液体塗布装置及び液体塗布方法並びにナノインプリントシステム
【課題】インクジェット方式による基板への機能性液の打滴が最適化され、好ましい微細パターンを形成し得る液体塗布装置及び液体塗布方法並びにナノインプリントシステムを提供する。
【解決手段】基板(102)上に光硬化性樹脂を含有する液体を打滴するための複数のノズル(120)が所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室(122)、及び複数の液室に対応して配設される液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッド(110)を備え、基板と液体吐出ヘッドとを相対的に移動させて、液体を基板上に離散的に着弾させるように圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作が制御される。
【解決手段】基板(102)上に光硬化性樹脂を含有する液体を打滴するための複数のノズル(120)が所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室(122)、及び複数の液室に対応して配設される液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッド(110)を備え、基板と液体吐出ヘッドとを相対的に移動させて、液体を基板上に離散的に着弾させるように圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作が制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体塗布装置及び液体塗布方法並びにナノインプリントシステムに係り、特に、インクジェット方式により基板等の媒体上に機能性を有する液体を付与する液体付与技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化、高集積化に伴い、基板上に微細構造を形成するための技術として、基板上に塗布したレジスト(UV硬化性樹脂)に転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたスタンパを押し当てた状態で紫外線を照射してレジストを硬化させ、スタンパを基板上のレジストから分離(離型)することで、スタンパに形成された微細パターンを基板(レジスト)へ転写するナノインプリントリソグラフィ(NIL)が知られている。
【0003】
特許文献1,2は、インクジェット方式を用いて基板にインプリント材の液体を付与するシステムを開示している。特許文献1,2に記載のシステムは、一定量の液体を基板上に分配する際にパターンやインプリント材(レジスト)の揮発量に応じて打滴密度や打滴量を変更して打滴量を最適化し、スループットの向上、残渣厚の均一化を図る旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−502157号公報
【特許文献2】特開2009−88376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2は、どのような打滴配置が好ましいものであるかについて、そのアルゴリズムを開示するのみであり、理想的な打滴密度や打滴量を実現するためのハードウエア等の具体的な構成は開示されていない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクジェット方式による基板への機能性液の打滴が最適化され、好ましい微細パターンを形成し得る液体塗布装置及び液体塗布方法並びにナノインプリントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体塗布装置は、基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御する打滴制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノズル及びノズルに対応する圧電素子がグループ化され、グループごとに打滴制御が行われるので、ノズルや圧電素子の固体バラつきに起因する打滴密度の粗密の発生を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るインプリントシステムの各工程を説明する図
【図2】シリコンモールドの凹凸パターンを説明する図
【図3】液滴の配置及び拡張を説明する図
【図4】液滴の配置及び拡張の他の態様を説明する図
【図5】液滴の配置のさらに他の態様を説明する図
【図6】本発明に係るインプリントシステムの全体構成図
【図7】図1に示すインプリントシステムに適用されるヘッドの平面図
【図8】図7に示すヘッドの立体的構成を示す断面図
【図9】図7に示すヘッドの立体的構成を示す分解斜視図
【図10】図7に示すヘッドに適用される圧電素子の動作モードを説明する図
【図11】図7に示すヘッドに適用される圧電素子の電極のパターンを示す図
【図12】図6に示すインプリントシステムの制御系を示す要部ブロック図
【図13】図7に示すヘッドに適用される駆動電圧の一例を説明する図
【図14】図6に示すインプリントシステムに適用されるx方向の打滴密度の変更を説明する図
【図15】図14に示す打滴密度変更の他の態様を説明する図
【図16】図7に示すヘッドに適用される駆動電圧の他の例を説明する図
【図17】図6に示すインプリントシステムに適用される駆動信号生成部の概略構成を示すブロック図
【図18】図17に示す駆動信号生成部の他の態様を示すブロック図
【図19】y方向の打滴位置の微調整を説明する図
【図20】図7に示すヘッドに適用される吐出検査を説明する図
【図21】図8に示すヘッドに係るノズルの製造方法の一例を説明する図
【図22】図22に示す製造方法により製造されたノズルの拡大斜視図
【図23】ノズル面に形成される撥液膜の評価実験の結果を示す図
【図24】シリコンモールド(原盤)の製造工程を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0011】
〔ナノインプリント方法の説明〕
まず、図1(a)〜(f)を用いて、本発明の実施形態に係るナノインプリント方法について、工程順を追って説明する。本例に示すナノインプリント方法は、モールド(例えば、Siモールド)に形成された凹凸パターンを、基板(石英基板等)上に形成された機能性を有する液体(光硬化性樹脂液)を硬化させた光硬化性樹脂膜に転写し、該光硬化性樹脂膜をマスクパターンとして基板上に微細パターンを形成するものである。
【0012】
まず、図1(a)に示す石英基板10(以下、単に「基板」と記載する。)を準備する。図1(a)に示す基板10は、表側面10Aにハードマスク層11が形成されており、この表側面10Aに微細パターンが形成される。基板10は、紫外線などの光を透過させる所定の透過性を有し、厚みが0.3mm以上であればよい。光透過性を有することで基板10の裏側面10Bからの露光が可能となる。
【0013】
Siモールドを用いる場合に適用される基板10として、表面をシランカップリング剤で被覆したもの、Cr、W、Ti、Ni、Ag、Pt、Auなどからなる金属層を積層したもの、CrO2、WO2、TiO2などからなる金属酸化膜層を積層したもの、これらの積層体の表面をシランカップリング剤で被覆したものなどが挙げられる。
【0014】
すなわち、図1(a)に図示したハードマスク層11は、上記の金属膜や金属酸化膜等の積層体(被覆材)が用いられる。積層体の厚みが30nmを超えると光透過性が低下してしまい、光硬化性樹脂の硬化不良が起こりやすいので、該積層体の厚みは30nm以下であり、好ましくは20nm以下である。
【0015】
「所定の透過性」とは、基板10の裏側面10Bから照射した光が表側面10Aから出射して、表面に形成される機能性を有する液体(例えば、図1(c)に符号14を付して図示した光硬化性樹脂を含有する液体)を十分に硬化させることができればよく、例えば、裏側面から照射された波長200nm以上の光の光透過率が5%以上であるとよい。
【0016】
また、基板10の構造は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。基板10の材質は、石英以外にも、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂、などを適宜用いることができる。これらの材料は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を適宜合成して併用してもよい。
【0017】
基板10の厚みは0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。基板10の厚みが0.05mm未満であると、被パターン形成体とモールドとの密着時に基板側に撓みが発生し、均一な密着状態を確保できない可能性がある。また、ハンドリングやインプリント中の押圧による破損を避けることを考慮して、基板10の厚みを0.3mm以上とするとより好ましい。
【0018】
基板10の表側面10Aに対して、インクジェットヘッド12から光硬化性樹脂を含有する複数の液滴14が離散的に打滴される(図1(b):打滴工程)。詳細は後述するが、ここでいう「離散的に打滴される液滴」とは、基板10上における隣接する打滴位置に着弾した他の液滴と接触せずに、所定の間隔を空けて着弾した複数の液滴を意味している。
【0019】
図1(b)に示す打滴工程において、予め液滴14の打滴量、打滴密度、液滴の吐出(飛翔)速度が設定(調整)される。例えば、液滴量及び打滴密度は、モールド(図1(c)符号16を付して図示)の凹凸パターンの凹部の空間体積が大きい領域では相対的に大きくされ、凹部の空間体積が小さい領域や凹部がない領域では相対的に小さくされるように調整される。調整後、所定の打滴配置(パターン)に従って、基板10上に液滴14が配置される。
【0020】
本例に示すナノインプリント方法は、インクジェットヘッド12に具備される複数のノズル(図7に符号120を付して図示)が、インクジェットヘッド12の構造に対応してグループ化され、グループごとに液滴14の打滴が制御される。また、モールドの凹凸パターンに応じて、基板10の表側面10Aにおける互いに略直交する2方向について液滴14の打滴密度が変更される。さらに、グループごとに打滴回数が計測され、各グループの打滴頻度が均一化されるように各グループの打滴が制御される。かかる打滴制御の詳細は後述する。
【0021】
図1(b)に示す打滴工程の後に、凹凸パターンが形成されたモールド16の凹凸パターン面を基板10の表側面10Aに所定の押圧力によって押し付けて基板10上の液滴14を拡張させ、拡張させた複数の液滴14の結合からなる光硬化性樹脂膜18が形成される(図1(c):光硬化性樹脂膜形成工程)。
【0022】
光硬化性樹脂膜形成工程では、モールド16と基板10との間の雰囲気を減圧または真空雰囲気にした後に、モールド16を基板10押し付けることで残留気体を低減させることができる。ただし、高真空雰囲気下では硬化前の光硬化性樹脂膜18が揮発してしまい、均一な膜厚を維持することが困難となる可能性がある。そこで、モールド16と基板10との間の雰囲気を、ヘリウム(He)雰囲気または減圧He雰囲気にすることで残留気体を低減するとよい。Heは石英基板10を透過するため、取り込まれた残留気体(He)は徐々に減少する。Heの透過には時間を要すため減圧He雰囲気とすることがより好ましい。
【0023】
モールド16の押圧力は、100kPa以上10MPa以下の範囲とされる。押圧力が相対的に大きい方が樹脂の流動が促進され、また残留気体の圧縮、残留気体の光硬化性樹脂への溶解や、基板10中のHeの透過が促進され、タクトアップにつながる。しかし、押圧力が大きすぎるとモールド16が基板10に接触するときに異物を噛みこんでしまい、モールド16及び基板10を破損してしまう可能性があるので、モールド16の押圧力は上記範囲とされる。
【0024】
モールド16の押圧力の範囲は、より好ましくは100kPa以上5MPa以下であり、更に好ましくは100kPa以上1MPa以下である。100kPa以上としたのは、大気中でインプリントを行う際、モールド16と基板10との間が液滴14で満たされているためであり、モールド16と基板10との間が大気圧(約101kPa)で加圧されているためである。
【0025】
その後、基板10の裏側面10Bから紫外線を照射して、光硬化性樹脂膜18に対する露光が行われ、光硬化性樹脂膜18を硬化させる(図1(c):光硬化性樹脂膜硬化工程)。本例では、光(紫外線)によって光硬化性樹脂膜18を硬化させる光硬化方式を例示したが、熱硬化性樹脂を含有する液体を用いて熱硬化性樹脂膜を形成し、加熱によって熱硬化性樹脂膜を硬化させる熱硬化方式など、他の硬化方式を適用してもよい。
【0026】
光硬化性樹脂膜18が十分に硬化した後に、光硬化性樹脂膜18からモールド16を剥離させる(図1(d):剥離工程)。モールド16を剥離させる方法は、光硬化性樹脂膜18のパターンに欠損が生じにくい方法であればよく、基板10の縁部から徐々に剥離させる方法や、モールド16の側から加圧しながら剥離させ、モールド16が光硬化性樹脂膜18から剥離する境界線上での光硬化性樹脂膜18へかかる力を低減させて剥離する方法(加圧剥離法)などの方法を用いることができる。さらに、光硬化性樹脂膜18の近傍を加温し、モールド16と光硬化性樹脂膜18との界面での光硬化性樹脂膜18とモールド16の表面との付着力を低減させ、かつ、光硬化性樹脂膜18のヤング率を低下させて、かつ、脆性が良化させて変形による破断を抑制して剥離する方法(加熱アシスト剥離)を適用することも可能である。なお、上記の方法を適宜組み合わせた複合的手法を用いてもよい。
【0027】
図1(a)〜(d)に示す各工程を経て、基板10の表側面10Aに形成された光硬化性樹脂膜18にモールド16に形成された凹凸パターンが転写される。基板10上に形成された光硬化性樹脂膜18は、モールド16の凹凸形状や光硬化樹脂を含有する液体の液物性に対応して、光硬化性樹脂膜18となる液滴14の打滴密度が最適化されているので、残渣厚が均一化され、欠損のない好ましい凹凸パターンが形成される。次に、光硬化性樹脂膜18をマスクとして基板10(又は基板10に被覆させた金属膜等)に微細パターンが形成される。
【0028】
基板10上の光硬化性樹脂膜18の凹凸パターンが転写されると、光硬化性樹脂膜18の凹部内の光硬化性樹脂が除去され、基板10の表側面10A、又は表側面10Aに形成される金属層等を露出させる(図1(e):アッシング工程)。
【0029】
さらに、光硬化性樹脂膜18をマスクとしてドライエッチングが行われ(図1(f):エッチング工程)、光硬化性樹脂膜18が除去されると、光硬化性樹脂膜18に形成された凹凸パターンに対応した微細パターン10Cが基板10上に形成される。なお、基板10の表側面10Aに金属膜や金属酸化膜が形成される場合は、金属膜又は金属酸化膜に対して所定のパターンが形成される。
【0030】
ドライエッチングの具体例としては、光硬化性樹脂膜をマスクとして用いることができればよく、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、などが挙げられる。これらの中でも、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)が特に好ましい。
【0031】
イオンミリング法は、イオンビームエッチングとも言われ、イオン源にArなどの不活性ガスを導入し、イオンを生成する。これを、グリッドを通して加速させ、試料基板に衝突させてエッチングするものである。イオン源としては、カウフマン型、高周波型、電子衝撃型、デュオプラズマトロン型、フリーマン型、ECR(電子サイクロトロン共鳴)型などが挙げられる。イオンビームエッチングでのプロセスガスとしては、Arガス、RIEのエッチャントとしては、フッ素系ガスや塩素系ガスを用いることができる。
【0032】
以上のように、本例に示すナノインプリント方法を用いた微細パターンの形成は、モールド16の凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂膜18をマスクとして、残膜の厚みムラおよび残留気体による欠陥のない当該マスクを用いてドライエッチングを行っているので、高精度で歩留まりよく基板10に微細パターンを形成することが可能となる。
【0033】
なお、上述したナノインプリント法を適用して、ナノインプリント法に用いられる石英基板のモールドを作製することも可能である。
【0034】
〔モールドの凹凸パターンの説明〕
図2(a)〜(e)は、図1(c)に示すモールド16の凹凸パターンの具体例を示す図である。図2(a)は、A方向について略同一の長さを有する複数の凸部20が、A方向と略直交するB方向について所定の間隔で等間隔に並べられた態様を示す図である。図2(b)は、A方向について適宜分割された凸部22を有する態様を示す図であり、図2(c)は、図2(a)に示す凸部20よりもA方向について短い長さを有する複数の凸部24が、A方向及びB方向について所定の間隔で等間隔に並べられた態様(略同一形状の凸部24がA方向及びB方向について等間隔に整列している態様)を示す図である。
【0035】
かかる形状を有する凸部20,22,24が形成されたモールド16を使用すると、液滴14(図1(b)参照)は凸部20間の凹部26を伝って凹部26の方向(A方向)に拡張しやすくなるために異方性が生じ、拡張した液滴の形状が略楕円形状となる。
【0036】
図2(d)は、略円形状の平面形状を有する凸部28が、A方向について等間隔に配置されるとともに、B方向についても等間隔に配置され、さらに、(A方向の配置ピッチ)<(B方向の配置ピッチ)となるように、A方向についてB方向よりも密に配置された態様を示す図である。かかる形状及び配置パターンを有する凸部28が形成されたモールド16を使用する場合にも、液滴14がA方向について拡張しやすくなるために異方性が生じ、拡張した液滴の形状が略楕円形状となる。
【0037】
一方、図2(e)は、略円形状の平面形状を有する凸部28が、A方向及びB方向について、(A方向の配置ピッチ)=(B方向の配置ピッチ)となるように等間隔に配置された態様を示す図である。図2(e)に示す形状を有する凸部28が形成されたモールド16を使用すると、液滴14の拡張に異方性が明確に現れない。
【0038】
なお、図2(a)〜(d)では、凸部20(22,24,28)が直線状に形成又は配列された態様を示したが、これらは曲線状に形成(配置)されてもよいし。蛇行するように形成(配置)されてもよい。また、凸部20(22,24,28)の幅〈直径〉及び凹部26の幅は10nm〜50nm程度であり、凸部20,22,24,28の高さ(凹部26の深さ)は、10nm〜100nm程度である。
【0039】
〔液滴の打滴配置及び拡張の説明〕
次に、図1(b)に図示した打滴工程によって基板10上に着弾した液滴14の打滴位置(着弾位置)、及び図1(c)に図示した光硬化性樹脂膜形成工程による液滴14の拡張について詳説する。
【0040】
図3(a)〜(c)は、液滴14を拡げる方向に異方性を持たせた態様を模式的に図示した説明図であり、図2(a)〜(d)に図示した凹凸パターンを有するスタンパが用いられる。図3(a)に示す液滴14は、A方向について配置ピッチがWaとなるように配置されるとともに、B方向について配置ピッチがWb(<Wa)となるように配置されている。
【0041】
図3(a)に示すようにB方向に対してA方向について液滴の打滴密度を疎にした配置パターンを有する液滴14は、図3(b)に示すように、A方向を長軸方向、B方向を短軸方向とする略だ円状に拡げられる。図3(b)では、拡げられている中間状態の液滴に符号14’を付して図示している。所定の条件における液滴14の押圧が実行されると、図3(c)に示すように、隣接する打滴位置に着弾した液滴14が合一して、均一な厚みを有する光硬化性樹脂膜18が形成される。
【0042】
なお、液滴14をA方向及びB方向について均等に配置した場合は、スタンパの凹凸形状によって濡れ広がりが異なるので、隙間が発生しないように(図3(d)参照)、液滴の密度が決められる。
【0043】
図4(a)〜(c)は、A方向及びB方向について等間隔となるように配置された液滴14を、等方(均等)に拡張させる態様を模式的に図示した説明図であり、例えば、図2(e)に図示した凹凸パターンを有するスタンパが用いられる。
【0044】
図4(a)に示すように、基板10の表側面10Aの所定の打滴位置に着弾した液滴14は、モールド16(図1(c)参照)に押圧され、図4(b)に示すように中心から半径方向に略均一に拡げられる。図4(b)では、拡げられている中間状態の液滴に符号14’を付して図示している。所定の条件における液滴14の押圧が実行されると、図4(c)に示すように、隣接する打滴位置に着弾した液滴14が合一して、均一な厚みを有する光硬化性樹脂膜18が形成される。
【0045】
図5(a)に図示した拡張させた複数の液滴(標準量の液滴)14’の形状をそれぞれだ円形状に近似し、該だ円形状が最密充填配置されるように液滴を再配置するとよい。図5(b)に示す例では、偶数列の液滴17の中心が奇数列の液滴14”のA方向における縁部に対応するように、偶数列の液滴17のA方向における位置が変更され(A方向の打滴ピッチが1/2ピッチずらされ)、かつ、B方向について奇数列の液滴14”のだ円形状の円弧部と、偶数列の液滴17のだ円形状の円弧部とを接触させるように、B方向における位置が変更されている(B方向の打滴ピッチが小さくなっている)。
【0046】
再配置後の楕円形状のそれぞれの中心を格子点(打滴位置)として、複数の液滴の配置パターンが決められる。これにより、インクジェット方式を用いて光硬化性を有する液滴14を塗布し、ナノインプリントを行う方法において、凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂膜18の残膜の厚みムラ、及び残留気体による欠陥の発生を抑制することが可能となる。
【0047】
液滴14の塗布量の好適な量としては、モールド16による押圧後の光硬化性樹脂膜18の厚みが5nm以上200nm以下となる範囲内である。特に、後行程であるドライエッチング等のリソグラフィプロセス後に基板10上に形成されるパターンの品質を良好とするためには、光硬化性樹脂膜18の厚みを15nm以下とすることが好ましく、10nm以下とすることがより好ましい。光硬化性樹脂膜18の厚みを5nm以下とすると、さらに好ましい。また残膜厚みの標準偏差値(σ値)が5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることがさらに好ましい。
【0048】
〔ナノインプリントシステムの説明〕
次に、上述したナノインプリント方法を実現するためのナノインプリントシステムについて説明する。
【0049】
(全体構成)
図6は、本発明の実施形態に係るナノインプリントシステムの概略構成図である。同図に示すナノインプリントシステム100は、シリコンや石英ガラスの基板102上にレジスト液(光硬化性樹脂を有する液)を塗布するレジスト塗布部104と、基板102上に塗布されたレジストに所望のパターンを転写するパターン転写部106と、基板102を搬送する搬送部108と、を備えて構成される。
【0050】
搬送部108は、例えば、搬送ステージなどの基板102を固定して搬送する搬送手段を含んで構成され、基板102を搬送手段の表面に保持しつつ、該基板102をレジスト塗布部104からパターン転写部106に向かう方向(以下、「y方向」又は「基板搬送方向」、「副走査方向」ということもある。)に搬送を行う。該搬送手段の具体例として、リニアモータとエアスライダーの組み合わせや、リニアモータとLMガイドの組み合わせなどがあり得る。なお、基板102を移動させる代わりに、レジスト塗布部104やパターン転写部106を移動させるように構成してもよいし、両者を移動させてもよい。ここで、図6に示す「y方向」は図2〜5における「A方向」に対応している。
【0051】
レジスト塗布部104は、複数のノズル(図6中不図示、図7に符号120を付して図示)が形成されるインクジェットヘッド110を備え、各ノズルからレジスト液を液滴として吐出することにより、基板102の表面(レジスト塗布面)にレジスト液の塗布を行う。
【0052】
ヘッド110は、y方向について複数のノズルが並べられた構造を有し、x方向について基板102の全幅にわたって走査しながらx方向における液体吐出が行われるシリアル型ヘッドである。図6(b)に示すように、シリアル型のヘッド110’による液体吐出では、x方向についての液体吐出が終わると、y方向について基板102とヘッド110’とを相対的に移動させて、次のx方向についての液体吐出が実行される。このような、動作を繰り返すことで、基板102の全面にわたって打滴が行われる。但し、基板102のy方向の長さがx方向の1回の走査で対応できる場合は、y方向について基板102とヘッド110’との相対移動は不要である。
【0053】
一方、図6(c)に示すように、y方向と直交するx方向(以下、「基板幅方向」、「主走査方向」ということもある。)の基板102の最大幅にわたってについて複数のノズルが一列に並べられた構造を有する長尺のフルラインヘッド110を適用してもよい。フルライン型のヘッド110を用いた液体吐出では、ヘッド110をx方向に移動させることなく、基板搬送方向について基板102とヘッド110を相対的に移動させる動作を1回行うだけで基板102上の所望位置に液滴を配置することができ、レジストの塗布速度の高速化を図ることができる。ここで、上述した「x方向」は図2〜5における「B方向」に対応している。
【0054】
パターン転写部106は、基板102上のレジストに転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたモールド112と、紫外線を照射する紫外線照射装置114と、を備え、レジストが塗布された基板102の表面にモールド112を押し当てた状態で、基板102の裏側から紫外線照射を行い、基板102上のレジスト液を硬化させることにより、基板102上のレジスト液に対してパターン転写を行う。
【0055】
モールド112は、紫外線照射装置114から照射される紫外線を透過可能な光透過性材料から構成される。光透過性材料としては、例えば、ガラス、石英、サファイア、透明プラスチック(例えば、アクリル樹脂、硬質塩化ビニールなど)を使用することができる。これにより、モールド112の上方(基板102とは反対側)に配置される紫外線照射装置114から紫外線照射が行われたとき、モールド112で遮られることなく基板102上のレジスト液に紫外線が照射され、該レジスト液を硬化させることができる。
【0056】
モールド112は、図6の上下方向(矢印線により図示した方向)に移動可能に構成されており、基板102の表面に対してモールド112のパターン形成面が略平行となる状態を維持しながら下方に移動して、基板102の表面全体に略同時に接触するように押し当てられ、パターン転写が行われる。
【0057】
(ヘッドの構成)
次に、ヘッド110の構造について説明する。図7は、ヘッド110を吐出面(ノズル面)側から見た平面透視図であり、図8は、図7中A‐A線に沿う断面図である。図7に示すように、ヘッド110は複数のノズル120がx方向(又はy方向)の全長にわたって一列に並べられた構造を有している。また、ノズル120の開口は平面形状が略正方形となっており、ノズル120の辺の方向とノズル120の配列方向とは略平行である。以下の説明では、図6(c)に図示したフルライン型のヘッド110について説明するが、図6(b)に図示したシリアル型ヘッド110’の場合は、x方向とy方向とを入れ換えればよい。
【0058】
複数のノズル120のうち、同図中左から奇数番目のノズル120Aは同図における上側に位置する第1の液室122Aと第1の連通路124Aを介して連通し、同図中左から偶数番目のノズル120Bは同図における下側に位置する第2の液室122Bと第2の連通路124Bを介して連通する構造を有している。なお、図示を省略したが、第1の液室122Aは第1のノズル120Aごとに区画され、第2の液室122Bは第2のノズル120Bごとに区画されている。
【0059】
なお、図7では図示を省略するが、第1の液室122Aの外側及び第2の液室122Bの外側には、それぞれ圧電素子(図8に符号121A,121Bを付して図示)が設けられている。かかる圧電素子は、第1の液室又は第2の液室に対して一体の圧電体部を有するとともに、ノズルごと(区画ごと)に個別電極(図10(a)に符号140を付して図示)が設けられる電極分割構造が適用される。
【0060】
また、図8に示すように、第1の液室122Aは第1の連通路124Aの反対側において液供給路126と連通し、第2の液室122Bは第2の連通路124Bの反対側において液供給路126と連通している。第1の液室122Aの外側面は第1の圧電素子121Aが設けられ、第2の液室122Bの外側面は第2の圧電素子121Bが設けられている。
