説明

液体塗布容器

【課題】粘性の低い液体であっても使用時に垂れ落ちてこない液体塗布容器を提供することを課題とする。
【解決手段】液体を収容し、口部23を有する容器本体2と、凹部30が形成された保持部材3と、凹部30内において保持部材3に回転可能に保持されるボール4と、を備えている。保持部材3は、容器本体2内と凹部30内とを連通する貫通孔34が形成され、また、凹部30の側壁面上端部311が全周に亘ってボール4に接触しており、ボール4と接触する先端が尖った環状突起35が貫通孔34を囲むように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体塗布容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、制汗剤等の液体を塗布するための液体塗布容器として、例えば、特許文献1に記載されたようないわゆるロールオンタイプの塗布容器が広く用いられている。この特許文献1に記載されたロールオンタイプの塗布容器は、容器A内に高粘度の薬剤が収容されており、この容器Aの口部1に、ボールCを保持する保持筒10を備えた中栓Bが取り付けられている。このように構成された塗布容器の使用方法は、特許文献1の図4に示されているように、まず容器Aを倒立させてボールCを移動させ、連通孔16を通じて容器A内の内容物をボールCと突出リング12の間から液貯め部17に流入させる。そして、ボールCを被塗布面に押し当てて転動させ、ボールCと保持筒10の上端13との間に間隙が形成され、ボールCの回転により、内容物は保持筒10上端13とボールCとの間より注出され、ボールCに付着され、被塗布面に塗布されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−186997号公報(図3,図4,段落「0023」参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、上述した従来の塗布容器では、内部の液体を出しやすくするため、また、ボールCのスムーズな回転を確保するため、ボールCと保持筒10の上端13との間には隙間が形成されている必要があった。しかしながら、このようにボールCと保持筒10の上端13との間に隙間が形成された塗布容器において、粘性の低い液体を容器A内に収容して使用すると、塗布容器を逆さに向けて使用した際に、容器A内の液体がボールCと保持筒10の上端13との間から垂れ落ちてくるという問題が生じ得る。そこで、本発明は、粘性の低い液体であっても使用時に垂れ落ちてこない液体塗布容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る液体塗布容器は、液体を収容し、口部を有する容器本体と、一方端側が前記口部に取り付けられ、他方端側に凹部が形成された保持部材と、前記凹部内において前記保持部材に回転可能に保持されるボールと、を備え、前記保持部材は、前記容器本体内と前記凹部内とを連通する貫通孔が形成され、前記凹部の側壁面上端部が全周に亘って前記ボールに接触しており、前記ボールと接触する先端が尖った環状突起が前記貫通孔を囲むように形成されている。
【0006】
本発明に係る液体塗布容器によれば、環状突起がボールに接触しているとともに、凹部の側壁面上端部も全周に亘ってボールに接触しているため、塗布容器を逆さに向けてもボールは上下方向等に移動することなく保持されている。このため、ボールは、凹部の側壁面上端部に接触していることとなり、粘性の低い液体を容器本体に収容していても、その液体が垂れ落ちてくることがない。また、このようにボールは環状突起及び凹部側壁面上端部と接触しているため、ボールと凹部側壁面と環状突起とによって画定される液溜め部には液体が溜まりにくい。よって、ボールを強く押圧することでボールを後退させてボールと凹部側壁面上端部との間に隙間が生じたとしても、その隙間から液体が垂れ落ちることがない。このため、例えば、この液体塗布容器を用いて肩凝り部分や筋肉痛部分に外用消炎鎮痛剤等を塗布するとき、使用者は肩凝り部分などをほぐすようにボールでその部分を強く押圧しながら塗布することもでき、心地よい使用感を味わうこともできる。また、この液体塗布容器は、凹部の側壁面上端部と環状突起との両方がボールに接触しているが、環状突起は、ボールと接触する部分である尖端が尖っているために、摩擦抵抗は小さくなり、ボールのスムーズな回転を確保することができる。なお、上述した保持部材は容器本体と別部材で形成してから口部に取り付けてもよいし、容器本体と一体成形することにより保持部材が口部に取り付けられていてもよい。
