形形状15の尖った部分16に集中させ、蓋材を剥がしていく。安定して剥がすことができる。剥がす初期の力も大きくならず、労力が掛からず使用することができる。
【0026】
図3は、液体塗布具の一例を示す断面図である。内容器が本体部2に収納されている。蓋材の摘み部20は、キャップ6の方向に折り返され、中栓5の開口部、キャップ6のスリット7を連通し、外容器の外側に飛び出し配置されている。摘み部20は、本体部2の外面の保持部21に保持されている。本体部2の一方の端部には、本体フランジ3には多孔質体4が装着されている。他方の端部は、中栓5、キャップ6が順次嵌合わされている。またキャップ6のスリット7の間隙は、蓋材12を通し、安定して引っ張ることができることが好ましい。しかし間隙を大きくすると、本体部2内の薬液が溢れる心配があるので、出来るだけ蓋材の厚みに近い間隔であることが好ましい。
【0027】
図4は、液体塗布具の保持部の一例を示す説明図である。外容器の本体部2の外面に保
持部21が形成されている。外容器の外側に配置された摘み部20を保持するためのものである。この保持部21は、摘み部20を着脱可能にする保持部である。
【0028】
図5は、液体塗布具の使用形態(摘み部を引っ張ている状態)の一例を示す説明図である。手指22により着脱可能な保持部から摘み部20を取り出し、上側方向に引っ張り、トレー容器にシールした蓋材を剥離する。この時に山形形状のシールの尖った部分より剥離されるために安定して剥離することができる。トレー容器内の薬液は、本体部内に流入し多孔質体4に浸み込み含浸する。よって多孔質体4により塗布することができる。引っ張った摘み部20は、再度保持部に保持する。使用時には取り扱いが容易になる。
【0029】
図6は、液体塗布具の使用形態(塗布している状態)の一例を示す説明図である。薬液24を含浸した多孔質体4から被塗布体に塗布することができる。取り扱いが容易で、簡単に塗布することができる。また本体部2にスクイーズ性をもたせることで、手指で押圧することができる。薬液を残留させず使用することができる。
【0030】
更に本発明を詳しく説明する。
【0031】
本体部2を形成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂などが使用できる。成型性、剛性などから適宜樹脂の選定、厚みの設定をすればよい。成型する方法として、これら樹脂を用いて射出成形する方法で可能である。
【0032】
中栓5を形成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが使用できる。成型性、剛性などから適宜樹脂の選定、厚みの設定をすればよい。成型する方法として、これら樹脂を用いて射出成形する方法が可能である。また中栓とキャップがヒンジ部を介して一体化したヒンジキャップの使用も可能である。このヒンジキャップも射出成形する方法で可能である。
【0033】
キャップ6を形成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが使用できる。またこれらの樹脂中に添加剤などが含まれない樹脂を使用した方が好ましい。成型する方法として、これら樹脂を用いて射出成形する方法が可能である。
【0034】
また中栓とキャップがヒンジ部を介して一体化したヒンジキャップも可能である。このヒンジキャップを形成する樹脂としては、中栓、キャップに使用される樹脂を使用することができる。また成型する方法として、射出成形する方法で可能である。
【0035】
多孔質体4としては、薬液を含浸する性質を持つフェルトまたは連続気泡フォーム材料を使用することができる。また織物、不織布なども使用できる。材料としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエチレテレフタレート系などの樹脂からなるフォーム、セルロース系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリエチレテレフタレート系などの樹脂からなるフェルト、織物、不織布などが使用できる。これらの多孔質体4は、本体部2に形成された本体フランジ3に熱融着され装着される。例えば射出成型時にインサート成型により装着することできる。また接着剤を介して装着したり、粘着テープにより装着することも可能である。
【0036】
薬液24としては、消毒液が好ましい。例えば、ポビドンヨード、消毒用エタノールなどが挙げられる。例えば、手術の直前に身体のある領域に塗布して用いることができる。
【0037】
内容器10を形成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン
系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが使用できる。これらの樹脂を用いて押出しにてシート化する。この場合、単一樹脂からのシート化、単一樹脂での多層シート化、複数の樹脂での多層シート化などのシートを使用することができる。成型性、剛性などから、適宜樹脂の選定、厚みの設定をすればよい。成型する方法として、シートを真空成型法、圧空真空成型法などを用いて可能である。
【0038】
蓋材12としては、少なくとも基材層とシーラント層からなる積層体であるこことが必要である。基材層としては、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレテレフタレートフィルム、ポリアミドなどのフィルムが使用できる。またシーラント層は、トレ―容器とシールするための層であり、シール性の他に剥離性も必要になる。よってシール性を有し、かつイージーピール性を持つ、シーラント層の選定が必要である。
【0039】
イージーピール性を有するシーラント層としては、イージーピールの特性については特に限定されず、凝集剥離タイプ、層間剥離タイプ、界面剥離タイプのいずれのタイプを使用できる。
【0040】
例えば、凝集破壊タイプは、シーラント層自体が凝集破壊するタイプで、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの樹脂を混合した樹脂を用いて、フィルム化し、基材層に積層したり、またはこの樹脂の塗工液を塗布することにより使用することができる。
【0041】
層間剥離タイプは、共押出し法にて3層フィルムを作成し、中間から剥離するものである。この共押出しフィルムを基材層に積層し使用することができる。
【0042】
界面剥離タイプは、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の酢酸ビニルの混合比率を上げた樹脂を用いて、フィルム化し、基材層に積層して使用することができる。
【0043】
イージーピール性を有したシーラント層として、上記三タイプのいずれでも使用できる。厚みなどは、剥離強度、剥離性などから適宜決めればよい。
【0044】
液体塗布具は、用途によりエチレンオキサイドガスや他の方法で殺菌処理される場合がある。この場合は、殺菌方法、殺菌条件に合わせ、樹脂、フィルムの選定を適宜行えばよい。
【0045】
本発明の液体塗布具は、外容器の外側に配置された摘み部を引っ張ることにより、蓋材を剥がし、薬液を本体部内に流出させ、多孔質体に含浸させて塗布する方式である。従来使用されている塗布具とは異なり、取り扱いが容易で、かつ使用後も分別廃棄せず燃焼廃棄物として廃棄可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
液体塗布具としては、消毒液の他に、筋肉の炎症を抑える消炎作用のある液体、車のガラスへの撥水剤、車の車体へのワックス、フローリングへのワックスなど、医療用、産業用の用途にも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 外容器
2 本体部
3 本体フランジ
4 多孔質体
5 中栓
6 キャップ
7 スリット
10 内容器
11 トレー容器
12 蓋材
15 山形形状
16 尖った部分
17 折り返し
18 フランジ(トレー容器)
20 摘み部
21 保持部
22 手指
23 塗布面
24 薬液
50 液体塗布具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された本体部と、
該本体部の一方の端部に装着された薬液を含浸する多孔質体と、
他方の端部に嵌合されたスリットを有するキャップと、
からなる外容器と、
摘み部を有する蓋材にてシールされ前記薬液が封入された内容器と、
からなる液体塗布具であって、
前記内容器が、前記本体部に収納され、
前記摘み部が前記キャップの方向に折り返され、前記スリットを通して前記外容器の外側に飛び出していることを特徴とする液体塗布具。
【請求項2】
前記本体部の外面に、前記摘み部を着脱可能な保持部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布具。
【請求項3】
前記内容器が、トレー容器であることを特徴とする請求項1または2記載の液体塗布具。
【請求項4】
前記折り返し直近のシール形状が、前記摘み部の方向に山形であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液体塗布具。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−23271(P2013−23271A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161924(P2011−161924)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】