【0061】
第1の圧電素子121Aを動作させると、第1の液室122A内の液が加圧されて、図7における奇数番目のノズル120Aから液滴が打滴される。一方、図8に示す第2の圧電素子121Bを動作させると、第2の液室122B内の液が加圧されて、図7における偶数番目のノズル120Bから液滴が打滴される。
【0062】
本例に示すヘッド110は、ノズル列をはさんで一方の側(図中上側)第1の液室が配置され、他方の側(図中下側)に第2の液室122Bが配置された構造を有し、かかるヘッド110の流路構造に対応して、第1の液室122Aと連通するノズル120Aのグループと、第2の液室122Bと連通するノズル120Bのグループにグループ化されており、グループごとに液滴の打滴が制御可能に構成されている。
【0063】
図9は、ヘッド110の分解斜視図である。同図に示すヘッド110は、複数のプレートが積層された構造を有しており、ノズル120(図8参照)が形成されるノズルプレート130に、連通路124(124A,124B)の一部が形成されるスペーサー層132が積層される。
【0064】
さらに、スペーサー層132には連通路124の一部及び液室122(122A,122B)が形成される液室プレート138が積層される。この液室プレート138は、両側の側面に圧電素子121(121A,121B)が形成される。さらに、液室プレート138には液供給路126が形成される供給路プレート(不図示)が積層されている。係る構造を有するヘッド110をヘッドモジュールとして、複数のヘッドモジュールをx方向についてつなぎ合わせて長尺のヘッドを構成してもよい。
【0065】
本例に示すナノインプリントシステムに適用されるヘッド110は、液室を加圧する手段として圧電素子121が具備されている。図10(a)は、圧電素子121の動作モード(d15モード、シェアモード)を説明する図であり、図8の縦断面に対応している。図10(a)に示すように、圧電素子121は液室122と反対側の面に個別電極140及び共通電極142が設けられている。また、圧電素子121は液室122から外側へ向かう方向(厚み方向)に分極されており(分極方向を矢印線により図示)、個別電極140を正極、共通電極142を負極として所定の電界を印加すると液室122の内側へ変形する。図10(a)は、静定状態(電界の非印加状態)を実線により図示し、変形状態(電界の印加状態)を破線により図示している。
【0066】
なお、図10(b)に示すように、圧電素子121’の長くなる方向の変位を利用するd33モードや、図10(c)に示すように、圧電素子121”の短くなる方向の変位を利用するd31モードを用いることも可能である。
【0067】
例えば、図10(b)に示す圧電素子121’は、液室122の外側壁144に配設され、液室122の外側壁144と反対側の面に拘束板146が取り付けられた構造を有し、さらに、液室122の外側壁144に取り付けられる面と直交する面に個別電極140’及び共通電極142’が設けられる構造を有している。図10(b)に示す圧電素子121’は、個別電極140’から共通電極142’へ向かう方向の電界が印加されると、圧電素子121’が上下方向に伸張して、液室122の外側壁144が内側に変形する。
【0068】
図10(c)に示す圧電素子121”を用いる場合は、液室122の外側壁144側の面に共通電極142”が設けられ、共通電極142”と反対側の面に個別電極140”が設けられる。圧電素子121”は、個別電極140”から共通電極142”へ向かう方向の電界が印加されると、圧電素子121”横方向へ短くなり、液室122の外側壁144が内側に変形する。
【0069】
図11は、図10(a)に図示したd15モードの圧電素子121を用いる場合における、個別電極140及び共通電極142の配置を示す平面図である。図11に示すように、共通電極142は櫛歯形状の平面形状を有しており、共通電極142の間に個別電極140が配置される。個別電極140の配置位置は、ノズル120の位置に対応している。
【0070】
図10(a)〜(c)及び図11に図示された個別電極140,140’,140”及び共通電極142,142’、142”は、不図示のフレキシブル基板を用いてヘッド110の外部に引き出され、ヘッドドライバー(図12に符号184を付して図示)と電気的に接続される。
【0071】
(制御系の説明)
図12は、ナノインプリントシステム100におけるレジスト塗布部104に関する制御系を示すブロック図である。同図に示すように、当該制御系は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバー176、ヒータドライバー178、打滴制御部180、バッファメモリ182、ヘッドドライバー184等を備えている。
【0072】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくるレジスト液の配置(塗布分布)を表すデータを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70としては、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェース、或いは、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0073】
システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバー176、ヒータドライバー178等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
【0074】
メモリ174は、データの一時記憶領域、及びシステムコントローラ172が各種の演算を行うときの作業領域として使用される記憶手段である。通信インターフェース170を介して入力されたレジスト液の配置を表すデータはナノインプリントシステム100に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。メモリ174としては、半導体素子からなるメモリの他、ハードディスクなどの磁気媒体を用いることができる。
【0075】
プログラム格納部190には、ナノインプリントシステム100の制御プログラムが格納される。システムコントローラ172はプログラム格納部190に格納されている制御プログラムを適宜読み出し、制御プログラムを実行する。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記憶媒体のうち、複数の記憶媒体を備えてもよい。
【0076】
モータドライバー176は、システムコントローラ172からの指示に従ってモータ188を駆動するドライバー(駆動回路)である。モータ188には、図6の搬送部108を駆動するためのモータやモールド112を上下動させるためのモータが含まれる。
【0077】
ヒータドライバー178は、システムコントローラ172からの指示に従ってヒータ189を駆動するドライバーである。ヒータ189には、ナノインプリントシステム100の各部に設けられた温度調節用のヒータが含まれる。
【0078】
打滴制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内のレジスト液の配置データから打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した打滴制御信号をヘッドドライバー184に供給する制御部である。打滴制御部180において所要の信号処理が施され、該打滴データに基づいてヘッドドライバー184を介してヘッド110から打滴されるレジスト液の打滴量、打滴位置、ヘッド110打滴タイミングの制御が行われる。これにより、所望のレジスト液の液滴の配置(分布)が実現される。
【0079】
打滴制御部180にはバッファメモリ182が備えられており、打滴制御部180における打滴データ処理時に打滴データやパラメータなどのデータがバッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図12では、バッファメモリ182は打滴制御部180に付随する態様で示されているが、メモリ174と兼用することも可能である。また、打滴制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0080】
ヘッドドライバー184は、打滴制御部180から与えられる打滴データに基づいてヘッド110の圧電素子121(図4参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子121に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバー184にはヘッド110の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0081】
センサ192は、ヘッド110から打滴された液滴の飛翔状態を検出するために設けられている。センサ192の構成例として、発光部(例えば、ストロボ光を発光させるストロボ装置)、及び受光部(例えば、CCDイメージセンサ等の撮像装置)を備えた構成が挙げられる。かかる光学式センサによって、液滴の飛翔速度、液滴の飛翔方向、液滴の体積等を検出することが可能である。センサ192によって得られた情報は、システムコントローラ172へ送られ、打滴制御部へフィードバックされる。
【0082】
カウンター194は、ノズル120に対して設定されたグループごとに打滴回数をカウントするものである。本例では、打滴データに基づいてグループごとの打滴回数がカウントされ、該カウントデータは所定の記憶部(例えば、メモリ174)に記憶される。かかるカウントデータを用いて、グループごとの打滴回数にバラつきが生じないように、各グループの使用頻度が調整される。例えば、第1のノズル120Aのみ、又は第2のグループのみに偏らないように、適宜グループの選択が変更される。
【0083】
(駆動電圧の説明)
上述したように、本例に示すヘッド110はノズル120がグループ化されており、第1の液室122Aと連通するノズル120A(以下「第1のグループに属するノズル」と記載)と、第2の液室122Bと連通するノズル120B(以下「第2のグループに属するノズル」と記載)と、を含んでいる。
【0084】
本例に示すヘッド110は、第1のグループに属するノズル120Aに具備される圧電素子121(以下、「第1のグループに属する圧電素子」と記載)へ印加される駆動電圧と、第2のグループに属するノズル120Bに具備される圧電素子121(以下、「第2のグループに属する圧電素子」と記載)へ印加される駆動電圧と、を異ならせることが可能である。
【0085】
図13は、グループごとに打滴量を変更するために駆動電圧を変更する具体例を説明する図である。図13の上段は、第1のグループに属する圧電素子へ印加される駆動電圧波形230が図示され、下段は第2のグループに属する圧電素子へ印加される駆動電圧波形232が図示されている。同図に示す駆動電圧波形230,232は、圧電素子121(図8等参照)を引き‐押し動作させるものであり、駆動電圧波形230は最大電圧がVoであり、駆動電圧波形232は最大電圧がVe(>Vo、又はVe<Vo)である。
【0086】
すなわち、グループごとに圧電素子121へ印加する駆動電圧の最大値を可変させることができ、該駆動電圧の最大値を相対的に大きくすると相対的に打滴量が大きくなり、該駆動電圧の最大値を相対的に小さくすると相対的に打滴量が小さくなる。かかる駆動電圧の最大値を変更する構成の一例として、図12に示すヘッドドライバー184に、圧電素子121(ノズル120)に付与されたグループに対応して電圧可変部を備える構成が挙げられる。
【0087】
駆動電圧の最大値を変更することにより、圧電素子の個体バラつき(厚み、圧電定数、ヤング率等)に伴う吐出量のバラつきを補正することが可能である。また、駆動電圧のパルス幅を調整することによって、圧電素子の個体バラつきに伴うヘッドの共振周波数のバラつきに依存するノズルごとの吐出効率や、ノズルごとの吐出安定性を補正することができ、ヘッド全体として吐出効率や吐出安定性を向上させることができる。
【0088】
かかる駆動電圧(駆動波形)の変更の具体例として、予めノズルごと(ノズル列ごと)の吐出特性を検査して記憶しておき、該ノズルごと(ノズル列ごと)の吐出特性のデータを参照して駆動電圧を変更する態様が挙げられる。ノズルごとの吐出特性の検査には、後述する「打滴状態の検出」を適用することができる。
【0089】
(x方向における打滴配置の説明)
次に、レジスト液のx方向における打滴配置(打滴ピッチ)について説明する。
【0090】
第1のグループに属するノズル120Aから打滴を行うときには、第2のグループに属するノズル120Bは休止しており、第2のグループに属するノズル120Bから打滴を行うときには、第1のグループに属するノズル120Aは休止している。すなわち、x方向における最小打滴ピッチは、x方向における最小ノズルピッチの2倍(グループごとの最小ノズルピッチ)となっている。例えば、x方向における最小打滴ピッチを400μmとしたときに、x方向について直径が50μm程度の液滴を400μmピッチで離散的に配置させる構成となっている。さらに、各グループをn個(nは正の整数)のグループに再グループ化して、最小打滴ピッチを400/n(μm)とすることも可能である。
【0091】
なお、第1のグループに属するノズル120A及び第2のグループに属するノズル120Bから同時の打滴を行うことも可能である。かかる態様では、最小打滴ピッチは最小ノズルピッチと同一となる。
【0092】
また、本例に示すヘッド110はx方向について最小打滴ピッチ未満の範囲で打滴ピッチを微調整することができ、x方向について液滴の打滴密度を細かく可変させることが可能となっている。図14(a),(b)は、x方向における打滴ピッチを微調整する構成の具体例を説明する模式図である。以下に示すx方向の打滴ピッチ微調整手段は、ヘッド110を基板102(図6参照)の液滴が打滴される面と略平行な面内において回転させて、x方向の打滴ピッチを微調整するように構成されている。
【0093】
図14(a)に示すヘッド110は、第1グループのノズル120Aみの(又は、第2グループのノズル120Bのみ)を図示した図であり、第1グループのノズル120Aは配置ピッチPnで等間隔に配置されている。なお、実際には、図示したノズル120A間に第2グループのノズル120Bが配置されている。
【0094】
このとき、x方向における打滴ピッチPd(図3(a)に示すWbに対応)はx方向のノズル間ピッチPnと同一である。図14(b)に示すように、ヘッド110をx方向に対して角度δをなすように回転させると、x方向の打滴ピッチはPdからPd’(=Pn×cosδ(但し、0°<δ<45°)へ変更することができる。かかる構成を有するx方向の打滴ピッチ微調整手段によって、打滴するノズルを変更せずに、x方向の最小打滴ピッチをPd未満の範囲で微調整することが可能となる。例えば、最小打滴ピッチPd=400μmとしたときに、δ=28.9°となるようにヘッド110を回転させると、打滴ピッチPd’=350μmとなる。
【0095】
図15は、2つ(複数の)ヘッドモジュール110‐1とヘッドモジュール110‐2とをx方向につなぎ合わせて1つの長尺ヘッドが構成される場合の、x方向の打滴ピッチ微調整手段の構成を模式的に図示した図である。それぞれのヘッドモジュール110‐1,110‐2を回転させるとともに、ヘッドモジュール110‐1,110‐2間のつなぎ部分における打滴ピッチがPd’になるように、いずれかのヘッドモジュール110‐1,110‐2をx方向にΔxだけ移動させる。なお、両方のヘッドモジュール110‐1,110‐2をx方向に移動させてもよい。
【0096】
すなわち、複数のヘッドモジュール110‐1,110‐2をx方向につなぎ合わせて長尺ヘッドを構成する態様では、ヘッドモジュール110‐1,110‐2ごとにxy平面内において回転させる回転機構が備えられるとともに、隣接するヘッドモジュール110‐1,110‐2間のx方向の相対的な距離を可変させるx方向移動機構が備えられる。
【0097】
なお、図14(a),(b)、図15に示す態様では、ヘッド110の略中心を通る回転軸についてヘッド110を回転させる態様を例示したが、ヘッド110の端部を通る回転軸についてヘッド110を回転させてもよい。また、ヘッド110を回転させる具体的な構成例として、回転軸に取り付けられたモータ(ギア及びモータ)と、回転軸について回転可能にヘッド110を支持するヘッド支持機構と、を具備する構成が挙げられる。
【0098】
かかる構造を有するx方向の打滴ピッチ微調整手段は、x方向の打滴ピッチPdを微調整すると、y方向の打滴ピッチも変わってしまうので、x方向の微調整量に応じてy方向の打滴ピッチも微調整しなければならない。y方向の打滴ピッチの微調整は以下に説明する方法を用いることが可能である。
【0099】
(y方向における打滴配置の説明)
次に、y方向の打滴配置及びy方向の打滴ピッチの微調整の具体例について説明する。本例に示すヘッド110はx方向の全幅について、一回の打滴タイミングにおいて一度に打滴が可能である。かかる構造によって、ヘッド110と基板102とを一回だけ相対的に移動させることで、基板102の全域に液滴を打滴することが可能である。
【0100】
固定されたヘッド110に対して基板102をy方向へ一定速度で移動させるときに、y方向の最小打滴ピッチは、(最小打滴周期)×(基板102の移動速度)となっている。すなわち、打滴するノズルを変更せずに、y方向の打滴ピッチは打滴周期のm倍(mは正の整数)ごとに調整することが可能である。また、基板102の移動速度を大きくするとy方向の打滴ピッチは大きくなり、基板102の移動速度を小さくするとy方向の打滴ピッチは小さくなる。
【0101】
さらに、本例に示すヘッド110は、y方向についても(最小打滴周期)×(基板の移動速度)未満の範囲で、打滴ピッチを微調整するための打滴ピッチ微調整手段を具備している。
【0102】
図16の上段は、y方向について標準の打滴ピッチで打滴を行う場合の駆動電圧波形240である。駆動電圧波形240は圧電素子121(図8等参照)に引き‐押し動作をさせるものであり、メニスカス静定波形242が付与されている。また、図16の下段は、y方向について打滴ピッチの微調整を行う場合の駆動電圧波形244であり、駆動電圧波形240と同様に、圧電素子121に引き‐押し‐引き動作をさせるものであり、メニスカス静定波形246が付与されている。
【0103】
下段に図示した駆動電圧波形244は、上段に図示した駆動電圧波形240に所定の遅延時間が付加されており、遅れ位相となっている。したがって、駆動電圧波形244の圧電素子121を押し動作させる波形要素(立下り部)244Aの終了タイミングtBが、駆動電圧波形240の圧電素子121を押し動作させる波形要素(立下り部)240Aの終了タイミングtAよりも遅れている。このように駆動電圧波形を変更して吐出タイミングを微調整することで、y方向における打滴ピッチの微調整が可能となる。
【0104】
さらに、図16の下段に示す駆動電圧のように、遅延時間を付加して位相を変更することで、圧電素子の個体バラつき(厚み、圧電定数、ヤング率等)に伴う吐出量のバラつきを補正することが可能となり、圧電素子の個体バラつきに伴うヘッドの共振周波数のバラつきに依存するノズルごとの吐出効率のバラつきやノズルごとの吐出安定性のバラつきが均一化される。
【0105】
図17は、標準の駆動電圧に遅延時間(ディレイ)を付加するための構成を示すブロック図である。同図に示す駆動信号生成部400は、ノズル120ごとの駆動波形を生成する波形生成部404と、x方向の打滴ピッチを変更する際の遅延時間をノズルごとに算出するディレイデータ生成部405と、ディレイデータ生成部405により生成された遅延時間を駆動波形データに加算する加算部407と、デジタル形式の駆動波形データをアナログ形式に変換するD/Aコンバータ409と、アナログ形式の駆動波形に電圧増幅処理及び電流増幅処理を施す増幅部406と、を備えている。
【0106】
打滴データに基づいて、スイッチIC414のスイッチ素子416をオンオフさせることで各ノズルに対応する圧電素子121を動作させると、所望のノズルからレジスト液が打滴される。
【0107】
また、図18に示すように複数のアナログ波形(WAVE1〜3)を準備しておき、イネーブル信号によって複数のアナログ波形の中から1つを選択するように構成してもよい。なお、かかる構成はy方向の打滴ピッチ微調整手段として、x方向の打滴ピッチ微調整手段とは独立して動作させることが可能である。
【0108】
図19(a)は、y方向の打滴ピッチの微調整前の基板102上の打滴位置を示す図であり、図19(b)は、y方向の打滴ピッチの微調整後の基板102上の打滴位置を示す図である。図19に示すように、Py<Py’<2×Pyとなっており、微調整後のy方向の打滴ピッチPy’は、y方向の最小打滴ピッチPy未満の範囲で調整されている。なお、図19(b)において破線で図示した打滴位置は図19(a)に図示した微調整前の打滴位置を示している。
【0109】
上述したx方向及びy方向の打滴ピッチの微調整は、レジスト液の配置(塗布分布)のデータや、揮発性などの液物性に基づいて行われる。すなわち、基板に形成される微細パターンに対応するレジスト液の打滴データに応じて、標準よりも多く液滴を必要とする場合は、打滴ピッチが小さくなるように変更され、レジスト液はより密に塗布される。一方、標準よりも液滴量を必要としない場合は、打滴ピッチが大きくなるように変更され、レジスト液はより疎に塗布される。打滴ピッチの変更に対応して、レジスト液の打滴量を上記のように変えてもよい。また、図3及び図4を用いて説明したモールドパターンによる濡れ拡がりの異方性を考慮した打滴配置に基づいて、x方向及びy方向の打滴ピッチの微調整を行うことが好ましい。
【0110】
(打滴検出の説明)
次に、ヘッド110の打滴検出について説明する。図20に示すように、本例に示すヘッド110は打滴状態を検出するためのセンサ192が設けられている。図20(a)は、ヘッド110とセンサ192との配置関係を模式的に表した図であり、図20(b)は、図20(a)に示すヘッド110及びセンサ192をヘッド110の短手方向の端部から見た図である。
【0111】
図20(a)に示すように、ヘッド110をはさんで、ヘッド110の短手方向における一方の側に発光部192Aが配置され、他方の側に受光部192Bが配置されている。ヘッド110に設けられるノズル120は、ヘッド110の打滴面から見た開口の平面形状が略正方形であり、センサ192の観察方向(実線の矢印線により図示)は該正方形の対角線(破線の矢印線により図示)とのなす角度が略45°となっている。
【0112】
本例に適用される略正方形形状の開口を有するノズルは、頂角が特異点となるために液滴は対角線の方向へ飛翔曲がりが発生するので、かかる飛翔曲がりが発生する方向(すなわち、対角線の方向)に対して略45°をなす方向について液滴を観察することで、得られた検出信号を解析することで、飛翔速度、飛翔曲がり、体積を把握することができる。
【0113】
〔ノズルプレートの説明〕
(ノズルプレートの製造方法)
次に、図8等に図示した開口の平面形状が略正方形形状のノズル120の製造方向について説明する。図21(a)〜(h)は、ノズル120を有するノズルプレート130を形成するための各工程を模式的図示した説明図である。
【0114】
本例に示すヘッド110に適用されるノズルプレート130(図9参照)は、単結晶のシリコンウエハに対して異方性エッチング処理が施されて形成されたものである。図21(a)に示すシリコンウエハ300は、結晶方向(100)のP型又はN型の表面が研磨処理されたものである。図21(b)に示すように、シリコンウエハ300の表面に処理温度1000℃で酸化処理が施され、厚さ4500Åの酸化膜(SiO2)302が形成される。
【0115】
次に、図21(c)に示すように、酸化膜302の上にレジスト層304が形成され、開口パターン306がレジスト層304に露光され、現像される(図21(d))。次に、開口パターン306の酸化膜302が除去されるとともに、レジスト層304が除去される(図21(e))。レジスト層304及び開口パターン306の酸化膜302が除去されたシリコンウエハ300は、100℃〜120℃のエッチング溶液中に浸漬され、一方の面から他方の面に向かって開口面積が小さくなる形状(断面形状が略三角形形状)を有する穴308が形成される(図21(f))。
【0116】
次に、酸化膜302が除去された後に(図21(g)、酸化処理が施されて穴308の内部、及びシリコンウエハ300の表面に酸化膜310が形成される(図21(h))。
【0117】
図22(a)は、上述した製造方向を用いて形成されたノズル120(図8参照)を、内部側から見た平面図であり、図22(b)は、図22(a)の一部拡大図(斜視図)である。図22(a)に示すように、ノズル120となる穴308の開口312,314は略正方形形状を有している。開口314は、ヘッド110に取り付けたときにノズル120の開口となる。図22(a),(b)に示すように、ノズル120となる穴308は、先端を切り取った略四角錐形状を有している。
【0118】
かかる製造方法を用いて製造されたノズルプレート130は、大きさや形状のバラつきのない好ましいノズル120が形成されたものである。
【0119】
(撥液処理(撥液膜)の説明)
次に、ノズルプレートの撥液処理(撥液膜)について説明する。ノズルプレート130(図8参照)の液滴吐出面は、吐出の安定性を確保するために所定の性能を有する撥液処理が施される。
【0120】
図23は、ノズルプレート130に形成される撥液膜の特性による吐出特性の違いを示す実験データである。当該データを得た評価実験は、所定のインクジェットヘッドに形成された撥液膜を酸素プラズマにより強制的に劣化させて当該撥液膜の接触角を変化させ、吐出状態を観察した。接触角の測定は、接触角計FTA1000(FTA社製)を使用し、接線法、拡張収縮法を用いて行った。
【0121】
図23中、「静的」欄は静的接触角の値であり、この値は接線法で求められた接触角である。すなわち、後述する〔実施例〕に記載されている「レジスト組成物R1A」をノズルプレート130に滴下して、ノズルプレート130上の液滴の画像の輪郭形状を円の一部と仮定して円の中心を求め、円の接線と直線でなす角度を静的接触角としている。また、「前進」欄は前進接触角の値であり、「後退」欄は後退接触角の値である。これらの値は、拡張収縮法により求められた接触角である。固体表面に接した液滴を、膨らませたときに、接触角が安定したときの接触角を前進接触角とし、固体表面に接した液滴を吸引しながら収縮させて、接触角が安定したときの接触角を後退接触角としている。
【0122】
図23に示すように、条件1,2は打滴周波数10kHzにおいて良好な打滴状態が観察され、ノズル面(吐出面)は乾燥状態であった。一方、条件3,4はそれぞれ打滴周波数5kHz、10kHzで飛翔曲がりが発生し、ノズル面の全面が液滴(液体)で濡れた状態であった。
【0123】
撥液膜は、フッ素系樹脂が利用可能である。フッ素系樹脂の材料としては、主鎖に「‐CF2‐」を含み、末端基が「‐CF3」のフルオロカーボン樹脂、主鎖に「‐SiF2‐」を含み、末端基が「‐SiF3」のフルオロシリコーン樹脂、もしくは、これらフルオロカーボン樹脂およびフルオロシリコーン樹脂のフッ素原子の一部を水素原子で置換したハイドロフルオロカーボン樹脂、ハイドロフルオロシリコーン樹脂等の従来公知の各種のフッ素系樹脂が利用可能である。
【0124】
より具体的には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン共重合体)等のフッ素系樹脂を一例として挙げることができる。また、この中でも、PTFEは特に好ましい例として示すことができる。
【0125】
また、撥液膜として、1つの端が「‐CF3」基で終結され、第2の端が「‐SiCl3」基で終結される炭素鎖を含む前駆物質分子が用いることができる。シリコン表面に付着する適切な前駆物質として、トリデカフルオロ−1,1,2,2‐テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)、及び1H,1H,2H,2H‐ペルフルオロデシルトリクロロシラン(FDTS)が挙げられる。
【0126】
撥液膜に劣化が生じると、図23に示すように吐出特性に変化が生じるので、撥液膜の状態を定期的に把握する手段を備え、撥液膜に劣化が見られるノズルが属するグループは使用しないように、ソフトウエア上でマスク処理等をすることが可能である。
【0127】
上記の如く構成されたナノインプリントシステム100によれば、ヘッド110に具備されるノズル120がグループ化され、グループごとに打滴が制御されるので、グループごとの固体差(ノズルごとの吐出特性のバラつき、圧電素子ごとのバラつき)を制御することができ、該固体差に起因して残膜の厚み(残渣)が不均一になることがない。したがって、打滴された液滴により形成された膜の厚みが安定しているので、基板のエッチング工程における条件が安定し、基板には好ましい微細パターンが形成される。