【0007】
上記保持部材は、前記凹部の側壁となる筒状の側壁部と、前記凹部の底部となるよう前記側壁部の下端部から径方向内側に向かって延びる内向きフランジ部とを有し、前記環状突起は前記内向きフランジ部に形成されているような構成とすることができる。この場合、内向きフランジ部の弾性率は50〜200MPa程度とすることが好ましい。このように構成されていることで、フランジ部がクッションの役割を果たして、ボールのスムーズな回転を確保することができる。なお、上記側壁部の筒状とは、略円筒状や角筒状等を含む概念である。
【0008】
また、上記ボールの材質は特に限定されないが、プラスチック製または金属製とすることができ、好ましくは金属製であり、より好ましくはステンレス製とすることができる。本発明の液体塗布容器を肩凝り部分に使用する場合、ボールを金属製とするほうが単位体積当りの重量を大きくすることができるので、患部の押圧をより効果的に行うことが出来る。金属は摩擦抵抗が小さいためにボールがスムーズに回転し易く、また、変形しにくいために凹部側壁面上端部や環状突起との間に隙間が形成されにくいことから液体が漏れにくいため、好ましい。チタン合金製でもよく、液体成分により腐食しない素材が好ましい。
【0009】
また、容器本体内に収容される液体の粘度は、10〜1,000cP程度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る液体塗布容器によれば、粘性の低い液体であっても使用時に垂れ落ちてくることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明に係る液体塗布容器の実施形態を示す正面図である。
【図2】図2は図1の蓋を外した状態を示す図である。
【図3】図3は本発明に係る液体塗布容器の実施形態の拡大した一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る液体塗布容器の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る液体塗布容器1は、容器本体2、保持部材3、ボール4、及び蓋5から主に構成されており、全体として概ね円筒形状となっている。
【0014】
容器本体2は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを材質とする容器であり、底部21と、底部21から上方に延びる円筒部22と、円筒部22の上端から肩部24を介して上方に延びる口部23を有している。口部23は、蓋5と螺合するよう、その外周面に雄ネジ231が形成されている。また、口部23は、円筒部22よりも小径となっており、後述する保持部材3の嵌合部33が嵌合するための被嵌合部232が上端において環状に形成されている、(図3参照)。
【0015】
このように構成された容器本体2は内部に液体を収容しており、この液体としては、例えば、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール、精製水のような低粘度の液体を挙げることができる。液体には用途に応じて各種成分を適宜配合することができる。医薬品の場合には、消炎鎮痛成分(例えば、フェルビナク、インドメタシン、サリチル酸グリコールなど)、抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩など)、血行促進成分(例えば、ノナン酸バニリルアミドなど)、清涼化剤(例えば、l−メントールなど)、その他、防腐剤、安定化剤、pH調整剤などが挙げられるが、これらには限定されない。化粧料の場合には、制汗成分(例えば、クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛など)、殺菌成分(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、消臭剤成分(例えば、クララエキスなど)、香料などが挙げられるが、これらには限定されない。この液体の粘度は、好ましくは、10〜1,000cP程度とすることができる。なお、液体の粘度は、例えばB型粘度計(ブルックフィールドDV−II)を用いT−E1ローターで回転数6rpmによって測定することができる。
【0016】