【0128】
また、ノズルの配列方向と略平行のx方向、及びノズルの配列方向と略直交するy方向について、離散的レジスト液滴を配置させる構成において、x方向、y方向のいずれか、又はx方向及びy方向の両方の打滴ピッチを、最小打滴ピッチ未満の範囲で微調整する構成を具備するので、打滴パターンや揮発性等の液物性に応じて液滴の打滴密度を精密に、かつ、簡易に変更することができる。
【0129】
さらに、グループごとの打滴回数を計測するカウンター194を具備し、グループごとに打滴回数が計測され、計測結果に対応して打滴を行うグループが選択されるので、特定のグループの打滴頻度が高くなることが防止され、ヘッド110の耐久性が向上する。
【0130】
さらにまた、打滴状態を検出するためのセンサ192を具備し、検出結果に基づいて液滴の飛翔方向曲がりや液滴量の異常を把握することができるので、打滴状態の異常に応じてグループを選択することが可能となり、ヘッドの吐出特性が安定する。
【0131】
なお、本例では、基板上にレジスト液による微細パターンを形成するナノインプリントシステムを例示したが、上述した構成を一体的な装置(ナノインプリント装置)とすることも可能である。また、インクジェット方式により基板上に溶液を離散的に配置させる液体塗布装置として構成することも可能である。
【0132】
〔応用例〕
次に、本発明の応用例について説明する。上述した実施形態では、基板上に微細パターンを形成する手法としてナノインプリント法を適用した例を説明したが、ナノインプリント法を用いて石英モールドを形成することが可能である。
【0133】
(石英モールドの作製)
石英モールドは、図1(a)〜(f)に図示した石英基板の微細パターン形成方法を適用して作製することが可能である。すなわち、上記した実施形態に係るナノインプリントシステム、方法を適用して石英モールドを作製することができる。かかる石英モールドを作製する際に、以下に作成方法を示すSiモールドが好適に用いられる。
【0134】
(Siモールドの作製)
上述した実施形態で使用されるSiモールドは、図24(a)〜(e)に示す手順により製造することができる。まず、図24(a)に示すSi基材360にシリコン酸化膜362を形成し、図24(b)に示すように、スピンコートなどでノボラック系樹脂、アクリル樹脂などのフォトレジスト液を塗布し、フォトレジスト層364を形成する。その後、図24(c)に示すように、Si基材360にレーザー光(又は電子ビーム)を照射し、フォトレジスト層364の表面に所定のパターンを露光する。
【0135】
その後、図24(d)に示すように、フォトレジスト層364を現像処理し、露光部分を除去して、除去後のフォトレジスト層のパターンをマスクにしてRIEなどにより選択エッチングを行い、所定のパターンを有するSiモールドを得る。
【0136】
本発明のナノインプリント方法で用いられるモールドは、光硬化性樹脂とモールド表面との剥離性を向上させるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドとしては、シリコン系やフッ素系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC-1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。図24(e)に離型層366が形成されたSiモールドを図示する。
【0137】
〔光硬化性樹脂液の説明〕
次に、本例に示すナノインプリントシステムに適用される光硬化性樹脂液の一例として、レジスト組成物(以下、単に「レジスト」と記載することがある。)について詳細に説明する。
【0138】
レジスト組成物は、一種以上のフッ素を含む重合性界面活性剤(含フッ素重合性界面活性剤)と重合性化合物と、光重合開始剤Iとを少なくとも含有するインプリント用硬化性組成物である。
【0139】
レジスト組成物には、機能として多官能重合性基を有することによる架橋性の発現を狙い、又は炭素密度を高める、又は結合エネルギーの総量を高める、又は硬化後の樹脂中に含まれるO、S、N、等の電気陰性度が高い部位の含有率を抑制する等によりエッチング耐性を向上させる目的で重合性官能基を有する1官能以上のモノマー成分を含んでもよく、更に、必要に応じて、基板とのカップリング剤、揮発性溶剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0140】
基板とのカップリング剤としては、前述の基板の密着処理剤と同様の材料を用いることができる。含有量としては、基板とレジスト層との界面に配置する程度に含有していれば良く、10質量%以下であれば良く、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更により好ましく、0.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0141】
レジスト組成物の粘度は、モールド112(図6参照)に形成されたパターンへのレジスト組成物中の固形分(揮発溶剤成分を除いた成分)の入り込みと、モールド112への濡れ広がり性の観点から、固形分の粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることが更により好ましい。しかしながら、インクジェット方式を利用する場合は、室温またはヘッドで吐出時に温度制御可能であればその温度範囲内にて20mPa・s以下となることが好ましく、またレジスト組成物の表面張力が20mN/m以上40mN/m以下の範囲、さらに24mN/m以上、36mN/m以下となることが、インクジェットでの吐出安定性を確保する観点で好ましい。
【0142】
(重合性化合物)
レジスト組成物の主成分となる重合性化合物としては、以下の〔数1〕で示される化合物中のフッ素含有率が5%以下であるか、またはフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を実質的に含まない重合性化合物であることとする。
【0143】
【数1】
【0144】
重合性化合物としては、硬化後のパターンの精度及びエッチング耐性等の品質の良好なものであることが好ましい。かかる重合性化合物としては、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含むことが好ましく、多官能単量体は、少なくとも1つの2価又は3価の芳香族基を有するものであることが好ましい。
【0145】
硬化(重合)後に三次元構造を有するレジストの場合は、硬化処理後の形状維持性が良く、モールド剥離時にモールドとレジストとの付着力によって、レジストにかかる応力がレジスト構造体の特定エリアに集中し、パターンが塑性変形することが抑制される。
しかしながら、重合後に三次元構造を有する重合体となる多官能モノマーの比率や、重合後に三次元架橋を形成する部位の密度が上昇すると、硬化後のヤング率が大きくなって変形性が低下し、また膜の脆性が悪化するため、モールド剥離時に破断しやすくなってしまうことが懸念される。特にパターンサイズが30nm幅以下でパターンアスペクト比が2以上のパターンを残膜厚みが10nm以下となる態様では、ハードディスクパターンや半導体パターンなどの広エリアでの形成を試みた場合に、パターンの剥がれやもげが発生する確率が大きくなると考えられる。
【0146】
従って、多官能単量体は、重合性化合物中に10質量%以上含有されることが好ましく、20質量%以上含有されることがより好ましく、30質量%以上含有されることが更に好ましく、40質量%以上であることが最も好ましいことを見出した。
【0147】
また、次式〔数2〕で表される架橋密度が0.01個/nm2以上10個/nm2以下であることが好ましく、0.1個/nm2以上6個/nm2以下であることがより好ましく、0.5個/nm2以上5.0個/nm2以下であることがもっとも好ましいことを見出した。組成物の架橋密度は、各分子の架橋密度を求め、更に重量平均より求めるか、または組成物の硬化後密度を測定し、Mw、および(Nf−1)についてそれぞれの値を重量平均した値と次式〔数2〕より求める。
【0148】
【数2】
【0149】
但し、Daは1分子の架橋密度、Dcは硬化後密度、Nfはモノマー1分子中に含まれるアクリレート官能基数、Naはアボガドロ定数、Mwは分子量である。
【0150】
重合性化合物の重合性官能基としては、特に制限されないが、反応性及び安定性が良好であることから、メタクリレート基、アクリレート基が好ましく、アクリレート基がより好ましい。
【0151】
ドライエッチング耐性は、レジスト組成物の大西パラメータ及びリングパラメータにより評価することができる。大西パラメータが小さく、また、リングパラメータが大きいものほどドライエッチング耐性に優れる。本発明において、レジスト組成物は、大西パラメータが4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下となるように、また、リングパラメータが0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上となるものを好適としている。
【0152】
上記各パラメータは、レジスト組成物を構成する揮発溶剤成分以外の構成物質について、構造式を元に後述の計算式を用いて算出された材料パラメータ値を、組成重量比を元に組成物全体で平均化した値として求める。従って、レジスト組成物の主成分である重合性化合物についても、レジスト組成物中のその他の成分、及び上記パラメータを考慮して選択することが好ましい。
【0153】
大西パラメータ=(化合物中の総原子数)/{(化合物中の炭素原子数)−(化合物中の酸素原子数)}
リングパラメータ=(環構造を形成する炭素質量)/(化合物の全質量)
重合性化合物としては、以下に示す重合性単量体、及びかかる重合性単量体が数単位重合したオリゴマー等が挙げられる。パターン形成性とエッチング耐性の観点から、重合性単量体(Ax)、及び特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物のうちの少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。
【0154】
(重合性単量体(Ax))
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化1〕に示す一般式(I)で表される。
【0155】
【化1】
【0156】
なお、上記〔化1〕に示す一般式(I)中、Arは置換基を有していてもよい2価または3価の芳香族基を表し、Xは単結合または有機連結基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、nは2または3を表す。
【0157】
上記の一般式(I)中、Arとしては、n=2のときは2価の芳香族基(すなわちアリーレン基)を表し、n=3のときは3価の芳香族基を表す。アリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基などの炭化水素系アリーレン基;インドール、カルバゾールなどが連結基となったヘテロアリーレン基などが挙げられ、好ましくは炭化水素系アリーレン基であり、さらに好ましくは粘度、エッチング耐性の観点からフェニレン基である。アリーレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基が挙げられる。
【0158】
Xの有機連結基としては、鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる。その中でも、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。Xとしては、単結合またはアルキレン基であることが特に好ましい。
【0159】
R1は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。R1が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、特に制限はないが、例えば水酸基、ハロゲン原子(フッ素を除く)、アルコキシ基、アシルオキシ基を挙げることができる。nは2または3であり、好ましくは2である。
【0160】
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化2〕に示す一般式(I−a)、又は一般式(I−b)で表される重合性単量体であることが、組成物粘度を低下させる観点から好ましい。
【0161】
【化2】
【0162】
なお、上記の一般式(I−a)、I−b)中、X1、X2は、それぞれ独立に単結合または炭素数1〜3の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0163】
一般式(I−a)中、前記X1は、単結合またはメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが粘度低減の観点からより好ましい。X2の好ましい範囲は、前記X1の好ましい範囲と同様である。
【0164】
R1は上記の一般式(I)におけるとR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。重合性単量体(Ax)は25℃において液体であると、添加量を増やした際にも異物の発生が抑制でき好ましい。重合性単量体(Ax)は25℃における粘度が70mPa・s未満であることがパターン形成性の観点から好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、30mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0165】
以下の〔化3〕に好ましい重合性単量体(Ax)の具体例を示す。R1は一般式(I)におけるR1と同義である。R1としては硬化性の観点から、水素原子が好ましい。
【0166】
【化3】
【0167】
これらの中でも、以下の〔化4〕に示す化合物が25℃において液体であり、かつ、低粘度で、さらに良好な硬化性を示し、特に好ましい。
【0168】
【化4】
【0169】
レジスト組成物においては、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、必要に応じて重合性単量体(Ax)と、以下に説明する重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体と、を併用することが好ましい。
【0170】
(他の重合性単量体)
他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましい。
【0171】
これらの他の重合性単量体のうち、インプリント適性とドライエッチング耐性、硬化性、粘度等の観点から、特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物をより好ましく含むことが出来る。更に他に含むことが出来る前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
【0172】
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
【0173】
これらの中で特に、芳香族構造および/または脂環炭化水素構造を有する単官能(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性を改善する観点から好ましい。具体例ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、が特に好ましい。
【0174】
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0175】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0176】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0177】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0178】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0179】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)の具体例として、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などが挙げられる。
【0180】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0181】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0182】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry ofheterocyclic compounds−Small RingHeterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,AnInterscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報明細書、特許第2906245号公報明細書、特許第2926262号公報明細書などの文献を参考にして合成できる。
【0183】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0184】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0185】
また、他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0186】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0187】
他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0188】
(含フッ素重合性界面活性剤)
含フッ素重合性界面活性剤としては、フッ素原子を有する官能基を少なくとも1つと、重合性官能基を少なくとも1つ有する単量体又はオリゴマー等の重合性化合物であれば特に制限されないが、良好なパターン形成を可能にする上で、重合性化合物と重合しやすい立体配置を有するものであることが好ましい。
【0189】
本例に示すインプリントシステムでは、含フッ素重合性界面活性剤は、レジストパターンの一部となるため、良好なパターン形成性、硬化後のモールド離型性及びエッチング耐性の良好なレジスト特性を有するものであることが好ましい。
【0190】
含フッ素重合性界面活性剤の含有量は、レジスト組成物中、例えば、0.001質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上4質量%以下であり、さらに好ましくは、0.005質量%以上3質量%以下である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001質量%以上5質量%以下の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化や、インプリント後のエッチング工程におけるエッチング適性の劣化を招きにくい。
【0191】
含フッ素重合性界面活性剤は、その側鎖、特に末端に重合性基を有していることが好ましい。重合性官能基としては、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基などのラジカル重合性官能基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合性官能基などが挙げられ、ラジカル重合性官能基が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリレート基等のエチレン不飽和結合基である。
【0192】
含フッ素重合性界面活性剤のフッ素原子を有する基としては、フロロアルキル基およびフロロアルキルエーテル基から選ばれる含フッ素基が好ましい。フロロアルキル基としては、炭素数が2以上のフロロアルキル基であることが好ましく、4以上のフロロアルキル基であることがより好ましく、上限値としては特に定めるものではないが、20以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。最も好ましくは炭素数4〜6のフロロアルキル基である。前記好ましいフロロアルキル基としては、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ヘキサフロロイソプロピル基、ノナフロロブチル基、トリデカフロロヘキシル基、ヘプタデカフロロオクチル基が挙げられる。
【0193】
本例に示すインプリントシステムにおいて、含フッ素重合性界面活性剤は、トリフロロメチル基構造を有するフッ素原子を有する重合性化合物であることが好ましい。すなわち、フロロアルキル基の少なくとも1つは、トリフロロメチル基構造を含有することが好ましい。トリフロロメチル基構造を有することで、少ない添加量(例えば、10質量%以下)でも本願発明の効果が発現し、表面エネルギーが低下して離型性が向上する。
【0194】
フロロアルキルエーテル基としては、フロロアルキル基の場合と同様に、トリフロロメチル基を有しているものが好ましく、パーフロロエチレンオキシ基、パーフロロプロピレンオキシ基を含有するものが好ましい。−(CF(CF3)CF2O)−などのトリフロロメチル基を有するフロロアルキルエーテルユニットおよび/またはフロロアルキルエーテル基の末端にトリフロロメチル基を有するものが好ましい。
【0195】
本例に示すインプリントシステムにおいて、含フッ素重合性界面活性剤の特に好ましい態様は、フロロアルキル基およびフロロアルキルエーテル基から選ばれる含フッ素基を少なくとも2つ含有し、かつ、該含フッ素基の少なくとも2つは、炭素数2以上の連結基により隔てられている重合性単量体である。すなわち、該重合性単量体が含フッ素基を2つ有する場合は、その2つの含フッ素基は炭素数2以上の連結基で隔てられており、重合性単量体が含フッ素基を3つ以上有する場合は、このうち少なくとも2つが炭素数2以上の連結基で隔てられており、残りの含フッ素基はどのような結合形態を有していてもよい。炭素数2以上の連結基はフッ素原子で置換されていない炭素原子を少なくとも2つ有する連結基である。
【0196】
同様の観点から、トリフロロメチル基構造を3つ以上含有する重合性単量体も好ましく、トリフロロメチル基構造を3〜9個、さらに好ましくは4〜6個含有する重合性単量体が好ましい。トリフロロメチル基構造を3つ以上含有する化合物としては1つの含フッ素基に2つ以上のトリフロロメチル基を有する分岐のフロロアルキル基、例えば、‐CH(CF3)2基、‐C(CF3)3、‐CCH3(CF3)2CH3基などのフロロアルキル基を有する化合物が好ましい。
【0197】
フロロアルキルエーテル基としては、トリフロロメチル基を有しているものが好ましく、パーフロロエチレンオキシ基、パーフロロプロピレンオキシ基を含有するものが好ましい。−(CF(CF3)CF2O)−などのトリフロロメチル基を有するフロロアルキルエーテルユニットおよび/またはフロロアルキルエーテル基の末端にトリフロロメチル基を有するものが好ましい。
【0198】
炭素数2以上の連結基中に含まれる官能基としては、アルキレン基、エステル基、スルフィド基およびアリーレン基が例示され、少なくとも、エステル基および/またはスルフィド基を有することがより好ましい。
【0199】
炭素数2以上の連結基は、アルキレン基、エステル基、スルフィド基、アリーレン基およびこれらの組み合わせが好ましい。これらの基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基を有していても良い。
【0200】
含フッ素重合性界面活性剤が有する全フッ素原子の数は、1分子当たり、6個以上60個以下が好ましく、より好ましくは9個以上40個以下、さらに好ましくは12個以上40個以下である。含フッ素重合性界面活性剤は、下記に定義するフッ素含有率が20%以上60%以下のフッ素原子を有する重合性化合物であることが好ましく、含フッ素重合性界面活性剤が重合性単量体の場合、より好ましくは30%以上60%以下であり、さらに好ましくは35%以上60%以下である。含フッ素重合性界面活性剤が重合性基を有するオリゴマーの場合、フッ素含有率がより好ましくは20%以上50%以下であり、さらに好ましくは20%以上40%以下である。フッ素含有率を適性範囲とすることで他成分との相溶性に優れ、モールド汚れを低減でき且つ、離型性との両立が可能となり、本発明の効果である繰り返しパターン形成性が向上する。本明細書中において、前記フッ素含有率は、次式〔数1〕で表される。
【0201】
【数1】
【0202】
含フッ素重合性界面活性剤の好ましい形態の一つとしては、フッ素原子を有する基の好ましい一例として、下記の〔化5〕に示す一般式(II−a)で表される部分構造を有する化合物(単量体)が挙げられる。このような部分構造を有する化合物を採用することにより、繰り返しパターン転写を行ってもパターン形成性に優れ、かつ、組成物の経時安定性が良好となる。
【0203】
【化5】
【0204】
但し、上記一般式(II−a)中、nは1〜8の整数を表し、好ましくは4〜6の整数である。
【0205】
含フッ素重合性界面活性剤の好ましい他の一例として、以下の〔化6〕に示す一般式(IV)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。もちろん、一般式(II)で表される部分構造と、一般式(II−b)で表される部分構造の両方を有していてもよい。
【0206】
【化6】
【0207】
但し、上記の一般式(II−b)中、L1は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を表し、L2は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、m1およびm2はそれぞれ、0または1を表し、m1およびm2の少なくとも一方は1である。m3は1〜3の整数を表し、pは1〜8の整数を表し、m3が2以上のとき、それぞれの、−CpF2p+1は同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0208】
L1およびL2は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。また、アルキレン基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していてもよい。m3は、好ましくは1または2である。pは4〜6の整数が好ましい。
【0209】
好ましくは、以下の〔化7〕に示す一般式(II−c)で表される重合性単量体である。
【0210】
【化7】
【0211】
但し、上記の一般式(II−c)中、R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、Aは(a1+a2)価の連結基を表し、a1は1〜6の整数を表す。a2は2〜6の整数を表し、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜8のアルキレン基を表す。m1及びm2はそれぞれ、0又は1を表し、m1及びm2の少なくとも一方は1である。m3は1〜3の整数を表す。m4及びm5はそれぞれ、0または1を表し、m4及びm5の少なくとも一方は1であり、m1及びm2の両方が1のとき、m4は1である。nは1〜8の整数を表す。
【0212】
また、R1は、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。Aは好ましくはアルキレン基および/またはアリーレン基を有する連結基であり、さらにヘテロ原子を含む連結基を含有していても良い。ヘテロ原子を有する連結基としては−O−、−C(=O)O−、−S−、−C(=O)−が挙げられる。これらの基は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していても良いが、有していない方が好ましい。Aは、炭素数2〜50であることが好ましく、炭素数4〜15であることがより好ましい。
【0213】
a1は、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1または2である。a2は、好ましくは2または3、さらに好ましくは2である。a1が2以上のとき、それぞれのAは同一であってもよいし、異なっていてもよい。a2が2以上のとき、それぞれのR2、R3、m1、m2、m3、m4、m5およびnは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0214】
本例に示すインプリントシステムに適用される含フッ素重合性界面活性剤として用いる重合性単量体の分子量は、好ましくは500以上2000以下である。また、該重合性単量体の粘度は、好ましくは600以上1500以下であり、より好ましくは600以上1200以下である。
【0215】
次に、含フッ素重合性界面活性剤として用いる重合性単量体の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の〔化8〕に示す化学式中におけるR1はそれぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子およびシアノ基のいずれかである。
【0216】
【化8】
【0217】
また、その他の含フッ素重合性界面活性剤として用いる重合性単量体としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する単官能重合性化合物が挙げられる。また、前記フッ素原子を有する重合性化合物としては、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロペンタンジ(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフロロヘキサンジ(メタ)アクリレートなどのフロロアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを有する2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物も好ましい例として挙げられる。
【0218】
また、含フッ素基例えばフロロアルキル基、フロロアルキルエーテル基を1分子中に2つ以上有する化合物も好ましく用いることができる。
【0219】
フッ素原子を有する重合性化合物がオリゴマー等である場合、上記重合性単量体を繰り返し単位として含有するものが好ましい。
【0220】
そのほか、特開2006−114882号公報明細書の段落〔0018〕〜〔0048〕に記載の化合物、特開2008−95037号公報明細書の段落〔0027〕〜〔0035〕に記載の含フッ素重合性化合物等を界面活性剤として使用することができる。
【0221】
(重合開始剤I)
重合開始剤Iとしては、レジスト組成物を硬化させる際に用いる光L1により活性化してレジスト組成物に含まれる重合性化合物の重合を開始する活性種を発生するものであれば特に制限されない。重合開始剤Iとしては、ラジカル重合開始剤が好ましい。また、本発明において、重合開始剤Iは複数種を併用してもよい。
【0222】
重合開始剤Iとしては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましく、例えば、特開平2008−105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
【0223】
重合開始剤Iの含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01質量%以上15質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上12質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上7質量%以下である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0224】
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0225】
これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤の添加量が種々検討されてきたが、インプリント用等の光インプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、開始剤がラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、レジスト組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0226】
本例に示すインプリントシステムに適用されるレジストに含有するラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィン系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
【0227】
なお、光L1には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波の他に、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0228】
光重合開始剤Iは、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、レジスト組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させてしまったりするなどの問題を生じる。
【0229】
レジスト組成物では、含まれる重合性単量体がラジカル重合性単量体であり、光重合開始剤Iが光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0230】
(その他成分)
既に述べたように、本例に示すインプリントシステムに適用されるレジスト組成物は、上述の重合性化合物、含フッ素重合性界面活性剤、及び光重合開始剤Iの他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。以下にその他の成分について概要を説明する。
【0231】
(酸化防止剤)
レジスト組成物では、公知の酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤の含有量は、重合性単量体に対し、例えば、0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以上5質量%以下である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。
【0232】
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0233】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0234】
(重合禁止剤)
レジスト組成物は、重合禁止剤を少量含有することが好ましい。重合禁止剤の含有量としては、全重合性単量体に対し、0.001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下、さらに好ましくは0.008質量%以上0.05質量%以下である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。
【0235】
(溶剤)
レジスト組成物は、必要に応じて、種々の溶剤を含むことができる。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜280℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
【0236】
レジスト組成物中の溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性改善の観点から、全組成物中0〜99質量%が好ましく、0〜97質量%がさらに好ましい。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には20質量%以上99質量%以下が好ましく、40質量%以上9質量%以下がさらに好ましく、70質量%以上98質量%以下が特に好ましい。
【0237】
(ポリマー成分)
レジスト組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
【0238】
レジスト組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点から、ポリマー成分を含有していてもよい。かかるポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2000以上100000以下が好ましく、5000以上50000以下がさらに好ましい。
【0239】
ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。パターン形成性の観点から、レジスト組成物において、溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量%以下である方が好ましい。樹脂成分はできる限り少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0240】
レジスト組成物には、上記した成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0241】
レジスト組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。また、各成分を混合した後、例えば、孔径0.003μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することもできる。光インプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0242】
レジスト組成物において、溶剤を除く成分の25℃における粘度は1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは3mPa・s以上50mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以上30mPa・s以下である。粘度を適切な範囲とすることで、パターンの矩形性が向上し、さらに残膜を低く抑えることができる。
【実施例】
【0243】
〔レジスト組成物R1A〕
・重合性化合物(1,4−ジアクロイルオキシメチルベンゼン,2’―ナフチルメチルアクリレート 各49g)
・含フッ素重合性界面活性剤(Ax−2)1.0g
・光重合開始剤(エチル2,4,6−トリエチルベンゾインフェニルホスフィネート)(Irgacure 379、BASF社製) 1.0g
〔レジスト組成物R2〕
・重合性化合物(TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート(アロニックスM220(東亞合成株式会社製))) 98.0g
・含フッ素重合性界面活性剤(Ax−2)1.0g
・光重合開始剤(エチル2,4,6−トリエチルベンゾインフェニルホスフィネート)(Irgacure 379、BASF社製) 1.0g
以上、本発明に係るナノインプリントシステム及び装置、方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
【0244】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0245】
(発明1):基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御する打滴制御手段と、を備えたことを特徴とする液体塗布装置。
【0246】
本発明によれば、ノズル及びノズルに対応する圧電素子がグループ化され、グループごとに打滴制御が行われるので、ノズルや圧電素子の固体バラつきに起因する打滴密度の粗密の発生を抑制し得る。
【0247】
本発明における「機能性を有する液体」とは、基板上に微細パターンを形成し得る機能性材料の成分を含有する液体であり、その一例としてレジスト液などの光硬化樹脂液や、加熱により硬化する熱硬化樹脂液などが挙げられる。
【0248】
液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化される一例として、各ノズルと連通する液室の配置、形状、構造、該液室と連通する液供給路の配置、形状、構造などにより各ノズルをグループ化する態様が挙げられる。
【0249】
(発明2):発明1に記載の液体塗布装置において、前記液体吐出ヘッドは、前記複数の液室が前記複数のノズルから成るノズル列をはさんで前記ノズル列の両側に配置される構造を有し、前記打滴制御手段は、前記ノズル列の一方の側に配置される第1の液室と連通する第1のノズル群を第1のグループとし、前記ノズル列の他方の側に配置される第2の液室と連通する第2のノズル群を第2のグループとして、該グループごとに圧電素子の動作を制御することを特徴とする。
【0250】
かかる態様によれば、複数の液室がノズル列をはさんで両側に配置される構造を有する液体吐出ヘッドにおいて、連通される液室の配置構造に応じてノズルをグループ化することで、液流路と各ノズルとの間の流路抵抗などの流路構造に起因する吐出特性のバラつきを回避することができ、液体の配置密度を最適化することができる。
【0251】
(発明3):発明2に記載の液体塗布装置において、前記液体吐出ヘッドは、前記第1のノズル群に含まれるノズルと前記第2のノズル群に含まれるノズルは交互に配置される構造を有することを特徴とする。
【0252】
かかる態様における液体吐出ヘッドの構造例として、ノズル列をはさんで両側に液供給路が設けられる構造が挙げられる。
【0253】
(発明4):発明2又は3に記載の液体塗布装置において、前記第1の液室及び前記第2の液室はノズルごとに区画された構造を有し、前記圧電素子は、前記第1の液室又は前記第2の液室に対して一体の圧電体部と、ノズルごとの区画に対応して形成された電極を有することを特徴とする。
【0254】
かかる態様によれば、第1の液室に具備される圧電素子と、第2の液室に具備される圧電素子の固体差に起因する打滴のバラつきが回避される。
【0255】
かかる態様の具体例として、櫛歯状の共通電極と、共通電極の櫛歯形状の中に位置し、ノズル(区画)の位置に対応して設けられる個別電極と、を備える態様が挙げられる。
【0256】
(発明5):発明1乃至4のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記基板の前記機能性を有する液体が着弾する面と平行な面内において、前記ヘッドを回転させるヘッド回転手段と、前記ヘッド回転手段により前記ヘッドを回転させて、前記相対移動手段の相対移動方向と略直交する方向における打滴密度を変更する打滴密度変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【0257】
かかる態様によれば、ノズルの配列方向について、ノズル配置間隔未満の範囲でノズルの配列方向における打滴位置の微調整ができ、打滴パターンに対応した平均塗布量の可変が可能である。
【0258】
かかる態様において、すべてのノズルが一体的に回転するように液体吐出ヘッドを構成することで、打滴密度の不連続点が生じることを回避し得る。
【0259】
(発明6):発明請求項1乃至5の何れかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、前記相対移動手段の相対移動方向と略平行方向における打滴ピッチを最小打滴ピッチ未満の範囲で可変させるように、前記圧電素子を動作させることを特徴とする。
【0260】
かかる態様によれば、相対移動手段の移動方向について、打滴パターンに対応した平均塗布量の可変が可能である。
【0261】
かかる態様において、圧電素子に印加される駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段を備え、該駆動電圧生成手段は、駆動電圧が有する周期を変更可能に構成されることが好ましい。
【0262】
発明5に係る打滴密度変更手段による打滴密度の変更を行う場合は、発明6に係る打滴密度の変更を行うことが好ましい。
【0263】
(発明7):発明6のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、最小打滴周期未満の範囲で前記圧電素子を動作させるタイミングを変化させることを特徴とする。
【0264】
かかる態様によれば、相対移動手段の相対移動方向について、所定の最小打滴間隔未満の範囲で同方向における打滴位置の微調整が可能である。
【0265】
かかる態様における具体例として、最小打滴周期未満の遅延時間を生成する遅延時間生成手段を備え、該遅延時間生成手段によって生成された遅延時間を所定の打滴周期に付加する態様が挙げられる。
【0266】
(発明8):発明1乃至7のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、最小打滴周期未満の遅延時間を付加して前記圧電素子を動作させるタイミングを遅延させることを特徴とする。
【0267】
かかる態様において、最小打滴周期未満の遅延時間を生成する遅延時間生成手段を備える態様が好ましい。
【0268】
(発明9):発明1乃至8のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の波形をグループごとに変更することを特徴とすることを特徴とする。
【0269】
かかる態様によれば、駆動電圧の波形を変更することで、圧電素子の個体バラつき(厚み、圧電定数、ヤング率等)に伴う打滴液滴量のバラつきを補正することが可能である。
【0270】
かかる態様の具体例として、グループごとの吐出特性に応じて駆動電圧の波形を変更する態様が挙げられる。
【0271】
(発明10):発明1乃至9のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の最大電圧をグループごとに変更することを特徴とする。
【0272】
かかる態様によれば、駆動電圧の最大値に応じてグループごとに打滴液滴量を変更することができ、グループ間の打滴液滴量が均一化される。
【0273】
(発明11):発明1乃至10のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の最大振幅部分の幅をグループごとに変更することを特徴とする。
【0274】
かかる態様によれば、グループごとに駆動電圧の最大振幅部分における幅(すなわち、パルス幅)を変更することができ、グループ間の打滴液滴量を均一化される。
【0275】
かかる態様における「最大振幅部分」の一例として、圧電素子を引き‐押し駆動させる駆動電圧における、引き動作が維持される状態に対応する部分が含まれる。
【0276】
(発明12):発明1乃至11のいずれかに記載の液体塗布装置において、グループごとの打滴回数を計測する打滴回数計測手段と、前記計測されたグループごとの打滴回数を記憶する打滴回数記憶手段を備えることを特徴とする。
【0277】
かかる態様によれば、グループごとに打滴回数を把握することができ、打滴制御へのフィードバックが可能となる。
【0278】
(発明13):発明12に記載の液体塗布装置において、前記打滴回数記憶手段の記憶結果に基づいて、いずれのグループのノズルを用いて打滴を行うかを選択する選択手段を備え、前記打滴制御手段は、前記選択手段の選択結果に基づいて、前記圧電素子の動作を制御することを特徴とする。
【0279】
かかる態様によれば、グループごとの使用頻度(打滴頻度)を均一化させることができ、液体吐出ヘッドの耐久性向上に寄与する。
【0280】
(発明14):発明1乃至13のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルが略正方形の平面形状を有するとともに、該正方形の辺方向が前記ノズルの配列方向と略平行になるように配置される構造を有し、ノズルの対角線の方向に対して略45°の方向について、打滴された液滴を観察する観察手段を備えたことを特徴とする。
【0281】
かかる態様によれば、観察手段の観察結果を用いたグループの選択が可能となる。
【0282】
かかる態様において、観察手段の観察結果を用いてグループごとにノズルの異常の有無を判断する判断手段を備える態様が好ましい。
【0283】
(発明15):基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと前記基板とを相対的に移動させ、所定の打滴周期で前記圧電素子を動作させて、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させる液体塗布方法において、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御することを特徴とする液体塗布方法。
【0284】
本発明において、打滴密度を可変させる打滴密度可変工程を備える態様が好ましい。また、グループごとに打滴回数を計測する打滴回数計測工程と、計測された打滴回数を記憶する記憶工程を含む態様が好ましい。
【0285】
(発明16):基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御する打滴制御手段と、型に形成された凹凸パターンを転写する転写手段と、を備えたことを特徴とするナノインプリントシステム。
【0286】
本発明は、サブミクロンの微細パターンを形成するナノインプリントリソグラフィに特に好適である。また、本発明おける各手段を備えたインプリント装置とすることも可能である。
【0287】
(発明17):発明16に記載のナノインプリントシステムにおいて、前記転写手段は、前記型の凹凸パターンが形成されている面を、前記基板の液体が塗布された面に押し当てる押圧手段と、前記型と前記基板との間の液体を硬化させる硬化手段と、前記型と前記基板とを剥離させる剥離手段と、を備えたことを特徴とする。
【0288】
(発明18):発明16又は17に記載のナノインプリントシステムにおいて、前記転写手段による転写の後に、前記型を前記基板から剥離させる剥離手段と、凹凸パターンが転写され硬化させた液体から成る膜をマスクとして、前記型の凹凸パターンに対応するパターンを前記基板に形成するパターン形成手段と、前記膜を除去する除去手段と、を備えたことを特徴とする。
【0289】
かかる態様によれば、好ましいサブミクロンの微細パターンが形成される。
【符号の説明】
【0290】
10,102…基板、12,110…インクジェットヘッド、14…液滴、16,112…モールド、18…光硬化性樹脂膜、20,22,24,28…凸部、26…凹部、100…ナノインプリントシステム、104…レジスト塗布部、106…パターン転写部、108…搬送部、114…紫外線照射装置、120,120A,120B…ノズル、121,121’、121”…圧電素子、122,122A,122B…液室、172…システムコントローラ、180…打滴制御部、184…ヘッドドライバー、192…センサ、194…カウンター、404…波形生成部、405…ディレイデータ生成部
【技術分野】
【0001】
本発明は液体塗布装置及び液体塗布方法並びにナノインプリントシステムに係り、特に、インクジェット方式により基板等の媒体上に機能性を有する液体を付与する液体付与技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化、高集積化に伴い、基板上に微細構造を形成するための技術として、基板上に塗布したレジスト(UV硬化性樹脂)に転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたスタンパを押し当てた状態で紫外線を照射してレジストを硬化させ、スタンパを基板上のレジストから分離(離型)することで、スタンパに形成された微細パターンを基板(レジスト)へ転写するナノインプリントリソグラフィ(NIL)が知られている。
【0003】
特許文献1,2は、インクジェット方式を用いて基板にインプリント材の液体を付与するシステムを開示している。特許文献1,2に記載のシステムは、一定量の液体を基板上に分配する際にパターンやインプリント材(レジスト)の揮発量に応じて打滴密度や打滴量を変更して打滴量を最適化し、スループットの向上、残渣厚の均一化を図る旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−502157号公報
【特許文献2】特開2009−88376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2は、どのような打滴配置が好ましいものであるかについて、そのアルゴリズムを開示するのみであり、理想的な打滴密度や打滴量を実現するためのハードウエア等の具体的な構成は開示されていない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクジェット方式による基板への機能性液の打滴が最適化され、好ましい微細パターンを形成し得る液体塗布装置及び液体塗布方法並びにナノインプリントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体塗布装置は、基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御する打滴制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノズル及びノズルに対応する圧電素子がグループ化され、グループごとに打滴制御が行われるので、ノズルや圧電素子の固体バラつきに起因する打滴密度の粗密の発生を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るインプリントシステムの各工程を説明する図
【図2】シリコンモールドの凹凸パターンを説明する図
【図3】液滴の配置及び拡張を説明する図
【図4】液滴の配置及び拡張の他の態様を説明する図
【図5】液滴の配置のさらに他の態様を説明する図
【図6】本発明に係るインプリントシステムの全体構成図
【図7】図1に示すインプリントシステムに適用されるヘッドの平面図
【図8】図7に示すヘッドの立体的構成を示す断面図
【図9】図7に示すヘッドの立体的構成を示す分解斜視図
【図10】図7に示すヘッドに適用される圧電素子の動作モードを説明する図
【図11】図7に示すヘッドに適用される圧電素子の電極のパターンを示す図
【図12】図6に示すインプリントシステムの制御系を示す要部ブロック図
【図13】図7に示すヘッドに適用される駆動電圧の一例を説明する図
【図14】図6に示すインプリントシステムに適用されるx方向の打滴密度の変更を説明する図
【図15】図14に示す打滴密度変更の他の態様を説明する図
【図16】図7に示すヘッドに適用される駆動電圧の他の例を説明する図
【図17】図6に示すインプリントシステムに適用される駆動信号生成部の概略構成を示すブロック図
【図18】図17に示す駆動信号生成部の他の態様を示すブロック図
【図19】y方向の打滴位置の微調整を説明する図
【図20】図7に示すヘッドに適用される吐出検査を説明する図
【図21】図8に示すヘッドに係るノズルの製造方法の一例を説明する図
【図22】図22に示す製造方法により製造されたノズルの拡大斜視図
【図23】ノズル面に形成される撥液膜の評価実験の結果を示す図
【図24】シリコンモールド(原盤)の製造工程を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0011】
〔ナノインプリント方法の説明〕
まず、図1(a)〜(f)を用いて、本発明の実施形態に係るナノインプリント方法について、工程順を追って説明する。本例に示すナノインプリント方法は、モールド(例えば、Siモールド)に形成された凹凸パターンを、基板(石英基板等)上に形成された機能性を有する液体(光硬化性樹脂液)を硬化させた光硬化性樹脂膜に転写し、該光硬化性樹脂膜をマスクパターンとして基板上に微細パターンを形成するものである。
【0012】
まず、図1(a)に示す石英基板10(以下、単に「基板」と記載する。)を準備する。図1(a)に示す基板10は、表側面10Aにハードマスク層11が形成されており、この表側面10Aに微細パターンが形成される。基板10は、紫外線などの光を透過させる所定の透過性を有し、厚みが0.3mm以上であればよい。光透過性を有することで基板10の裏側面10Bからの露光が可能となる。
【0013】
Siモールドを用いる場合に適用される基板10として、表面をシランカップリング剤で被覆したもの、Cr、W、Ti、Ni、Ag、Pt、Auなどからなる金属層を積層したもの、CrO2、WO2、TiO2などからなる金属酸化膜層を積層したもの、これらの積層体の表面をシランカップリング剤で被覆したものなどが挙げられる。
【0014】
すなわち、図1(a)に図示したハードマスク層11は、上記の金属膜や金属酸化膜等の積層体(被覆材)が用いられる。積層体の厚みが30nmを超えると光透過性が低下してしまい、光硬化性樹脂の硬化不良が起こりやすいので、該積層体の厚みは30nm以下であり、好ましくは20nm以下である。
【0015】