図2及び図3に示すように、保持部材3は、その凹部30によってボール4を保持する部材であり、下端側(一方端側)において容器本体2に取り付けられており、上端側(他方端側)に凹部30が形成されている。この保持部材3は、凹部30の側壁となる側壁部31と、凹部30の底部となる内向きフランジ部32と、容器本体2の口部23の被嵌合部232に嵌合する嵌合部33と、から主に構成されている。
【0017】
側壁部31は、概ね円筒形状であって、ボール4を保持するために、上端部311は内側に軽く湾曲しており、この上端部311の内径はボール4の外径よりも小さい寸法となっている。また、側壁部31の上端部311は全周に亘ってボール4と接触している。
【0018】
内向きフランジ32は、側壁部31の下端部から径方向内側に向かって下方へと傾斜するように延びている。内向きフランジ32の上面は側壁部31の内周面と滑らかに繋がれており、内向きフランジ32の上面と側壁部31の内周面とによって、上部が開口する概ね球面状の凹部30が画定されている。この凹部30の底部中央、すなわち、内向きフランジ32の中央には貫通孔34が形成されている。この貫通孔34は、保持部材3の凹部30と、容器本体2の内部とを連通させているため、貫通孔34を介して、容器本体2内の液体がボール4へと供給されるようになっている。
【0019】
内向きフランジ32の下端部の上面には、貫通孔34を囲むように環状突起35が形成されている。環状突起35は、断面が台形状の基台部351と、その基台部351の上面に形成された断面が三角形状の尖端部352とによって構成されている。ボール4は、この環状突起35の尖端部352と接触しているため、環状突起35との摩擦抵抗が小さくなり、ボール4のスムーズな回転を確保することができる。また、保持部材3は、その側壁部31の上端部311と環状突起35の尖端部352とでボール4に接触してボール4を凹部30内に保持しているため、液体塗布容器1を上下にひっくり返してもボール4は上下動することがない。したがって、ボール4と環状突起35との間に隙間が形成されることがないので、貫通孔34から液体が液溜め部36に流入しにくくなる。ボール4の表面と凹部30の内壁面とで画定される液溜め部36内に液体が溜まっていても、ボール4は上端部311に接触しているので液体容器1を逆さに向けたり、上下に振ったりしたとしても、液体が漏れることが無い。
【0020】
嵌合部33は、側壁部31の下端部から、一旦外側に延びた後下向きに延び、その断面が鉤状となっており、容器本体2の口部23の上端に形成された被嵌合部232に嵌合するよう形成されている。
【0021】
ボール4は、球状のものであって保持部材3の凹部30内に収容されており、その上部において側壁部31の上端部311と接触し、その下部において環状突起35と接触していることによって、凹部30内に保持されている。このボール4の直径は10〜30mm程度とすることが好ましく、また、ボール4の材質は種々のものとすることができ、例えば、金属製、特にステンレス製とすることが好ましい。なお、ボール4の硬さは、100〜200HB程度とすることが好ましく、また、真球度は、0〜5μm程度とすることが好ましい。なお、ボール4の硬さは、ブリネル硬さ(HB:JIS Z 2243)によって測定することができる。
【0022】
蓋5は、略円筒状であって、その天板部51の内面には、ボール4を押さえ付けるための押圧突起52が環状に形成されている。また、蓋5の側壁面下部の内面には、上述した容器本体2の口部23に形成された雄ネジ231と螺合する雌ねじ部53が形成されている。この蓋5の外径は、容器本体2の円筒部22の外径とほぼ同じとなっている。
【0023】
以上のように構成された液体塗布容器1を使用する場合は、まず蓋5を取り外し、液体を塗布したい箇所にボール4を押し付けてボール4を回転させる。これにより、保持部材3の貫通孔34を介して容器本体2に収容された液体がボール4の表面に付着し、ボール4が回転することでこのボール4の表面に付着した液体が所望の箇所に塗布される。このとき、容器本体1を逆さに向けて(ボール4が下となるように)使用しても、環状突起35及び側壁部31の上端部311によってボール4を支持しているため、ボール4は、上下に移動せず環状突起35及び側壁部31の上端部311に接触した状態となっている。この結果、ボール4と上端部311との間に隙間が形成されないため、液体が漏れず液体が低粘度のものであっても垂れ落ちてくることはない。
【0024】