「所定の透過性」とは、基板10の裏側面10Bから照射した光が表側面10Aから出射して、表面に形成される機能性を有する液体(例えば、図1(c)に符号14を付して図示した光硬化性樹脂を含有する液体)を十分に硬化させることができればよく、例えば、裏側面から照射された波長200nm以上の光の光透過率が5%以上であるとよい。
【0016】
また、基板10の構造は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。基板10の材質は、石英以外にも、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂、などを適宜用いることができる。これらの材料は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を適宜合成して併用してもよい。
【0017】
基板10の厚みは0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。基板10の厚みが0.05mm未満であると、被パターン形成体とモールドとの密着時に基板側に撓みが発生し、均一な密着状態を確保できない可能性がある。また、ハンドリングやインプリント中の押圧による破損を避けることを考慮して、基板10の厚みを0.3mm以上とするとより好ましい。
【0018】
基板10の表側面10Aに対して、インクジェットヘッド12から光硬化性樹脂を含有する複数の液滴14が離散的に打滴される(図1(b):打滴工程)。詳細は後述するが、ここでいう「離散的に打滴される液滴」とは、基板10上における隣接する打滴位置に着弾した他の液滴と接触せずに、所定の間隔を空けて着弾した複数の液滴を意味している。
【0019】
図1(b)に示す打滴工程において、予め液滴14の打滴量、打滴密度、液滴の吐出(飛翔)速度が設定(調整)される。例えば、液滴量及び打滴密度は、モールド(図1(c)符号16を付して図示)の凹凸パターンの凹部の空間体積が大きい領域では相対的に大きくされ、凹部の空間体積が小さい領域や凹部がない領域では相対的に小さくされるように調整される。調整後、所定の打滴配置(パターン)に従って、基板10上に液滴14が配置される。
【0020】
本例に示すナノインプリント方法は、インクジェットヘッド12に具備される複数のノズル(図7に符号120を付して図示)が、インクジェットヘッド12の構造に対応してグループ化され、グループごとに液滴14の打滴が制御される。また、モールドの凹凸パターンに応じて、基板10の表側面10Aにおける互いに略直交する2方向について液滴14の打滴密度が変更される。さらに、グループごとに打滴回数が計測され、各グループの打滴頻度が均一化されるように各グループの打滴が制御される。かかる打滴制御の詳細は後述する。
【0021】
図1(b)に示す打滴工程の後に、凹凸パターンが形成されたモールド16の凹凸パターン面を基板10の表側面10Aに所定の押圧力によって押し付けて基板10上の液滴14を拡張させ、拡張させた複数の液滴14の結合からなる光硬化性樹脂膜18が形成される(図1(c):光硬化性樹脂膜形成工程)。
【0022】
光硬化性樹脂膜形成工程では、モールド16と基板10との間の雰囲気を減圧または真空雰囲気にした後に、モールド16を基板10押し付けることで残留気体を低減させることができる。ただし、高真空雰囲気下では硬化前の光硬化性樹脂膜18が揮発してしまい、均一な膜厚を維持することが困難となる可能性がある。そこで、モールド16と基板10との間の雰囲気を、ヘリウム(He)雰囲気または減圧He雰囲気にすることで残留気体を低減するとよい。Heは石英基板10を透過するため、取り込まれた残留気体(He)は徐々に減少する。Heの透過には時間を要すため減圧He雰囲気とすることがより好ましい。
【0023】
モールド16の押圧力は、100kPa以上10MPa以下の範囲とされる。押圧力が相対的に大きい方が樹脂の流動が促進され、また残留気体の圧縮、残留気体の光硬化性樹脂への溶解や、基板10中のHeの透過が促進され、タクトアップにつながる。しかし、押圧力が大きすぎるとモールド16が基板10に接触するときに異物を噛みこんでしまい、モールド16及び基板10を破損してしまう可能性があるので、モールド16の押圧力は上記範囲とされる。
【0024】
モールド16の押圧力の範囲は、より好ましくは100kPa以上5MPa以下であり、更に好ましくは100kPa以上1MPa以下である。100kPa以上としたのは、大気中でインプリントを行う際、モールド16と基板10との間が液滴14で満たされているためであり、モールド16と基板10との間が大気圧(約101kPa)で加圧されているためである。
【0025】
その後、基板10の裏側面10Bから紫外線を照射して、光硬化性樹脂膜18に対する露光が行われ、光硬化性樹脂膜18を硬化させる(図1(c):光硬化性樹脂膜硬化工程)。本例では、光(紫外線)によって光硬化性樹脂膜18を硬化させる光硬化方式を例示したが、熱硬化性樹脂を含有する液体を用いて熱硬化性樹脂膜を形成し、加熱によって熱硬化性樹脂膜を硬化させる熱硬化方式など、他の硬化方式を適用してもよい。
【0026】
光硬化性樹脂膜18が十分に硬化した後に、光硬化性樹脂膜18からモールド16を剥離させる(図1(d):剥離工程)。モールド16を剥離させる方法は、光硬化性樹脂膜18のパターンに欠損が生じにくい方法であればよく、基板10の縁部から徐々に剥離させる方法や、モールド16の側から加圧しながら剥離させ、モールド16が光硬化性樹脂膜18から剥離する境界線上での光硬化性樹脂膜18へかかる力を低減させて剥離する方法(加圧剥離法)などの方法を用いることができる。さらに、光硬化性樹脂膜18の近傍を加温し、モールド16と光硬化性樹脂膜18との界面での光硬化性樹脂膜18とモールド16の表面との付着力を低減させ、かつ、光硬化性樹脂膜18のヤング率を低下させて、かつ、脆性が良化させて変形による破断を抑制して剥離する方法(加熱アシスト剥離)を適用することも可能である。なお、上記の方法を適宜組み合わせた複合的手法を用いてもよい。
【0027】
図1(a)〜(d)に示す各工程を経て、基板10の表側面10Aに形成された光硬化性樹脂膜18にモールド16に形成された凹凸パターンが転写される。基板10上に形成された光硬化性樹脂膜18は、モールド16の凹凸形状や光硬化樹脂を含有する液体の液物性に対応して、光硬化性樹脂膜18となる液滴14の打滴密度が最適化されているので、残渣厚が均一化され、欠損のない好ましい凹凸パターンが形成される。次に、光硬化性樹脂膜18をマスクとして基板10(又は基板10に被覆させた金属膜等)に微細パターンが形成される。
【0028】
基板10上の光硬化性樹脂膜18の凹凸パターンが転写されると、光硬化性樹脂膜18の凹部内の光硬化性樹脂が除去され、基板10の表側面10A、又は表側面10Aに形成される金属層等を露出させる(図1(e):アッシング工程)。
【0029】
さらに、光硬化性樹脂膜18をマスクとしてドライエッチングが行われ(図1(f):エッチング工程)、光硬化性樹脂膜18が除去されると、光硬化性樹脂膜18に形成された凹凸パターンに対応した微細パターン10Cが基板10上に形成される。なお、基板10の表側面10Aに金属膜や金属酸化膜が形成される場合は、金属膜又は金属酸化膜に対して所定のパターンが形成される。
【0030】
ドライエッチングの具体例としては、光硬化性樹脂膜をマスクとして用いることができればよく、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、などが挙げられる。これらの中でも、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)が特に好ましい。
【0031】
イオンミリング法は、イオンビームエッチングとも言われ、イオン源にArなどの不活性ガスを導入し、イオンを生成する。これを、グリッドを通して加速させ、試料基板に衝突させてエッチングするものである。イオン源としては、カウフマン型、高周波型、電子衝撃型、デュオプラズマトロン型、フリーマン型、ECR(電子サイクロトロン共鳴)型などが挙げられる。イオンビームエッチングでのプロセスガスとしては、Arガス、RIEのエッチャントとしては、フッ素系ガスや塩素系ガスを用いることができる。
【0032】
以上のように、本例に示すナノインプリント方法を用いた微細パターンの形成は、モールド16の凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂膜18をマスクとして、残膜の厚みムラおよび残留気体による欠陥のない当該マスクを用いてドライエッチングを行っているので、高精度で歩留まりよく基板10に微細パターンを形成することが可能となる。
【0033】
なお、上述したナノインプリント法を適用して、ナノインプリント法に用いられる石英基板のモールドを作製することも可能である。
【0034】
〔モールドの凹凸パターンの説明〕
図2(a)〜(e)は、図1(c)に示すモールド16の凹凸パターンの具体例を示す図である。図2(a)は、A方向について略同一の長さを有する複数の凸部20が、A方向と略直交するB方向について所定の間隔で等間隔に並べられた態様を示す図である。図2(b)は、A方向について適宜分割された凸部22を有する態様を示す図であり、図2(c)は、図2(a)に示す凸部20よりもA方向について短い長さを有する複数の凸部24が、A方向及びB方向について所定の間隔で等間隔に並べられた態様(略同一形状の凸部24がA方向及びB方向について等間隔に整列している態様)を示す図である。
【0035】
かかる形状を有する凸部20,22,24が形成されたモールド16を使用すると、液滴14(図1(b)参照)は凸部20間の凹部26を伝って凹部26の方向(A方向)に拡張しやすくなるために異方性が生じ、拡張した液滴の形状が略楕円形状となる。
【0036】
図2(d)は、略円形状の平面形状を有する凸部28が、A方向について等間隔に配置されるとともに、B方向についても等間隔に配置され、さらに、(A方向の配置ピッチ)<(B方向の配置ピッチ)となるように、A方向についてB方向よりも密に配置された態様を示す図である。かかる形状及び配置パターンを有する凸部28が形成されたモールド16を使用する場合にも、液滴14がA方向について拡張しやすくなるために異方性が生じ、拡張した液滴の形状が略楕円形状となる。
【0037】
一方、図2(e)は、略円形状の平面形状を有する凸部28が、A方向及びB方向について、(A方向の配置ピッチ)=(B方向の配置ピッチ)となるように等間隔に配置された態様を示す図である。図2(e)に示す形状を有する凸部28が形成されたモールド16を使用すると、液滴14の拡張に異方性が明確に現れない。
【0038】
なお、図2(a)〜(d)では、凸部20(22,24,28)が直線状に形成又は配列された態様を示したが、これらは曲線状に形成(配置)されてもよいし。蛇行するように形成(配置)されてもよい。また、凸部20(22,24,28)の幅〈直径〉及び凹部26の幅は10nm〜50nm程度であり、凸部20,22,24,28の高さ(凹部26の深さ)は、10nm〜100nm程度である。
【0039】
〔液滴の打滴配置及び拡張の説明〕
次に、図1(b)に図示した打滴工程によって基板10上に着弾した液滴14の打滴位置(着弾位置)、及び図1(c)に図示した光硬化性樹脂膜形成工程による液滴14の拡張について詳説する。
【0040】
図3(a)〜(c)は、液滴14を拡げる方向に異方性を持たせた態様を模式的に図示した説明図であり、図2(a)〜(d)に図示した凹凸パターンを有するスタンパが用いられる。図3(a)に示す液滴14は、A方向について配置ピッチがWaとなるように配置されるとともに、B方向について配置ピッチがWb(<Wa)となるように配置されている。
【0041】
図3(a)に示すようにB方向に対してA方向について液滴の打滴密度を疎にした配置パターンを有する液滴14は、図3(b)に示すように、A方向を長軸方向、B方向を短軸方向とする略だ円状に拡げられる。図3(b)では、拡げられている中間状態の液滴に符号14’を付して図示している。所定の条件における液滴14の押圧が実行されると、図3(c)に示すように、隣接する打滴位置に着弾した液滴14が合一して、均一な厚みを有する光硬化性樹脂膜18が形成される。
【0042】
なお、液滴14をA方向及びB方向について均等に配置した場合は、スタンパの凹凸形状によって濡れ広がりが異なるので、隙間が発生しないように(図3(d)参照)、液滴の密度が決められる。
【0043】
図4(a)〜(c)は、A方向及びB方向について等間隔となるように配置された液滴14を、等方(均等)に拡張させる態様を模式的に図示した説明図であり、例えば、図2(e)に図示した凹凸パターンを有するスタンパが用いられる。
【0044】
図4(a)に示すように、基板10の表側面10Aの所定の打滴位置に着弾した液滴14は、モールド16(図1(c)参照)に押圧され、図4(b)に示すように中心から半径方向に略均一に拡げられる。図4(b)では、拡げられている中間状態の液滴に符号14’を付して図示している。所定の条件における液滴14の押圧が実行されると、図4(c)に示すように、隣接する打滴位置に着弾した液滴14が合一して、均一な厚みを有する光硬化性樹脂膜18が形成される。
【0045】
図5(a)に図示した拡張させた複数の液滴(標準量の液滴)14’の形状をそれぞれだ円形状に近似し、該だ円形状が最密充填配置されるように液滴を再配置するとよい。図5(b)に示す例では、偶数列の液滴17の中心が奇数列の液滴14”のA方向における縁部に対応するように、偶数列の液滴17のA方向における位置が変更され(A方向の打滴ピッチが1/2ピッチずらされ)、かつ、B方向について奇数列の液滴14”のだ円形状の円弧部と、偶数列の液滴17のだ円形状の円弧部とを接触させるように、B方向における位置が変更されている(B方向の打滴ピッチが小さくなっている)。
【0046】
再配置後の楕円形状のそれぞれの中心を格子点(打滴位置)として、複数の液滴の配置パターンが決められる。これにより、インクジェット方式を用いて光硬化性を有する液滴14を塗布し、ナノインプリントを行う方法において、凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂膜18の残膜の厚みムラ、及び残留気体による欠陥の発生を抑制することが可能となる。
【0047】
液滴14の塗布量の好適な量としては、モールド16による押圧後の光硬化性樹脂膜18の厚みが5nm以上200nm以下となる範囲内である。特に、後行程であるドライエッチング等のリソグラフィプロセス後に基板10上に形成されるパターンの品質を良好とするためには、光硬化性樹脂膜18の厚みを15nm以下とすることが好ましく、10nm以下とすることがより好ましい。光硬化性樹脂膜18の厚みを5nm以下とすると、さらに好ましい。また残膜厚みの標準偏差値(σ値)が5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることがさらに好ましい。
【0048】
〔ナノインプリントシステムの説明〕
次に、上述したナノインプリント方法を実現するためのナノインプリントシステムについて説明する。
【0049】
(全体構成)
図6は、本発明の実施形態に係るナノインプリントシステムの概略構成図である。同図に示すナノインプリントシステム100は、シリコンや石英ガラスの基板102上にレジスト液(光硬化性樹脂を有する液)を塗布するレジスト塗布部104と、基板102上に塗布されたレジストに所望のパターンを転写するパターン転写部106と、基板102を搬送する搬送部108と、を備えて構成される。
【0050】
搬送部108は、例えば、搬送ステージなどの基板102を固定して搬送する搬送手段を含んで構成され、基板102を搬送手段の表面に保持しつつ、該基板102をレジスト塗布部104からパターン転写部106に向かう方向(以下、「y方向」又は「基板搬送方向」、「副走査方向」ということもある。)に搬送を行う。該搬送手段の具体例として、リニアモータとエアスライダーの組み合わせや、リニアモータとLMガイドの組み合わせなどがあり得る。なお、基板102を移動させる代わりに、レジスト塗布部104やパターン転写部106を移動させるように構成してもよいし、両者を移動させてもよい。ここで、図6に示す「y方向」は図2〜5における「A方向」に対応している。
【0051】
レジスト塗布部104は、複数のノズル(図6中不図示、図7に符号120を付して図示)が形成されるインクジェットヘッド110を備え、各ノズルからレジスト液を液滴として吐出することにより、基板102の表面(レジスト塗布面)にレジスト液の塗布を行う。
【0052】
ヘッド110は、y方向について複数のノズルが並べられた構造を有し、x方向について基板102の全幅にわたって走査しながらx方向における液体吐出が行われるシリアル型ヘッドである。図6(b)に示すように、シリアル型のヘッド110’による液体吐出では、x方向についての液体吐出が終わると、y方向について基板102とヘッド110’とを相対的に移動させて、次のx方向についての液体吐出が実行される。このような、動作を繰り返すことで、基板102の全面にわたって打滴が行われる。但し、基板102のy方向の長さがx方向の1回の走査で対応できる場合は、y方向について基板102とヘッド110’との相対移動は不要である。
【0053】
一方、図6(c)に示すように、y方向と直交するx方向(以下、「基板幅方向」、「主走査方向」ということもある。)の基板102の最大幅にわたってについて複数のノズルが一列に並べられた構造を有する長尺のフルラインヘッド110を適用してもよい。フルライン型のヘッド110を用いた液体吐出では、ヘッド110をx方向に移動させることなく、基板搬送方向について基板102とヘッド110を相対的に移動させる動作を1回行うだけで基板102上の所望位置に液滴を配置することができ、レジストの塗布速度の高速化を図ることができる。ここで、上述した「x方向」は図2〜5における「B方向」に対応している。
【0054】
パターン転写部106は、基板102上のレジストに転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたモールド112と、紫外線を照射する紫外線照射装置114と、を備え、レジストが塗布された基板102の表面にモールド112を押し当てた状態で、基板102の裏側から紫外線照射を行い、基板102上のレジスト液を硬化させることにより、基板102上のレジスト液に対してパターン転写を行う。
【0055】
モールド112は、紫外線照射装置114から照射される紫外線を透過可能な光透過性材料から構成される。光透過性材料としては、例えば、ガラス、石英、サファイア、透明プラスチック(例えば、アクリル樹脂、硬質塩化ビニールなど)を使用することができる。これにより、モールド112の上方(基板102とは反対側)に配置される紫外線照射装置114から紫外線照射が行われたとき、モールド112で遮られることなく基板102上のレジスト液に紫外線が照射され、該レジスト液を硬化させることができる。
【0056】
モールド112は、図6の上下方向(矢印線により図示した方向)に移動可能に構成されており、基板102の表面に対してモールド112のパターン形成面が略平行となる状態を維持しながら下方に移動して、基板102の表面全体に略同時に接触するように押し当てられ、パターン転写が行われる。
【0057】
(ヘッドの構成)
次に、ヘッド110の構造について説明する。図7は、ヘッド110を吐出面(ノズル面)側から見た平面透視図であり、図8は、図7中A‐A線に沿う断面図である。図7に示すように、ヘッド110は複数のノズル120がx方向(又はy方向)の全長にわたって一列に並べられた構造を有している。また、ノズル120の開口は平面形状が略正方形となっており、ノズル120の辺の方向とノズル120の配列方向とは略平行である。以下の説明では、図6(c)に図示したフルライン型のヘッド110について説明するが、図6(b)に図示したシリアル型ヘッド110’の場合は、x方向とy方向とを入れ換えればよい。
【0058】
複数のノズル120のうち、同図中左から奇数番目のノズル120Aは同図における上側に位置する第1の液室122Aと第1の連通路124Aを介して連通し、同図中左から偶数番目のノズル120Bは同図における下側に位置する第2の液室122Bと第2の連通路124Bを介して連通する構造を有している。なお、図示を省略したが、第1の液室122Aは第1のノズル120Aごとに区画され、第2の液室122Bは第2のノズル120Bごとに区画されている。
【0059】
なお、図7では図示を省略するが、第1の液室122Aの外側及び第2の液室122Bの外側には、それぞれ圧電素子(図8に符号121A,121Bを付して図示)が設けられている。かかる圧電素子は、第1の液室又は第2の液室に対して一体の圧電体部を有するとともに、ノズルごと(区画ごと)に個別電極(図10(a)に符号140を付して図示)が設けられる電極分割構造が適用される。
【0060】
また、図8に示すように、第1の液室122Aは第1の連通路124Aの反対側において液供給路126と連通し、第2の液室122Bは第2の連通路124Bの反対側において液供給路126と連通している。第1の液室122Aの外側面は第1の圧電素子121Aが設けられ、第2の液室122Bの外側面は第2の圧電素子121Bが設けられている。
【0061】
第1の圧電素子121Aを動作させると、第1の液室122A内の液が加圧されて、図7における奇数番目のノズル120Aから液滴が打滴される。一方、図8に示す第2の圧電素子121Bを動作させると、第2の液室122B内の液が加圧されて、図7における偶数番目のノズル120Bから液滴が打滴される。
【0062】
本例に示すヘッド110は、ノズル列をはさんで一方の側(図中上側)第1の液室が配置され、他方の側(図中下側)に第2の液室122Bが配置された構造を有し、かかるヘッド110の流路構造に対応して、第1の液室122Aと連通するノズル120Aのグループと、第2の液室122Bと連通するノズル120Bのグループにグループ化されており、グループごとに液滴の打滴が制御可能に構成されている。
【0063】
図9は、ヘッド110の分解斜視図である。同図に示すヘッド110は、複数のプレートが積層された構造を有しており、ノズル120(図8参照)が形成されるノズルプレート130に、連通路124(124A,124B)の一部が形成されるスペーサー層132が積層される。
【0064】
さらに、スペーサー層132には連通路124の一部及び液室122(122A,122B)が形成される液室プレート138が積層される。この液室プレート138は、両側の側面に圧電素子121(121A,121B)が形成される。さらに、液室プレート138には液供給路126が形成される供給路プレート(不図示)が積層されている。係る構造を有するヘッド110をヘッドモジュールとして、複数のヘッドモジュールをx方向についてつなぎ合わせて長尺のヘッドを構成してもよい。
【0065】
本例に示すナノインプリントシステムに適用されるヘッド110は、液室を加圧する手段として圧電素子121が具備されている。図10(a)は、圧電素子121の動作モード(d15モード、シェアモード)を説明する図であり、図8の縦断面に対応している。図10(a)に示すように、圧電素子121は液室122と反対側の面に個別電極140及び共通電極142が設けられている。また、圧電素子121は液室122から外側へ向かう方向(厚み方向)に分極されており(分極方向を矢印線により図示)、個別電極140を正極、共通電極142を負極として所定の電界を印加すると液室122の内側へ変形する。図10(a)は、静定状態(電界の非印加状態)を実線により図示し、変形状態(電界の印加状態)を破線により図示している。
【0066】
なお、図10(b)に示すように、圧電素子121’の長くなる方向の変位を利用するd33モードや、図10(c)に示すように、圧電素子121”の短くなる方向の変位を利用するd31モードを用いることも可能である。
【0067】
例えば、図10(b)に示す圧電素子121’は、液室122の外側壁144に配設され、液室122の外側壁144と反対側の面に拘束板146が取り付けられた構造を有し、さらに、液室122の外側壁144に取り付けられる面と直交する面に個別電極140’及び共通電極142’が設けられる構造を有している。図10(b)に示す圧電素子121’は、個別電極140’から共通電極142’へ向かう方向の電界が印加されると、圧電素子121’が上下方向に伸張して、液室122の外側壁144が内側に変形する。
【0068】
図10(c)に示す圧電素子121”を用いる場合は、液室122の外側壁144側の面に共通電極142”が設けられ、共通電極142”と反対側の面に個別電極140”が設けられる。圧電素子121”は、個別電極140”から共通電極142”へ向かう方向の電界が印加されると、圧電素子121”横方向へ短くなり、液室122の外側壁144が内側に変形する。
【0069】
図11は、図10(a)に図示したd15モードの圧電素子121を用いる場合における、個別電極140及び共通電極142の配置を示す平面図である。図11に示すように、共通電極142は櫛歯形状の平面形状を有しており、共通電極142の間に個別電極140が配置される。個別電極140の配置位置は、ノズル120の位置に対応している。
【0070】
図10(a)〜(c)及び図11に図示された個別電極140,140’,140”及び共通電極142,142’、142”は、不図示のフレキシブル基板を用いてヘッド110の外部に引き出され、ヘッドドライバー(図12に符号184を付して図示)と電気的に接続される。
【0071】
(制御系の説明)
図12は、ナノインプリントシステム100におけるレジスト塗布部104に関する制御系を示すブロック図である。同図に示すように、当該制御系は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバー176、ヒータドライバー178、打滴制御部180、バッファメモリ182、ヘッドドライバー184等を備えている。
【0072】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくるレジスト液の配置(塗布分布)を表すデータを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70としては、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェース、或いは、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0073】
システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバー176、ヒータドライバー178等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
【0074】
メモリ174は、データの一時記憶領域、及びシステムコントローラ172が各種の演算を行うときの作業領域として使用される記憶手段である。通信インターフェース170を介して入力されたレジスト液の配置を表すデータはナノインプリントシステム100に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。メモリ174としては、半導体素子からなるメモリの他、ハードディスクなどの磁気媒体を用いることができる。
【0075】
プログラム格納部190には、ナノインプリントシステム100の制御プログラムが格納される。システムコントローラ172はプログラム格納部190に格納されている制御プログラムを適宜読み出し、制御プログラムを実行する。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記憶媒体のうち、複数の記憶媒体を備えてもよい。
【0076】
モータドライバー176は、システムコントローラ172からの指示に従ってモータ188を駆動するドライバー(駆動回路)である。モータ188には、図6の搬送部108を駆動するためのモータやモールド112を上下動させるためのモータが含まれる。
【0077】
ヒータドライバー178は、システムコントローラ172からの指示に従ってヒータ189を駆動するドライバーである。ヒータ189には、ナノインプリントシステム100の各部に設けられた温度調節用のヒータが含まれる。
【0078】
打滴制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内のレジスト液の配置データから打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した打滴制御信号をヘッドドライバー184に供給する制御部である。打滴制御部180において所要の信号処理が施され、該打滴データに基づいてヘッドドライバー184を介してヘッド110から打滴されるレジスト液の打滴量、打滴位置、ヘッド110打滴タイミングの制御が行われる。これにより、所望のレジスト液の液滴の配置(分布)が実現される。
【0079】
打滴制御部180にはバッファメモリ182が備えられており、打滴制御部180における打滴データ処理時に打滴データやパラメータなどのデータがバッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図12では、バッファメモリ182は打滴制御部180に付随する態様で示されているが、メモリ174と兼用することも可能である。また、打滴制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0080】
ヘッドドライバー184は、打滴制御部180から与えられる打滴データに基づいてヘッド110の圧電素子121(図4参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子121に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバー184にはヘッド110の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0081】
センサ192は、ヘッド110から打滴された液滴の飛翔状態を検出するために設けられている。センサ192の構成例として、発光部(例えば、ストロボ光を発光させるストロボ装置)、及び受光部(例えば、CCDイメージセンサ等の撮像装置)を備えた構成が挙げられる。かかる光学式センサによって、液滴の飛翔速度、液滴の飛翔方向、液滴の体積等を検出することが可能である。センサ192によって得られた情報は、システムコントローラ172へ送られ、打滴制御部へフィードバックされる。
【0082】
カウンター194は、ノズル120に対して設定されたグループごとに打滴回数をカウントするものである。本例では、打滴データに基づいてグループごとの打滴回数がカウントされ、該カウントデータは所定の記憶部(例えば、メモリ174)に記憶される。かかるカウントデータを用いて、グループごとの打滴回数にバラつきが生じないように、各グループの使用頻度が調整される。例えば、第1のノズル120Aのみ、又は第2のグループのみに偏らないように、適宜グループの選択が変更される。
【0083】
(駆動電圧の説明)
上述したように、本例に示すヘッド110はノズル120がグループ化されており、第1の液室122Aと連通するノズル120A(以下「第1のグループに属するノズル」と記載)と、第2の液室122Bと連通するノズル120B(以下「第2のグループに属するノズル」と記載)と、を含んでいる。
【0084】
本例に示すヘッド110は、第1のグループに属するノズル120Aに具備される圧電素子121(以下、「第1のグループに属する圧電素子」と記載)へ印加される駆動電圧と、第2のグループに属するノズル120Bに具備される圧電素子121(以下、「第2のグループに属する圧電素子」と記載)へ印加される駆動電圧と、を異ならせることが可能である。
【0085】
図13は、グループごとに打滴量を変更するために駆動電圧を変更する具体例を説明する図である。図13の上段は、第1のグループに属する圧電素子へ印加される駆動電圧波形230が図示され、下段は第2のグループに属する圧電素子へ印加される駆動電圧波形232が図示されている。同図に示す駆動電圧波形230,232は、圧電素子121(図8等参照)を引き‐押し動作させるものであり、駆動電圧波形230は最大電圧がVoであり、駆動電圧波形232は最大電圧がVe(>Vo、又はVe<Vo)である。
【0086】
すなわち、グループごとに圧電素子121へ印加する駆動電圧の最大値を可変させることができ、該駆動電圧の最大値を相対的に大きくすると相対的に打滴量が大きくなり、該駆動電圧の最大値を相対的に小さくすると相対的に打滴量が小さくなる。かかる駆動電圧の最大値を変更する構成の一例として、図12に示すヘッドドライバー184に、圧電素子121(ノズル120)に付与されたグループに対応して電圧可変部を備える構成が挙げられる。
【0087】
駆動電圧の最大値を変更することにより、圧電素子の個体バラつき(厚み、圧電定数、ヤング率等)に伴う吐出量のバラつきを補正することが可能である。また、駆動電圧のパルス幅を調整することによって、圧電素子の個体バラつきに伴うヘッドの共振周波数のバラつきに依存するノズルごとの吐出効率や、ノズルごとの吐出安定性を補正することができ、ヘッド全体として吐出効率や吐出安定性を向上させることができる。
【0088】
かかる駆動電圧(駆動波形)の変更の具体例として、予めノズルごと(ノズル列ごと)の吐出特性を検査して記憶しておき、該ノズルごと(ノズル列ごと)の吐出特性のデータを参照して駆動電圧を変更する態様が挙げられる。ノズルごとの吐出特性の検査には、後述する「打滴状態の検出」を適用することができる。
【0089】
(x方向における打滴配置の説明)
次に、レジスト液のx方向における打滴配置(打滴ピッチ)について説明する。
【0090】
第1のグループに属するノズル120Aから打滴を行うときには、第2のグループに属するノズル120Bは休止しており、第2のグループに属するノズル120Bから打滴を行うときには、第1のグループに属するノズル120Aは休止している。すなわち、x方向における最小打滴ピッチは、x方向における最小ノズルピッチの2倍(グループごとの最小ノズルピッチ)となっている。例えば、x方向における最小打滴ピッチを400μmとしたときに、x方向について直径が50μm程度の液滴を400μmピッチで離散的に配置させる構成となっている。さらに、各グループをn個(nは正の整数)のグループに再グループ化して、最小打滴ピッチを400/n(μm)とすることも可能である。
【0091】
なお、第1のグループに属するノズル120A及び第2のグループに属するノズル120Bから同時の打滴を行うことも可能である。かかる態様では、最小打滴ピッチは最小ノズルピッチと同一となる。
【0092】
また、本例に示すヘッド110はx方向について最小打滴ピッチ未満の範囲で打滴ピッチを微調整することができ、x方向について液滴の打滴密度を細かく可変させることが可能となっている。図14(a),(b)は、x方向における打滴ピッチを微調整する構成の具体例を説明する模式図である。以下に示すx方向の打滴ピッチ微調整手段は、ヘッド110を基板102(図6参照)の液滴が打滴される面と略平行な面内において回転させて、x方向の打滴ピッチを微調整するように構成されている。
【0093】
図14(a)に示すヘッド110は、第1グループのノズル120Aみの(又は、第2グループのノズル120Bのみ)を図示した図であり、第1グループのノズル120Aは配置ピッチPnで等間隔に配置されている。なお、実際には、図示したノズル120A間に第2グループのノズル120Bが配置されている。
【0094】
このとき、x方向における打滴ピッチPd(図3(a)に示すWbに対応)はx方向のノズル間ピッチPnと同一である。図14(b)に示すように、ヘッド110をx方向に対して角度δをなすように回転させると、x方向の打滴ピッチはPdからPd’(=Pn×cosδ(但し、0°<δ<45°)へ変更することができる。かかる構成を有するx方向の打滴ピッチ微調整手段によって、打滴するノズルを変更せずに、x方向の最小打滴ピッチをPd未満の範囲で微調整することが可能となる。例えば、最小打滴ピッチPd=400μmとしたときに、δ=28.9°となるようにヘッド110を回転させると、打滴ピッチPd’=350μmとなる。
【0095】
図15は、2つ(複数の)ヘッドモジュール110‐1とヘッドモジュール110‐2とをx方向につなぎ合わせて1つの長尺ヘッドが構成される場合の、x方向の打滴ピッチ微調整手段の構成を模式的に図示した図である。それぞれのヘッドモジュール110‐1,110‐2を回転させるとともに、ヘッドモジュール110‐1,110‐2間のつなぎ部分における打滴ピッチがPd’になるように、いずれかのヘッドモジュール110‐1,110‐2をx方向にΔxだけ移動させる。なお、両方のヘッドモジュール110‐1,110‐2をx方向に移動させてもよい。
【0096】
すなわち、複数のヘッドモジュール110‐1,110‐2をx方向につなぎ合わせて長尺ヘッドを構成する態様では、ヘッドモジュール110‐1,110‐2ごとにxy平面内において回転させる回転機構が備えられるとともに、隣接するヘッドモジュール110‐1,110‐2間のx方向の相対的な距離を可変させるx方向移動機構が備えられる。
【0097】
なお、図14(a),(b)、図15に示す態様では、ヘッド110の略中心を通る回転軸についてヘッド110を回転させる態様を例示したが、ヘッド110の端部を通る回転軸についてヘッド110を回転させてもよい。また、ヘッド110を回転させる具体的な構成例として、回転軸に取り付けられたモータ(ギア及びモータ)と、回転軸について回転可能にヘッド110を支持するヘッド支持機構と、を具備する構成が挙げられる。
【0098】
かかる構造を有するx方向の打滴ピッチ微調整手段は、x方向の打滴ピッチPdを微調整すると、y方向の打滴ピッチも変わってしまうので、x方向の微調整量に応じてy方向の打滴ピッチも微調整しなければならない。y方向の打滴ピッチの微調整は以下に説明する方法を用いることが可能である。
【0099】
(y方向における打滴配置の説明)
次に、y方向の打滴配置及びy方向の打滴ピッチの微調整の具体例について説明する。本例に示すヘッド110はx方向の全幅について、一回の打滴タイミングにおいて一度に打滴が可能である。かかる構造によって、ヘッド110と基板102とを一回だけ相対的に移動させることで、基板102の全域に液滴を打滴することが可能である。
【0100】
固定されたヘッド110に対して基板102をy方向へ一定速度で移動させるときに、y方向の最小打滴ピッチは、(最小打滴周期)×(基板102の移動速度)となっている。すなわち、打滴するノズルを変更せずに、y方向の打滴ピッチは打滴周期のm倍(mは正の整数)ごとに調整することが可能である。また、基板102の移動速度を大きくするとy方向の打滴ピッチは大きくなり、基板102の移動速度を小さくするとy方向の打滴ピッチは小さくなる。
【0101】
さらに、本例に示すヘッド110は、y方向についても(最小打滴周期)×(基板の移動速度)未満の範囲で、打滴ピッチを微調整するための打滴ピッチ微調整手段を具備している。
【0102】
図16の上段は、y方向について標準の打滴ピッチで打滴を行う場合の駆動電圧波形240である。駆動電圧波形240は圧電素子121(図8等参照)に引き‐押し動作をさせるものであり、メニスカス静定波形242が付与されている。また、図16の下段は、y方向について打滴ピッチの微調整を行う場合の駆動電圧波形244であり、駆動電圧波形240と同様に、圧電素子121に引き‐押し‐引き動作をさせるものであり、メニスカス静定波形246が付与されている。
【0103】
下段に図示した駆動電圧波形244は、上段に図示した駆動電圧波形240に所定の遅延時間が付加されており、遅れ位相となっている。したがって、駆動電圧波形244の圧電素子121を押し動作させる波形要素(立下り部)244Aの終了タイミングtBが、駆動電圧波形240の圧電素子121を押し動作させる波形要素(立下り部)240Aの終了タイミングtAよりも遅れている。このように駆動電圧波形を変更して吐出タイミングを微調整することで、y方向における打滴ピッチの微調整が可能となる。
【0104】
さらに、図16の下段に示す駆動電圧のように、遅延時間を付加して位相を変更することで、圧電素子の個体バラつき(厚み、圧電定数、ヤング率等)に伴う吐出量のバラつきを補正することが可能となり、圧電素子の個体バラつきに伴うヘッドの共振周波数のバラつきに依存するノズルごとの吐出効率のバラつきやノズルごとの吐出安定性のバラつきが均一化される。
【0105】
図17は、標準の駆動電圧に遅延時間(ディレイ)を付加するための構成を示すブロック図である。同図に示す駆動信号生成部400は、ノズル120ごとの駆動波形を生成する波形生成部404と、x方向の打滴ピッチを変更する際の遅延時間をノズルごとに算出するディレイデータ生成部405と、ディレイデータ生成部405により生成された遅延時間を駆動波形データに加算する加算部407と、デジタル形式の駆動波形データをアナログ形式に変換するD/Aコンバータ409と、アナログ形式の駆動波形に電圧増幅処理及び電流増幅処理を施す増幅部406と、を備えている。
【0106】
打滴データに基づいて、スイッチIC414のスイッチ素子416をオンオフさせることで各ノズルに対応する圧電素子121を動作させると、所望のノズルからレジスト液が打滴される。
【0107】
また、図18に示すように複数のアナログ波形(WAVE1〜3)を準備しておき、イネーブル信号によって複数のアナログ波形の中から1つを選択するように構成してもよい。なお、かかる構成はy方向の打滴ピッチ微調整手段として、x方向の打滴ピッチ微調整手段とは独立して動作させることが可能である。
【0108】
図19(a)は、y方向の打滴ピッチの微調整前の基板102上の打滴位置を示す図であり、図19(b)は、y方向の打滴ピッチの微調整後の基板102上の打滴位置を示す図である。図19に示すように、Py<Py’<2×Pyとなっており、微調整後のy方向の打滴ピッチPy’は、y方向の最小打滴ピッチPy未満の範囲で調整されている。なお、図19(b)において破線で図示した打滴位置は図19(a)に図示した微調整前の打滴位置を示している。
【0109】
上述したx方向及びy方向の打滴ピッチの微調整は、レジスト液の配置(塗布分布)のデータや、揮発性などの液物性に基づいて行われる。すなわち、基板に形成される微細パターンに対応するレジスト液の打滴データに応じて、標準よりも多く液滴を必要とする場合は、打滴ピッチが小さくなるように変更され、レジスト液はより密に塗布される。一方、標準よりも液滴量を必要としない場合は、打滴ピッチが大きくなるように変更され、レジスト液はより疎に塗布される。打滴ピッチの変更に対応して、レジスト液の打滴量を上記のように変えてもよい。また、図3及び図4を用いて説明したモールドパターンによる濡れ拡がりの異方性を考慮した打滴配置に基づいて、x方向及びy方向の打滴ピッチの微調整を行うことが好ましい。
【0110】
(打滴検出の説明)
次に、ヘッド110の打滴検出について説明する。図20に示すように、本例に示すヘッド110は打滴状態を検出するためのセンサ192が設けられている。図20(a)は、ヘッド110とセンサ192との配置関係を模式的に表した図であり、図20(b)は、図20(a)に示すヘッド110及びセンサ192をヘッド110の短手方向の端部から見た図である。
【0111】
図20(a)に示すように、ヘッド110をはさんで、ヘッド110の短手方向における一方の側に発光部192Aが配置され、他方の側に受光部192Bが配置されている。ヘッド110に設けられるノズル120は、ヘッド110の打滴面から見た開口の平面形状が略正方形であり、センサ192の観察方向(実線の矢印線により図示)は該正方形の対角線(破線の矢印線により図示)とのなす角度が略45°となっている。
【0112】
本例に適用される略正方形形状の開口を有するノズルは、頂角が特異点となるために液滴は対角線の方向へ飛翔曲がりが発生するので、かかる飛翔曲がりが発生する方向(すなわち、対角線の方向)に対して略45°をなす方向について液滴を観察することで、得られた検出信号を解析することで、飛翔速度、飛翔曲がり、体積を把握することができる。
【0113】
〔ノズルプレートの説明〕
(ノズルプレートの製造方法)
次に、図8等に図示した開口の平面形状が略正方形形状のノズル120の製造方向について説明する。図21(a)〜(h)は、ノズル120を有するノズルプレート130を形成するための各工程を模式的図示した説明図である。
【0114】
本例に示すヘッド110に適用されるノズルプレート130(図9参照)は、単結晶のシリコンウエハに対して異方性エッチング処理が施されて形成されたものである。図21(a)に示すシリコンウエハ300は、結晶方向(100)のP型又はN型の表面が研磨処理されたものである。図21(b)に示すように、シリコンウエハ300の表面に処理温度1000℃で酸化処理が施され、厚さ4500Åの酸化膜(SiO2)302が形成される。
【0115】
次に、図21(c)に示すように、酸化膜302の上にレジスト層304が形成され、開口パターン306がレジスト層304に露光され、現像される(図21(d))。次に、開口パターン306の酸化膜302が除去されるとともに、レジスト層304が除去される(図21(e))。レジスト層304及び開口パターン306の酸化膜302が除去されたシリコンウエハ300は、100℃〜120℃のエッチング溶液中に浸漬され、一方の面から他方の面に向かって開口面積が小さくなる形状(断面形状が略三角形形状)を有する穴308が形成される(図21(f))。
【0116】
次に、酸化膜302が除去された後に(図21(g)、酸化処理が施されて穴308の内部、及びシリコンウエハ300の表面に酸化膜310が形成される(図21(h))。
【0117】
図22(a)は、上述した製造方向を用いて形成されたノズル120(図8参照)を、内部側から見た平面図であり、図22(b)は、図22(a)の一部拡大図(斜視図)である。図22(a)に示すように、ノズル120となる穴308の開口312,314は略正方形形状を有している。開口314は、ヘッド110に取り付けたときにノズル120の開口となる。図22(a),(b)に示すように、ノズル120となる穴308は、先端を切り取った略四角錐形状を有している。
【0118】
かかる製造方法を用いて製造されたノズルプレート130は、大きさや形状のバラつきのない好ましいノズル120が形成されたものである。
【0119】
(撥液処理(撥液膜)の説明)
次に、ノズルプレートの撥液処理(撥液膜)について説明する。ノズルプレート130(図8参照)の液滴吐出面は、吐出の安定性を確保するために所定の性能を有する撥液処理が施される。
【0120】
図23は、ノズルプレート130に形成される撥液膜の特性による吐出特性の違いを示す実験データである。当該データを得た評価実験は、所定のインクジェットヘッドに形成された撥液膜を酸素プラズマにより強制的に劣化させて当該撥液膜の接触角を変化させ、吐出状態を観察した。接触角の測定は、接触角計FTA1000(FTA社製)を使用し、接線法、拡張収縮法を用いて行った。
【0121】
図23中、「静的」欄は静的接触角の値であり、この値は接線法で求められた接触角である。すなわち、後述する〔実施例〕に記載されている「レジスト組成物R1A」をノズルプレート130に滴下して、ノズルプレート130上の液滴の画像の輪郭形状を円の一部と仮定して円の中心を求め、円の接線と直線でなす角度を静的接触角としている。また、「前進」欄は前進接触角の値であり、「後退」欄は後退接触角の値である。これらの値は、拡張収縮法により求められた接触角である。固体表面に接した液滴を、膨らませたときに、接触角が安定したときの接触角を前進接触角とし、固体表面に接した液滴を吸引しながら収縮させて、接触角が安定したときの接触角を後退接触角としている。
【0122】
図23に示すように、条件1,2は打滴周波数10kHzにおいて良好な打滴状態が観察され、ノズル面(吐出面)は乾燥状態であった。一方、条件3,4はそれぞれ打滴周波数5kHz、10kHzで飛翔曲がりが発生し、ノズル面の全面が液滴(液体)で濡れた状態であった。
【0123】
撥液膜は、フッ素系樹脂が利用可能である。フッ素系樹脂の材料としては、主鎖に「‐CF2‐」を含み、末端基が「‐CF3」のフルオロカーボン樹脂、主鎖に「‐SiF2‐」を含み、末端基が「‐SiF3」のフルオロシリコーン樹脂、もしくは、これらフルオロカーボン樹脂およびフルオロシリコーン樹脂のフッ素原子の一部を水素原子で置換したハイドロフルオロカーボン樹脂、ハイドロフルオロシリコーン樹脂等の従来公知の各種のフッ素系樹脂が利用可能である。
【0124】
より具体的には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン共重合体)等のフッ素系樹脂を一例として挙げることができる。また、この中でも、PTFEは特に好ましい例として示すことができる。
【0125】
また、撥液膜として、1つの端が「‐CF3」基で終結され、第2の端が「‐SiCl3」基で終結される炭素鎖を含む前駆物質分子が用いることができる。シリコン表面に付着する適切な前駆物質として、トリデカフルオロ−1,1,2,2‐テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)、及び1H,1H,2H,2H‐ペルフルオロデシルトリクロロシラン(FDTS)が挙げられる。
【0126】
撥液膜に劣化が生じると、図23に示すように吐出特性に変化が生じるので、撥液膜の状態を定期的に把握する手段を備え、撥液膜に劣化が見られるノズルが属するグループは使用しないように、ソフトウエア上でマスク処理等をすることが可能である。
【0127】
上記の如く構成されたナノインプリントシステム100によれば、ヘッド110に具備されるノズル120がグループ化され、グループごとに打滴が制御されるので、グループごとの固体差(ノズルごとの吐出特性のバラつき、圧電素子ごとのバラつき)を制御することができ、該固体差に起因して残膜の厚み(残渣)が不均一になることがない。したがって、打滴された液滴により形成された膜の厚みが安定しているので、基板のエッチング工程における条件が安定し、基板には好ましい微細パターンが形成される。
【0128】
また、ノズルの配列方向と略平行のx方向、及びノズルの配列方向と略直交するy方向について、離散的レジスト液滴を配置させる構成において、x方向、y方向のいずれか、又はx方向及びy方向の両方の打滴ピッチを、最小打滴ピッチ未満の範囲で微調整する構成を具備するので、打滴パターンや揮発性等の液物性に応じて液滴の打滴密度を精密に、かつ、簡易に変更することができる。
【0129】
さらに、グループごとの打滴回数を計測するカウンター194を具備し、グループごとに打滴回数が計測され、計測結果に対応して打滴を行うグループが選択されるので、特定のグループの打滴頻度が高くなることが防止され、ヘッド110の耐久性が向上する。
【0130】
さらにまた、打滴状態を検出するためのセンサ192を具備し、検出結果に基づいて液滴の飛翔方向曲がりや液滴量の異常を把握することができるので、打滴状態の異常に応じてグループを選択することが可能となり、ヘッドの吐出特性が安定する。
【0131】
なお、本例では、基板上にレジスト液による微細パターンを形成するナノインプリントシステムを例示したが、上述した構成を一体的な装置(ナノインプリント装置)とすることも可能である。また、インクジェット方式により基板上に溶液を離散的に配置させる液体塗布装置として構成することも可能である。
【0132】
〔応用例〕
次に、本発明の応用例について説明する。上述した実施形態では、基板上に微細パターンを形成する手法としてナノインプリント法を適用した例を説明したが、ナノインプリント法を用いて石英モールドを形成することが可能である。
【0133】
(石英モールドの作製)
石英モールドは、図1(a)〜(f)に図示した石英基板の微細パターン形成方法を適用して作製することが可能である。すなわち、上記した実施形態に係るナノインプリントシステム、方法を適用して石英モールドを作製することができる。かかる石英モールドを作製する際に、以下に作成方法を示すSiモールドが好適に用いられる。
【0134】
(Siモールドの作製)
上述した実施形態で使用されるSiモールドは、図24(a)〜(e)に示す手順により製造することができる。まず、図24(a)に示すSi基材360にシリコン酸化膜362を形成し、図24(b)に示すように、スピンコートなどでノボラック系樹脂、アクリル樹脂などのフォトレジスト液を塗布し、フォトレジスト層364を形成する。その後、図24(c)に示すように、Si基材360にレーザー光(又は電子ビーム)を照射し、フォトレジスト層364の表面に所定のパターンを露光する。
【0135】
その後、図24(d)に示すように、フォトレジスト層364を現像処理し、露光部分を除去して、除去後のフォトレジスト層のパターンをマスクにしてRIEなどにより選択エッチングを行い、所定のパターンを有するSiモールドを得る。
【0136】
本発明のナノインプリント方法で用いられるモールドは、光硬化性樹脂とモールド表面との剥離性を向上させるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドとしては、シリコン系やフッ素系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC-1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。図24(e)に離型層366が形成されたSiモールドを図示する。
【0137】
〔光硬化性樹脂液の説明〕
次に、本例に示すナノインプリントシステムに適用される光硬化性樹脂液の一例として、レジスト組成物(以下、単に「レジスト」と記載することがある。)について詳細に説明する。
【0138】
レジスト組成物は、一種以上のフッ素を含む重合性界面活性剤(含フッ素重合性界面活性剤)と重合性化合物と、光重合開始剤Iとを少なくとも含有するインプリント用硬化性組成物である。
【0139】
レジスト組成物には、機能として多官能重合性基を有することによる架橋性の発現を狙い、又は炭素密度を高める、又は結合エネルギーの総量を高める、又は硬化後の樹脂中に含まれるO、S、N、等の電気陰性度が高い部位の含有率を抑制する等によりエッチング耐性を向上させる目的で重合性官能基を有する1官能以上のモノマー成分を含んでもよく、更に、必要に応じて、基板とのカップリング剤、揮発性溶剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0140】
基板とのカップリング剤としては、前述の基板の密着処理剤と同様の材料を用いることができる。含有量としては、基板とレジスト層との界面に配置する程度に含有していれば良く、10質量%以下であれば良く、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更により好ましく、0.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0141】
レジスト組成物の粘度は、モールド112(図6参照)に形成されたパターンへのレジスト組成物中の固形分(揮発溶剤成分を除いた成分)の入り込みと、モールド112への濡れ広がり性の観点から、固形分の粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることが更により好ましい。しかしながら、インクジェット方式を利用する場合は、室温またはヘッドで吐出時に温度制御可能であればその温度範囲内にて20mPa・s以下となることが好ましく、またレジスト組成物の表面張力が20mN/m以上40mN/m以下の範囲、さらに24mN/m以上、36mN/m以下となることが、インクジェットでの吐出安定性を確保する観点で好ましい。
【0142】
(重合性化合物)
レジスト組成物の主成分となる重合性化合物としては、以下の〔数1〕で示される化合物中のフッ素含有率が5%以下であるか、またはフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を実質的に含まない重合性化合物であることとする。
【0143】
【数1】
【0144】
重合性化合物としては、硬化後のパターンの精度及びエッチング耐性等の品質の良好なものであることが好ましい。かかる重合性化合物としては、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含むことが好ましく、多官能単量体は、少なくとも1つの2価又は3価の芳香族基を有するものであることが好ましい。
【0145】
硬化(重合)後に三次元構造を有するレジストの場合は、硬化処理後の形状維持性が良く、モールド剥離時にモールドとレジストとの付着力によって、レジストにかかる応力がレジスト構造体の特定エリアに集中し、パターンが塑性変形することが抑制される。
しかしながら、重合後に三次元構造を有する重合体となる多官能モノマーの比率や、重合後に三次元架橋を形成する部位の密度が上昇すると、硬化後のヤング率が大きくなって変形性が低下し、また膜の脆性が悪化するため、モールド剥離時に破断しやすくなってしまうことが懸念される。特にパターンサイズが30nm幅以下でパターンアスペクト比が2以上のパターンを残膜厚みが10nm以下となる態様では、ハードディスクパターンや半導体パターンなどの広エリアでの形成を試みた場合に、パターンの剥がれやもげが発生する確率が大きくなると考えられる。
【0146】
従って、多官能単量体は、重合性化合物中に10質量%以上含有されることが好ましく、20質量%以上含有されることがより好ましく、30質量%以上含有されることが更に好ましく、40質量%以上であることが最も好ましいことを見出した。
【0147】