また、上述したように、ボール4が環状突起35及び上端部311と接触していることで液溜め部36に液体が溜まりにくいため、例えば、ボール4が後退する程度までボール4を強く押圧してボール4と上端部311との間に隙間が生じた場合であっても、液体が垂れ落ちることがない。このため、例えば、筋肉痛部分に液体塗布容器1の液体(例えば、外用消炎鎮痛剤など)を塗布したい場合、筋肉痛部分をボール4で強く押圧しながら塗布することもできる。なお、この場合、内向きフランジ32の弾性率を50〜200MPa程度とすることで、快適な押し心地を味わうことができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0026】
例えば、上記実施形態では、環状突起35は、基台部351と尖端部352とによって構成されていたが、先端が尖っていれば特にこの構成に限定されるわけではなく、例えば、環状突起35を断面三角形状とすることができる。
【0027】
また、環状突起35は、内向きフランジ部32に形成していたが、この内向きフランジ部32を省略し、側壁部31に環状突起35を直接形成することもできる。
【実施例】
【0028】
次に本発明の塗布容器で使用される液体として、医薬品(消炎鎮痛剤)を用いた実施例について説明する。なお、各実施例ともに、上記実施形態と同様の形状の液体塗布容器1を使用した。
【0029】
実施例1:フェルビナク3g、ノナン酸バニリルアミド12mg、l−メントール6g、クロルフェニラミンマレイン酸塩100mg、グリチルレチン酸0.08g、プロピレングリコール10g、ジイソプロパノールアミン2g、BHT0.04g及びエタノール65mLを混合し、総量が100mLとなるよう水を適量混合して得られた消炎鎮痛剤(粘度:580cP−前述のB型粘度計を用いて、20℃で測定したときの粘度)50mLを、容器(ポリエチレン製)に充填し、直径(19mm)・硬さ(160HB)・真球度(1μm)のステンレス製ボールを保持した保持部材(弾性率:150MPa)を取り付けた液体塗布容器である。
【0030】
実施例2:フェルビナク3gをインドメタシン10mgに置き換えた以外は実施例1と同じである。
【0031】
実施例3:ステンレス製ボールを直径(19mm)・硬さ(R80〜110)・真球度(10μm)のPP製のボールに置き換えた以外は実施例1と同じである。
【0032】
実施例1〜3のいずれの液体塗布容器であっても、塗布容器を逆さに向けて使用した際にも液体(医薬品)は垂れ落ちてこない。肩凝り部分などをほぐすようにボールでその部分を強く押圧した場合、ステンレス製ボールを用いた実施例1及び2は、PP製ボールを用いた実施例3に比し、肩凝り部への押圧性に優れており、使用感に優れていた。
【符号の説明】
【0033】
1 液体塗布容器
2 容器本体
23 口部
3 保持部材
30 凹部
31 側壁部
311 上端部
32 内向きフランジ部
34 貫通孔
35 環状突起
4 ボール
5 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容し口部を有する容器本体と、
一方端側が前記口部に取り付けられ、他方端側に凹部が形成された保持部材と、
前記凹部内において前記保持部材に回転可能に保持されるボールと、を備え、
前記保持部材は、
前記容器本体内と前記凹部内とを連通する貫通孔が形成され、
前記凹部の側壁面上端部が全周に亘って前記ボールに接触しており、
前記ボールと接触する先端が尖った環状突起が前記貫通孔を囲むように形成された、液体塗布容器。
【請求項2】
前記保持部材は、前記凹部の側壁となる筒状の側壁部と、前記凹部の底部となるよう前記側壁部の下端部から径方向内側に向かって延びる内向きフランジ部とを有し、
前記内向きフランジ部には基台部が形成され、
前記環状突起は前記内向きフランジ部に形成されている、請求項1に記載の液体塗布容器。
【請求項3】
前記内向きフランジ部は、弾性率が50〜200MPaである、請求項2に記載の液体塗布容器。
【請求項4】
前記ボールは金属製である、請求項1から3のいずれかに記載の液体塗布容器。
【請求項5】
前記容器本体内に収容される液体の粘度は、10〜1,000cPである、請求項1から4のいずれかに記載の液体塗布容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−75710(P2013−75710A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217569(P2011−217569)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】