また、次式〔数2〕で表される架橋密度が0.01個/nm2以上10個/nm2以下であることが好ましく、0.1個/nm2以上6個/nm2以下であることがより好ましく、0.5個/nm2以上5.0個/nm2以下であることがもっとも好ましいことを見出した。組成物の架橋密度は、各分子の架橋密度を求め、更に重量平均より求めるか、または組成物の硬化後密度を測定し、Mw、および(Nf−1)についてそれぞれの値を重量平均した値と次式〔数2〕より求める。
【0148】
【数2】
【0149】
但し、Daは1分子の架橋密度、Dcは硬化後密度、Nfはモノマー1分子中に含まれるアクリレート官能基数、Naはアボガドロ定数、Mwは分子量である。
【0150】
重合性化合物の重合性官能基としては、特に制限されないが、反応性及び安定性が良好であることから、メタクリレート基、アクリレート基が好ましく、アクリレート基がより好ましい。
【0151】
ドライエッチング耐性は、レジスト組成物の大西パラメータ及びリングパラメータにより評価することができる。大西パラメータが小さく、また、リングパラメータが大きいものほどドライエッチング耐性に優れる。本発明において、レジスト組成物は、大西パラメータが4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下となるように、また、リングパラメータが0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上となるものを好適としている。
【0152】
上記各パラメータは、レジスト組成物を構成する揮発溶剤成分以外の構成物質について、構造式を元に後述の計算式を用いて算出された材料パラメータ値を、組成重量比を元に組成物全体で平均化した値として求める。従って、レジスト組成物の主成分である重合性化合物についても、レジスト組成物中のその他の成分、及び上記パラメータを考慮して選択することが好ましい。
【0153】
大西パラメータ=(化合物中の総原子数)/{(化合物中の炭素原子数)−(化合物中の酸素原子数)}
リングパラメータ=(環構造を形成する炭素質量)/(化合物の全質量)
重合性化合物としては、以下に示す重合性単量体、及びかかる重合性単量体が数単位重合したオリゴマー等が挙げられる。パターン形成性とエッチング耐性の観点から、重合性単量体(Ax)、及び特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物のうちの少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。
【0154】
(重合性単量体(Ax))
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化1〕に示す一般式(I)で表される。
【0155】
【化1】
【0156】
なお、上記〔化1〕に示す一般式(I)中、Arは置換基を有していてもよい2価または3価の芳香族基を表し、Xは単結合または有機連結基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、nは2または3を表す。
【0157】
上記の一般式(I)中、Arとしては、n=2のときは2価の芳香族基(すなわちアリーレン基)を表し、n=3のときは3価の芳香族基を表す。アリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基などの炭化水素系アリーレン基;インドール、カルバゾールなどが連結基となったヘテロアリーレン基などが挙げられ、好ましくは炭化水素系アリーレン基であり、さらに好ましくは粘度、エッチング耐性の観点からフェニレン基である。アリーレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基が挙げられる。
【0158】
Xの有機連結基としては、鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる。その中でも、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。Xとしては、単結合またはアルキレン基であることが特に好ましい。
【0159】
R1は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。R1が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、特に制限はないが、例えば水酸基、ハロゲン原子(フッ素を除く)、アルコキシ基、アシルオキシ基を挙げることができる。nは2または3であり、好ましくは2である。
【0160】
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化2〕に示す一般式(I−a)、又は一般式(I−b)で表される重合性単量体であることが、組成物粘度を低下させる観点から好ましい。
【0161】
【化2】
【0162】
なお、上記の一般式(I−a)、I−b)中、X1、X2は、それぞれ独立に単結合または炭素数1〜3の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0163】
一般式(I−a)中、前記X1は、単結合またはメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが粘度低減の観点からより好ましい。X2の好ましい範囲は、前記X1の好ましい範囲と同様である。
【0164】
R1は上記の一般式(I)におけるとR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。重合性単量体(Ax)は25℃において液体であると、添加量を増やした際にも異物の発生が抑制でき好ましい。重合性単量体(Ax)は25℃における粘度が70mPa・s未満であることがパターン形成性の観点から好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、30mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0165】
以下の〔化3〕に好ましい重合性単量体(Ax)の具体例を示す。R1は一般式(I)におけるR1と同義である。R1としては硬化性の観点から、水素原子が好ましい。
【0166】
【化3】
【0167】
これらの中でも、以下の〔化4〕に示す化合物が25℃において液体であり、かつ、低粘度で、さらに良好な硬化性を示し、特に好ましい。
【0168】
【化4】
【0169】
レジスト組成物においては、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、必要に応じて重合性単量体(Ax)と、以下に説明する重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体と、を併用することが好ましい。
【0170】
(他の重合性単量体)
他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましい。
【0171】
これらの他の重合性単量体のうち、インプリント適性とドライエッチング耐性、硬化性、粘度等の観点から、特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物をより好ましく含むことが出来る。更に他に含むことが出来る前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
【0172】
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
【0173】
これらの中で特に、芳香族構造および/または脂環炭化水素構造を有する単官能(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性を改善する観点から好ましい。具体例ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、が特に好ましい。
【0174】
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0175】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0176】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0177】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0178】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0179】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)の具体例として、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などが挙げられる。
【0180】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0181】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0182】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry ofheterocyclic compounds−Small RingHeterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,AnInterscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報明細書、特許第2906245号公報明細書、特許第2926262号公報明細書などの文献を参考にして合成できる。
【0183】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0184】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0185】
また、他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0186】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0187】
他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0188】
(含フッ素重合性界面活性剤)
含フッ素重合性界面活性剤としては、フッ素原子を有する官能基を少なくとも1つと、重合性官能基を少なくとも1つ有する単量体又はオリゴマー等の重合性化合物であれば特に制限されないが、良好なパターン形成を可能にする上で、重合性化合物と重合しやすい立体配置を有するものであることが好ましい。
【0189】
本例に示すインプリントシステムでは、含フッ素重合性界面活性剤は、レジストパターンの一部となるため、良好なパターン形成性、硬化後のモールド離型性及びエッチング耐性の良好なレジスト特性を有するものであることが好ましい。
【0190】
含フッ素重合性界面活性剤の含有量は、レジスト組成物中、例えば、0.001質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上4質量%以下であり、さらに好ましくは、0.005質量%以上3質量%以下である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001質量%以上5質量%以下の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化や、インプリント後のエッチング工程におけるエッチング適性の劣化を招きにくい。
【0191】
含フッ素重合性界面活性剤は、その側鎖、特に末端に重合性基を有していることが好ましい。重合性官能基としては、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基などのラジカル重合性官能基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合性官能基などが挙げられ、ラジカル重合性官能基が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリレート基等のエチレン不飽和結合基である。
【0192】
含フッ素重合性界面活性剤のフッ素原子を有する基としては、フロロアルキル基およびフロロアルキルエーテル基から選ばれる含フッ素基が好ましい。フロロアルキル基としては、炭素数が2以上のフロロアルキル基であることが好ましく、4以上のフロロアルキル基であることがより好ましく、上限値としては特に定めるものではないが、20以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。最も好ましくは炭素数4〜6のフロロアルキル基である。前記好ましいフロロアルキル基としては、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ヘキサフロロイソプロピル基、ノナフロロブチル基、トリデカフロロヘキシル基、ヘプタデカフロロオクチル基が挙げられる。
【0193】
本例に示すインプリントシステムにおいて、含フッ素重合性界面活性剤は、トリフロロメチル基構造を有するフッ素原子を有する重合性化合物であることが好ましい。すなわち、フロロアルキル基の少なくとも1つは、トリフロロメチル基構造を含有することが好ましい。トリフロロメチル基構造を有することで、少ない添加量(例えば、10質量%以下)でも本願発明の効果が発現し、表面エネルギーが低下して離型性が向上する。
【0194】
フロロアルキルエーテル基としては、フロロアルキル基の場合と同様に、トリフロロメチル基を有しているものが好ましく、パーフロロエチレンオキシ基、パーフロロプロピレンオキシ基を含有するものが好ましい。−(CF(CF3)CF2O)−などのトリフロロメチル基を有するフロロアルキルエーテルユニットおよび/またはフロロアルキルエーテル基の末端にトリフロロメチル基を有するものが好ましい。
【0195】
本例に示すインプリントシステムにおいて、含フッ素重合性界面活性剤の特に好ましい態様は、フロロアルキル基およびフロロアルキルエーテル基から選ばれる含フッ素基を少なくとも2つ含有し、かつ、該含フッ素基の少なくとも2つは、炭素数2以上の連結基により隔てられている重合性単量体である。すなわち、該重合性単量体が含フッ素基を2つ有する場合は、その2つの含フッ素基は炭素数2以上の連結基で隔てられており、重合性単量体が含フッ素基を3つ以上有する場合は、このうち少なくとも2つが炭素数2以上の連結基で隔てられており、残りの含フッ素基はどのような結合形態を有していてもよい。炭素数2以上の連結基はフッ素原子で置換されていない炭素原子を少なくとも2つ有する連結基である。
【0196】
同様の観点から、トリフロロメチル基構造を3つ以上含有する重合性単量体も好ましく、トリフロロメチル基構造を3〜9個、さらに好ましくは4〜6個含有する重合性単量体が好ましい。トリフロロメチル基構造を3つ以上含有する化合物としては1つの含フッ素基に2つ以上のトリフロロメチル基を有する分岐のフロロアルキル基、例えば、‐CH(CF3)2基、‐C(CF3)3、‐CCH3(CF3)2CH3基などのフロロアルキル基を有する化合物が好ましい。
【0197】
フロロアルキルエーテル基としては、トリフロロメチル基を有しているものが好ましく、パーフロロエチレンオキシ基、パーフロロプロピレンオキシ基を含有するものが好ましい。−(CF(CF3)CF2O)−などのトリフロロメチル基を有するフロロアルキルエーテルユニットおよび/またはフロロアルキルエーテル基の末端にトリフロロメチル基を有するものが好ましい。
【0198】
炭素数2以上の連結基中に含まれる官能基としては、アルキレン基、エステル基、スルフィド基およびアリーレン基が例示され、少なくとも、エステル基および/またはスルフィド基を有することがより好ましい。
【0199】
炭素数2以上の連結基は、アルキレン基、エステル基、スルフィド基、アリーレン基およびこれらの組み合わせが好ましい。これらの基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基を有していても良い。
【0200】
含フッ素重合性界面活性剤が有する全フッ素原子の数は、1分子当たり、6個以上60個以下が好ましく、より好ましくは9個以上40個以下、さらに好ましくは12個以上40個以下である。含フッ素重合性界面活性剤は、下記に定義するフッ素含有率が20%以上60%以下のフッ素原子を有する重合性化合物であることが好ましく、含フッ素重合性界面活性剤が重合性単量体の場合、より好ましくは30%以上60%以下であり、さらに好ましくは35%以上60%以下である。含フッ素重合性界面活性剤が重合性基を有するオリゴマーの場合、フッ素含有率がより好ましくは20%以上50%以下であり、さらに好ましくは20%以上40%以下である。フッ素含有率を適性範囲とすることで他成分との相溶性に優れ、モールド汚れを低減でき且つ、離型性との両立が可能となり、本発明の効果である繰り返しパターン形成性が向上する。本明細書中において、前記フッ素含有率は、次式〔数1〕で表される。
【0201】
【数1】
【0202】
含フッ素重合性界面活性剤の好ましい形態の一つとしては、フッ素原子を有する基の好ましい一例として、下記の〔化5〕に示す一般式(II−a)で表される部分構造を有する化合物(単量体)が挙げられる。このような部分構造を有する化合物を採用することにより、繰り返しパターン転写を行ってもパターン形成性に優れ、かつ、組成物の経時安定性が良好となる。
【0203】
【化5】
【0204】
但し、上記一般式(II−a)中、nは1〜8の整数を表し、好ましくは4〜6の整数である。
【0205】
含フッ素重合性界面活性剤の好ましい他の一例として、以下の〔化6〕に示す一般式(IV)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。もちろん、一般式(II)で表される部分構造と、一般式(II−b)で表される部分構造の両方を有していてもよい。
【0206】
【化6】
【0207】
但し、上記の一般式(II−b)中、L1は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を表し、L2は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、m1およびm2はそれぞれ、0または1を表し、m1およびm2の少なくとも一方は1である。m3は1〜3の整数を表し、pは1〜8の整数を表し、m3が2以上のとき、それぞれの、−CpF2p+1は同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0208】
L1およびL2は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。また、アルキレン基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していてもよい。m3は、好ましくは1または2である。pは4〜6の整数が好ましい。
【0209】
好ましくは、以下の〔化7〕に示す一般式(II−c)で表される重合性単量体である。
【0210】
【化7】
【0211】
但し、上記の一般式(II−c)中、R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、Aは(a1+a2)価の連結基を表し、a1は1〜6の整数を表す。a2は2〜6の整数を表し、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜8のアルキレン基を表す。m1及びm2はそれぞれ、0又は1を表し、m1及びm2の少なくとも一方は1である。m3は1〜3の整数を表す。m4及びm5はそれぞれ、0または1を表し、m4及びm5の少なくとも一方は1であり、m1及びm2の両方が1のとき、m4は1である。nは1〜8の整数を表す。
【0212】
また、R1は、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。Aは好ましくはアルキレン基および/またはアリーレン基を有する連結基であり、さらにヘテロ原子を含む連結基を含有していても良い。ヘテロ原子を有する連結基としては−O−、−C(=O)O−、−S−、−C(=O)−が挙げられる。これらの基は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していても良いが、有していない方が好ましい。Aは、炭素数2〜50であることが好ましく、炭素数4〜15であることがより好ましい。
【0213】
a1は、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1または2である。a2は、好ましくは2または3、さらに好ましくは2である。a1が2以上のとき、それぞれのAは同一であってもよいし、異なっていてもよい。a2が2以上のとき、それぞれのR2、R3、m1、m2、m3、m4、m5およびnは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0214】
本例に示すインプリントシステムに適用される含フッ素重合性界面活性剤として用いる重合性単量体の分子量は、好ましくは500以上2000以下である。また、該重合性単量体の粘度は、好ましくは600以上1500以下であり、より好ましくは600以上1200以下である。
【0215】
次に、含フッ素重合性界面活性剤として用いる重合性単量体の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の〔化8〕に示す化学式中におけるR1はそれぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子およびシアノ基のいずれかである。
【0216】
【化8】
【0217】
また、その他の含フッ素重合性界面活性剤として用いる重合性単量体としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する単官能重合性化合物が挙げられる。また、前記フッ素原子を有する重合性化合物としては、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロペンタンジ(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフロロヘキサンジ(メタ)アクリレートなどのフロロアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを有する2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物も好ましい例として挙げられる。
【0218】
また、含フッ素基例えばフロロアルキル基、フロロアルキルエーテル基を1分子中に2つ以上有する化合物も好ましく用いることができる。
【0219】
フッ素原子を有する重合性化合物がオリゴマー等である場合、上記重合性単量体を繰り返し単位として含有するものが好ましい。
【0220】
そのほか、特開2006−114882号公報明細書の段落〔0018〕〜〔0048〕に記載の化合物、特開2008−95037号公報明細書の段落〔0027〕〜〔0035〕に記載の含フッ素重合性化合物等を界面活性剤として使用することができる。
【0221】
(重合開始剤I)
重合開始剤Iとしては、レジスト組成物を硬化させる際に用いる光L1により活性化してレジスト組成物に含まれる重合性化合物の重合を開始する活性種を発生するものであれば特に制限されない。重合開始剤Iとしては、ラジカル重合開始剤が好ましい。また、本発明において、重合開始剤Iは複数種を併用してもよい。
【0222】
重合開始剤Iとしては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましく、例えば、特開平2008−105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
【0223】
重合開始剤Iの含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01質量%以上15質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上12質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上7質量%以下である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0224】
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0225】
これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤の添加量が種々検討されてきたが、インプリント用等の光インプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、開始剤がラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、レジスト組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0226】
本例に示すインプリントシステムに適用されるレジストに含有するラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィン系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
【0227】
なお、光L1には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波の他に、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0228】
光重合開始剤Iは、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、レジスト組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させてしまったりするなどの問題を生じる。
【0229】
レジスト組成物では、含まれる重合性単量体がラジカル重合性単量体であり、光重合開始剤Iが光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0230】
(その他成分)
既に述べたように、本例に示すインプリントシステムに適用されるレジスト組成物は、上述の重合性化合物、含フッ素重合性界面活性剤、及び光重合開始剤Iの他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。以下にその他の成分について概要を説明する。
【0231】
(酸化防止剤)
レジスト組成物では、公知の酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤の含有量は、重合性単量体に対し、例えば、0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以上5質量%以下である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。
【0232】
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0233】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0234】
(重合禁止剤)
レジスト組成物は、重合禁止剤を少量含有することが好ましい。重合禁止剤の含有量としては、全重合性単量体に対し、0.001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下、さらに好ましくは0.008質量%以上0.05質量%以下である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。
【0235】
(溶剤)
レジスト組成物は、必要に応じて、種々の溶剤を含むことができる。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜280℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
【0236】
レジスト組成物中の溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性改善の観点から、全組成物中0〜99質量%が好ましく、0〜97質量%がさらに好ましい。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には20質量%以上99質量%以下が好ましく、40質量%以上9質量%以下がさらに好ましく、70質量%以上98質量%以下が特に好ましい。
【0237】
(ポリマー成分)
レジスト組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
【0238】
レジスト組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点から、ポリマー成分を含有していてもよい。かかるポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2000以上100000以下が好ましく、5000以上50000以下がさらに好ましい。
【0239】
ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。パターン形成性の観点から、レジスト組成物において、溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量%以下である方が好ましい。樹脂成分はできる限り少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0240】
レジスト組成物には、上記した成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0241】
レジスト組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。また、各成分を混合した後、例えば、孔径0.003μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することもできる。光インプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0242】
レジスト組成物において、溶剤を除く成分の25℃における粘度は1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは3mPa・s以上50mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以上30mPa・s以下である。粘度を適切な範囲とすることで、パターンの矩形性が向上し、さらに残膜を低く抑えることができる。
【実施例】
【0243】
〔レジスト組成物R1A〕
・重合性化合物(1,4−ジアクロイルオキシメチルベンゼン,2’―ナフチルメチルアクリレート 各49g)
・含フッ素重合性界面活性剤(Ax−2)1.0g
・光重合開始剤(エチル2,4,6−トリエチルベンゾインフェニルホスフィネート)(Irgacure 379、BASF社製) 1.0g
〔レジスト組成物R2〕
・重合性化合物(TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート(アロニックスM220(東亞合成株式会社製))) 98.0g
・含フッ素重合性界面活性剤(Ax−2)1.0g
・光重合開始剤(エチル2,4,6−トリエチルベンゾインフェニルホスフィネート)(Irgacure 379、BASF社製) 1.0g
以上、本発明に係るナノインプリントシステム及び装置、方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
【0244】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0245】
(発明1):基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御する打滴制御手段と、を備えたことを特徴とする液体塗布装置。
【0246】
本発明によれば、ノズル及びノズルに対応する圧電素子がグループ化され、グループごとに打滴制御が行われるので、ノズルや圧電素子の固体バラつきに起因する打滴密度の粗密の発生を抑制し得る。
【0247】
本発明における「機能性を有する液体」とは、基板上に微細パターンを形成し得る機能性材料の成分を含有する液体であり、その一例としてレジスト液などの光硬化樹脂液や、加熱により硬化する熱硬化樹脂液などが挙げられる。
【0248】
液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化される一例として、各ノズルと連通する液室の配置、形状、構造、該液室と連通する液供給路の配置、形状、構造などにより各ノズルをグループ化する態様が挙げられる。
【0249】
(発明2):発明1に記載の液体塗布装置において、前記液体吐出ヘッドは、前記複数の液室が前記複数のノズルから成るノズル列をはさんで前記ノズル列の両側に配置される構造を有し、前記打滴制御手段は、前記ノズル列の一方の側に配置される第1の液室と連通する第1のノズル群を第1のグループとし、前記ノズル列の他方の側に配置される第2の液室と連通する第2のノズル群を第2のグループとして、該グループごとに圧電素子の動作を制御することを特徴とする。
【0250】
かかる態様によれば、複数の液室がノズル列をはさんで両側に配置される構造を有する液体吐出ヘッドにおいて、連通される液室の配置構造に応じてノズルをグループ化することで、液流路と各ノズルとの間の流路抵抗などの流路構造に起因する吐出特性のバラつきを回避することができ、液体の配置密度を最適化することができる。
【0251】
(発明3):発明2に記載の液体塗布装置において、前記液体吐出ヘッドは、前記第1のノズル群に含まれるノズルと前記第2のノズル群に含まれるノズルは交互に配置される構造を有することを特徴とする。
【0252】
かかる態様における液体吐出ヘッドの構造例として、ノズル列をはさんで両側に液供給路が設けられる構造が挙げられる。
【0253】
(発明4):発明2又は3に記載の液体塗布装置において、前記第1の液室及び前記第2の液室はノズルごとに区画された構造を有し、前記圧電素子は、前記第1の液室又は前記第2の液室に対して一体の圧電体部と、ノズルごとの区画に対応して形成された電極を有することを特徴とする。
【0254】
かかる態様によれば、第1の液室に具備される圧電素子と、第2の液室に具備される圧電素子の固体差に起因する打滴のバラつきが回避される。
【0255】
かかる態様の具体例として、櫛歯状の共通電極と、共通電極の櫛歯形状の中に位置し、ノズル(区画)の位置に対応して設けられる個別電極と、を備える態様が挙げられる。
【0256】
(発明5):発明1乃至4のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記基板の前記機能性を有する液体が着弾する面と平行な面内において、前記ヘッドを回転させるヘッド回転手段と、前記ヘッド回転手段により前記ヘッドを回転させて、前記相対移動手段の相対移動方向と略直交する方向における打滴密度を変更する打滴密度変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【0257】
かかる態様によれば、ノズルの配列方向について、ノズル配置間隔未満の範囲でノズルの配列方向における打滴位置の微調整ができ、打滴パターンに対応した平均塗布量の可変が可能である。
【0258】
かかる態様において、すべてのノズルが一体的に回転するように液体吐出ヘッドを構成することで、打滴密度の不連続点が生じることを回避し得る。
【0259】
(発明6):発明請求項1乃至5の何れかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、前記相対移動手段の相対移動方向と略平行方向における打滴ピッチを最小打滴ピッチ未満の範囲で可変させるように、前記圧電素子を動作させることを特徴とする。
【0260】
かかる態様によれば、相対移動手段の移動方向について、打滴パターンに対応した平均塗布量の可変が可能である。
【0261】
かかる態様において、圧電素子に印加される駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段を備え、該駆動電圧生成手段は、駆動電圧が有する周期を変更可能に構成されることが好ましい。
【0262】
発明5に係る打滴密度変更手段による打滴密度の変更を行う場合は、発明6に係る打滴密度の変更を行うことが好ましい。
【0263】
(発明7):発明6のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、最小打滴周期未満の範囲で前記圧電素子を動作させるタイミングを変化させることを特徴とする。
【0264】
かかる態様によれば、相対移動手段の相対移動方向について、所定の最小打滴間隔未満の範囲で同方向における打滴位置の微調整が可能である。
【0265】
かかる態様における具体例として、最小打滴周期未満の遅延時間を生成する遅延時間生成手段を備え、該遅延時間生成手段によって生成された遅延時間を所定の打滴周期に付加する態様が挙げられる。
【0266】
(発明8):発明1乃至7のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、最小打滴周期未満の遅延時間を付加して前記圧電素子を動作させるタイミングを遅延させることを特徴とする。
【0267】
かかる態様において、最小打滴周期未満の遅延時間を生成する遅延時間生成手段を備える態様が好ましい。
【0268】
(発明9):発明1乃至8のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の波形をグループごとに変更することを特徴とすることを特徴とする。
【0269】
かかる態様によれば、駆動電圧の波形を変更することで、圧電素子の個体バラつき(厚み、圧電定数、ヤング率等)に伴う打滴液滴量のバラつきを補正することが可能である。
【0270】
かかる態様の具体例として、グループごとの吐出特性に応じて駆動電圧の波形を変更する態様が挙げられる。
【0271】
(発明10):発明1乃至9のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の最大電圧をグループごとに変更することを特徴とする。
【0272】
かかる態様によれば、駆動電圧の最大値に応じてグループごとに打滴液滴量を変更することができ、グループ間の打滴液滴量が均一化される。
【0273】
(発明11):発明1乃至10のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の最大振幅部分の幅をグループごとに変更することを特徴とする。
【0274】
かかる態様によれば、グループごとに駆動電圧の最大振幅部分における幅(すなわち、パルス幅)を変更することができ、グループ間の打滴液滴量を均一化される。
【0275】
かかる態様における「最大振幅部分」の一例として、圧電素子を引き‐押し駆動させる駆動電圧における、引き動作が維持される状態に対応する部分が含まれる。
【0276】
(発明12):発明1乃至11のいずれかに記載の液体塗布装置において、グループごとの打滴回数を計測する打滴回数計測手段と、前記計測されたグループごとの打滴回数を記憶する打滴回数記憶手段を備えることを特徴とする。
【0277】
かかる態様によれば、グループごとに打滴回数を把握することができ、打滴制御へのフィードバックが可能となる。
【0278】
(発明13):発明12に記載の液体塗布装置において、前記打滴回数記憶手段の記憶結果に基づいて、いずれのグループのノズルを用いて打滴を行うかを選択する選択手段を備え、前記打滴制御手段は、前記選択手段の選択結果に基づいて、前記圧電素子の動作を制御することを特徴とする。
【0279】
かかる態様によれば、グループごとの使用頻度(打滴頻度)を均一化させることができ、液体吐出ヘッドの耐久性向上に寄与する。
【0280】
(発明14):発明1乃至13のいずれかに記載の液体塗布装置において、前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルが略正方形の平面形状を有するとともに、該正方形の辺方向が前記ノズルの配列方向と略平行になるように配置される構造を有し、ノズルの対角線の方向に対して略45°の方向について、打滴された液滴を観察する観察手段を備えたことを特徴とする。
【0281】
かかる態様によれば、観察手段の観察結果を用いたグループの選択が可能となる。
【0282】
かかる態様において、観察手段の観察結果を用いてグループごとにノズルの異常の有無を判断する判断手段を備える態様が好ましい。
【0283】
(発明15):基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと前記基板とを相対的に移動させ、所定の打滴周期で前記圧電素子を動作させて、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させる液体塗布方法において、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御することを特徴とする液体塗布方法。
【0284】
本発明において、打滴密度を可変させる打滴密度可変工程を備える態様が好ましい。また、グループごとに打滴回数を計測する打滴回数計測工程と、計測された打滴回数を記憶する記憶工程を含む態様が好ましい。
【0285】
(発明16):基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御する打滴制御手段と、型に形成された凹凸パターンを転写する転写手段と、を備えたことを特徴とするナノインプリントシステム。
【0286】
本発明は、サブミクロンの微細パターンを形成するナノインプリントリソグラフィに特に好適である。また、本発明おける各手段を備えたインプリント装置とすることも可能である。
【0287】
(発明17):発明16に記載のナノインプリントシステムにおいて、前記転写手段は、前記型の凹凸パターンが形成されている面を、前記基板の液体が塗布された面に押し当てる押圧手段と、前記型と前記基板との間の液体を硬化させる硬化手段と、前記型と前記基板とを剥離させる剥離手段と、を備えたことを特徴とする。
【0288】
(発明18):発明16又は17に記載のナノインプリントシステムにおいて、前記転写手段による転写の後に、前記型を前記基板から剥離させる剥離手段と、凹凸パターンが転写され硬化させた液体から成る膜をマスクとして、前記型の凹凸パターンに対応するパターンを前記基板に形成するパターン形成手段と、前記膜を除去する除去手段と、を備えたことを特徴とする。
【0289】
かかる態様によれば、好ましいサブミクロンの微細パターンが形成される。
【符号の説明】
【0290】
10,102…基板、12,110…インクジェットヘッド、14…液滴、16,112…モールド、18…光硬化性樹脂膜、20,22,24,28…凸部、26…凹部、100…ナノインプリントシステム、104…レジスト塗布部、106…パターン転写部、108…搬送部、114…紫外線照射装置、120,120A,120B…ノズル、121,121’、121”…圧電素子、122,122A,122B…液室、172…システムコントローラ、180…打滴制御部、184…ヘッドドライバー、192…センサ、194…カウンター、404…波形生成部、405…ディレイデータ生成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと、
前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、
前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御する打滴制御手段と、
を備えたことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体塗布装置において、
前記液体吐出ヘッドは、前記複数の液室が前記複数のノズルから成るノズル列をはさんで前記ノズル列の両側に配置される構造を有し、
前記打滴制御手段は、前記ノズル列の一方の側に配置される第1の液室と連通する第1のノズル群を第1のグループとし、前記ノズル列の他方の側に配置される第2の液室と連通する第2のノズル群を第2のグループとして、該グループごとに圧電素子の動作を制御することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体塗布装置において、
前記液体吐出ヘッドは、前記第1のノズル群に含まれるノズルと前記第2のノズル群に含まれるノズルは交互に配置される構造を有することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の液体塗布装置において、
前記第1の液室及び前記第2の液室はノズルごとに区画された構造を有し、
前記圧電素子は、前記第1の液室又は前記第2の液室に対して一体の圧電体部と、ノズルごとの区画に対応して形成された電極を有することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記基板の前記機能性を有する液体が着弾する面と平行な面内において、前記ヘッドを回転させるヘッド回転手段と、
前記ヘッド回転手段により前記ヘッドを回転させて、前記相対移動手段の相対移動方向と略直交する方向における打滴密度を変更する打滴密度変更手段と、
を備えたことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、前記相対移動手段の相対移動方向と略平行方向における打滴ピッチを最小打滴ピッチ未満の範囲で可変させるように、前記圧電素子を動作させることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、最小打滴周期未満の範囲で前記圧電素子を動作させるタイミングを変化させることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、最小打滴周期未満の遅延時間を付加して前記圧電素子を動作させるタイミングを遅延させることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の波形をグループごとに変更することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の最大電圧をグループごとに変更することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の最大振幅部分の幅をグループごとに変更することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の液体塗布装置において、
グループごとの打滴回数を計測する打滴回数計測手段と、
前記計測されたグループごとの打滴回数を記憶する打滴回数記憶手段と、
を備えることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項13】
請求項12に記載の液体塗布装置において、
前記打滴回数記憶手段の記憶結果に基づいて、いずれのグループのノズルを用いて打滴を行うかを選択する選択手段を備え、
前記打滴制御手段は、前記選択手段の選択結果に基づいて、前記圧電素子の動作を制御することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルが略正方形の平面形状を有するとともに、該正方形の辺方向が前記ノズルの配列方向と略平行になるように配置される構造を有し、
ノズルの対角線の方向に対して略45°の方向について、打滴された液滴を観察する観察手段を備えたことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項15】
基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと前記基板とを相対的に移動させ、所定の打滴周期で前記圧電素子を動作させて、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させる液体塗布方法において、
前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御することを特徴とする液体塗布方法。
【請求項16】
基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと、
前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、
前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御する打滴制御手段と、
型に形成された凹凸パターンを転写する転写手段と、
を備えたことを特徴とするナノインプリントシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のナノインプリントシステムにおいて、
前記転写手段は、前記型の凹凸パターンが形成されている面を、前記基板の液体が塗布された面に押し当てる押圧手段と、
前記型と前記基板との間の液体を硬化させる硬化手段と、
前記型と前記基板とを剥離させる剥離手段と、
を備えたことを特徴とするナノインプリントシステム。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のナノインプリントシステムにおいて、
前記転写手段による転写の後に、前記型を前記基板から剥離させる剥離手段と、
凹凸パターンが転写され硬化させた液体から成る膜をマスクとして、前記型の凹凸パターンに対応するパターンを前記基板に形成するパターン形成手段と、
前記膜を除去する除去手段と、
を備えたことを特徴とするナノインプリントシステム。
【請求項1】
基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと、
前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、
前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御する打滴制御手段と、
を備えたことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体塗布装置において、
前記液体吐出ヘッドは、前記複数の液室が前記複数のノズルから成るノズル列をはさんで前記ノズル列の両側に配置される構造を有し、
前記打滴制御手段は、前記ノズル列の一方の側に配置される第1の液室と連通する第1のノズル群を第1のグループとし、前記ノズル列の他方の側に配置される第2の液室と連通する第2のノズル群を第2のグループとして、該グループごとに圧電素子の動作を制御することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体塗布装置において、
前記液体吐出ヘッドは、前記第1のノズル群に含まれるノズルと前記第2のノズル群に含まれるノズルは交互に配置される構造を有することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の液体塗布装置において、
前記第1の液室及び前記第2の液室はノズルごとに区画された構造を有し、
前記圧電素子は、前記第1の液室又は前記第2の液室に対して一体の圧電体部と、ノズルごとの区画に対応して形成された電極を有することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記基板の前記機能性を有する液体が着弾する面と平行な面内において、前記ヘッドを回転させるヘッド回転手段と、
前記ヘッド回転手段により前記ヘッドを回転させて、前記相対移動手段の相対移動方向と略直交する方向における打滴密度を変更する打滴密度変更手段と、
を備えたことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、前記相対移動手段の相対移動方向と略平行方向における打滴ピッチを最小打滴ピッチ未満の範囲で可変させるように、前記圧電素子を動作させることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、最小打滴周期未満の範囲で前記圧電素子を動作させるタイミングを変化させることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、最小打滴周期未満の遅延時間を付加して前記圧電素子を動作させるタイミングを遅延させることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の波形をグループごとに変更することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の最大電圧をグループごとに変更することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記打滴制御手段は、前記圧電素子に印加される駆動電圧の最大振幅部分の幅をグループごとに変更することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の液体塗布装置において、
グループごとの打滴回数を計測する打滴回数計測手段と、
前記計測されたグループごとの打滴回数を記憶する打滴回数記憶手段と、
を備えることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項13】
請求項12に記載の液体塗布装置において、
前記打滴回数記憶手段の記憶結果に基づいて、いずれのグループのノズルを用いて打滴を行うかを選択する選択手段を備え、
前記打滴制御手段は、前記選択手段の選択結果に基づいて、前記圧電素子の動作を制御することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の液体塗布装置において、
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルが略正方形の平面形状を有するとともに、該正方形の辺方向が前記ノズルの配列方向と略平行になるように配置される構造を有し、
ノズルの対角線の方向に対して略45°の方向について、打滴された液滴を観察する観察手段を備えたことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項15】
基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと前記基板とを相対的に移動させ、所定の打滴周期で前記圧電素子を動作させて、前記液体を前記基板上に離散的に着弾させる液体塗布方法において、
前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御することを特徴とする液体塗布方法。
【請求項16】
基板上に機能性を有する液体を打滴するための複数のノズルが所定の方向に沿って一列に並べられた構造を有し、前記複数のノズルのそれぞれに連通される複数の液室、及び前記複数の液室に対応して配設される前記液室内の液体を加圧するための圧電素子を具備する液体吐出ヘッドと、
前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、
前記液体を前記基板上に離散的に着弾させるように前記圧電素子を動作させるとともに、前記液体吐出ヘッドの構造に対応して前記複数のノズルがグループ化され、該グループごとに圧電素子の動作を制御する打滴制御手段と、
型に形成された凹凸パターンを転写する転写手段と、
を備えたことを特徴とするナノインプリントシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のナノインプリントシステムにおいて、
前記転写手段は、前記型の凹凸パターンが形成されている面を、前記基板の液体が塗布された面に押し当てる押圧手段と、
前記型と前記基板との間の液体を硬化させる硬化手段と、
前記型と前記基板とを剥離させる剥離手段と、
を備えたことを特徴とするナノインプリントシステム。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のナノインプリントシステムにおいて、
前記転写手段による転写の後に、前記型を前記基板から剥離させる剥離手段と、
凹凸パターンが転写され硬化させた液体から成る膜をマスクとして、前記型の凹凸パターンに対応するパターンを前記基板に形成するパターン形成手段と、
前記膜を除去する除去手段と、
を備えたことを特徴とするナノインプリントシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−11310(P2012−11310A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150365(P2010−150365)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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